説明

ポリ乳酸系フィルムロール

【課題】本発明は、巻き姿、外観不良を改良して、透明で包装用フィルムとして好適なポリ乳酸系フィルムに関するものであり、更に詳しくは、製品ロール外観のフィルム面転写状の欠点、突起状の欠点のないフィルムを提供せんとするものである。
【解決手段】平均表面粗さが4.0μm以下のコアにフィルムを巻いたフィルムロールであり、フィルムのヘーズが1%を越え10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系フィルムロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明で包装用フィルムとして好適な巻き姿に優れたポリ乳酸系フィルムロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりにより、地球温暖化の原因となる炭酸ガス排出量の抑制活動が様々な分野で取り組まれている。特に、石油を原料とするプラスチック製品は廃棄処理の際、多くの炭酸ガスが発生するという問題点がある。
【0003】
このような環境問題の高まりの中で、環境への負荷を低減して社会を持続可能なものにするために、廃棄後に自然環境下で分解する種々の植物由来原料を用いた生分解性プラスチックが求められるようになっている。
【0004】
これらの生分解性プラスチックの中で、ポリ乳酸系樹脂は他の生分解性プラスチックに比べて、透明性、剛性、加工性に優れ、特にそのフィルムは腰が強く、透明性に優れている点から、各種包装用フィルムとして適している。ポリ乳酸系樹脂は、溶融押出によりフィルムにして使用されている。また、縦、横に、二軸延伸すること、インフレーション法によって配向を高めることなどの方法で機能性を付加して使用している。
【0005】
しかしながら、これらの方法で製膜したフィルムロールは、巻き姿が悪いという問題があった。フィルムロールの外観が悪く、製品表面に肌写り(コアやゴミが原因となって生じるフィルム面転写状の欠点がフィルムロール表層部まで続いている)、ツブ(製品内層に混入した異物、あるいはシワなどにより突起状になった欠点がフィルムロール表層部まで続いている)などの欠点が発生していた。
【0006】
特許文献1、2には帯電防止性を付与してゴミ、埃の吸着を防止して巻き姿、外観不良を改良しようという方法が開示されているが、改善に対して十分ではなかった。また、特許文献3には、機械的な加工を施すことなく、非晶性と高結晶性のポリ乳酸を成形前にコンパウンド化することにより梨地フィルムをつくり外観を改良することが記載されている。この方法では、ヘーズが悪化したり、梨地のムラが生じて満足できるフィルムロールは得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−182887号公報
【特許文献2】特開2002−012687号公報
【特許文献3】特開2006−124446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、巻き姿、外観不良を改良して、透明で包装用フィルムとして好適なポリ乳酸系フィルムロールに関するものであり、更に詳しくは、フィルム面転写状の欠点、突起状の欠点のないポリ乳酸系フィルムロールを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下のいずれかである。
1)平均表面粗さが4.0μm以下のコアにフィルムを巻いたフィルムロールであり、フィルムのヘーズが1%を越え10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系フィルムロール。
2)フィルムの面配向度ΔPが0以上0.0004以下であることを特徴とする前記1)に記載のポリ乳酸系フィルムロール。
3)フィルム両面ともに、フィルムの平均表面粗さSRaが0.03μm以上0.10μm以下であり、かつ、動摩擦係数が0.28以上0.40以下であることを特徴とする前記1)または2)に記載のポリ乳酸系フィルムロール。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ポリ乳酸系フィルムを巻くコアの表面粗さを規定したので、コアから発生するフィルム面の凹凸がなくなり、透明なフィルムを、外観不良なく、巻き姿良好に巻いたフィルムロールを提供することができる。また、フィルムの平均表面粗さと動摩擦係数を特定の範囲にすることによって外観不良なく、巻き姿を向上させたフィルムロールを提供することができる。さらに、厚みと厚みムラを制御することによって、透明で、包装用フィルムとして優れたフィルムロールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、平均表面粗さが4.0μm以下のコアにフィルムを巻いたフィルムロールであり、フィルムのヘーズが1%を越え10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系フィルムロールである。本発明について、以下に具体的に説明する。
【0013】
本発明のポリ乳酸系フィルムロールを構成するポリ乳酸系フィルムは、ポリ乳酸系フィルムの全成分100質量%に対して50質量%以上100質量%以下がポリ乳酸系樹脂からなるフィルムである。本発明のポリ乳酸系フィルムは、好ましくはポリ乳酸系フィルムの全成分100質量%に対してポリ乳酸系樹脂が60質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくはポリ乳酸系樹脂が70質量%以上100質量%以下である。
【0014】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、適度な製膜、延伸適性および実用的な機械特性を満足させるため、5万〜50万であることが好ましく、より好ましくは10万〜25万である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0015】
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として得ることができる構造を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0016】
かかる他の共重合成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。ポリ乳酸系樹脂における、上記他の共重合成分の共重合量は、相溶性を有し、フィルムにした時の透明性を損なわない範囲であることが好ましく、ポリ乳酸系樹脂の全単量体成分100モル%に対し、0〜30モル%であることが好ましい。
【0017】
また本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムは、ポリ乳酸系フィルムの全成分100質量%に対してポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステルを5質量%以上30質量%以下含むことが好ましい。ポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステルを含むことにより、包装用フィルムとした時に十分なヒートシール性を得ることができるために好ましい。
【0018】
ポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、あるいはエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオールとコハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸よりなる脂肪族ポリエステル、さらにはポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)などの脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合体などが挙げられる。
【0019】
なお、本発明のポリ乳酸系フィルムロールは包装用フィルムとして好適に使用可能であるが、包装用フィルムとしてさらに好ましい態様とするため、フィルムがヒートシール性を有することが好ましい。そのためポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステルとしては、特にヒートシール性の効果が大きい樹脂である、ポリブチレンサクシネート・アジペート系樹脂が好ましく用いられる。
【0020】
本発明のポリ乳酸系フィルムロールは、平均表面粗さRaが4.0μm以下のコアを使用してフィルムを巻くことが重要である。平均表面粗さRaが4.0μmを越えたコアを使用すると、コアの凹凸が原因となって、フィルム面転写状欠点、突起状欠点が発生する。これらの欠点は、一旦フィルム面に発生すると、消えることなくコアの周期で連続的に発生し、製品の表層まで続き、製品であるポリ乳酸系フィルムロールの巻き姿、外観不良となる。コアの平均表面粗さRaは、より好ましくは、3.8μm以下である。コアの平均表面粗さRaは小さいほど好ましいが、平均表面粗さRaを0μmとすることは困難であり、コアの平均表面粗さRaの現実的な下限値は0.1μm程度と思われる。
【0021】
また、コアにフィルムロールを巻いて1回だけ使用する場合は問題ないが、コアを繰り返し使用する場合には、コアの平均表面粗さRa、コアの最大高さRyが変化する場合がある。そのためコアの最大高さRyは、繰り返しの使用によって大きな変化がないように小さいことが好ましく、具体的には30μm以下が好ましい。コアの最大高さRyについても小さいほど好ましいが、最大高さRyを0μmとすることは困難であり、現実的な下限値は0.1μm程度と思われる。
【0022】
製品のフィルムロール表層に現れる面転写状欠点の大きさは、1mm以上30mm以下の大きさが多く、馬蹄形状、くぼみ状、亀甲状、楕円状などいろいろな形が発生しうる。高さや深さも、0.1mmから2mmまでさまざまである。また、突起状欠点は、0.1mmφ以上5mmφ以下の大きさが多く、円形状である。高さは、0.1mmから3mmまでさまざまである。
【0023】
コアとは、フィルムを巻き取る時に使う心棒であり、紙管、樹脂含浸紙管、金属コア(鉄、
SUS、アルミなど)、プラスチックコア(FWP、ベークライト、ポリ塩化ビニルなど)が考えられるが、コスト面から紙管、樹脂含浸紙管が好ましい。
【0024】
本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムの好適な製膜方法は、特に限定されない。Tダイを用いて押し出した無配向フィルムロールでも、縦方向および横方向に二軸延伸されたフィルムロールでもよい。また、円形ダイを用いてインフレーション法で製膜された無配向フィルムロールであっても、ブローによって配向されたフィルムであってもよい。特に、好ましいのは、インフレーション法で製膜した無配向フィルムロールに本発明を適用する場合である。なお、本発明でいう無配向フィルムとは、面配向度ΔP(特開2003−155358号公報の評価方法により測定)が0以上0.0004以下のものを意味する。
【0025】
無配向フィルムは、配向フィルムと比べてフィルム表面が柔らかいため、面転写状欠点、突起状欠点が発生しやすいが、前述のように平均表面粗さを4.0μm以下に制御したコアを用いた本発明のフィルムロールとすることで、無配向フィルムのフィルムロールであっても前記欠点を抑制することができるので、本発明は無配向フィルムに適用すると効果的である。また無配向フィルムにおいて、インフレーション法は、Tダイ法に比べて厚みムラ調整がしにくく、厚みムラが悪いため、面転写状欠点が発生しやすいが、前述のように平均表面粗さを4.0μm以下に制御したコアを用いた本発明のフィルムロールとすることで、インフレーション法により得られたフィルムのフィルムロールであっても前記欠点を抑制することができるので、本発明はインフレーション法により得られたフィルムに適用すると特に効果的である。
【0026】
本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムの厚みムラは、製品としてフィルムロールにした時の巻き姿、外観と関連しており、平均厚み±15%の範囲に抑えることが好ましい。この範囲を外れると、フィルム面転写状欠点が発生しやすくなる。より好ましくは、平均厚み±13.5%である。
【0027】
本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムの厚みは、5μm以上150μm以下の範囲であることが好ましく、この範囲より小さいとシワが発生して外観不良になり、この範囲より大きいとフィルムの腰が強くなってすべりが改善され外観が良くなる。より好ましくは10〜120μmの範囲である。
【0028】
本発明のポリ乳酸系フィルムロールの巻き張力は、5.0kg/m以上10.0kg/m以下の範囲が好ましく、この範囲より小さいと巻きが軟らかく巻きズレを発生しやすい。この範囲より大きいとフィルムが蛇行したり、シワが混入しやすくなる。より好ましくは、5.5kg/m以上9.0kg/m以下の範囲である。
【0029】
また、本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムのヘーズは、1%を越え10%以下であることが重要である。この範囲より大きいと、包装材料用途として透明性が不十分であり、実用化に際し好ましくない。またこの範囲より小さいと、フィルムに傷がつきやすく包装用フィルムにした時に外観が悪くなってしまう。なお、更に好ましいヘーズの範囲は、4%を越え9%以下である。
【0030】
ヘーズを1%を越え10%以下の範囲に保つためには、無機粒子や有機粒子を必要に応じて含有させることで制御可能である。無機粒子としては、シリカ等の酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の各種硫酸塩、カオリン、タルク等の各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の各種酸化物、フッ化リチウム等の各種塩等からなる微粒子を使用する事ができる。また、有機粒子としては、シュウ酸カルシウムや、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などからなる微粒子が使用できる。架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体からなる微粒子が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子が使用できる。
【0031】
無機粒子、有機粒子ともその平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは、2〜8μmの粒子を添加すると、ヘーズを上記範囲(1%を超え10%以下)に制御する際において効果的である。またヘーズを上記範囲(1%を越え10%以下)に制御する際は、無機粒子、有機粒子とも、ポリ乳酸系フィルムと屈折率が近いものを用いることが好ましい。平均粒径が0.1〜20μmの粒子は、ポリ乳酸系フィルムの全成分100質量%において0.2〜0.8質量%含有することが好ましい。
【0032】
また、ポリ乳酸系樹脂、ポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステル、粒子の3成分系における好ましい量関係は、ポリ乳酸樹脂70.8〜85.2質量%、ポリ乳酸系樹脂以外の脂肪族ポリエステルおよび/または脂肪族芳香族ポリエステル29〜14質量%、粒子0.2〜0.8質量%である。なお、本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムには、さらに可塑剤などの添加剤を含有させることも可能である。
【0033】
本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムは、フィルム両面ともにフィルムの平均表面粗さSRaが0.03μm以上0.10μm以下であることが好ましい。この範囲より小さいとフィルムにシワが発生するため、フィルム面転写状欠点、突起状欠点が発生しやすくなる。またこの範囲より大きいとフィルムが巻きズレを発生しやすくなり、包装用フィルムとして使用する際に障害となることがある。更に好ましくは、0.04μm以上0.09μm以下である。
【0034】
平均表面粗さSRaに加えて、本発明のポリ乳酸系フィルムロール中のフィルムの動摩擦係数は、フィルム両面ともに0.28以上0.40以下であることが好ましい。これより小さいと、巻きズレ、蛇行を起こしやすくなり、これより大きいとフィルムにシワが発生し、フィルムロールにした時にフィルム面転写状欠点、突起状欠点を発生しやすくなる。更に好ましくは、0.30以上0.38以下である。
【0035】
平均表面粗さSRaを0.03μm以上0.10μm以下、かつ、動摩擦係数を0.28以上0.40以下に保つためには、無機粒子や有機粒子の添加量を調整することで制御可能である。特に、平均粒径が0.1〜20μmの粒子を、ポリ乳酸系フィルムの全成分100質量%において0.2〜0.8質量%含有する方法が好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0037】
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)コアの平均表面粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)
小坂研究所製の2次元粗さ計サーフコーダーSE1700を用い以下の条件で測定した。
【0038】
触針半径:2μm 、送り速さ:1.000mm/sec、フィルタ:ガウス
カットオフ: 8.000μm 評価長さ:16.00mm
円筒形側面の異なる位置を3回測定し、3回の平均表面粗さRa、最大高さRyの平均値を用いた。
(2)フィルムのヘーズ
JIS−K−7105(1981年)に準じて測定した。測定回数は5回とし、その平均値を用いた。
(3)フィルムの平均表面粗さ(SRa)
小坂研究所製の触針式3次元粗さ計ET4000AKを用い、以下の条件で両方の面を測定した。
【0039】
測定力:100N、Xピッチ:1.00μm、Yピッチ:5μm、Z測定倍率:20000倍
X送り速さ:0.1mm/sec、低域カット:0.25mm、高域カット:R+W
レベリング:未処理
測定は2回行い、平均値を用いた。
(4)動摩擦係数
JIS−K−7125(1999年)に準じ東洋テスター工業社製スリップテスターで測定した。2枚のフィルムを重ねて荷重200gをかけ、すべり出した後の安定領域での抵抗値より次式で求めた。
【0040】
動摩擦係数μd=抵抗値/荷重
測定面はA面/A面(A面とA面を重ねた態様)、B面/B面(B面とB面を重ねた態様)をそれぞれ5回測定し、その平均値を用いた。
(5)フィルム面転写状欠点、突起状欠点の評価
目視で製品ロールの外観を全周、全面積見て、フィルム面転写状欠点、突起状欠点のそれぞれの個数をカウントし比較評価した。3個以下が目安である。
(6)フィルムの厚みおよび厚みムラ
厚みをフィルムロール全幅に対して、マイクロゲージで10点測定し、厚みの平均値t(μm)を求める。
【0041】
次に電子マイクロメーターで幅方向の厚みムラを測定し、厚みムラの最大値と最小値の差R(μm)を求める。R/2を厚みの平均値tで割ってパーセント表示し、次式で示した。
【0042】
厚みムラ(%)=±100R/(2t)
(7)平均粒径
ポリ乳酸系フィルム表面にPt−Pdをイオンスパッタしてサンプルを調整し、日立製作所社製走査電子顕微鏡S−800を用い、フィルム表面の観察、写真撮影を行った。その写真を分析して10個の粒子について各々の最大直径を求め、これを平均することにより平均粒径を測定した。
(8)包装用フィルムの総合評価
フィルムロールからトタニ技研工業(株)製の溶断シール製袋機HK−40Vを用いて、製袋を行い、袋状の包装用フィルムを作製した。包装用フィルムの外観から、下記の基準で判定を実施した。
○ :透明性包装フィルムとして十分な外観を有している。
△ :透明性包装フィルムとして外観がやや不良である。
× :透明性包装フィルムとして外観が劣り適用できない。
(9)面配向度ΔP
王子計測機器(株)社製自動複屈折計KOBRA−21ADHを用いて、フィルム状サンプルの3主軸方向に関する複屈折Δx、Δy、Δzを求め、Δx=γ−β、Δy=γ−α、Δz=α−β(γ≧β、αはフィルムの厚さ方向の屈折率)の関係より面配向度ΔPを下記の式から求めた。
ΔP={(γ+β)/2}−α=(Δy−Δz)/2
[使用したポリ乳酸系樹脂]
重量平均分子量=220,000、D体含有量=5.0%、融点=150℃
[使用した脂肪族ポリエステル樹脂]
ポリブチレンサクシネート・アジペート系樹脂(三菱化学社製“GSPla”)
[使用した無機粒子]
炭酸カルシウム、平均粒径=4.5μm
(実施例1)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃でTダイを用いて溶融押出した。厚み100μmのポリ乳酸系フィルムロール1000mを、平均表面粗さ3.6μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点、突起状欠点は、全くなかった。
【0043】
このフィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、包装用フィルムの総合評価を実施し、実施結果を表1に示した。透明性包装フィルムとして良好な結果を示した。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2、3)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃で溶融押出した。リングダイを用いてインフレーション法(ブロー比2.2)で製膜し、厚み25μmのポリ乳酸系フィルムロール2500mを、平均表面粗さ3.8μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点、突起状欠点は、全くなかった。
【0046】
ポリ乳酸系フィルムロール2500mを、平均表面粗さ3.8μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点、突起状欠点は、全くなかった。
【0047】
このフィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、包装用フィルムの総合評価を実施した。実施結果を表1に示すように、透明性包装フィルムとして良好な結果を示した。
(実施例4)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃でTダイを用いて溶融押出した。逐次二軸延伸法で縦方向に80℃で3.0倍、横方向に80℃で3.4倍延伸し、140℃で熱処理を行い、厚み25μmのポリ乳酸系フィルムロール2500mを作り、平均表面粗さ3.5μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点、突起状欠点は、それぞれ1個であった。
【0048】
このフィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、包装用フィルムの総合評価を実施し、実施結果を表1に示した。透明性包装フィルムとして良好な結果を示した。
(実施例5,6)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃で溶融押出した。リングダイを用いてインフレーション法(ブロー比3.0)で製膜
し、厚み25μmのポリ乳酸系フィルムロール2500mを、平均表面粗さ3.0μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、実施例5はフィルム面転写状欠点3個、実施例6は突起状欠点が3個あった。
【0049】
このポリ乳酸系フィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、
包装用フィルムの総合評価を実施した。
【0050】
実施結果を表1に示すように、実施例5は動摩擦係数が、実施例6は動摩擦係数とフィルムの平均表面粗さが、本発明の好ましい範囲から外れたものであり、総合評価は、外観がやや不良であったが、透明性包装フィルムとして十分に適用可能なものが得られた。
(実施例7)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃で溶融押出した。リングダイを用いてインフレーション法(ブロー比2.5)で製膜
し、厚み30μmのポリ乳酸系フィルムロール2500mを、平均表面粗さ3.8μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点が3個であった。
【0051】
このポリ乳酸系フィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、包装用フィルムの総合評価を実施した。
【0052】
実施結果を表1に示すように、厚みムラが本発明の好ましい範囲から外れたものであり、総合評価は、外観がやや不良であったが、透明性包装フィルムとして十分に適用可能なものが得られた。
(比較例1)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃で溶融押出した。リングダイを用いてインフレーション法(ブロー比2.0)で製膜し厚み25μmのポリ乳酸系フィルムロール2500mを、平均表面粗さ8.0μmの
紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点が5個、突起状欠点が4個であった。
【0053】
このポリ乳酸系フィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、包装用フィルムの総合評価を実施した。
【0054】
実施結果を表1に示すように、外観が劣るために、透明性包装フィルムとして適用できなかった。
(比較例2)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃で溶融押出した。リングダイを用いてインフレーション法で、フ゛ロー比を3.0に調整
しながら安定させ、厚み25μmのポリ乳酸系フィルムロール2500mを、平均表面粗さ7.5μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点が8個、突起状欠点が6個であった。
【0055】
このポリ乳酸系フィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、
包装用フィルムの総合評価を実施した。
【0056】
実施結果を表1に示すように、外観が劣るために、透明性包装フィルムとして適用できなかった。
(比較例3)
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルと無機粒子を表1記載の割合で混合したチップを220℃でTダイを用いて溶融押出した。逐次二軸延伸法で縦方向に80℃で3.0倍、横方向に80℃で3.4倍延伸し、140℃で熱処理を行い、厚み25μmのポリ乳酸系フィルムロール2500mを作り、平均表面粗さ7.5μmの紙管を用いて巻き取った。フィルムロールの外観検査では、フィルム面転写状欠点は0個で、突起状欠点は、2個であった。
【0057】
このポリ乳酸系フィルムロールを溶断シール製袋機にかけ、サイドシール袋を作製し、包装用フィルムの総合評価を実施した。
【0058】
実施結果を表1に示すように、外観が劣るために、透明性包装フィルムとして適用できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均表面粗さが4.0μm以下のコアにフィルムを巻いたフィルムロールであり、フィルムのヘーズが1%を越え10%以下であることを特徴とするポリ乳酸系フィルムロール。
【請求項2】
フィルムの面配向度ΔPが0以上0.0004以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系フィルムロール。
【請求項3】
フィルム両面ともに、フィルムの平均表面粗さSRaが0.03μm以上0.10μm以下であり、かつ、動摩擦係数が0.28以上0.40以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリ乳酸系フィルムロール。

【公開番号】特開2010−174085(P2010−174085A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16313(P2009−16313)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】