説明

ポリ乳酸系フィルム

【課題】
生分解性を損なうことなくガスバリア性特に水蒸気バリア性に優れ、包装用フィルムとして有用なポリ乳酸系フィルムおよびそれを用いた積層フィルム、蒸着フィルムおよび包装体を提供することである。
【解決手段】
層Aを少なくとも最表層に有するポリ乳酸系フィルムであって、
層Aが、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して90質量%以上100質量%以下含有し、
層Aの広角X線回折法(反射法、2θ−θスキャン法)にて測定される結晶子サイズが、10〜20nmであり、
層Aの密度が、1.2〜1.3g/cmであることを特徴とする、ポリ乳酸系フィルム、によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ乳酸系フィルムに関する。特に詳しくは、生分解性を損なうことなくガスバリア性、特に水蒸気バリア性に優れ、包装用フィルムとして有用なポリ乳酸系フィルムおよびそれを用いた蒸着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリ乳酸を始めとする脂肪族ポリエステルフィルムは自然環境に廃棄された際に分解すること、例えば土壌中で自然に加水分解した後に微生物によって無害な分解物となることを特徴として開発された。このような生分解性フィルムとしては、脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン、多糖類等を原料とするフィルムが知られている。
【0003】
これらの生分解性フィルムの中でもポリ乳酸系フィルムは、優れた生分解性を有しており、フィルム、シートやボトルなどの容器等への応用が始まっている。フィルムの形成方法については、公知の技術が用いられている(特許文献1〜3参照)。
【0004】
一方、食品包装材料としてしてのフィルムは、多くの場合、酸素、湿気などから内容物を保護するために、ガスバリア性が求められる。しかしながら、ポリ乳酸系フィルムは、他の樹脂フィルムと比較してもガスバリア性に乏しく、包装材料としての適用範囲が限られていた。このような脂肪族ポリエステルのバリア性改善の方法としては、包装材を形成する際にこれらガスバリア性の良いフィルムと張り合わせる方法やコーティング等によりガスバリア層を設ける方法が挙げられる(特許文献4〜5参照)。しかし、このような構成は、後加工によって目的とする機能性を付与することは可能であるが、フィルム製造に加え後加工の工程を必要とするため製造コストの点において優位とは言えず、また、製品の差異化のため基材であるフィルムそのものの改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平5−508819号公報
【特許文献2】特開平6−23836号公報
【特許文献3】特開平7−205278号公報
【特許文献4】特開2000−177072号公報
【特許文献5】特開2004−256570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来技術の問題を解決するために、生分解性とガスバリア性、特に水蒸気バリア性を両立したポリ乳酸系フィルムおよびそれを用いた蒸着フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の本発明を完成した。
1)層Aを少なくとも片面の最表層に有するポリ乳酸系フィルムであって、
層Aが、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して90質量%以上100質量%以下含有し、
層Aの広角X線回折法(反射法、2θ−θスキャン法)にて測定される結晶子サイズが、10〜20nmであり、
層Aの密度が、1.2〜1.3g/cmであることを特徴とする、ポリ乳酸系フィルム。
2)フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率が、いずれも1.45〜1.47の範囲であることを特徴とする前記1)に記載のポリ乳酸系フィルム。
3)面配向係数が0.011〜0.014であることを特徴とする前記1)または2)に記載のポリ乳酸系フィルム。
4)層Aが、層Aの全成分100質量%に対してラクチドを0質量%以上0.1質量%以下含有することを特徴とする、前記1)から3)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
5)2層又は3層からなる積層構成であることを特徴とする、前記1)〜4)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
6)結晶化度が15〜30%であることを特徴とする前記1)〜5)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
7) 前記1)〜6)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルムの層Aの側に、蒸着層を有することを特徴とする、蒸着フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリ乳酸系フィルムおよびそれを用いた蒸着フィルムは、生分解性とガスバリア性、特に水蒸気バリア性を両立することが可能であり、包装材料用途として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、層Aを少なくとも片面の最表層に有するポリ乳酸系フィルムであって、層Aが、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して90質量%以上100質量%以下含有し、層Aの広角X線回折法(反射法、2θ−θスキャン法)にて測定される結晶子サイズが、10〜20nmであり、層Aの密度が、1.2〜1.3g/cmであることを特徴とする。以下、本発明のポリ乳酸系フィルムの詳細を説明する。
【0010】
本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aは、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して90質量%以上100質量%以下含有することが重要であるが、ここでL−乳酸由来の成分が主成分とは、ポリ乳酸系樹脂を構成する全モノマー由来の成分を100モル%とした際に、L−乳酸由来の成分が70モル%以上100モル%以下である態様を意味する。ポリ乳酸系樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂を構成する全モノマー由来の成分100モル%において、L−乳酸由来の成分が90モル%以上100モル%以下であることが好ましく、より好ましくはポリ乳酸系樹脂を構成する全てのモノマー由来の成分がL−乳酸由来の成分(つまり、L−乳酸由来の成分が100モル%)からなるホモポリ乳酸が特に好ましく用いられる。
【0011】
層Aに含まれるL−乳酸単位が主成分のポリ乳酸系樹脂は、乳酸由来の成分が70モル%以上100モル%以下である態様であるので、乳酸以外の他の成分との共重合体を使用することができる。他の成分である他のヒドロキシカルボン酸由来の成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等に由来する成分が挙げられる。
【0012】
また本発明に用いるポリ乳酸系樹脂は結晶性を有することが好ましい。ポリ乳酸系樹脂が結晶性を有するとは、該ポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、適当な温度範囲で示差走査熱量分析(DSC)測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解熱が観測されることを言う。本発明に用いるポリ乳酸系樹脂が結晶性を有する場合には、該ポリ乳酸系樹脂を含んだ組成物をフィルムとした際の耐ブロッキング性の付与に好適である。通常、ホモポリ乳酸は、光学純度が高いほど融点や結晶性が高い。ポリ乳酸の融点や結晶性は、分子量や重合時に使用する触媒の影響を受けるが、通常、ポリ乳酸系樹脂をを構成する全モノマー由来の成分100モル%において、L−乳酸由来の成分が99モル%以上のホモポリ乳酸系樹脂では、融点が約170℃程度であり、結晶性も比較的高い。また、光学純度が低くなるに従って融点や結晶性が低下し、例えばポリ乳酸系樹脂を構成する全モノマー由来の成分100モル%において、L−乳酸由来の成分の量が94%のホモポリ乳酸では融点は約145℃程度であり、L−乳酸由来の成分量が88モル%のホモポリ乳酸では融点は約120℃程度である。L−乳酸由来の成分が85%よりもさらに低いホモポリ乳酸では、明確な融点は示さず非結晶性となる。
【0013】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂は、フィルムとして使用する用途によっては、必要な機能の付与あるいは向上を目的として、結晶性を有するホモポリ乳酸と非晶性のホモポリ乳酸を混合することも可能である。この場合、非晶性のホモポリ乳酸の割合は本発明の効果を損ねない範囲で決定すれば良い。また、本発明であるポリ乳酸系フィルムとした際に比較的高い耐熱性を付与したい場合は、使用するポリ乳酸系樹脂のうち少なくとも1種にL−乳酸由来の成分量が97モル%以上のポリ乳酸を含むことが好ましい。
【0014】
本発明に用いるポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは8万〜40万、さらに好ましくは10万〜30万である。なお、ここでいう質量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)でクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0015】
ポリ乳酸系樹脂の質量平均分子量を少なくとも5万とすることで、該ポリ乳酸系樹脂を含んだ組成物を本発明であるポリ乳酸系フィルムに加工した際には、機械的物性が優れたものとすることができる。
【0016】
本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aを構成するポリ乳酸系樹脂としては、Nature Works製4032D(D体量=1.4%)、4042D(D体量=4.25%)、4050D(D体量=5.5%)などが挙げられる。これらのなかでも結晶性が高い4032Dが好ましく用いられる。また、層Aの延伸性を改良するために、4032DとNature Works製4060D(D体量=12%)などを適宜ブレンドしても構わない。
【0017】
本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aには、経済性などの観点から、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリ乳酸系フィルムを製造する際に生じた屑フィルムや、他のフィルムを製造する際に生じた屑フィルムをブレンドして使用してもかまわない。
【0018】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、層Aを少なくとも最表層に有するポリ乳酸系フィルムであって、層Aが、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して90質量%以上100質量%以下含有することが重要である。層Aの全成分100質量%中の、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂の含有量が90質量%未満であると、包装用途において目的とする生分解性を有するフィルムとすることができなくなる問題がある。そのため層Aが、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して90質量%以上100質量%以下含有することが重要である。本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aは、より好ましくはL−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して95質量%以上100質量%以下含有する。
【0019】
前述のように、L−乳酸由来の成分量が高いほど融点や結晶性が高くなり、L−乳酸由来の成分量が99%以上のホモポリ乳酸では融点が約170℃程度であり結晶性も比較的高い。このようなポリマを層Aに用いて本発明のポリ乳酸系フィルムを製造し包装材料用途に適用した場合、包装材料として好適な機械特性(破断強度、伸度など)や熱特性(熱収縮率など)を得ることが可能となる。しかし、例えばL−乳酸由来の成分量が94%のホモポリ乳酸では融点は約145℃程度であり、このようなポリマを用いた場合、包装材料として必要な上記機械特性や熱特性を得ることが難しくなる。また、L−乳酸由来の成分量が高いほど融点や結晶性が高くなるが、L−乳酸由来の成分量を100とすることは極めて困難である。
【0020】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、前述の層Aを、少なくとも片面の最表層に有することが重要である。層Aは少なくとも片面の最表層に存在すればよく、そのため層Aの層数は1層以上であれば限定されないが、好ましくは2層以上である。
【0021】
さらに本発明のポリ乳酸系フィルムは、少なくとも片面の最表層に層Aを有することが重要であり、層Aのみの単層でも構わないが、層Aとは異なるその他の層をさらに有する積層構成としてもよい。本発明のポリ乳酸系フィルムが積層構成である場合には、2層又は3層からなる積層構成であることが好ましい。本発明のポリ乳酸系フィルムが2層構成の場合には、片面の最表層に層Aを有し、もう一方の層は層A以外の他の層であることが好ましい。本発明のポリ乳酸系フィルムが3層構成の場合には、少なくとも片面の最表層が層Aであることが好ましい。
【0022】
本発明のポリ乳酸系フィルムにおいては、包装材料として好適なフィルムを提供することを目的としているが、このようなフィルムを製造しようとした場合、目標とする機械特性や熱特性を得ることを目的とした層と、取り扱い性、加工性を向上させるために添加剤 例えば、滑剤として無機粒子および/または有機粒子を添加したり、可塑剤、熱安定剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を加えた層を分けて設計し、共押出してその目的とする性能を得ることが工業的に優位である。これらの点より、本発明のポリ乳酸系フィルムの層数は層Aを含み1層以上であれば限定されないが、好ましくは2層以上である。
【0023】
本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aは、該層Aの広角X線回折法(反射法、2θ−θスキャン法)にて測定される結晶子サイズが、10〜20nmであることが重要である。結晶子サイズが10nmより小さいと配向が十分成されていないため、本発明にて目的とする包装材料用途に適した機械特性を得ることが難しくなる。その一方、結晶子サイズが20nmより大きくなると、結晶が成長しすぎて結晶の廻りにボイドが生じることとなり、ガスバリア性を低下させるため好ましくない。このため、本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aでは、結晶子サイズが、10〜20nmであることが重要であり、より好ましくは、12〜17nm、更に好ましくは13〜16nmである。
【0024】
本発明のフィルムの層Aの広角X線回折法にて測定される結晶子サイズを10〜20nmの範囲にするためには、当該フィルムを二軸延伸して製造する際に、延伸工程の延伸温度、延伸倍率、熱固定工程での熱処理温度などにより結晶子サイズを制御する方法が好ましく用いられる。
【0025】
縦延伸および横延伸においては、一度に目的の倍率で延伸しても、複数段階を設けた多段延伸により延伸しても良い。熱固定、緩和処理についても同様に一度に目的の熱処理、緩和処理としても、複数段階を設けた熱処理、緩和処理としても良い。
【0026】
本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aの密度は、1.2〜1.3g/cmであることが重要である。密度が1.2g/cmを下回るとガスバリア性が悪化するために好ましくない。一方、密度が1.3g/cmを超えると、本発明にて対象とする包装用途に用いるには適さない、例えば、高コストである、特殊な製法を用いる必要が生じ、アメリカ食品医薬品局やガイドライン化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律といったものに適合しなくなるなど、問題が生じるため好ましくない。本発明のポリ乳酸系フィルムにおける層Aの密度は、前記の範囲で有れば問題ないが、より好ましくは1.22〜1.28g/cm、更に好ましくは1.24〜1.26g/cmの範囲である。
【0027】
本発明のフィルムの層Aの密度を1.2〜1.3g/cmの範囲にするためには、当該フィルムを二軸延伸して製造する際に、延伸工程の延伸温度、延伸倍率、熱固定工程での熱処理温度などにより密度を制御する方法が好ましく用いられる。
【0028】
本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aは、層A中に含まれるラクチドの量が、層Aの全成分100質量%に対して0質量%以上0.1質量%以下であることが好ましい。層A中のラクチドの含有量が、層Aの全成分に対して0.1質量%を超えると、ポリ乳酸系フィルムを包装用途として使用したときのガスバリア性、特に水蒸気バリア性に、十分な特性のものとすることが困難となる。ポリ乳酸系フィルムの層A中のラクチド含有量は、より好ましくは層Aの全成分100質量%に対して0質量%以上0.04質量%以下、更に好ましくは0質量%以上0.02質量%以下、最も好ましくは0質量%以上0.01質量%以下である。
【0029】
本発明のポリ乳酸系フィルムの層A中のラクチド含有量を、層Aの全成分100質量%に対して0質量%以上0.1質量%以下に制御するための方法としては、ポリ乳酸系樹脂の重合段階にてラクチドが少なくなるよう触媒や重合条件を調整する方法や、溶融押出工程において溶融温度を低く調整する方法、樹脂を膜状にした後に高温で熱処理しラクチドを昇華させる方法などが挙げられる。このうち、重合段階にてラクチドを低減する方法を用いた場合、重合反応が遅くなるため生産性を下げること、重合段階で低減させたとしても後の溶融押出工程にてラクチドが生成されることなどから、その効果としては限定的である。溶融押出工程において溶融温度を低く調整する方法は、溶融温度が高いとラクチドの生成が多くなるため当該工程でのラクチド生成を抑制するために有効であるが、融点近くまで溶融温度を下げようとした場合、溶融粘度が大きくなるため剪断発熱が生じてポリマ温度が上昇するためその調整範囲には限度がある。また、押出機にベント孔を設け、押出工程にて生成されたラクチドの排出を行う場合、一時的にはラクチドの含有量を減じることができるが、ラクチドの生成は平衡反応であるため排出により減じた分はポリマ中で新たに生成されてしまい、その効果は限定的である。一方、ポリ乳酸系樹脂を膜状にした後に高温で熱処理しラクチドを昇華させる方法は、ポリ乳酸系フィルムの層A中に含まれるラクチドの昇華によりラクチドの含有量が減少するうえに、さらに溶融ポリマのように平衡反応による新たなラクチドの生成がないため、その効果は大きい。
【0030】
よって本発明において好ましく用いることができる方法は、膜状にした後に高温で熱処理しラクチドを昇華させる方法であるが、これに重合段階でラクチドを低減する方法や重合した原料をペレタイズする工程にてラクチドの含有量を減じる方法、溶融押出工程において溶融温度を低く調整する方法、キャスト工程以降熱処理工程前までにラクチドの含有量を減じる方法などを組み合わせても良い。当該熱処理を行う工程は、ポリ乳酸樹脂を膜状にした後であれば、そのタイミングは特に限定されるものではないが、2軸延伸フィルムを製造する場合、テンター横延伸後の熱処理ゾーンにて熱処理を行うことが好ましい。当該熱処理を行う温度はラクチド含有量を低減させるために必要な熱処理温度であることが要求され、好ましくは120℃以上融点未満の範囲、より好ましくは130℃以上融点未満、更に好ましくは140℃以上融点未満、最もこのましくは150℃以上融点未満で熱処理を行うことが好ましい。テンター横延伸後の熱処理ゾーンにて用いる加熱空気は熱交換器やヒーターなどにより目的とする温度まで加熱されていることが必要であるが、当該空気をこれら加熱手段に供する際、テンター外部から空気を取り入れて加熱手段に供しフィルムに吹き付ける方法、テンター内部の空気を加熱手段に供しフィルムに吹き付ける方法、またはその両方を組み合わせて用いる方法のいずれを用いても良い。好ましくは、空気の加熱によるエネルギーロスが製造コストを悪化させない範囲でテンター外部から空気を取り入れて加熱手段に供すとともにテンター内部の空気を加熱手段に供しフィルムに吹き付ける方法である。このように高温での熱処理を行なう場合、フィルムの平面性が悪化して破れなどの生産安定性を損なう条件となるため、縦、横の延伸倍率や熱処理後の弛緩処理条件、熱処理ゾーンで吹き付ける熱風の風速、テンター〜巻き取り工程間のドローなどを適宜調整することが望ましい。
【0031】
また、本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aやその他の層には、取り扱い性、加工性を向上させるために、滑剤として平均粒子径0.01〜10μmの公知の無機粒子および/または有機粒子を、各層の全成分100質量%に対して0.01〜3質量%含有することが好ましい。
【0032】
また本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aや他の層には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、取扱性、加工性、物性を調整する目的で、可塑剤、熱安定剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0033】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、包装材料として適した機械特性、熱特性を確保するために二軸延伸することが好ましい。
【0034】
また本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率が、いずれも1.45〜1.47の範囲であることが好ましい。従来の技術 例えば特開2004−051959号公報の明細書〔0015〕段落などでは、フィルム破れによる生産性低下が起こらない範囲では一般に屈折率は1.475以下とすることは困難であると記されているが、本発明においては、屈折率が1.45〜1.47の範囲を外れるとガスバリア性 特に水蒸気バリア性が悪化する場合があるため、本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率が、いずれも1.45〜1.47の範囲であることが好ましい。
【0035】
本発明のフィルムのフィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率をいずれも1.45〜1.47の範囲にするためには、当該フィルムを二軸延伸して製造する際に、延伸工程の延伸温度、延伸倍率、熱固定工程での熱処理温度などにより屈折率を制御する方法が好ましく用いられる。
【0036】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルムの面配向係数が0.011〜0.014であることが好ましい。面配向係数が0.011未満であると、包装材料用途として使用した際に十分な機械特性、熱特性を確保することが困難となり好ましくない。一方、面配向係数が0.014よりも大きくなると、ガスバリア性 特に水蒸気バリア性が悪化するため好ましくない。このため、本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルムの面配向係数が0.011〜0.014であることが好ましい。
【0037】
本発明のフィルムの面配向係数を0.011〜0.014の範囲にするためには、当該フィルムを二軸延伸して製造する際に、延伸工程の延伸温度、延伸倍率、熱固定工程での熱処理温度などにより面配向係数を制御する方法が好ましく用いられる。
【0038】
本発明のポリ乳酸系フィルムの厚みは、特に制限はないが、包装材料に加工した際のハンドリング性、蒸着加工適性の観点より、5〜100μmである事が好ましく、より好ましくは8〜50μm、さらに好ましくは10〜25μmである。
【0039】
また本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルム全厚100%に対して、層Aの厚みの合計(ここで合計とは、ポリ乳酸系フィルム中に層Aが1層のみの場合には、該1層の厚みを意味し、ポリ乳酸系フィルム中に層Aが2層以上存在する場合には、全ての層Aの合計の厚みを意味する。)が60%以上100%以下であることが好ましい。このようにすることで包装材料として好適な機械特性(破断強度、伸度など)や熱特性(熱収縮率など)を得ることが可能となり好ましい。しかし、例えば層Aの厚みの合計が60%未満となった場合、L−乳酸由来の成分量が低いポリマを機械特性(破断強度、伸度など)や熱特性(熱収縮率など)を決定する層に供することとなるが、このようなポリマを用いた場合、包装材料として必要な上記機械特性や熱特性を得ることが難しい。これらの点より本発明のポリ乳酸系フィルムは、層Aの厚みの合計が60%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以上100%以下、更に好ましくは、80%以上100%以下である。
【0040】
前述の通り、本発明のポリ乳酸系フィルムは、層Aを少なくとも片面の最表層に有することが重要であり、該層Aを少なくとも片面の最表層に有しさえすれば、層Aのみの単層フィルムも含みえる。本発明のポリ乳酸系フィルムが層A以外の他の層を有する場合には、該他の層としては特に限定されるものではない。
【0041】
なお、本発明のポリ乳酸系フィルムは積層構成をとりえるが、本発明のポリ乳酸系フィルムが積層構成の場合は、共押出による積層構成のものを意味する。そして本発明のポリ乳酸系フィルムに対して、後述するような共押出以外の方法により薄膜層を設けた場合は、これを積層フィルムとする。
【0042】
本発明のポリ乳酸系フィルムを包装材料用として使用する場合には、水蒸気バリア性やヒートシール性を付与し、フィルムの機能を改善するために、本発明のポリ乳酸系フィルムの少なくとも片面に、何らかの薄膜層を設けて積層フィルムとしても良い。
【0043】
薄膜層の形成方法としては、フィルム製造工程でのインラインコーティング、製品ロールを採取した後に後加工として施すオフラインコーティングのいずれも用いることができるが、インラインコーティングとした場合、テンターでの塗剤乾燥が影響して生産速度を上げることができなくなるため生産性改善のネックとなるため好ましくなく、後加工として施すオフラインコーティングが好ましい。
【0044】
更に水蒸気バリア性を改善するためには、本発明のポリ乳酸系フィルムの少なくとも片面にアルミ等の蒸着層を有することが好ましい。本発明のポリ乳酸系フィルムに蒸着層を形成して蒸着フィルムとする場合には、本発明のポリ乳酸系フィルムにおける層Aの表層側に蒸着層を形成して蒸着フィルムとすることが好ましい。
【0045】
なお、水蒸気バリア性を改善するためには、ポリエチレンやポリプロピレンなどの無延伸フィルムを熱接着層として本発明のポリ乳酸系フィルムに積層して積層フィルムとして用いたり、ドライラミネート法、押出ラミネート法などを用いて積層フィルムとすることができるが、これらの方法を採った場合、本発明にて目的とする生分解性を得られなくなるため好ましくない。
【0046】
本発明のポリ乳酸系フィルムを包装材料用として使用する場合には、ヒートシール性を付与するためにエチレン−酢酸ビニル共重合体、芳香族共重合ポリエステルやポリ乳酸系樹脂の無延伸フィルム、非晶のポリ乳酸系樹脂を熱接着層として積層して積層フィルムとして用いられる。これらの積層方法としては、フィルム製膜時に共押出をして得るほか、ラミネートにより得る方法として、ポリウレタン系の接着剤などを用いたドライラミネート法、押出ラミネート法などの方法が用いることができる。本発明の目的からすると、これらヒートシール性を付与する層についても生分解性を持っていることが好ましい。この熱接着層設けるには、その生産性やコストの面からフィルム製膜時に共押出をしても、後加工として施すオフラインコーティングやドライラミネート法、押出ラミネート法などを用いて積層フィルムを得る方法のいずれも用いることができる。
【0047】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの既存の延伸フィルムの製造法により得ることが出来るが、製膜速度を高速に出来ることから逐次二軸延伸法が好ましい。逐次二軸延伸法での本発明のポリ乳酸系フィルムの製造においては、まず真空下で乾燥したポリ乳酸系樹脂チップをブレンドして押出機に供給して溶融ポリマを得た後にフィルタにて濾過し、公知の方法でスリット状の口金よりシート状に溶融押し出し、キャスティングドラムに密着させて冷却固化せしめて未延伸フィルムを得る。フィルムの表層に無機粒子を少なくもしくは多く含有した層を設ける場合は、2台以上の押出機を用いて、口金内または口金の上流で溶融ポリマを合流させ積層未延伸フィルムを得る複合押出が最も好ましい。かかる方法で得た未延伸フィルムを連続して少なくとも一方向に延伸し、更に直交方向に延伸し、熱処理することで、薄膜層の基材との密着性や薄膜層の強靱性を高めることが好ましい。フィルム長手方向の延伸には加熱ロールの周速差を利用したロール延伸が、フィルム幅方向の延伸や二軸延伸後の熱処理には連続クリップを有するテンターを用いることが好ましい。
【0048】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、上記の通り二軸配向していることが好ましい。本発明のフィルムを二軸配向せしめるためには、特に限定されないが、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの公知の二軸延伸法、あるいはそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0049】
以下に、本発明のポリ乳酸系フィルムの製造方法について述べる。
【0050】
押出機(a)から、ポリ乳酸系樹脂を主たる構成成分とする、層Aに用いる樹脂組成物を溶融押出し、フィルターによる異物除去、ギアポンプによる流量適性化を行った後、口金に供給する。複数の層を設ける場合はその目的に応じて別の押出機(複数であってもよい)から、目的に応じた樹脂組成物を溶融押出し、口金上に設置されたフィードブロックにて合流せしめるか、または、同様にして別の流路からマルチマニホールド口金にて積層し口金よりシート状に共押出される。当該多層シートは、エアナイフまたは静電印加などの方式により、キャスティングドラムに密着させ、冷却固化せしめて未延伸シートとする。
【0051】
ここで、ゲルや熱劣化物などの異物による表面荒れを防ぐため、製膜時のフィルターとして平均目開き10〜100μmのステンレス鋼繊維を焼結圧縮したフィルターを使用することが好ましい。また上記ステンレス繊維を焼結圧縮したフィルターの後に、平均目開き10〜60μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターをこの順で連続濾過する、あるいは一つのカプセル中に上記2種類のフィルターを併せ持つ複合フィルターを使用することは、ゲルや熱劣化物を効率良く取り除くことができるため好ましく、製膜エッジや巻き芯部分の再利用が可能となるコストメリットがあり望ましい。
【0052】
次いで、本発明のフィルムを逐次二軸延伸法で製造する場合、該未延伸シートをロールに通して予熱し、引き続き周速差を設けたロール間に通し、縦方向に延伸し、ただちに室温に冷却、引き続き該縦一軸延伸フィルムをテンターに導いて横延伸し、次いで横方向に弛緩を与えつつ、熱固定して巻取る。あるいは、縦方向、横方向を同時に延伸する方法により延伸してもよく、縦方向の延伸、横方向の延伸を複数回数組み合わせて行う方法などにより延伸してもよく、あるいは縦−横延伸後に縦方向および/または横方向に一回以上再延伸を行ってもよい。
【0053】
また、本発明のポリ乳酸系フィルムをテンター式同時二軸延伸法で製造する場合、未延伸シートを一挙に縦・横方向に延伸できるため、粗面化しにくく、表面平滑性の観点から好ましい。また、一挙に縦・横方向に延伸できるため、延伸性が向上し、高倍率延伸が可能になり、高配向化、高ヤング率化が可能となる場合があるので好ましい。
【0054】
本発明のポリ乳酸系フィルムの延伸条件は、少なくとも一方向にTg〜Tg+30℃で延伸することが好ましく、具体的には、縦方向の延伸温度を60〜90℃とすることが好ましく、より好ましくは70℃〜90℃とすることが好ましく、更に好ましくは75〜90℃とすることがフィルムの物性および平面性の点、さらには結晶子サイズを10〜20nmの範囲に制御できる点から好ましい。縦延伸倍率は2.0〜5.0倍が好ましく、より好ましくは2.5〜4.5倍であり、さらに好ましくは3.0〜4.5倍である。このような条件をとることで、目標とするフィルム特性とフィルムの生産性を両立させることができ、さらには結晶子サイズを10〜20nmの範囲に制御できる。横方向の延伸温度もTg〜Tg+30℃であることが好ましく、具体的には60〜90℃とすることが好ましい。これにより結晶子サイズを10〜20nmの範囲に制御できるために好ましい。横延伸倍率は2.0〜5.0倍が好ましく、より好ましくは2.5〜4.5倍であり、さらに好ましくは3.0〜4.5倍である。これにより結晶子サイズを10〜20nmの範囲に制御できるために好ましい。逐次二軸延伸方式の場合、一段目の延伸工程において配向が進みすぎると二段目の延伸工程において破れ等工程不安定を招きやすいことから、一段目の延伸温度と二段目の延伸工程の温度は適宜調整することが好ましく、例えば、縦延伸、横延伸の順に延伸する逐次二軸延伸方式の場合、縦延伸温度を75〜90℃、横延伸温度を70〜100℃とし、二段目の延伸温度を一段目の延伸温度−5〜10℃とすると、安定して生産することが可能となり、さらには結晶子サイズを10〜20nmの範囲に制御できるために好ましい。
【0055】
延伸後は、好ましくは120℃以上融点未満の範囲、より好ましくは130℃以上融点未満、更に好ましくは140℃以上融点未満、最もこのましくは150℃以上融点未満で熱処理を行うことが好ましい。この熱処理を行った後、層Aのポリ乳酸樹脂の融点よりも10℃以上低い温度で弛緩熱処理し、冷却することが好ましい。適正な延伸後、このような条件下で弛緩熱処理することにより、表面平滑性を保つとともに、低熱収縮率と、高弾性率、一定の面配向係数の範囲を満たし、カールを抑制した平面性の良好なフィルムを得ることができる。弛緩熱処理温度を融点〜(融点−10)℃未満の温度とすると、当該融点を有する層が融解、無配向化し、製膜性が著しく損なわれる場合がある。
【0056】
前述の通り、本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aの側に、蒸着により蒸着層を設けて蒸着フィルムとすることが好ましい。本発明のフィルムの少なくとも片面に蒸着層を設けることにより、ガスバリア性を著しく向上できる。
【0057】
これらの各層の成り立ちは、層Aの側に蒸着層を設ければ特に限定されず、層A/蒸着層、他の層/層A/蒸着層、などが好ましく用いられるが、好ましくはスキン層1/主層/スキン層2/蒸着層の順で積層された構成である。ここでスキン層1とは、本発明のフィルム全厚100%に対して、0%以上40%以下の厚みで設けられる層Aもしくは層Aの定義を外れるポリ乳酸系樹脂より成る層Bを指す(ここで、層Bとは、層Aの要件を満たさないポリ乳酸系樹脂を主成分とする層であり、層Bの全成分100質量%において、ポリ乳酸系樹脂が50質量%100質量%以下である層を意味する。)。このスキン層1を設けることで、本発明にて達成し得る特性を阻害することなく走行性やその他特性を付与することが可能となる。主層とは、本発明のフィルム全厚100%に対して、60%以上100%以下の厚みで設けられる層Aのことを指す。スキン層2とは本発明のフィルム全厚100%に対して、0%以上40%以下の厚みで設けられる層Aであって、走行性や蒸着加工特性、その他特性を達成するため主層とは異なる処方をとるものを指す。これらの層を設けるには、生産性の点から製膜時に非晶性ポリ乳酸系樹脂を共押出して積層する方法が好ましい。
【0058】
上記の各層はその必要性によって設けられたり、設けられなかったりするが、その層構成は上述の通りとし、蒸着層は更にその上にスキン層1側の面やスキン層2側の面に積層される。
【0059】
上記各層は、キャスティングドラムに密着させて未延伸フィルムを得る際にドラム面側、非ドラム面側いずれも取り得るが、本発明にて目的とするラクチド濃度を低減させるためにはフィルム表面が開放されている非ドラム面側に蒸着に供する主層もしくはスキン層2を設けることが好ましい。
【0060】
本発明の蒸着フィルムの蒸着層に用いる金属は、特に限定されないが、アルミニウム、酸化アルミニウムあるいはそれらの混合物などがより好ましく用いられる。アルミニウムを用いた蒸着層は、経済性、ガスバリア性能に優れていることから好ましく、酸化アルミニウムを用いた蒸着層は、透明性に優れ、コストの点からも好ましい。
【0061】
本発明のポリ乳酸系フィルムを蒸着フィルムとして用いる場合、蒸着層の形成方法としては、真空プロセスが用いられる。真空プロセスとしては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法などが好ましく用いられる。例えば、無機酸化物の蒸着層を設けるためには、生産性、コストの点から反応性蒸着法がより好ましく用いられる。
【0062】
真空プロセスでは、ガスバリア性の一層の向上のためには、蒸着前フィルムの表面をプラズマ処理やコロナ処理することが好ましい。コロナ処理を施す際の処理強度は5〜50W・min/mが好ましく、より好ましくは10〜45W・min/mである。また、金属または無機酸化物からなる蒸着層を設ける前に、プラズマ放電下において核付金属蒸着層を設けることは、蒸着層の密着性向上ひいてはそれに伴うガスバリア性向上の観点から好ましい。この場合、プラズマ放電を酸素および/または窒素ガス雰囲気で行うことが好ましく、核付金属として銅を用いることが好ましい。
【0063】
反応性蒸着法によって酸化アルミニウムを蒸着させるには、アルミニウム金属やアルミナを抵抗加熱のボート方式やルツボの高周波誘導加熱、電子ビーム加熱方式で蒸発させ、酸化雰囲気下でフィルム上に酸化アルミニウムを堆積させる方式が好ましく採用される。酸化雰囲気を形成するための反応性ガスとしては酸素が用いられるが、酸素を主体に水蒸気や希ガスを加えたガスでもよい。更にオゾンを加えたり、イオンアシストなどの反応を促進する手法を併用してよい。
【0064】
また、蒸着層の厚さは特に限定されないが、生産性、ハンドリング性、外観から5〜100nmが好適であり、さらに好ましくは5〜50nmである。蒸着層の厚さが5nm未満であると、蒸着層欠陥が発生しやすく、ガスバリア性が著しく悪化する場合がある。蒸着層の厚さが100nmより厚くなると、蒸着時のコストが高くなったり、蒸着層の着色が顕著になり、外観的に劣る場合がある。
【0065】
本発明のフィルムを蒸着フィルムに加工して用いる場合、当該蒸着フィルムの水蒸気バリア性が2g/m/日を下回るものが好ましく、より好ましくは1g/m/日を下回るものをである。2g/m/日を上回るものは本発明のフィルムを包装材料として用いた場合に内容物の劣化が懸念されるため好ましくない。
【0066】
本発明のポリ乳酸系フィルムおよび蒸着フィルムは、包装材料として各種包装体に好ましく用いられる。当該包装体としては、特にこれらに限定されるわけではないが、縦ピロー包装体、横ピロー包装体、三方シール包装体、四方シール包装体、真空包装体、スタンドパウチ、上包み包装体などが挙げられる。
【0067】
これら包装体では、フィルムの少なくとも片面にヒートシール性が要求される。そのため、本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aを有する側には蒸着層を設けた後に、本発明ポリ乳酸系フィルムの層Aを有さない側にヒートシール層を形成したフィルム構成とすることが好ましい。ヒートシール層は、製膜時にヒートシールに供する樹脂を共押出して積層する方法、押出ラミネート法やウェットコーティング法により直接本発明のポリ乳酸系フィルム上に形成する方法のいずれを用いても良い。
【0068】
また、当該ヒートシール性樹脂からなるフィルムを、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系接着剤などに代表される公知の接着剤からなる接着層を介して本発明ポリ乳酸系フィルムの層Aを有さない側にドライラミネートしたり、ポリエチレン系樹脂に代表される熱可塑性樹脂からなる接着層を介して本発明のポリ乳酸系フィルムに押出ラミネート(ポリサンドラミネート)する方法を用いることもできる。
【0069】
さらに、本発明のポリ乳酸系フィルムには、目的に応じて適宜上記した以外の他のフィルムをラミネートしてラミネート体ひいては包装体に加工できる。この時用いる他のフィルムは特に限定されるものではないが、本発明の目的から生分解性のものが好ましい。例えば、少なくとも片面に1層以上の印刷層を形成した印刷フィルムを、上記に例示した接着層を用い、上記に例示したラミネート方法で本発明のポリ乳酸系フィルムにラミネートすることができる(例えば、印刷フィルム/接着層/本発明のポリ乳酸系フィルム/接着層/ヒートシール樹脂層)。この時、本発明のポリ乳酸系フィルムの層Aを有する側には蒸着層を設けた後に上記ラミネート加工を施すことが好ましい。当該ラミネートを施す面は層Aを有する側/層Aを有さない側のいずれかに限定されるものではないが、本発明のポリ乳酸系フィルムに設けた蒸着層を保護する意味でも、当該層Aの上に設けられた蒸着層の上にラミネートすることが好ましい。印刷面は、目的に応じて外面、内面にするか選択すればよい。
【0070】
このようにして得られたラミネート体は、縦型あるいは横型の製袋充填機、真空包装機、角折包装機など公知の加工機により製袋され、内容物を充填されることにより、上記に例示した包装体へと加工される。この際、充填される内容物としては、例えば、スナック、キャンディ、チョコレート、クッキー、チーズ、珍味、生肉、魚の切り身などの水産物、青果物、冷菓、和菓子、洋菓子などの菓子類;おにぎり、寿司、てんぷら、ハンバーグ、麺などの食品類;小麦粉、砂糖、醤油、みそ、マヨネーズ、ケチャップなどの調味料;石鹸、スポンジ、シャンプー、リンス、ボディソープなどのバス用品;液体洗剤;コーヒー豆;氷塊;化学薬品、農薬;ビニールテープ;金属あるいはプラスチックの各種部品;工業製品;本などが挙げられるが、特に限定されない。
【0071】
本発明のポリ乳酸系フィルムおよび蒸着フィルムは、ガスバリア性に優れるため、これらを用いたラミネート体、包装体も、極めて優れたガスバリア性を発現しうる。以上のことから、本発明のフィルムおよび蒸着フィルムは、包装用、工業用などに好ましく用いることができる。
【0072】
本発明のポリ乳酸系フィルムはフィルム全成分に対して、結晶化度が15〜30%であることが好ましい。結晶化度が15%未満であると、包装材料用途として使用した際に十分な機械特性、熱特性を確保することが困難となり好ましくない。一方、結晶化度が30%よりも大きくなるとフィルムが裂けやすくなる、割れやすくなるなど取り扱いに支障が生じるようになるため好ましくない。本発明のフィルムの前記の範囲にするためには、当該フィルムを二軸延伸して製造する際に、延伸工程の延伸温度、延伸倍率、熱固定工程での熱処理温度などにより面配向係数を制御する方法が好ましく用いられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
[特性の測定方法]
(1)結晶子サイズ
測定装置としては下記のものを用いた。
X線発生装置:理学電機社製RU−200R(回転対陰極型)
ゴニオメータ:理学電機社製2155S2型
スリット系:
発散スリット:DS=1°
散乱スリット:SS=1°
受光スリット:RS=0.15mm
モノクロ受光スリット:RSm=0.45mm
検出器:シンチレーションカウンタ
X線回折装置の測定条件は次の通りである。
試料は、1枚を試料ホルダーに貼り付け、常温、常圧下で、出力40kV、200mAのCuKα線にてθが3〜30°の範囲で回折ピークを得た。得られた(200)の回折ピークの半値幅βe(°)より下記式にて結晶子サイズを求めた。
結晶子サイズ(nm)=(K・λ)/(βcosθ)
β=(βe^2−βo^2)^0.5)
ここで、K:係数(反射法:0.9)、λ(0.15418nm)、βe:回折ピークの半値幅、βo:半値幅の補正値(反射法:0.12°)である。
【0074】
(2)密度
ASTM D1505―03の規定に従い、測定対象であるフィルムの層の密度1.2〜1.3g/cmの範囲を測定できるよう調整したヨウ化ナトリウム水溶液を用いた密度勾配管法により測定した。
【0075】
(3)結晶化度
JIS K 7122−1987に従い結晶融解ピーク熱量を測定した。セイコーインスツルメント社製のDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて測定した。試料5mgをDSC装置にセットし、25℃から20℃/分で250℃まで昇温し、融点での結晶融解ピーク熱量を測定し、結晶化度100%の時の融解ピーク熱量91J/gに対しての比率を求めて結晶化度とした。
【0076】
(4)面内平均屈折率、面配向係数
偏光子を備えた(株)アタゴ製アッベ屈折率計4T型を用いて、フィルム長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)、厚さ方向の屈折率(nz)を求め、下式より面配向係数を求めた。なお、屈折率1.74の補助プリズム、浸液としてヨウ化メチレンを用いた。
面配向係数={(nx+ny)/2}−nz
(5)各層厚み
各試料をミクロトームにて厚み方向と幅方向が断面となるよう切断し、走査型電子顕微鏡にて断面を観察し、粒子濃度の違いや断面の濃淡より各層の境界を判断し、各層の厚みを算出した。粒子濃度に差がない層間については、融点を持たない非晶のポリ乳酸系樹脂の面を溶剤(トルエン)にて除去し、当該層の除去前後のフィルム厚みを接触式厚さ計にて比較し特定した。
【0077】
(6)ラクチド量の定量
(6−1)内部標準母液の調製
(A)濃度196μg/mlの2,6−ジメチル−γ−ピロン標準液を調整した。溶媒はアセトンを用いた。
【0078】
(6−2)試料の調整
(A)試料0.02〜0.03gをメスフラスコ(10ml)にとった。
(B)塩化メチレン0.5mlを加え、試料が溶解した後、(6−1)の内部標準母液1ml、アセトン0.5mlを加えた。
(C)超音波攪拌しながらシクロヘキサンを徐々に加え、定容した後30分間静置し樹脂を不溶化、ラクチドを抽出した。
(D)前記(C)の調製抽出液を遠心分離(5000rpm×5分)し、上澄み液を取り出した。
【0079】
(6−3)標準液の調整
(A)濃度4220μg/mlのD,L−ラクチド標準液を調整した。溶媒は塩化メチレンを用いた。
(B)メスフラスコ(10,25,50,100ml)に(A)調整標準母液を0.5mlずつとり、塩化メチレンで定容した。(濃度 211,84.4,42.2,21.1μg/ml )
(C)前記(B)調整液0.5mlをメスフラスコ(10ml)にそれぞれとり、(A)調整内部標準液1ml、アセトン0.5mlを加えた後、シクロヘキサンで定容した。
【0080】
(6−4)標準添加試料の調整
(A)試料0.02〜0.03gをメスフラスコ(10ml)にとった。
(B)前記(6−3)(B)調整標準液(84.4μg/ml)0.5mlを加えた後、(6−1)内部標準母液1ml、アセトン0.5mlを加えた。
(C)超音波攪拌しながらシクロヘキサンを徐々に加え、定容した後30分間静置した。
(D)前記(C)の調製抽出液を遠心分離(5000rpm×5分)し、上澄み液を取り出した。
【0081】
(6−5)測定
(A)前記(6−2)、(6−3)、(6−4)調製液のガスクロマトグラフィ測定を行った。
(B)ラクチド濃度の異なる標準液のラクチドピーク面積より検量線を求め、各試料のラクチドピーク面積より各試料のラクチド濃度を求めた。
【0082】
(7)水蒸気バリア性
各試料を準備した後、基材となるポリ乳酸系フィルムを蒸着機に供し、アルミ蒸着を行った。アルミ蒸着は膜厚みがO.D.2.4となるよう調整し蒸着膜を形成した。
【0083】
水蒸気バリア性能はJIS K7129(2000)プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)に記載のB法(赤外センサー法)に基づいて測定した。測定装置としては、MOCON酸素透過率測定装置OX−TRANR 1/50を用いた。測定は蒸着層側から水蒸気流を当て反対側で検出する方式とした。
【0084】
水蒸気バリア性の評価は、上記測定用の試料の形態でn=10で測定し、平均が2g/m/日を下回るが、2g/m/日を上回るものが混じるものを△、n=10で測定した全ての試料が2g/m/日を下回るものを○、n=10で測定した全ての試料が1g/m/日を下回るものを◎、平均が2g/m/日以上のものを×とした。
【0085】
(8)生分解性
上記水蒸気バリア性の評価にて用いた試料と同様に、各試料にアルミ蒸着を施した試料を用意し、ASTM D6400−99に従い評価を実施した。26週間以内に分解したものについては○、26週間で分解しなかったものについては×と評価した。
【0086】
(9)生産性
本発明のポリ乳酸系フィルムを製造する際、生産時の安定性を評価した。前の製品から切替が完了し、生産を開始してから終了時までの間、製品を取得していた時間が90%以上であった場合は○、フィルム破れ等により生産が中断し、製品を取得していた時間が60〜90%未満の場合を△、60%を下回る場合は×とした。
【0087】
(10)加工性
本発明のポリ乳酸系フィルムを製袋用包装材料として用いる際、当該製袋加工工程においてシワやピンホールなどが生じるなど外観上の問題が出る場合や、当該問題に起因して水蒸気バリア性が低下する場合を×、問題なく加工できる場合を○と評価した。
【0088】
(ポリ乳酸系樹脂の準備)
[ポリ乳酸系樹脂A]:結晶性ポリL−乳酸(Nature Works製“Ingeo”4032D;D−乳酸由来の成分=1.4mol%、融点=168℃、Tg=58℃)を用いた。
【0089】
[ポリ乳酸系樹脂B]:ポリ乳酸系樹脂Aに対し、公知の二軸押出機を用いて、200℃でシリカ粒子(アルミノシリケート粒子 シルトンJC30)の含有量が2.5質量%となるように混練し、マスターペレットとした。
【0090】
[ポリ乳酸系樹脂C]:ポリL−乳酸 Nature Works製“Ingeo”4060D(D−乳酸由来の成分=12mol%)を用いた。
【0091】
実施例1
ポリ乳酸系樹脂Aを97質量%、ポリ乳酸系樹脂Bを3質量%混合して主層として用いた。主層については、混合した原料チップを水分率が150ppm以下となるまで乾燥した後、押出機に供給し、ポリマ温度210℃で溶融ポリマとし、公称濾過精度η(95%):60μmのフィルタにて濾過した。
【0092】
これらはフィルタの下流側に設置されたフィードブロックにて積層され、その後、口金温度210℃のTダイでフィルム状に押し出し、ワイヤー電極を用いた静電印加法で30℃に温度調節したドラム上にキャスト、密着させ未延伸フィルムを作製した。
【0093】
連続して78℃の加熱ロール間で長手方向に3倍延伸した後、一軸延伸フィルムをクリップで把持してテンター内に導き、80℃の温度で加熱しつつ横方向に3.6倍延伸し、幅方向に固定した状態で125℃、10秒間の熱処理を行った後、巾方向に5%の弛緩処理を施し、厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムを得た。
【0094】
このポリ乳酸系フィルムをアルミ蒸着に供し、キャスティングドラムに接して成形された面を面1、その反対面を面2として、面2にアルミ蒸着を施し、蒸着工程の下流に設置された膜厚計にて示される光学濃度ODが2.4となるように調整し、蒸着フィルムを得た。
【0095】
結果を表1に示す。
当該フィルムは目標とする水蒸気バリア性である試料の形態でn=10で測定し、平均が2g/m/日を下回るが、試料のバラツキで2g/m/日を上回るものが混じるものであった。
【0096】
実施例2
テンター内にて140℃、10秒間の熱処理を行なう点を除いては、実施例1に記載の方法を用い厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムおよびその積層体を得た。結果を表1に示す。
得られた試料は全ての試料が2g/m/日を下回り良好なものであった。
【0097】
実施例3
テンター内にて155℃、10秒間の熱処理を行なう点を除いては、実施例1に記載の方法を用い厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムおよびその積層体を得た。結果を表1に示す。
得られた試料は、全ての試料が1g/m/日を下回り極めて良好なものであった。
【0098】
実施例4
テンター内にて160℃、10秒間の熱処理を行なう点を除いては、実施例1に記載の方法を用い厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムおよびその積層体を得た。結果を表1に示す。
得られた試料は全ての試料が2g/m/日を下回り良好なものであったが、高温での熱固定による平面性の悪化によりフィルム破れが点発し、生産性がよいとは言えないものであった。
【0099】
実施例5
ポリ乳酸系樹脂Aを80質量%、ポリ乳酸系樹脂Cを20質量%混合して主層として用い、その一面にポリ乳酸系樹脂Aを97質量%、ポリ乳酸系樹脂Bを3質量%混合してスキン層2として用いた。主層については、混合した原料チップを水分率が150ppm以下となるまで乾燥した後、押出機に供給しポリマ温度210℃で溶融ポリマとし、公称濾過精度η(95%):60μmのフィルタにて濾過した。スキン層2としては、ポリ乳酸系樹脂を乾燥工程を経ることなく2軸押出機にてポリマ温度210℃で溶融ポリマとし、主層と同じく公称濾過精度η(95%):60μmのフィルタにて濾過した。主層とスキン層はフィルタの下流側に設置されたフィードブロックにて積層され、その後、口金温度210℃のTダイでフィルム状に押し出し、ワイヤー電極を用いた静電印加法で30℃に温度調節したドラム上にキャスト、密着させ未延伸フィルムを作製した。
【0100】
以上の点を除いては、実施例2に記載の方法を用い厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムおよびその積層体を得た。アルミ蒸着は他の実施例同様とし、キャスティングドラムには接しなかった側であるスキン層2に施した(つまり本実施例では、主層がキャスティングドラムに接して成形された側であり、本実施例の構成は、主層/スキン層2/蒸着層、の構成である。)。結果を表1に示す。
得られた試料はガスバリア性は良いままに柔軟性が改善され、取り扱いの良いものとなった。
【0101】
実施例6
実施例5のスキン層2の処方をスキン層1に適用し、キャスティングドラムには接しなかった側の面である主層側の面にアルミ蒸着を施した(つまり本実施例では、スキン層1がキャスティングドラムに接して成形された側であり、本実施例の構成は、スキン層1/主層/蒸着層、の構成である。)。結果を表1に示す。得られた試料はガスバリア性はよいものの、蒸着面において工程でのキズが入りやすく、生産性に影響が出るものであった。
【0102】
比較例1
テンター内にて105℃、10秒間の熱処理を行なうほかは実施例1に記載の方法を用い厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムおよびその蒸着フィルムを得た。結果を表1に示す。水蒸気バリア性が悪いほか、オフラインコーティング時やアルミ蒸着時の寸法変化が大きく、製品として問題になるレベルのシワがフィルムに生じ、本発明で求めるポリ乳酸系フィルムおよびその積層体とはならなかった。
【0103】
比較例2
主層にポリ乳酸系樹脂Aを50質量%、ポリ乳酸系樹脂Cを50質量%として18μmの厚さとなるよう調整し、スキン層にポリ乳酸系樹脂Aを97質量%、ポリ乳酸系樹脂Bを3質量%混合して主層として用いた。その他、縦延伸倍率を2.5倍とするほかは実施例2に記載の方法を用い、厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムおよびその積層体を得た。結果を表1に示す。水蒸気バリア性が悪いほか、加工時に必要な機械特性にかけるため取り扱いが悪く、本発明で求めるポリ乳酸系フィルムおよびその蒸着フィルムとはならなかった。
【0104】
比較例3
主層にポリ乳酸系樹脂Aを15質量%、ポリ乳酸系樹脂Cを85質量%とするほかは実施例2に記載の方法を用い、厚さ20μmのポリ乳酸系フィルムおよびその積層体を得ようとした。しかし、当該処方ではフィルムとすることが困難であり、資料を得るには至らなかった。
【0105】
【表1−1】

【0106】
【表1−2】

【0107】
なお表中の面1とは、フィルム中でキャスティングドラムに接して成形された側の面を意味し、面2とは、フィルム中でキャスティングドラムには接しなかった側の面を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層Aを少なくとも片面の最表層に有するポリ乳酸系フィルムであって、
層Aが、L−乳酸由来の成分が主成分のポリ乳酸系樹脂を、層Aの全成分100質量%に対して90質量%以上100質量%以下含有し、
層Aの広角X線回折法(反射法、2θ−θスキャン法)にて測定される結晶子サイズが、10〜20nmであり、
層Aの密度が、1.2〜1.3g/cmであることを特徴とする、ポリ乳酸系フィルム。
【請求項2】
フィルム長手方向の屈折率とフィルム幅方向の屈折率が、いずれも1.45〜1.47の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項3】
面配向係数が0.011〜0.014であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項4】
層Aが、層Aの全成分100質量%に対してラクチドを0質量%以上0.1質量%以下含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項5】
2層又は3層からなる積層構成であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項6】
フィルム全成分に対して、結晶化度が15〜30%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルムの層Aの側に、蒸着層を有することを特徴とする、蒸着フィルム。

【公開番号】特開2011−168704(P2011−168704A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34282(P2010−34282)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】