説明

ポリ乳酸系フィルム

【課題】軽量性及び機械特性に優れたポリ乳酸系フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂及び充填剤を含むA層、A層の少なくとも片面にポリ乳酸系樹脂を主体とするB層を有し、積層フィルム全体の見かけ比重が1.1g/cm以下であることを特徴とするポリ乳酸系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化しているにも関わらず、機械特性に優れたポリ乳酸系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、プラスチック製品の廃棄による土壌汚染問題、また、焼却による二酸化炭素増大に起因する地球温暖化問題が注目されている。前者への対策として、種々の生分解樹脂、後者への対策として、焼却しても大気中に新たな二酸化炭素の負荷を与えないバイオマス(植物由来原料)からなる樹脂がさかんに研究、開発されている。
【0003】
上記に記した両者の特性を満たす樹脂の1つとして、ポリ乳酸が挙げられる。ポリ乳酸は、高い融点を持ち、また溶融成形可能で実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。例えば、ポリ乳酸フィルムは各種生分解性フィルムの中でも最も引っ張り強度や弾性率が高く、光沢、透明性にも優れているとされている。
【0004】
現在では、ポリ乳酸系フィルムを使用する用途が広がっているが、その中でも特に包装材料に好適に使用されるようになってきている。包装材料のフィルムの一部として使用される場合は、商業的に売れる費用効果の高い包装製品を製造可能とするために、単体のフィルムとして、より高い機能性が要求されている。例えば、包装材料等のフィルムとして用いるために必要となる機械特性、成形体への加工に必要なヒートシール性、意匠性を付与するために必要な印刷適性、蒸着層を付与した際の蒸着層との接着性やガスバリア性であったりする。さらに、ポリ乳酸はポリオレフィンと比較すると、比重が大きい分、同厚み、同面積のフィルムを作製した際に、樹脂使用量が増えるため、必ずしも環境負荷低減に繋がらないという問題があり、実用的なフィルム物性を有し、軽量化されたポリ乳酸フィルムが望まれている。
【0005】
上記の要求を解決するべく、種々の試みがなされてきた。例えば、特許文献1−3では、ポリ乳酸系樹脂と微粉状充填剤とを配合して作製したフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4048838号公報
【特許文献2】WO2004/104077号パンフレット
【特許文献3】特開2006−145916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1−3に記載の発明は、いずれもカーボン複写伝票や反射フィルム用途に使用することを目的としたものであって、フィルムの軽量化、機械特性、易接着性、及び蒸着層を付与した際のガスバリア性に関しては十分な特性を有しておらず、その解決手段についての示唆もない。
【0008】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり軽量性、表面平滑性、易接着性、及び蒸着層を付与した際のガスバリア性に優れたポリ乳酸系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、
(1)ポリ乳酸系樹脂及び充填剤を含むA層、及びA層の少なくとも片面にポリ乳酸系樹脂を主体とするB層を有し、フィルム全体の見かけ比重が1.1g/cm以下であることを特徴とするポリ乳酸系フィルム。
(2)走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察した際に、B層は空隙を有さず、A層は空隙を有することを特徴とする、(1)に記載のポリ乳酸系フィルム。
(3)A層が、A層の全成分100質量%に対して、40質量%以上90質量%以下のポリ乳酸系樹脂及び10質量%以上60質量%以下の充填剤を含むことを特徴とする、(1)又は(2)に記載のポリ乳酸系フィルム。
(4)B層が、B層の全成分100質量%に対して、50質量%以上100質量%以下のポリ乳酸系樹脂を含むことを特徴とする、(1)から(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(5)B層が少なくとも一方の最外層にあり、B層側の表面の中心線平均表面粗さが200nm以下であることを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(6)前記充填剤が、炭酸カルシウムであることを特徴とする、(1)から(5)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(7)前記充填剤が、脂肪酸及び/又はリン酸エステル系化合物により処理されたものであることを特徴とする、(1)から(6)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(8)少なくとも一軸に延伸されたことを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(9)A層及びB層が、他の層を介さずに直接積層されたことを特徴とする、(1)から(8)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
(10)蒸着層、B層、A層が、この順に積層されたことを特徴とする、(1)から(9)のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂及び充填剤を含むA層、及びA層の少なくとも片面にポリ乳酸系樹脂を主体とするB層を有し、フィルム全体の見かけ比重が1.1g/cm以下であるフィルムを作製することにより、軽量化しているにも関わらず、機械特性に優れたポリ乳酸系フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、望ましい実施の形態とともに、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のポリ乳酸系フィルムのA層は、ポリ乳酸系樹脂及び充填剤を含む。
【0013】
A層におけるポリ乳酸系樹脂及び充填剤の含有量に関しては特に制限はないが、A層の全成分を100質量%とした時に、ポリ乳酸系樹脂の含有量が40質量%以上90質量%以下とすることが好ましい。A層中のポリ乳酸系樹脂の含有量が40質量%未満であると、フィルムを作製する際に、延伸性、成形性が不足することがあり、フィルムとしての耐熱性、機械特性が低下することがあるため好ましくない。また、A層中のポリ乳酸系樹脂の含有量が90質量%を上回ると、フィルムを延伸した際に、A層中に充分な空隙が形成されないことがあり、所望の比重、つまり、見かけ比重が1.1g/cm以下のフィルムが得られないことがあるために好ましくない。上記特性のさらなる改良の観点から、A層の全成分100質量%におけるポリ乳酸系樹脂の含有量は、より好ましくは45質量%以上87質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上85質量%以下である。
【0014】
また、A層中の充填剤の含有量は、A層の全成分を100質量%とした時に、10質量%以上60質量%以下とすることが好ましい。A層中の充填剤の含有量が10質量%未満であると、フィルムを延伸した際に、A層中に充分な空隙が形成されないことがあり、所望の比重、つまり、見かけ比重が1.1g/cm以下のフィルムが得られないことがあるために好ましくない。A層中の充填剤の含有量が60質量%を上回ると、充填剤の凝集により、延伸性、成形性が不足し、均一なフィルムを得ることが困難となり、機械特性が低下するため好ましくない。上記特性のさらなる改良の観点から、A層の全成分100質量%における充填剤の含有量は、より好ましくは13質量%以上55質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下である。
【0015】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂とは、D−乳酸及び/またはL−乳酸を主たる構成成分とする重合体を意味する。また、ポリ乳酸系樹脂は、乳酸以外のほかのコモノマー成分を含有していてもよい。当該コモノマー成分としては、例えば、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等のグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸等のジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オン等のラクトン類等を挙げることができる。
【0016】
また、A層におけるポリ乳酸系樹脂としては、二軸延伸プロセスにおいて、また積層やバッグ成形などの下流側加工プロセスにおいて、機械特性および熱処理に対する剛性、平面性および耐久性を付与するために結晶性ポリ乳酸系樹脂が含まれることが好ましい。A層中の結晶性ポリ乳酸系樹脂の含有量は、より具体的には、A層中のポリ乳酸系樹脂100質量%において、結晶性ポリ乳酸系樹脂が50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは65質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0017】
ポリ乳酸系樹脂を結晶性とするためには、ポリ乳酸系樹脂中のD−乳酸とL−乳酸の質量比率が0:100〜10:90であることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂が本質的にL−乳酸のみを含むものであっても深刻な問題とはならないであろうが、結晶性ポリ乳酸系樹脂の量が多すぎるとフィルム製作プロセスが不良になることがあるため、D−乳酸とL−乳酸のより好ましい質量比率は1:99〜5:95であり、さらに好ましい質量比率は2:98〜4:96である。
【0018】
本発明でいう結晶性ポリ乳酸系樹脂とは、該ポリ乳酸系樹脂を加熱下で十分に結晶化させた後に、25℃から250℃の温度範囲で示差走査熱量計(DSC)にて測定を行った場合、ポリ乳酸成分に由来する結晶融解熱が観測されるポリ乳酸系樹脂のことをいう。一方、本発明でいう非晶性ポリ乳酸系樹脂とは、同様に測定を行った場合、明確な融点を示さないポリ乳酸系樹脂のことをいう。
【0019】
A層に好適な結晶性ポリ乳酸系樹脂の好ましい例としては、たとえば、NatureWorks(登録商標)社のIngeo(商標)4032D(D−乳酸=1.4mol%)、4042D(D−乳酸=4.2mol%)などが挙げられる。D−L比率を所定レベルに調整するには、それら各成分の混合、あるいはIngeo(商標)4060D(D−乳酸=12mol%)などのD成分比の高い銘柄との混合によって行うことができる。
【0020】
A層中に含有される充填剤とは、無機充填剤及び/又は有機充填剤である。 無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の各種炭酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の各種硫酸塩、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、アルミナ、ケイ酸アルミニウムなどの各種酸化物、その他、水酸化アルミニウム等の水酸化物、珪酸塩鉱物、ヒドロキシアパタイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、モンモリロナイト、ゼオライト等の各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の各種リン酸塩、塩化リチウム、フッ化リチウム等の各種塩などを使用することができる。
【0021】
有機充填剤の例としては、シュウ酸カルシウム等のシュウ酸塩、カルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸等のビニル系モノマーの単独または共重合体からなる粒子、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子、木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材等のチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の植物繊維、絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダ等の動物繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等の合成繊維などを使用することができる。
【0022】
これらの充填剤のなかでも、フィルム全体の見かけ比重を1.1g/cm以下にして軽量化するという観点から充填剤の比重は低いものが好ましい。A層中に含有した際のフィルムの軽量性や強度、伸度といった機械特性の観点から、炭酸カルシウム、酸化ケイ素(シリカ)、マイカ、タルク、カオリン、クレー、モンモリロナイトが好ましい。特に好ましいのは炭酸カルシウムである。
【0023】
無機充填剤、有機充填剤の平均粒径は、特に限定されないが、0.5μm〜10μmが好ましい。平均粒径を0.5μm以上とすることで、充填剤をA層中に高充填することが可能となり、その結果、延伸した際にA層に空隙ができやすく、多孔化、低比重化(見かけ比重を1.1g/cm以下とすること)が可能となる。平均粒径を10μm以下とすることで、フィルムの延伸性が良好となり、その結果、フィルムの多孔化、低比重化(見かけ比重を1.1g/cm以下とすること)が可能となる。平均粒径は、より好ましくは0.6〜8μm、さらに好ましくは0.7〜5μm、最も好ましくは1〜3μmである。
【0024】
なお、平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定して得られる体積基準累積度数50%の粒子径を意味し、以後同様である。
【0025】
充填剤は、ポリ乳酸系樹脂等の各種樹脂との親和性向上、充填剤の凝集抑制および分散性向上のために、化合物(以下、処理剤という)により処理を施した充填剤を用いることが好ましい。この処理とは、例えば、炭酸カルシウムなどの化合物を処理剤中に浸すなどにより可能である。このような処理剤としては、リン酸エステル系化合物、脂肪酸、樹脂酸、界面活性剤、油脂、ワックス、カルボン酸系カップリング剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、高分子系処理剤などを使用することができる。これらの処理剤により処理された充填剤を使用することで、延伸性、成形性が向上し、所望の比重、つまり見かけ比重が1.1g/cm以下のフィルムを得ることが可能となる。これらの処理効果を最大限に発揮させるためには、処理前の充填剤と処理剤の合計を100質量%としたときに、処理剤が0.5質量%〜4.0質量%であることが好ましく、1.0質量%〜3.0質量%であることがより好ましく、1.5質量%〜2.5質量%であることがさらに好ましい。このような比率の処理により得られる充填剤は、延伸性、成形性の向上、及び所望の比重のフィルムを得るために強く寄与する。
【0026】
リン酸エステル系化合物としては、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ピロリン酸エステルなどを使用することができる。1分子内にリン原子を2個以上有していてもよく、また、不飽和結合を分子内に有していることが好ましい場合があり、その不飽和結合が末端の二重結合であることが好ましい場合がある。
【0027】
脂肪酸としては、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸などを使用することができる。
【0028】
樹脂酸としては、マレイン酸変性ポリオレフィンなど、末端あるいは主鎖中にカルボキシル基を有する樹脂などを使用することができる。
【0029】
界面活性剤としては、ステアリン酸石鹸、スルホン酸石鹸などの脂肪酸石鹸といったアニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール誘導体といった非イオン系界面活性剤などを使用することができる。
【0030】
油脂としては、大豆油、アマニ油などを使用することができる。
【0031】
ワックスとしては、カルナウバワックス、長鎖エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、およびそれらの酸化物、酸変性物などを使用することができる。
【0032】
カルボン酸系カップリング剤としては、カルボキシル化ポリブタジエン、カルボキシル化ポリイソプレンなどを使用することができる。
【0033】
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを使用することができる。
【0034】
チタネートカップリング剤としては、有機官能基として、アルキル基+アミノ基型、亜リン酸エステル型、ピロリン酸エステル型、カルボン酸型のものなどを使用することができる。
【0035】
高分子系処理剤としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどのランダムあるいはグラフト共重合体、無水マレイン酸変性のスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、プロピレン−アクリレートなどのブロック共重合体、疎水基−親水基共重合体などを使用することができる。
【0036】
これらの中でも、処理剤としては、脂肪酸及び/又はリン酸エステル系化合物であることが好ましい。最も好ましいのは、処理剤として脂肪酸を使用することである。
【0037】
また、本発明のA層やB層に用いられる樹脂や充填剤などの原料は、充填剤の凝集抑制および分散性向上のために、あらかじめコンパウンドし、マスターバッチチップ(以後、マスターバッチチップをMBと略す)を作製しておくことが好ましい。かかるコンパウンドの方法は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定はされないが、充填剤のさらなる分散性向上のため、及びホッパー内での樹脂と充填剤の分級対策のために、充填剤の含有量が10質量%以上の場合には、ホッパーからの投入以外にも、サイドフィーダーを用いて、シリンダーのサイドから充填剤を添加し、コンパウンドを行うことが好ましい。サイドフィーダーを用いることにより、高濃度の充填剤を樹脂中に充填することが可能となる。また、樹脂中で充填剤の分散性が向上するため、フィルムを作製する際の延伸性が良好となる。
【0038】
本発明のB層は、ポリ乳酸系樹脂を主体とする層である。ここで、ポリ乳酸系樹脂を主体とする層とは、該層の全成分において、ポリ乳酸系樹脂が質量的に最も多いことを意味する。生分解性、バイオマス性の観点から、B層中の好ましいポリ乳酸系樹脂の含有量は、B層の全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは55質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは60質量%以上100質量%以下である。
【0039】
また、B層の融解熱量ΔH(J/g)は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定はされないが、本発明のフィルムの目的とする用途・特性に応じて、調整することが好ましい。融解熱量の測定方法は、後述する「物性の測定方法および効果の評価方法」部分に記載する。
【0040】
フィルムの寸法安定性、機械特性を向上させるためには、B層の融解熱量ΔH(J/g)は25J/g以上50J/g以下であることが好ましい。より好ましくは28J/g以上50J/g以下、さらに好ましくは30J/g以上50J/g以下である。
【0041】
一方、フィルムに柔軟性、延伸性、成形性、印刷インキとの接着性、蒸着層を付与した際の蒸着層との接着性を付与するためには、B層の融解熱量(ΔH)は0J/g以上25J/g未満であることが好ましい。より好ましくは0J/g以上20J/g以下、さらに好ましくは0J/g以上15J/g以下である。
【0042】
B層の融解熱量を調整するためには、本発明の効果を損なわない範囲で結晶性ポリ乳酸系樹脂、非晶性ポリ乳酸系樹脂、その他の熱可塑性樹脂を所望の割合で混合させればよい。
【0043】
B層に含有することが可能なその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン・ブチレン・スチレン・ブロック共重合体、水素添加等のポリスチレン系樹脂;硬質ポリ塩化ビニル、軟質ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂等が好ましい。上記その他の熱可塑性樹脂の中でも、本発明のフィルムに耐熱性、延伸性、成形性を付与するためには、アクリル系樹脂が好ましく、ポリ乳酸系樹脂との相溶性を考慮するとポリメチルメタクリレートを用いることがさらに好ましい。
【0044】
本発明のポリ乳酸系フィルムの見かけ比重は1.1g/cm以下であることが重要である。さらなる軽量性を付与するという観点から、0.7g/cm以上1.05g/cm以下の範囲であることがより好ましい。本発明のポリ乳酸系フィルムの見かけ比重を1.1g/cm以下とするためには、A層に空隙を形成させることが好ましい。A層が空隙を有することで、フィルム全体を軽量化することができ、見かけ比重を1.1g/cm以下と制御することが可能となる。A層に空隙を形成させるためには、A層のポリ乳酸系樹脂の含有量、及び充填剤の種類、粒径、含有量を前述の好適な範囲で適宜調整し、さらに少なくとも一軸方向に延伸する方法を挙げることができる。A層に空隙を形成させて、B層には空隙を形成させないで、ポリ乳酸系フィルムの見かけ比重を1.1g/cm以下とするための好ましい延伸法方・条件等については、後述する。
【0045】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、A層の少なくとも片面にB層を有することが重要である。本発明のポリ乳酸系フィルムは、A層とB層とを有しさえすれば、その層構成は本発明の効果を損なわない範囲で任意の層構成としても構わない。また、A層とB層との間には、他の樹脂層や粘着材層が介在しても構わない。層構成例として、例えばB層/A層、B層/A層/B層、等が挙げられる。特に好ましくは、A層及びB層が、他の層を介さずに直接積層された態様である。またB層は、蒸着層を有さない場合には、フィルムの少なくとも一方の最外層に存在することが好ましい。一方で本発明のフィルムが蒸着層を有する場合には、蒸着層、B層、A層がこの順に積層されることが好ましい。
【0046】
本発明のポリ乳酸系フィルムの厚みは、特に制限はないが、5μm以上550μm以下であることが好ましく、より好ましくは8〜100μm、さらに好ましくは、10〜40μmである。
【0047】
また、積層比率は特に限定されないが、フィルムの延伸性、成形性、軽量性を考慮すると、「A層の厚さ」/「B層の厚さの合計」が、1/3〜12/1の比率であることが好ましく、より好ましくは1/2〜8/1、さらに好ましくは1/1〜4/1である。ここで「B層の厚さの合計」とは、B層が1層のみ存在する場合には該B層の厚みを意味し、B層が2層存在する場合には、該B層の厚みの和を意味する。
【0048】
フィルムに好ましい取扱い性、機能的な摩擦係数性状を付与するため、B層には、無機または有機の充填剤を含ませてもよい。
【0049】
B層の充填剤は、平均粒径が好ましくは0.1μm〜3μm、より好ましくは0.5μm〜2μmである。またB層中の充填剤の含有量は、好ましくはB層の全成分100質量%において0.01質量%〜0.3質量%、より好ましくは0.01質量%〜0.1質量%である。B層中の充填剤が、平均粒径について3μmより大きい場合や含有量について0.3質量%より大きい場合には、例えば、B層上に蒸着層を形成した際に、あまりにも多数の大きい突起によって蒸着層上に転写欠陥(たとえば掻き傷やピンホール)が発生することにより、ガスバリア性が損なわれることがある。B層中の充填剤は、本発明の効果を損なわない限り特に限定はされないが、前述のA層中に用いられる充填剤と同じものを用いることができる。なお、ポリ乳酸系樹脂と良好な相溶性を示すことから、B層中の充填剤としてはケイ酸アルミニウムが好ましい。B層中の充填剤としてケイ酸アルミニウムを用いると、B層の主体であるポリ乳酸系樹脂とケイ酸アルミニウムとの相溶性が優れるために、B層中の充填剤周辺に空隙が出来にくい利点がある。
【0050】
なお、本発明のフィルムを軽量性に優れ、かつ機械特性に優れたものとするためには、B層が空隙を有さないことが好ましい。B層が空隙を有さないことにより、本発明のフィルムに優れた機械特性を付与することができる。本発明フィルムのB層に好ましい表面平滑性を与え、かつB層が空隙を有さないように制御するためには、A層及びB層の積層構成、厚み構成、充填剤の種類、粒径、含有量を前述の好適な範囲で適宜調整し、さらに少なくとも一軸方向に延伸する方法を挙げることができる。A層に空隙を形成させて、同時にB層には空隙を形成させないで、ポリ乳酸系フィルムの見かけ比重を1.1g/cm以下とするための好ましい延伸法方・条件等については、後述する。
【0051】
本発明のフィルムは、蒸着層を有さない場合には、B層が少なくとも一方の最外層にあり、B層側の表面のSRa(中心線平均表面粗さ)が200nm以下であることが好ましい。そして蒸着層は、このような中心線平均表面粗さが200nm以下のB層上に形成されることが好ましい。B層の中心線平均表面粗さは、より好ましくは15nm以上150nm以下である。B層のSRaが200nmよりも大きいと、突起のサイズまたは数が大きくなって、フィルムのB層面が粗くなりすぎる。それによって、印刷インキとの接着性、蒸着層を付与した際の蒸着層との接着性やガスバリア性が低下する。
【0052】
なお、B層のSRaを200nm以下にするためには、A層及びB層の積層構成、厚み構成、B層中の充填剤の種類、粒径、含有量を前述の好適な範囲で適宜調整し、後述の延伸方法、及び条件で本発明のフィルムを作製することが好ましい。
【0053】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、本発明の効果を損なわない限り、添加剤を加えることも可能である。使用可能な添加剤としては、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、疎水性物、質剥離剤、カップリング剤、連鎖延長剤、末端基キャッピング剤、酸素吸収剤、吸湿剤、耐着色剤、紫外線吸収剤、静電防止剤、可塑剤、成核剤、滑剤、接着向上剤、顔料などがある。
【0054】
本発明のポリ乳酸系フィルムに意匠性を付与するために、目的に応じて、B層の表層に、印刷層を形成することができる。印刷層は、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所望の印刷模様を印刷して形成されるものである。当該印刷層に使用するインキと本発明のフィルム中のB層との接着性を良くするという観点から、B層の表層に、空気、窒素、炭酸ガス雰囲気下でのコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を施しても構わない。印刷は、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の公知の各種印刷方法により形成することができる。また、印刷に使用するインキは、水性インキであっても、溶剤系インキ等の非水性インキのいずれであってもよい。
【0055】
印刷層の厚みは、特に制限はないが、印刷外観の観点から、0.1μm〜10μmである事が好ましく、より好ましくは0.2μm〜3μm、さらに好ましくは0.4μm〜1μmである。
【0056】
本発明のポリ乳酸系フィルムにガスバリア性を付与するために、B層の表層に、金属または無機酸化物からなる蒸着層を形成することができる。蒸着層を有する本発明のポリ乳酸系フィルムは、蒸着層、B層、A層が、この順に積層された態様である。当該蒸着層に用いる金属、または無機酸化物としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。生産性を保持あるいは向上させながら、ガスバリア性をも向上させるために、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素がより好ましく用いられる。アルミニウムを用いた蒸着層は、経済性、ガスバリア性能に優れていることから好ましく、酸化アルミニウム、または酸化珪素を用いた蒸着層は、透明性に優れ、コストの点からも好ましい。
【0057】
真空プロセスでは、ガスバリア性の一層の向上のためには、蒸着層の表面をプラズマ処理やコロナ処理することが好ましい。コロナ処理を施す際の処理強度は5〜50W・分/mが好ましく、より好ましくは10〜45W・分/mである。また、金属、または無機酸化物からなる蒸着層を設ける前に、プラズマ放電下において核付金属蒸着層を設けることは、蒸着層の接着性向上ひいてはそれに伴うガスバリア性向上の観点から好ましい。この場合、プラズマ放電を酸素及び/または窒素ガス雰囲気で行うことが好ましく、核付金属として銅を用いることが好ましい。
【0058】
また、A層は本発明の効果を損なわない範囲でその他の熱可塑性樹脂を含有しても構わない。ここでいう熱可塑性樹脂としては、B層が含有可能なその他の熱可塑性樹脂として記した熱可塑性樹脂と同じものを用いることができる。
【0059】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、フィルムの機械特性、軽量性、B層への表面平滑性を付与するという観点から、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察した際に、B層は空隙を有さず、A層は空隙を有する構造となっていることが好ましい。なお、空隙の有無の確認方法は後述の「物性の測定方法および効果の評価方法」部分に記載する。A層が空隙を有するための方法及びB層が空隙を有さないための方法は、前述の通りである。
【0060】
本発明のポリ乳酸系フィルムは、機械特性、耐熱性、寸法安定性を付与し、A層に空隙を形成させてフィルム全体を軽量化するという観点から、少なくとも一軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。延伸方向は、フィルムの長手方向、幅方向のどちらでも構わないが、さらなる軽量性を付与するという観点からフィルムの長手方向、幅方向の両方向に二軸延伸することがより好ましい。かかる延伸の方法としては、特に限定されないが、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法等の公知の二軸延伸法、あるいはそれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0061】
以下に、B層、A層がこの順に直接積層された本発明のポリ乳酸系フィルムの製造方法について述べる。
【0062】
各々の押出機にA層、B層に用いる樹脂組成物を溶融押出し、それぞれ金網メッシュによる異物除去、ギアポンプによる流量適性化を行った後、マルチマニホールド口金、または口金上部に設置したフィードブロックに供給する。なお、上記マルチマニホールド口金、またはフィードブロックには、必要なフィルム層構成に応じて、所望の数、所望の形状の流路が設けられている必要がある。各押出機から押し出された溶融樹脂は、上記の通りマルチマニホールド口金、またはフィードブロックにて合流せしめ、口金よりシート状に共押出される。当該シートは、エアナイフ、または静電印加等の方式により、キャスティングドラムに密着させ、冷却固化せしめて未延伸シートとする。
【0063】
ここで、ゲルや熱劣化物等の異物の混入による表面荒れを防ぐために、50〜400meshの金網メッシュを使用することが好ましい。
【0064】
次いで、このようにして得られた未延伸シートを逐次二軸延伸させるために、該未延伸シートをロールに通して予熱し、引き続き周速差を設けたロール間に通し、縦方向に延伸し、ただちに室温に冷却、引き続き該縦一軸延伸フィルムをテンターに導いて横延伸し、次いで横方向に弛緩を与えつつ、熱固定して巻取る。このようにして本発明のフィルムを作製する。
【0065】
本発明のフィルムの縦・横の延伸温度は、延伸性、平面性の向上、機械特性の向上、及び所望の比重(見かけ比重1.1g/cm以下)のフィルムが得られるという観点から、60〜100℃以下が好ましい。延伸温度が60℃未満であるとフィルム破れが発生し、100℃を超えるとA層中に十分な空隙が形成されず、所望の比重(見かけ比重1.1g/cm以下)のフィルムを得ることが困難である。より好ましくは65〜90℃であり、さらに好ましくは70〜85℃である。延伸倍率は縦・横延伸それぞれ、2.0〜10.0倍が好ましく、より好ましくは2.2〜8.0倍であり、さらに好ましくは2.5〜5.0倍である。また、延伸方式は特に限定されものではなく、一段で行ってもよく、温度、延伸倍率、延伸速度等を変えて、多段方式で行ってもよい。
【0066】
また、延伸後は、フィルムに所望の機械特性、寸法安定性を付与するために弛緩熱処理し、冷却することが好ましい。熱処理温度は、70〜180℃以下が好ましい。より好ましくは75〜170℃であり、さらに好ましくは80〜160℃である。熱処理方式は限定されものではないが、ポリエステルフィルムの中でもポリ乳酸系フィルムはガラス転移点以上の温度での熱収縮応力が大きく、延伸温度と熱処理温度との温度差により、テンター内でフィルム走行方向に向かって凹形の曲線を呈するボーイング現象がよく問題になるということから、熱処理ゾーンの温度を段階的に変化させる段階熱処理を行うことが好ましい。適正な延伸後、このような条件下で弛緩熱処理することにより、ボーイングの小さい、平面性の良好なフィルムを得ることができる。
【0067】
また、上記方法にて作製せしめた本発明のフィルムのB層に、金属または無機酸化物からなる蒸着層を付与し、蒸着加工された蒸着フィルムとした際には、水蒸気透過度は、1.0g/m/day以下であることが好ましい。水蒸気透過度が1.0g/m/dayを越えると、水蒸気バリア性に劣り、当該フィルムを包装材料として用いて包装体に加工した際、内容物の鮮度保持性に劣る場合がある。蒸着フィルムの水蒸気透過度は、より優れた水蒸気バリア性が求められる用途には、より好ましくは0.5g/m/day以下であり、さらに好ましくは0.25g/m/day以下、最も好ましくは0.1g/m/day以下である。なお、水蒸気バリア性は良好であるほど好ましく、特に下限は設けられないが、0.01g/m/day程度が実現可能な下限と推察される。なお、水蒸気透過度は、蒸着層が形成される層の中心線平均表面粗さ、蒸着層の金属、または無機酸化物の種類、蒸着層の厚さ、蒸着層の欠陥(ピンホール、スクラッチ等)量、蒸着層とフィルムの蒸着膜接着力等により制御できる。
【0068】
また、酸素透過度は、1.0cc/m/day/atm以下であることが好ましい。蒸着フィルムの酸素透過度が1.0cc/m/day/atmを越えると、酸素バリア性に劣り、当該蒸着フィルムを包装材料として用いて包装体に加工した際、内容物の鮮度保持性に劣る場合がある。蒸着フィルムの酸素透過度は、より優れた酸素バリア性が求められる用途には、より好ましくは0.5cc/m/day/atm以下であり、さらに好ましくは0.25cc/m/day/atm以下、最も好ましくは0.1cc/m/day/atm以下である。なお、酸素バリア性は良好であるほど好ましく、特に下限は設けられないが、0.01cc/m/day/atm程度が実現可能な下限と推察される。蒸着フィルムの酸素透過度は、蒸着層が形成される層の平均表面粗さ、ガスバリア性樹脂層の積層厚み、蒸着層の金属、または無機酸化物の種類、蒸着層の厚さ、蒸着層の欠陥(ピンホール、スクラッチ等)量等により制御できる。
【0069】
本発明のフィルムの引張伸度(%)は、包装材料等の用途で用いるためのハンドリング性や積層・バッグ成形などの下流側加工プロセスにおける取り扱い性の観点から、MD方向、TD方向がそれぞれ20%以上であることが好ましい。引張伸度(%)が20%未満であると、包装材料のフィルムとして用いた際に破れやすくなるため好ましくない。また、同様の理由から、引張弾性率(GPa)は、MD方向、TD方向がそれぞれ1.5GPa以上であることが好ましい。なお、引張伸度と引張弾性率は、A層及びB層の樹脂構成、積層比、厚み構成、A層の空隙率等により制御できる。
【0070】
以上の方法を用いて本発明のポリ乳酸系フィルムを作製することができる。本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂及び充填剤を含むA層、A層の少なくとも片面にポリ乳酸系樹脂を主体とするB層を有し、フィルム全体の見かけ比重が1.1g/cm以下であるフィルムを作製することにより、軽量化しているにも関わらず、機械特性に優れたポリ乳酸系フィルムを提供することが可能となる。

[物性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における物性の測定方法および効果の評価方法は下記の通りである。
【0071】
1.各層の厚み及び空隙有無
フィルムのTD方向のセンター部からサンプルを切り出した。エポキシ樹脂を用いた樹脂包埋法により、ウルトラミクロトームを用い、サンプル片のMD方向−厚み方向断面を観察面とするように−100℃で超薄切片を採取した。このフィルム断面の薄膜切片を、走査型電子顕微鏡を用いて倍率1000倍(倍率は適宜調整可能)でフィルム断面写真を撮影し、各層の厚みを測定した。観察箇所を変えて、10箇所で測定を行い、得られた値の平均値を各層の厚み(μm)とした。
【0072】
また、同様の方法にてフィルム断面写真を観察箇所を変えて、10箇所で撮影し、各層における空隙の有無を確認した。なお、ここでいう空隙とは、3.0μm以上の空間径を有する部分をいう。つまり空隙の有無は、空間径3.0μm以上の部分が、撮影した10箇所において1つでも存在すれば、有りと判断した
2.フィルム厚み
ダイヤルゲージ式厚み計(JIS B7503(1997)、PEACOCK製UPRIGHT DIAL GAUGE(0.001×2mm)、No.25、測定子5mmφ平型)を用いて、MD方向およびTD方向に10cm間隔で10点ずつ測定し、その平均値を当該フィルムのフィルム厚み(μm)とした。
【0073】
3.比重
高精度電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて、40mm×50mm(MD方向×TD方向)にサンプリングしたフィルムを、水中置換法により10点測定し、その平均値を当該フィルムの比重とした。
【0074】
4.水蒸気透過度
温度38℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率測定装置(機種名、“パ−マトラン”(登録商標)W3/31)を使用してJIS K7129(2008)に記載のB法(赤外センサー法)に基づいて測定した。また、測定はフィルムに水蒸気流を当て、反対側で検出する測定方式で、4回測定を行い、その平均値を当該フィルムの水蒸気透過率(g/m/day)とした。
【0075】
5.酸素透過度
温度23℃、湿度0%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(機種名、“オキシトラン”(登録商標)(“OXTRAN”2/20))を使用して、JIS K7126−2(2006)に記載の電解センサ法に基づいて測定した。また、測定はフィルムに水蒸気流を当て、反対側で検出する測定方式で、4回測定を行い、その平均値を当該フィルムの酸素透過度(cc/m/day/atm)とした。
【0076】
6.ヒートシール強度測定
フィルムのヒートシール強度の測定は、ヒートシール機(TP−701S HEAT SEAL TESTER、TESTER SANGYO CO, LTD )を用いて、2.1kgf/cm、1秒の滞留時間において、テフロン(登録商標)被覆した加熱式の平面型上部シール固定具およびゴム製でガラスクロス被覆した非加熱式の下部シール固定具とともに行った。フィルムは、所定のシール温度範囲(たとえば90〜160℃の範囲で10℃ずつの増分)において、B層側同士でヒートシールし、それぞれのシール強度を大英科学精機製作所製引張り試験機で測定した。ヒートシールしたサンプルを25mm幅の短冊に切り出し、シールされていない二つの端部をインストロン試験機の上部と下部のクランプに取り付け、シールした端部をシールされていない二つの端部に対して90°の角度で支持し、90°のT式剥離試験を行う。100g/25mm以上のシール強度を達成できる最低温度をヒートシール開始温度とし、ヒートシール性を以下の基準にて判断した。○以上が実用的に使用できる範囲である。
◎:ヒートシール開始温度が95℃以上115℃未満
○:ヒートシール開始温度が115℃以上155℃未満
△:いかなるシール温度においても100g/25mm以上のシール強度を達成できない。
【0077】
7.蒸着膜接着強度測定
フィルムに蒸着層を形成して得られた蒸着フィルムと未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)の縦方向を揃えて、下記条件でドライラミネートした。
・CPP: 東レフィルム加工(株)製“トレファン”NO #60 ZK93KM
・接着剤: 東洋モートン(株)製AD503/cat10
・配合量: AD503/cat10/酢酸エチル=20/1/20質量%
・塗布: メタバー#12を使用し、CPPのコロナ処理面側に接着剤を塗布した。
・乾燥: 80℃、45秒
・ラミネート: 乾燥後、CPP上の塗布面をフィルムの蒸着層上にラミネートした。
・硬化: 40℃、48時間
得られたサンプルから幅15mmの試験片を取り出し、下記条件で剥離試験を行った。剥離力曲線において、剥離開始後の上限値と下限値を読み取り、フィルムの蒸着膜接着強度とした。
・剥離試験機: 大英科学精機製作所製引張り試験機
・剥離角度: 180°
・剥離速度: 200mm/分
・チャート速度:20mm/分
・剥離方向: MD方向
・サンプル幅: 15mm
同じサンプルについて3本の試験片を採取し、同様の測定を3回行った。得られた値の平均値を蒸着膜接着強度(g/15mm)とした。
【0078】
8.引張伸度、引張弾性率測定
引張伸度(%)
恒温槽を備えたオリエンテック社製TENSILON UCT−100を用いて、23℃における応力−歪み測定を行い、23℃におけるMD方向とTD方向の伸度を測定した。
【0079】
具体的には、MD方向およびTD方向に長さ150mm、幅10mmの短冊状にサンプルを切り出し、23℃に調整された恒温槽の中で、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K−7127(1999)に規定された方法にしたがって測定を行い、10回の測定の平均伸度(%)を、MD方向とTD方向について求めた。
【0080】
引張弾性率(GPa)
上記に記載した方法で、23℃における応力−歪み測定を行い、応力−歪み曲線の最初の直線部分を用いて、直線上の2点間の応力の差を同じ2点間の歪みの差で除し、引張弾性率を計算した。測定は計10回行い、その平均値を採用した。これをMD方向、TD方向、それぞれについて算出した。
【0081】
9.B層の中心線平均表面粗さ(Ra)
JIS B0601(2001)に従って、触針式表面粗さ計(小坂研究所(株)製、高精度薄膜段差測定器、型式:ET30HK)を用いてB層表面について以下の条件で測定を行った。なお、この時の条件は、以下とした。
・触針走査方向:フィルムのTD方向
・測定モード:触針式(STYLUS)
・処理モード:8(ROUGHNESS)
・測定長さ:1mm
・触針径:円錐型0.5μmR
・荷重:16mg
・カットオフ:250μm
・測定ライン数:30本
・走査速度:100μm/秒
・ピッチ:X方向4μm、Y方向10μm
・SLOPE COMP:ON
・GAIN:×1
・測定面積:0.2988mm
・標準面積:0.1mm
【0082】
中心線平均表面粗さは、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、MD方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(X)で表した時、次の式によって求められる値(μm)を中心線平均表面粗さRaとする。
Ra=(1/L)∫|f(X)|dx。
なお、同じ測定をサンプル毎に測定個所を変えて3回行い、得られた値の平均値を算出し、当該フィルムのB層のRa(μm)とした。
【0083】
10.熱収縮率
本発明フィルムをMD方向およびTD方向に長さ200mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに150mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して120℃に加熱した熱風オーブン内に15分間設置し、加熱処理を行った。熱処理後に標線間の距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。同じ測定を各サンプルの各方向について5回ずつ行い、得られた値の平均値を算出し、当該サンプルのMD方向およびTD方向の熱収縮率(%)とした。
【0084】
11.B層の融解熱量ΔH(J/g)
JIS K7121(1999)に基づいて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション“SSC/5200”を用いた。サンプルパンにフィルムのB層から削り取った樹脂組成物を5mg封入して当該装置にセットし、窒素雰囲気下で20℃/分の速度で25℃から250℃まで昇温した際に得られる熱量曲線において、ベースラインを直線として結晶の融解に伴う発熱ピークの面積を求め、ΔH(J/g)とした。
【0085】
12.印刷インキ接着性
東洋インキ(株)製ニトロセルロース製インキCCSTをグラビアロールでB層の表面に印刷後、40℃、90%相対湿度雰囲気中に24時間放置後、セロテープ剥離テストを行った。評価基準を次に示す。
◎ : 全く剥離しない。
○ : 5以上10%未満の部分がセロハンテープ側に剥離する。
△ : 10以上50%未満の部分がセロハンテープ側に剥離する。
× : 50%以上の部分がセロハンテープ側に剥離する。
実用的には○以上であれば問題無く使用できる。
【実施例】
【0086】
本発明の製造例、実施例、比較例で用いた原料は下記の通りである。なお、製造例、実施例、比較例では下記の略称で表記することがある。
[cPLA]
回転式真空乾燥機にて100℃で4時間乾燥した結晶性ポリL−乳酸(Nature Works製“Ingeo”4032D;D体量=1.4mol%、融点=168℃、Tg=58℃)。
[cPLA−MB1]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 95質量%、水澤化学工業(株)製“シルトン”JC−30 5質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB1とした。なお、cPLA及びJC−30の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 95質量%及びJC−30 5質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[aPLA]
回転式真空乾燥機にて50℃で8時間乾燥した非晶性ポリL−乳酸(Nature Works製“Ingeo” 4060D;D体量=12mol%、Tg=58℃)。
[aPLA−MB2]
上記aPLAにおいて、上記aPLA 95質量%、水澤化学工業(株)製“シルトン”JC−30 5質量%、コンパウンドして作製し、50℃で5時間乾燥したチップをaPLA−MB2とした。なお、aPLA及びJC−30の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:aPLA 95質量%JC−30 5質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[炭酸カルシウムその1]
炭酸カルシウム(三共精粉株式会社製、商品名“E#2300”、平均粒子径:1.4μm、処理剤:ステアリン酸、処理剤の割合:2.0質量%)
[cPLA−MB3]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 95質量%、炭酸カルシウム“E#2300” 5質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB3とした。なお、cPLA及びE#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 95質量%及びE#2300 5質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[cPLA−MB4]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 80質量%、炭酸カルシウム“E#2300” 20質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB4とした。なお、cPLA及びE#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 80質量%及びE#2300 10質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:E#2300 10質量%
[cPLA−MB5]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 60質量%、炭酸カルシウム“E#2300” 40質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB5とした。なお、cPLA及びE#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 60質量%及びE#2300 20質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:E#2300 20質量%
[cPLA−MB6]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 45質量%、炭酸カルシウム“E#2300” 55質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB6とした。なお、cPLA及びE#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 45質量%E#2300 27.5質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:E#2300 27.5質量%
[cPLA−MB7]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 35質量%、炭酸カルシウム“E#2300” 65質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB7とした。なお、cPLA及びE#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 30質量%及びE#2300 70質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[炭酸カルシウムその2]
炭酸カルシウム(三共精粉株式会社製、商品名“#2300”、平均粒子径:1.4μm、処理剤:なし)
[cPLA−MB8]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 80質量%、炭酸カルシウム“#2300” 20質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB8とした。なお、cPLA及び#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 80質量%及び#2300 20質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[cPLA−MB9]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 60質量%、炭酸カルシウム“#2300” 40質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB9とした。なお、cPLA及び#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 60質量%及び#2300 20質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:#2300 20質量%
[cPLA−MB10]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 60質量%、炭酸カルシウム“#2300” 40質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB10とした。なお、cPLA及び#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 60質量%及び#2300 40質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[cPLA−MB11]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 35質量%、炭酸カルシウム“#2300” 65質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB11とした。なお、cPLA及び#2300の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 35質量%及び#2300 65質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[PMMA]
静置式真空乾燥機にて80℃で8時間乾燥したポリメチルメタクリレート(アルケマ製 VS−100)。
[酸化チタン]
酸化チタン(石原産業社製、商品名“タイペークP F − 7 4 0” 平均粒子径:0 . 2 5 μ m、バナジウム含有量1 p p m 、アルミナ、シリカ、ジルコニアによる処理済)
[cPLA−MB12]
上記cPLAにおいて、上記cPLAを80質量%、酸化チタン“タイペークP F − 7 4 0”を20質量%をコンパウンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB12とした。なお、cPLA及びタイペークP F − 7 4 0の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 80質量%及びタイペークP F − 7 4 0 20質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
[cPLA−MB13]
上記cPLAにおいて、上記cPLA 60質量%、酸化チタン“タイペークP F − 7 4 0”40質量%をブレンドして作製し、100℃で5時間乾燥したチップをcPLA−MB13とした。なお、cPLA及びタイペークP F − 7 4 0の添加方法は、下記のように行った。
ホッパー:cPLA 60質量%及びタイペークP F − 7 4 0 40質量%をドライブレンド
サイドフィーダー:使用しない
本発明を、実施例に基づいて説明する。なお、所望の厚み構成を得るためには、特に断りのない限り、各押出機のポリマーの押出量を所定の値に調節した。
(実施例1)
単軸押出機(A)に、A層の樹脂組成物として、cPLA−MB4 100質量%供給し、200℃で押出し、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させ、2種3層積層タイプのマルチマニホールド口金に供給した。また、単軸押出機(B)に、B層の樹脂組成物として、aPLAを97質量%、aPLA−MB2 3質量%予め混合したブレンド原料を供給し、220℃で押出し、押出機(A)とは別の流路で、100meshの金網メッシュにてポリマーを濾過させた後、マルチマニホールド口金に供給し、押出機(B)/押出機(A)/押出機(B)の順で積層されるようにマルチマニホールド口金内で合流せしめ、口金よりシート状に共押出した。この際、当該押出シートを30℃の温度の鏡面金属ドラムにキャストしてシート状に冷却固化した。
【0087】
得られた未延伸シートを、ロール延伸機にて80℃で縦方向に3倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。次いで、得られた一軸延伸フィルムを、テンターに導入し、両エッジをクリップで把持しながら、80℃で横方向に3倍延伸した。次いで、熱処理ゾーンを2区間に分け、1区間目は120℃で熱処理を行い、引き続き2区間目は横方向に5%の弛緩を与えながら140℃で熱処理をし、冷却後、巻き取った。
【0088】
得られた二軸延伸フィルムは20μmであり、厚み構成は、B層/A層/B層=1/5/1であった。また、当該二軸延伸フィルムを24時間のエージングの後、B層表面に窒素雰囲気下で、コロナ処理を処理強度は30W・min/mで施し、その後フィルム走行 装置を具備した真空蒸着装置内にセットした。1.00×10−2Paの高減圧状態にした後に、0℃の冷却金属ドラム上に走行させた。この際、アルミニウム金属を加熱蒸発し、B層上に蒸着層を形成し、48時間エージングして、B層上に蒸着層を得た。当該フィルムを本発明の蒸着フィルムとした。なお、蒸着フィルムの光学濃度は、蒸着中にオンラインで確認し、2.5となるよう蒸着厚みを制御した。
る。
【0089】
得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りである。比重は通常の二軸延伸ポリ乳酸フィルムの1.24に比較して、十分に軽量化されているにも関わらず、包装材料等のフィルムとして用いるために必要となる機械特性、寸法安定性を有しており、実用性に優れるものであった。また、B層の表面は平滑であり、ヒートシール性、印刷インキ接着性に優れていた。また、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムは水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度等の各種物性に関していずれも優れていた。
(実施例2)
表1−1に示す通り、厚みを12μmになるよう調整した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例2とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、実施例1のフィルムと同様に、比重は十分に低減されており、機械特性、寸法安定性、ヒートシール性、印刷インキ接着性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度等の各種物性に関していずれも優れていた。
(実施例3)
表1−1に示す通り、縦延伸と横延伸の温度をそれぞれ72℃になるように調整した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例3とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、比重が低下し、さらに軽量化したフィルムとなった。
(実施例4)
A層に用いる樹脂をcPLA−MB5 100質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例4とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、A層に含有する炭酸カルシウム添加量を増加したため、比重が低下し、さらに軽量化したフィルムとなった。
(実施例5)
A層に用いる樹脂をcPLA−MB9 100質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例5とした。マトリックス樹脂中で充填剤が凝集し、分散性が不十分であったためか、フィルムの延伸性が劣っていた。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、B層の表面は粗れて、表面平滑性に劣り、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムには欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され水蒸気バリア性、酸素バリア性が若干劣っていた。
(実施例6)
A層に用いる樹脂をcPLA−MB11 100質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例6とした。マトリックス樹脂中で充填剤が凝集し、分散性が不十分であったためか、フィルムの延伸性が劣っていた。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、B層の表面は粗れて、表面平滑性に劣り、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムには欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され水蒸気バリア性、酸素バリア性が若干劣っていた。
(実施例7)
A層に用いる樹脂をcPLA−MB6 100質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例8とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、A層に含有する炭酸カルシウム添加量を増加したため、比重が低下し、さらに軽量化したフィルムとなった。
(実施例8)
B層に用いる樹脂を、aPLA 19.4質量%、aPLA−MB20.6質量%、cPLA 77.6質量%、cPLA−MB1 2.4質量%予め混合したブレンド原料に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例8とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、比重は十分に低減されており、機械特性、寸法安定性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度に関しては優れているものの、表層にcPLAを多く含有しているため、ヒートシール性、印刷インキ接着性が若干劣っていた。
(実施例9)
B層に用いる樹脂を、cPLA 97質量%、cPLA−MB13質量%予め混合したブレンド原料に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例9とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、機械特性、寸法安定性に関しては優れているものの、表層にcPLAを用いているため、ヒートシール性、印刷インキ接着性が劣っていた。また、実施例1のフィルムと比較して、蒸着層の欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され、水蒸気バリア性、酸素バリア性は若干劣っていたが、実用性に問題ない程度のガスバリア性は十分に保持しており、優れたフィルムであった。
(実施例10)
B層に用いる樹脂を、aPLA 48.5質量%、aPLA−MB21.5質量%、cPLA 48.5質量%、cPLA−MB1 1.5質量%予め混合したブレンド原料に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例10とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、比重は十分に低減されており、機械特性、寸法安定性、ヒートシール性、印刷インキ接着性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度等の各種物性に関していずれも優れていた。
(実施例11)
B層に用いる樹脂を、aPLA 77.6質量%、aPLA−MB22.4質量%、cPLA 19.4質量%、cPLA−MB1 0.6質量%予め混合したブレンド原料に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例11とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−1に示す通りで、比重は十分に低減されており、機械特性、寸法安定性、ヒートシール性、印刷インキ接着性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度等の各種物性に関していずれも優れていた。
(実施例12)
表1−2に示す通り、厚み構成をB層/A層/B層=1/3/1になるように調整した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例12とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、比重は通常の二軸延伸ポリ乳酸フィルムの1.24に比較して、軽量化されているものの、フィルム全体における空隙を有するA層の割合が低下したため、実施例1のフィルムに比較して比重は高くなった。また、包装材料等のフィルムとして用いるために必要となる機械特性、寸法安定性は良好であり、ヒートシール性、印刷インキ接着性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度等の各種物性に関していずれも優れていた。
(実施例13)
2種2層積層タイプのマルチマニホールド口金に変更し、押出機(B)/押出機(A)の順で厚み構成がB層/A層=1/5になるように調整した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例13とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、実施例1のフィルムと同様に、比重は十分に低減されており、機械特性、寸法安定性、ヒートシール性、印刷インキ接着性、水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度等の各種物性に関していずれも優れていた。
(実施例14)
B層に用いる樹脂を、aPLA 57質量%、aPLA−MB23質量%、PMMA 40質量%予め混合したブレンド原料に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを実施例14とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、比重は十分に低減されているにも関わらず、優れた機械特性を有していた。また、B層に含有したPMMAの効果のため、延伸性、寸法安定性はさらに優れていた。また、B層の表面は平滑であり、ヒートシール性、印刷インキ接着性に優れていた。また、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムは水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度等の各種物性に関していずれも優れていた。
(比較例1)
A層に用いる樹脂をcPLA 75質量%、cPLA−MB425質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを比較例1とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、A層に含有する炭酸カルシウム添加量が減らしたため、比重が1.27と高くなり、軽量性に劣っていた。
(比較例2)
単軸押出機(B)ならびに単層タイプの口金を用いて、押出温度を200℃に変更し、B層に用いる樹脂をcPLA−MB8 100質量%にし、単膜フィルムとした以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを比較例2とした。しかしながら、マトリックス樹脂中で充填剤が凝集し、分散性が不十分であったためか、フィルムの延伸性が劣っていた。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、比重は1.2であり、軽量性に劣っていた。また、包装材料等のフィルムとして用いるために必要となる機械特性を有しておらず、実用性に劣るものであった。さらに、B層の表面は大きく粗れており、表面平滑性に劣り、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムには多数の欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度が劣っていた。
(比較例3)
B層に用いる樹脂をcPLA−MB10 100質量%に変更した以外は、比較例2と同様にして製造したフィルムを比較例3とした。しかしながら、マトリックス樹脂中で充填剤が凝集し、分散性が不十分であったためか、著しく製膜性が悪化し、テンター内で破れが多発した。ロールでの採取は困難であったが、一部分のみ採取したフィルムを評価した。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、比重は1.28であり、軽量性に劣っていた。また、包装材料等のフィルムとして用いるために必要となる機械特性を有しておらず、実用性に劣るものであった。さらに、B層の表面は大きく粗れており、表面平滑性に劣り、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムには多数の欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度が劣っていた。
(比較例4)
B層に用いる樹脂をcPLA−MB11 100質量%に変更した以外は、比較例2と同様にして製造したフィルムを比較例4とした。しかしながら、マトリックス樹脂中で充填剤が凝集し、分散性が不十分であったためか、著しく製膜性が悪化し、テンター内で破れが多発し、サンプル採取が不可能であった。
(比較例5)
B層に用いる樹脂をcPLA−MB12 100質量%に変更した以外は、比較例2と同様にして製造したフィルムを比較例5とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、比重は通常の二軸延伸ポリ乳酸フィルムの1.24に比較して、1.62と軽量化されておらず、軽量性に劣っていた。また、包装材料等のフィルムとして用いるために必要となる機械特性を有しておらず、実用性に劣るものであった。さらに、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムには多数の欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度が劣っていた。
(比較例6)
A層に用いる樹脂をcPLA−MB12 100質量%、B層に用いる樹脂をcPLA−MB13 100質量%にして、B層の押出温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様にして製造したフィルムを比較例6とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、比重は通常の二軸延伸ポリ乳酸フィルムの1.24に比較して、1.72と軽量化されておらず、軽量性に劣っていた。また、包装材料等のフィルムとして用いるために必要となる機械特性を有しておらず、実用性に劣るものであった。さらに、B層上に蒸着層を設けた蒸着フィルムには多数の欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され水蒸気バリア性、酸素バリア性、蒸着膜接着強度が劣っていた。
(比較例7)
B層に用いる樹脂をcPLA−MB1 100質量%に変更した以外は、比較例と同様にして製造したフィルムを比較例7とした。得られたフィルム、蒸着フィルムの特性値は表2−2に示す通りで、比重は1.24であり、軽量性に劣っていた。また、ヒートシール性、印刷インキ接着性に劣っていた。さらに、実施例1のフィルムと比較して、蒸着層の欠陥(ピンホール、スクラッチ)が確認され、水蒸気バリア性、酸素バリア性は劣っていた。
【0090】
【表1−1】

【0091】
【表1−2】

【0092】
【表2−1】

【0093】
【表2−2】

【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、軽量化しているにも関わらず、機械特性に優れたポリ乳酸系フィルムに関するものであり、食品などに用いられる各種包装材料、および各種工業材料などに好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂及び充填剤を含むA層、及びA層の少なくとも片面にポリ乳酸系樹脂を主体とするB層を有し、フィルム全体の見かけ比重が1.1g/cm以下であることを特徴とするポリ乳酸系フィルム。
【請求項2】
走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察した際に、B層は空隙を有さず、A層は空隙を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項3】
A層が、A層の全成分100質量%に対して、40質量%以上90質量%以下のポリ乳酸系樹脂及び10質量%以上60質量%以下の充填剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項4】
B層が、B層の全成分100質量%に対して、50質量%以上100質量%以下のポリ乳酸系樹脂を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項5】
B層が少なくとも一方の最外層にあり、B層側の表面の中心線平均表面粗さが200nm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項6】
前記充填剤が、炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項7】
前記充填剤が、脂肪酸及び/又はリン酸エステル系化合物により処理されたものであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項8】
少なくとも一軸に延伸されたことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項9】
A層及びB層が、他の層を介さずに直接積層されたことを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。
【請求項10】
蒸着層、B層、A層が、この順に積層されたことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載のポリ乳酸系フィルム。

【公開番号】特開2013−22803(P2013−22803A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158715(P2011−158715)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】