説明

ポリ乳酸系単層化粧シート

【課題】平面状基材へのラミネート加工は勿論のこと、立体形状の基材へのラッピング加工や真空成形加工等の立体成形にも耐えることができ、しかも耐傷付き性等の表面物性にも優れた植物由来原料から構成された化粧シートを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂シートが、ポリ乳酸樹脂を主剤としてポリ乳酸樹脂100重量部に対してオイル状の可塑剤を0.1〜10重量部添加してなるものを2軸延伸したシートであり、前記熱可塑性樹脂シートのガラス転移点が50〜90℃、引っ張り破断伸び率(JIS K6781準拠)が2.0〜3.5GPであり、引っ張り破断伸び率が100〜200%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品などの表面化粧等に使用するための化粧シートに関するものであり、さらに詳しくは、寸法安定性や表面強度に優れ、ラッピングラミネートまたは真空成型ラミネート等の立体成形用途にも好適であり、好ましくは植物由来プラスチックのポリ乳酸樹脂を主原料とし焼却時にも有毒ガスを発生せず地球環境と人体に優しい化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
係る樹脂系の化粧シートとしては、絵柄の印刷を熱可塑性樹脂基材シートの表面側又は裏面側に施した単層構成の化粧シートと、絵柄層をその裏面側の熱可塑性樹脂基材シートと表面側の透明樹脂層との間に挟持した複層構成の化粧シートとがある。前者は構造が単純なので安価かつ簡便に製造可能である利点があり、後者は製造面や価格面からはやや不利ではあるが、絵柄が表裏両面から保護されているので、絵柄の耐磨耗性や耐溶剤性、耐候性等の表面物性と、被貼着基材への接着時に使用する接着剤に対する耐性とを兼ね備え、また意匠面からも、基材シートの着色による高隠蔽化と、透明樹脂層へのエンボス加工による高意匠化とを両立できる等、性能面では多くの利点がある。係る関係により、両者は用途により要求される性能や価格に応じて使い分けられている。
【0003】
従来この種の化粧シートに使用される熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル共重合体樹脂などが該化粧シートの基材シート又はその基材シート表面の透明樹脂層などとして使用される。例えば化粧シートの基材シートには、紙または熱可塑性樹脂シートを使用し、これに印刷を施してなる印刷シートがそのまま用いられたり、表面保護層および/もしくは意匠表現層として前述の透明樹脂層が設けられたりして、木材合板、木質繊維板、パーティクルボードなど木質系基材の表面に貼合され使用される。また特に表面強度を必要とする床材および縁材には塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などの表面強度に優れる高強度な樹脂材料が使用されてきた。
【0004】
上記した各種の樹脂系の化粧シートの基材シートや透明樹脂層の構成材料としては従来、安価で加工適性や物性にも優れたポリ塩化ビニル樹脂が最も多用されて来たが、近年では環境問題に対する社会的な関心の高まりを受けて、環境への悪影響の少ないポリ塩化ビニル樹脂以外の樹脂、例えばポリオレフィン系熱可塑性樹脂を使用した化粧シート等も開発され、提案されている。
【0005】
上記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を使用した化粧シートは、化粧シートの被貼着基材へのラミネート加工やVカット加工等の二次加工上要求される柔軟性や耐白化性等の面では、従来のポリ塩化ビニル樹脂とほぼ同等の性能が比較的容易に得られるので、現在では各種のポリ塩化ビニル樹脂の代替材料の中では最も有望視されている。しかしながらその反面、熱可塑性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂は同等の柔軟性のポリ塩化ビニル樹脂と比較して表面硬度が低く、表面の耐傷付き性に劣る傾向がある。
【0006】
これに対し、ポリエステル系熱可塑性樹脂を使用した化粧シートも各種提案されている。ポリエステル系熱可塑性樹脂として最も一般的なポリエチレンテレフタレート樹脂等は、引っ張り弾性率が4GPa前後と、化粧シート用としては柔軟性に乏し過ぎ加工性が劣るため、各種の共重合成分の添加による軟質化の為の改質が試みられており、例えば冷結晶化温度とガラス転移温度との差が60℃以下の共重合ポリエステルからなり冷結晶化温度以上融点以下の準結晶融解ピーク温度を有し引っ張り弾性率が1〜500MPaである柔軟性ポリエステルフィルムを使用した化粧シートが提案されている(特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【0007】
しかし、上記した柔軟性ポリエステルフィルムは、Vカット等の折り曲げ加工による白化や破断等の問題は解消されたものの、その柔軟性ゆえに表面硬度が低く、耐傷付き性に劣るものであった。また、係る化粧シートの貼着対象である基材は必ずしも単なる平板状には限らず、各種の立体形状を有する基材も例えば浴室壁面用等の様々な用途において増加しつつあるが、係る立体形状の基材にラッピング法や真空成形法等により貼着する際に、上記した柔軟性ポリエステルフィルムは柔らか過ぎて、しわや傷等が発生しやすい等の問題点があった。
【0008】
近年では、ライフサイクルアセスメント(life−cycle assessment;以後LCAと記す)が導入されはじめており、製品が製造、使用、廃棄までで、どれくらい資源やエネルギーを使い、いろいろな汚染物質の定量や、環境への影響を評価するようになってきた(非特許文献1)。ポリ乳酸樹脂は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料の一つになり、また生分解性ポリマーであることから大きな注目を集めている。ポリ乳酸樹脂は、炭酸ガスと水とから光合成により作られる澱粉を原料とするバイオマス材料であり、しかも土中や水中で自然に加水分解し、次いで微生物により無害な分解物となる生分解性樹脂でもある。さらには燃焼により発生する熱量も少なく、また燃焼時に発生する炭酸ガスは、もともとポリ乳酸樹脂の原料となる澱粉を光合成する時に吸収した大気中の炭酸ガスであり、環境に優しい最も有望な生分解性バイオマス樹脂であるといわれて環境負荷低減になると思われる。
【0009】
またポリ乳酸樹脂は生分解性樹脂としても知られているが、生分解性樹脂による積層シートは、表面強度に優れるものもあるが、耐熱性に劣る、耐久性に劣る(生分解性)、耐薬品性に劣るなどの理由によりこれまで化粧シートとして実用化されるに至らなかった。またその一方では、従来の化粧シートが木質基材に貼合された化粧部材は、廃棄時にはその化粧シートと木質基材の分別が困難であり、また表面化粧シートの材質が判別できない、などの問題により、原料リサイクルは困難であり、また有害ガス発生の問題から焼却処理も困難であり、埋め立て処理といった廃棄処理方法をとらざるを得ないという現状の問題がある。なお、埋め立て処理をする場合に、生分解する化粧シートに有害物質が含まれないような材料設計をしなければならない。生分解する化粧シートという分子の秩序状態から無秩序状態への移行ということは自然な考えである(非特許文献3)。このときに有害物質も自然界へ拡散してしまうからである。
【0010】
このように、近年の環境意識の高まりや原油高(89.00ドル/バレル(1バレル:158.987294928リットル 米国ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)2007年10月17日(非特許文献2))、非石油系ポリマーとして普及し始めたポリ乳酸フィルムを化粧シートに使用した例が、特許文献4、5に見られる。しかしながら、これらの文献にはフィルムに関して特に具体的な記述はなく、切削加工、印刷、ラミネートなどの加工に適したフィルムの開示が望まれていた。
【0011】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムの破断伸度、破断強度を低下させる方法の例が、特許文献6、7に見られる。しかしながらこれらの例はいずれも包装材料を意図したフィルムに関するものであり、化粧シート用としての具体的な記述はなく、本発明の課題を解消するには十分とは言えない。
【0012】
また、構成的に簡易な単層の植物由来材料を化粧シート基材とした化粧シートも知られていたが、植物由来材料に石油由来材料の合成樹脂を添加しないとラミネートや立体成形に供する化粧シートを得るのは困難であった(特許文献8、9、10)。
【特許文献1】特開平6−166159号公報
【特許文献2】特開平7−017005号公報
【特許文献3】特開平7−137205号公報
【特許文献4】特開平11−129426号公報
【特許文献5】特開平11−227147号公報
【特許文献6】特開平5−104618号公報
【特許文献7】特開2001−191407号公報
【特許文献8】特開平08−295755号公報
【特許文献9】特開平11−207916号公報
【特許文献10】特開平11−227147号公報
【非特許文献1】成田幸一等、ポリエチレン製ビールケースリサイクルにおけるLCA、第1回日本LCA学会研究発表会講演要旨集、p124〜p125、2005年12月(Web版)
【非特許文献2】日本経済新聞朝刊記事、日本経済新聞社、平成19年10月18日、第43734号、14版、1頁
【非特許文献3】原島 鮮、熱力学・統計力学、改定第25刷、2000年2月25日、32頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来の技術における以上の様な問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、平面状基材へのラミネート加工は勿論のこと、立体形状の基材へのラッピング加工や真空成形加工等の立体成形にも耐えることができ、しかも耐傷付き性等の表面物性にも優れた植物由来原料から構成された化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1に記載の発明は 熱可塑性樹脂シートに絵柄層を設けた単層化粧シートにおいて、
前記熱可塑性樹脂シートが、ポリ乳酸樹脂を主剤としてポリ乳酸樹脂100重量部に対してオイル状の可塑剤を0.1〜10重量部添加してなるものを2軸延伸したシートであり、前記熱可塑性樹脂シートのガラス転移点が50〜90℃、引っ張り破断伸び率(JIS K6781準拠)が2.0〜3.5GPであり、引っ張り破断伸び率が100〜200%であることを特徴とするポリ乳酸系単層化粧シートである。
【0015】
またその請求項2に記載の発明は、前記のオイル状の可塑剤が植物由来のオイル状の可塑剤であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系単層化粧シートである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明により、単層化粧シートの熱可塑性樹脂をポリ乳酸樹脂を主剤としてオイル状の可塑剤を0.1〜10重量部添加して2軸延伸したシートとすることで、シートのガラス転移点が50〜90℃、引っ張り破断伸び率(JIS K6781準拠)が2.0〜3.5GPであり、引っ張り破断伸び率が100〜200%の範囲に調整することで、、平面状基材へのラミネート加工は勿論のこと、立体形状の基材へのラッピング加工や真空成形加工等の立体成形にも耐えることができ、しかも耐傷付き性等の表面物性にも優れた植物由来原料から構成された単層化粧シートを提供することが可能となる。
【0017】
またその請求項2記載の発明により、オイル状の可塑剤も植物由来とすることで、さらに本発明のポリ乳酸系単層化粧シートの植物由来性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明を図面に基づき詳細に説明する。
図1に本発明のポリ乳酸系単層化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。熱可塑性樹脂シート1(透明)裏面に絵柄層2を設け、その他適宜に隠蔽層3を設け、表面側に艶調整層4、導管模様層5を設けても良い。必要に応じて最裏面にプライマー層6を設けてもよい。
【0019】
図2に本発明のポリ乳酸系単層化粧シートの他の実施例の断面の構造を示す。熱可塑性樹脂シート1(着色)の表面に絵柄層2を設け、さらにその上に適宜、艶調整層4、導管模様層5を設けても良い。必要に応じて最裏面にプライマー層6を設けてもよい。
【0020】
本発明のポリ乳酸系単層化粧シートは、木質系基材などに、公知の1液や2液の水性エマルジョン接着剤や一液湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などを用いて貼り合せることで、化粧材となる。(図示せず)
【0021】
本発明における熱可塑性樹脂シート1としては、ポリ乳酸樹脂を主剤として含み、且つ、オイル状の可塑剤をポリ乳酸樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部添加してなるものを2軸延伸したシートであり、これがガラス転移点が50〜90℃、引っ張り破断伸び率(JIS K6781準拠)が2.0〜3.5GPであり、引っ張り破断伸び率が100〜200%となるように調整したものが用いられる。なお、引っ張り弾性率および引っ張り破断伸び率は、JIS K6781に従い測定された値である。
【0022】
引っ張り破断伸び率を上記数値範囲に限定する理由は、通常の真空成形等の立体成形における加熱温度(60〜90℃程度)における十分な立体成形性が得られ、内部応力の残留も少なく、適度な柔軟性と共に適度な腰や表面硬度をも備えているので、立体成形時にしわやドローダウン等を発生することもなく、表面の耐傷付き性等の表面物性も化粧シートとして十分な水準のものが得られるからである。引っ張り弾性率が2GPaに満たないと、樹脂が柔軟過ぎて表面の耐傷付き性が不十分である他、ラミネート加工時のしわや傷、また加熱成形時のドローダウン等の原因となり、一方3.5GPaを越えると、樹脂の柔軟性が不十分なため加工適性に劣り、成形不良や内部応力の残留、割れ、白化等の原因となる。また引っ張り破断伸び率が100%に満たないとラミネート加工時のしわなど加工性を著しく低下させる原因となり、一方200%を越えるとその高い引っ張り弾性率によりラミネート加工された化粧板の反りや歪みをまねいてしまう原因となる。
【0023】
熱可塑性樹脂シート1は着色してあっても、透明であっても良い。透明な場合は、絵柄層2、隠蔽層3は前記熱可塑性樹脂シート1の裏面側に設けても良い。一方、着色されている場合は、絵柄層2、隠蔽層は前記熱可塑性樹脂シート1の表面側に設けられることとなる。
【0024】
熱可塑性樹脂シート1に用いる樹脂材料としては、ポリ乳酸樹脂を単一もしくは、ポリサクシネート樹脂やその他の樹脂との混合物を主剤として用いる。またポリ乳酸樹脂の耐熱性向上させるために混合されるバイオマス材料や生分解樹脂としては、ポリヒドロキシブチレート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリカプロラクトン系、酢酸セルロース系、ポリエステルアミド系、酢酸ビニル系、デンプン系のものから適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。
【0025】
熱可塑性樹脂シート1を2軸延伸されたシートとすることにより、その樹脂配向により、表面強度や熱寸法安定性がさらに優れ、引っ張り弾性率が大きくなることにより加工時および化粧板となった状態でも寸法安定性に優れる単層化粧シートとすることができる。
【0026】
また、熱可塑性樹脂シート1には、目的の化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、加水分解抑止剤、核剤、等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
【0027】
酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては樹脂の種類にもよるが例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等、充填剤としては例えば炭酸カルシウム、滑石、蝋石、カオリン等から選ばれる1種又は2種以上の混合系で使用することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂シート1の厚みには特に制限はなく、従来の一般的な単層化粧シートの場合と同等に設定することができる。具体的には、50〜300μm程度の範囲とされる場合が多い。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂シート1には、オイル状の可塑剤を0.1重量部から10重量部添加する。可塑剤は公知石油由来の通称フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等が使えるが、本発明では植物由来の樹脂の物が望ましい。たとえば、3価アルコール(グリセリン)と脂肪酸のエステルからなる油脂のうち常温20℃±15℃(JIS Z8703−1983)で液体、固体の飽和、不飽和の脂肪油が望ましい。たとえば、エポキシ化大豆油、飽和はグリセリンの酪酸エステル、グリセリンのステアリン酸エステル。不飽和はグリセリンのオレイン酸エステル、グリセリンのリノール酸エステル等が使える。
【0030】
絵柄層2は、目的とする化粧シートに任意の所望の絵柄の意匠性を付与する目的で設けられるものであって、その絵柄の種類には特に制限はなく、例えば木目柄、石目柄、抽象柄、単色無地等、従来の化粧シートの場合と同様の各種の絵柄を採用することができる。絵柄層2の構成材料や形成方法にも特に制限はなく、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を、適当な結着剤樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる、印刷インキ又はコーティング剤等を、適宜の印刷方法又はコーティング方法によって印刷又は塗工して設けることができる。
【0031】
前記着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、又はこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
【0032】
また、前記結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はそれらの2種以上の混合物、共重合体等を使用することができる。
【0033】
また、前記溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤等の各種有機溶剤や、水等の無機溶剤、又はそれらの2種以上の混合溶剤等を使用することができる。
【0034】
その他、必要に応じて例えば体質顔料や可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種の添加剤を適宜添加することもできる。
【0035】
絵柄層2の形成方法には特に制限はなく、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば全面ベタ状の場合には上記した各種の印刷方法の他、例えばロールコート法やナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種のコーティング方法によることもできる。その他、例えば手描き法、墨流し法、写真法、レーザービーム又は電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法やエッチング法等、又はこれらの方法を複数組み合わせて行うことも勿論可能である。
【0036】
また、単層化粧シートの表面に更に優れた表面物性を付与する目的で、表面に艶調整層4を設けることもできる。艶調整層4及び導管模様層5の構成材料としては、従来より係る化粧シートの艶調整層4の構成材料として使用されている公知の各種のトップコート剤の中から選ばれる任意のものを使用することができる。一般的には、少なくとも下地を透視可能な透明性を有する必要がある他、化粧シートの用途により要求される耐磨耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性を具備させるべく、硬化性樹脂を主成分とする材料から構成することが好ましい。但し、立体成形用途の場合には、化粧シートの伸びに追従すべく柔軟性にも配慮する必要がある。
【0037】
上記艶調整層4の構成材料として具体的には、例えばメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を、好適に使用することができる。また必要に応じて、艶調整剤、滑剤、帯電防止剤、結露防止剤、抗菌剤、防黴剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。また、艶調整層4を艶の異なる2層以上から構成し、その内1層以上を絵柄状に設けることによって、表面の艶の変化による材質感や視覚的立体感を有する化粧シートを得ることもできる。
【0038】
艶調整層4の形成方法にも特に制限はなく、例えばグラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、リップコート法、キスコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、フローコート法等の従来公知の任意のコーティング法を適宜適用することができる。
【0039】
なお、熱可塑性樹脂シート1と艶調整層4との密着性が不十分である場合には、艶調整層4の塗工形成に先立ち、熱可塑性樹脂シート1の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、熱可塑性樹脂シート1と艶調整層4との間の密着性を向上することができる。
【0040】
本発明のポリ乳酸樹脂系単層化粧シートは、既に説明した様に、従来の化粧シートと同様、例えば合板やパーティクルボード等の木質系基材や、珪酸カルシウム板、木毛セメント板等の無機質系基材、FRP(繊維強化プラスチック)等の合成樹脂系基材等の各種の基材の表面に貼付して使用するものであり、一般的には該貼付の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、熱可塑性樹脂シート1を構成する樹脂の種類によっては、係る汎用のラミネート用接着剤との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、熱可塑性樹脂シート1の裏面に、上記した汎用の接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層6を設けておくことが好ましい。
【0041】
上記プライマー層6としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から熱可塑性樹脂シート1に合わせたものを選んで使用する。なお、プライマー層6に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、プライマー層6の表面が粗面化することによって化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できる他、投錨効果による前記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【0042】
本発明のポリ乳酸樹脂系単層化粧シートは、上記の通りの構成により、立体成形性や表面の耐傷付き性等に優れるのみならず、従来の各種のポリエステル系熱可塑性樹脂を使用した化粧シートと共通する数多くの利点を備えているものである。例えば、透明なポリエステル系熱可塑性樹脂を使用したものにあっては、ポリエステル系熱可塑性樹脂に特有の優れた透明性により、絵柄の鮮鋭性や表面の高光沢性に優れた化粧シートを容易に得ることができる。
【実施例1】
【0043】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、植物由来のオイル状の可塑剤としてエポキシ化大豆油を8重量部添加し、2軸延伸して、ガラス転移点が58℃、引っ張り弾性率が2.1GPa、引っ張り破断伸び率が115%の厚さ100μmの、透明な熱可塑性樹脂シート1を得た。
この裏側に、グラビア印刷により木目絵柄の印刷を行い、絵柄層2を設けた後に、更に隠蔽層3としてのインキ層を設けた。さらに、2液ウレタン樹脂をプライマー層6として乾燥後の塗布量が2g/m2となるように塗工した。
透明な熱可塑性樹脂シート1の表面側に、紫外線吸収剤と光安定剤を添加した艶調整剤「UCクリヤー 大日本インキ化学工業株式会社製」を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようグラビアコーティングにて塗工して艶調整層4とし、さらにその上にグラビア印刷により導管模様層5を設けて、本発明のポリ乳酸系単層化粧シートを得た。
【実施例2】
【0044】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、酸化チタンの着色剤10重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、着色した熱可塑性樹脂シート1を得た。
この表側に、グラビア印刷により木目絵柄の印刷を行い、絵柄層2を設け、さらに表面側に、紫外線吸収剤と光安定剤を添加した艶調整剤「UCクリヤー 大日本インキ化学工業株式会社製」を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようグラビアコーティングにて塗工して艶調整層4とし、さらにその上にグラビア印刷により導管模様層5を設けて、本発明のポリ乳酸系単層化粧シートを得た。
【0045】
<比較例1>
オイル状の可塑剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系単層化粧シートを得た。
【0046】
<比較例2>
オイル状の可塑剤をポリ乳酸樹脂100重量部に対して20重量部添加した以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系単層化粧シートを得た。
【0047】
<ラッピング加工性>
市販のラッピングマシーンと一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤にてMDF基材に接着して、密着性(60℃の雰囲気のオーブンに1時間いれて、化粧シートと基材を500gの分銅をぶら下げて剥離長さを測定した)を評価した。評価基準は、○:手で引き剥がせない、×:手で引き剥がせた、とした。
【0048】
<真空成形性>
曲面2R加工が施されたMDF基材に真空成形貼合するときの成形加工の行い易さを評価した。曲面Rに化粧シートが追従して皺や割れの発生がなければ○、曲面R部分に皺が発生したり、化粧シートの割れが発生したならば×とした。
【0049】
<耐傷付き性>
ポリ乳酸系単層化粧シートを一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤にてMDFと貼り合せ試験片を作製した。試験片を用いて、JIS K 5400に記載する鉛筆引っかき値の試験を行った。試験評価でHB以上を○(硬い・・・傷付き難い)、B以下を×(柔らかい・・・傷付き易い)とした。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
以上詳細に説明した様に、本発明の化粧シートは、ポリ乳酸樹脂基材シート層をガラス転移点が50℃以上90℃以下で引っ張り弾性率が2GPa以上3.5GPa以下であり、引っ張り破断伸び率が100%以上200%以下であることを特徴としたポリ乳酸樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層として構成したことにより、平面基材へのラミネートやVカット加工等は勿論のこと、柱状基材へのラッピングラミネートや三次元凹凸基材への立体成形ラミネートにおいても、割れ、白化、シワ、ドローダウン等の問題が発生することがなく、しかも耐傷付き性等の各種表面物性の面でも優れたものであるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のポリ乳酸系単層化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】本発明のポリ乳酸系単層化粧シートの他の実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1…熱可塑性樹脂シート
2…絵柄層
3…隠蔽層
4…艶調整層
5…導管模様層
6…プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートに絵柄層を設けた単層化粧シートにおいて、
前記熱可塑性樹脂シートが、ポリ乳酸樹脂を主剤としてポリ乳酸樹脂100重量部に対してオイル状の可塑剤を0.1〜10重量部添加してなるものを2軸延伸したシートであり、前記熱可塑性樹脂シートのガラス転移点が50〜90℃、引っ張り破断伸び率(JIS K6781準拠)が2.0〜3.5GPであり、引っ張り破断伸び率が100〜200%であることを特徴とするポリ乳酸系単層化粧シート。
【請求項2】
前記のオイル状の可塑剤が植物由来のオイル状の可塑剤であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系単層化粧シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−178880(P2009−178880A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18373(P2008−18373)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】