説明

ポリ乳酸系延伸フィルム

【課題】ポリオレフィンフィルムと同レベルに柔軟なポリ乳酸二軸延伸フィルムを提供する。
【解決手段】(a)ポリ乳酸ブロック25〜98重量%と、(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック75〜2重量%((a)と(b)の合計で100重量%とする。)とから構成され、その重量平均分子量が1.5万〜10万である線状乳酸系共重合ポリエステル(A)40〜60重量%と、重量平均分子量が15万〜30万であるポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)からなる延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性に優れたポリ乳酸系の生分解性の軟質延伸フィルムに関する。
また本発明は、ポリオレフィンフィルムと同等のレベルの柔軟性を備えたポリ乳酸系延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性フィルムが注目され、各種フィルムが開発されている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。
一方、生分解性フィルムの1つであるポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムは剛性に優れており、種々の利用が図られ、従来からポリオレフィンの一般フィルムが用いられている用途にも、利用が進められている。
しかし、ポリ乳酸からなるフィルムは、剛性には優れているが、柔軟性については改善されるべき点が多く、ポリ乳酸を可塑化することも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−326662
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、柔軟性に優れたポリ乳酸系の生分解性フィルムを提供するものである。また、本発明は、ポリオレフィンフィルムと同等のレベルの柔軟性を備えたポリ乳酸系包装フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)ポリ乳酸ブロック25〜98重量%と、(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック2〜75重量%((a)と(b)の合計で100重量%とする。)とから構成され、その重量平均分子量が1.5万〜10万である線状乳酸系共重合ポリエステル(A)40〜60重量%と、重量平均分子量が15万〜30万であるポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)からなることを特徴とする延伸フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、柔軟性に優れたポリ乳酸系の生分解性フィルムを得ることができる。また、本発明によれば、ポリオレフィンフィルムと同等のレベルの柔軟性を備えたポリ乳酸系包装フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、(a)ポリ乳酸ブロック25〜98重量%と、(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック75〜2重量%とから構成され、その重量平均分子量が1.5万〜10万である線状乳酸系共重合ポリエステル(A)40〜60重量%と、重量平均分子量が15万〜30万であるポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)からなることを特徴とする二軸延伸フィルムに関する。
【0008】
以下に、本発明の線状乳酸系共重合ポリエステル(A)、ポリ乳酸(B)を説明する。
【0009】
線状乳酸系共重合ポリエステル(A)
本発明の線状乳酸系共重合ポリエステル(A)は、重量平均分子量が1.5万〜10万であり、(a)ポリ乳酸ブロック25〜98重量%と、(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック2〜75重量%とから構成される線状乳酸系共重合ポリエステルである。
また、ポリ乳酸ブロックは、一般にラクタイドが開環重合して成るラクタイド成分から構成することが好ましく、また−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素部分から成るポリエステルブロックとは、原料ポリエステルに由来するポリエステル部分であり、−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素部分から成る構成部分である。
このような線状乳酸系共重合ポリエステル(A)は、一般にはラクタイド25〜98重量%と、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とから成る重量平均分子量1万〜25万の線状脂肪族ポリエステル2〜75部とを、開環重合触媒の存在下に、開環重合並びにエステル交換反応させる方法により製造することができる。
ラクタイドは、乳酸を環状二量化した化合物で、立体異性体を有し、L−乳酸からなるL−ラクタイド、D−乳酸からなるD−ラクタイド、L−乳酸とD−乳酸からなるMESO−ラクタイドがある。
【0010】
L−ラクタイド、またはD−ラクタイドを主成分とする共重合体は結晶化し、高融点が得られる。本発明の線状乳酸系共重合ポリエステル(A)はこれら3種のラクタイドを組み合わせることによって好ましい樹脂特性を実現できる。
【0011】
本発明で線状乳酸系共重合ポリエステル(A)は、ラクタイドとしてL−ラクタイドを総ラクタイド中、90%以上を含むものが好ましい。
【0012】
脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸成分とジオール成分からなるものを意味し、高分子量であることが好ましく、具体的には重量平均分子量で10,000〜250,000である。高分子量の脂肪族ポリエステルを得る為には、脂肪族ジカルボン酸成分とジオール成分のモル分率は、ほぼ1であることが好ましい。
【0013】
脂肪族ポリエステル中の脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、なかでも炭素原子数4〜14の脂肪族ジカルボン酸成分であることが好ましい。具体的にはコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。この他にダイマー酸等も例示される。
【0014】
またジオール成分としては、炭素数が2〜10ジオールが好ましく、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、3−ヒドロキシピバリルピバレート等、および水添ビスフェノールが例示される。
【0015】
ポリラクタイドと脂肪族ポリエステルの割合は、特に制限はないが、好ましくはポリラクタイドと脂肪族ポリエステルが75〜98/25〜2(重量比)であり、より透明性の良い樹脂を得ることができる。
【0016】
重合反応には、一般に開環重合触媒が使用され、一般の開環重合触媒、エステル交換触媒としても知られる錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属、さらにそれらの誘導体があり、特に金属有機化合物、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が好ましい。具体的には、オクタン酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムが適している。
【0017】
ポリラクタイドと脂肪族カルボン酸、ジオール成分を押出機内で加温溶融させ、重合を開始する。反応温度はラクタイドの融点以上が一般的である。
【0018】
重合反応は、共重合に使用する脂肪族ポリエステルの末端OH基へ、ポリラクタイドがブロック状に開環付加重合して、例えばA−BB−A−BBB−A型のブロック状の共重合体が生成し、更にポリマー同士のエステル交換反応が進行するものと考えられる。これらの開環重合とエステル交換反応により、生成する乳酸系共重合ポリエステルは実質的に線状構造を保つものと考えられる。
【0019】
本発明における線状乳酸系共重合ポリエステル(A)を構成する(a)ポリ乳酸ブロックは25〜98重量%の範囲であり、(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロックは2〜75重量%の範囲である((a)と(b)の合計で100重量%とする。)。
また、(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロックとしては、(b’)プロピレングリコール、コハク酸またはセバシン酸からなるポリエステルブロックが特に好適である。
本発明の線状乳酸系共重合ポリエステル(A)は、柔軟性の良い樹脂であることが望ましく、ガラス転移点が室温以上であり、融点が140℃以上のものが望ましく、構成要素は重量比で(a)/(b)が75/25〜98/2、さらに好ましくは85/15〜98/2ある。
【0020】
乳酸系共重合ポリエステル(A)は、一般に高分子量のほうが広い温度範囲で成形加工が可能であり好ましいが、本発明ではポリ乳酸(B)との混練した後の柔軟性、透明性などを維持するため、乳酸系共重合ポリエステル(A)の重量平均分子量を1.5万〜10万、さらさらに、1.5万〜5万とすることが望ましい。この分子量の範囲の乳酸系共重合ポリエステル(A)をポリ乳酸(B)との組成物を混練しシート化した後に延伸することにより柔軟性の高いフィルムが得られる。具体的にはフィルム引っ張り試験によるヤング率が1000〜2500MPaの延伸フィルムとすることもできる。
また乳酸系共重合ポリエステル(A)とポリ乳酸(B)の溶融混練は2軸押出機が両者の分散がよく、得られた延伸フィルムのフィッシュアイが少ないため好ましい。
これにより、汎用のポリオレフィンフィルムと同レベルの強度を有する延伸フィルムを提供することも可能となる。
【0021】
ポリ乳酸(B)
本発明に用いられるポリ乳酸には、D−乳酸からなるポリマー、L−乳酸からなるポリマー、ポリ乳酸共重合体などがある。
主にL−乳酸からなりポリマーは、D−乳酸若が6質量%未満、好ましくは3質量%未満で、融点が150〜170℃、好ましくは160〜170℃の範囲のものである。D−乳酸の含有量が6質量%以上のものは延伸成形性が劣るおそれがある。
主にD−乳酸からなるポリマーには、L−乳酸が6質量%未満、好ましくは3質量%未満で、融点が150〜170℃、好ましくは160〜170℃の範囲のものがある。L−乳酸の含有量が6質量%以上のものは延伸成形性が劣るおそれがある。
なお、ポリ乳酸におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。
さらに、ポリ乳酸共重合体としては、D−乳酸若しくはL−乳酸以外に、乳酸と共重合可能なコモノマーとしては、例えば3−ヒドロキシブチレート、カプロラクトン、グリコール酸などを共重合したものが例示される。
ポリ乳酸の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものが使用される。
これらのポリ乳酸の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
【0022】
組成物
本発明の延伸フィルムは、線状乳酸系共重合ポリエステル(A)40〜60重量%とポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)からなる。
本発明の組成物としては、ポリ乳酸とプロピレングリコール、コハク酸またはセバシン酸からなる重量平均分子量1.5万〜10万、中でも2〜5万のブロック共重合体40〜60重量%と重量平均分子量15万〜30万のポリ乳酸60〜40重量%((A)と(B)の合計で100重量%)を用いることが望ましい。
【0023】
延伸フィルム
本発明の延伸フィルムは、上記の組成物から、Tダイキャスト成形やインフレーション成形等の押出成形により容易にシート、フィルムに加工することができる。
【0024】
成膜されたシート、フィルムは、ガラス転移温度以上、融点以下の温度でテンター方式やインフレーション方式等で、一軸および二軸に延伸されて、本発明の延伸フィルムとする。
延伸することにより、分子配向が生じ、耐衝撃性、剛性、透明性等の物性を改良することができる。
【0025】
延伸には同時延伸、逐次延伸が例示される。延伸倍率は特に制限されないが、二軸延伸の際は縦横方向とも通常2〜4倍、中でも2.5〜3.5倍の延伸が有効である。
なおシュリンクフィルム等の特に加熱時の収縮性を要求するような場合には、一軸または二軸方向への3〜6倍等の高倍率延伸が好適である。
【0026】
また耐熱性を向上させるために、延伸の直後にヒートセットにより、ひずみを除去したり、結晶化を促進させることで、耐熱性を向上させることもできる。
【0027】
本発明の延伸フィルムの成形時には、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、クレー、ケイソウ土、パーライト、ハイドロタルサイトなどの無機系充填剤、或いは木粉等の有機系充填剤を添加することも行われる。
【0028】
また、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、ブチル・ヒドロキシアニソール(BHA)などの酸化防止剤、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、燐酸エステル、イソシアネート、カルボジイミドなどの安定剤を配合して、成形時の熱的安定性を向上させることも行われる。
【0029】
安定剤の添加量は、とくに限定されないが、本発明に用いられる組成物に対して、0.1〜3重量%程度が通常である。また、本発明の組成物には、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、トリオクチルトリメリテート、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ポリプロピレングリコールアジピン酸、アジピン酸ブタンジオールなどの可塑剤を添加してもよい。なかでも、アジピン酸系ポリエステル可塑剤は、特に相溶性、添加による可塑化効果から好ましく、重量平均分子量が20,000以下、かつポリエステルの末端がアルコール等で封止されているものが、成形、加工時に安定性がよく特に好ましい。
【0030】
これらの可塑剤の添加量は、上記の組成物に対し通常1〜30重量%であり、過剰添加によるブリーディングを避けることが望ましい。
【0031】
またステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシュウムなどの金属石鹸類、鉱油、流動パラフィン、エチレンビスステアリルアマイド等の滑剤、グリセリン、アルキルスルホン酸塩等のイオン系等の界面活性剤、酸化チタン、カーボンブラックの様な着色剤なども必要に応じて添加される。
【0032】
さらに、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、スルホニルヒドラジド等の有機系発泡剤等の添加により、もしくはペンタン、ブタン、フレオン等の発泡剤を本発明ポリマーに事前に含浸させるか、押出工程の途中で押出機内に直接供給することにより発泡体とすることもできる。
本発明の延伸フィルムの厚みは、通常10〜100ミクロンメータ(μm)である。
本発明の延伸フィルムはとしては、120℃、15分下の熱収縮率が10%以下の延伸フィルムは実用的な耐熱性を有し好適な例である。さらに、55℃、24時間下のブロッキング程度を引張り試験機で測定した場合に30N/mm幅以下あり実用的な耐ブロッキング性を有する二軸延伸フィルムとなる。
本発明の延伸フィルムは、また押出ラミ、ドライラミ或いは共押出などにより紙、アルミホイル、或いは他の分解性ポリマーフィルムとの積層化したり、二次加工することも必要に応じて行われる。
【0033】
延伸フィルムを二次加工法する方法としては、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等がある。本発明の乳酸系共重合ポリエステルのシート化は、汎用樹脂のシート製造に使用されている装置と同様の装置を用いて成形することができる。
【0034】
延伸フィルムは、横ピロー製袋機、縦ピロー製袋機、ツイストバック製袋機などの通常の製袋機でヒートシールすることができ、袋状物を成形することができる。
【0035】
(実施例)以下に実施例により本発明をさらに説明する。
【0036】
実施例及び比較例等で使用した原料は次の通りである。
(1)共重合−1
ポリ乳酸とポリ(プロピレンサクシネート)のブロック共重合体
大日本インキ化学社製 プラメートPD−350
乳酸:52モル%、プロピレングリコール:24モル%、コハク酸:24モル%、
重量平均分子量:2.6万、Tm(℃)139.7℃
(2)共重合−2
ポリ乳酸とポリ(プロピレンセバケート)のブロック共重合体
大日本インキ化学社製 プラメートPD−150
乳酸:62モル%、プロピレングリコール:19モル%、コハク酸:19モル%、
重量平均分子量:12.8万、Tm(℃) 163.8℃
(3)ポリ乳酸(PLLA−1)
D−乳酸含有量:1.9重量%、MFR(温度190℃、荷重2160g):6.7g/10分、融点(Tm):168.0℃、Tg:59.8℃、
密度:1.34g/cm
【0037】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)光学特性
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、降伏点及び破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
(3)熱収縮率
二軸延伸フィルムから長さ:120mm、幅:15mmのサンプルを切り出し、100mm間隔で表線を記入した。次いで、該当フィルムを120℃に設定したオーブン内に15分放置した後、取り出し室温に15分以上放置し、標線間の長さ(L:mm)を測定した。[(100−L)/100]×100(%)の値を加熱収縮率(%)とした。
(4)ブロッキング
二軸延伸フィルムから長さ:120mm、幅:20mmのサンプルを切り出し、2枚重ねて平滑なガラス上に置き、その中央部20mm×20mmの部分に1.030kgの重りを載せて荷重をかけて恒温槽内の55℃雰囲気下で24時間放置し、ブロッキングさせた。次いで、ブロッキングさせたフィルムを、オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC−1225を用いて、カウンター方向に5ミリメータ(mm)/分の剪断速度で剥離し、かかる負荷の最大値をブロッキング強度とした。
(5)エージングによる白化
二軸延伸フィルムから長さ:100ミリメータ(mm)、幅:100ミリメータ()mm)のサンプルを切り出し、恒温槽内の55℃雰囲気下で72時間放置した後に取り出し、室温に15分以上放置し、エージングによる白化状況を目視で観察した。
【0038】
(実施例1)
<延伸用シートの製造>
共重合体−1:PLLA1を50:50(重量%)で計量し、2軸押出機を用いて造粒しペレット化した。更に先端にT−ダイを具備した1軸押出機により200℃で押出した後に15℃のキャスティングロールで急冷し、厚さ約400ミクロンメータ(μm)の延伸用シートを得た。
<延伸フィルムの製造>
このシートをパンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(東洋精機製作所、ヘビー型)を用いて70℃×30秒のホットエアーで予熱した後、5m/分の速度で縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、延伸後直ちに冷却し、厚さ約50ミクロンメータ(μm)の二軸延伸フィルムを得た。
更に本フィルムを金枠に固定し熱風式オーブン内で120℃×30秒放置しヒートセット処理を行った。
フィルムの評価結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
実施例1で用いた原料に代えて共重合体−1:PLLA1を33:67(重量%)とした以外は実施例1と同様に行った。
フィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1で用いた原料に代えて共重合体−1:PLLA1を67:33(重量%)とした以外は実施例1と同様に行った。
フィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例3]
実施例1で用いた共重合体−1に代えて共重合体−2を用いた以外は実施例1と同様に行った。
フィルムの評価結果を表1に示す。
【0040】
[比較例4]
比較例2で用いた共重合体−1に代えて共重合体−2を用いた以外は比較例−2と同様に行った。
フィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1で用いた原料を用いてT−ダイより50ミクロンメータ(μm)フィルムを作った。
未延伸フィルムの評価結果を表1に示す。
[参考例1]
PLLA1単体を用いた以外は実施例1と同様に行った。
フィルムの評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1から明らかなように共重合−1とポリ乳酸を50:50重量比で用いた実施例1の延伸フィルムはヤング率で1400〜1700MPaとポリオレフィンフィルムと同等の柔軟性を有しており、合わせて熱収縮率、耐ブロッキング性も実用に耐えるレベルであった。
しかし33:67の重量比で用いた比較例1の延伸フィルムは柔軟性が十分ではなく、また67:33の重量比で用いた比較例2の延伸フィルムは耐ブロッキング性が不十分であり、また分子量14万の共重合体−2を用いた比較例−3、4は柔軟性が十分ではなく、特に比較例−4では耐ブロッキング性の低下も見られた。更に未延伸の比較例−5では耐ブロッキング性が不十分で、エージング時に結晶化による白化も生じた。
このように柔軟性、耐ブロッキング性、耐エージング性を満たす処方は実施例−1のみであった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、柔軟性に優れたポリ乳酸系生分解性フィルムに関するものである。該フィルムは、ポリオレフィンフィルムレベルの柔軟性を備えており、包装用フィルムに好適である。
【0044】
本発明の延伸フィルムの用途としては、袋類、結束テープや食品用、工業用品用、電気製品用、繊維製品用、雑貨用等の一般包装用フィルム、或いは農業用マルチフィルム、ラベル等が挙げられる。
【0045】
また、ラミネーション用途として、紙、アルミホイル、他のポリマー等との押出ラミネーション或いはドライラミネーションによるカップ、紙パック、ケース等が挙げられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリ乳酸ブロック25〜98重量%と(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック75〜2重量%((a)と(b)の合計で100重量%とする。)とから構成され、その重量平均分子量が1.5万〜10万である線状乳酸系共重合ポリエステル(A)40〜60重量%と、重量平均分子量が15万〜30万であるポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)からなることを特徴とする延伸フィルム。
【請求項2】
(a)ポリ乳酸ブロックと(b’)プロピレングリコール、コハク酸またはセバシン酸からなるポリエステルブロックを含み、その重量平均分子量が1.5万〜10万であるのブロック共重合体(A)40〜60重量%と、重量平均分子量が15万〜30万のポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)からなることを特徴とする延伸フィルム。
【請求項3】
120℃、15分下の熱収縮率が10%以下であり実用的な耐熱性を有することを特徴とする請求項1または2記載の二軸延伸フィルム。
【請求項4】
55℃、24時間下のブロッキング程度を引張り試験機で測定した場合に30N/mm幅以下あり実用的な耐ブロッキング性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。
【請求項5】
(a)ポリ乳酸ブロック25〜98重量%と、(b)−COO−基を含有する鎖状炭化水素および/または脂環式炭化水素から構成されるポリエステルブロック75〜2重量%((a)と(b)の合計で100重量%とする。)とから構成され、その重量平均分子量が1.5万〜10万である線状乳酸系共重合ポリエステル(A)40〜60重量%と、重量平均分子量が15万〜30万であるポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)の溶融混練が二軸押出機で行われることを特徴とする請求項1記載の二軸延伸フィルム。
【請求項6】
(a)ポリ乳酸ブロックと、 (b’)プロピレングリコール、コハク酸またはセバシン酸からなるポリエステルブロックを含み、その重量平均分子量が1.5万〜10万であるのブロック共重合体(A)40〜60重量%と、重量平均分子量が15万〜30万のポリ乳酸(B)60〜40重量%からなる組成物((A)と(B)の合計で100重量%とする。)の溶融混練が二軸押出機で行われることを特徴とする請求項2に記載の二軸延伸フィルム。

【公開番号】特開2006−335904(P2006−335904A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163137(P2005−163137)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】