ポリ乳酸系延伸フィルム
【課題】生分解性、隠蔽性、印刷性に優れ、且つ耐熱性にも優れる、包装材料に好適なポリ乳酸系フィルムを提供する。
【解決手段】ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0。2以下であるポリ乳酸系延伸フィルム。
【解決手段】ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0。2以下であるポリ乳酸系延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性、隠蔽性、印刷性及び耐熱性に優れる、包装材料に適したポリ乳酸系延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、種々のフィルムが開発されている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。そして、かかる生分解性樹脂の一つであるポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムは、透明性が優れることから包装用フィルムとして使用され始めている。
【0003】
また、ポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムの付加価値を高めるため、あるいは用途を広げるためにポリ乳酸に無機化合物微粒子等を添加して隠蔽性あるいは延伸性を改良する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1;特開平9−208817号公報、特許文献2;特開2001−49004号公報)。
【0004】
しかしながら、かかる二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ、耐熱性に劣ることから、依然として用途が制限されている。
【特許文献1】特開平9−208817号公報
【特許文献2】特開2001−49004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生分解性、隠蔽性、印刷性に優れ、且つ耐熱性にも優れる、包装材料に好適なポリ乳酸系フィルムを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、生分解性、隠蔽性、印刷性及び耐熱性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<ポリ−L−乳酸>
本発明に係わるポリ乳酸系組成物層の1成分であるポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0009】
PLLAの分子量は後述のポリ−D−乳酸と混合したポリ乳酸系組成物がフィルムとして形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6万〜200万のポリ−L乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られるポリ乳酸系延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
<ポリ−D−乳酸>
本発明に係わるポリ乳酸系組成物層の1成分であるポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸してなるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0010】
PDLAの分子量は前述のPLLAと混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの層として形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6万〜200万のポリ−L乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られるポリ乳酸系フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
【0011】
本発明においてPLLA及びPDLAには、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
【0012】
<充填剤>
本発明に係わる充填剤は、前記PLLA及びPDLAに分散され、ポリ乳酸系組成物を延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムに隠蔽性を付与、即ち、不透明にできるものであれば、特に限定はされない。
【0013】
かかる充填剤としては、ポリ乳酸と非相容のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリアクリル酸エステル;ポリカーボネート;ポリスルホン等の熱可塑性樹脂、セルロース系樹脂、あるいは架橋ポリメチルメタクリル酸(PMMA)粒子等の有機化合物系充填剤がある。また、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ゼオライトなどの無機化合物系充填剤が挙げられる。
これらの充填剤の中では、有機化合物系充填剤が好適である。無機化合物系充填剤は、電子部や電子材料工程フィルムなどの用途では、無機化合物の粒子が作業環境のクリーン度を低下させる可能性がある。
本発明では有機化合物系充填剤の中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、変性ポリエステル、生分解性脂肪族ポリエステル、ポリスチレン、環状ポリオレフィンおよびポリカーボネートから選ばれるポリマーが好適である。
充填剤として、セルロース系樹脂、架橋ポリメチルメタクリル酸(PMMA)粒子や無機化合物系充填剤等の溶融しない充填剤を用いる場合は、通常、平均粒径が、0.1〜10μmの範囲にある充填剤を用いることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の充填剤を用いた場合は、得られるポリ乳酸系延伸フィルムの隠蔽性が改良されない場合があり、一方、10μmを超える充填剤を用いた場合は、得られるポリ乳酸系延伸フィルムの表面が荒れる虞がある。
かかる充填剤としては、無機化合物系充填剤が好ましく、無機化合物系充填剤として、炭酸カルシウムと二酸化チタンを併用すると、白色度に優れるポリ乳酸系延伸フィルムを得ることができる。
【0014】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物における充填剤の量は、通常、3〜25重量%、好ましくは5〜20重量%(ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤の合計量を100重量%)の範囲にある。
<ポリ乳酸系延伸フィルム>
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムである。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記特性に加え、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が40J/g以上、より好ましくは50J/g以上であり、DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量(ΔHc)が30J/g以上、より好ましくは35J/g以上の特性を有する。
本発明におけるポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性は、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して昇温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの融点(Tm)、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)、150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)を求めるとともに、250℃に10分間維持した後、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させて、降温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの結晶化の際の発熱量(Hc)を求めた。
【0015】
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
【0016】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲にある。
【0017】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、通常、曇り度(ヘイズ)が85%以上、好ましくは90%以上、光線透過率が5%以下、好ましくは4%以下である。
【0018】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、必要に応じて、他の層あるいは印刷層との密着性を向上させるために、プライマーコート、コロナ処理、プラズマ処理や火炎処理などを施しても良い。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、用途に応じて、他の基材を積層させてもよい。他の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の生分解性ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、若しくはガラス、金属、アルミニウム箔、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂からなるフィルムは無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
とくにポリ乳酸を被覆層として共押出後に延伸することにより光沢、印刷適性、ヒートシール性、溶断シール性に優れたポリ乳酸計延伸フィルムが得られる。
<ポリ乳酸系組成物>
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を、好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とからなるステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
【0019】
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物を調製する際に、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を十分に溶融混練することが望ましい。溶融混練時間は、用いる溶融混練機にもよるが、通常、5分間以上であればよい。溶融混練時間をより長くすればするほど、例えば、20分間以上、あるいは30分間以上とすることにより、よりステレオコンプレックスの結晶化が早く、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いポリ乳酸系組成物とすることができる。
充填剤は混練後の後半に入れてもよいし、ポリーL−乳酸、ポリーD−乳酸と同時に入れてもよい。
【0020】
<ポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法>
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物を用いて、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸することにより、耐熱性、隠蔽性に優れる延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0021】
また、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸することにより、耐熱性、隠蔽性に優れる延伸フィルム(二軸延伸フィルム)が得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、7倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0022】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、延伸した後、好ましくは140〜220℃、より好ましくは150〜200℃で、好ましくは1秒以上、より好ましくは3〜60秒熱処理しておくと、更に耐熱性が改良される。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0024】
実施例及び参考例で使用したポリ乳酸、有機化合物系充填剤、無機化合物系充填剤は次の通りである。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA―1):
D体量:1.9% Mw:22万(g/モル)、Tm:162.9℃
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―1):
D体量:100.0% Mw:4万(g/モル)、Tm:180℃
インヘレント粘度(溶媒;クロロホルム、測定温度;25℃、濃度;0.1g/dl);7.04(dl/g)
(ハ)ポリスチレン(PS)
PSジャパン社製、商品名 HH203 MFR(200℃、荷重5kgf):3.3g/10分、密度:1.05g/cm3。
(ニ)炭酸カルシウム
日東粉化化学工業株式会社製 NCC410
比表面積:13,000(cm3/g)、平均粒径:1.71(μm)、比重:2.7。
【0025】
本発明における測定方法は以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)
試料20mgに、GPC溶離液10mlを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm―PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC―25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置;Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置;データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器;示差屈折検出器(RI)
カラム;Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度;40℃
溶離液;クロロホルム
流速;1.0ml/分
注入量;200μL
分子量校正;単分散ポリスチレン
(2)DSC測定
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して試料を一旦融解させた後、250℃に10分間維持し、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させた後、再度、加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して熱融解曲線を得、得られた熱融解曲線から、試料の融点(Tm)及び融点の第2回昇温(2nd-heating)時のピーク高さ、ガラス転位点(Tg)、降温時での結晶化温度(Tc)及び熱量(Hc)を求めた。
【0026】
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
[実施例1]
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA−1:PDLA−1:PS=45:45:10(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて250℃、120rpmの条件下で20分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―1)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―1を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び240mm×240mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:240℃、初圧:3分(圧力0.2kgf)、ガス抜き:10回、プレス時間:4分(圧力40kgf)、冷却:5分(温度30℃、圧力40kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−1)を得た。
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−1を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製)を用いて75℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0027】
次いで、得られた二軸延伸フィルム金枠にクリップで固定し、200℃×5分の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1で用いた組成物−1に代えてPLLA−1:PDLA−1:炭酸カルシウム=45:45:10(重量%)のポリ乳酸系組成物(組成物―2)を用いる以外は実施例1と同様に行い、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
[参考例1]
実施例1で用いた組成物−1に代えてPLLA−1:PDLA−1=50:50(重量%)のポリ乳酸系組成物(組成物―3)を用いる以外は実施例1と同様に行い、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
表1から明らかなように、PLLA−1、PDLA−1及び有機化合物充填剤または無機化合物充填剤から延伸により得られるフィルム(実施例1及び2)はPLLA−1、PDLA−1からなるフィルム(参考例1)のヘイズが3%であるのに対して90%以上と隠蔽性が上がっていることが分かる。
有機化合物系充填剤としてポリスチレン(PS)を用いた実施例1は、ヒートセットによりHZが99%から90%となる。ヒートセット後の値をカッコ内に示す。
【0029】
また実施例1、2ともポリ乳酸の融点である160℃以上でも融解せず耐熱性も優れているのが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性に加えて耐熱性に優れる乳白ポリ乳酸延伸フィルムが提供される。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムはオーバーラップ包装フィルムとして、例えば冷凍用食品、菓子類、化粧品、カセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVDなどを包装する用途に好適である。とくに耐熱性と正分解性に優れているため、インクジェットプリンター用紙としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図2】図2は、実施例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図3】図3は、実施例1の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図4】図4は、実施例1の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図5】図5は、実施例1の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図6】図6は、実施例2の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図7】図7は、実施例2の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図8】図8は、実施例2の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図9】図9は、参考例1の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図10】図10は、参考例1の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図11】図11は、参考例1の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性、隠蔽性、印刷性及び耐熱性に優れる、包装材料に適したポリ乳酸系延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの廃棄処理を容易にする目的で生分解性のあるフィルムが注目され、種々のフィルムが開発されている。その生分解性フィルムは、土壌中や水中で加水分解や生分解を受け、徐々にフィルムの崩壊や分解が進み、最後には微生物の作用で無害な分解物へと変化するものである。そのようなフィルムとして、芳香族系ポリエステル樹脂やポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族系ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、デンプン等から成形したフィルムが知られている。そして、かかる生分解性樹脂の一つであるポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムは、透明性が優れることから包装用フィルムとして使用され始めている。
【0003】
また、ポリ乳酸からなる二軸延伸フィルムの付加価値を高めるため、あるいは用途を広げるためにポリ乳酸に無機化合物微粒子等を添加して隠蔽性あるいは延伸性を改良する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1;特開平9−208817号公報、特許文献2;特開2001−49004号公報)。
【0004】
しかしながら、かかる二軸延伸ポリ乳酸フィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ、耐熱性に劣ることから、依然として用途が制限されている。
【特許文献1】特開平9−208817号公報
【特許文献2】特開2001−49004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生分解性、隠蔽性、印刷性に優れ、且つ耐熱性にも優れる、包装材料に好適なポリ乳酸系フィルムを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、生分解性、隠蔽性、印刷性及び耐熱性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<ポリ−L−乳酸>
本発明に係わるポリ乳酸系組成物層の1成分であるポリ−L−乳酸(PLLA)は、L−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリ−D−乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0009】
PLLAの分子量は後述のポリ−D−乳酸と混合したポリ乳酸系組成物がフィルムとして形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6万〜200万のポリ−L乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られるポリ乳酸系延伸フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
<ポリ−D−乳酸>
本発明に係わるポリ乳酸系組成物層の1成分であるポリ−D−乳酸(PDLA)は、D−乳酸を主たる構成成分、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D−乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、前述のポリ−L−乳酸と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸してなるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性が劣る虞がある。
【0010】
PDLAの分子量は前述のPLLAと混合したポリ乳酸系組成物がフィルムなどの層として形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜300万、好ましくは6万〜200万のポリ−L乳酸が好適である。重量平均分子量が6千未満のものは得られるポリ乳酸系フィルムの強度が劣る虞がある。一方、300万を越えるものは溶融粘度が大きくフィルム加工性が劣る虞がある。
【0011】
本発明においてPLLA及びPDLAには、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。
多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。
多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。
また、本発明に係わるPLLA及びPDLAには、それぞれD−乳酸若しくはL−乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
【0012】
<充填剤>
本発明に係わる充填剤は、前記PLLA及びPDLAに分散され、ポリ乳酸系組成物を延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムに隠蔽性を付与、即ち、不透明にできるものであれば、特に限定はされない。
【0013】
かかる充填剤としては、ポリ乳酸と非相容のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン;ポリスチレン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリアクリル酸エステル;ポリカーボネート;ポリスルホン等の熱可塑性樹脂、セルロース系樹脂、あるいは架橋ポリメチルメタクリル酸(PMMA)粒子等の有機化合物系充填剤がある。また、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、二酸化珪素、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ゼオライトなどの無機化合物系充填剤が挙げられる。
これらの充填剤の中では、有機化合物系充填剤が好適である。無機化合物系充填剤は、電子部や電子材料工程フィルムなどの用途では、無機化合物の粒子が作業環境のクリーン度を低下させる可能性がある。
本発明では有機化合物系充填剤の中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、変性ポリエステル、生分解性脂肪族ポリエステル、ポリスチレン、環状ポリオレフィンおよびポリカーボネートから選ばれるポリマーが好適である。
充填剤として、セルロース系樹脂、架橋ポリメチルメタクリル酸(PMMA)粒子や無機化合物系充填剤等の溶融しない充填剤を用いる場合は、通常、平均粒径が、0.1〜10μmの範囲にある充填剤を用いることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満の充填剤を用いた場合は、得られるポリ乳酸系延伸フィルムの隠蔽性が改良されない場合があり、一方、10μmを超える充填剤を用いた場合は、得られるポリ乳酸系延伸フィルムの表面が荒れる虞がある。
かかる充填剤としては、無機化合物系充填剤が好ましく、無機化合物系充填剤として、炭酸カルシウムと二酸化チタンを併用すると、白色度に優れるポリ乳酸系延伸フィルムを得ることができる。
【0014】
本発明に係わるポリ乳酸系組成物における充填剤の量は、通常、3〜25重量%、好ましくは5〜20重量%(ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤の合計量を100重量%)の範囲にある。
<ポリ乳酸系延伸フィルム>
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルムである。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記特性に加え、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)が40J/g以上、より好ましくは50J/g以上であり、DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量(ΔHc)が30J/g以上、より好ましくは35J/g以上の特性を有する。
本発明におけるポリ乳酸系延伸フィルムの熱融解特性は、DSC(示差走査熱量計)として、ティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121及びJIS K 7122に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して昇温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの融点(Tm)、205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量(ΔHm)、150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)を求めるとともに、250℃に10分間維持した後、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させて、降温時のDSC曲線を得、得られたDSC曲線から、延伸フィルムの結晶化の際の発熱量(Hc)を求めた。
【0015】
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
【0016】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの厚さは、通常、5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲にある。
【0017】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、通常、曇り度(ヘイズ)が85%以上、好ましくは90%以上、光線透過率が5%以下、好ましくは4%以下である。
【0018】
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、必要に応じて、他の層あるいは印刷層との密着性を向上させるために、プライマーコート、コロナ処理、プラズマ処理や火炎処理などを施しても良い。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、用途に応じて、他の基材を積層させてもよい。他の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の生分解性ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、若しくはガラス、金属、アルミニウム箔、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂からなるフィルムは無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。
とくにポリ乳酸を被覆層として共押出後に延伸することにより光沢、印刷適性、ヒートシール性、溶断シール性に優れたポリ乳酸計延伸フィルムが得られる。
<ポリ乳酸系組成物>
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムを得るには、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を、好ましくは230〜260℃であり、より好ましくは235〜255℃である。溶融混練する温度が230℃より低いとポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とからなるステレオコンプレックス構造物が未溶融で存在する虞があり、260℃より高いとポリ乳酸が分解する虞がある。
【0019】
また、本発明に係わるポリ乳酸系組成物を調製する際に、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸を十分に溶融混練することが望ましい。溶融混練時間は、用いる溶融混練機にもよるが、通常、5分間以上であればよい。溶融混練時間をより長くすればするほど、例えば、20分間以上、あるいは30分間以上とすることにより、よりステレオコンプレックスの結晶化が早く、PLLAあるいはPDLAの単独結晶(α晶)が生成し難いポリ乳酸系組成物とすることができる。
充填剤は混練後の後半に入れてもよいし、ポリーL−乳酸、ポリーD−乳酸と同時に入れてもよい。
【0020】
<ポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法>
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、前記ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物を用いて、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、さらに好ましくは3〜6倍延伸することにより、耐熱性、隠蔽性に優れる延伸フィルムが得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0021】
また、押出成形して得られるフィルムあるいはシートを、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、さらに好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸することにより、耐熱性、隠蔽性に優れる延伸フィルム(二軸延伸フィルム)が得られる。延伸倍率の上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、7倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できない虞がある。
【0022】
本発明に係わるポリ乳酸系延伸フィルムは、延伸した後、好ましくは140〜220℃、より好ましくは150〜200℃で、好ましくは1秒以上、より好ましくは3〜60秒熱処理しておくと、更に耐熱性が改良される。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0024】
実施例及び参考例で使用したポリ乳酸、有機化合物系充填剤、無機化合物系充填剤は次の通りである。
(イ)ポリ−L−乳酸(PLLA―1):
D体量:1.9% Mw:22万(g/モル)、Tm:162.9℃
(ロ)ポリ−D−乳酸(PURAC社製:PDLA―1):
D体量:100.0% Mw:4万(g/モル)、Tm:180℃
インヘレント粘度(溶媒;クロロホルム、測定温度;25℃、濃度;0.1g/dl);7.04(dl/g)
(ハ)ポリスチレン(PS)
PSジャパン社製、商品名 HH203 MFR(200℃、荷重5kgf):3.3g/10分、密度:1.05g/cm3。
(ニ)炭酸カルシウム
日東粉化化学工業株式会社製 NCC410
比表面積:13,000(cm3/g)、平均粒径:1.71(μm)、比重:2.7。
【0025】
本発明における測定方法は以下のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw)
試料20mgに、GPC溶離液10mlを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm―PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC―25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置;Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置;データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器;示差屈折検出器(RI)
カラム;Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度;40℃
溶離液;クロロホルム
流速;1.0ml/分
注入量;200μL
分子量校正;単分散ポリスチレン
(2)DSC測定
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製 Q100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121に準拠し、窒素ガス流入量:50ml/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して試料を一旦融解させた後、250℃に10分間維持し、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させた後、再度、加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して熱融解曲線を得、得られた熱融解曲線から、試料の融点(Tm)及び融点の第2回昇温(2nd-heating)時のピーク高さ、ガラス転位点(Tg)、降温時での結晶化温度(Tc)及び熱量(Hc)を求めた。
【0026】
なお、ピーク高さは、65℃〜75℃付近のベースラインと240℃〜250℃付近のベースラインを結ぶことにより得られるベースラインからの高さで求めた。
[実施例1]
<ポリ乳酸系組成物の製造>
PLLA−1:PDLA−1:PS=45:45:10(重量%)の比で80g計量し、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて250℃、120rpmの条件下で20分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物―1)を得た。
<プレスシートの製造>
組成物―1を厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.5mm及び240mm×240mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:240℃、初圧:3分(圧力0.2kgf)、ガス抜き:10回、プレス時間:4分(圧力40kgf)、冷却:5分(温度30℃、圧力40kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−1)を得た。
<二軸延伸フィルムの製造>
プレスシート−1を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製)を用いて75℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦横方向に3.0倍延伸(同時二軸延伸)し、厚さ約50μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0027】
次いで、得られた二軸延伸フィルム金枠にクリップで固定し、200℃×5分の条件でヒートセット(熱処理)した後、室温で十分冷やしてポリ乳酸系二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1で用いた組成物−1に代えてPLLA−1:PDLA−1:炭酸カルシウム=45:45:10(重量%)のポリ乳酸系組成物(組成物―2)を用いる以外は実施例1と同様に行い、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
[参考例1]
実施例1で用いた組成物−1に代えてPLLA−1:PDLA−1=50:50(重量%)のポリ乳酸系組成物(組成物―3)を用いる以外は実施例1と同様に行い、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムを得た。
得られたポリ乳酸系二軸延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
表1から明らかなように、PLLA−1、PDLA−1及び有機化合物充填剤または無機化合物充填剤から延伸により得られるフィルム(実施例1及び2)はPLLA−1、PDLA−1からなるフィルム(参考例1)のヘイズが3%であるのに対して90%以上と隠蔽性が上がっていることが分かる。
有機化合物系充填剤としてポリスチレン(PS)を用いた実施例1は、ヒートセットによりHZが99%から90%となる。ヒートセット後の値をカッコ内に示す。
【0029】
また実施例1、2ともポリ乳酸の融点である160℃以上でも融解せず耐熱性も優れているのが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、隠蔽性、化粧性、紫外線カット性に加えて耐熱性に優れる乳白ポリ乳酸延伸フィルムが提供される。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムはオーバーラップ包装フィルムとして、例えば冷凍用食品、菓子類、化粧品、カセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVDなどを包装する用途に好適である。とくに耐熱性と正分解性に優れているため、インクジェットプリンター用紙としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図2】図2は、実施例1のポリ乳酸系組成物からなるシート(未延伸)の第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図3】図3は、実施例1の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図4】図4は、実施例1の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図5】図5は、実施例1の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図6】図6は、実施例2の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図7】図7は、実施例2の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図8】図8は、実施例2の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図9】図9は、参考例1の延伸フィルムの第1回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図10】図10は、参考例1の延伸フィルムの第1回降温のDSC測定のチャートを示す図である。
【図11】図11は、参考例1の延伸フィルムの第2回昇温のDSC測定のチャートを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項2】
205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項3】
DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量が20J/g以上である請求項1または2に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項4】
ポリ乳酸系組成物が、ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)から調製されてなる請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項5】
ポリ乳酸系組成物における充填剤の量が5〜20重量%(ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤の合計量を100重量%)である請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項6】
充填剤が、有機化合物系充填剤または無機化合物系充填剤である請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項7】
少なくとも一方向に2倍延伸されてなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項8】
縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項9】
140〜220℃で1秒以上熱処理してなる請求項1〜10のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項1】
ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤を含むポリ乳酸系組成物からなり、DSC測定における150〜200℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク1)と205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの最大吸熱ピークのピーク高さ(ピーク2)とのピーク比(ピーク1/ピーク2)が0.2以下であることを特徴とするポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項2】
205〜240℃の範囲にある吸熱ピークの吸熱量が40J/g以上である請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項3】
DSC測定における吸熱ピーク測定後に、降温した際の発熱量が20J/g以上である請求項1または2に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項4】
ポリ乳酸系組成物が、ポリ−L−乳酸75〜25重量部及びポリ−D−乳酸25〜75重量部(ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の合計で100重量部)から調製されてなる請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項5】
ポリ乳酸系組成物における充填剤の量が5〜20重量%(ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸及び充填剤の合計量を100重量%)である請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項6】
充填剤が、有機化合物系充填剤または無機化合物系充填剤である請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項7】
少なくとも一方向に2倍延伸されてなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項8】
縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上延伸されてなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【請求項9】
140〜220℃で1秒以上熱処理してなる請求項1〜10のいずれかに記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−63506(P2008−63506A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244904(P2006−244904)
【出願日】平成18年9月9日(2006.9.9)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月9日(2006.9.9)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】
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