説明

ポリ乳酸系樹脂の製造方法

【課題】 高分子量、高融点、高熱安定性、色相にも優れるポリ乳酸系樹脂を効率的に製造する方法の提供。
【解決手段】乳酸を主原料として、直接重縮合により、ポリ乳酸系樹脂を製造する方法であって、触媒として錫化合物と硫黄酸を用い、ポリ乳酸系樹脂に対する錫化合物の添加量が錫原子換算で200〜1000ppmであり、ポリ乳酸系樹脂に対する硫黄酸の添加量が硫黄原子換算で400〜2000ppmであり、錫化合物の錫原子に対する硫黄酸の硫黄原子の重量比が、0.5〜3.5であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量、高融点、高熱安定性および色相に優れるポリ乳酸系樹脂を効率的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から、植物由来のカーボンニュートラルな素材としてポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は、融点が高く、溶融成形加工が可能であり、さらに、モノマーである乳酸が微生物を利用した発酵法によって安価に製造されるようになったため、石油原料由来の汎用プラスチックを代替できるバイオマスプラスチックとして期待され、徐々に使用されつつある。
【0003】
ポリ乳酸の主な製造方法としては、乳酸の2量体であるラクチドを開環して重合する開環重合法と、乳酸を用い脱水重縮合する直接重縮合法があり、直接重縮合法は、開環重合法に比べ、ラクチドを合成する工程を経ることなく、乳酸を直接重合原料として用いることができることから、安価にポリ乳酸を製造できるといわれている。
【0004】
特許文献1〜5には、直接重縮合法について記載されている。しかし、分子量がまだ低く、強度などの機械特性が満足できないという課題、溶媒使用により溶媒除去の工程が必要であるという課題、重合時間が長くさらなる生産性の向上が必要であるという課題などがあり、それらを改良することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−183840号公報(第1−4頁)
【特許文献2】特開2000−297145号公報(第1−8頁)
【特許文献3】特開2000−297143号公報(第1−8頁)
【特許文献4】特開平11−106499号公報(第1−4頁)
【特許文献5】特開2001−192445号公報(第1−19頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高分子量、高融点を有し、熱安定性、色相に優れるポリ乳酸系樹脂を効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく、随意検討した結果、特定量の錫化合物と硫黄酸を触媒として用い、高分子量、高融点、高熱安定性、色相に優れるポリ乳酸系樹脂を直接重合により効率的に製造する方法を見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明のポリ乳酸系樹脂の製造方法は、
(1)乳酸を主原料として、直接重縮合により、ポリ乳酸系樹脂を製造する方法であって、触媒として錫化合物と硫黄酸を用い、ポリ乳酸系樹脂に対する錫化合物の添加量が錫原子換算で200〜1000ppmであり、ポリ乳酸系樹脂に対する硫黄酸の添加量が硫黄原子換算で400〜2000ppmであり、錫化合物の錫原子に対する硫黄酸の硫黄原子の重量比が、0.5〜3.5であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(2)ポリ乳酸系樹脂に対する錫化合物の添加量が錫原子換算で300〜800ppmであり、ポリ乳酸系樹脂に対する硫黄酸の添加量が硫黄原子換算で600〜1600ppmであることを特徴とする上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(3)ポリ乳酸系樹脂に対する錫化合物の添加量が錫原子換算で300〜800ppmであり、ポリ乳酸系樹脂に対する硫黄酸の添加量が硫黄原子換算で600〜1600ppmであり、添加する錫化合物の錫原子と添加する硫黄酸の硫黄原子の比率が、1.5〜2.5であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(4)錫化合物が酢酸錫又はオクチル酸錫化合物であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(5)硫黄酸がメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および硫酸から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(6)さらに、安定剤を添加することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(7)安定剤がリン化合物であり、錫化合物の金属原子とリン化合物のリン原子の比率が0.5〜3であることを特徴とする上記(1)〜(6)に記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(8)下記3つの工程からなることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
(A)下記a−1からa−4の条件下で溶融重合を行う第1工程、
(a−1)無触媒もしくは硫黄酸存在下
(a−2)100〜200℃の温度
(a−3)0.13〜1300Paの圧力又は不活性ガス気流下
(a−4)0.3〜10時間の反応時間
(B)下記b−1からb−4の条件下で溶融重合を行う第2工程、
(b−1)錫化合物及び硫黄酸存在下
(b−2)140〜200℃の温度
(b−3)0.13〜1300Paの圧力又は不活性ガス気流下
(b−4)0.3〜10時間の反応時間
(C)融点以下の温度で固相重合を行う第3工程、
(9)前記(B)第2工程終了後かつ(C)第3工程開始前に、50〜150℃の温度で結晶化処理を行うことを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
高分子量、高融点、高熱安定性および色相に優れるポリ乳酸系樹脂を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明において、ポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主成分とする重合体であり、L−乳酸が主成分である場合は、ポリ−L−乳酸と呼び、D−乳酸が主成分である場合は、ポリ−D−乳酸と呼ぶ。
【0012】
ポリ乳酸系樹脂が、ポリ−L−乳酸である場合、L−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
【0013】
ポリ乳酸系樹脂が、ポリ−D−乳酸である場合、D−乳酸単位を70モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることがより好ましく、95モル%以上含有していることがさらに好ましく、98モル%以上含有していることが特に好ましい。
【0014】
本発明において、本発明で得られるポリ乳酸系樹脂の性能を損なわない範囲で、他の成分単位を含んでいてもよい。L−乳酸またはD−乳酸単位以外の他の成分単位としては、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類またはそれらの誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを付加した多価アルコール、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類またはそれらの誘導体、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などが挙げられる。
【0015】
用いる乳酸の光学純度は、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。乳酸がL−乳酸である場合は、D−乳酸の含有量が2.5%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。乳酸がD−乳酸である場合は、L−乳酸の含有量が2.5%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
【0016】
本発明で使用する錫化合物としては、特に制限されるものではないが、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物などが好ましい。具体的には、錫粉末、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、臭化錫(II)、臭化錫(IV)、エトキシ錫(II)、t−ブトキシ錫(IV)、イソプロポキシ錫(IV)、酢酸錫(II)、酢酸錫(IV)、オクチル酸錫(II)、ラウリン酸錫(II)、ミリスチン酸錫(II)、パルミチン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)、リノール酸錫(II)、アセチルアセトン錫(II)、シュウ酸錫(II)、乳酸錫(II)、酒石酸錫(II)、ピロリン酸錫(II)、p‐フェノールスルホン酸錫(II)、ビス(メタンスルホン酸)錫(II)、硫酸錫(II)、酸化錫(II)、酸化錫(IV)、硫化錫(II)、硫化錫(IV)、酸化ジメチル錫(IV)、酸化メチルフェニル錫(IV)、酸化ジブチル錫(IV)、酸化ジオクチル錫(IV)、酸化ジフェニル錫(IV) 、酸化トリブチル錫、水酸化トリエチル錫(IV)、水酸化トリフェニル錫(IV)、水素化トリブチル錫、モノブチル錫(IV)オキシド、テトラメチル錫(IV)、テトラエチル錫(IV)、テトラブチル錫(IV)、ジブチルジフェニル錫(IV)、テトラフェニル錫(IV)、 酢酸トリブチル錫(IV)、酢酸トリイソブチル錫(IV)、酢酸トリフェニル錫(IV)、二酢酸ジブチル錫、ジオクタン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫(IV)、マレイン酸ジブチル錫(IV)、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、塩化トリブチル錫(IV)、二塩化ジブチル錫、三塩化モノブチル錫、二塩化ジオクチル錫、塩化トリフェニル錫(IV)、硫化トリブチル錫、硫酸トリブチル錫、トリフルオロメタンスルホン酸錫(II)、ヘキサクロロ錫(IV)酸アンモニウム、ジブチル錫スルフィド、ジフェニル錫スルフィド、硫酸トリエチル錫およびフタロシアニン錫(II)、錫酸ナトリウム、錫酸マグネシウム、錫酸カリウム、錫酸カルシウム、錫酸マンガン、錫酸ビスマス、錫酸バリウム、錫酸ストロンチウムなどを使用することができる。
【0017】
錫化合物としては、2価の錫化合物が好ましく、酢酸錫(II)またはオクチル酸錫(II)が特に好ましい。
【0018】
錫化合物の添加量は、ポリ乳酸系樹脂に対して、錫原子換算で200〜1000ppmであり、300〜800ppmであることがさらに好ましく、350〜700ppmであることが特に好ましい。ここでいうポリ乳酸系樹脂の量は、モノマーから算出される理論ポリマー量である。
【0019】
本発明で用いる硫黄酸としては、有機スルホン酸、有機スルフィン酸、有機スルフェン酸、硫黄のオキソ酸などを使用することが好ましい。有機スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、n−ブチルベンゼンスルホン酸、n−オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジブチルベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼンスルホン酸、3,5−ジアミノ−2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジニトロベンゼンスルホン酸、p−クロルベンゼンスルホン酸、 2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、ヒドロキシニトロベンゼンスルホン酸、アミノトルエンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、アミノフェノールスルホン酸、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、o−クレゾールスルホン酸、m−クレゾールスルホン酸、p−クレゾールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、ナフチルアミンスルホン酸、スルファニルアミド、スルファグアニジン、ジノニルナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、アミノヒドロキシナフタレンジスルホン酸、4,4−ビフェニルジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジアミノ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフトールジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、カテコールジスルホン酸、フェノールジスルホン酸などの芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ヘプタンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、トリデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ペンタデシルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、 メタンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、ブタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルホ酢酸、タウリンなどの脂肪族スルホン酸、シクロペンタンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸およびカンファースルホン酸などの脂環式スルホン酸などが挙げられる。
【0020】
有機スルフィン酸としては、ヒドロキシメタンスルフィン酸、エタンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸などが挙げられ、有機スルフェン酸としては、ベンゼンスルフェン酸などが挙げられ、硫黄のオキソ酸としては、硫酸、二硫酸、チオ硫酸、ジチオン酸、トリチオン酸、テトラチオン酸、ポリチオン酸、亜硫酸、二亜硫酸、亜ジチオン酸などが挙げられる。
【0021】
硫黄酸としては、有機スルホン酸または硫酸が好ましく、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロパンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、硫酸が特に好ましい。また、硫黄酸は、1種でもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
硫黄酸の添加量は、ポリ乳酸系樹脂に対して、硫黄原子換算で400〜2000ppmであり、600〜1600ppmであることがさらに好ましく、700〜1400ppmであることが特に好ましい。ここでいうポリ乳酸系樹脂の量は、モノマー量から算出される理論ポリマー量である。
【0023】
本発明において、錫化合物の錫原子に対する硫黄酸の硫黄原子の重量比は、0.5〜3.5であり、1.0〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがさらに好ましく、1.7〜2.0であることが特に好ましい。
【0024】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、他の触媒を添加してもよい。触媒としては、金属触媒と酸触媒が挙げられ、金属触媒としては、チタン化合物、鉛化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、鉄化合物、リチウム化合物、希土類化合物などが挙げられ、化合物の種類としては、金属アルコキシド、金属ハロゲン化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化物などが好ましい。具体的には、チタニウムメトキシド、チタニウムプロポキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムブトキシド、チタニウムイソブトキシド、チタニウムシクロヘキシド、チタニウムフェノキシド、塩化チタン、二酢酸チタン、三酢酸チタン、四酢酸チタン、酸化チタン(IV)等のチタン化合物、ジイソプロポキシ鉛(II)、一塩化鉛、酢酸鉛、オクチル酸鉛(II)、イソオクタン酸鉛(II)、イソノナン酸鉛(II)、ラウリン酸鉛(II)、オレイン酸鉛(II)、リノール酸鉛(II)、ナフテン酸鉛、ネオデカン酸鉛(II)、酸化鉛、硫酸鉛(II)等の鉛化合物、亜鉛粉末、メチルプロポキシ亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛(II)、ナフテン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等の亜鉛化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト、オクチル酸コバルト(II)、イソオクタン酸コバルト(II)、イソノナン酸コバルト(II)、ラウリン酸コバルト(II)、オレイン酸コバルト(II)、リノール酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト(II)、炭酸第一コバルト、硫酸第一コバルト、酸化コバルト(II)等のコバルト化合物、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、オクチル酸鉄(II)、ナフテン酸鉄、炭酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、酸化鉄(II)等の鉄化合物、プロポキシリチウム、塩化リチウム、酢酸リチウム、オクチル酸リチウム、ナフテン酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸ジリチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物、トリイソプロポキシユウロピウム(III)、トリイソプロポキシネオジム(III)、トリイソプロポキシランタン、トリイソプロポキシサマリウム(III)、トリイソプロポキシイットリウム、イソプロポキシイットリウム、塩化ジスプロシウム、塩化ユウロピウム、塩化ランタン、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化イットリウム、三酢酸ジスプロシウム(III)、三酢酸ユウロピウム(III)、酢酸ランタン、三酢酸ネオジム、酢酸サマリウム、三酢酸イットリウム、炭酸ジスプロシウム(III)、炭酸ジスプロシウム(IV)、炭酸ユウロピウム(II)、炭酸ランタン、炭酸ネオジム、炭酸サマリウム(II)、炭酸サマリウム(III)、炭酸イットリウム、硫酸ジスプロシウム、硫酸ユウロピウム(II)、硫酸ランタン、硫酸ネオジム、硫酸サマリウム、硫酸イットリウム、二酸化ユウロピウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化サマリウム(III)、酸化イットリウム等の希土類化合物が挙げられる。その他にも、カリウムイソプロポキシド 、塩化カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、ナフテン酸カリウム、炭酸tert−ブチルカリウム、硫酸カリウム、酸化カリウム等のカリウム化合物、銅(II)ジイソプロポキシド、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、硫酸銅(II)、炭酸二銅等の銅化合物、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル(II)、酸化ニッケル等のニッケル化合物、テトライソプロポキシジルコニウム(IV)、三塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム(II)、炭酸ジルコニウム(IV)、硫酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム(II)等のジルコニウム化合物、トリイソプロポキシアンチモン、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、酢酸アンチモン、酸化アンチモン(III)等のアンチモン化合物、マグネシウム、マグネシウムジイソプロポキシド 、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物、ジイソプロポキシカルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、ゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマン、酸化ゲルマニウム(IV)等のゲルマニウム化合物、トリイソプロポキシマンガン(III)、三塩化マンガン、酢酸マンガン、オクチル酸マンガン(II)、ナフテン酸マンガン(II)、硫酸第一マンガン等のマンガン化合物、塩化ビスマス(III)、ビスマス粉末、酸化ビスマス(III)、酢酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等のビスマス化合物などを挙げることができる。また、チタン酸マグネシウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸コバルト、チタン酸亜鉛、チタン酸マンガン、チタン酸ジルコニウム、チタン酸ビスマス、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどの2種以上の金属元素からなる化合物なども好ましい。また、酸触媒としては、プロトン供与体のブレンステッド酸でもよく、電子対受容体であるルイス酸でもよく、有機酸および無機酸のいずれでもよい。例えば、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、リン酸モノドデシルおよびリン酸モノオクタデシルなどのリン酸モノエステル、リン酸ジドデシルおよびリン酸ジオクタデシルなどのリン酸ジエステル、亜リン酸モノエステルおよび亜リン酸ジエステルなどのリン酸化合物、ホウ酸、塩酸などが挙げられる。また、酸触媒としては、形状は特に限定されず、固体酸触媒および液体酸触媒のいずれでもよく、例えば、固体酸触媒としては、酸性白土、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、ケイ酸ジルコニウムおよびゼオライトなどの天然鉱物、シリカ、アルミナ、チタニアおよびジルコニアなどの酸化物またはシリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカボリア、アルミナボリア、シリカチタニアおよびシリカジルコニアなどの酸化物複合体、塩素化アルミナ、フッ素化アルミナ、陽イオン交換樹脂などが挙げられる。また、立体選択重合性を有する触媒を用いて、L−乳酸およびD−乳酸の等量混合物であるラセミ体を原料として、重合を行う場合においては、ポリ−L−乳酸およびポリ−D−乳酸をそれぞれ同時に製造することもできる。
【0025】
本発明の直接重合によるポリ乳酸系樹脂の製造において、反応条件は特に制限されるものではなく、各種条件で実施することができるが、下記3つの工程からなることが好ましい。
(A)下記a−1からa−4の条件下で溶融重合を行う第1工程、
(a−1)無触媒もしくは硫黄酸存在下
(a−2)100〜200℃の温度
(a−3)0.13〜1300Paの圧力又は不活性ガス気流下
(a−4)0.3〜10時間の反応時間
(B)下記b−1からb−4の条件下で溶融重合を行う第2工程、
(b−1)金属触媒及び硫黄酸存在下
(b−2)140〜200℃の温度
(b−3)0.13〜1300Paの圧力又は不活性ガス気流下
(b−4)0.3〜10時間の反応時間
(C)融点以下の温度で固相重合を行う第3工程。
【0026】
本発明において、(A)第1工程は、実質的な反応温度として、100〜180℃の温度で行うことが好ましく、120〜170℃の温度で行うことが好ましく、140〜160℃の温度で行うことがより好ましい。また、(A)第1工程の温度は、1段階でもよく、2段階以上の多段階でもよく、例えば、100〜140℃の温度で反応を行った後、140〜180℃の温度で反応を行う方法などが挙げられる。
【0027】
本発明において、(A)第1工程は、実質的な反応圧力として、0.13〜1300Paの圧力で行うことが好ましく、1〜1000Paの圧力で行うことが好ましく、10〜900Paの圧力で行うことがより好ましく、100〜800Paの圧力で行うことがさらに好ましく、500〜700Paの圧力で行うことが特に好ましい。また、(A)第1工程の圧力は、1段階でもよく、2段階以上の多段階でもよく、例えば、700〜1300Paの圧力で反応を行った後、0.13〜700Paの圧力で反応を行う方法などが挙げられる。
【0028】
本発明において、(A)第1工程は、0.3〜15時間の反応時間で行うことが好ましく、1〜10時間の反応時間で行うことが好ましく、2〜8時間の反応時間で行うことがより好ましく、3〜6時間の反応時間で行うことがさらに好ましい。
【0029】
(A)第1工程は、回分法でも連続法でもよいが、回分法の場合、室温から(a−2)に示す実質的な反応温度に達するまでの時間は、工程時間内の30%以内であることが好ましく、20%以内であることがより好ましく、10%以内であることがさらに好ましい。また、常圧から(a−3)に示す実質的な反応圧力に達するまでの時間は、工程時間内の50%以内であることが好ましく、40%以内であることがより好ましく、30%以内であることがさらに好ましい。
【0030】
本発明において、(A)第1工程では、通常重量平均分子量500〜2万未満の低分子量体を製造することが好ましく、重量平均分子量1000〜1.5低分子量体を製造することが好ましく、重量平均分子量1200〜1万の低分子量体を製造することがより好ましく、重量平均分子量1500〜8000の低分子量体を製造することがさらに好ましい。なお、重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
【0031】
本発明において、(A)第1工程は、回分法でも連続法でもよく、また、反応槽は特に限定されるものではなく、例えば、撹拌槽型反応槽、ミキサー型反応槽、塔型反応槽および押出機型反応槽などを用いることができ、これらの反応槽は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
本発明において、(A)第1工程は、どのような反応装置を用いることもできるが、反応槽と還流装置を接続した装置を用いることが好ましい。また、反応槽は、反応室が一つでもよく、仕切板などで分割された二つ以上の反応室から構成されているものでもよい。
本発明において、還流装置は、反応槽の上部に接続されていることが好ましく、還流装置に真空ポンプなどの真空発生源が接続されていることがより好ましい。なお、本発明において、還流装置とは、揮発成分を分離するものであり、揮発成分の一部を反応系外に除去する働きをもつ気化部と揮発成分の一部を反応系内に戻す働きをもつ凝縮部を有するものであればいずれでもよく、具体的には、揮発成分のうち、水を除去し、乳酸およびラクチドまたはそれらの低分子量重合体を反応槽に戻すものであればいずれも用いることができる。ここで、凝縮部を構成する凝縮器としては、例えば、二重管式、多管式、コイル式、プレート式、プレートフィン式、渦巻式、ジャケット式などの方式を挙げることができる。
【0033】
本発明の(A)第1工程において、反応終了後に、生成した低分子量体を反応槽から取り出す方法は、特に限定されるものではなく、窒素などの不活性気体による押出により取り出す方法、ギヤポンプなどで取り出す方法、ヘッド圧により取り出す方法などが挙げられる。
【0034】
本発明において、(B)第2工程は、実質的な反応温度として、140〜240℃の温度で行うことが好ましく、150〜210℃の温度で行うことが好ましく、160〜195℃の温度で行うことがより好ましい。また、(B)第2工程の温度は、1段階でもよく、2段階以上の多段階でもよいが、高分子量および高融点を有するポリ乳酸系樹脂を効率的に得ることができるという点で、2段階以上の多段階とすることが好ましく、例えば、140〜160℃の温度で反応を行った後、160〜240℃の温度で反応を行う方法などが挙げられる。
【0035】
本発明において、(B)第2工程は、実質的な反応圧力として、0.13〜1300Paの圧力で行うことが好ましく、1〜1000Paの圧力で行うことが好ましく、10〜900Paの圧力で行うことがより好ましく、100〜800Paの圧力で行うことがさらに好ましく、200〜700Paの圧力で行うことが特に好ましい。また、(B)第2工程の圧力は、1段階でもよく、2段階以上の多段階でもよいが、2段階以上の多段階とすることが好ましく、例えば、700〜1300Paの圧力で反応を行った後、0.13〜700Paの圧力で反応を行う方法などが挙げられる。
【0036】
本発明において、(B)第2工程は、0.5〜30時間の反応時間で行うことが好ましく、1〜15時間の反応時間で行うことが好ましく、2〜10時間の反応時間で行うことがより好ましく、3〜8時間の反応時間で行うことがさらに好ましく、3.5〜7時間の反応時間で行うことが特に好ましい。また、(B)第2工程の温度および圧力を2段階以上の多段階で行う場合は、例えば、140〜160℃の温度、700〜1300Paの圧力で、0.3〜15時間の反応時間で反応を行った後、160〜240℃の温度、0.13〜700Paの圧力で、0.3〜15時間の反応時間で反応を行う方法などが挙げられる。なお、温度および圧力を2段階以上の多段階で行う場合であっても、(B)第2工程の反応時間の合計は、0.5〜30時間であることが好ましい。
【0037】
(B)第2工程は、回分法でも連続法でもよく、また、反応槽は特に限定されるものではなく、例えば、撹拌槽型反応槽、ミキサー型反応槽、塔型反応槽および押出機型反応槽などを用いることができ、これらの反応槽は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
(B)第2工程では、重量平均分子量1万超、10万未満のプレポリマーを製造することを特徴とするが、高分子量を有するポリ乳酸系樹脂を効率的に得ることができるという点で、重量平均分子量2万〜9万のプレポリマーを製造することが好ましく、重量平均分子量2.5万〜8万のプレポリマーを製造することがより好ましく、重量平均分子量3万〜7万のプレポリマーを製造することがさらに好ましく、重量平均分子量3.5万〜6.5万のプレポリマーを製造することが特に好ましい。なお、重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
【0039】
本発明において、(B)第2工程は、どのような反応装置を用いることもできるが、反応槽と還流装置を接続した装置を用いることが好ましい。反応槽は、反応室が一つでもよく、仕切板などで分割された二つ以上の反応室から構成されているものでもよい。
本発明において、還流装置は、反応槽の上部に接続されていることが好ましく、還流装置に真空ポンプが接続されていることがより好ましい。なお、本発明において、還流装置とは、揮発成分を分離するものであり、揮発成分の一部を反応系外に除去する働きをもつ気化部と揮発成分の一部を反応系内に戻す働きをもつ凝縮部を有するものであればいずれでもよく、具体的には、揮発成分のうち、水を除去し、乳酸およびラクチドまたはそれらの低分子量重合体を(A)第1工程および/または(B)第2工程の反応槽に戻すものであればいずれも用いることができる。ここで、凝縮部を構成する凝縮器としては、例えば、二重管式、多管式、コイル式、プレート式、プレートフィン式、渦巻式、ジャケット式などの方式を挙げることができる。
【0040】
本発明の(B)第2工程において、反応終了後に、生成した低分子量体を反応槽から取り出す方法は、特に限定されるものではなく、窒素などの不活性気体による押出により取り出す方法、ギヤポンプなどで取り出す方法などが挙げられる。
次に、第3工程について説明する。本発明において、(C)第3工程は、融点以下の温度で固相重合を行う工程である。
【0041】
本発明において、(C)第3工程は、ポリマーの融点以下の温度で行うが、120〜160℃の温度で行うことが好ましく、140〜160℃の温度で行うことがより好ましく、145〜155℃の温度で行うことがさらに好ましい。また、(C)第3工程の温度は、1段階でもよく、2段階以上の多段階でもよいが、短時間で高分子量化しやすく、色相にも優れるという点で、2段階以上の多段階とすることが好ましく、反応の進行とともに温度を段階的に上げることがより好ましく、例えば、140℃の温度で反応を行った後、150℃で反応を行い、次いで160℃の温度で反応を行う方法などが挙げられる。
本発明において、(C)第3工程は、1〜100時間の反応時間で行うことが好ましく、色相にも優れるポリ乳酸系樹脂を効率的に得ることができるという点で、3〜80時間の反応時間で行うことが好ましく、5〜50時間の反応時間で行うことがより好ましく、10〜30時間の反応時間で行うことがさらに好ましい。
【0042】
また、(C)第3工程の温度を2段階以上の多段階で行う場合は、例えば、第1段階として120〜150℃の温度で1〜20時間、第2段階として150〜165℃の温度で1〜50時間で行う方法が挙げられる。なお、温度を2段階以上の多段階で行う場合であっても、(C)第3工程の反応時間の合計は、1〜100時間が好ましい。
【0043】
本発明において、(C)第3工程は、圧力条件は特に限定されることはなく、減圧条件、常圧条件および加圧条件のいずれでもよいが、減圧条件または常圧条件であることが好ましい。減圧条件で行う場合には、0.13〜1300Paの圧力で行うことが好ましい。また、1〜1000Paの圧力で行うことが好ましく、10〜900Paの圧力で行うことがより好ましく、100〜800Paの圧力で行うことがさらに好ましく、500〜700Paの圧力で行うことが特に好ましい。また、(C)第3工程の圧力は、1段階でもよく、2段階以上の多段階でもよいが、高分子量化でき、色相に優れるという点で、2段階以上の多段階とすることが好ましく、例えば、700〜1300Paの圧力で反応を行った後、0.13〜700Paの圧力で反応を行う方法などが挙げられる。常圧条件で行う場合には、窒素などの不活性気体気流下で行うことが好ましい。
【0044】
本発明において、(C)第3工程を実施する際には、プレポリマーの形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよいが、ペレットまたは粉末を用いることが好ましい。ペレットにする方法としては、溶融状態のプレポリマーを、ストランド状に押出し、ストランドカッターでペレタイズする方法、滴下ノズルを用いて液滴状に滴下し、気体、液体又は固体と接触させる方法、口金から気体又は液体中に押出とともにカッティングする方法などが挙げられる。また、粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマー粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。粉末の場合は、効率的に固相重合できるという点で、平均粒子径0.01〜3mmであることが好ましく、0.1〜1mmであることがより好ましい。
【0045】
本発明において、(C)第3工程は、回分法でも連続法でもよく、また、反応槽は、撹拌槽型反応槽、ミキサー型反応槽および塔型反応槽などを用いることができ、これらの反応槽は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
本発明の方法により得られるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、10万以上であることが、機械物性の点で好ましい。特に成形性および機械物性に優れるという点で、10万〜50万であることが好ましく、12万〜30万であることがより好ましく、14万から25万であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
【0047】
本発明において、(C)第3工程を実施する際には、プレポリマーが結晶化していることが好ましく、(B)第2工程終了後かつ(C)第3工程開始前に結晶化処理を行うことがより好ましい。
【0048】
結晶化させる方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を利用することができる。例えば、気相中または液相中において結晶化温度で処理する方法、プレポリマーを溶媒に溶解させ溶液とした後に溶媒を揮発させる方法、プレポリマーを溶媒に接触させる方法および溶融状態のプレポリマーを延伸または剪断の操作を行いながら冷却固化させる方法などが挙げられ、操作が簡便であるという観点においては、気相中または液相中において結晶化温度で処理する方法が好ましい。
【0049】
ここでいう結晶化温度とは、(B)第2工程で得ることができるプレポリマーのガラス転移温度より高く、融点よりも低い温度範囲であれば特に限定されるものではないが、予め示差走査型熱量計(DSC)により測定した昇温結晶化温度および降温結晶化温度の範囲内であることがより好ましく、高分子量および高融点を有し、色相に優れるポリ乳酸系樹脂を効率的に得ることができるという点で、30〜170℃であることがさらに好ましく、50〜150℃であることが特に好ましく、100〜140℃であることが最も好ましい。結晶化は1段で行ってもよいが、何段かの温度で行っていいし、連続的に昇温しながら実施してもよい。
【0050】
また、結晶化させる際の時間については特に限定されるものではないが、3時間以内であれば十分に結晶化されており、2時間以内でも好ましい。なお、結晶化処理における圧力条件は、減圧、常圧および加圧のいずれの条件でもよい。
【0051】
本発明において、結晶化処理させる際のプレポリマーの形状は、特に限定されるものではなく、塊状、フィルム、ペレットおよび粉末などいずれでもよいが、効率的に結晶化できるという点で、ペレットまたは粉末を用いることが好ましい。ペレットにする方法としては、溶融状態のプレポリマーを、ストランド状に押出し、ストランドカッターでペレタイズする方法、滴下ノズルを用いて液滴状に滴下し、気体または液体と接触させて、ペレット化する方法などが挙げられる。また、粉末にする方法としては、ミキサー、ブレンダー、ボールミルおよびハンマー粉砕機を用いて粉砕する方法が挙げられる。粉末の場合は、効率的に結晶化できるという点で、平均粒子径0.01〜3mmであることが好ましく、0.1〜2mmであることがより好ましい。
【0052】
本発明においては、さらに安定剤を添加することが好ましく。安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、リン系化合物などが挙げられ、これらを併用して用いてもよい。中でもリン系化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、ホスフェート系化合物、ホスファイト系化合物であることがさらに好ましい。具体例のさらなる好ましい例としてはADEKA製“アデカスタブ”AX−71(ジオクタデシルホスフェート)、PEP−8(ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト)、PEP−36(サイクリックネオペンタテトライルビス(2,6―t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト)である。
【0053】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミド、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド等をあげることができる。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイドである。ヒンダードフェノール系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブ”AO−20,AO−30,AO−40,AO−50,AO−60,AO−70,AO−80,AO−330、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”245,259,565,1010,1035,1076,1098,1222,1330,1425,1520,3114,5057、住友化学工業製“スミライザー”BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GM、GS、サイアナミド製“サイアノックス”CY−1790などが挙げられる。
【0054】
チオエーテル系化合物の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。チオエーテル系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブ”AO−23、AO−412S、AO−503A、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”PS802、住友化学工業製“スミライザー”TPL−R、TPM、TPS、TP−D、エーピーアイコーポレーション製DSTP、DLTP、DLTOIB、DMTP、シプロ化成製“シーノックス”412S、サイアミド製“サイアノックス”1212などが挙げられる。
ビタミン系化合物の具体例としては、酢酸d−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、d−β−トコフェトリエノール、d−γ−トコフェトリエノール、d−δ−トコフェトリエノールなどの天然品、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、ニコチン酸dl−α−トコフェロールなどの合成品を挙げることができる。ビタミン系化合物の具体的な商品名としては、エイザイ製“トコフェロール”、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”E201などが挙げられる。
トリアゾール系化合物の具体例としては、ベンゾトリアゾール、3−(N−サリシロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールなどが挙げられる。
【0055】
多価アミン系化合物の具体例としては、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッド、エチレンジアミン−テトラアセチックアシッドのアルカリ金属塩(Li,Na,K)塩、N,N’−ジサリシリデン−エチレンジアミン、N,N’−ジサリシリデン−1,2−プロピレンジアミン、N,N’’−ジサリシリデン−N’−メチル−ジプロピレントリアミン、3−サリシロイルアミノ−1,2,4−トリアゾールなどが挙げられる。
【0056】
ヒドラジン誘導体系化合物の具体例としては、デカメチレンジカルボキシリックアシッド−ビス(N’−サリシロイルヒドラジド)、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、N−ホルミル−N’−サリシロイルヒドラジン、2,2−オキザミドビス−[エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロオキシフェニル)プロピオネート]、オギザリル−ビス−ベンジリデン−ヒドラジド、ニッケル−ビス(1−フェニル−3−メチル−4−デカノイル−5−ピラゾレート)、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、5−t−ブチル−2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、N,N−ジエチル−N’,N’−ジフェニルオキサミド、N,N’−ジエチル−N,N’−ジフェニルオキサミド、オキサリックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、チオジプロピオニックアシッド−ビス(ベンジリデンヒドラジド)、ビス(サリシロイルヒドラジン)、N−サリシリデン−N’−サリシロイルヒドラゾン、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]オキサミドなどが挙げられる。
【0057】
リン系化合物としては、例えば、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が挙げられる。かかるホスファイト系化合物の具体例としては、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,6−ヘキサメチレン−ビス(N−ヒドロキシエチル−N−メチルセミカルバジド)−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレン−ジ−カルボキシリックアシッド−ジ−ヒドロキシエチルカルボニルヒドラジド−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−1,10−デカメチレン−ジ−カルボキシリックアシッド−ジ−サリシロイルヒドラジド−ジホスファイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−ジ(ヒドロキシエチルカルボニル)ヒドラジド−ジホスァイト、テトラキス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)−5−メチルフェニル]−N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド−ジホスファイトなどが挙げられるが、少なくとも1つのP−O結合が芳香族基に結合しているものがより好ましく、具体例としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などが挙げられ、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。ホスファイト系化合物の具体的な商品名としては、ADEKA製“アデカスタブ” C、PEP−4C、PEP−8、PEP−11C、PEP−24G、PEP−36、HP−10、2112、260、522A、329A、1178、1500、C、135A、3010、TPP、チバスペシャリティケミカル製“イルガフォス”168、住友化学工業製“スミライザー”P−16、クラリアント製“サンドスタブ” P−EPQ、GE製“ウエストン”618、619G、624などが挙げられる。
【0058】
ホスフェート系化合物の具体例としては、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェートなどが挙げられ、中でも、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェートが好ましい。ホスフェート系化合物の具体的な商品名としては、チバスペシャリティケミカル製“イルガノックス”MD1024、イーストマン・コダック製“インヒビター”OABH、ADEKA製“アデカスタブ”CDA−1、CDA−6、AX−71などを挙げることができる。
【0059】
安定剤の添加量は、特に限定されないが、熱安定性に優れるという点で、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.001〜2重量部であることが好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましく、0.05〜0.5重量部であることがさらに好ましく、0.08〜0.3重量部であることが最も好ましい。
【0060】
また、安定剤としてリン系化合物を使用する場合は、金属触媒の金属原子とリン系化合物のリン原子の比率が、0.1〜5であることが好ましく、0.5〜3であることがさらに好ましく、0.8〜2であることが得に好ましい。
【0061】
安定剤の添加時期は、特に限定されず、重合中および終了後のいずれでもよいが、固相重合前又は固相重合後が好ましい。
【0062】
本発明において、安定剤を添加する方法は、特に限定されず、ポリ乳酸系樹脂の融点以上で溶融混練する方法や溶媒に溶解させて混合した後、溶媒を除去する方法等を挙げることができるが、効率的に製造することができるという点で、ポリ乳酸系樹脂の融点以上で溶融混練する方法が好ましい。なお、溶融混練する方法としては、回分法でも連続法でもよく、装置としては、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、プラストミル、ニーダーおよび減圧装置付き撹拌型反応器などを用いることができ、効率的に均一に混練することができるという点で、単軸押出機または二軸押出機を用いることが好ましい。
【0063】
本発明において、安定剤を添加する温度は、180〜250℃の温度が好ましく、機械物性に優れるという点で、190〜230℃の温度がより好ましい。
【0064】
本発明において、安定剤を添加する圧力は、減圧、常圧および加圧のいずれでもよく、溶融混練時に発生ガスを除去できるという点で、減圧とすることが好ましい。
【0065】
本発明において、溶融混練時の雰囲気条件としては、大気雰囲気下または窒素などの不活性気体雰囲気下のいずれでもよいが、溶融混練時に発生するガス量を低減できるという点で、不活性気体雰囲気下で行うことが好ましい。
【0066】
溶媒中で混合する場合には、ポリマーおよびモノマーが溶解する溶媒を用いる。溶媒としては、たとえば、クロロホルム、塩化メチレンおよびアセトニトリルなどを用いることができる。混合後に溶媒を除去する必要がある場合に溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、室温で溶媒を揮発させる方法および減圧下で溶媒の沸点以上の温度で溶媒を揮発させる方法などを用いることができる。
【0067】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ウォラストナイト、タルク、クレイ、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、合成マイカ、ドロマイト、カオリナイト、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトまたは白土など)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤、離形剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、結晶核剤(タルクなどの無機系核剤、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビス−12−ジヒドロキシステアリン酸アミドおよびトリメシン酸トリシクロヘキシルアミドなどの有機アミド系化合物、銅フタロシアニンおよびピグメントイエロー110などの顔料系核剤、有機カルボン酸金属塩、フェニルホスホン酸亜鉛など)、帯電防止剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0068】
また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸ブロック共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)または熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)または軟質熱可塑性樹脂(例えば、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。
【0069】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸系樹脂は、成形品などに加工する際に、一旦熱溶融させて固化した後も、高分子量を有し、好ましい態様においては、高融点を有し、熱安定性および色相にも優れるポリ乳酸系樹脂を形成しやすい。
【0070】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸系樹脂は、成形品として広く用いることができる。成形品としては、例えば、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、および他の材料との複合体などが挙げられ、これらの成形品は、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品またはその他の用途として有用である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ここで、実施例中の部数は、重量部を示す。
【0072】
本発明で用いた測定方法および判定方法を以下に示す。
【0073】
(1)重量平均分子量(Mw)
溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用いゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量の値である。
【0074】
(2)融点
示差走査型熱量計(DSC)により窒素雰囲気下中、200℃で2分間保持後、120℃/分で30℃まで降温し、その後昇温速度20℃/分で200℃まで昇温し、融点を測定した。
【0075】
(3)D体量
ポリマーを水酸化ナトリウム溶液下で加水分解し、その後塩酸で中和し、次いで光学分割カラムを取り付けた液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0076】
(4)熱安定性
熱重量測定装置(TGA)により窒素雰囲気下中、200℃で10分保持し、重量保持率を測定した。重量保持率が大きいものほど熱安定性に優れると言える。
【0077】
(5)耐加水分解性
温度60℃、湿度95%の条件で24時間湿熱処理を行い、処理前後の重量平均分子量からの分子量保持率を測定した。
【0078】
(6)色相
目視判断より、下記基準を用いて判断した。
5:無着色
4:3と5の中間
3:黄色に着色
2:1と3の中間
1:茶色に着色
【0079】
[実施例1]
撹拌装置、還流装置のついた反応容器中に、90%L−乳酸(D体量0.4%)水溶液100部を入れ、温度を150℃にした後、徐々に減圧して800Paとし、水を除去しながら3.5時間反応させた後、触媒として酢酸錫(II)をポリ乳酸理論量当たり錫原子換算で150ppm、メタンスルホン酸をポリ乳酸理論量当たり硫黄原子換算で670ppmとなるように加え、温度170℃、圧力400Paで、6時間重合反応させ、プレポリマーを得た。得られたプレポリマーを粉砕後、窒素下110℃で1時間結晶化処理を行った後、50Paの圧力下、140℃で3時間、150℃で3時間、160℃で18時間固相重合を行い、ポリ乳酸系樹脂を得た。得られたポリ乳酸系樹脂の特性について、表1に示す。
【0080】
[実施例2〜8、比較例1〜8]
使用する酢酸錫(II)、メタンスルホン酸の添加量を表1、表2に示す量とした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1、表2に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
[実施例9〜13、15〜30、比較例9〜14]
使用する錫化合物、硫黄酸の種類、添加量を表3、表4、表5に示すようにした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3、表4、表5に示す。
【0084】
[実施例14]
実施例5で得られたポリ乳酸系樹脂100重量部に、ステアリルアシッドホスフェート0.2重量部を混合し、2軸押出機を用いて190℃で溶融混練を行った。得られたポリ乳酸系樹脂の特性を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸を主原料として、直接重縮合により、ポリ乳酸系樹脂を製造する方法であって、触媒として錫化合物と硫黄酸を用い、ポリ乳酸系樹脂に対する錫化合物の添加量が錫原子換算で200〜1000ppmであり、ポリ乳酸系樹脂に対する硫黄酸の添加量が硫黄原子換算で400〜2000ppmであり、錫化合物の錫原子に対する硫黄酸の硫黄原子の重量比が、0.5〜3.5であることを特徴とするポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項2】
ポリ乳酸系樹脂に対する錫化合物の添加量が錫原子換算で300〜800ppmであり、ポリ乳酸系樹脂に対する硫黄酸の添加量が硫黄原子換算で600〜1600ppmであることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項3】
ポリ乳酸系樹脂に対する錫化合物の添加量が錫原子換算で300〜800ppmであり、ポリ乳酸系樹脂に対する硫黄酸の添加量が硫黄原子換算で600〜1600ppmであり、添加する錫化合物の錫原子と添加する硫黄酸の硫黄原子の比率が、1.5〜2.5であることを特徴とする請求項1及び2記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項4】
錫化合物が酢酸錫又はオクチル酸錫化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項5】
硫黄酸がメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および硫酸から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項6】
さらに、安定剤を添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項7】
安定剤がリン化合物であり、錫化合物の金属原子とリン化合物のリン原子の比率が0.5〜3であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。
【請求項8】
下記3つの工程からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。
(A)下記a−1からa−4の条件下で溶融重合を行う第1工程、
(a−1)無触媒もしくは硫黄酸存在下
(a−2)100〜200℃の温度
(a−3)0.13〜1300Paの圧力又は不活性ガス気流下
(a−4)0.3〜10時間の反応時間
(B)下記b−1からb−4の条件下で溶融重合を行う第2工程、
(b−1)錫化合物及び硫黄酸存在下
(b−2)140〜200℃の温度
(b−3)0.13〜1300Paの圧力又は不活性ガス気流下
(b−4)0.3〜10時間の反応時間
(C)融点以下の温度で固相重合を行う第3工程。
【請求項9】
前記(B)第2工程終了後かつ(C)第3工程開始前に、50〜150℃の温度で結晶化処理を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−209321(P2010−209321A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28362(P2010−28362)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】