説明

ポリ乳酸系樹脂カード用フィルム

【課題】本発明は、耐衝撃性に優れ、加工性を損なうことなく、製造時のCO2排出量を大幅に低減可能な環境低負荷カード用フィルムを提供せんとするものである。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂を50重量%以上含む樹脂組成物からなるフィルムであって、インパクト値が3.0〜5.5kN・m/mmであり、かつ、フィルムの少なくとも片面の10点平均粗さが2〜30μmであることを特徴とするカード用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカードやキャッシュカードなどの磁気ストライプカードやICカード用に使用されるカード用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ストライプカード、ICカード等のプラスチックカードの素材としては、従来より例えば、特許文献1、2などが挙げられる。これら特許文献1,2のカード用シートでは、非晶性の芳香族ポリエステル樹脂とポリカーボネート系樹脂を主成分として構成していることが記載されており、バイオマス度が全く考慮されておらず、近年のバイオマス度の高いカード用フィルムを求める要望に応えらない。
【0003】
一方、近年の環境意識の高まりから、非石油系ポリマーとして普及しはじめたポリ乳酸系樹脂シートをカード用に使用した例が、特許文献3、4に見られる。しかしながら、これらの文献には表面粗さや白色度に関して具体的的な記述はない。
【特許文献1】特開2001−283175号公報
【特許文献2】特開2002−36765号公報
【特許文献3】特開2000−136259号公報
【特許文献4】特開2003−334913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものであり、その目的とするところは、カードの特性に必要な耐衝撃性、成形加工性を損なうことなく、製造時のCO排出量を大幅に低減可能な環境低負荷ポリ乳酸系樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採用するものである。
(1)ポリ乳酸系樹脂を50重量%以上含む樹脂組成物からなるフィルムであって、インパクト値が3.0〜5.5kN・m/mmであり、かつ、フィルムの少なくとも片面の10点平均粗さが2〜30μmであることを特徴とするカード用フィルム。
(2)ハンター白色度が80以上であることを特徴とする(1)に記載のカード用フィルム。
(3)ポリ乳酸系樹脂がポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合物100重量%からなり、ポリL−乳酸が30〜70重量%に対し、ポリD−乳酸が30〜70重量%であることを特徴とする(1)または(2)に記載のカード用フィルム。
(4)前記ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを5〜20重量部含有する前記樹脂組成物からなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のカード用フィルム。
(5)耐衝撃性改良剤を含有する前記樹脂組成物からなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のカード用フィルム。
(6)前記ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、平均粒径が10μm以下の無機粒子を5〜20重量部含有する前記樹脂組成物からなることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のカード用フィルム。
(7)無延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカード用フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、磁気ストライプカード、ICカード等に使用される従来の石油系樹脂フィルムの耐衝撃性、加工性を損なうことなく、製造時のCO排出量を大幅に低減可能な環境低負荷カード用フィルムを提供することにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の好ましい様態について詳細に説明する。
【0008】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂を用いたカード用フィルムについて鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂を50重量%以上含む樹脂組成物からなるフィルムのインパクト値を3.0〜5.5kN・m/mmとし、かつ、フィルムの少なくとも片面に、10点平均粗さが2〜30μmのマット加工を施したところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである
本発明のカード用フィルムは、樹脂組成物中にポリ乳酸系樹脂を50重量%以上含むことが重要である。好ましくは75重量%以上である。樹脂組成物中のポリ乳酸系樹脂の含有量が50重量%未満であるとバイオマス度が低下してしまい、燃焼時に発生する炭酸ガス量があまり軽減できず、ポリ乳酸系樹脂を使用するメリットが薄れてしまう。なお、本発明のカード用フィルムを構成する樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂を50重量%以上含むが、樹脂組成物中のポリ乳酸系樹脂以外の他成分は特に限定されず種々の樹脂などを用いることができるが、後述するポリ乳酸以外の脂肪続ポリエステルや耐衝撃改良剤、無機粒子などが好ましく用いられる。
【0009】
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は、適度な製膜、延伸適性および実用的な機械特性を満足させるため、5万〜50万であることが好ましく、より好ましくは10万〜25万である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでクロロホルム溶媒にて測定を行い、ポリメチルメタクリレート換算法により計算した分子量をいう。
【0010】
本発明に用いられるポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として得ることができる構造を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0011】
かかる他の共重合成分に用いられる単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記他の共重合成分の共重合量は、本発明のポリ乳酸系樹脂であるポリ乳酸を主体とするポリマーの全単量体成分100モル%に対し、0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
【0012】
本発明において、特に高い耐熱性を有するカード用フィルムおよびそれを用いたカードを得るためには、ポリ乳酸系樹脂として乳酸成分の光学純度が高いものを用いることが好ましい。ポリ乳酸系樹脂の総乳酸成分のうち、L体が80mol%以上100%以下含まれるかあるいはD体が80mol%以上100mol%以下含まれることが好ましく、L体が90mol%以上100mol%以下含まれるかあるいはD体が90mol%以上100mol%以下含まれることがより好ましく、L体が95mol%以上100mol%以下含まれるかあるいはD体が95mol%以上100mol%以下含まれることが特に好ましい。
【0013】
ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、詳細は後述するが、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0014】
ポリ乳酸系樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。ポリ乳酸系樹脂の融点は通常、乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点120℃以上のポリ乳酸系樹脂は、L体が90mol%以上100mol%以下含まれるか、あるいはD体が90mol%以上100mol%以下含まれることにより、また融点150℃以上のポリ乳酸系樹脂は、L体が95mol%以上100mol%以下含まれるかあるいはD体が95mol%以上100mol%以下含まれることにより得ることができる。
【0015】
本発明のポリ乳酸系樹脂は、フィルムの耐熱性を向上できるといった点から、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合物からなることが好ましい。そしてそれぞれの割合は、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合物100重量%において、ポリL−乳酸が30〜70重量%に対し、ポリD−乳酸が30〜70重量%であることが好ましい。さらに好ましくは、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合物100重量%において、ポリL−乳酸が90〜95重量%に対し、ポリD−乳酸が5〜10重量%である。ここでいうポリL−乳酸はL−乳酸を主たるモノマー成分とする重合体であり、L−乳酸のほかにD−乳酸成分を15モル%以下含有する共重合ポリL−乳酸であっても良いが、ステレオコンプレックス結晶の形成性を高める観点から、ポリL−乳酸中のD−乳酸成分は少ないほど好ましく、ホモポリL−乳酸を用いることがさらに好ましい。
【0016】
同様に、ここでいうポリD−乳酸はD−乳酸を主たるモノマー成分とする重合体であり、D−乳酸のほかにL−乳酸成分を15モル%以下含有する共重合ポリD−乳酸であっても良いが、ステレオコンプレックス結晶の形成性を高める観点から、ポリD−乳酸中のL−乳酸成分は少ないほど好ましく、ホモポリD−乳酸を用いることがさらに好ましい。ポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合物を結晶化させると、通常のL−乳酸もしくはD−乳酸のみからできる結晶(α結晶)とは晶系が異なる、ステレオコンプレックス結晶(SC結晶)が形成する。同一系内にα結晶とSC結晶といる2種類の晶系が存在することにより、一方の晶系の結晶成長を、もう一方の晶系の結晶が阻害することによって、結晶をより微細化できる。つまり、この方法により、フィルムの耐熱性を向上させることができる。α結晶とSC結晶は同時に形成させてもよいし、どちらかを先に形成させてもよい。SC結晶を先に形成させる方法としては、口金〜キャスト部分における降温結晶化が好ましく用いられる。これは、SC結晶が比較的高温の状態から降温結晶化を始めることを利用している。
【0017】
また、より効率よくSC結晶を形成させるため、各層におけるポリL−乳酸の重量平均分子量(以下、Mw(L)とする)とポリD−乳酸の重量平均分子量(以下、Mw(D)とする)の比Mw(L)/Mw(D)またはMw(D)/Mw(L)が2〜40であることが好ましく、3〜20であることがより好ましく、4〜10であることがさらに好ましい。これは、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の分子鎖長に差をつけることで、相互の接近が容易となり効率的にSCが形成できるからである。各層におけるMw(L)とMw(D)の比Mw(L)/Mw(D)またはMw(D)/Mw(L)が2以上である場合、SC結晶が効率よく形成される点で好ましい。また、各層におけるMw(L)とMw(D)の比Mw(L)/Mw(D)またはMw(D)/Mw(L)が40以下の場合、層を構成する樹脂の強度を維持できる点で好ましい。
【0018】
本発明のカード用フィルムは、インパクト値が3.0〜5.5kN・m/mmであることが重要である。好ましくは3.5〜5.0kN・m/mmである。インパクト値が5.5kN・m/mmより高いと、断裁加工時に大きな力が必要になる。また、インパクト値が3.0kN・m/mmより低いと、バリ発生の原因となり加工性が悪化する。
【0019】
本発明のカード用フィルムは、インパクト値を3.0〜5.5kN・m/mmとする手法は特に限定されないが、本発明では、フィルムを構成する樹脂組成物がポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを5〜20重量部含有することが好ましい。さらに好ましくは5〜15重量部である。樹脂組成物中のポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルの含有量が5〜20重量部であれば、他の物性を大きく損なうことなく耐衝撃性改良の効果が期待できる。
【0020】
ポリ乳酸系以外の脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチエレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3―ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、あるいはエチレングリコール、1,4―ブタンジオールなどの脂肪族ジオールとコハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸よりなる脂肪族ポリエステル、さらにはポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)などの脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合体、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。なかでも、耐衝撃性の改良効果が大きいものとして、ポリブチレンサクシネートやポリブチレンサクシネート・アジペートなどのポリブチレンサクシネート系樹脂が好ましく用いられる。
【0021】
また、本発明のカード用フィルムは、インパクト値を3.0〜5.5kN・m/mmとする手法は特に限定されないが、本発明ではフィルムを構成する樹脂組成物が、耐衝撃改良剤を含有することが好ましい。耐衝撃改良剤の含有比率はポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、1〜15重量部含有することが好ましい。さらに好ましくは3〜10重量部である。樹脂組成物中の耐衝撃改良剤の含有量が1〜15重量部であれば、他の物性を大きく損なうことなく効果が期待できる。
【0022】
上記耐衝撃改良剤の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(例えばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリエステル−ジオール・ジカルボン酸ブロック共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマーおよびポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
【0023】
さらに、各種の架橋度を有するものや、各種のミクロ構造、例えばシス構造、トランス構造などを有するもの、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体などを使用することができる。
【0024】
本発明において、耐衝撃改良剤としては、とくに、ポリ乳酸−ジオール・ジカルボン酸ブロック共重合体およびポリブタジエンゴムが好ましく用いられる。ポリ乳酸系樹脂と屈折率が大きく異なるポリブタジエンゴムを含む場合には、フィルムの白色度を上げることができ、一般的に白着色に用いられる顔料の添加量を減量することが可能である。
【0025】
本発明のカード用フィルムは、ハンター白色度が80以上100以下であることが好ましく、より好ましくは85以上100以下である。上記範囲であれば磁気ストライプカード、ICカード等の白色性、隠蔽性を調整する点で有利である。ここでいうハンター白色度とは以下の(a)式で表す。
(a)ハンター白色度=100―√((100−L)+(a+b))
ただし、
L:L値(明度)、a:a値(赤色度)、b:b値(黄色度)
本発明のカード用フィルムは、上記のハンター白色度範囲を満たす手法は特に限定されないが、樹脂組成物に無機粒子として、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、タルク、クレーなど公知の1種または2種以上が含有されても良い。このような無機粒子を含有すると、隠蔽性が改良され、この目的で白色無機粒子が好ましく用いられる。中でも、安価で、隠蔽性に優れることから、酸化チタンが好ましい。
【0026】
これらの無機粒子の平均粒径は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜7μmである。平均粒径は、透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、白色フィルムの断面を3000〜200000倍に拡大観察した断面写真から求める。すなわち、断面写真の粒子部分をマーキングして、その粒子部分をハイビジョン画像解析処理装置PIAS−IV((株)ピアス製)を用いて画像処理を行い、測定視野内の計100個の粒子を真円に換算したときの平均径を算出し、平均粒径とした。
【0027】
樹脂組成物中の無機系粒子の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、5〜20重量部が好ましく、より好ましくは7〜15重量部である。平均粒径が10μm以下で含有量が5〜20重量部であればフィルム外観を損なうことなく白色に着色できる。
【0028】
本発明のカード用フィルムは、少なくとも片面の10点平均粗さ(Rz)が2〜30μmであることが重要である。より好ましくはRzが3〜20μmである。Rzが2μm未満であると、フィルムを積層してプレス融着するときに、フィルムとフィルムの間、およびフィルムとプレスの艶板の間の空気が抜けにくく、得られたカードに欠陥が生じやすい。逆に、Rzが30μmを超えるような粗いマットの場合は微細な印刷ができないことがある。
【0029】
本発明のカード用フィルムは、各種有機粒子を含有することができる。その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましい。また含有量は、本発明のフィルムを構成する樹脂組成物がポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、0.01〜15重量部であることが好ましい。平均粒径は、より好ましくは0.02μm〜5μmである。有機粒子含有量は、より好ましくはフィルムを構成するポリ乳酸系樹脂組成物100重量部に対して0.02〜1重量部である。平均粒径が0.01〜10μm、混合する各種有機粒子がフィルムを構成する樹脂組成物のポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部であれば、フィルムの安定した成形や外観が可能である。
【0030】
本発明にかかる粒子の種類は、目的や用途に応じて適宜選択され、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。もちろん、各粒子は、それぞれ単独で使用しても、混合して用いても構わない。混合して用いる場合は、それぞれの種類の粒子が、上記平均粒子径の範囲内となるようにすればよく、また、全ての種類の粒子の総含有量が上記範囲内となるようにすればよい。
【0031】
また、本発明のカード用フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、造核剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
【0032】
また、ブロッキング防止、帯電防止、離型性付与、耐傷付き性改良などの目的で、表面に主にシリコーン系のコーティング機能層を設けることが有効であり、この機能層の形成には、シートの製造工程内で行うインラインコーティング法、シートの巻き取り後に行うオフラインコーティング法を用いることができる。
【0033】
本発明にかかるポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、あるいはその他の成分を含有する組成物(本発明のカード用フィルムを構成する組成物)を得るにあたっては、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することも可能であるが、溶媒への原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要で、実用的な製造方法である、各成分を溶融混練することにより組成物を製造する溶融混練法を採用することが好ましい。
【0034】
その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。
またその混合順序についても特に制限はなく、例えばポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルをドライブレンド後、溶融混練機に供する方法や、予めポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸系樹脂とを溶融混練する方法等が挙げられる。また必要に応じて、その他の成分を同時に溶融混練する方法や、予めポリ乳酸系樹脂とその他の添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸系樹脂とを溶融混練する方法を用いてもよい。
【0035】
溶融混練時の温度は190℃〜250℃の範囲が好ましく、またポリ乳酸系樹脂の劣化を防ぐ意味から、200℃〜220℃の範囲とすることがより好ましい。
【0036】
本発明のカード用フィルムは、該フィルム中に含まれるラクチド量がポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0〜0.5重量部であることが好ましい。より好ましくはラクチド量がポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0〜0.4重量部、さらに好ましくは0〜0.3重量部である。該フィルム中に含まれるラクチド量がポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0〜0.5重量部であれば、該フィルム中に残留しているラクチドが粉末状あるいは液状として析出した場合でも、ハンドリング性を悪化させることがく、また、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を進行させることもない。
【0037】
本発明のカード用フィルムにおける、フィルム中に含まれるラクチドとは、上述したポリ乳酸を主体とするポリマーを構成する乳酸成分の環状2量体を意味するものであって、LL−ラクチド、DD−ラクチドおよびDL(メソ)−ラクチドが挙げられる。
【0038】
本発明のカード用フィルムは無延伸フィルムであることが好ましいが、請求範囲を満たせば延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムを得る場合は、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの既存の延伸フィルム製造法により行うことができるが、製膜速度を高速にできることから同時二軸延伸法が好ましい。
【0039】
次に、カード用フィルムを製造する方法を具体的に説明する。
【0040】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂であるポリ乳酸を主体とするポリマーは、次のような方法で得ることができる。原料としては、L−乳酸またはD−乳酸の乳酸成分を主体とし、前述した乳酸成分以外のヒドロキシカルボン酸を併用することができる。またヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、ラクチド、グリコリド等を原料として使用することもできる。更にジカルボン酸類やグリコール類等も使用することができる。
【0041】
ポリ乳酸系樹脂を主体とするポリマーは、上記原料を直接脱水縮合する方法、または上記環状エステル中間体を開環重合する方法によって得ることができる。例えば直接脱水縮合して製造する場合、乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより高分子量のポリマーが得られる。
【0042】
また、ラクチド等の環状エステル中間体をオクチル酸錫等の触媒を用い減圧下開環重合することによっても高分子量のポリマーが得られることも知られている。このとき、有機溶媒中での加熱還流時の水分および低分子化合物の除去の条件を調整する方法や、重合反応終了後に触媒を失活させ解重合反応を抑える方法、製造したポリマーを熱処理する方法などを用いることにより、ラクチド量の少ないポリマーを得ることができる。
【0043】
以下に本発明の無延伸のカード用フィルムを得る場合、さらにはテンター式逐次二軸延伸を行う場合の好ましい製膜方法を示すが、本発明は、かかる製膜方法に限定されるものではない。
【0044】
ポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸系樹脂以外の各成分を性状に応じた計量装置を用いて、それぞれ所定の比率で、独立した別々の二軸押出機に供給する。二軸押出機としては、ポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを未乾燥で供給可能であるため、ベント式二軸押出機を好ましく用いることができる。供給されたポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸以外の脂肪族芳香族ポリエステルは、溶融粘度に応じて150〜300℃で溶融し、ダイ外またはダイ内で複合化し、例えばTダイ法によりリップ間隔2〜3mmのスリット状の口金からゴム製キャスティングドラムと金属製冷却キャスティングドラムで挟み、無配向キャストフィルムを得る。なお、金属性キャスティングドラムや金属性キャスティングドラム後エンボス加工することによっても、ドラム表面粗さを適宜調整することで本発明の積層フィルムを得ることは可能であるが、10点平均粗さを2〜30μmに調整容易な点から、ゴム製キャスティングドラムを用いることが特に好ましい。
【0045】
金属製冷却ロールの表面温度の好ましい範囲は0〜60℃であり、より好ましい範囲は3〜55℃であり、さらに好ましい範囲は10〜50℃である。金属製冷却ロールの表面温度をこの範囲に設定することで良好なフィルム表面を発現できる。
【0046】
延伸シートを得る場合は、こうして得られた無延伸キャストシートを加熱ロール上に搬送することによって縦延伸を行う温度まで昇温する。昇温には赤外線ヒーターなど補助的な加熱手段を併用しても良い。延伸温度の好ましい範囲は80〜95℃であり、より好ましくは85〜90℃である。このようにして昇温した未配向シートを加熱ロール間の周速差を用いてシート長手方向に1段もしくは2段以上の多段で延伸を行う。合計の延伸倍率は1.2〜3.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0倍である。
【0047】
このように一軸延伸したシートをいったん冷却した後、シートの両端部をクリップで把持してテンターに導き、幅方向の延伸を行う。延伸温度は75〜90℃が好ましく、より好ましくは80〜85℃である。延伸倍率は1.2〜3.5倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0倍である。
【0048】
シートの幅方向の性能差を低減するためには、長手方向の延伸温度よりも1〜15℃低い温度で幅方向の延伸を行うことが好ましい。
【0049】
さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0050】
次に、この延伸シートを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。主にシートに熱寸法安定性を付与する観点、また同時にシートに含有しているラクチドを飛散させラクチド量を低減させる観点から、好ましい熱処理温度は100〜160℃であり、より好ましくは120〜150℃である。時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。弛緩率は、幅方向の熱収縮率を低下させる観点から1〜8%であることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。熱固定処理を行う前にいったんシートを冷却することがさらに好ましい。
【0051】
さらに、シートを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、シートを冷やして巻き取り、目的とするフィルムを得る。
【0052】
上記のような製造方法を採用することにより、本発明のカード用フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、以下の実施例により限定されるものではない。
[測定及び評価方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
(1)インパクト値
フィルムインパクトテスター(東洋精機製作所製)により、直径1/2インチの半球状衝撃頭を用い、温度23℃、湿度65%R.Hの雰囲気下においてインパクト値の測定を行った。100mm×100mmにフィルムサンプルを作製し、測定は1水準につき5回行った。さらに、1回毎のインパクト値を測定サンプル厚みで割り返し、単位厚みあたりのインパクト値とし、5回の測定の平均値から求めた。サンプル厚みは、デジタル式マイクロメーターで測定した。
(2)10点平均粗さ
万能表面形状測定器SE−3FA((株)小坂研究所製)により10点平均粗さ(Rz)を測定した。なお、測定条件は、触針先端半径:2μm、測定力:0.7mN、測定長25mm、カットオフ:0.08mmである。
(3)ハンター白色度
温度23℃、湿度65%R.Hの雰囲気下において、ヘイズメーターHGM―2DP型(スガ試験機社製)を用いてハンター白色度を測定した。
(4)断裁性
フィルムを5枚重ねて断裁機で断裁を行い、良好な結果を得たものについては○を、問題があればそれの詳細を記述した。
(5)プレス時の流れ防止性
フィルムの中央部にフィルムを、上下左右方向のフィルムの流れ有無を観察した。フィルムの流れが無ければ○、問題があればそれの詳細を記述した。
(6)隠蔽性
フィルムを通して、フィルム背後の文字や絵柄の見え具合を評価し、全く文字や絵柄が見えないものには○、それ以外のものには×で示した。
(7)耐熱性
100mm×100mmサイズにカットしたフィルムを60℃に設定したオーブンに1時間入れたときの変形を目視にて評価し、変形がなければ○を、変形小であれば△で示した。
[使用したポリ乳酸系樹脂]
(PLA−1):
ポリD−乳酸含有割合5.0mol%、PMMA換算の重量平均分子量19万のポリL−乳酸樹脂。(Nature Works社製)
(PLA−2):
PLA−1と、PMMA換算の重量平均分子量1万のポリD−乳酸樹脂(L−乳酸ユニット含有割合1mol%)を、PLA−1:PMMA換算の重量平均分子量1万のポリD−乳酸樹脂(L−乳酸ユニット含有割合1mol%)=重量比50:重量比50で混合したもの。
[使用したポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル樹脂]
(PA―1):
ポリブチレンサクシネート・アジペート系樹脂(昭和高分子社製、商品名“ビオノーレ”#3001)
(PA―2):
ポリブチレンサクシネート・アジペート系樹脂(三菱化学社製、商品名“GsPla”AZ91T
[使用した耐衝撃性改良剤]
(B―1):
ブタジエン/スチレン重合体(カネカ製、商品名“カネエース”M−600)
(B−2):
コアシェル型アクリル系重合体(ローム&ハース社製、商品名“パラロイド”EXL2314
(B−3):
ポリ乳酸−ジオール・ジカルボン酸ブロック共重合体(大日本インキ化学工業製、商品名“プラメート”PD―150)
[使用した無機粒子マスターバッチ]
(D―1):
酸化チタン40wt%・PLA−1ベースのマスターバッチ(アナターゼ型酸化チタン、平均粒径:0.2μm)
[ポリ乳酸系樹脂フィルムの作成]
(実施例1)
ポリ乳酸PLA−1を100重量部、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル樹脂PA−1を20重量部、無機粒子マスターバッチD−1を20重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、ゴム製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した。
【0054】
得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性は良好であり、評価結果を表1−1に示した。
(実施例2)
ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルをPA−2に変えた以外は実施例1と同様にして実施した。得られたフィルムの特性は良好であった。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性は良好であり、評価結果を表1−1に示した。
(実施例3)
無機粒子マスターバッチを30重量部に変えた以外は実施例2と同様にして実施した。得られたフィルムの特性は良好であった。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性は良好であり、評価結果を表1−1に示した。
(実施例4)
ポリ乳酸PLA−1を100重量部、耐衝撃性改良剤B−1を5重量部、無機粒子マスターバッチD−1を20重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、ゴム製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した後、エンボス加工を施した。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性は良好であり、評価結果を表1−1に示した。
(実施例5)
ポリ乳酸PLA−2を100重量部、耐衝撃性改良剤B−1を3重量部、無機粒子マスターバッチD−1を20重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、ゴム製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性、および耐熱性は良好であり、評価結果を表1−1に示した。
(実施例6)
耐衝撃性改良剤B−2を7重量部に変えた以外は実施例5と同様にして実施した。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性および耐熱性は良好であり、評価結果を表1−1に示した。
(実施例7)
ポリ乳酸PLA−1を100重量部、耐衝撃性改良剤B−3を10重量部、無機粒子マスターバッチD−1を30重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、ゴム製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性は良好であり、評価結果を表1−1に示した。
(比較例1)
ポリ乳酸PLA−1を100重量部、無機粒子マスターバッチD−1を15重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、金属製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性は劣るものであった。評価結果を表1−2に示した。
(比較例2)
ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルPA−1を5重量部添加した以外は比較例1と同様にして実施した。得られたフィルムの断裁性、流れ防止性、隠蔽性は劣るものであった。評価結果を表1−2に示した。
(比較例3)
ポリ乳酸PLA−1を100重量部、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル樹脂PA−2を7重量部、無機粒子マスターバッチD−1を30重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、ゴム製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの断裁性は劣るものであったが、流れ防止性、隠蔽性は良好であった。評価結果を表1−2に示した。
(比較例4)
ポリ乳酸PLA−1を100重量部、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル樹脂PA−2を20重量部、無機粒子マスターバッチD−1を30重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、金属製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した。得られたフィルムの断裁性、隠蔽性は良好であったが、流れ防止性に劣るものであった。評価結果を表1−2に示した。
(比較例5)
ポリ乳酸PLA−1を100重量部、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル樹脂PA−2を20重量部、耐衝撃性改良剤B−1を10重量部、無機粒子マスターバッチD−1を20重量部を2軸押出機に供し、真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、口金温度を220℃に設定したTダイ口金より押出し、金属製キャスティングドラムと、40℃に冷却した金属製冷却キャスティングドラムで挟み、冷却固化し、厚み0.18mmの無延伸フィルムを作製した後、エンボス加工を施した。得られたフィルムは断裁困難で印刷不可であったが、隠蔽性は良好であった。評価結果を表1−2に示した。
【0055】
【表1−1】

【0056】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂を50重量%以上含む樹脂組成物からなるフィルムであって、インパクト値が3.0〜5.5kN・m/mmであり、かつ、フィルムの少なくとも片面の10点平均粗さが2〜30μmであることを特徴とするカード用フィルム。
【請求項2】
ハンター白色度が80以上であることを特徴とする請求項1に記載のカード用フィルム。
【請求項3】
ポリ乳酸系樹脂が、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合物100重量%からなり、ポリL−乳酸が30〜70重量%に対し、ポリD−乳酸が30〜70重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のカード用フィルム。
【請求項4】
前記ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステルを5〜20重量部含有する前記樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカード用フィルム。
【請求項5】
耐衝撃性改良剤を含有する前記樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカード用フィルム。
【請求項6】
前記ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、平均粒径が10μm以下の無機粒子を5〜20重量部含有する前記樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカード用フィルム。
【請求項7】
無延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカード用フィルム。

【公開番号】特開2009−169577(P2009−169577A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5400(P2008−5400)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】