説明

ポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体

【課題】帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができるポリ乳酸系樹脂発泡体を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂成分としてのポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、カーボンブラック0.001〜5質量部と、帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを0.0001〜3質量部含み、1×1011Ωcm以下の体積抵抗率を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡体により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体に関する。さらに詳しくは、本発明は、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができるポリ乳酸系樹脂発泡体、ならびに前記ポリ乳酸系樹脂発泡体から得られる、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸系樹脂は、天然に存在する乳酸を重合されて得られた樹脂であり、自然界に存在する微生物によって分解可能な生分解性樹脂であると共に、常温での機械的特性についても優れており、さらに、近年の環境意識の高まりと原油高騰等から石油を原料とする合成樹脂に代わる合成樹脂として注目を集めている。
【0003】
ポリ乳酸系樹脂は、一般に、D−乳酸および/またはL−乳酸を重合させるか、あるいは、L−ラクチド、D−ラクチドおよびDL−ラクチドからなる群から選ばれた1以上のラクチドを開環重合させることによって製造することができる。
【0004】
また、ポリ乳酸系樹脂発泡体を発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法としては、型内発泡成形が提案されている。型内発泡成形とは、ポリ乳酸系樹脂発泡体を金型内に充填し、熱水や水蒸気等の熱媒体によってポリ乳酸系樹脂発泡体を加熱して発泡させ、ポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡圧によってポリ乳酸系樹脂発泡体同士を融着一体化させて所望の形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造する方法である。
【0005】
他方、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は外観を美麗にするためにカーボンブラック等の顔料を用いて着色を行うこともある(例えば、特許文献1)。また、昨今はポリスチレン樹脂発泡体のリサイクルが盛んであるため、ポリ乳酸系樹脂に他の樹脂が混入した場合に備えて、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体に前記顔料により着色を施すこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−86802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、少量のカーボンブラックの添加によって、ポリ乳酸系樹脂発泡体やポリ乳酸系樹脂発泡成形体の帯電量が増加することがある。前記のような帯電量の増加は、最終製品の品質のばらつき、製造時の作業性の低下を招く原因ともなり得る。
【0008】
他方、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体がカーボンブラックを含む場合、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の剛性が低下することもある。この場合、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の強度が著しく低下したり、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の成形性、外観等に悪影響を与えることがある。具体的には、ヘルメット用衝撃緩衝材においてポリ乳酸系樹脂発泡成形体に対して求められる強度や成形性が不十分となることがある。特に、ヘルメット用衝撃緩衝材は頭部を事故等から守るために使用されるものであり、この用途においては樹脂成形体であっても通常の樹脂成形体よりもさらにより優れた強度が求められる。
【0009】
従って、前記のような問題点に鑑みて、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができるポリ乳酸系樹脂発泡体、ならびに、前記のような用途において使用し得るような、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の提供が課題とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして本発明によれば、樹脂成分としてのポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、カーボンブラック0.001〜5質量部と、帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを0.0001〜3質量部含み、1×1011Ωcm以下の体積抵抗率を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡体が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、前記ポリ乳酸系樹脂発泡体から得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体も提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記ポリ乳酸系樹脂発泡成形体からなるヘルメット用衝撃緩衝材も提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、特定の量のカーボンブラックと、帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを使用することにより、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができるポリ乳酸系樹脂発泡体を提供することができる。他方、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体を発泡成形にすることによって、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることもできる。
【0014】
また本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂発泡体が、樹脂成分としてのポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、帯電防止剤として第四級アンモニウム塩を0.0001〜1質量部、または、ポリエチレングリコールを0.001〜3質量部含む場合、これらは帯電防止性により優れるため、剛性および外観に優れ、帯電防止性により優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を与えるポリ乳酸系樹脂発泡体を提供することができる。
【0015】
また本発明によれば、第四級アンモニウム塩が、下記式(1):
[N(CH3225R]+25OSO3-・・・・・(1)
(式中、Rは炭素数5〜17の直鎖状または分岐状のアルキル基である)
で表される場合、これらは帯電防止性により優れるため、剛性および外観に優れ、帯電防止性がさらに優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を与えるポリ乳酸系樹脂発泡体を提供することができる。
【0016】
また本発明によれば、ポリ乳酸系樹脂が構成単量体成分としてD体およびL体の双方の光学異性体を含有しかつD体またはL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、あるいは、構成単量体成分としてD体またはL体のうちのいずれか一方の光学異性体のみを含有するポリ乳酸系樹脂である場合、樹脂成分の結晶化度を上げることにより耐熱性に優れ、帯電防止性に優れ、剛性にさらにより優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を与えるポリ乳酸系樹脂発泡体を提供することができる。
【0017】
本発明によれば、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【0018】
また本発明によれば、1×1013Ω/□以下の表面抵抗率を有するような、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を提供することができる。
【0019】
また本発明によれば、帯電防止性、剛性および外観に優れたヘルメット用衝撃緩衝材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1で得られたポリ乳酸系樹脂発泡体の顕微鏡写真である。
【図2】体積抵抗率測定機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の特徴は、樹脂成分としてのポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、カーボンブラック0.001〜5質量部と、帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを0.0001〜3質量部含み、1×1011Ωcm以下の体積抵抗率を有するポリ乳酸系樹脂発泡体である。
【0022】
一般に、カーボンブラックは導電性に寄与し得ると考えられるが、ポリ乳酸系樹脂発泡体やポリ乳酸系樹脂発泡成形体が少量のカーボンブラックを含む場合、これらは、意外にも、帯電性を示すことがある。このため、帯電防止効果を得るために、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体は帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを含む。これにより、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体は1×1011Ωcm以下の良好な体積抵抗率を有することができる。また、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体は前記のような良好な体積抵抗率を有するため、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体も1×1013Ω/□以下の良好な表面抵抗率を有することがある。
【0023】
他方、カーボンブラックを添加することによりポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡力が低下し、その結果、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の剛性および外観に悪影響を与えることがある。また、帯電防止剤を樹脂組成に多量に加えると、この場合も、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の剛性および外観に悪影響を与えることがある。しかしながら、帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを少量添加することで、帯電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡体を提供することができる。また、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を提供することもできる。
【0024】
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体および前記ポリ乳酸系樹脂発泡体から得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体について詳説する。
【0025】
(ポリ乳酸系樹脂発泡体)
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体は、ポリ乳酸系樹脂、カーボンブラックおよびカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを少なくとも含む。また、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、前記ポリ乳酸系樹脂発泡体を発泡成形することによって得ることができる。
【0026】
なお、本発明で使用する単量体成分の定量、定性等はガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、IR、NMRのような公知の測定方法を用いることにより確認することができる。また、ポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体中の組成の質量比と使用する単量体成分等の原材料の質量比とは略同一である。さらに、所望の物性を得ることができる限り、本発明で使用する様々な原料種は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体は、所定の割合でカーボンブラックおよび第四級アンモニウム塩を含むため、1×1011Ωcm以下の、好ましくは5×1010Ωcm以下の、さらに好ましくは1×1010Ωcm以下の、体積抵抗率を有することができる。このため、ポリ乳酸系樹脂発泡体は良好な耐電防止性を有する。具体的には、ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面へのポリ乳酸系樹脂発泡体の付着を低減することができる。その結果、ポリ乳酸系樹脂発泡体の品質のばらつきや工程異常を抑制することができる。このため、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡体を使用することにより、耐電防止性に優れたポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることもできる。
【0028】
ポリ乳酸系樹脂発泡体は、0.02〜0.6g/cm3、好ましくは0.03〜0.5g/cm3、より好ましくは0.04〜0.4g/cm3の嵩密度を有する。嵩密度が0.6g/cm3より大きいと得られる発泡成形体の重量が高くなり、実用性に乏しいことがある。一方、嵩密度が0.02g/cm3より小さいと得られる発泡成形体の強度が低くなり、構造部材等への使用が困難となることがある。
【0029】
ポリ乳酸系樹脂発泡体の平均粒子径は、0.5〜6.0mmが好ましく、1.0〜5.0mmがより好ましい。平均粒子径が6.0mmより大きい場合、発泡成形機へのポリ乳酸系樹脂発泡体の充填性が低下することがあり、得られる発泡成形体の強度が低下することがある。また、0.5mmより小さい場合、発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡性が低下することがある。
【0030】
ポリ乳酸系樹脂発泡体の形状としては、充填性向上等の観点から真球状〜略球状(卵状)が好ましい。
【0031】
(ポリ乳酸系樹脂)
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、乳酸系単量体を公知の方法に従って重合することによって得られ、下記化1で示され、D−乳酸およびL−乳酸を単量体として共重合させるか、D−乳酸またはL−乳酸のいずれか一方を単量体として重合させるか、あるいは、D−ラクチド、L−ラクチドおよびDL−ラクチドからなる群より選ばれた1または2以上のラクチドを開環重合させることによって得られるポリ乳酸系樹脂が、生分解性の観点から好ましい。
【0032】
【化1】

【0033】
また、ポリ乳酸系樹脂は、発泡成形工程や所望の物性等に影響を与えない限り、乳酸以外の乳酸系単量体として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸およびヒドロキシヘプタン酸のような脂肪族ヒドロキシカルボン酸等を任意に含んでいてもよい。
【0034】
ポリ乳酸系樹脂を製造する際に用いられる単量体としてL体とD体とを併用した場合、単量体中におけるD体あるいはL体の含有量の少ない方の単量体量は、5モル%未満が好ましく、4モル%未満がより好ましく、3モル%未満がさらに好ましい。これは、単量体中におけるD体あるいはL体の含有量の少ない方の単量体量が5モル%以上の場合、ポリ乳酸系樹脂の結晶性が低くなって、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体の耐熱性が低下することがある。ポリ乳酸系樹脂中のD体あるいはL体の含有量は液体クロマトグフィを用いた定性、定量分析により確認することができる。
【0035】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂は樹脂成分の粘弾性、耐熱性確保の観点から、好ましくは1000〜400000、より好ましくは10000〜350000の平均分子量を有する。なお、本発明において平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量を意味する。
【0036】
他方、ポリ乳酸系樹脂発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂には他の生分解性樹脂(脂肪族ポリ乳酸や脂肪族−芳香族ポリ乳酸他の樹脂等)、汎用樹脂(ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、AS系樹脂(アクリロニトリル−スチレン系樹脂)、ABS系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂))、アクリル系樹脂等が含有されていてもよい。また、ポリ乳酸系樹脂が樹脂成分全体100質量部に対して50質量部以上となるように調整することが好ましく、75質量部以上となるように調整することがより好ましく、100質量部となるように調整することがさらに好ましい。
【0037】
(カーボンブラック)
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は着色剤としてカーボンブラックを含む。具体的には、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛および炭素繊維のような公知のカーボンを挙げることができる。
【0038】
また、カーボンブラックをポリ乳酸系樹脂中に均一に分散させることができるため、カーボンブラック(本発明においては、原料カーボンとも称する)は粒子状であることが好ましく、原料カーボンの平均粒子径は、通常、5nm〜100nmが好適であり、さらに好ましくは、15nm〜35nmである。なお、原料カーボンの平均粒子径は電子顕微鏡による算術平均である。本発明に用いられるカーボンブラックを特徴付ける平均粒子径は、カーボンブラックの集合体を構成する小さな球状(微結晶による輪郭を有し、分離できない)成分を電子顕微鏡写真にて測定、算出した粒子の直径の平均のことである。
【0039】
さらに、本発明においてカーボンブラックは、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは0.003〜4質量部、より好ましくは0.005〜3質量部の割合で使用され、ポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体中に含まれる。カーボンブラックの配合量が0.001質量部未満であれば、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体が必要十分な色を呈することができないことがある。一方、カーボンブラックの配合量が5質量部を超えると、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡性が低下し、成形性および機械的強度が低下することがある。
【0040】
他方、カーボンブラックは、所望の物性を得ることができる限り、単独で使用してもよく、カーボンブラックと他の基材樹脂とを含むマスターバッチとして使用してもよい。本発明においては、より優れた外観を有するポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができるため、マスターバッチを使用することが好ましい。また、マスターバッチに含まれる樹脂成分としては、相溶性の観点から、ポリ乳酸系樹脂を使用することが好ましい。同様の観点から、カーボンブラックとポリ乳酸系樹脂とをポリ乳酸系樹脂発泡体の製造工程中で加熱混練することが好ましい。
【0041】
(帯電防止剤)
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを含む。具体的には、帯電防止性等の所望の物性を得ることができる限り、公知の前記の帯電防止剤を使用することができる。
【0042】
より具体的には、帯電防止剤として、第4級アンモニウム塩(例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等)、アルキルアミン(モノメチルアミン塩酸塩等)、アシル塩化コリン等のカチオン系界面活性剤;
エステル系(ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン等)、エーテル系(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体)等のノニオン系界面活性剤;
またはそれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0043】
帯電防止剤はポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、0.0001〜3質量部、より好ましくは0.0005〜2.5質量部の割合で使用され、ポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体中に含まれる。帯電防止剤の添加量が0.0001質量部未満であれば、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は十分な帯電防止効果を得ることができないことがある。一方、帯電防止剤の配合量が3質量部を超えると、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡性が低下し、成形性および機械的強度が低下することがある。
【0044】
(カチオン系帯電防止剤)
カチオン系帯電防止剤は前記のような帯電防止性を示すことができる。本発明においては、カチオン系帯電防止剤とは前記のようなアミノ基を有する化合物やその塩が意味される。その中でもOSO3基を有する第四級アンモニウム塩を使用することが好ましい。
【0045】
また、長期間に亘ってより優れた帯電防止性を保持することができるため、第四級アンモニウム塩は下記式(1):
[N(CH3225R]+25OSO3-・・・・・(1)
(式中、Rは炭素数5〜17の直鎖状または分岐状のアルキル基である)
で表されることがより好ましい。
【0046】
また、Rは所望の物性等に影響を与えない限り、アルケニル基、ビニル基、カルボキシ基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基およびニトロ基のようなその他の官能基を含んでいてもよい。さらに、同様に、Rは同一のアルキル基であってよく、異なったアルキル基の混合物であってもよい。
【0047】
また、帯電防止剤として第四級アンモニウム塩を用いる場合、第四級アンモニウム塩は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜3質量部、より好ましくは0.0001〜1質量部、さらにより好ましくは0.0005〜0.5質量部の割合で使用され、ポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体中に含まれる。第四級アンモニウム塩の添加量が0.0001質量部未満であれば、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は十分な帯電防止効果を得ることができないことがある。一方、第四級アンモニウム塩の配合量が3質量部を超えると、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡性が低下し、成形性および機械的強度が低下することがある。
【0048】
第四級アンモニウム塩は、水溶液とした後、ポリ乳酸系樹脂発泡体に直接添加する方法で使用することができる。ここで、水溶液には、アルコール等の水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。第四級アンモニウム塩の水溶液中での濃度は、0.1〜25質量%の範囲であることが好ましく、0.15〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0.2〜15質量%の範囲であることがさらに好ましい。この第四級アンモニウム塩は少量の使用において著しい帯電防止性を発揮するため、第四級アンモニウム塩の水溶液中での濃度が高いと、ポリ乳酸系樹脂発泡体に対して均一に添加すること困難となることがある。
【0049】
(ノニオン系帯電防止剤)
ノニオン系帯電防止剤は前記のような帯電防止性を示すことができる。本発明において、ノニオン系帯電防止剤とは、前記のようなエステル系、エーテル系等の化合物が意味される。その中でもポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0050】
本発明においては、ポリエチレングリコールは、所望の帯電防止効果を得ることができるため、好ましくは100〜2000、より好ましくは150〜1500の重量平均分子量を有する。他方、重量平均分子量はGPCを用いる分析により容易に確認することができる。
【0051】
また、所望の物性に影響を与えない限り、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール等のその他の単量体成分を含んでいてもよい。
【0052】
さらに、ノニオン系帯電防止剤の末端基についても、所望の物性に影響を与えない限りいずれの置換基を有していてもよく、ヒドロキシ基またはメチル基やエチル基等のアルキル基が好ましい。
【0053】
帯電防止剤としてポリエチレングリコールを用いる場合、ポリエチレングリコールはポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.0001〜3質量部、より好ましくは0.001〜3質量部、さらにより好ましくは0.005〜2.5質量部、特に好ましくは0.01〜2質量部の割合で使用され、ポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体中に含まれる。ポリエチレングリコールの添加量が0.0001質量部未満であれば、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体は十分な帯電防止効果を得ることができないことがある。一方、ポリエチレングリコールの配合量が3質量部を超えると、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の発泡性が低下し、成形性および機械的強度が低下することがある。
【0054】
本発明においては、所望の帯電防止性を得ることができる限り、カチオン系帯電防止剤とノニオン系界面活性剤とを組み合わせて使用してもよい。
【0055】
(その他の成分)
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、所望の物性や製造工程等に影響を与えない限り、ポリスチレン系樹脂およびポリオレフィン系樹脂のようなその他の樹脂成分を含んでいてもよい。また、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、同様に、気泡調整剤、顔料、着色剤、難燃剤、難燃助剤、油剤、粉体、フッ素化合物、樹脂、加水分解抑制剤、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、紫外線防御剤(有機系、無機系を含む。UV−A、Bのいずれに対応していても構わない)、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤および昆虫忌避剤のようなその他の成分を含むこともできる。
【0056】
(ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法)
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂発泡体は公知の製造方法によって得ることができる。ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法としては、例えば、
(1)公知の要領で製造されたポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性ポリ乳酸系樹脂粒子を製造し、このポリ乳酸系樹脂粒子を加熱、発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡体を製造する製造方法;
(2)ポリ乳酸系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練して押出機から押出発泡して得られたポリ乳酸系樹脂押出発泡体をその後にあるいは押出発泡直後に粒子状に切断加工してポリ乳酸系樹脂発泡体を製造する製造方法
等を挙げることができる。ポリ乳酸系樹脂発泡体の結晶化度を制御し易いことから、前記(2)のポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法が好ましい。
【0057】
また、上記方法で得られたポリ乳酸系樹脂発泡体にさらに不活性ガスを含浸させて、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させてもよい。このようにポリ乳酸系樹脂発泡体の発泡力を向上させることにより、発泡成形時にポリ乳酸系樹脂発泡体同士の融着性が向上し、得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体はさらに優れた機械的強度を有する。なお、上記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
【0058】
さらに、ポリ乳酸系樹脂発泡体を金型内に充填する前に加熱して二次発泡させて、より高発泡の二次発泡粒子とした上で金型内に充填して加熱、発泡させてもよい。このような二次発泡体を用いることによって、高発泡倍率のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。なお、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子を加熱する加熱媒体としては、乾燥した空気が好ましい。
【0059】
カーボンブラックは所望の物性を得ることができる限り、樹脂成分および発泡剤のような原材料と共に加えられてもよく、独立して加えられてもよい。また、帯電防止剤も、同様に、ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造工程中で添加してもよく、ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造後、噴霧、噴射等によって被覆してもよい。本発明においては、帯電防止剤をより均一かつ十分にポリ乳酸系樹脂発泡成形体に添加することができるため、ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造後、ポリ乳酸系樹脂発泡体を帯電防止剤で被覆することが好ましい。
【0060】
帯電防止剤でのポリ乳酸系樹脂発泡体の被覆方法としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂発泡体を帯電防止剤の水溶液中で攪拌する方法、ポリ乳酸系樹脂発泡体に帯電防止剤の水溶液を噴射する方法等が挙げられる。前者の方法は、攪拌のついた攪拌混合装置(例えば、タンブラー)でポリ乳酸系樹脂発泡体と帯電防止剤との水溶液を攪拌、混合することにより行うことができる。この後、ポリ乳酸系樹脂発泡体は通常乾燥処理に付される。
【0061】
後者の方法は、例えば、ポリ乳酸系樹脂発泡体を輸送する配管内に、帯電防止剤の水溶液の噴射ノズルを取り付け、空気等の気体により輸送されるポリ乳酸系樹脂発泡体に対し、帯電防止剤の水溶液を噴射することにより行うことができる。帯電防止剤の水溶液の噴射量とポリ乳酸系樹脂発泡体の流量は、ポリ乳酸系樹脂発泡体を輸送する気体により、輸送が終わった時点で実用上問題がない程度まで乾燥し得る範囲の量であれば、別途乾燥工程を設ける必要がないため好ましい。
【0062】
また、発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられ、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などの物理発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0063】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の製造方法)
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体はポリ乳酸系樹脂発泡体を公知の型内発泡成形法等を使用することによって製造することができる。一例を挙げて説明すると、ポリ乳酸系樹脂発泡体を金型のキャビティ内に充填して加熱し、ポリ乳酸系樹脂発泡体を発泡させることによって、ポリ乳酸系樹脂発泡体を発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡体同士をそれらの発泡圧によって互いに融着一体化させると共にポリ乳酸系樹脂の結晶化度を上昇させて、融着性および耐熱性に優れた所望の形状を有するポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0064】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体)
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、ポリ乳酸系樹脂100質量部、カーボンブラック0.001〜5質量部およびカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを0.0001〜3質量部含むため、好ましくは1×1013Ω/□以下、より好ましくは5×1012Ω/□、さらに好ましくは1×1012Ω/□の表面抵抗率を有する。このことは、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は優れた帯電防止性を有していることを示している。また、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面固有抵抗率は1×1013Ω/□より高いと成形品表面に埃が着く等して外観を損ねるため、該ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面抵抗率は前記値であることが好ましい。
【0065】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、強度測定において、プッシュプルゲージによる強度測定において圧縮強度が好ましくは0.5kgf以上、より好ましくは0.75kgf以上、さらに好ましくは1.0kgf以上を示すこともできる。このことは、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は強度に優れていること、即ち、剛性に優れていることを示している。
【0066】
さらに、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体はその表面が均一な色である。このことは、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体はその表面が極めて美麗であり、優れた外観を有していることを示している。さらに以下の外観評価においても好適な結果を示すことができる。
【0067】
他方、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の密度は、0.02〜0.6g/cm3が好ましく、0.03〜0.5g/cm3がより好ましい。この場合、本発明によれば、成形性、断熱性等に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。
【0068】
従って、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体である。このため、ヘルメット用衝撃緩衝材のような薄物でありながらも人の頭部を守るために必要な物性を維持できるため、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体はヘルメット用衝撃緩衝材として使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(ポリ乳酸系樹脂のD体またはL体の乳酸含有量)
ポリ乳酸系樹脂中におけるD体またはL体の乳酸含有量は以下の方法によって測定することができる。ポリ乳酸系樹脂を凍結粉砕し、ポリ乳酸系樹脂の粉末200mgを三角フラスコ内に供給した後、三角フラスコ内に1Nの水酸化ナトリウム水溶液30mLを加える。そして、三角フラスコを振りながら65℃に加熱してポリ乳酸系樹脂を完全に溶解させる。しかる後に、1N塩酸を三角フラスコ内に供給して中和し、pHが4〜7の分解溶液を作製し、メスフラスコを用いて所定の体積とする。次に、分解溶液を0.45μmのメンブレンフィルタで濾過した後、液体クロマトグラフィを用いて分析し、得られるチャートに基づいてD体およびL体由来のピーク面積から面積比を存在比としてD体量およびL体量を算出する。そして、前記と同様の要領を5回繰り返して行い、得られるD体量およびL体量をそれぞれ相加平均して、ポリ乳酸系樹脂のD体量およびL体量とする。
【0070】
液体クロマトグラフィの測定条件
HPLC装置(液体クロマトグラフィ):日本分光社製 製品名PU−2085 Plus型システム
カラム:住友分析センター社製 製品名SUMICHIRAL OA5000(4.6mmφ×250mm)
カラム温度:25℃
移動相:2mM CuSO4水溶液と2−プロパノールとの混合液(CuSO4水溶液:2−プロパノール(体積比)=95:5)
移動相流量:1.0mL/分
検出器:UV 254nm
注入量:20μL
【0071】
(ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量)
各実施例および比較例において発泡剤を用いないこと以外は同様の要領にてポリ乳酸系樹脂粒子を作製し、得られるポリ乳酸系樹脂粒子約30mgをクロロホルム10mLに溶解し、非水系0.45μmクロマトディスクでろ過後、HPLC装置(液体クロマトグラフ)(Water社製 製品名「Detector484、Pump510」)を用いてポリスチレン換算重量平均分子量を測定する。
【0072】
なお、測定条件としては、
カラム:昭和電工社製 製品名「Shodex GPC K−806L」(φ8.0mm×300mm)2本
カラム温度:40℃
移動相:クロロホルム
移動相流量:1.2mL/分
注入・ポンプ温度:室温
検出:UV254nm
注入量:50mL
検量線用標準ポリスチレン:
昭和電工社製 製品名「Shodex」重量平均分子量1,030,000
東ソー社製 重量平均分子量5,480,000、3,840,000、355,000、102,000、37,900、9,100、2,630、495
【0073】
(ポリ乳酸系樹脂発泡体の体積抵抗率)
図2は体積固有抵抗測定に用いた容器を示す模式図である。(a)は容器を上から見た図であり、(b)は容器の側面図である。図2中、符号20は内径50mm×高さ15mmのポリスチレン製の容器、21aは銅板、21bはクッション材および銅板、22は21aと21bとをつなぐ銅製の接続部、23はテフロン(登録商標)テープである。図2に示す測定容器は、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計R8340およびレジスティビティ・チェンバR12702A)の表面電極の内円の外径と一致する。21a上に任意のポリ乳酸系樹脂発泡体を入れ、表面電極を陽気にはめ込み、測定を行う。符号20のポリスチレン製の容器の内側側面に符号23のテフロンテープを貼ってあるのは側面に電流を通すことを防止するためである。また、符号21bでポリスチレンの容器と銅版の間にクッション材を複合させているのはポリ乳酸系樹脂発泡体と表面電極との接触面積を大きくするためである。
【0074】
これらの装置を用い、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定した。即ち、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計R8340およびレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料サンプルに、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500V1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出する。試料サンプルは、前記容器に20mLのポリ乳酸系樹脂発泡体を入れる。この時、次式に使用する試料厚みは20mLに計量したポリ乳酸系樹脂発泡体の質量をあらかじめ計測しておき、容器の体積より高さを換算する。この測定をそれぞれのサンプルでn=3で行い、得られた測定値の平均値を用いる。
【0075】
ρv=πd2/4t×Rv
ρv:体積抵抗率(Ωcm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
Rs:表面抵抗(Ω)
t:試料の厚み(cm)
【0076】
本発明においては、
(1)体積抵抗率が1×1011Ωcm以下の場合:合格(○)
(2)体積抵抗率が1×1011Ωcmより高い場合:不合格(×)
と判定する。
【0077】
(ポリ乳酸系樹脂発泡体の帯電防止性評価)
帯電防止剤で表面を被覆されたポリ乳酸系樹脂発泡体をポリプロピレン製のタフクロス袋(内容積120L)に袋詰した際にタフクロス袋に付着した発泡粒の数で評価する。
【0078】
本発明においては、
(1)タフクロス袋に付着した発泡体の数が0〜50個の場合:合格(○)
(2)タフクロス袋に付着した発泡体の数が50個より多い場合:不合格(×)
と判定する。
【0079】
(ポリ乳酸系樹脂発泡体の嵩密度)
ポリ乳酸系樹脂発泡体の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されるものをいう。即ち、JIS K6911に示される見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて試料の嵩密度を測定する。
試料の嵩密度(g/cm3
=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)−メスシリンダーの質量(g)〕
/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
【0080】
(ポリ乳酸系樹脂発泡体の平均粒子径)
ポリ乳酸系樹脂発泡体の平均粒子径は、各ポリ乳酸系樹脂発泡体の最も長い直径(長径)および最も短い直径(短径)を、ノギスを用いて測定し、ポリ乳酸系樹脂発泡体の長径、短径および長さの相加平均値をポリ乳酸系樹脂発泡体の平均粒子径とする(試料数50の平均値)。
【0081】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の表面抵抗率)
JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定した。即ち、試験装置((株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計R8340およびレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試料サンプルに、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500V1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出する。試料サンプルは、縦100mm×横300mm×高さ10mmの直方体形状のサンプルより縦100mm×横100mm×高さ10mmを切り出し、それぞれについて測定を行い、得られた測定値の平均値を用いる。
【0082】
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ρs:表面抵抗率(Ω/□)
D:表面の環状電極の内径(cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
Rs:表面抵抗(Ω)
【0083】
本発明においては、
(1)表面抵抗率が1×1013Ω/□以下の場合:合格(○)
(2)表面抵抗率が1×1013Ω/□より高い場合:不合格(×)
と判定する。
【0084】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の強度測定(剛性評価))
縦100mm×横300mm×高さ10mmの直方体形状のサンプルを縦100mm×横150mm分測定台座からはみ出させ、台座接触部を固定する。はみ出た部分の端より横方向10mm内側部分で縦全長の半分である50mm部分との交差点に印をし、この部分をプッシュプルゲージ(今田製作所社製、製品名「PSS」)にて押し、サンプル破壊時の圧縮強度を測定する。
【0085】
本発明においては、
(1)強度が0.5kgf以上の場合:合格(○)
(2)強度が0.5kgfより低い場合:不合格(×)
と判定する。
【0086】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の密度)
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の密度は、ポリ乳酸系樹脂発泡成形体から直方体を切り出し、ノギスを用いて縦、横、高さを測定して体積を算出し、そのサンプルの重量を体積で除して算出する。
【0087】
(ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観評価)
ポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観評価は、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の外観を目視観察して以下の基準に基づいて評価した。発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が1mm以下である、好ましくは発泡体同士の距離が0.5mm以下であり、さらに好ましくは発泡体同士の距離がほぼ無く発泡体同士が密着している発泡成形品が良い。
【0088】
本発明においては、
(1)発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が1mm以下である場合:合格(○)
(2)発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が1mmより広い場合:不合格(×)
【0089】
(実施例1)
ポリ乳酸系樹脂発泡体を製造した。先ず、結晶性のポリ乳酸系樹脂(ユニチカ社製、製品名「TERRAMAC HV−6250H」(融点(mp):169.1℃、D体比率:1.2モル%、L体比率:98.8モル%、重量平均分子量:2.5×104)、100質量部および気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(旭硝子社製、製品名「フルオンL169J」)0.1質量部、マスターバッチ化したカーボンブラック0.01質量部(40%マスターバッチ、基材:ポリ乳酸樹脂、カーボンブラック量:0.004質量部)を口径が65mmの単軸押出機に供給して溶融混練し、上記押出機の前端に取り付けたノズル金型からポリ乳酸系樹脂押出物を押出し、このポリ乳酸系樹脂押出物を発泡させながら、上記ノズル金型の前端面に接触しながら2000〜10000rpmの回転数で回転する回転刃によって切断し、発泡粒子を製造した。なお、単軸押出機内において、ポリ乳酸系樹脂を始めは190℃にて溶融混練した後に220℃まで昇温させながら溶融混練した。
【0090】
続いて、単軸押出機の途中から、イソブタン35質量%およびノルマルブタン65質量%からなるブタンをポリ乳酸系樹脂100質量部に対して1.0質量部となるように溶融状態のポリ乳酸系樹脂に圧入して、ポリ乳酸系樹脂中に均一に分散させた。
【0091】
しかる後、押出機の先端部において、溶融状態のポリ乳酸系樹脂を200℃に冷却した後、単軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型の各ノズルから剪断速度7639秒-1でポリ乳酸系樹脂を押出発泡させた。なお、マルチノズル金型の温度は200℃に維持されていた。
【0092】
なお、マルチノズル金型は、直径が1.0mmのノズルを20個有しており、直径が139.5mmの仮想円上に等間隔毎に配設されていた。
【0093】
そして、回転軸の後端部外周面には、四枚の回転刃が回転軸の周方向に等間隔毎に一体的に設けられており、各回転刃はマルチノズル金型の前端面に常時、接触した状態で仮想円上を移動するように構成されていた。
【0094】
金型の周囲に内径が315mmの円筒状の冷却ドラムを備えており、その内部を冷却水が螺旋状に流れている。
【0095】
そして、マルチノズル金型の前端面に配設した回転刃を4800rpmの回転数で回転させてあり、マルチノズル金型の各ノズルから押出発泡されたポリ乳酸系樹脂押出物を回転刃によって切断して略球状のポリ乳酸系樹脂発泡体を製造した。
【0096】
このポリ乳酸系樹脂発泡体は、回転刃による切断応力によって外方あるいは前方に向かって飛ばされ、冷却ドラムの内面に沿って流れている冷却水に衝突して直ちに冷却された。
【0097】
冷却されたポリ乳酸系樹脂発泡体は、冷却ドラムの排出口を通じて冷却水と共に排出された後、脱水機にて冷却水と分離された。得られたポリ乳酸系樹脂発泡体は、その平均粒子径が2.2〜2.6mmであり、嵩密度が0.21g/cm3であった。
【0098】
得られたポリ乳酸系樹脂発泡体を撮影した写真を図1に示した。ポリ乳酸系樹脂発泡体の表面は、表皮層で全面的に被覆されていた。表皮層には気泡断面は存在していなかった。
【0099】
次に、10Lの内容積を有する密閉容器内に上記のポリ乳酸系樹脂発泡体を4000L該容器中へ投入した。二酸化炭素(CO2)を圧力調整弁を介して密閉容器内に圧入し二酸化炭素を1.0MPaの圧力にて圧入して20℃にて24時間に亘って放置して密閉容器内の圧力を大気圧とした後、二酸化炭素が含浸したポリ乳酸系樹脂発泡体を取出した。なお、密閉容器内は20℃に保って含浸を行った。
【0100】
この二酸化炭素が含浸したポリ乳酸系樹脂発泡体を、温風発生装置に投入し、熱風温度60℃で3分間加熱し、ポリ乳酸系樹脂発泡体を二次発泡させた。
【0101】
得られたポリ乳酸系樹脂発泡体は、その平均粒子径が4.0〜4.5mmであり、嵩密度が0.05g/cm3であった。
【0102】
次にブレンド用タンブラーに前記ポリ乳酸系樹脂発泡体に、濃度調整された第四級アンモニウム塩(帯電防止剤)の水溶液(第一工業製薬社製カチオーゲンESL;一般式(1)中、Rが(CH211CH3のアルキル基の塩を含む;濃度1質量%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.05質量部入れ、10分間ブレンドした。これにより表面の少なくとも一部が第四級アンモニウム塩で被覆されたポリ乳酸系樹脂発泡体を得た。表面に第四級アンモニウム塩の付着した該ポリ乳酸系樹脂発泡体を、タンブラーからからポリプロピレン製のタフクロス袋(内容積120リットル)に袋詰したが、タンブラーの内面およびタフクロス袋の側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は全く付着しなかった。
【0103】
次に、前記ポリ乳酸系樹脂発泡体を密閉容器内に入れ、この密閉容器内に二酸化炭素を0.6MPaの圧力にて圧入して20℃にて24時間に亘って放置してポリ乳酸系樹脂発泡体に二酸化炭素を含浸させた。
【0104】
続いて、ポリ乳酸系樹脂発泡体をアルミニウム製の金型のキャビティ内に充填した。なお、金型のキャビティの内寸は、縦100mm×横300mm×高さ10mmの直方体形状であった。また、金型に、この金型のキャビティ内と金型外部とを連通させるために、直径が8mmの円形状の供給口を20mm間隔毎に合計100個、形成した。なお、各供給口には、開口幅が1mmの格子部を設けてあり、金型内に充填したポリ乳酸系樹脂発泡体がこの供給口を通じて金型外に流出しないように形成されている一方、金型の供給口を通じて金型外からキャビティ内に水を円滑に供給することができるように構成されていた。
【0105】
そして、加熱水槽内に95℃に維持された水を溜め、この加熱水槽内の水中にポリ乳酸系樹脂発泡体を充填した金型を完全に1分間に亘って浸漬して、金型の供給口を通じて金型のキャビティ内のポリ乳酸系樹脂発泡体に水を供給し、ポリ乳酸系樹脂発泡体を加熱、発泡させてポリ乳酸系樹脂発泡体同士を熱融着一体化させた。
【0106】
次に、加熱水槽内から金型を取り出した。そして、別の冷却水槽に20℃に維持された水を溜め、この冷却水槽内に金型を完全に5分間に亘って浸漬して、金型内のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を冷却した。
【0107】
金型を冷却水槽から取り出して金型を開放して直方体形状のポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得た。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、非常に優れた外観を有していた。その密度は0.05g/cm3であった。
【0108】
(実施例2)
濃度調整された第四級アンモニウム塩(帯電防止剤)の水溶液(第一工業製薬社製カチオーゲンESL;一般式(1)中、Rが(CH211CH3のアルキル基の塩を含む;濃度1質量%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.5質量部とした以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0109】
(実施例3)
濃度調整された第四級アンモニウム塩(帯電防止剤)の水溶液(第一工業製薬社製カチオーゲンESL;一般式(1)中、Rが(CH211CH3のアルキル基の塩を含む;濃度1質量%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して1質量部とした以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0110】
(実施例4)
濃度調整された第四級アンモニウム塩(帯電防止剤)の水溶液(第一工業製薬社製カチオーゲンESL;一般式(1)中、Rが(CH211CH3のアルキル基の塩を含む;濃度1質量%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して5質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0111】
(実施例5)
濃度調整された第四級アンモニウム塩(帯電防止剤)の水溶液(第一工業製薬社製カチオーゲンESL;一般式(1)中、Rが(CH211CH3のアルキル基の塩を含む;濃度10質量%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して1質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0112】
(実施例6)
濃度調整された第四級アンモニウム塩(帯電防止剤)の水溶液(第一工業製薬社製カチオーゲンESL;一般式(1)中、Rが(CH211CH3のアルキル基の塩を含む;濃度10質量%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して5質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0113】
(実施例7)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部(40%マスターバッチ、基材:ポリ乳酸樹脂、カーボンブラック量:3質量部)添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0114】
(実施例8)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例2と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0115】
(実施例9)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例3と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0116】
(実施例10)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例4と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0117】
(実施例11)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例5と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0118】
(実施例12)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例6と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0119】
(実施例13)
帯電防止剤としてポリエチレングリコール(日本油脂社製PEG♯300、平均分子量:300)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.01質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0120】
(実施例14)
ポリエチレングリコールの添加量を0.05質量部とした以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0121】
(実施例15)
ポリエチレングリコールの添加量を1質量部とした以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0122】
(実施例16)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例13と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0123】
(実施例17)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例14と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0124】
(実施例18)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は実施例15と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.05g/cm3であった。
【0125】
(比較例1)
帯電防止剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際に、タンブラーの内面およびタフクロス袋の側面にポリ乳酸系樹脂発泡体の多くが付着した。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が0.5mmであった。
【0126】
(比較例2)
濃度調整された第四級アンモニウム塩(帯電防止剤)の水溶液(第一工業製薬社製カチオーゲンESL;一般式(1)中、Rが(CH211CH3のアルキル基の塩を含む;濃度10質量%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して50質量部添加したこと以外は実施例7と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかったが、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の強度は0.3kgfとなった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が1mmより広かった。
【0127】
(比較例3)
ポリエチレングリコールの添加量を5質量部とした以外は実施例7と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体は付着しなかったが、得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体の強度は0.2kgfとなった。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が1mmより広かった。
【0128】
(比較例4)
帯電防止剤として濃度調整されたアニオン系帯電防止剤水溶液(日本油脂社製パーソフトEK:濃度30%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.03質量部添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体が付着した。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が0.3mmであった。
【0129】
(比較例5)
マスターバッチ化したカーボンブラックを7.5質量部添加したこと以外は比較例4と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体が付着した。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が0.5mmであった。
【0130】
(比較例6)
帯電防止剤として濃度調整されたアニオン系帯電防止剤水溶液(日本油脂社製パーソフトEK:濃度30%)をポリ乳酸系樹脂100質量部に対して1質量部添加したこと以外は比較例5と同様にしてポリ乳酸系樹脂発泡体およびポリ乳酸系樹脂発泡成形体を製造した。ポリ乳酸系樹脂発泡体製造の際にタンブラーの内面およびタフクロスの側面にポリ乳酸系樹脂発泡体が付着した。得られたポリ乳酸系樹脂発泡成形体は発泡成形体表面に存在する発泡体同士の距離が0.5mmであった。
【0131】
表1に実施例および比較例の原材料種、評価結果等を示す。
【0132】
【表1】

【0133】
表1中、「>1」は1より高い数値を意味する。また、カーボンブラックおよび帯電防止剤の最終添加量は基材樹脂として使用したポリ乳酸系樹脂100質量部に対する量である。
【0134】
表1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡体の評価結果から、実施例で得られたものはカチオン系帯電防止剤及びノニオン系帯電防止剤を使用しなかったものと比べて帯電防止性に優れていることが分かる。
【0135】
また、比較例2および3のような所定量以上のカチオン系帯電防止剤またはノニオン系帯電防止剤を使用した場合と比べて、本発明によれば、強度に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることができる。また、比較例2および3の場合、実施例で得られたような外観の美麗なポリ乳酸系樹脂発泡成形体を得ることはできなかった。
【0136】
よって、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、従来のものと比べて、帯電防止性、剛性および外観に優れたポリ乳酸系樹脂発泡成形体である。
【0137】
このため、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡成形体は、ヘルメット用衝撃緩衝材として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0138】
(a) 体積固有抵抗測定装置 上部
(b) 体積固有抵抗測定装置 側面
20 プラスチック製の容器
21a 銅板
21b クッション材および銅板
22 接続部
23 テフロンテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分としてのポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、カーボンブラック0.001〜5質量部と、帯電防止剤としてカチオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤またはそれらの組み合わせを0.0001〜3質量部含み、1×1011Ωcm以下の体積抵抗率を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項2】
前記ポリ乳酸系樹脂発泡体が、樹脂成分としてのポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、帯電防止剤として第四級アンモニウム塩を0.0001〜1質量部、または、ポリエチレングリコールを0.001〜3質量部含む請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記第四級アンモニウム塩が、下記式(1):
[N(CH3225R]+25OSO3-・・・・・(1)
(式中、Rは炭素数5〜17の直鎖状または分岐状のアルキル基である)
で表される請求項2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記ポリ乳酸系樹脂が、構成単量体成分としてD体およびL体の双方の光学異性体を含有しかつD体またはL体のうちの少ない方の光学異性体の含有量が5モル%未満であるか、あるいは、構成単量体成分としてD体またはL体のうちのいずれか一方の光学異性体のみを含有するポリ乳酸系樹脂である請求項1〜3に記載のポリ乳酸系樹脂発泡体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリ乳酸系樹脂発泡体から得られるポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
【請求項6】
前記ポリ乳酸系樹脂発泡成形体が、1×1013Ω/□以下の表面抵抗率を有する請求項5に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体。
【請求項7】
請求項5または6に記載のポリ乳酸系樹脂発泡成形体からなるヘルメット用衝撃緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76043(P2013−76043A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218396(P2011−218396)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】