説明

ポリ乳酸系発泡成形体の製造方法

【課題】 高温高湿条件下での寸法安定性に優れた揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の簡便な製造方法およびそれに係る成形体を提供すること。
【解決手段】 炭化水素系発泡剤を含有するポリ乳酸系発泡成形体に対し、二酸化炭素処理を行うことで、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を製造すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源を原料とする発泡ポリスチレン、発泡ポリオレフィンの代替として、特許文献1において、ポリ乳酸を主たる原料とする発泡成形体が提案されている。この発泡成形体は、非石油資源である澱粉を出発原料としており、近年の石油事情、環境保全の見地から見て非常に望ましいものであると言える。当該発泡成形体は、発泡ポリスチレンと同等の機械物性、2次加工性を有しており、通常の梱包用緩衝材として十分使用できるものであった。しかしながら、特許文献1の発泡成形体は、発泡剤などの揮発分が多量に残留しており、そのため高温高湿条件下では著しく体積変化し、海外輸出等の過酷な条件下では使用できないという欠点があった。
【0003】
ポリ乳酸系発泡成形体に耐熱性を付与する技術について、特許文献2では、炭素数3−5の炭化水素系発泡剤の含有量が0.5mol/kg(対樹脂)未満であるポリ乳酸系発泡成形体を作製することで、高温高湿条件下(60℃×80%RH)の体積膨張率を20%以下にすることができる技術が開示されている。具体的には、(1)低い発泡倍率になるが、最初の発泡剤の含有量を低減させる方法、(2)予備発泡を複数回繰り返し行うことにより段階的に残留発泡剤を低減させる方法、(3)発泡体にアルコール等の膨潤剤を塗布又は浸漬し乾燥する方法等により、成形体中の発泡剤含有量を0.5mol/kg(対樹脂)未満としており、何れも時間のかかる工程が増えて生産性が低下するし、実施例における具体的な開示では、成形体中の発泡剤含有量の下限値は0.21mol/kg(対樹脂)であった。
【0004】
以上のように、ポリ乳酸系発泡成形体に耐熱性を付与する技術はいくつかあるが、より簡便な方法が望まれている。
【特許文献1】国際公開第99/21915号パンフレット
【特許文献2】特開2005−105097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温高湿条件下での寸法安定性に優れた揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の簡便な製造方法およびそれに係る成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、炭化水素系発泡剤を含有するポリ乳酸系発泡成形体に対し、特定の条件で二酸化炭素処理を行うことで、ポリ乳酸系発泡成形体の炭化水素系発泡剤の含有量が減少し、高温高湿条件(60℃×80%RH)下での体積変化率が著しく改善された揮発分含有量が低減された発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、炭化水素系発泡剤を含有するポリ乳酸系発泡成形体に対し、二酸化炭素処理を行うことを特徴とする揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法に関する。好ましい実施態様は、二酸化炭素処理が、ポリ乳酸系発泡成形体を0.1MPa以上、2.0MPa未満の圧力の二酸化炭素雰囲気下に曝すことを特徴とする上記記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法に関する。より好ましくは、二酸化炭素処理が、ポリ乳酸系発泡成形体を0.5分間以上、10分間未満の時間で二酸化炭素雰囲気下に曝すことを特徴とする上記記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法、更に好ましくは、炭化水素系発泡剤が炭素数3−6の脂肪族炭化水素である上記記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法、特に好ましくは、ポリ乳酸系発泡成形体が、ポリ乳酸系樹脂を主成分としており、該ポリ乳酸系樹脂をゲル化処理したものである上記記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、高温高湿条件下での寸法安定性に優れる揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の簡便な製造方法およびそれに係る成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法は、炭化水素系発泡剤を用いて作製されたポリ乳酸系発泡成形体に、特定の条件で二酸化炭素処理を行うことを特徴とする。該ポリ乳酸系発泡成形体は、基材樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、基材樹脂中には本発明の効果を阻害しない範囲においては、ポリ乳酸系樹脂に他の樹脂を含有しても良く、さらには着色顔料又は染料、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、末端封鎖剤などの添加剤を添加しても良い。
【0010】
本発明におけるポリ乳酸系発泡成形体とは、基材樹脂がポリ乳酸系樹脂の発泡成形体である。該ポリ乳酸系樹脂は、特に限定はないが、結晶性の高い樹脂は発泡、成形が結晶化により困難になる場合があるため、乳酸成分の異性体比率が好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上であるポリ乳酸を主成分としたものである。本発明の効果を阻害しない範囲においては、ポリ乳酸系樹脂に他の樹脂を添加して基材樹脂とする事ができる。基材樹脂全体中にはポリ乳酸系樹脂が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。前記他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種用いることができる。該生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族ポリエステル成分単位を少なくとも35モル%以上含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が挙げられ、この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族カルボン酸との重縮合物が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種用いることができる。
【0011】
また前記ポリ乳酸系樹脂は、一部モノマーが乳酸と交換可能な脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族多価アルコール等で置き換わった共重合体でもよく、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁で一部架橋されていてもよい。
【0012】
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。また、前記脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。また、前記脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0013】
前記ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度は、JIS K 7210(荷重2.16kg)に準拠したメルトインデックス(MI)値で0.1〜10g/10分の高分子量のポリ乳酸系樹脂であることが好ましい。MI値がこの範囲にあれば、生産性に優れ、発泡倍率の高い発泡成形体を得やすい傾向にあり、本発明の目的・効果を有効に得ることができる。
【0014】
本発明においては、ポリ乳酸系発泡成形体の基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂をゲル化処理することが、発泡性、成形性の観点から好ましい。ゲル化処理によりポリ乳酸系樹脂を発泡に適する粘度領域まで増粘させることができる。このためのゲル化処理には、従来公知の各種の方法、例えば、ポリイソシアネート化合物、過酸化物、酸無水物、エポキシ化合物等、一般的な架橋剤を少なくとも1種選択して用いる方法、電子線架橋方法、シラン架橋方法等が包含されるが、上記の中でも架橋剤を用いる方法が好ましい。
【0015】
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族、脂肪族系のポリイソシアネート化合物が使用可能であり、芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロン、水酸化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられ、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0016】
前記過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等の有機化酸化物が挙げられる。
【0017】
前記酸無水物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0018】
前記エポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン−ブチルアクリレート共重合体、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等の各種グリシジルエーテル及び各種グリシジルエステル等が挙げられる。
【0019】
前記架橋剤のうち、ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。その理由は、ポリイソシアネート化合物を用いれば、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱することで尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合などによる後増粘が可能になるからである。ポリイソシアネート化合物の中でも、汎用性、取り扱い性、耐候性等の観点からトリレン、ジフェニルメタン骨格とするポリイソシアネート化合物、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートを使用することが好ましい。架橋剤の添加量は、任意に選定することが可能であるが、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1重量部〜6.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2重量部〜5.0重量部、更に好ましくは0.5重量部〜4.0重量部である。添加量が0.1重量部〜6.0重量部の場合、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を発泡に適した領域まで上昇させることができる。
【0020】
本発明の発泡剤としては、特に限定はなく従来公知のものが使用でき、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソヘキサン、ノルマルヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン等の炭化水素系発泡剤や、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素系発泡剤、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル系発泡剤、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機系発泡剤が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。それらの内、ポリ乳酸系樹脂に対するガス散逸が少なく、発泡性粒子輸送が可能であり、所望の発泡性が得られる点から、炭素数3−6の炭化水素系発泡剤が好ましい。
【0021】
前記基材樹脂中には、例えば、黒、灰色、茶色、青色、緑色等の着色顔料又は染料を添加してもよい。着色した基材樹脂を用いれば着色された発泡粒子及び発泡成形体を得ることができる。着色剤としては、有機系、無機系の顔料、染料などが挙げられる。このような顔料及び染料としては、従来公知の各種のものを用いることができる。また、気泡調整剤として、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ほう酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の無機物を予め添加することができる。基材樹脂に着色顔料、染料又は無機物等の添加剤を添加する場合は、添加剤をそのまま基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂に練り込むこともできるが、通常は分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作り、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。ここでマスターバッチとは、所望の添加剤をポリ乳酸系樹脂と混合して作製したものである。着色顔料又は染料の添加量は着色の色によっても異なるが、通常、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.001重量部〜5重量部が好ましく、0.02重量部〜3重量部がより好ましい。前記ポリ乳酸系樹脂中には、本発明の効果を損なわない程度であれば、その他、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、末端封鎖剤などの添加剤を添加しても良い。
【0022】
本発明の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法では、特に限定はないが、例えば以下のように、まずポリ乳酸系発泡性粒子を作製し、次いで該発泡性粒子を発泡させポリ乳酸系発泡粒子を得た後、型内成形してポリ乳酸系発泡成形体を得る。その後、該発泡成形体に二酸化炭素処理を行い、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得る。
【0023】
<ポリ乳酸系発泡成形体製造工程>
本発明で用いるポリ乳酸系発泡成形体を製造する方法としては、従来公知の方法が採用できる(例えば、国際公開第99/021915号パンフレット)。
【0024】
(ポリ乳酸系樹脂粒子作製)
本発明において、ポリ乳酸系発泡成形体を好ましく製造するには、まずポリ乳酸系樹脂粒子を作製する。このポリ乳酸系樹脂粒子は従来公知の方法で作ることができ、例えば、ポリ乳酸系樹脂と架橋剤、必要に応じてその他添加剤を押出機で溶融混練した後、水中カッターやストランドカッター等で押出カットすることで得ることができる。ポリ乳酸系樹脂粒子の1個当りの重量は、0.05〜10mgが好ましく、より好ましくは0.1〜4mgである。粒子重量が前記範囲であれば、樹脂粒子の生産性が良好であり、型内成形時の充填性が良好になる傾向である。
【0025】
(ポリ乳酸系樹脂粒子への発泡剤含浸)
次に前記ポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、ポリ乳酸系発泡性粒子を得る。ポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸する方法としては、所望の発泡性が得られる発泡剤の存在下で、十分な圧力がかかる条件さえそろっていれば特に限定されるものではない。例えば、密閉容器内に水性媒体または非水性媒体を入れて、これに樹脂粒子と発泡剤を添加して、適度な温度、時間で攪拌することにより樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが可能である。水性媒体で含浸を行う場合には、加水分解反応を受けやすいポリエステル系樹脂組成物であることを考慮し、加水分解を抑制する工夫や短時間で含浸を終了させることが好ましい。
【0026】
発泡剤の含浸量としては、発泡剤の種類や所望の発泡倍率により調整すれば良いが、例えば、発泡倍率30倍以上の発泡粒子を得るためには、発泡性粒子を構成する基材樹脂100重量部に対して、4重量部以上が好ましい。
【0027】
なお、発泡剤の含浸では、安定した含浸性、発泡性を得るために含浸助剤、分散剤などを使用しても良い。含浸助剤としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類に代表されるプロトン系溶剤,アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類,酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルプロピルアセテートなどのエステル類,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、などに代表される非プロトン系溶剤、などが挙げられるが、水性媒体で含浸する場合はポリ乳酸系樹脂の加水分解を助長しない、非プロトン系溶剤を用いることが好ましい。
【0028】
前記分散剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
また、水性媒体で含浸する場合は、樹脂中への水の浸透を抑制する目的で、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウムなどの1価の金属塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの2価の金属塩、硫酸アルミニウムなどの3価の金属塩、などの水溶性塩類などを添加することが好ましい。前記樹脂中への水の浸透を抑制する目的で添加する水溶性塩類などの添加量は、水100重量部に対して5重量部以上、さらに好ましくは7.5重量部以上が好ましい。
【0030】
上記において、ポリ乳酸系発泡性粒子を得る際に、押出機を用いることができ、その場合、ポリ乳酸系樹脂と架橋剤、必要に応じてその他添加剤を押出機へ投入し、その後発泡剤を加え溶融混練した後、混練物を押出し、押出された混練物をカットして発泡性粒子を得ることができる。
【0031】
(ポリ乳酸系発泡性粒子の発泡)
次に、前記のようにして得られるポリ乳酸系発泡性粒子を発泡させてポリ乳酸系発泡粒子を得る。このような方法としは、例えば、発泡ポリスチレン用の予備発泡機を用いて、ポリ乳酸系発泡性粒子を蒸気や熱風、高周波等によって予備発泡する方法(A)が挙げられ、最も簡便である。また、他の方法として、樹脂粒子を密閉容器内において発泡剤の存在下で分散媒に分散させるとともに、その内容物を加熱して樹脂粒子を軟化させてその粒子内に発泡剤を含浸させ、次いで容器の一端を開放し、容器内圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら粒子と分散媒とを同時に容器内よりも低圧の雰囲気(通常は大気圧下)に放出して発泡させる発泡方法(B)、基材樹脂と架橋剤、その他添加剤を押出機で溶融させると共に、発泡剤と混練して発泡性溶融混練物とし、次いでストランド状に押出して発泡させると共に、冷却後適当な長さに切断するか又はストランドを適当な長さに切断後冷却することによって発泡粒子を製造する方法(C)が挙げられるが、発泡性粒子輸送が可能であるという点から方法(A)が好ましい。
【0032】
(型内成形)
上記で得られたポリ乳酸系発泡粒子を所望の型内に所定量充填し、蒸気などで適当な条件で加熱して2次発泡させ、型内で発泡粒子同士を融着させてポリ乳酸系発泡成形体を得る。この型内成形では、従来の発泡ポリスチレンや発泡ポリオレフィン等の成形機を用いることができる。
【0033】
<揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体製造工程>
上記で得られたポリ乳酸系発泡成形体に、以下の二酸化炭素処理を行うことで揮発分を減らして、所望の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得た。
【0034】
<二酸化炭素処理>
本工程では、上記で得られたポリ乳酸系発泡成形体を二酸化炭素雰囲気下で特定の圧力下、一定時間維持することで揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得ることができる。二酸化炭素処理を行うことで、ポリ乳酸系発泡成形体中の炭化水素系発泡剤の含有量が減少し、結果として高温高湿条件下での体積膨張を抑制することができる。
【0035】
二酸化炭素処理をポリ乳酸系発泡成形体に行う条件としては、必要な加圧条件下で短時間実施することが好ましい。具体的に二酸化炭素による加圧条件は、0.1≦圧力(MPa)<2.0が好ましく、より好ましくは0.2≦圧力(MPa)≦1.0、さらに好ましくは0.3≦圧力(MPa)≦1.0である。また、発泡成形体に所定圧力で二酸化炭素を付与する処理時間は、処理する温度又は二酸化炭素が保有する湿度等によるが、0.5≦処理時間(min)<10が好ましく、より好ましくは1≦処理時間(min)<10、さらに好ましくは3≦処理時間(min)<10、特に好ましくは3≦処理時間(min)<5である。なお、二酸化炭素による加圧条件は、2.0MPa以上になると設備面を含めたコストが上がるために、2.0MPa未満が好ましい。また二酸化炭素付与処理時間は、短時間で十分であり、生産性の利点を考慮すると、10分間未満が好ましい。
【0036】
二酸化炭素を付与する設備は、耐圧性が保証される容器であれば形状、大きさ問わず使用することができる。ポリ乳酸系発泡成形体を金型より取り出してから、別の耐圧容器に該成形体を投入して二酸化炭素処理を行っても良いし、型内成型において耐圧性の金型を用い、成型終了後に金型内に二酸化炭素を封入して二酸化炭素処理を行っても良い。生産性の観点からは、後者の方が好ましい。
【0037】
以上のようにして得られた揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体は、高温高湿条件下での寸法安定性に優れたものである。本発明において、低揮発分ポリ乳酸系発泡成形体中の残留揮発分量は、以下のようにして測定する。上記で得られた二酸化炭素処理済み発泡成形体を充分乾燥し、その後150℃の雰囲気下に30分放置してから、発泡成形体の元重量に対する放置前後の重量変化を測定し、その差分を発泡成形体の元重量で除した値を揮発分含有量(%)とする。前記揮発分は、殆どが発泡剤であるが、少量の水分が含まれている。
【0038】
本発明の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体は種々の用途に使用することができる。例えば、精密機器、電化製品、電子機器、電子部品などの緩衝材、食品類、酒類、薬品類などの包装材、展示パネル、マネキン、デコレーション等の美粧材、食品、機械部品、電子部品などの通い箱、断熱材、建築材、玩具、アイスクリーム、冷凍食品等の保温材などに使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、評価は下記の方法で行った。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0040】
<評価方法>
(1)発泡性粒子の発泡剤含浸率:
含浸率は含浸前後の樹脂粒子重量から以下の式で求めた。
含浸率(%)=100×(含浸後重量−含浸前重量)/含浸前重量
(2)発泡粒子の発泡倍率の測定方法:
内容積2000cmのポリエチレン製カップに発泡粒子を擦切り一杯量り取り、重量を測定し、カップ重量を差引いて発泡粒子の重量を求める。発泡粒子の重量と見かけ体積(2000cm)から下記の式により求めた。
発泡倍率=見かけ体積(2000cm)/発泡粒子の重量
(3)発泡成形体の揮発分含有量:
十分乾燥した発泡成形体を、150℃の雰囲気下に30分放置し、発泡成形体の元重量に対する放置前後の重量変化を測定し、揮発分含有量とした。
(4)耐熱性(高温高湿条件下での体積変化率):
発泡成形体を150×150×20mmに切り出し、60℃×80%RHの条件にて24時間処理し、処理前後の縦、横、厚みの測定値からそれぞれの体積を算出し、処理前の成形体に対する体積変化の割合を算出した。
【0041】
(実施例1)
まず、D体比率10%、JIS K 7210(荷重2.16kg)に準拠したMI値3.7g/10分のポリ乳酸100重量部とポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン(株)製、MR−200)3.0重量部を、二軸押出機(東芝機械製、TEM35B)を用いて、シリンダー温度185℃で溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφ(約1.5mg)のビーズ状のポリ乳酸系樹脂粒子を得た。
【0042】
得られたポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対して、水100重量部、発泡剤として脱臭ブタン(ノルマルブタン/イソブタン重量比=7/3)12重量部、含浸助剤として食塩10重量部、分散剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル0.3重量部を耐圧容器に仕込み、90℃で90分間保持した。十分に冷却後取出し、乾燥して、ポリ乳酸系発泡性粒子を得た。得られたポリ乳酸系発泡性粒子の含浸率は5.7%であった。
【0043】
該ポリ乳酸系発泡性粒子を予備発泡機(ダイセン工業製、BHP−300)に約1.5kg投入し、90℃の蒸気下に40〜60秒間保持してポリ乳酸系発泡粒子を得た。得られたポリ乳酸系発泡粒子を風乾した後、篩を使用し融着粒子を分別した。分取されたポリ乳酸系発泡粒子の発泡倍率は35倍であった。
【0044】
分取されたポリ乳酸系発泡粒子を24時間以上熟成した後、発泡成形機(ダイセン工業製、KR−57)に300×450×20mmの金型を設置し、発泡粒子を圧縮率0%で充填し、スチーム圧0.1MPaで10〜20秒処理し型内成形を実施し、発泡成形体を得た。
【0045】
得られた発泡成形体を密閉容器内に投入し、表1に従って、二酸化炭素を封入して密閉容器内圧力を0.3MPaで3分間保持することで二酸化炭素処理を行った。その後、容器内の圧力を開放し、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得た。得られた揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の揮発分含有量と耐熱性を評価した。評価結果は表1の通りであった。
【0046】
【表1】

【0047】
(比較例1)
二酸化炭素処理を行わない以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体の揮発分含有量と耐熱性を評価した結果は表1の通りであった。
【0048】
(比較例2)
二酸炭素処理の変わりにメタノール処理を行った以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。メタノール処理は、発泡成形体をメタノール中に10秒間浸し、常温で風乾した。
【0049】
実施例1、比較例1より、ポリ乳酸系発泡成形体に二酸化炭素処理を行うことで、発泡剤含有量が減少し、60℃×80%RHでの膨張が抑制されることがわかった。また、特開2005−105097号公報に準拠した比較例2でも、メタノール処理により発泡剤含有量が減少し、60℃×80%RHでの膨張が抑制することがわかったが、二酸化炭素処理の方が揮発分含有量が少ない上に耐熱性も良く、取扱上も容易であるため有利であることがわかった。
【0050】
(実施例2)
低揮発分ポリ乳酸系発泡成形体を作製する際に、発泡成形体を投入してから二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.1MPaに変えた以外は、実施例1と同様にして揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得た。その際、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の揮発分含有量と耐熱性を評価した結果は表2の通りであった。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例3)
揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を作製する際に、発泡成形体を投入してから二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.5MPaに変えた以外は、実施例1と同様にして揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得た。その際、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の発泡剤含有量と耐熱性を評価した結果は表2の通りであった。
【0053】
(実施例4)
揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を作製する際に、発泡成形体を投入してから二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を1.0MPaに変えた以外は、実施例1と同様にして揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得た。その際、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の発泡剤含有量と耐熱性を評価した結果は表2の通りであった。
【0054】
実施例1〜4および比較例1より、二酸化炭素処理を行う際、密閉容器保持時間が3分間の場合、容器内圧力が0.1MPaでも、揮発分含有量が減少し、60℃×80%RHでの膨張が抑制されることがわかった。
【0055】
(実施例5)
揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を作製する際に、発泡成形体を投入してから二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.3MPaに保持する時間を1分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体の発泡剤含有量と耐熱性を評価した結果は表3の通りであった。
【0056】
【表3】

【0057】
(実施例6)
低揮発分ポリ乳酸系発泡成形体を作製する際に、発泡成形体を投入してから二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.3MPaに保持する時間を5分間に変えた以外は、実施例1と同様にして揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得た。その際、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の揮発分含有量と耐熱性を評価した結果は表3の通りであった。
【0058】
(実施例7)
低揮発分ポリ乳酸系発泡成形体を作製する際に、発泡成形体を投入してから二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.3MPaに保持する時間を10分間に変えた以外は、実施例1と同様にして揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体を得た。その際、揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の揮発分含有量と耐熱性を評価した結果は表3の通りであった。
【0059】
実施例1、5〜7と比較例1より、二酸化炭素処理を行う際、密閉容器内圧力が0.3MPaの場合、保持時間が1分間でも、揮発分含有量が減少し、60℃×80%RHでの膨張が抑制されることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系発泡剤を含有するポリ乳酸系発泡成形体に対し、二酸化炭素処理を行うことを特徴とする揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
二酸化炭素処理が、ポリ乳酸系発泡成形体を0.1MPa以上、2.0MPa未満の圧力の二酸化炭素雰囲気下に曝すことを特徴とする請求項1記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
二酸化炭素処理が、ポリ乳酸系発泡成形体を0.5分間以上、10分間未満の時間で二酸化炭素雰囲気下に曝すことを特徴とする請求項1又は2に記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
炭化水素系発泡剤が炭素数3−6の脂肪族炭化水素である請求項1〜3の何れかに記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
ポリ乳酸系発泡成形体が、ポリ乳酸系樹脂を主成分としており、該ポリ乳酸系樹脂をゲル化処理したものである請求項1〜4の何れかに記載の揮発分含有量が低減されたポリ乳酸系発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−239728(P2008−239728A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80700(P2007−80700)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】