説明

ポリ乳酸系複合繊維及びこれを用いた不織布とクッション材、並びにその製造方法

【課題】熱収縮が小さく、柔軟で嵩高性に優れ、更には嵩弾性に優れる不織布に適したポリ乳酸系複合繊維を提供する。
【解決手段】融点が165℃以上であるポリL−乳酸を含む第一成分1と、融点が100〜130℃の脂肪族ジカルボン酸成分と、グリコール成分とから成る繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルを含む第二成分2とを含み、第二成分2が繊維表面の20%以上露出するように複合紡糸した複合繊維10であって、繊維の長さ方向において捲縮を有しており、脂肪族ポリエステルの融点よりも5℃高い温度で熱処理したときの捲縮数が5個/25mm以上、24個/25mm以下であり、熱処理前後の捲縮数の増加が5個/25mm以下であるポリ乳酸系複合繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮が小さく、柔軟で嵩高性に優れ、更には嵩弾性に優れる不織布に適したポリ乳酸系複合繊維及びこれを用いた不織布とクッション材、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮した繊維として、生分解性繊維やバイオマス由来樹脂を用いた繊維が種々提案されている。特にバイオマス樹脂としてポリ乳酸樹脂を使用した繊維が種々提案されている。そして、これを主に熱接着性繊維として使用するため、複合繊維の提案もなされている。複合繊維の要求性能として、まず熱加工の際の収縮が小さいことが挙げられる。また複合繊維に捲縮を施しカードウェブやエアレイウェブとしたのち熱風加工により熱接着不織布を得ようとする場合、熱加工後の嵩が大きいこと、さらに嵩弾性、すなわち厚み方向での嵩回復性に優れることが良い不織布とされている。しかし、ポリ乳酸樹脂を用いた複合繊維において、上記特性を満足できるものはいまだに得られていない。
【0003】
複合繊維の鞘成分を熱接着させ不織布を得る際、繊維の熱収縮率が大きいと、地合が乱れたり、前記のようにカードウェブやエアレイウェブを熱風加工により得る熱接着不織布の場合、粗硬となったり、嵩がへたったりし、嵩高で柔軟な風合いの良い不織布を得ることができないため、繊維の熱収縮性が小さいことが必要である。
【0004】
一方、熱収縮性が小さくても、芯成分、及び鞘成分や、それら組み合わせが不良であると、熱加工時に嵩がへたり、粗硬となったり、また、嵩弾性が低いという問題があった。
【0005】
下記の特許文献1には、ポリ乳酸を主体とする融点120℃以上の熱可塑性樹脂を芯成分、芯成分よりも融点が30℃以上低く、融点が90℃以上の熱可塑性樹脂を鞘成分とした生分解性複合繊維が提案されている。特許文献2には、相互に光学純度が異なる二種のポリ乳酸系重合体からなる複合短繊維が提案されている。特許文献3には、融点130℃以上の脂肪族ポリエステルからなる母材繊維に点接合される、L−乳酸を主成分とするポリエステルが少なくとも繊維表面の一部に露出してなる熱接着繊維が提案されている。特許文献4には、芯部が融解開始温度180℃以上でステレオコンプレックスを形成しているポリ乳酸系重合体であり、鞘部が芯部の融点よりも30℃以上低い脂肪族ポリエステルからなる熱接着性繊維が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開7−133511号公報
【特許文献2】特開2001−49533号公報
【特許文献3】特開2000−226733号公報
【特許文献4】特開2003−342836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1では、熱加工時の不織布面積収縮率が3%以上(例えば、実施例1では3.6%)であり、熱収縮を抑えることが十分でなかった。また、得られた不織布の嵩や嵩回復性は考慮されておらず、十分ではなかった。
【0008】
特許文献2では、80℃での熱収縮率は2%と低いが、実際の加工温度での面積収縮率が小さくとも11%と実用上では不十分であった。更に、不織布の嵩高性も高々28cm3/g程度と低く十分ではなかった。従って、地合が悪く、嵩の乏しい、粗硬な不織布しか得られていない。
【0009】
特許文献3では、熱接着加工時に相当する温度(180℃)での熱収縮率が小さくとも8.0%と大きく、満足できる不織布を得ることができなかった。
【0010】
特許文献4では、ステレオコンプレックスとするためにL型ポリ乳酸及びD型ポリ乳酸を混合する必要があり、物性がばらつきを生じやすく、均一な繊維が得にくい。また、二種類の異なるポリマーを用意する必要があるため、ポリマーが高価となり経済的ではなかった。また、芯成分の融点が大きくなりすぎると、ポリ乳酸を結晶化させるために延伸温度を高くする必要があるが、鞘成分の融点が低い場合には延伸温度を高くすることができず、その結果、ポリ乳酸の結晶化が不十分となり熱収縮率が大きな繊維しか得られなかった。
【0011】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、従来のポリ乳酸を使用した複合繊維に比べて、熱収縮が小さく、初期嵩に優れ、更に嵩回復性に優れ、柔軟で弾力性のあるポリ乳酸系複合繊維及びこれを用いた不織布とクッション材、並びにその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のポリ乳酸系複合繊維は、融点が165℃以上であるポリL−乳酸を含む第一成分と、融点が100〜130℃のコハク酸、アジピン酸、及びシュウ酸から選ばれる少なくとも一つの脂肪族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ブタンジオール、及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも一つのグリコール成分とから成る繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルを含む第二成分とを含み、前記第二成分が繊維表面の20%以上露出するように複合紡糸した複合繊維であって、JIS−L−1015に準じて測定される単繊維乾熱収縮率が下記(1)及び(2)の物性値を満たし、繊維の長さ方向において捲縮を有しており、前記脂肪族ポリエステルの融点よりも5℃高い温度で熱処理したときの捲縮数が5個/25mm以上、24個/25mm以下であり、熱処理前後の捲縮数の増加が5個/25mm以下であることを特徴とする。
【0013】
[単繊維乾熱収縮率]
(1)温度80℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtex(2mg/d)における単繊維乾熱収縮率が2%未満。
(2)温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtex(2mg/d)における単繊維乾熱収縮率が3%以下。
【0014】
本発明の不織布は、前記のポリ乳酸系複合繊維を少なくとも30質量%含有し、前記ポリ乳酸系複合繊維の第二成分が溶融して、構成する繊維同士が熱接着していることを特徴とする。
【0015】
本発明のクッション材料は、前記の不織布を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明のポリ乳酸系複合繊維の製造方法は、前記のポリ乳酸系複合繊維の製造方法であって、第一成分と第二成分を、第二成分が繊維表面の20%以上露出するように複合紡糸した複合繊維を、ポリ乳酸のガラス転移点以上、第二成分の融点未満の温度で延伸し、緊張熱セットは実施しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、従来のポリ乳酸を使用した複合繊維に比べて、熱収縮が小さく、初期嵩に優れ、更に嵩回復性に優れ、柔軟で弾力性のあるポリ乳酸系複合繊維及びこれを用いた不織布とクッション材、並びにその製造方法を提供できる。具体的には、以下のような効果が得られる。
【0018】
(1)嵩高で柔軟な不織布が得られる。
(2)嵩回復性に優れ、クッション性に優れる。
(3)特にポリL−乳酸の融点が175℃以上であると、嵩を維持できる熱加工温度域が広い。
(4)ステープル繊維としたとき、カード通過性に優れる。
(5)特に、波形状捲縮及び螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮とすることにより、初期嵩に優れ、更に嵩回復性に優れる。
(6)湿式不織布にした場合、芯成分のポリ乳酸が硬質樹脂、鞘成分の脂肪族ポリエステルが柔軟樹脂であるため、腰を有しながら柔軟な紙が得られる。表面の触感も柔らかである。
(7)特に嵩高く、嵩弾性に優れる不織布を得ることが出来るため、クッション材料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の一実施形態における複合繊維の繊維断面を示す。
【図2】図2A〜Cは、本発明の一実施形態における複合繊維の捲縮形態を示す。
【図3】図3は機械捲縮(鋸歯状捲縮)の形態を示す。
【図4】図4は本発明の別の実施形態における複合繊維の捲縮形態を示す
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のポリ乳酸系複合繊維は、第一成分(芯成分)を融点が165℃以上であるポリL−乳酸を含み、第二成分(鞘成分)を融点が100〜130℃のコハク酸、アジピン酸、シュウ酸から選ばれる少なくとも一つの脂肪族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコールから選ばれる少なくとも一つのグリコール成分とから成る繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルとする。この組み合わせにすることによって、熱収縮率が小さく、嵩高い不織布を得ることができる。
【0021】
第一成分(芯成分)を融点が165℃以上であるポリL−乳酸を用いることによって、耐熱性が高く、熱加工の際に軟化しにくいため、嵩の大きな不織布を得ることができる。さらに嵩回復性の良い不織布を得ることができる。
【0022】
ポリ乳酸同士の熱接着性複合繊維とする場合、鞘成分のポリ乳酸の融点を低くする必要があるが、低融点にするために共重合体とするか、光学純度を低くすると、熱収縮率が大きくなってしまうという問題があった。そこで、本発明者等は、第二成分(鞘成分)に用いる樹脂に着目し、前記脂肪族ポリエステルを使用することによって熱収縮率を小さくすることができるということを知り、本発明に至った。その理由は、前記脂肪族ポリエステルは、ポリL−乳酸と相溶性が良く芯鞘剥離を引き起こしにくいこと、熱接着性が高くバインダー特性が高いこと、あるいは樹脂自体の熱収縮性が小さいことからと推定される。更に、本発明の利点として、前記脂肪族ポリエステルは、低密度ポリエチレン(LDPE)に似た比較的柔軟な樹脂であるため、柔らかな触感の不織布が得られることが挙げられる。更に前記脂肪族ポリエステルの柔軟な樹脂特性によって、熱接着点の自由度が高くなり、接着点の変形に対する自由度がおおきくなるため、芯成分のポリL−乳酸と相まって、嵩回復性特に初期嵩回復性に優れる不織布を得ることができるのである。この中でも、ブタンジオールとコハク酸を縮重合したポリブチレンサクシネートが最も好ましい。融点が前記脂肪族ポリエステルの中でも比較的高く耐熱性が大きいからである。
【0023】
本発明においては、前記ポリL−乳酸は、融点が165℃以上である。好ましいポリL−乳酸の融点は170℃以上である。最も好ましくは175℃以上である。融点が165℃未満であると、鞘成分との融点差が小さくなる。その結果、熱加工温度との差が小さくなるため、熱加工の際にへたり易い傾向がある。ポリL−乳酸の融点の上限は180℃未満であることが好ましい。なお、ここでいうポリL−乳酸の融点とは、バージンの樹脂の融点であり、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、他の成分を添加して融点を上昇させる、あるいは降下させることができる。
【0024】
前記ポリL−乳酸は、単独で用いてもよいが、核剤を添加して、融点及び結晶化温度を高めれば、より耐熱性が向上し、嵩高い、嵩回復性の良い不織布が得られるため、好ましい。核剤としては、公知の何れでも構わないが、好ましくは、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミニウム化合物等の無機フィラー、リン酸エステル金属塩、アミド系化合物である。核剤がポリL−乳酸に対して0.5〜3質量%含有することが好ましい。例えば、タルク及びアミド系化合物を2質量%添加した場合、ポリL−乳酸の融点が約7℃上昇する。
【0025】
ポリL−乳酸の光学純度は、95%以上であることが好ましく、より好ましくは99%以上であり、最も好ましくは99.5%以上である。光学純度が95%未満であると、軟化点が低くなり、熱加工の際にへたり易くなったり、嵩回復性も悪くなる傾向がある。
【0026】
本発明に用いられるポリL−乳酸は、耐熱性が大きく、曲げ弾性も大きくなる傾向があるため、本発明のような熱収縮が小さく、嵩が大きく、嵩回復性も優れる不織布が得やすくなる。
【0027】
ポリL−乳酸の融点が175℃以上であり、光学純度が99.5%以上を満たすポリマーとしては、商品名「U‘z S−99」(トヨタ自動車製)が挙げられる。
【0028】
前記第一成分には、前記ポリL−乳酸以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を混合してもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリオレフィン等が挙げられる。第一成分に占めるポリL−乳酸の割合は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレート、及びこれらの共重合体が挙げられる。中でも、コハク酸と1,4−ブタンジオールの縮合体であるポリブチレンサクシネートは、融点が110℃程度と比較的高く、繊維生産性、不織布加工性、不織布物性に優れ、また、将来のバイオマス原料化可能樹脂として最も有望な樹脂であり好ましい。
【0030】
前記脂肪族ポリエステルの融点の好ましい範囲は、100℃以上130℃以下である。より好ましい融点範囲は110℃以上125℃以下である。融点が100℃未満であると、溶融紡糸の際にノズルより吐出した溶融樹脂の固化が遅く融着糸が発生しやすい傾向がある。一方、融点が130℃を超えると、芯成分との融点差が小さくなり、その結果、熱加工温度との差が小さくなるため、熱加工の際に嵩が小さくなる傾向がある。
【0031】
前記第二成分には、前記脂肪族ポリエステル以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂を混合してもよい。他の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリカプロラクタム、及び芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。第二成分に占める前記脂肪族ポリエステルの割合は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
繊維断面形態は、同心円であれば不織布強力が大きくなり好ましい。偏心構造にすると、初期嵩や、嵩回復性を更に大きくすることができるため、より好ましい。偏心とは、第一成分のポリL−乳酸が繊維の重心位置からずれている状態のことを指し、具体的には偏心芯鞘型又は並列型を含む。偏心率とは、図1に示すように、複合繊維の繊維断面を顕微鏡などで拡大撮影し、芯成分(1)の重心位置(3)をC1とし、複合繊維(10)の重心位置(4)をCfとし、複合繊維(10)の半径(5)をrfとしたとき、下記式で示す数値をいう。
[偏心率(%)=(Cf−C1)×100/rf]
偏心率は、5%以上50%以下であることが好ましい。より好ましい偏心率は7%以上30%以下である。
【0033】
第一成分(1)の重心位置(3)が繊維の重心位置(4)からずれている繊維断面(以下、総じて偏心型断面という)としては、図1に示す偏心芯鞘型、あるいは並列型であることが好ましい形態である。場合によっては、多芯型であっても多芯部分が集合して繊維の重心位置からずれて存在しているものでも可能である。特に、偏心芯鞘型の繊維断面であると、容易に所望の波形状捲縮及び/又は螺旋状捲縮を発現させることができる点で好ましい。偏心芯鞘型複合繊維の偏心率は、5〜50%であることが好ましい。より好ましい偏心率は、7〜30%である。また、第一成分の繊維断面における形態は、円形以外に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、星形などの異形であってもよく、複合繊維の繊維断面における形態は、円形以外に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、星形などの異形、あるいは中空形であってもよい。
【0034】
複合比は、鞘リッチになると、不織布強力は上がるが、得られる不織布が硬くなったり、嵩回復も悪くなる傾向がある。一方、芯リッチになりすぎると接着点が少なくなりすぎ、不織布強力が小さくなったり、嵩回復性も悪くなる傾向がある。従って、複合比(芯/鞘)は、8/2〜4/6が好ましい、更に好ましくは7/3〜45/55、最も好ましくは6/4〜5/5である。
【0035】
前記偏心型断面を有する複合繊維を嵩高性不織布とする場合は、繊維に捲縮を施し、カードやエアレイウェブとした後、熱風加工不織布とするとよい。好ましい捲縮数は、5個/25mm以上、24個/25mm以下である。より好ましい捲縮数は10個/25mm以上、20個/25mm以下である。捲縮数が5個/25mm未満であると捲縮数が少なすぎ、ウェブ形成が難しかったり、嵩高い不織布を得ることが困難になる。一方、捲縮数が24個/25mmを超えると捲縮数が多すぎ、解繊性が悪くなり、良好な地合のカードウェブやエアレイウェブを得ることが困難になる。また、不織布の嵩が小さくなったり、嵩回復性も小さくなる傾向がある。
【0036】
前記偏心型断面を有する複合繊維は、第二成分の融点よりも5℃高い温度で熱処理したときの捲縮数が5個/25mm以上、24個/25mm以下である。より好ましい捲縮数は10個/25mm以上、20個/25mm以下である。熱処理後の捲縮数が5個/25mm未満であると嵩が小さくなったり、嵩回復性も小さくなる傾向がある。一方、熱処理後の捲縮数が24個/25mmを超えると得られる不織布の地合が悪くなる傾向がある。
【0037】
更に前記偏心型断面を有する複合繊維は熱処理前後の捲縮数の増加が5個/25mm以下である。より好ましい捲縮数の増加は3個/25mm以下である。最も好ましい捲縮数の増加は2個/25mm以下である。熱処理前後の捲縮数の増加が5個/25mmを超えると、熱処理の際のウェブ面積収縮率が大きくなり、地合が悪くなる傾向がある。更に、嵩が小さくなったり、嵩回復性も小さくなる傾向がある。
【0038】
本発明の複合繊維は、捲縮率が5%以上30%以下であることが好ましい。より好ましい捲縮率は10%以上、25%以下である。捲縮率が5%未満であると、繊維がストレート状になるため嵩高い不織布を得ることが困難になる。捲縮率が30%を超えると、解繊性が悪くなり、良好な地合のカード及びエアレイウェブを得ることが困難になる。
【0039】
図2に本発明の一実施形態における複合繊維の捲縮形態を示す。本発明でいう波形状捲縮とは、図2Aに示すような捲縮の山部が湾曲したものを示す。螺旋状捲縮とは、図2Bに示すような捲縮の山部が螺旋状に湾曲したものを示す。図2Cに示すような波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮も本発明に含まれる。図3に示すような通常の機械捲縮の場合は、捲縮の山が鋭角である、いわゆる鋸歯状捲縮のままであると、不織布としたときの初期嵩を十分に大きくすることが難しい。さらに、圧縮に対する面弾性、いわゆるスプリング効果に劣り、特に十分な初期嵩回復性が得られにくい。本発明には、図4に示すように機械捲縮の鋭角な捲縮と、図2Aに示す波形状捲縮が混在した捲縮も含まれる。
【0040】
捲縮形状は、前記のとおり機械捲縮、波形状捲縮及び螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮が好ましい。より嵩高く、嵩回復性に優れる不織布を得るためには、捲縮の山部が湾曲した波形状捲縮、及び螺旋状捲縮が好ましい。このような捲縮形状とすることによって、不織布とした場合のスプリング効果を発揮するからである。
【0041】
延伸方法は、機械捲縮を得る場合、ポリ乳酸のガラス転移点以下の温度で延伸した後、第二成分(鞘成分)の融点未満の温度で緊張熱セットすることが好ましい。延伸温度をポリ乳酸のガラス転移点(通常55〜60℃)以下で実施する理由は、より延伸倍率が大きくできるからである。第二成分(鞘成分)の融点未満の温度で緊張熱セットする理由は、ポリ乳酸を結晶化し耐熱収縮性、嵩高性、嵩回復性を付与させるためである。具体的には、ポリ乳酸のガラス転移点より20℃低い温度以上、ガラス転移点より5℃低い温度以下で、2〜4倍に延伸し、第二成分の融点より30℃低い温度以上、第二成分の融点より5℃低い温度以下で緊張熱セットすることが好ましい。
【0042】
また、波形状、又は螺旋状捲縮とする場合は、繊維断面を偏心型断面とし、ポリ乳酸のガラス転移点以上、第二成分(鞘成分)の融点未満の温度で延伸し、緊張熱セットは実施しないことが好ましい。緊張熱セットを実施すると機械捲縮になりやすいからである。ポリ乳酸のガラス転移点温度以上で延伸する理由は、ポリ乳酸の結晶化を延伸と同時におこすためである。具体的には、ガラス転移点より5℃高い温度以上、第二成分(鞘成分)の融点未満で且つガラス転移点より40℃高い温度以下で、2〜4倍に延伸することが好ましい。
【0043】
また、この場合延伸は温水中で実施することがより好ましい。温水で実施した方が芯成分と鞘成分のひずみが生じやすく、捲縮の山を湾曲させ易いためである。
【0044】
芯成分のポリL−乳酸と鞘成分の脂肪族ポリエステルは相溶性が高いため、芯鞘剥離を引き起こしにくく、高強度な熱接着不織布を得ることができる。更に鞘成分は、ポリ乳酸、ポリL−乳酸以外のポリエステル、及びセルロースへの接着も優れるため、接着点のより強固な不織布を得ることができる。
【0045】
本発明のポリ乳酸系複合繊維は、JIS−L−1015に準じて測定される単繊維乾熱収縮率が下記(1)及び(2)の物性値を満たす。
【0046】
[単繊維乾熱収縮率]
(1)温度80℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtex(2mg/d)における単繊維乾熱収縮率が2%未満。
(2)温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtex(2mg/d)における単繊維乾熱収縮率が3%以下。
【0047】
温度80℃における単繊維乾熱収縮率(1)は、1.5%以下であることが好ましい。温度を80℃に規定したのは、第二成が溶融しない温度にて熱処理した場合の単繊維の収縮性の尺度とするためである。上記範囲を満足することにより、得ようとする繊維構造物が前記複合繊維の熱接着性を要求しない用途の場合において、有効に利用できるからである。単繊維乾熱収縮率(1)が2%以上であると、熱処理時の単繊維、およびウェブ収縮が大きくなりすぎて、ウェブの地合いが乱れたり、嵩が小さくなったり、嵩回復性も小さくなる傾向があるからである。
【0048】
温度120℃における単繊維乾熱収縮率(2)は、2.5%以下であることが好ましい。温度を120℃に規定したのは、第二成分が溶融又は軟化する温度で熱処理した場合、特に熱接着加工した場合の繊維の収縮性の尺度とするためである。単繊維乾熱収縮率(2)が3%を超えると、熱処理時の繊維、およびウェブ収縮が大きくなりすぎて、ウェブの地合いが乱れたり、嵩が小さくなったり、嵩回復性も小さくなる傾向があるからである。
【0049】
本発明のポリ乳酸系複合繊維の単繊維強度は、特に限定はされないが、あまり大きすぎると、配向結晶化が大きく生分解性が悪くなる傾向があるため、1cN/dtex以上、3cN/dtex以下の範囲が好ましく、1cN/dtex以上、2cN/dtex以下がより好ましい。1cN/dtex未満であるとカード工程での繊維ちぎれが発生しやすい。
【0050】
好ましい繊度は、1dtex以上、30dtex以下である。より好ましい繊度は2dtex以上、20dtex以下である。特に捲縮形状を波形状、又は螺旋状とし、嵩回復性に優れる不織布とする場合、最も好ましい繊度は3dtex以上、15dtex以下であり、特にクッション材料に用いる場合に都合がよい。
【0051】
本発明のポリ乳酸系複合繊維は、例えば、糸、不織布、織編物などの繊維構造物に用いることができる。特に、不織布として用いる場合は、本発明のポリ乳酸系複合繊維を少なくとも30質量%含有し、前記ポリ乳酸系複合繊維の第二成分が溶融して、構成する繊維同士が熱接着していることが好ましい。
【0052】
本発明の不織布を構成する繊維ウェブ形態としては、パラレルウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブ、クロスレイウェブ、クリスクロスウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブなどが挙げられる。前記繊維ウェブは、熱処理により第二成分が接着することにより効果を発揮する。そして、前記繊維ウェブは必要に応じて、ニードルパンチ処理あるいは水流交絡処理が施されても良い。熱処理に手段としては、特に限定はされないが、本発明の複合繊維の機能を十分に発揮させるのであれば、熱風貫通式熱処理機、熱風上下吹き付け式熱処理機、赤外線式熱処理機など風圧など圧力のあまりかからない熱処理機を用いることが好ましい。
【0053】
本発明の不織布は、雰囲気温度25℃において、下記の測定により得られる除重直後の嵩回復率(以下、初期嵩回復率という)が55%以上、かつ除重24時間後の嵩回復率(以下、長期嵩回復率という)が80%以上を満たすことが好ましい。このような不織布は、前記偏心型断面を有する複合繊維を少なくとも30質量%含むことにより得ることができる。
【0054】
[嵩回復率]
10cm角に切断した不織布を合計の目付が約1000g/m2となるように必要枚数準備し重ね合わせて、初期合計厚み(To)を測定する。重ね合わせた不織布の上に10cm角で9.8kPa荷重の重りを載せて25℃雰囲気下で24時間荷重を掛け、24時間後荷重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の合計厚み(T1)、及び除重24時間後の合計厚み(T2)を測定し、不織布の嵩回復率を下記式にて算出し、それぞれ初期嵩回復率、長期嵩回復率とする。
【0055】
初期嵩回復率(%)=(T1/To)×100
長期嵩回復率(%)=(T2/To)×100
【0056】
本発明の不織布は、初期嵩回復率が60%以上であることがより好ましい。長期嵩回復率は、85%以上であることがより好ましい。初期嵩回復率及び/又は長期嵩回復率が上記範囲を満足することにより、クッション材として優れたものとすることができる。
【0057】
本発明のクッション材は、前記不織布を少なくとも一部分として用いられる。本発明でいうクッション材料とは、家庭用の椅子、車両用座席などの内装材、おむつや生理用ナプキンなどの衛生材料、フィルター、化粧用パフなどの化粧用材料、ブラジャーパッド等の成形体等、主に発泡ウレタンが用いられているものを指す。本発明のクッション材は、初期嵩及び嵩回復性に優れるので、発泡ウレタン代替素材として好適である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0059】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
具体的条件は表1〜2に示す。それ以外の条件を下記に説明する。
(1)樹脂
(i)ポリL−乳酸
A.U‘z S−99 トヨタ自動車社製
融点(mp):176℃、光学純度:99.6%、ガラス転移温度(Tg):57℃、JIS−K−7210に準ずるメルトインデックス(MI;測定温度190℃、荷重2.16kgf(21.18N)):7.2g/10分
B.レイシア H−100J 三井化学社製
mp:170℃、Tg:55℃、MI:8g/10分
(ii)脂肪族ポリエステル
C.ビオノーレ#1020(ポリブチレンサクシネート) 昭和高分子社製
mp:112℃ MI:20g/10分
D.GS−Pla AZ71T(ポリブチレンサクシネート) 三菱化学社製
mp:112℃ MI:20g/10分
E.ビオノーレ#3020(ポリブチレンサクシネートアジペート) 昭和高分子社製
mp:95℃ MI:20g/10分
(iii)芳香族脂肪族ポリエステル
F.テレフタル酸、スルホン酸金属塩、脂肪族ジカルボン酸、エチレングリコールおよびジエチレングリコールからなる繰り返し単位を備え、酸成分中、テレフタル酸が約50モル%〜約90モル%、スルホン酸金属塩が約0.2モル%〜約6モル%、および脂肪族ジカルボン酸が約4モル%〜約49.8モル%であり、グリコール成分中、エチレングリコールが約50モル%〜約99.9モル%およびジエチレングリコールが約0.1モル%〜約50モル%である芳香族脂肪族ポリエステル共重合体
mp:200℃、Tg:45℃
(2)芯、鞘のポリマー
実施例1,4:芯A/鞘C 繊維融点173.8℃/112.9℃
実施例2:芯A/鞘D
実施例3:芯B/鞘C 繊維融点163.1℃/113.3℃
比較例1:芯A/鞘E
比較例2,3:芯F/鞘C
(3)押し出し温度
芯樹脂(ポリL−乳酸)240℃
鞘樹脂(ポリブチレンサクシネート)210℃
ノズル口金温度:240℃
(4)引取速度:410m/分
(5)断面:同心円、偏心
(6)複合比:5/5(質量比)
(7)未延伸繊度:9dtex
(8)延伸温度:A.湿式(温水)50℃一段+80℃緊張熱セット、B.湿式(温水)80℃一段
(9)延伸倍率:2.7倍
(10)乾燥温度:90℃
(11)製品繊度×カット長:4.4dtex×51mm
[評価方法]
(1)融点:示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、ポリマーサンプル量を5.0mgとして、220℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温スピードで冷却した後、10℃/minの昇温スピードで融解させて、第1および第2成分それぞれについて融解熱量曲線を得、得られた融解熱量曲線より、融点を求めた。(2)ガラス転移温度:上記で220℃に昇温した後10分間保持した後、220℃〜−20℃まで降温速度10℃/minで降温し10分間保持、その後、−20℃から220℃まで昇温速度10℃/minで昇温したときのガラス転移点をガラス転移温度とした。
(3)繊維融点:示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、繊維サンプル量を6.0mgとして、10℃/minの昇温スピードで常温から200℃まで昇温して、繊維を融解させて、得られた融解熱量曲線から第一成分及び第二成分の繊維融点を求めた。
(4)単繊維強度:JIS L 1015に準じ、引張試験機を用いて試料のつかみ間隔を20mmとしたときの繊維切断時の荷重値を測定した。
(5)捲縮数、捲縮率:JIS L 1015に準じて測定した。
(6)熱処理後捲縮数:上記捲縮数を測定した後の単繊維サンプルを取り出し、第二成分の融点+5℃の温度に調整したオーブンに垂直に吊し、1分間加熱した。次に、加熱後の単繊維をJIS L 1015に準じて捲縮数を測定し、熱処理後の捲縮数とした。そして、熱処理前後の捲縮数の差を求めた。
(7)厚み:ミツトヨ(株)製、ID−C1012Cの厚み試験機を用い、印可荷重2.94cN/cm2の条件下で5秒経過時の厚みを求めた。
(8)ウェブ収縮率:熱加工前のカードウェブを縦:100mm、横:100mmに切断し、所定の温度にて熱加工した際の、面積減少率を測定した。
【0060】
以上の結果を表1〜2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
実施例1〜4のポリ乳酸系複合繊維は、熱収縮が小さく、初期嵩に優れた不織布を得ることができた。特に、実施例4の偏心型断面を有するポリ乳酸系複合繊維は、初期及び長期の嵩回復性に優れ、柔軟で弾力性のある不織布を得ることができた。一方、比較例1は、鞘成分の脂肪族ポリエステルの融点が低いため、紡糸時に融着糸が発生し、紡糸性が悪く引き取りを中止した。比較例2は、芯成分に芳香族脂肪族ポリエステルを用いたため、比容積は低くなった。
【0064】
実施例4と比較例3を対比すると、実施例4の不織布は、初期厚みが52mm、25℃における初期嵩回復率が65%、長期嵩回復率が87%であった。一方、比較例3の不織布は、初期厚みが47mm、25℃における初期嵩回復率が52%、長期嵩回復率は87%であった。実施例4は、比較例3に比べ、初期の厚み及び嵩回復性に優れていることが判った。
【0065】
また、参考例として芯成分の融点が170℃、鞘成分の融点が130℃である、ポリ乳酸同士の生分解性複合短繊維(ユニチカ(株)製、商品名テラマックPL80)を用意した。参考例は、実施例1〜4に比べて熱収縮率が著しく大きく、比容積も著しく低い不織布であった。
【0066】
また、実施例4の偏心型断面を有するポリ乳酸系複合繊維は、第二成分の融点+5℃に加熱したときの捲縮数は、熱処理前に比べて1.9山/25mmの増加であった。従来の潜在捲縮型複合繊維とは異なり、波形状捲縮が顕在化していたため、繊維及び不織布にしたとき熱収縮が少なく、嵩高な不織布が得られた。
【0067】
以上の結果から、本発明は従来のポリ乳酸を使用した複合繊維に比べて、熱収縮が小さく、初期嵩に優れ、更に嵩回復性に優れ、柔軟で弾力性のあるポリ乳酸系複合繊維及び不織布とすることができた。また前記複合繊維及び不織布はクッション材として好適に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリ乳酸系複合繊維は、熱収縮が小さく、嵩高性があり、特に、第二成分の重心位置を繊維の重心位置からずらした繊維断面を有する複合繊維の場合は、嵩高性、更には嵩弾性に優れる不織布に好適であるので、例えば、おむつ、ナプキン部材等の衛生材料、フィルター、ワイパー、農業用資材、食品包材、ゴミ袋、自動車用資材等に用いることができる。特に、クッション材料とは、椅子や、衛生材料、フィルター、化粧用パフ、ブラジャー等のカップ類等、主に発泡ウレタンの代替素材として好適である。
【符号の説明】
【0069】
1 第一成分
2 第二成分
3 第一成分の重心位置
4 複合繊維の重心位置
5 複合繊維の半径
10 複合繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が165℃以上であるポリL−乳酸を含む第一成分と、
融点が100〜130℃のコハク酸、アジピン酸、及びシュウ酸から選ばれる少なくとも一つの脂肪族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ブタンジオール、及びプロピレングリコールから選ばれる少なくとも一つのグリコール成分とから成る繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルを含む第二成分とを含み、
前記第二成分が繊維表面の20%以上露出するように複合紡糸した複合繊維であって、
JIS−L−1015に準じて測定される単繊維乾熱収縮率が下記(1)及び(2)の物性値を満たし、
繊維の長さ方向において捲縮を有しており、前記脂肪族ポリエステルの融点よりも5℃高い温度で熱処理したときの捲縮数が5個/25mm以上、24個/25mm以下であり、熱処理前後の捲縮数の増加が5個/25mm以下であることを特徴とするポリ乳酸系複合繊維。
[単繊維乾熱収縮率]
(1)温度80℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtex(2mg/d)における単繊維乾熱収縮率が2%未満。
(2)温度120℃、時間15分間、初荷重0.018mN/dtex(2mg/d)における単繊維乾熱収縮率が3%以下。
【請求項2】
前記捲縮は、山部が湾曲した波形状捲縮又は螺旋状捲縮である請求項1に記載のポリ乳酸系複合繊維。
【請求項3】
前記複合繊維は、第二成分が繊維表面の少なくとも20%を占め、第二成分の重心位置が繊維の重心位置からずれている繊維断面を有している請求項1または2に記載のポリ乳酸系複合繊維。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系複合繊維を少なくとも30質量%含有し、前記ポリ乳酸系複合繊維の第二成分が溶融して、構成する繊維同士が熱接着している不織布。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系複合繊維を少なくとも30質量%含有する不織布であって、雰囲気温度25℃において、下記の測定により得られる除重直後の嵩回復率(以下、初期嵩回復率という)が55%以上、かつ除重24時間後の嵩回復率(以下、長期嵩回復率という)が80%以上を満たす不織布。
[嵩回復率]
10cm角に切断した不織布を合計の目付が約1000g/m2となるように必要枚数準備し重ね合わせて、初期合計厚み(To)を測定する。重ね合わせた不織布の上に10cm角で9.8kPa荷重の重りを載せて25℃雰囲気下で24時間荷重を掛け、24時間後荷重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の合計厚み(T1)、及び除重24時間後の合計厚み(T2)を測定し、不織布の嵩回復率を下記式にて算出し、それぞれ初期嵩回復率、長期嵩回復率とする。
初期嵩回復率(%)=(T1/To)×100
長期嵩回復率(%)=(T2/To)×100
【請求項6】
請求項4または5に記載の不織布を含むクッション材料。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリ乳酸系複合繊維の製造方法であって、
第一成分と第二成分を、第二成分が繊維表面の20%以上露出するように複合紡糸した複合繊維を、ポリ乳酸のガラス転移点以上、第二成分の融点未満の温度で延伸し、緊張熱セットは実施しないことを特徴とするポリ乳酸系複合繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−11051(P2013−11051A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174801(P2012−174801)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2005−320001(P2005−320001)の分割
【原出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】