説明

ポリ乳酸配合ポリプロピレン積層フィルム

【課題】植物由来原料であるポリ乳酸が配合されたポリプロピレン系重合体からなる積層フィルムを提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系重合体(A)50〜90重量%、ポリ乳酸(B)10〜50重量%((A)及び(B)の合計で100重量%とする。)からなる中間層(I)と、その両面のポリプロピレン系重合体(A)からなる外層(II)からなる積層フィルム。ポリプロピレン系重合体(A)が、プロピレンと共にエチレン、炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれる1種以上のコモノマーとのランダム共重合体であって、その融点が150℃以下であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)であることを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンにポリ乳酸が配合された積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂を利用したフィルムは、その優れた透明性、機械的強度、剛性等を活かして包装材料をはじめ広い分野で使用されている。またポリ乳酸は植物由来のポリマーであり、生分解性を有していることからそのフィルムは包装材料としての利用の拡大が
期待されている。
従来から、ポリプロピレン樹脂及びポリ乳酸からなるフィルムは知られている(特許文献1ないし3)。しかし、従来のフィルムは、性能、用途、コストの点で制限されている。そこで、ポリプロピレン樹脂の透明性、機械的強度を生かし、成形性が良く、かつにコストに見合う広い用途に利用できるフィルムが求められている。
【特許文献1】特開2009−107316 特許請求の範囲
【特許文献2】特開2009−12465号 特許請求の範囲
【特許文献3】特開2009−13405号 特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ポリ乳酸を配合したフィルムであっても、従来のポリプロピレン樹脂からなるフィルムが用いられている用途において、遜色なく包装材等に利用できるフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ポリプロピレン系重合体(A)50〜90重量%、中でも50〜88重量%、ポリ乳酸(B)10〜50重量%、中でも12〜50重量%((A)及び(B)の合計で100重量%とする。)からなる中間層(I)と、その片面、好ましくはその両面のポリプロピレン系重合体(A)からなる外層(II)からなる積層フィルムに関する。
また、本発明は、ポリプロピレン系重合体(A)が、プロピレンと共にエチレン、炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれる1種以上のコモノマーとのランダム共重合体であって、その融点が150℃以下であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)であることを特徴とする上記の積層フィルムに関する。
また、本発明は、ポリ乳酸(B)が融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸(B1)であることを特徴とする積層フィルムに関する。
また、本発明は、ポリ乳酸(B)が融点200℃以上のステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸(B2)であることを特徴とする積層フィルムに関する。
また、本発明は、上記の中間層(I)とその片面に、好ましくは両面に外層(IIa)として、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)から選ばれる重合体(A11)50〜100重量%、非結晶性ないし低結晶性ポリ乳酸(B3)0〜 50重量%((A11)及び(B3)の合計で100重量%とする。)を共押出により積層して成形されてなることを特徴とする積層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、透明性、機械的特性に優れたポリプロピレン樹脂からなるフィルムと何ら遜色のない積層フィルムをコスト的にも安定して得ることができる。これにより植物由来原料であるポリ乳酸を配合した積層フィルムを得ることができる。
さらに、本発明の積層フィルムはその引き裂き性のレベルが各種の包装材に適しており、広く使用することができる。
また、本発明に用いられるポリプロピレン系重合体(A)として、比較的低融点である、プロピレンと共に、エチレン及び炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれるコモノマーとのポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)を選定するとにより、外観、物性がより優れたフィルムの成形が可能となる。
さらに、ポリ乳酸として融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸、より好ましくは融点200℃以上のステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸を選定することにより、安定した成形が可能となり、外観、物性の優れた積層フィルムを得ることができる。
さらに、本発明によれば透明性に優れ、かつ引裂強度とのバランスのよい包装材用積層フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ポリプロピレン系重合体(A)
本発明に用いられるポリプロピレン系重合体(A)には、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているポリオレフィン樹脂が例示される。これらは通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分としエチレン、他のα−オレフィンとの共重合体があり、例えば、プロピレンと共に、エチレン、炭素数4から10のα−オレフィン、例えばブテン、ヘキセン−1等のコノマーとのランダム重合体がある。
本発明においては、特にその融点が150℃以下であるポリプロピレン系重合体、中でもプロピレンと共に、エチレン及び炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれるコモノマーとの共重合体であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)を用いることが好ましい。
尚、これらポリプロピレン系重合体(A)は1種あるいは2種以上の組成物、例えば分子量が異なるプロピレンの単独重合体の組成物、プロピレン単独重合体とプロピレンとエチレン、あるいは炭素数4から10のα―オレフィンとのランダム共重合体との組成物であってもよい。
【0007】
ポリ乳酸(B)
本発明に用いられるポリ乳酸は、融点が140〜200℃のL−乳酸の重合体、D−乳酸の重合体であり、それぞれ、D−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%未満、中でも3重量%未満のポリ乳酸が好ましい。ここでD−乳酸若しくはL−乳酸の含有量が5重量%以上のものは融点が140℃未満、または非晶性ないし低結晶性となり、安定した成形が難しくなるおそれがある。これらの中では、融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸が好適である。
また本発明に係わるポリ乳酸は、融点が200〜230℃のステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸を用いると、成形が不安定となることを防止でき、特に好ましい。
なお、ポリ乳酸共重合体におけるD−乳酸含有量は、クロムバック社製ガスクロマトグラフCP CYCLODEX B 236Mを用いて測定した値である。
本発明において使用することのできるポリ乳酸としては、L−乳酸或いはD−乳酸の単独重合体、ポリ−L−乳酸に少量のD−乳酸を共重合したポリマー、ポリ−D−乳酸に少量のL−乳酸を共重合したポリマーが例示される。乳酸との共重合可能なコモノマーとしては、例えば3−ヒドロキシブチレート、カプロラクトン、グリコール酸などを共重合したものであってもよい。ポリ乳酸(B)の重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものを使用することができる。
【0008】
ポリ乳酸の重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの方法を採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
またステレオコンプレックス晶(SC晶)タイプのポリ乳酸は,例えば光学純度95%以上のポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸を2軸押出機で混練して得る方法があげられる。ポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸を併用する割合は、実質的に等量とする場合の他、得られるSC晶タイプのポリ乳酸の融点、物性などに応じて比率を変えることができる。
【0009】
ブロッキング防止剤(C1)
本発明においては、ポリプロピレン系重合体(A)からなる外層(II)、或いはポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)からなる外層(IIa)には、それらポリプロピレン系重合体(A)、或いはポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)の100重量部に対して、ブロッキング防止剤(C1)を、0.00〜3重量部、更には0.05〜1.0質量%を配合することが望ましい。
ブロッキング防止剤としては、シリカ(合成または天然の二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等の無機系のブロッキング防止剤、ポリメチルメタクリレート、ホリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等の有機系ブロッキング防止剤が例示される。これらの中では、ポリメチルメタクリレート、合成シリカが分散性、透明性、傷つき性、ブロッキング防止性等のバランスから好適である。また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、クエン酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、シランカップリング剤等を用いることができる。これらブロッキング防止剤の形状は限定されず、球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状等任意の形状とすることができ、その平均粒径は、通常0.5から12ミクロン(μm)程度である。これらの中では、平均粒径0.1から12ミクロン(μm)のシリカが好適である。 これらのシリカの市販品には、サイリシア〔富士シリシア化学(株)製、商品名〕、ヒューズレックスクリスタライト〔タツモリ(株)製、商品名〕などがある。
【0010】
相溶化剤(D)
本発明においては、中間層(I)を構成するポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)に、必ずしも相溶化剤(D)を使用する必要はないが、場合によっては使用することも行われる。
そのような場合に用いられる相溶化剤(D)としては、従来公知のものがあり、中でもオレフィン・(メタ)アクリレート系共重合体、エポキシ基含有オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性ポリマー、炭化水素樹脂、ポリ乳酸と他の樹脂との分散体の群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤(D)が好適に用いられる。
相溶化剤(D)は、プロピレン系重合体(A)、ポリ乳酸(B)及び相溶化剤(D)の合計を100重量部として、相溶化剤(D)を、0.01〜10重量部とすることが通常である。
これら相溶化剤(D)は、併用することが好ましい。併用する場合は、その合計量は10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。相溶化剤の量が10重量部より多いと安定した成形が難しくなるおそれがある。
オレフィン・(メタ)アクリレート系共重合体には、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、プロピレン・アクリレート共重合体などを挙げることができる。
エポキシ基含有オレフィン系重合体には、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA)が挙げられる。
その他相溶化剤(D)には、マレイン酸変性ポリマー並びに炭化水素樹脂を挙げることができる。
これらの相溶化剤(D)は、ポリプロピレン系重合体(A)及びポリ乳酸(B)からなるポリマー成分における各成分の均一混合、優れた分散性に寄与する。
【0011】
エチレン−メチルアクリレ−ト共重合体(EMA)
EMAは、エチレンモノマーにアクリル酸メチルエステルを共重合させたポリマーであり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とよく相溶し、ポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)から積層フィルムを得る際の相溶化剤として優れている。
市販品として、エルバロイAC〔三井デュポン社製、商品名〕等がある。
【0012】
エチレン−エチルアクリレ−ト共重合体(EEA)
EEAは、エチレンモノマーにアクリル酸エチルエステルを共重合させたポリマーであり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とはよく相溶し、ポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)から積層フィルムを得る際の相溶化剤として優れた効果を有する。
市販品として、エルバロイAC〔三井デュポン社製、商品名〕等が挙げられる。
【0013】
エチレン-メタクリル酸共重合体
EMMAは、エチレンモノマーにメタクリル酸メチルモノマーを共重合させた樹脂であり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。
EMMAは、エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とはよく相溶し、ポリプロピレン系重合体(A)とポリ乳酸(B)から積層フィルムを得る際の相溶化に優れた効果を有する。市販品として、エルバロイAC〔三井デュポン社製、商品名〕等が挙げられる。
【0014】
エチレン−グリシジルメタクリレ−ト共重合体(E−GMA)
E−GMAは、グリシジルメタクリレートとエチレンを共重合させたポリマーであり、エチレン系特殊コポリマーとして知られている。
エチレン系樹脂でありながらポリエステル極性樹脂とはよく相溶し、ポリプロピレンとポリ乳酸のポリマーから積層フィルムを得る際の相溶化剤としての優れた効果を有する。
市販品として、ボンドファスト〔住友化学社製、商品名〕等が挙げられる。
【0015】
不飽和カルボン酸変性ポリマー
不飽和カルボン酸変性ポリマーは、不飽和カルボン酸又はその無水物、そのエステル(ハーフエステルを含む)で変性されたポリマーである。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、さらにはこれらの誘導体、例えばこれらの酸とモノエポキシ化合物とのエステル化合物などであってもよい。
中でも、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステル(ハーフエステルの場合がある)をポリオレフィン、スチレン系エラストマー等に導入してマレイン酸系の官能基を有するポリマーである。このようなポリマーとして、無水マレイン酸変性SEPS、無水マレイン酸変性SEBSなどがあり、さらにエチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸3元共重合体(たとえば、住化シーディエフ化学製の商品名ボンダインなど)がある。
これらの中でも、ポリエチレン等のエチレン系重合体、ポリプロピレン等のプロピレン系重合体にマレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸エステルを導入したマレイン酸系変性ポリオレフィンが好適である。
市販品として、三井化学株式会社社製、商品名アドマー、三菱化学株式会社製の商品名モディック等が挙げられる。
【0016】
炭化水素樹脂
炭化水素樹脂としては、石油樹脂も使用することができ、クマロン・インデン樹脂、p−第三−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、テルペン・フェノール樹脂及びキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂、β―
ピネン樹脂、α―ピネン樹脂、ジペンテンベース樹脂及びスチレン変成テルペン樹脂、合成ポリテルペン樹脂等のテルペン系樹脂、極性基を有しないテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂及び水素添加炭化水素樹脂等の石油系炭化水素樹脂、ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロール・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジンのペンタエリスリトール・エステル、水素添加ロジンのメチル・エステル、水素添加ロジンのトリエチレングリコール・エステル、ロジンエステルの金属塩及び酸価10以下の特殊ロジンエステル等のロジン誘導体、ジシクロペンタジエン等を原料から得られるDCPD系炭化水素樹脂等があり、常温で液体、または融点が200℃以下のもの範囲のものが好適である。
融点が200℃より高い炭化水素樹脂は、成形に軟化し難く安定した成形を阻害するおそれがある。
【0017】
ポリ乳酸と他の樹脂との分散体
ポリ乳酸と他の樹脂との分散体には、ポリ乳酸に予め他の樹脂を配合分散した分散体であって、ポリブチレンテレフテレートアジペート(PBTA)中にポリ乳酸を分散したBASF社製Eco−vio等を挙げることができる。
本発明の好適な態様においては、相溶化剤(D)として、上記の群から選ばれる少なくとも1種の相溶化剤(D)が用いられる。
【0018】
本発明の積層フィルムの組成には、上記の各成分の他に、フィルムの優れた諸物性を発揮させ、維持するために必要に応じて、以下の各成分を配合することが行われる。
すなわち、ポリプロピレン系重合体(A)及びポリ乳酸(B)からなるポリマー成分には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本
発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
耐熱安定剤(酸化防止剤)としては、例えば、3,5―ジーt−ブチルー4−ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5―ジーt―ブチルー4―ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n−オクタデシルー3−(4'―ヒドロキシー3,5−ジーt―ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート等が挙げられる。
【0019】
帯電防止剤としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、高級脂肪酸のグリセリンエステル類、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0020】
本発明の積層フィルムは、ポリプロピレン系重合体(A)及びポリ乳酸(B)からなる中間層(I)とポリプロピレン系重合体(A)からなる外層(II)から構成される。ポリプロピレン系重合体(A)としては、上記したようにプロピレンと共に、エチレン及び炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれるコモノマーとの共重合体であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)を用いることが好ましい。このような場合、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)とポリプロピレン単独重合体等を併用して、その物性を調整することが好ましく、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)を100から30重量部及びポリプロピレン単独重合体を0から70重量%とすることが行われる。
また、本発明の好適な態様として、一方の外層(IIA)を熱融着層として用いる場合は、その外層(IIA)をポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)とし、他方の外層(IIB)をそれよりも融点の高いポリプロピレン系重合体とする積層フィルムがある。このような場合、熱融着層となる外層(IIA)は、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)の単独あるいは、それとポリプロピレン単独重合体等を併用して、その物性を調整することが好ましく、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)を100から30重量部及びポリプロピレン単独重合体を0から70重量%とすることが行われる。
また、本発明の他の態様によれば上記の中間層(I)と、その片面、好ましくは両面に外層(IIa)として、ポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)から選ばれる重合体(A11)50〜100重量%、非結晶性ないし低結晶性ポリ乳酸(B3)0〜50重量%((A11)及び(B3)の合計で100重量%とする。)を共押出により積層成形された積層フィルムがある。
本発明の積層フィルムを得るには、上記する各成分を予め混合し、ポリマー成分が溶融する条件下において、混合した組成物、好ましくは二軸押出機により混練された組成物から、シート状物を押出成形して積層フィルムとされる。
ポリプロピレン系重合体(A)は50重量%以上であることが望ましい。また、ポリプロピレン系重合体(A)は、90重量%以下、中でも88重量%以下が好ましい。ポリプロピレン系重合体(A)が50重量%未満では安定した成形が困難となるおそれがあり、90重量%を越えると、相対的にポリ乳酸(B)の割合が10重量%以下となり、環境負荷低減効果が不十分となる。
【0021】
また本発明の積層フィルムにおいて、積層フィルムの全体を構成する成分中のポリ乳酸(B)の占める割合は10重量%以上、中でもなかでも18重量%以上となるよう構成することが望ましい。そして、また、ポリ乳酸(B)の占める割合は50重量%以下となるように構成することが必要である。ポリ乳酸(B)の占める割合が10重量%未満では環境負荷低減効果が不十分であり、50重量%を越えると、ポリ乳酸(B)の相が大きくなり、安定した成形性を損なうおそれがある。
【0022】
本発明の積層フィルムは、上記した各成分をそれぞれ上記の範囲でヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー等で混合後更に単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練等により原料組成物をとして、それらを用いて共押出成形して製造することが一般的である。
この中でも特に高回転の二軸押出機を具備した二軸延伸機で成形し、混練後ペレットとしないで、直接Tダイよりシートとして押出成形することが、ポリ乳酸相の凝集を抑えるために好ましい。
【0023】
本発明の積層フィルムの厚みは、一般に約10ミクロン(μm)から2ミリメートル(mm)であり、中でも約10ミクロン(μm)から80ミクロン(μm)のものが通常である。
積層フィルムの中間層(I)とその両面の外層(II)の厚さの比率は、一般には(II)//(I)//(II)の比率として、1:2:1ないし1:10:1程度であり、中間層(I)の厚さを厚くすれば、植物由来のポリマーの割合を高くすることができる。
さらに、本発明の積層フィルムは透明性に優れたものが好適であり、ヘイズ(%)が20%以下、さらには15%以下のものが好適であり、その光線透過率(%)は85%以上、中でも90%以上であるものが好適である。また、積層フィルムのなかでも、その引裂強度が2N/cmから40N/cm、中でも2N/cmから30N/cm、その中でも2N/cmから20N/cmの積層フィルムは、包装材として適度な引裂性を有しており、易引裂性包装材をはじめとする包装材に好適である。
【0024】
本発明の積層フィルムは、従来ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムが用いられていた用途に広く利用することができる。なかでも、各種の包装材として利用することができ、各種の袋状に二次成形して用いることも行われる。特に、溶断シール強度に優れているため、溶断シール袋として包装袋をはじめとする各種用途に用いることができる。
さらに、本発明の積層フィルムは、また、コールドシールにより製袋して包装をはじめとする上記の包装に用いることができる。コールドシールによれば、熱を使用することなくシールされるので,フィルムの熱収縮がおこることがない。
フィルムどうしの接合には、一般にかしめ、接着剤等が用いられ、接着剤としてはスチレン・ブタジエンラテックス、カゼイン等を使用することができる。 また凹陥部の底に塗布する接着剤として、一般に、シリコン系の接着剤が使用される。接着剤としては、耐熱性の高いDFK(ジフェノール誘導体)樹脂接着剤や、熱硬化型のメラミン系接着剤が使用される。
また、アクリレート系接着剤、中でもα−シアノアクリレート系接着剤は被接着物表面や空気中の水分等のアニオン種により容易にアニオン重合を起こし、短時間で重合硬化することが知られており、この性質により幅広い材料を接着する瞬間接着剤として用いられている。
さらに、ポリオールとポリイソシアネートとの硬化反応を利用したウレタン系樹脂組成物は、耐久性、耐薬品性、伸長性、耐衝撃性等において優れた塗膜物性を示すことから、幅広く使用されている。 その他の接着剤としては、たとえば、ポリビニルアルコールとその架橋剤を含む水溶液やイソシアネート系接着剤、さらにはエポキシ樹脂や、UV硬化型樹脂を使用してもよい。
コールドシールによれば、プロピレンランダム共重合体などの加熱による収縮を防止することができ、更に加熱の必要がないため、エネルギー量も少なく環境負荷も低減され、生産設備が低コストとなり工程管理が容易になる。
本発明の積層フィルムを包装材として用いる場合は、例えば、冷凍食品及びチョコレート、ガム、キャンデー等の菓子類、化粧品等の嗜好品、また隠蔽性に優れることからカセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVD、ゲームソフト等の記録材料、およびそれらの集積包装材料等の、箱物包装の包装用フィルムとして好適に使用できる。
また、本発明の積層フィルムは、これら用途に限らず、例えば、ラーメン、うどん、そば、焼きそば等の即席カップ麺食品、ヨーグルト、プリン、ゼリー等の乳酸菌飲料のような飲料デザート類カップ食品の個別あるいは複数個等の包装用フィルム、さらには、エアゾール製品、インテリア製品、一般シュリンク包装、缶・瓶詰飲料、調味料などの集積シュリンクパックや、プラスチック容器、ガラス瓶などの胴張りシュリンクラベル、ワイン、ウイスキー等の瓶のキャップシール等、種々の包装用フィルム等に用いることができる。
【0025】
実施例
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
(1)ポリプロピレン系重合体(A)
(1−1)r−PP(ランダムPP)
株式会社プライムポリマー社製 商品名:F327
Tm :138℃ MFR:7(g/10分)
(1−2)h−PP(ホモPP)
株式会社プライムポリマー社製 商品名:F153ZG
Tm :160℃ MFR:3(g/10分)
(2)ポリ乳酸(B)
D−乳酸含有量:1.9重量%、
MFR(温度190℃、荷重2160g):6.7 (g/10分)
融点(Tm):168.0℃ ガラス転移点(Tg):59.8℃
密度 :1.28(g/cm
(3)ブロッキング防止剤(C1)
シリカ 平均粒径3ミクロン(μm)
(4)相溶化剤(D)
炭化水素樹脂
ジシクロペンタジエン系原料から得られるDCPD系炭化水素樹脂
分子量:132 融点:33.6℃ 沸点:170℃
【0026】
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)光学特性
積層フィルムを日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、光線透過率(TT:%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
(2)引張り試験
積層フィルムの試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、破断強度(MPa)、破断伸度(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
(3)ヒートシール強度(N/15mm)
積層フィルムの熱融着層面を重ね合せ、所定の温度で、幅5mmのシールバーにより、0.2MPaの圧力で1秒間、ヒートシールした後放冷した。これから15mm幅の試験片を切り取りクロスヘッド速度500mm/分でヒートシール部を剥離し、その強度をヒートシール強度とした。
(4)引裂き強度(N/cm)
軽荷重引裂試験機(東洋精機製作所製:振り子の左端に容量ウェイトB:79gを取り付け)を使用し、積層フィルムから引裂き方向に長さ63.5mm(長辺)及び引裂き方向と直角方向に幅50mm(短辺)の長方形の試験片を切出し、短辺の中央に端から12.7mmの切り込みを入れて複数枚の試験片を用意する。
その後、試験機の指針(置き針)が20〜80の範囲に収まるように、試験片を必要に応じて複数枚重ねて予備テストを行い、測定に用いる試験片の枚数を調整した後、引裂き試験を行い、以下の式により引裂き強度(N/cm)を求めた。なお、試験機の測定レンジ(R)は200とした。
T=(A×0.001×9.81×R/100)/(t)
T:引裂強度(N/cm) A:指針の指した値(g)
t:重ねた試験片の合計厚み(cm)
【0027】
実施例1
中間層(I)を構成する樹脂としてr−PP:h−PPの重量比が1:1のポリプロピレン系重合体を67重量部、ポリ乳酸30重量部、及び石油樹脂3重量部を東芝製二軸押出機を供給し、中間層用の混練組成物を得た。また、一方の外層(IIA)を構成する樹脂としてr−PP(シリカを1200ppm含む)を準備した。さらに、もう一方の外層(IIB)を構成する樹脂としてh−PP(シリカを1200ppm含む)を準備した。
次に、これら各層の原料を三菱重工製押出機に供給し、(IIA)//(I)//(IIB)の3層のフィルム(各層の厚さ (IIA)6ミクロン(μm)、(I)18ミクロン(μm)、(IIB)6ミクロン(μm))を成形した。得られた積層フィルムの物性を評価した。評価結果を表1に示す。
得られた積層フィルムは、十分なヒートシール強度がありヒートシール袋として使用することができ、溶断ヒートシール強度も十分にあり溶断シール袋として使用することができる。
実施例2
各層の厚さを(IIA)8ミクロン(μm)、(I)24ミクロン(μm)、(IIB)8ミクロン(μm))とする以外は実施例1と同様に行った。
得られた積層フィルムの物性を評価し、結果を表1に示す。得られた積層フィルムは、十分なヒートシール強度がありヒートシール袋として使用することができ、溶断ヒートシール強度も十分にあり溶断シール袋として使用することができる。
【0028】
表1 実施例1 実施例2
厚さ (ミクロン(μm)) 30 40
光学特性 HZ (%) 10.8 14.8
TT (%) 91.4 91.5
引張試験 MD方向
ヤング率 (MPa) 820 830
降伏点強度(MPa) 21.5 21.6
破断強度 (MPa) 38.2 41.3
TD方向
ヤング率 (MPa) 750 726
降伏点強度(MPa) 20.2 17.7
破断強度 (MPa) 20.1 17.6
ヒートシール強度 (N/15mm)
110℃ 0.3 0.2
120℃ 1.6 1.3
130℃ 8.4 7.1
140℃ 12 14
150℃ 14 15
160℃ 13 14
引裂強度 MD方向 (N/cm) 3.8 4.0


表1から、本発明の積層フィルムは包装用フィルムとして実用的な物性を有しており、特に引き裂き性がよいので、易開封用途の包装用フィルムに適していることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系重合体(A)50〜90重量%、ポリ乳酸(B)10〜50重量%((A)及び(B)の合計で100重量%とする。)からなる中間層(I)と、その両面のポリプロピレン系重合体(A)からなる外層(II)からなる積層フィルム。
【請求項2】
ポリプロピレン系重合体(A)が、プロピレンと共にエチレン、炭素数4から8のα−オレフィンから選ばれる1種以上のコモノマーとのランダム共重合体であって、その融点が150℃以下であるポリプロピレン系ランダム共重合体(A1)であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
ポリ乳酸(B)が融点140℃以上かつ200℃未満のα晶タイプのポリ乳酸(B1)であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
ヘイズ(%)が20%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
光線透過率(%)が85%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
引裂強度が2N/cmから40N/cmであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
請求項1から7のいずれかに記載の包装用積層フィルム。

【公開番号】特開2011−212842(P2011−212842A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80014(P2010−80014)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】