ポリ塩化ビニリデン樹脂成形物
【課題】 あらかじめ再生が可能なように変性されたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物を提供する。
【解決手段】 カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入した成形材料をシート状に成形してなる。無機系吸酸剤は、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる。滑性剤は、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる。
【解決手段】 カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入した成形材料をシート状に成形してなる。無機系吸酸剤は、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる。滑性剤は、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、魚肉ソーセージなどの食品の包装や樹脂製ラップ材として広範に用いられているポリ塩化ビニリデン樹脂成形物に関する。特に、その不良品や使用済み回収品を再生工程を経て再利用することを可能にするための対策を講じたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、ポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は食品の包装や食品などのラップ材として用いられている（たとえば、特許文献１参照）。このようなポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、薄いシート状に成形されていることなどにより、その製造工程では比較的多くの不良品が発生しているのが現状である。また、上記包装などに使用される従来のポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、加熱によって老化しやすく、しかも、再加熱によって分解を起こしやすい性質を有していたため、食品の包装やラップ材として供用された後の使用済み品は、従来より再生が不可能ないし困難であるとされていて、焼却や埋め立てなどの手段で処分されることが多く、再利用に供されることはほとんどなかった。
【０００３】
【特許文献１】特開２００３−１９２８６１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、食品の包装や食品などのラップ材として用いられるポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、その消費量が膨大であることを考慮すれば、不良品や使用済み品を回収して再利用することが望まれる。
【０００５】
そこで、本発明は、再生再利用が可能になるように変性されたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入した成形材料をシート状に成形してなる、というものである。上記無機系吸酸剤には、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる１種又は複数種を用いることが可能であり、上記滑性材には、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる１種又は複数種を用いることが可能である。
【０００７】
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の形状としては、シートないしフィルム状を選択することが可能である。シートないしフィルム状の成形物は、冒頭に記載した魚肉ソーセージなどの食品の包装や樹脂製ラップ材などの広範な用途に用いることが可能である。このポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は柔軟性を備え、難燃自己消火性、耐候性に優れているだけでなく、その不良品や使用済み品を回収して再生再利用することが可能である。再生のための工程には、不良品や使用済み品を回収して粉粒状又はペレット状に粉砕し、その粉砕物をカレンダー成形機や押出し成形機を用いて成形処理するという工程が含まれる。そして、そのような再生工程では、粉砕物が１４０〜１５０℃程度に加熱されて成形に適する流動性を持つようになる。再生工程では、成形性を高めるために可塑剤や安定剤といった加工助剤などの充填剤を添加することができるほか、着色剤を添加して着色された再生品を得ることも可能である。再生工程を経て得られるシートないしフィルム状のポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、食品の包装や食品などのラップ材として再使用することが可能である。
【発明の効果】
【０００８】
以上のように、本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、あらかじめ再生が可能なように無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入してあるので、従来は焼却や埋め立てなどによって廃棄処理されることを余儀なくされていたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の不良品や使用済み品を再生再利用することが可能になる。このため、焼却や埋め立てに伴う環境汚染の問題を軽減することに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入してなる成形材料をシート状に成形したものである。無機系吸酸剤が、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる１種又は複数種を用いることができ、滑性剤には、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる１種又は複数種を用いることができる。
【００１０】
無機系吸酸剤の添加量は７〜１０重量％が適切であり、添加量がこの範囲よりも少なかったり多かったりすると、カレンダー成形又は押出し成形に必要な流動性が得にくく、熱安定性や成形後の実用強度にも問題が生じる。添加量が７〜１０重量％であると、成形時の熱安定性が維持され、食品の包装材やラップ材としての用途に適する柔軟性や実用強度が保たれる。
【００１１】
滑性材の添加量は２〜３重量％が適切であり、添加量がこれにより少ないとカレンダー成形又は押出し成形に必要な流動性が得にくく、添加量がこれより多いと流動性が過剰になって成形性が低下する。添加量は２〜３重量％であると、適度の流動性が保たれて成形に適するようになる。
【００１２】
成形性を高めるために可塑剤や安定剤といった加工助剤などの充填剤を添加してもよい。また、着色剤を添加して着色された再生品を得ることも可能である。
【００１３】
再生されたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、塩化ビニリデン樹脂の特性をそのまま保有していて、難燃自己消火性、耐候性などに優れている。
【００１４】
図１は上記したポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の不良品や使用済み品を回収し、それをカレンダー成形機によってシートないしフィルム状に再生する工程を行うためのカレンダ成形機Ａを示した説明図、図２はポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の不良品や使用済み品を回収した後、シートないしフィルム状に再生する工程を行うための押出し機Ｂを示した説明図である。
【００１５】
図１において、１は、回収した不良品や使用済み品を粉砕することによって得られた粉砕物と上記した無機系吸酸剤及び滑性材との混合物を貯留するホッパーであり、このホッパー１内の混合物がコンベア２によって処理部３に送られる。そして、その混合物が処理部３で加熱されて適度の流動性を持つようになり、その後、ローラ群４の作用でシートないしフィルム状に成形される。
【００１６】
図２において、５は、回収した不良品や使用済み品を粉砕することによって得られた粉砕物上記した無機系吸酸剤及び滑性材との混合物を貯留するホッパーであり、このホッパー５内の混合物が押出し成形機６で加熱処理されながらダイ７からシートないしフィルム状に押し出され、その後、仕上げロール機構８やコンベア引取ロール機構９を経て給送され、切断機１０で一定長に切断されてスタッカ１１に収容される。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】カレンダ成形機を示した説明図である。
【図２】押出し機を示した説明図である。
【符号の説明】
【００１８】
Ａ カレンダー成形機
Ｂ 押出し機
【技術分野】
【０００１】
本発明は、魚肉ソーセージなどの食品の包装や樹脂製ラップ材として広範に用いられているポリ塩化ビニリデン樹脂成形物に関する。特に、その不良品や使用済み回収品を再生工程を経て再利用することを可能にするための対策を講じたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、ポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は食品の包装や食品などのラップ材として用いられている（たとえば、特許文献１参照）。このようなポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、薄いシート状に成形されていることなどにより、その製造工程では比較的多くの不良品が発生しているのが現状である。また、上記包装などに使用される従来のポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、加熱によって老化しやすく、しかも、再加熱によって分解を起こしやすい性質を有していたため、食品の包装やラップ材として供用された後の使用済み品は、従来より再生が不可能ないし困難であるとされていて、焼却や埋め立てなどの手段で処分されることが多く、再利用に供されることはほとんどなかった。
【０００３】
【特許文献１】特開２００３−１９２８６１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、食品の包装や食品などのラップ材として用いられるポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、その消費量が膨大であることを考慮すれば、不良品や使用済み品を回収して再利用することが望まれる。
【０００５】
そこで、本発明は、再生再利用が可能になるように変性されたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入した成形材料をシート状に成形してなる、というものである。上記無機系吸酸剤には、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる１種又は複数種を用いることが可能であり、上記滑性材には、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる１種又は複数種を用いることが可能である。
【０００７】
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の形状としては、シートないしフィルム状を選択することが可能である。シートないしフィルム状の成形物は、冒頭に記載した魚肉ソーセージなどの食品の包装や樹脂製ラップ材などの広範な用途に用いることが可能である。このポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は柔軟性を備え、難燃自己消火性、耐候性に優れているだけでなく、その不良品や使用済み品を回収して再生再利用することが可能である。再生のための工程には、不良品や使用済み品を回収して粉粒状又はペレット状に粉砕し、その粉砕物をカレンダー成形機や押出し成形機を用いて成形処理するという工程が含まれる。そして、そのような再生工程では、粉砕物が１４０〜１５０℃程度に加熱されて成形に適する流動性を持つようになる。再生工程では、成形性を高めるために可塑剤や安定剤といった加工助剤などの充填剤を添加することができるほか、着色剤を添加して着色された再生品を得ることも可能である。再生工程を経て得られるシートないしフィルム状のポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、食品の包装や食品などのラップ材として再使用することが可能である。
【発明の効果】
【０００８】
以上のように、本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、あらかじめ再生が可能なように無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入してあるので、従来は焼却や埋め立てなどによって廃棄処理されることを余儀なくされていたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の不良品や使用済み品を再生再利用することが可能になる。このため、焼却や埋め立てに伴う環境汚染の問題を軽減することに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明に係るポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入してなる成形材料をシート状に成形したものである。無機系吸酸剤が、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる１種又は複数種を用いることができ、滑性剤には、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる１種又は複数種を用いることができる。
【００１０】
無機系吸酸剤の添加量は７〜１０重量％が適切であり、添加量がこの範囲よりも少なかったり多かったりすると、カレンダー成形又は押出し成形に必要な流動性が得にくく、熱安定性や成形後の実用強度にも問題が生じる。添加量が７〜１０重量％であると、成形時の熱安定性が維持され、食品の包装材やラップ材としての用途に適する柔軟性や実用強度が保たれる。
【００１１】
滑性材の添加量は２〜３重量％が適切であり、添加量がこれにより少ないとカレンダー成形又は押出し成形に必要な流動性が得にくく、添加量がこれより多いと流動性が過剰になって成形性が低下する。添加量は２〜３重量％であると、適度の流動性が保たれて成形に適するようになる。
【００１２】
成形性を高めるために可塑剤や安定剤といった加工助剤などの充填剤を添加してもよい。また、着色剤を添加して着色された再生品を得ることも可能である。
【００１３】
再生されたポリ塩化ビニリデン樹脂成形物は、塩化ビニリデン樹脂の特性をそのまま保有していて、難燃自己消火性、耐候性などに優れている。
【００１４】
図１は上記したポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の不良品や使用済み品を回収し、それをカレンダー成形機によってシートないしフィルム状に再生する工程を行うためのカレンダ成形機Ａを示した説明図、図２はポリ塩化ビニリデン樹脂成形物の不良品や使用済み品を回収した後、シートないしフィルム状に再生する工程を行うための押出し機Ｂを示した説明図である。
【００１５】
図１において、１は、回収した不良品や使用済み品を粉砕することによって得られた粉砕物と上記した無機系吸酸剤及び滑性材との混合物を貯留するホッパーであり、このホッパー１内の混合物がコンベア２によって処理部３に送られる。そして、その混合物が処理部３で加熱されて適度の流動性を持つようになり、その後、ローラ群４の作用でシートないしフィルム状に成形される。
【００１６】
図２において、５は、回収した不良品や使用済み品を粉砕することによって得られた粉砕物上記した無機系吸酸剤及び滑性材との混合物を貯留するホッパーであり、このホッパー５内の混合物が押出し成形機６で加熱処理されながらダイ７からシートないしフィルム状に押し出され、その後、仕上げロール機構８やコンベア引取ロール機構９を経て給送され、切断機１０で一定長に切断されてスタッカ１１に収容される。
【図面の簡単な説明】
【００１７】
【図１】カレンダ成形機を示した説明図である。
【図２】押出し機を示した説明図である。
【符号の説明】
【００１８】
Ａ カレンダー成形機
Ｂ 押出し機
【特許請求の範囲】
【請求項１】
カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入した成形材料をシート状に成形してなるポリ塩化ビニリデン樹脂成形物。
【請求項２】
無機系吸酸剤が、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる１種又は複数種である請求項１に記載したポリ塩化ビニリデン樹脂成形物。
【請求項３】
滑性剤が、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる１種又は複数種である請求項１又は請求項２に記載したポリ塩化ビニリデン樹脂成形物。
【請求項１】
カレンダー成形又は押出し成形に適する添加物を含むポリ塩化ビニリデン樹脂組成物に、無機系吸酸剤と滑性剤とを追加して混入した成形材料をシート状に成形してなるポリ塩化ビニリデン樹脂成形物。
【請求項２】
無機系吸酸剤が、ハイドロタルサイト類、ゼオライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる１種又は複数種である請求項１に記載したポリ塩化ビニリデン樹脂成形物。
【請求項３】
滑性剤が、金属石鹸類、ポリエチレンワックス類、エステルワックス類、高級脂肪酸から選ばれる１種又は複数種である請求項１又は請求項２に記載したポリ塩化ビニリデン樹脂成形物。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００７−２９１２９７（Ｐ２００７−２９１２９７Ａ）
【公開日】平成１９年１１月８日（２００７．１１．８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１２３４９２（Ｐ２００６−１２３４９２）
【出願日】平成１８年４月２７日（２００６．４．２７）
【出願人】（５０６１４６９６５）有限会社ダイケイ化成 (1)
【出願人】（５０６１４６９５４）白頭化成有限会社 (1)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年１１月８日（２００７．１１．８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年４月２７日（２００６．４．２７）
【出願人】（５０６１４６９６５）有限会社ダイケイ化成 (1)
【出願人】（５０６１４６９５４）白頭化成有限会社 (1)
【Ｆターム（参考）】
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