ポリ塩化ビニル組成物の分析方法
【課題】被分析対象の物性(引張り伸び率,引張り強度等)を直接測定する一般的な手法よりも簡略化した方法であって、十分な感度および精度で劣化度合い,余寿命を判定し分析することを可能にする。
【解決手段】少なくともポリ塩化ビニル,可塑剤から成るPVC組成物を被分析対象とする分析方法であって、被分析対象と同一のポリ塩化ビニル,可塑剤から成るポリ塩化ビニル組成物において熱加速劣化処理することにより可塑剤含有率変化に対する引張り伸び率変化特性や引張り強度変化特性を予め得て(マスターカーブを得て)、被分析対象から抽出された可塑剤から可塑剤含有率を算出し前記の引張り伸び率変化特性や引張り強度変化特性と照合させて、前記の被分析対象の引張り伸び率や引張り強度を間接的に測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル組成物の分析方法に関するものであって、例えば油入変圧器,乾式モールド変圧器,開閉装置,配電盤,回転機等の各種機器に用いられているポリ塩化ビニル組成物の物性を測定し劣化度合い,余寿命等を分析するものである。
【背景技術】
【0002】
油入変圧器,乾式モールド変圧器,開閉装置,配電盤,回転機等の各種機器(電気設備機器等;以下、機器と称する)には種々の高分子材料組成物、例えば所望の絶縁性,弾性,耐応力性(機械的強度等),シール性,耐液性(電解液,有機化学溶液(油等)等に対する耐性),耐ガス性(絶縁ガス,有機化学ガス等に対する耐性),耐腐食性,耐熱性,耐寒性,耐候性(雨水,太陽光(紫外線等),温度・湿度変化等に対する耐性)等の物性を備えた組成物が適宜用いられている。その具体例としては、ポリ塩化ビニル,フタル酸ジエステル系の可塑剤(例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(以下、DOPと称する))等から成り、電線等の被覆材等として用いられている組成物(いわゆるポリ塩化ビニル電線(以下、PVC電線と称する)の外周側に用いられている中空状(円筒状等)のポリ塩化ビニル組成物(以下、PVC組成物と称する)等)が挙げられる。
【0003】
前記の高分子材料組成物は、例えば含有成分,機器の使用状況(使用環境,使用頻度等)に応じて時間経過と共に劣化(寿命(例えば、約10年〜15年程度の寿命)を有する)し、該機器において不具合が生じる恐れがあるため、該高分子材料組成物の研究が適宜行われている。
【0004】
例えば、PVC電線のPVC組成物の場合には、良好な相溶性を有するDOP等の可塑剤が一般的に用いられているものの、該可塑剤の分子構造中に芳香核が存在する場合、十分な耐寒性は得られないとされている。また、PVC電線の使用環境によっては、PVC組成物自体にひび割れ等が発生することが知られている。さらに、PVC組成物の分子構造が時間経過と共に変化(ポリ塩化ビニル,可塑剤等の劣化や塩素脱離反応,揮散等の変化)し、絶縁性,弾性,耐応力性等が低下すると推測されていた。
【0005】
このようなことから、高分子材料組成物において定期的な交換あるいは補修等のメンテナンスが行われている。近年においては、定期的に高分子材料組成物の一部(すなわち、被分析対象)を採取して物性を直接測定(例えば、単に切断して採取した被分析対象の物性を直接測定)して分析(劣化度合い,余寿命を判定)し、その分析結果に応じたメンテナンスを行い、例えばランニングコストを抑制することが検討されている。
【0006】
例えばPVC電線等の電線類においては、PVC組成物の弾性(引張り伸び率等)が低下すると絶縁性が低下する傾向を有することから、被分析対象の弾性を直接測定する手法が採られている。また、引張り伸び率が規格値150%以下になると該絶縁性が著しく低下することに着目し、被分析対象の引張り伸び率と規格値とに基づいて劣化度合い,該被分析対象の余寿命を判定し分析する手法が一般的に採られている。なお、前記の規格値は、電線類の製品信頼性保証を目的とするJIS規格(JIS Z 8301)に準拠した基準に相当するものである。
【0007】
この一般的な手法では、単に被分析対象の引張り伸び率等を直接測定する手法であるが、ばらつき(例えば、試験装置に応じた測定誤差)が生じ易いとされている。このため、例えば目的とするPVC電線から所定長さ(例えば1.5m長)のPVC組成物(被分析対象)を採取し、そのPVC組成物において複数等分(例えば10等分)に切断および不要な芯線の除去等の加工作業を行い、それら加工された各被分析対象の引張り伸び率の平均値を求め、その平均値と規格値とを比較して分析する手法が知られている。
【0008】
しかしながら、前記のような一般的な手法では、各分析毎において、過剰な量の被分析対象が必要になる(PVC組成物を過剰に採取する)恐れがある。また、前記の多量の被分析対象において、芯線の除去等の加工作業や引張り伸び率を直接測定する等の多大な手間,時間等を費やす恐れがある。
【0009】
その他にも、繰り返しねじれ力を与え、それによって生ずる反発トルクの信号の大小を求め、そのトルク値と、劣化状態が既知の電線・ケーブルによって測定され知られているトルク値と、を比較することにより、非破壊的で簡易かつ確実に活線状態のままで劣化度を判定評価する技術が知られている。
【特許文献1】特公平7−52150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上示したようなことから、被分析対象の物性(引張り伸び率,引張り強度等)を直接測定する一般的な手法よりも簡略化(例えば、採取するPVC組成物の量や、分析に要する手間,時間等を抑制)した方法であって、十分な精度で該物性を測定して分析でき、例えばメンテナンスに係るランニングコストの抑制に貢献できる方法の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題の解決を図るために、各種機器に適用され可塑剤(DOP等)を含有したPVC組成物を被分析対象とする分析方法であって、被分析対象中の可塑剤含有率を測定することにより、該被分析対象の物性を間接的に特定し十分な精度で分析できるものである。
【0012】
具体的に、請求項1記載の発明は、少なくともポリ塩化ビニル,可塑剤から成るポリ塩化ビニル組成物を被分析対象とする分析方法であって、前記ポリ塩化ビニル組成物を熱加速劣化処理することにより可塑剤含有率変化に対する引張り伸び率変化特性を予め得て、被分析対象から抽出された可塑剤から算出される可塑剤含有率を、前記の可塑剤含有率変化に対する引張り伸び率変化特性と照合させて、前記の被分析対象の引張り伸び率を間接的に測定することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、少なくともポリ塩化ビニル,可塑剤から成るポリ塩化ビニル組成物を被分析対象とする分析方法であって、前記ポリ塩化ビニル組成物を熱加速劣化処理することにより可塑剤含有率変化に対する引張り強度変化特性を予め得て、被分析対象から抽出された可塑剤から算出される可塑剤含有率を、前記の可塑剤含有率変化に対する引張り強度変化特性と照合させて、前記の被分析対象の引張り強度を間接的に測定することを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記の熱加速劣化処理の加速時間を10℃半減則により経過年数に換算し、該経過年数変化に対する可塑剤含有率変化特性を予め得て、被分析対象から抽出された可塑剤から算出される可塑剤含有率を、前記の経年変化に対する可塑剤含有率特性と照合させて、前記の被分析対象の経過年数を間接的に測定することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3記載の発明において、前記の可塑剤はソックスレー抽出法により抽出したことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4記載の発明において、前記の可塑剤はフタル酸ジエステル系の可塑剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜5記載の発明によれば、被分析対象の物性(引張り伸び率,引張り強度等)を直接測定する一般的な手法よりも簡略化(例えば、採取するPVC組成物の量や、分析に要する手間,時間等を抑制)された方法であって、被分析対象(PVC組成物)中の可塑剤の含有率を測定することにより、該被分析対象の物性を十分な精度で間接的に特定(例えば、物性の劣化度合いを特定)できる。
【0018】
また、請求項3記載の発明によれば、被分析対象の経過年数を十分な精度で間接的に特定(例えば、余寿命を特定)できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本実施の形態におけるPVC組成物の分析方法を図面等に基づいて説明する。
【0020】
本実施の形態は、各種機器に適用されているPVC組成物(被分析対象)において、時間経過と共に可塑剤含有率は減少するものの、その他のポリ塩化ビニル等自体は殆ど変化せず、該PVC組成物の引張り伸び率(引張り伸び率,引張り伸び残率),引張り強度と該可塑剤含有率との間においてそれぞれ特定の傾向の相関関係特性が存在する(例えば後述の熱加速劣化処理によって引張り伸び率特性線,引張り強度特性線(マスターカーブ)が得られる)ことに着目したものであって、該PVC組成物の物性を間接的に測定し分析する方法である。
【0021】
すなわち、少なくともポリ塩化ビニル,可塑剤から成るPVC組成物を被分析対象とする分析方法であって、被分析対象と同一のポリ塩化ビニル,可塑剤から成るポリ塩化ビニル組成物において熱加速劣化処理することにより可塑剤含有率変化に対する引張り伸び率変化特性や引張り強度変化特性を予め得て、被分析対象から抽出された可塑剤から可塑剤含有率を算出し前記の引張り伸び率変化特性や引張り強度変化特性と照合させて、前記の被分析対象の引張り伸び率や引張り強度を間接的に測定することを特徴とするものである。
【実施例】
【0022】
次に、種々の試料(被分析対象)を用い、検証例1〜5により熱加速劣化処理に対するPVC組成物の種々の変化を検証してから、実施例1,2によりPVC組成物の引張り伸び率や引張り強度を間接的に測定し、劣化度合い,余寿命を判定できる分析方法の具体例を示した。
【0023】
なお、後述の引張り伸び率,引張り強度の測定は、JIS規格C3005のゴム・プラスチック絶縁電線試験方法に準拠して、PVC電線の一部から採取され芯線が除去(必要に応じて長手方向に切り開き、芯線が残存しないことを確認)されたPVC組成物を試料(長さ150mmの試料)とし、該試料の中央部に50mm間隔の標線を付し、引張り速度を500mm/minに設定して行った。
【0024】
また、熱加速劣化処理は、10℃半減則(アレニウスの法則)に基づいて立案した方法により行った。具体的には、恒温槽(エスペック社製の「ハローそよかぜ」)を用い、該恒温槽による処理時間(以下、加速時間と称する),処理温度(以下、加速温度と称する)を設定して試料を加熱することにより行った。前記の加速時間,加速温度は、加速させる経過年数の程度(例えば、+10年,+20年,+30年相当の加速)に応じて、下記(1)式に基づき適宜設定、例えば試料の定格温度等を考慮し、KIV線で実績のある90℃を中心(90℃および105℃等)に設定した。前記の加速温度と基準温度(例えば、20℃)との差が大きくなる程、経過年数の加速は速くなり、たとえ前記の加速温度を比較的低く設定(例えば、70℃)した場合であっても、前記の加速時間を長く設定することにより、例えば前記の90℃を中心に設定した場合と同様の熱加速劣化処理を行うことができる。
【0025】
「加速時間(日)」=(「加速させる経過年数(年)」×365(日))/(2^((「加速温度」−「基準温度」)/10)) …… (1)。
【0026】
さらに、試料の劣化度合いや余寿命の判定基準となる引張り伸び率特性線や引張り強度特性線(マスターカーブ)の作成等を目的とする該試料中の可塑剤量の測定には、ソックスレー抽出法を適用した。このソックスレー抽出法による測定では、フラスコ,ナスフラスコ,マントルヒータ,冷却装置,温度計測器等から成るソックスレー抽出システムを用い、図1に示すようにナスフラスコ恒量工程S1a,被分析対象前処理工程S1b,抽出工程S2,冷却工程S3,算出工程S4を経て、可塑剤含有率の測定を行った。具体的に、前記のナスフラスコ恒量工程S1aでは、恒温槽(105℃)内でのナスフラスコの加熱(1時間),デシケータ内冷却(30分間),重量測定(恒量値±0.0005g以下)を繰り返し行った。被分析対象前処理工程S1bでは、PVC電線の一部(約1g)から採取され芯線が除去(必要に応じて長手方向に切り開き、芯線が残存しないことを確認)されたPVC組成物を試料として、該試料を粒状(約0.3mm大)に切断して電線約1gからを採取し、天秤により1gに秤量して円筒濾紙内に充填した。抽出工程S2では、フラスコ内への沸騰石(ガラス),ジエチルエーテル(130ml)を投入し、前記の円筒濾紙の所定箇所に設置し、冷却管内の温度(13℃)の確認を行ってから、マントルヒータの電源を入れフラスコ内の温度(約100℃)を確認しながら、該試料の抽出を行った(6時間連続)。冷却工程S3では、フラスコ内抽出液をナスフラスコ内へ移動させ、該フラスコ内壁をエチルエーテル洗浄(3回)し、該ナスフラスコ内の溶媒をエバポレータ除去した後、恒温槽(80℃)内でのナスフラスコの加熱(1時間),デシケータ内冷却(30分間),重量測定(恒量値±0.0005g以下)を繰り返し行って濃縮液(抽出された可塑剤)を得た。そして、算出工程では、フラスコ重量差引計算(「冷却工程S3時のナスフラスコ重量(可塑剤含む)/「ナスフラスコ恒量工程S1a時のナスフラスコ重量」×100=可塑剤含有率(%)に基づく計算)を行うことにより、可塑剤含有率を求めた。
【0027】
[検証例1]
本検証例1では、熱加速劣化処理によるPVC組成物の分子構造変化を検証した。まず、一般的な配電盤に適用される未使用のPVC電線(新品の2cm2KIV線)から採取し芯線が除去されたPVC組成物の試料S1を得て、FT−IR法により吸光度特性を測定し、その結果を図2のスペクトル特性線L1a(熱加速劣化処理なし)に示した。また、前記の試料S1を熱加速劣化処理することにより、所定の加速時間(10℃半減則により換算した経過年数が約15年に相当する加速時間)の劣化を施した後、スペクトル特性線L1aの場合と同様に吸光度特性を測定し、その結果を図2のスペクトル特性線L1b(熱加速劣化処理あり)に示した。
【0028】
図2に示す結果において、スペクトル特性線L1aと比較したスペクトル特性線L1bの吸光度減少度合いに着目すると、可塑剤由来の波長に係るピーク(1725cm-1)にて比較的大きく減少しているものの、その他の成分由来の波長に係るピークでは殆ど減少していないことが読み取れる。一般的に、PVC組成物自体を熱加速劣化処理すると、例えば該PVC組成物中において塩素脱離反応を起こすことが知られているが、図2に示す各スペクトル特性線L1a、L1bからは塩素脱離反応に由来する変化が観られなかった。
【0029】
したがって、PVC組成物においては、熱加速劣化処理により(換言すれば、時間経過(経年)と共に)可塑剤含有率は減少するものの、PVC等の成分自体は殆ど減少しないことを確認できた。
【0030】
[検証例2]
本検証例2では、熱加速劣化処理によるPVC組成物の引張り伸び率の変化,可塑剤含有率の変化を検証した。まず、熱加速劣化処理により種々の加速時間の劣化が施された試料S1において、それぞれ引張り伸び率の測定,ソックスレー抽出法による可塑剤含有率の測定を行った。
【0031】
そして、前記の各測定値と初期値(熱加速劣化処理前の引張り伸び率,可塑剤含有率)とを比較することにより、それぞれ引張り伸び残率,可塑剤剤量残率を算出し、それら各算出結果をそれぞれ図3の加速時間に対する引張り伸び残率変化特性線L1c、図4の加速時間に対する可塑剤量残率変化特性線L1dに示した。
【0032】
図3,図4に示す各特性線L1c,L1dから、熱加速劣化処理の加速時間が増加するに連れて、引張り伸び残率,可塑剤量残率は減少する傾向があることを読み取れる。
【0033】
したがって、PVC組成物は、熱加速劣化処理による加速時間と該PVC組成物の引張り伸び率(引張り伸び率,引張り伸び残率),可塑剤含有率(可塑剤量残率)との間において、それぞれ特定の傾向の相関関係特性が存在することを確認できた。
【0034】
[検証例3]
本検証例3では、種々のPVC組成物の引張り伸び率の変化を検証した。まず、一般的な配電盤に適用される未使用のPVC電線(新品の2cm2KIV線)3種類を用意し、それぞれの芯線を除去してPVC組成物の試料S2,S3,S4を得た。その後、前記の検証例2と同様に、熱加速劣化処理により種々の加速時間の劣化が施された各試料S2〜S4において、それぞれ引張り伸び率の測定,ソックスレー抽出法による可塑剤含有率の測定を行った。
【0035】
そして、引張り伸び率の測定値と初期値とを比較することにより、引張り伸び残率をそれぞれ算出し、それら算出結果をそれぞれ図5の加速時間に対する引張り伸び残率変化特性線L2(試料S2),L3(試料S3),L4(試料S4)に示した。また、前記の試料S2,S3,S4の各引張り伸び率の測定値において、図6の可塑剤含有率変化に対する特性図としてまとめて示した。
【0036】
図5に示すように、各試料S2〜S4における加速時間に対する引張り伸び残率変化特性は、熱加速劣化処理による加速時間が増加するに連れて減少する傾向があるものの、その傾向(減少度合い)は各試料S2〜S4毎に異なっていることが読み取れる。一方、図6に示す結果から、たとえ試料S2〜S4がそれぞれ互いに種類の異なるものであっても、可塑剤含有率に対する引張り伸び率変化特性が略同一の特性線L2〜4(すなわち、可塑剤含有率と引張り伸び率とのマスターカーブ)で示されることが読み取れる。
【0037】
したがって、PVC組成物においては、たとえ種類が異なる場合(熱加速劣化処理による加速時間に対する引張り伸び率変化特性が異なる)であっても、該PVC組成物の引張り伸び率(引張り伸び率,引張り伸び残率)と可塑剤含有率との間においてそれぞれ略同一の傾向の相関関係特性が存在し、この特性線を可塑剤含有率と引張り伸び率とのマスターカーブとして適用できることを確認できた。
【0038】
[検証例4]
本検証例4では、まず、一般的な配電盤に適用される未使用のPVC電線(新品の2mm2KIV線)4種類を用意し、それぞれの芯線を除去してPVC組成物の試料S5,S6,S7,S8を得た。その後、前記の検証例2と同様のソックスレー抽出法による可塑剤含有率の測定を、各試料S5〜S8毎に3回行った。そして、前記の各測定値から平均値,標準偏差,変動係数を算出し、下記の表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
前記の表1に示す結果において、各試料S5〜S8における変動係数は比較的低いこと(3.49以下)から、PVC組成物の可塑剤含有率の測定にてソックスレー抽出法を適用した場合、十分な再現性を有することが読み取れる。
【0041】
[検証例5]
本検証例5では、まず、一般的な配電盤に適用される未使用のPVC電線(電子照射架橋された新品の0.2mm2電子ワイヤ線)を用意し、芯線を除去してPVC組成物の試料S9を得た。その後、前記の検証例4と同様のソックスレー抽出法による可塑剤含有率の測定を3回行った。そして、前記の各測定値から平均値,標準偏差,変動係数を算出し、下記の表2に示した。
【0042】
【表2】
【0043】
前記の表2に示す結果において、前記の表1に示す結果同様に、試料S9において変動係数が比較的低いこと(0.74)から、PVC組成物の可塑剤含有率の測定においてソックスレー抽出法を適用した場合、たとえPVC組成物の種類が異なっても、十分な再現性を有することが読み取れる。
【0044】
[実施例1]
本実施例1では、まず、一般的な配電盤に適用される未使用のPVC電線(新品の2mm2KIV線)を用意し、芯線を除去してPVC組成物の試料S10を得た。その後、前記の検証例3と同様に、熱加速劣化処理により種々の加速時間の劣化が施された試料S10において、それぞれ引張り伸び率の測定,ソックスレー抽出法による可塑剤含有率の測定を行った。
【0045】
そして、前記のように測定された加速時間に対する引張り伸び率特性,可塑剤含有率特性に基づいて、該可塑剤含有率と引張り伸び率特性との相関関係特性をマスターカーブMC1として図7に示した。また、前記の加速時間を10℃半減則により経過年数に換算し、該経過年数に対する可塑剤含有率の特性をマスターカーブMC2として図8に示した。
【0046】
図7に示すマスターカーブMC1において、JIS規格に準拠した規格値150%に着目すると、可塑剤含有率が20mass%以下の場合には試料S10の絶縁性が著しく低いことが読み取れる。また、前記のように可塑剤含有率が20mass%の場合には、図8に示すマスターカーブMC2を照合すると、試料S10の経過年数が40年程度であることが読み取れる。
【0047】
したがって、前記のように可塑剤含有率と引張り伸び率特性とのマスターカーブを得ることにより、例えば単に被分析対象の可塑剤含有率を測定するだけで、該引張り伸び率を間接的に測定し、劣化度合い等を判定し分析できることを確認できた。また、経過年数に対する可塑剤含有率のマスターカーブを得た場合には、該可塑剤含有率により被分析対象の経過年数を間接的に測定し、余寿命等を判定し分析できることを確認できた。
【0048】
[実施例2]
本実施例2では、前記の実施例1と同様に、熱加速劣化処理により種々の加速時間の劣化が施された試料S10において、それぞれ引張り強度の測定,ソックスレー抽出法による可塑剤含有率の測定を行った。
【0049】
そして、前記のように測定された加速時間に対する引張り強度特性,可塑剤含有率特性に基づいて、該可塑剤含有率と引張り強度特性との相関関係特性をマスターカーブMC3として図9に示した。また、前記の加速時間を10℃半減則により経過年数に換算し、該経過年数に対する可塑剤含有率の特性をマスターカーブMC4として図10に示した。
【0050】
図9に示すマスターカーブMC3において、引張り強度が25MPa以下の場合には、可塑剤含有率が20mass%以下であり、前記の実施例1の図7の結果を参照すると試料S10の絶縁性が著しく低いことが読み取れる。また、前記のように引張り強度が25MPa以下の場合には、図10に示すマスターカーブMC4を照合すると、実施例1の図8の結果同様に、経過年数が40年程度であることが読み取れる。
【0051】
したがって、前記のように可塑剤含有率と引張り強度とのマスターカーブを得ることにより、例えば単に被分析対象の可塑剤含有率を測定するだけで、該引張り強度を間接的に測定し、劣化度合い等を判定し分析できることを確認できた。また、経過年数に対する引張り強度のマスターカーブを得た場合には、該引張り強度により被分析対象の経過年数を間接的に測定し、余寿命等を判定し分析できることを確認できた。
【0052】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0053】
例えば、前述の実施例では可塑剤としてフタル酸ジ−2−エチルヘキシルを含むPVC組成物に関する具体例を挙げたが、その他のフタル酸ジエステル系を可塑剤として含むPVC組成物においても、同様の作用効果が得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施例に適用可能なソックスレー抽出法による測定の概略工程図。
【図2】検証例1における熱加速劣化処理に対する吸光度特性図。
【図3】検証例2における加速時間に対する引張り伸び残率変化特性図。
【図4】検証例2における加速時間に対する可塑剤量残率変化特性図。
【図5】検証例3における加速時間に対する引張り伸び残率変化特性図。
【図6】検証例3における可塑剤含有率に対する引張り伸び率変化特性図。
【図7】実施例1における可塑剤含有率と引張り伸び率特性とのマスターカーブを示す概略図。
【図8】実施例1における経過年数と可塑剤含有率とのマスターカーブを示す特性図。
【図9】実施例2における可塑剤含有率と引張り強度特性とのマスターカーブを示す概略図。
【図10】実施例2における経過年数と引張り強度とのマスターカーブを示す特性図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリ塩化ビニル,可塑剤から成るポリ塩化ビニル組成物を被分析対象とする分析方法であって、
前記ポリ塩化ビニル組成物を熱加速劣化処理することにより可塑剤含有率変化に対する引張り伸び率変化特性を予め得て、
被分析対象から抽出された可塑剤から算出される可塑剤含有率を、前記の可塑剤含有率変化に対する引張り伸び率変化特性と照合させて、前記の被分析対象の引張り伸び率を間接的に測定することを特徴とする塩化ビニル組成物の分析方法。
【請求項2】
少なくともポリ塩化ビニル,可塑剤から成るポリ塩化ビニル組成物を被分析対象とする分析方法であって、
前記ポリ塩化ビニル組成物を熱加速劣化処理することにより可塑剤含有率変化に対する引張り強度変化特性を予め得て、
被分析対象から抽出された可塑剤から算出される可塑剤含有率を、前記の可塑剤含有率変化に対する引張り強度変化特性と照合させて、前記の被分析対象の引張り強度を間接的に測定することを特徴とする塩化ビニル組成物の分析方法。
【請求項3】
前記の熱加速劣化処理の加速時間を10℃半減則により経過年数に換算し、該経過年数変化に対する可塑剤含有率変化特性を予め得て、
被分析対象から抽出された可塑剤から算出される可塑剤含有率を、前記の経年変化に対する可塑剤含有率特性と照合させて、前記の被分析対象の経過年数を間接的に測定することを特徴とする請求項1または2記載の塩化ビニル組成物の分析方法。
【請求項4】
前記の可塑剤はソックスレー抽出法により抽出したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の塩化ビニル組成物の分析方法。
【請求項5】
前記の可塑剤はフタル酸ジエステル系の可塑剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の塩化ビニル組成物の分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−327877(P2007−327877A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 天候,腐蝕または光に対する耐久性の調査
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査 | 定張力または定圧縮力によるもの
【出願番号】特願2006−159922(P2006−159922)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎
【Fターム(参考)】
耐候試験、機械的方法による材料調査 | 試験材料 | 非金属材料
耐候試験、機械的方法による材料調査 | 試験環境因子 | 熱
耐候試験、機械的方法による材料調査 | 制御対象 | 温度
耐候試験、機械的方法による材料調査 | 劣化測定手段 | 機械的
耐候試験、機械的方法による材料調査 | 試験装置の構成 | 試料の取扱い
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査方法;試験の仕方 | 引張試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査対象項目 | 弾性率 | 伸び弾性率(縦弾性係数)
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、材料 | 有機材料
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