説明

ポリ塩素化ビフェニルの分離方法および分析方法

【課題】迅速なPCB分離方法並びに分離されたPCBの分析方法を提供することを課題とする。
【解決手段】第一工程では、PCB含有有機液体の試料1をマイクロピペット3を用いて試料台2の平坦な面に載置し、試料1にスパーテル5で採取した油固形化剤4を添加し混合する。第二工程では、第一工程で得たPCB含有有機液体1と油固形化剤4との混合物7を放置して、試料1中に含まれていた有機液体が油固形化剤4により固形化された固形化物8と油固形化剤4によっても固形化されない液体残渣物9を得る。本発明の第三工程では、試料台2から上記固形化物8を取り除き、試料台2上の液体残渣物9を対象として飛行時間型二次イオン質量分析法によりPCBの定性分析および定量分析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁油や機械油などの有機液体中に含まれているポリ塩素化ビフェニル(以下、PCBと記す)の分離方法および分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気絶縁油に含まれている有害なPCBの無害化のために、それを電気絶縁油から容易に分離する技術、並びに分離されたPCBの効果的な無害化処理施設の設計、立地条件、運転条件の確立のために分離されたPCBの定性分析や定量分析方法の確立が要求されている。
【0003】
電気絶縁油からのPCBの分離技術に関しては、従来から極性を有する充填剤、例えばアミノプロピルシラン、シアノプロピルシラン、2,3−ジヒドロキシプロキシプロピルシランから選ばれる1種または2種以上の混合物を担持した充填剤を利用し、被検査試料に就いてカラムクロマトグラフ操作を行うことにより、前記試料中のPCBとPCB分析の妨害成分とを分離して採取する方法が後記特許文献1から公知である。その分離方法を説明すると、カラムを準備した後、展開溶媒としてn-ヘキサンを用い、漏斗からカラムに十分な量を流し込んでコンディショニングを行い、PCB含有絶縁油からのヘキサン抽出液を充填剤の上部に垂らす。さらに、十分な量のn-ヘキサンを漏斗からガラス管に流し込む。分離された有機成分は、カラムの下部から順に滴下される。最初のうちは分析の妨害成分のみが流出するので、妨害成分採取用の容器を置き、それに溶出液を採取する。妨害成分がすべて溶出してから、採取容器をPCB分析用の容器に交換する。妨害成分がすべて溶出した後はPCBが溶出する。このPCB含有溶出液を容器に採取した後、ロータリーエバポレーターにより濃縮を行い、20〜50マイクロリッター(以下、μl)に定容し、ガスクロマトグラフ質量分析計に注入して測定する。
【0004】
ところでカラムクロマトグラフ法では、一般にカラムのコンディショニングが必要であり、またPCBの電気絶縁油からの分離に展開溶媒を用いて展開していくが、溶媒がカラムの中を流れる速度は非常に遅く、かつ妨害成分が先に出るので電気絶縁油からPCBを取り出すのに時間がかかり、このために特許文献1の技術では6時間以上を要している。
【特許文献1】特開2003−114222号公報(請求項1、請求項2、段落番号31)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなPCB分離技術においては、展開溶媒をあらかじめ流してカラムを調整する必要があり、このために電気絶縁油とPCBとの分離に長時間を要し、且つPCBの分析においては電気絶縁油が分析を妨害する、などの問題があった。本発明は、上記のような問題点を解決するために、より迅速なPCB分離方法並びに分離されたPCBの分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のPCB分離方法は、ポリ塩化ビフェニールを含む有機液体に油固形剤を混合する第一工程、および上記第一工程で得られた混合物を放置して上記油固形剤にて固化した上記有機液体と固化せずに残留する上記ポリ塩化ビフェニールとを得る第二工程を含むことを特徴とするものである。
【0007】
本発明のPCB分析方法は、ポリ塩化ビフェニールを含む有機液体に油固形剤を混合する第一工程、および上記第一工程で得られた混合物を放置して上記油固形剤にて固化した上記有機液体と固化せずに残留する上記ポリ塩化ビフェニールとを得る第二工程、および上記第二工程で残留する上記ポリ塩化ビフェニールを定性分析および定量分析のいずれか一方または両方を行う第三工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のPCB分離方法によれば、上記有機液体は、上記油固形剤にて固化するが、PCBは固化しないので、頗る簡単に両者を分離することができ、しかも有機液体と油固形剤とからなる固化物にはPCBが実質的に残留していないので、かく分離されたPCBの定性分析および定量分析は、前記従来技術におけるような分析妨害物質が存在しないので頗る容易であり、しかも微量のPCB成分に就いてもごく短時間で正確な分析が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、PCBを含む有機液体がPCB分離方法並びにPCB分析方法の対象とされる。なお以下において、ポリ塩化ビフェニールを含む有機液体をPCB含有有機液体と称し、当該PCB含有有機液体の母体となる上記有機液体を単に有機液体と称する。
有機液体としては、用途上から挙げると、例えばトランス油、コンデンサ油、油含浸電力ケーブル(OFケーブル)に使用されているOFケーブル油などの電気絶縁油類、スピンドル油、潤滑油、ミシン油などの機械油類などであり、化学構造上から挙げるとパラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油、芳香族系鉱物油などの鉱物油類、ポリブテン油、アルキルべンゼン油、シリコン油などの合成絶縁油類などである。上記有機液体としては、上記した油類の一種あるいは二種以上の混合物であってもよいが、20℃における屈折率(nD)が1.55以下、特に1.4〜1.5の低極性であって、且つ40℃における動粘度が200センチストークス以下、特に5〜50センチストークスの低粘度のものはポリ塩化ビフェニールの分離性が一層良好であるので好ましい。就中、炭化水素油、特に20℃における屈折率(nD)が1.45〜1.5程度のナフテン系鉱物油が好ましい。
【0010】
上記炭化水素油としては、炭素と水素以外に窒素、硫黄、酸素、あるいはその他の元素が上記屈折率範囲に影響しない程度の少量であれば含有していてもよい。通常の鉱物油を構成する炭化水素は、主としてパラフィン炭素、ナフテン炭素、および芳香族炭素から形成されており、いまパラフィン炭素、ナフテン炭素、および芳香族炭素の各含有率をそれぞれ%Cp、%Cn、%Caとすると、上記ナフテン系鉱物油は、%Cnが30〜45%のものである。なお鉱物油の%Cp、%Cnおよび%Caは、斯界ではよく知られた屈折率、密度、および動粘度を用いるn・d・M環分析により定量することができる。
【0011】
本発明において、PCB含有有機液体から分離、分析の対象とされるPCBに就いては特に制限はなく、ビフェニールの10個の水素の一部または全部が塩素で置換されたものの1種あるいはそれらの混合物、例えば三塩化物PCB、四塩化物PCB、五塩化物PCB、六塩化物PCBなど、あるいはそれらの混合物などである。
【0012】
油固形剤は、PCB含有有機液体と混合することによりPCB含有有機液体中の有機液体を固形化するとともに含有PCBは固形化せず、しかしてPCBを固形化した有機液体から分離する機能をなす。本発明において油固形剤としてはかかる機能をなす限り、斯界で従来から周知あるいは公知の材料、例えば特開平7−133383号公報に記載されたものなどが使用可能であるが、上記有機液体と混合すると、自体の分子配向に基づいて網目構造を形成して上記有機液体を固形化する固形用有機ゲル化剤、または上記有機液体と混合すると上記有機液体を吸収膨潤して上記有機液体を固形化する固形用有機高分子が好ましく、就中、SP値が8以下のものが特に好ましい。なお油固形剤のSP値は、接着の化学と実際(黄慶雲著、高分子刊行会、第23頁、1975年)に記載されたSmallの下式(1)から求められる。
SP=dΣG/M・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ここにdは、25℃における密度であり、ΣGは、分子中の原子と原子団に就いての分子引力恒数の総和であり、Mは、分子量である。SP値が8以下の油固形剤は、有機液体とPCBとの分離機能が一層良好であるので、PCB含有有機液体から分離された有機液体と油固形剤との混合物の固形物中にはPCBは実質的に残存せず、あるいは残存するとしても0.01重量%以下の極少量であって、分離PCB量の通常の定量上では問題とならない。
【0013】
固形用有機ゲル化剤の好ましいものとしては、炭素数が少なくとも14の脂肪族カルボン酸およびその誘導体類、例えば12−ヒドロキシステアリン酸が例示される。固形用有機高分子の好ましいものとしては、ポリオレフィン類、就中、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂などの樹脂類、ブチルゴム、エチレンープロピレンゴム、エチレンープロピレンゴムなどのゴム類が例示される。油固形剤の使用量は、PCB含有有機液体100重量部あたり少なくとも2重量部、好ましくは、5〜10重量部である。つぎに実施の形態により本発明を一層詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、図1a〜図1eからなり、本発明のPCB分離方法および分析方法における実施の形態1を説明する工程図である。本発明の第一工程では、図1aに示すようにPCB含有有機液体1を、マイクロピペット3を用いて試料台2の平坦な面に載置する。ついで図1bに示すように、試料台2の上記面上のPCB含有有機液体1にスパーテル5で採取した油固形化剤4を添加し混合する。
【0015】
本発明の第二工程では、第一工程で得たPCB含有有機液体1と油固形化剤との混合物7を放置して、図1dに示すようにPCB含有有機液体1中に含まれていた有機液体が油固形化剤4により固形化された固形化物(当該有機液体と油固形化剤4との混合体)8と油固形化剤4によっても固形化されない液体残渣物9を得る。液体残渣物9には、PCB含有有機液体1に含まれていたPCBが含まれていて、かくしてPCB含有有機液体1中の有機液体とPCBとが分離される。なお油固形化剤として前記固形用有機高分子を使用した場合には、多くの場合、PCB含有有機液体1に当該固形用有機高分子の細片を投入して室温下で放置するだけで良い。一方、油固形化剤として前記固形用有機ゲル化剤を使用した場合には、多くの場合、スパーテル5にてPCB含有有機液体1と油固形化剤4とを充分にかき混ぜて両者が均一混ざり合う様にし、ついで図1cに示すようにPCB含有有機液体1と油固形化剤4とを載置した試料台2をホットプレート6の上に移して加熱し、その後試料台2をホットプレート6から降ろして放冷すれば良い。上記の加熱は、使用した固形用有機ゲル化剤の種類によって多少異なるが、一般的には50〜100℃で1〜5分程度が適当である。
【0016】
本発明の第三工程では、図1eに示すように、試料台2から上記固形化物8をピンセット10を用いて取り除き、試料台2の表面に液体残渣物9を残留させ、液体残渣物9に就き、液体残渣物9中に含まれているPCBの定性分析および定量分析のいずれか一方または両方を行う。本発明において、かかる定性分析および定量分析のいずれもは、従来から周知あるいは公知の方法で行ってよい。その際に注目すべきことは、本発明の上記したPCB分離方法により分離された液体残渣物9中には、従来から分析妨害物質として知られている上記有機液体が分離除去されているので、PCBの分析が従来のPCBの分析の場合と比較して格段に迅速且つ正確に行える効果のあることである。なお、PCBの具体的な定性分析および定量分析方法例については後記する。
【0017】
液体残渣物9中には、通常、前記した複数のPCB成分が含まれていて、個々のPCBの定性分析および定量分析は、例えばガスクロマトグラフ(ECD−電子捕獲型検出器付)分析、ガスクロマトグラフ質量分析、飛行時間型二次イオン質量分析によるなどにより可能であるが、そのうちでも飛行時間型二次イオン質量分析は他の分析より少量の試料にて頗る短時間で分析可能であるので特に好ましい。当該分析に使用される飛行時間型二次イオン質量分析装置(以下、SIWS)は、斯界ではよく知られているものであるが、例えば測定対象物質をイオン化させる一次イオンパルスビーム発生部、測定対象物質が付着した基板を保持する基板保持部、イオン化により発生する二次イオンを質量分析計に導入するイオン引出部、イオンを質量数/イオン価数比(m/z)毎に分離する飛行時間型質量分析部、二次イオンを検出する検出部、および基板上の一次イオン照射位置を観察するカメラ部を含む構成があれば良い。
【0018】
上記一次イオンパルスビーム発生部としては、イオン源としてガリウム液体金属イオン源が使用でき、イオン照射のエネルギーは15keV程度まで照射可能なものであって、イオンドーズ量を1013atoms/cm以下程度に調整可能なイオン源であれば良い。上記基板保持部としては、測定対象物質が付着した基板を横方向と縦方向に移動させることが可能なX−Yステージを具備していることが望ましい。イオン引出部と飛行時間型質量分析部としては、質量数/イオン価数比(m/z)=0〜700程度の範囲を検出可能なものであって、質量分解能はM/△M=5000程度以上あれば良い。上記検出部としては、正イオンを検出可能なものであって光電子倍増管、シングルチャンネルプレート、およびシンチレータを組み合わせた検出器あるいは単独に具備されたものがあれば良い。上記カメラ部としては、光学顕微鏡とCCDカメラとを組み合わせたものや単独に具備されたものなどでよい。就中、スタティック−SIWSは、イオンドーズ量を1013atoms/cm以下程度に調整可能であって、しかも極小量の試料、例えば10〜50μl程度にて短時間で分析が可能であるので好ましい。一方、総PCBの定量性分析は、例えば以下の諸方法で可能である。
【0019】
なお図1に示す試料台2としては、一般的には平坦な面を有しない、例えば椀状あるいはその他の形状のものであってもよい。しかしSIWSを使用する場合には、測定対象とする試料面が曲面や凹凸面を有すると、最適な一次イオンビームの照射および二次イオンの検出が困難になる。もっとも曲面や凸凹面の試料台を用いて残留した液体残渣物9を適当な方法で平坦な試料台に移してSIWS分析することは可能ではある。しかしその場合は、操作工程が増えて迅速な分析が達成できない、残留物を移動させる操作は測定精度・再現性を著しく低下させる、などの問題があるので、試料台2としては、平坦な面を有するものが好ましい。
【0020】
第一の総PCBの定量性分析は、1種類(塩素数の同じもの)のPCB、例えば4塩素化PCBに就いて、PCB公定法にて標準値獲得済みの標準試料を用い、上記した分析方法、例えばSIWSにより標準値と検出強度の検量線を作成する。つぎに未知試料に対して同様の分析を行い、その際の検出強度から4塩素化物濃度を求める。その他の各PCBに就いても4塩素化物の場合と同様の標準試料による検量線を作成し、同様な方法で未知試料中の濃度を求め、各PCBの濃度を和から総PCB量を求める。第二の総PCBの定量性分析は、特定のPCB濃度値、例えば4塩素化物濃度を上記第一の総PCBの定量性分析法で求め、PCB公定法にて得た総PCB濃度との相関を求め、その相関式からPCB公定法で求められる総PCB濃度に換算する。
【0021】
上記第二方法は、上記第一方法より正確度は低いが、例えば3〜6塩素化物の測定のみでPCB公定法分析値に換算して上記第二方法を採用しても、多くの場合に良い精度で総PCB定量が可能である。その理由は、トランス油などの廃油に含まれるPCBは3〜6塩素化物が80〜90重量%以上を占めている事実による。
【0022】
実施の形態2.
PCB含有有機液体1の一例として、廃トランスに充填されていたPCBを含む電気絶縁油(以下、絶縁油A)を分離分析の対象とし、これをヘキサン(和光純薬工業製、液体クロマトグラフィー用)で10倍希釈した溶液を試料1として用いた。絶縁油Aは、20℃における屈折率(nD)が1.48、40℃における動粘度が8センチストークスのナフテン系(シクロアルカン)の鉱物油とPCBとの混合物であって、当該PCBの総含有量は85重量%であり、4塩化物PCBの含有量は29重量%である。絶縁油A中の上記総PCB含有量および4塩素化物PCB含有量は、廃油中PCB含有量の公定分析法である特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法(平成4年厚生省告示第192号、改正平成12年)を用いて定量したものである。なお本発明において、絶縁油Aなどの有機液体をヘキサンあるいはその他の溶媒にて希釈する必要は必ずしもないが、希釈して有機液体の粘度を下げることにより油固形化剤との混合溶解が容易となり、延いては油固形化剤による有機液体とPCBとの分離性の再現性が向上する効果がある。油固形化剤としては、固形用有機ゲル化剤の一種である12−ヒドロキシステアリン酸(SP値;7.9)を主成分とするライオン株式会社製油固形化剤(商品名;UK)を用いた。以下に前記実施の形態1において図1を用いて説明した分離分析の手順に従って、試料1に就いての分離分析方法を説明する。
【0023】
試料1の50μlをマイクロピペット3を用いて試料台2である銀製の平らな基板の上に載置し、スパーテル5を用いて固体の油固形化剤4の0.002gを試料台2上の試料1上に載せ、試料1と油固形化剤4とを混合した。なお上記の銀製基板として、SIWSによる分析用のアルドリッチ社製(アメリカ合衆国)の100mm角銀箔(厚さ;0.125mm,銀純度;99.99重量%)を15mm角に切断して用いた。液体の試料1に固体の油固形化剤4を加えただけでは、それは溶解せずに分散状態にある。よって次に当該分散体が載置された試料台2をホットプレート6の上に移し、80℃で5分間加熱した。固体の油固形化剤4は、この加熱により液体化して液体の試料1に溶解し、かくして試料1に油固形化物4が良好に溶解した液体状の混合物7が得られた。
【0024】
次に、混合物7が載置された試料台2をホットプレート6から降ろして室温まで放冷し、かくして固形化物8と液体残渣物9が得られた。その際、試料1に含まれるナフテン系鉱物油は、油固形化剤4の作用によって液体の状態から固体の状態に変化し、PCBは油固形化剤4で固形化されないので、固形化物8と試料台2の間に液体残渣物9として存在した。次に、試料台2の上の固形化物8をピンセット10を用いて試料台2から除去した。なお上記一連の工程に要した時間は、10〜15分程度であった。上記操作によってナフテン系鉱物油から分離されたPCBを含む液体残渣物9は、以下に示す方法で分析した。即ち、上記液体残渣物9が存在する試料台2の表面をSIWSにて分析した。当該SIWSとして、アルバックファイ社製(アメリカ合衆国)の商品名TRIFT2を使用し、測定条件は、一次イオンとして69Gaイオンを使用し、測定質量範囲はm/z=1〜1000とし、質量分解能はδM/M=5000とした。
【0025】
図2は、液体残渣物9におけるの正イオンの質量スペクトルである。同図に示すように、正イオン質量スペクトルにはm/z=395〜405付近に4塩素化物PCBに由来する(C12Cl+Ag)イオンの大きいピークが認められた。また図3に示すように、4塩素化物PCB以外の3塩素化物PCBおよび5塩素化物PCBに由来して、それぞれm/z=360〜370付近に(C12Cl+Ag)イオン、m/z=430〜440付近に(C12Cl+Ag)イオンの各ピークが認められた。また図4に示すように、6塩素化物PCBに由来してm/z=465〜475付近に(C12Cl+Ag)イオンのピークが認められた。上記正イオン質量スペクトルの結果から明らかなように、本分析方法により、絶縁油A中にPCBが含有されていることを確認する定性分析が可能となった。さらに上記ピークの最も強度の大きいピークの面積399(C12Cl+Ag)を、試料台2の銀基板に由来するm/z=216のピーク面積216Agで除して規格化した。図5は、この規格化したピーク面積比である、399(C12Cl+Ag)216Agを、4塩素化物PCB(C12Cl)の含有量に対してプロットした図である。
【0026】
実施の形態3〜実施の形態5.
実施の形態3〜実施の形態5では、それぞれPCB含有有機液体1の他の例たる試料2〜試料4として、いずれも廃トランスに充填されていたPCBを含む電気絶縁油をヘキサン(和光純薬工業製、液体クロマトグラフィー用)で10倍希釈した溶液を用いた。実施の形態3での電気絶縁油(以下、絶縁油B)におけるPCBの総含有量は5.2重量%であり、4塩化物PCBの含有量は1.9重量%である。実施の形態4での電気絶縁油(以下、絶縁油C)におけるPCBの総含有量は0.21重量%であり、4塩化物PCBの含有量は0.088重量%である。実施の形態5での電気絶縁油(以下、絶縁油D)におけるPCBの総含有量は0.024重量%であり、4塩化物PCBの含有量は0.0070重量%である。なお試料2〜試料4における上記絶縁油B〜絶縁油Dに含まれている有機液体は、いずれも実施の形態1における絶縁油Aの場合と同じナフテン系鉱物油である。
【0027】
実施の形態3〜実施の形態5は、それぞれ試料2〜試料4を用いた以外は実施の形態2と同様にして、各残渣物9の正イオンの質量スペクトルを求めた。絶縁油B、CおよびD中の総PCB含有量およびPCB主成分の4塩素化物PCB含有量は公定分析法を用いて定量した。図6に絶縁油Dから得た液体残渣物9における正イオンの質量スペクトルを示す。図6に示すように、当該正イオン質量スペクトルには、m/z=395〜405付近に4塩素化物PCBに由来する(C12Cl+Ag)イオンの明らかなピークが認められた。
【0028】
上記正イオンの質量スペクトルから、実施の形態2の場合と同様にして求めた4塩素化物PCBのC12Clの規格化したピーク面積比である、399(C12Cl+Ag)216Agを、C12Clの含有量に対してのプロットを図5に示した。図5から明らかなように、4塩素化物PCBの規格化したピーク面積比と含有量とが良好な直線関係を示し、実施の形態2〜実施の形態5に示す分析方法により絶縁油A〜絶縁油D中のPCBの含有量の定量分析が可能となる。なお図示しないが、3塩素化物PCB、5塩素化物PCB、および6塩素化物PCBついても同様に良好な直線関係を示すプロットが得られた。即ちこれら実施の形態に示す分析方法は、短時間にしかも少量の試料でも精度良く絶縁油中の塩素数毎にPCBの含有量を定量分析することを可能にする。
【0029】
比較例1〜比較例4
前記実施の形態2〜実施の形態5とは、それぞれ油固形化剤4を使用せずに、換言すると各絶縁油中のナフテン系鉱物油とPCBとを分離することなく、試料1〜試料4の各50μlをマイクロピペット3を用いて試料台2の上に載置した後、しばらく放置して希釈用溶媒を蒸発除去し、次いで絶縁油A〜絶縁油Dが存在する基板表面をSIWSにて分析し、前記実施の形態2などと同様にして絶縁油中PCBの正イオンの質量スペクトルを求めた。図7は、比較例4(絶縁油D)に就いての正イオンの質量スペクトルである。同図に示すように、正イオン質量スペクトルには4塩素化物PCBに由来するピークが検出されるはずのm/z=395〜405付近に(C12Cl+Ag)イオンのピークは認められなかった。その付近には絶縁油Dの主成分であるナフテン系鉱物油に由来するピークが認められ、それが(C12Cl+Ag)イオンのピークの検出を妨害した。図示しないが、比較例3の試料台2上の絶縁油Cの正イオンの質量スペクトルにおいても、比較例4と同様に絶縁油の主成分であるナフテン系鉱物油に由来するピークが認められ、(C12Cl+Ag)イオンのピークの検出を妨害した。なお図5には、比較例1および比較例2の結果を実施の形態2〜実施の形態5の結果とともに示し、比較例1および比較例2は白四角で、実施の形態は白丸でプロットした。
【0030】
実施の形態2〜実施の形態5と比較例1〜4の結果から、絶縁油中の主成分であるナフテン系鉱物油を油固形化剤により固形化してPCBと分離すると、質量スペクトル測定においてPCBのピークは鉱物油由来のピークに妨害されず、その結果、SN比の高い明瞭なピークを得ることができる。即ち低い濃度のPCBでも、それに由来するピークを得ることができ、検出下限の小さい精度の良い定量分析が短時間で可能となる。
【0031】
実施の形態6〜実施の形態10.
実施の形態6〜実施の形態10では、それぞれPCB含有有機液体1の他の例たる試料5〜試料9として、いずれも廃トランスに充填されていたPCBを含む電気絶縁油をヘキサン(和光純薬工業製、液体クロマトグラフィー用)で10倍希釈した溶液を用いた。実施の形態6での電気絶縁油(以下、絶縁油E)、実施の形態7での電気絶縁油(以下、絶縁油F)、実施の形態8での電気絶縁油(以下、絶縁油G)、実施の形態9での電気絶縁油(以下、絶縁油H)、および実施の形態10での電気絶縁油(以下、絶縁油I)におけるPCBの公定分析法と本発明の方法とで測定した1塩化物PCB〜10塩化物PCBの各含有量を図8の表に示す。同表中のN.D.は公定分析法おいて検出されなかったことを示し、同表中の横線は本発明の方法で検出されなかったことを示す。絶縁油E〜絶縁油Iに含まれている有機液体は、いずれも実施の形態2における絶縁油Aの場合と同じナフテン系鉱物油である。
【0032】
絶縁油E〜絶縁油Iに就き、本発明の方法による3〜6塩素化物PCBの各濃度値は、実施の形態2〜実施の形態5に記載のPCB濃度と規格化したピーク面積比の関係線、すなわち検量線を用いて求めた。公定法による総PCB濃度と本発明の方法による3〜6塩素化物PCBの総濃度値は、図9に示すように良好な直線関係を示した。即ち、実施の形態2〜実施の形態5に示す分析方法で得られる直線関係を用いて短時間にしかも少量の試料でも精度良く、絶縁油中の総PCBの含有量を定量分析できる。
【0033】
実施の形態11〜実施の形態14.
実施の形態11〜実施の形態14では、それぞれPCB含有有機液体1の他の例たる試料10〜試料13として、いずれもPCBを含む電気絶縁油をヘキサン(和光純薬工業製、液体クロマトグラフィー用)で10倍希釈した溶液を用いた。実施の形態11での電気絶縁油(以下、絶縁油J)は、PCBの総含有量が53重量%であり、4塩化物PCBの含有量が17重量%である。実施の形態12での電気絶縁油(以下、絶縁油K)は、PCBの総含有量が5.0重量%であり、4塩化物PCBの含有量が2.1重量%である。実施の形態13での電気絶縁油(以下、絶縁油L)は、PCBの総含有量が0.25重量%であり、4塩化物PCBの含有量が0.095重量%である。実施の形態14での電気絶縁油(以下、絶縁油M)は、PCBの総含有量が0.019重量%であり、4塩化物PCBの含有量が0.0065重量%である。PCBの総含有量および4塩化物PCBの含有量は、前記公定分析法で測定した値であり、絶縁油J〜絶縁油Mに含まれている有機液体は、いずれも20℃における屈折率(nD)が1.46、40℃における動粘度が8センチストークスのパラフィン系鉱物油である。試料10〜試料13のそれぞれに就き、実施の形態2と同様にして各残渣物9の正イオンの質量スペクトルを求めた。
【0034】
図10に試料10(絶縁油J)の正イオンの質量スペクトルを示す。同図に示すように、正イオン質量スペクトルにはm/z=395〜405付近に4塩素化物PCBに由来する(C12Cl+Ag)イオンの明らかなピークが認められた。試料11〜試料13にも、試料10と同様に、各正イオン質量スペクトルには4塩素化物PCBに由来する399(C12Cl+Ag)イオンのイオンピークが認められた。即ち、試料10〜試料13に就いても絶縁油中のPCBが含有されていることを確認する定性分析が可能である。
【0035】
試料10〜試料13とも、実施の形態2と同様にして、正イオン質量スペクトルにおける399(C12Cl+Ag)イオンピークを216Agのイオンピークで規格化した。図11は、試料10〜試料13に就き求めた正イオン質量スペクトルのPCBの4塩素化物C12Clのピークを実施の形態2の場合と同様に規格化したピーク面積比である、399(C12Cl+Ag)216Agを、C12Clの含有量に対してプロットした図である。同図から明らかなように、その規格化したピーク面積比と含有量とが良好な直線関係を示し、実施の形態11〜実施の形態14に示す分析方法は、絶縁油中のPCBの含有量を定量分析できる。すなわち、これら実施の形態に示す分析方法は、短時間にしかも少量の試料でも精度良く、絶縁油中のPCBの含有量を定量分析できるものである。
【0036】
比較例5〜比較例8
比較例5〜比較例8では、それぞれPCB含有有機液体1の他の例たる試料14〜試料17として、いずれもPCBを含む電気絶縁油をヘキサン(和光純薬工業製、液体クロマトグラフィー用)で10倍希釈した溶液を用いた。比較例5での電気絶縁油(以下、絶縁油N)は、PCBの総含有量が73重量%であり、4塩化物PCBの含有量が24重量%である。比較例6での電気絶縁油(以下、絶縁油O)は、PCBの総含有量が4.5重量%であり、4塩化物PCBの含有量が2.2重量%である。比較例7での電気絶縁油(以下、絶縁油P)は、PCBの総含有量が0.34重量%であり、4塩化物PCBの含有量が0.088重量%である。比較例8での電気絶縁油(以下、絶縁油Q)は、PCBの総含有量が0.015重量%であり、4塩化物PCBの含有量が0.0050重量%である。PCBの総含有量および4塩化物PCBの含有量は、前記公定分析法で測定した値であり、絶縁油N〜絶縁油Qに含まれている有機液体は、いずれも20℃における屈折率(nD)が1.6、40℃における動粘度が8センチストークスの芳香族系鉱物油である。試料14〜試料17のそれぞれに就き、実施の形態2と同様にして各残渣物9の正イオンの質量スペクトルを求めた。しかし、試料14〜試料17のいずれの正イオン質量スペクトルにもm/z=395〜405付近に4塩素化物PCBに由来する(C12Cl+Ag)イオンの明らかなピークが認められず、上記のようなで高屈折率の有機液体では、PCBの分離が困難であった。
【0037】
実施の形態15〜実施の形態18.
実施の形態15〜実施の形態18では、それぞれPCB含有有機液体1のたる前記実施の形態2〜実施の形態5において使用した試料1〜試料4を使用し、油固形化剤として12−ヒドロキシステアリン酸を主成分とする固形用有機ゲル化剤に代えて、前記した固形用有機高分子の一例であるポリプロピレン樹脂(SP値;7.9)を主成分とする帝人株式会社製油吸着剤(商品名;オルソーブ)を用い、且つホットプレート6を用いた加熱処理を行わずに室温放置により油固形化をする以外、実施の形態2〜実施の形態5の場合と同様にして各液体残渣物9の正イオン質量スペクトルを求めた。上記油固形化剤の使用方法は、固形化対象油に油固形化剤を接触させて、固形化対象油を吸収させるものであり、室温での放置により固形化する方法であって、当該固形化に5〜15分程度要した。実施の形態15〜実施の形態18とも、実施の形態2〜実施の形態5と同様に、正イオン質量スペクトルには、4塩素化物PCBに由来する399(C12Cl+Ag)イオンのイオンピークが認められ、絶縁油中のPCBが含有されていることを確認する定性分析が可能である。また、実施の形態15〜実施の形態18では実施の形態2〜実施の形態5と同様にして正イオン質量スペクトルにおける399(C12Cl+Ag)イオンピークを216Agのイオンピークで規格化した。
【0038】
図12は、実施の形態15〜実施の形態18で求めた正イオン質量スペクトルの4塩素化物PCBのC12Clのピークを実施の形態2〜実施の形態5と同様にして規格化したピーク面積比である、399(C12Cl+Ag)216Agを、C12Clの含有量に対してプロットした図である。同図から明らかなように、その規格化したピーク面積比と含有量とが良好な直線関係を示し、実施の形態15〜実施の形態18に示す分析方法は、絶縁油中のPCBの含有量を定量分析できる。即ち、これら実施の形態に示す分析方法は、短時間にしかも少量の試料でも精度良く絶縁油中のPCBの含有量を定量分析できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、今後、廃棄される大量のPCB含有電気絶縁油からのPCBの分離とPCBの効果的な無害化処理施設の設計、立地条件、運転条件の確立のために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1を説明する工程図である。
【図2】実施の形態2での正イオン質量スペクトルを示す図である。
【図3】実施の形態2での他の正イオン質量スペクトルを示す図である。
【図4】実施の形態2でのさらに他の正イオン質量スペクトルを示す図である。
【図5】実施の形態2〜実施の形態5における399(C12Cl+Ag)216Agと4塩素化物PCB濃度との関係図である。
【図6】実施の形態5でのさらに他の正イオン質量スペクトルを示す図である。
【図7】比較例4での正イオンの質量スペクトルである。
【図8】実施の形態6〜実施の形態10での各電気絶縁油の組成を示す表である。
【図9】実施の形態6〜実施の形態10における本発明で求めた願3〜6塩素化物PCBの総量とPCB公定分析法で求めた総PCB濃度との関係図である。
【図10】実施の形態11での正イオン質量スペクトルを示す図である。
【図11】実施の形態11〜実施の形態14における399(C12Cl+Ag)216Agと4塩素化物PCB濃度との関係図である。
【図12】実施の形態15〜実施の形態18における399(C12Cl+Ag)216Agと4塩素化物PCB濃度との関係図である。
【符号の説明】
【0041】
1 試料、2 試料台、3 マイクロピペット、4 油固形化剤、5 スパーテル、
6 ホットプレート、7 混合物、8 固形化物、9 液体残渣物、10 ピンセット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビフェニールを含む有機液体に油固形剤を混合する第一工程、および上記第一工程で得られた混合物を放置して上記油固形剤により固化した上記有機液体と固化せずに残留する上記ポリ塩化ビフェニールとを得る第二工程を含むことを特徴とするポリ塩化ビフェニールの分離方法。
【請求項2】
上記有機液体は、20℃における屈折率(nD)が1.55以下で且つ40℃における動粘度が200センチストークス以下のものであり、上記油固形剤は、溶解度指数(SP値)が8以下であって、上記有機液体と混合すると分子配向に基づく網目構造を形成して上記有機液体を固形化する固形用ゲル化剤、または上記有機液体を吸収膨潤して上記有機液体を固形化する固形用樹脂であることを特徴とする請求項1記載のポリ塩化ビフェニールの分離方法。
【請求項3】
上記有機液体は、20℃における屈折率(nD)が1.45〜1.5のナフテン系鉱物油であることを特徴とする請求項2記載のポリ塩化ビフェニールの分離方法。
【請求項4】
上記油固形剤の使用量は、上記有機液体100重量部あたり少なくとも2重量部であることを特徴とする請求項1記載のポリ塩化ビフェニールの分離方法。
【請求項5】
ポリ塩化ビフェニールを含む有機液体に油固形剤を混合する第一工程、および上記第一工程で得られた混合物を放置して上記油固形剤により固化した上記有機液体と固化せずに残留する上記ポリ塩化ビフェニールとを得る第二工程、および上記第二工程で残留する上記ポリ塩化ビフェニールを定性分析および定量分析のいずれか一方または両方を行う第三工程を含むことを特徴とするポリ塩化ビフェニールの分析方法。
【請求項6】
上記定性分析および定量分析のいずれか一方または両方を飛行時間型二次イオン質量分析法により行うことを特徴とする請求項5記載のポリ塩化ビフェニールの分析方法。
【請求項7】
上記有機液体は、20℃における屈折率(nD)が1.55以下で且つ40℃における動粘度が200センチストークス以下のものであり、上記油固形剤は、溶解度指数(SP値)が8以下であって、上記有機液体と混合すると分子配向に基づく網目構造を形成して上記有機液体を固形化する固形用ゲル化剤、または上記有機液体を吸収膨潤して上記有機液体を固形化する固形用樹脂であることを特徴とする請求項5記載のポリ塩化ビフェニールの分析方法。
【請求項8】
上記有機液体は、20℃における屈折率(nD)が1.45〜1.5のナフテン系鉱物油であることを特徴とする請求項7記載のポリ塩化ビフェニールの分離方法。
【請求項9】
上記油固形剤の使用量は、上記有機液体100重量部あたり少なくとも2重量部であることを特徴とする請求項5記載のポリ塩化ビフェニールの分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−214983(P2006−214983A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30702(P2005−30702)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】