説明

ポリ環状シロキサン、その製造方法、およびその用途

【課題】樹脂部材がPECVDによってダメージを受けないよう、耐プラズマ性を向上させた部材を提供し、またそれを用いたガスバリア部材等を提供する。
【解決手段】一般式(1)の環状シロキサン化合物
【化1】


(式中、R〜Rは、炭素数1〜20の炭化水素基等、mは1〜3の整数、nは0〜2の整数、m+nは3以下の整数。xは1以上の整数、y及びzは0以上の整数、x+y+zは3以上の整数。)を重縮合または重付加してポリ環状シロキサンを製造し、それを封止材としたり、また樹脂部材に塗布して耐プラズマ性を付与し、PECVDによりガスバリア層を成膜したガスバリア性樹脂部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ環状シロキサン、その製造方法およびその用途に関するものである。殊にポリ環状シロキサンよりなる封止材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイ(以下、FPD)では、その表示パネルの基材としてガラス基板が用いられるが、薄膜化、軽量化、耐衝撃性向上、フレキシブル化、更には、ロールツーロールプロセスへの適応の観点から、透明プラスチック基板への代替要求が高まっている。また、プラスチック基板に有機半導体を用いて有機トランジスタを形成したり、LSI、Si薄膜太陽電池、有機色素増感太陽電池、有機半導体太陽電池を形成する試みがなされている。
【0003】
通常市販されているプラスチック基板に上記素子を形成した場合、液晶素子、有機EL素子、TFT素子、半導体素子、太陽電池等、形成された素子、デバイスが水、酸素に弱い為、ディスプレイの表示にダークスポットやドット抜けが発生したり、半導体素子、太陽電池が機能しなくなり、実用に耐えない。従って、プラスチック基板に水蒸気、酸素ガスに対するガスバリア性能を付与したガスバリアプラスチック基板が必要となる。一方、ガスバリア性能を付与した透明プラスチックフィルムは、食料品、医薬品、電子材料、電子部品の包装材料用途として、今後、不透明なアルミ箔ラミネートフィルムに変わって益々使用が拡大する方向にある。
【0004】
透明プラスチック基板や透明プラスチックフィルムに透明ガスバリア性能を付与する方法としては、PVD法(物理的成膜法)とCVD法(化学気相成長法)がある。本発明者らは、特許文献1、特許文献2において、二級又は三級炭化水素基がケイ素原子に直結した構造を有するシラン及びシロキサン化合物を用い、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)により低誘電率絶縁膜を形成する方法を提案している。
【0005】
これらの方法で透明プラスチック基板や透明プラスチックフィルムにPECVDを用い、直接ガスバリア層を形成した場合、PECVDで生成したプラズマが基板及びフィルム自体にダメージを与える場合があった。殊に酸素プラズマによるダメージは大きく、その水透過性や酸素透過性を上昇させ、ガスバリア性を極端に悪化させる場合があった。すなわち、PECVD法でガスバリア層を形成させ、高ガスバリア性を有する透明プラスチック基板や透明プラスチックフィルムを製造する為には、透明プラスチック基板や透明プラスチックフィルム表面の耐プラズマ性が不十分であった。
【0006】
透明プラスチック基板や透明プラスチックフィルムの被覆加工方法としては、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に提案されている。特許文献3では、アクリル系UV硬化樹脂を0.1〜10μmの膜厚で被覆し、その上にスパッタリングによりSiON組成の無機膜を形成し、ガスバリア層としている。また、特許文献4では、アクリル系UV硬化樹脂に数十nmのシリカを混合分散させた樹脂組成物を被覆した後にロールツーロール方式のスパッタリング装置によりSiON組成の無機膜を形成し、ガスバリア層としている。また、特許文献5では、シロキサン系をベースにSi粒子を混合させた1.5〜2μmの膜厚のハードコート層上にスパッタリングによってSiN、SiO等の無機膜を形成し、ガスバリア層としている。更に特許文献6では、テトラアルコキシシランより合成されたポリシロキサンの水酸基にカルボン酸エステル類を反応させたポリシロキサン重合体をアンカーコート材として被覆した後、イオンプレーティング法により、SiO組成の無機膜を形成し、ガスバリア層としている。これら特許文献3〜6の提案は、いずれもガスバリア層の形成にPVDを用いており、PECVDに適応した技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−6607号公報
【特許文献2】特開2005−51192号公報
【特許文献3】特開2005−313560号公報
【特許文献4】特開2006−334909号公報
【特許文献5】特許第3577232号公報
【特許文献6】特開2009−226914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明プラスチック基板や透明プラスチックフィルムにPECVDを用い、ガスバリア層を形成する場合、その表面がプラズマによってダメージを受けないよう、耐プラズマ性を向上させた部材を提供し、またそれを用いたガスバリア部材、それを用いたFPDデバイス及び半導体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の構造を有する環状シロキサンを重合して成るポリ環状シロキサンを塗布することにより得られた膜が耐プラズマ性が高く、透明プラスチック基板や透明プラスチックフィルムの耐プラズマ性を向上させる被覆材料として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記一般式(1)の環状シロキサン化合物
【0011】
【化1】

(式中、R,R,R,R,Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRとRの少なくとも一部は互いに結合し環状構造を形成してもよい。mは1乃至3の整数、nは0乃至2の整数を表し、m+nは3以下の整数を表す。xは1以上の整数を表し、y及びzは0以上の整数を表し、x+y+zは3以上の整数を表す。)
を重縮合または重付加することを特徴とするポリ環状シロキサンの製造方法である。
【0012】
また本発明は、上述の方法により得られるポリ環状シロキサンである。更に本発明は、上述のポリ環状シロキサンよりなる封止材である。また本発明は、樹脂部材に上述のポリ環状シロキサンを塗布した耐プラズマ性樹脂部材である。更に本発明は、上述の耐プラズマ性樹脂部材に、化学気相成長法または物理的気相成長法によりガスバリア層を成膜したガスバリア性樹脂部材である。また本発明は、上述の封止材を含んでなることを特徴とするFPDデバイスである。更に本発明は、上述の樹脂部材を含んでなることを特徴とするFPDデバイスである。また本発明は、上述の封止材を含んでなることを特徴とする半導体デバイスである。以下、本発明の詳細について説明する。
【0013】
本発明において、一般式(1)の環状シロキサン化合物を重縮合または重付加することによってポリ環状シロキサンを製造する。一般式(1)は、各繰返し単位がそれぞれx個、y個、z個存在することを示すものであり、繰返し単位の配列仕方は特に限定されるものではない。
【0014】
一般式(1)において、R,R,R,R,Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、これは飽和または不飽和のいずれでもよく、また直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの構造を有してよい。また、R,R,Rの少なくとも一部が互いに結合し環状構造を形成したものも本発明の範囲に含まれる。
【0015】
,R,R,R,Rの炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ビニル基を初めとしたアルケニル基、アセチニル基を初めとしたアルキニル基を挙げることができる。R,R,R,R,Rは同一であっても異なっても良い。
【0016】
とRとRが互いに結合していない場合の例としては、RとRとRがメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、tert.−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、トルイル基からなる群から選ばれた少なくとも一種を挙げることができる。
【0017】
とRとRの少なくとも一部が互いに結合した例としては、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル基が代表例として挙げられる。
【0018】
なかんずく、水素原子、メチル、メチルの組合せであるiso−プロピル、水素原子、メチル、エチルの組合せであるsec−ブチル、水素原子を有し、互いに結合したシクロペンチル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル基を挙げることができる。
【0019】
水素原子を含有しない例としては、メチル、メチル、メチルの組合せであるtert.−ブチル、メチル、メチル、エチルの組合せであるtert.−アミル、RとRとRが互いに結合した場合の例としては1−アダマンチルが挙げられる。
【0020】
,R,R,R,Rは、好ましくは炭素数6以下のアルキル基又は水素原子である。さらに好ましくは炭素数3以下のアルキル基又は水素原子である。この場合、生成したポリ環状シロキサンの機械的強度、ガスバリア性や下地材料との密着性の向上が見られる場合がある。
【0021】
mは1乃至3の整数、nは0乃至2の整数を表し、m+nは3以下の整数を表す。すなわち、m=1,n=0であるトリアルコキシシリル基、m=1,n=1またはm=2,n=0である炭化水素基一置換ジアルコキシシリル基、(m=1,n=2)または(m=2,n=1)または(m=3,n=0)である炭化水素基二置換アルコキシシリル基を表す。これらの混合物も本発明の範囲に含まれる。m,nは、好ましくはm=1乃至3かつn=0、さらに好ましくはm=1かつn=0のトリアルコキシシリル基である。この場合、生成したポリ環状シロキサンの機械的強度、ガスバリア性や下地材料との密着性の向上が見られる場合がある。
【0022】
xは1以上の整数を表し、y及びzは0以上の整数を表し、x+y+zは3以上の整数を表す。x+y+z=3のシクロトリシロキサン、x+y+z=4のシクロテトラシロキサン、x+y+z=5のシクロペンタシロキサン、x+y+z=6のシクロヘキサシロキサン、x+y+z=7のシクロヘプタシロキサン、x+y+z=8のシクロオクタシロキサン、x+y+z=9のシクロノナシロキサン、x+y+z=10のシクロデカシロキサン等を挙げることができる。x+y+z≧11の大員環状シロキサンも発明の範囲に入る。
【0023】
x,y,z,x+y+zは、好ましくはx+y+zが4以上10以下の整数、さらに好ましくは、4≦x≦10かつy=0かつz=0である。この場合、生成した環状シロキサンの耐熱性及び耐クラック性が向上する場合がある。
【0024】
上記一般式(1)の環状シロキサン化合物の製造方法は、特に限定されるものでは無いが、以下に示す製造方法を使用することができる。
【0025】
下記一般式(2)の環状シロキサン化合物
【0026】
【化2】

(式中、R,R,Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRとRの少なくとも一部は互いに結合し環状構造を形成してもよい。aは3以上の整数を表す。)
と下記一般式(3)のシラン化合物
【0027】
【化3】

(式中、R,Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1乃至3の整数、nは0乃至2の整数を表し、m+nは3以下の整数を表す。)
とを白金触媒存在下に反応させて、一般式(1)の環状シロキサン化合物を製造することができる。
【0028】
また、下記一般式(4)の環状シロキサン化合物と
【0029】
【化4】

(式中、R,R,Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRとRの少なくとも一部は互いに結合し環状構造を形成してもよい。bは3以上の整数を表す。)
と下記一般式(5)のシラン化合物
【0030】
【化5】

(式中、R,Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。mは1乃至3の整数、nは0乃至2の整数を表し、m+nは3以下の整数を表す。)
とを白金触媒存在下に反応させて、一般式(1)の環状シロキサン化合物を製造することができる。
【0031】
上記一般式(2)、(3)、(4)、(5)の混合物を白金触媒存在下に反応させて得た上記一般式(1)の環状シロキサン化合物を使用することも本発明の範囲に入る。
【0032】
上記一般式(2)の化合物の例としては、
トリメチルシクロトリシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、ペプタメチルシクロペプタシロキサン、オクタメチルシクロオクタシロキサン、ノナメチルシクロノナシロキサン、デカメチルシクロデカシロキサン、ウンデカメチルシクロウンデカシロキサン、ドデカメチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0033】
またトリエチルシクロトリシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタエチルシクロペンタシロキサン、ヘキサエチルシクロヘキサシロキサン、ペプタエチルシクロペプタシロキサン、オクタエチルシクロオクタシロキサン、ノナエチルシクロノナシロキサン、デカエチルシクロデカシロキサン、ウンデカエチルシクロウンデカシロキサン、ドデカエチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0034】
またトリn−プロピルシクロトリシロキサン、テトラn−プロピルシクロテトラシロキサン、ペンタn−プロピルシクロペンタシロキサン、ヘキサn−プロピルシクロヘキサシロキサン、ペプタn−プロピルシクロペプタシロキサン、オクタn−プロピルシクロオクタシロキサン、ノナn−プロピルシクロノナシロキサン、デカn−プロピルシクロデカシロキサン、ウンデカn−プロピルシクロウンデカシロキサン、ドデカn−プロピルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0035】
またトリイソプロピルシクロトリシロキサン、テトライソプロピルシクロテトラシロキサン、ペンタイソプロピルシクロペンタシロキサン、ヘキサイソプロピルシクロヘキサシロキサン、ペプタイソプロピルシクロペプタシロキサン、オクタイソプロピルシクロオクタシロキサン、ノナイソプロピルシクロノナシロキサン、デカイソプロピルシクロデカシロキサン、ウンデカイソプロピルシクロウンデカシロキサン、ドデカイソプロピルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0036】
またトリn−ブチルシクロトリシロキサン、テトラn−ブチルシクロテトラシロキサン、ペンタn−ブチルシクロペンタシロキサン、ヘキサn−ブチルシクロヘキサシロキサン、ペプタn−ブチルシクロペプタシロキサン、オクタn−ブチルシクロオクタシロキサン、ノナn−ブチルシクロノナシロキサン、デカn−ブチルシクロデカシロキサン、ウンデカn−ブチルシクロウンデカシロキサン、ドデカn−ブチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0037】
またトリイソブチルシクロトリシロキサン、テトライソブチルシクロテトラシロキサン、ペンタイソブチルシクロペンタシロキサン、ヘキサイソブチルシクロヘキサシロキサン、ペプタイソブチルシクロペプタシロキサン、オクタイソブチルシクロオクタシロキサン、ノナイソブチルシクロノナシロキサン、デカイソブチルシクロデカシロキサン、ウンデカイソブチルシクロウンデカシロキサン、ドデカイソブチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0038】
またトリsec−ブチルシクロトリシロキサン、テトラsec−ブチルシクロテトラシロキサン、ペンタsec−ブチルシクロペンタシロキサン、ヘキサsec−ブチルシクロヘキサシロキサン、ペプタsec−ブチルシクロペプタシロキサン、オクタsec−ブチルシクロオクタシロキサン、ノナsec−ブチルシクロノナシロキサン、デカsec−ブチルシクロデカシロキサン、ウンデカsec−ブチルシクロウンデカシロキサン、ドデカsec−ブチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0039】
またトリtert−ブチルシクロトリシロキサン、テトラtert−ブチルシクロテトラシロキサン、ペンタtert−ブチルシクロペンタシロキサン、ヘキサtert−ブチルシクロヘキサシロキサン、ペプタtert−ブチルシクロペプタシロキサン、オクタtert−ブチルシクロオクタシロキサン、ノナtert−ブチルシクロノナシロキサン、デカtert−ブチルシクロデカシロキサン、ウンデカtert−ブチルシクロウンデカシロキサン、ドデカtert−ブチルシクロドデカシロキサン等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(3)の化合物の例としては、
ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルプロポキシシラン、ビニルイソプロポキシシラン、ビニルブトキシシラン、ビニルイソブトキシシラン、ビニルsec−ブトキシシラン、ビニルtert−ブトキシシラン、
ビニルジメトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、ビニルジプロポキシシラン、ビニルジイソプロポキシシラン、ビニルジブトキシシラン、ビニルジイソブトキシシラン、ビニルジsec−ブトキシシラン、ビニルジtert−ブトキシシラン、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリイソブトキシシラン、ビニルトリsec−ブトキシシラン、ビニルトリtert−ブトキシシラン等があげられる。
【0041】
またビニルメチルメトキシシラン、ビニルメチルエトキシシラン、ビニルエチルメトキシシラン、ビニルエチルエトキシシラン、ビニルn−プロピルメトキシシラン、ビニルn−プロピルエトキシシラン、ビニルイソプロピルメトキシシラン、ビニルイソプロピルエトキシシラン、ビニルn−ブチルメトキシシラン、ビニルn−ブチルエトキシシラン、ビニルイソブチルメトキシシラン、ビニルイソブチルエトキシシラン、ビニルsec−ブチルメトキシシラン、ビニルsec−ブチルエトキシシラン、ビニルtert−ブチルメトキシシラン、ビニルtert−ブチルエトキシシラン、ジビニルメトキシシラン、ジビニルエトキシシラン、ビニルフェニルメトキシシラン、ビニルフェニルエトキシシラン等があげられる。
【0042】
またビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルn−プロピルジメトキシシラン、ビニルn−プロピルジエトキシシラン、ビニルイソプロピルジメトキシシラン、ビニルイソプロピルジエトキシシラン、ビニルn−ブチルジメトキシシラン、ビニルn−ブチルジエトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルイソブチルジエトキシシラン、ビニルsec−ブチルジメトキシシラン、ビニルsec−ブチルジエトキシシラン、ビニルtert−ブチルジメトキシシラン、ビニルtert−ブチルジエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、ビニルフェニルジトキシシラン等があげられる。
【0043】
またビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジエチルジメトキシシラン、ビニルジエチルエトキシシラン、ジビニルメチルメトキシシラン、ジビニルメチルエトキシシラン、ジビニルエチルメトキシシラン、ジビニルエチルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、ビニルジフェニルメトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(4)の化合物の例としては、
2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタメチルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタメチルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナメチルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカメチルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカメチルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカメチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0045】
また2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリエチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタエチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサエチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタエチルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタエチルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナエチルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカエチルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカエチルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカエチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0046】
また2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラプロピルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタプロピルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサプロピルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタプロピルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタプロピルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナプロピルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカプロピルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカプロピルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカプロピルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0047】
また2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリイソプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトライソプロピルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタイソプロピルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサイソプロピルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタイソプロピルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタイソプロピルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナイソプロピルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカイソプロピルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカイソプロピルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカイソプロピルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0048】
また2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリn−ブチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラn−ブチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタn−ブチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサn−ブチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタn−ブチルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタn−ブチルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナn−ブチルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカn−ブチルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカn−ブチルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカn−ブチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0049】
また2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリイソブチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトライソブチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタイソブチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサイソブチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタイソブチルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタイソブチルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナイソブチルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカイソブチルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカイソブチルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカイソブチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0050】
また2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリsec−ブチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラsec−ブチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタsec−ブチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサsec−ブチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタsec−ブチルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタsec−ブチルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナsec−ブチルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカsec−ブチルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカsec−ブチルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカsec−ブチルシクロドデカシロキサン等があげられる。
【0051】
また2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリtert−ブチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラビニル−2,4,6,8−テトラtert−ブチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタビニル−2,4,6,8,10−ペンタn−ブチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,12−ヘキサビニル−2,4,6,8,10,12−ヘキサtert−ブチルシクロヘキサシロキサン、2,4,6,8,10,12,14−ヘプタビニル−2,4,6,8,10,12,14−ヘプタtert−ブチルシクロヘプタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16−オクタビニル−2,4,6,8,10,12,14,16−オクタtert−ブチルシクロオクタシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18−ノナtert−ブチルシクロノナシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20−デカtert−ブチルシクロデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22−ウンデカtert−ブチルシクロウンデカシロキサン、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカビニル−2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24−ドデカtert−ブチルシクロドデカシロキサン等が挙げられる。
【0052】
上記一般式(5)の化合物の例としては、
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリn−ブトキシシラン、トリイソブトキシシラン、トリsec−ブトキシシラン、トリtert−ブトキシシラン、
メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、イソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルジエトキシシラン、n−ブチルジメトキシシラン、n−ブチルジエトキシシラン、イソブチルジメトキシシラン、イソブチルジエトキシシラン、sec−ブチルジメトキシシラン、sec−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン等があげられる。
【0053】
またビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルプロポキシシラン、ビニルイソプロポキシシラン、ビニルブトキシシラン、ビニルイソブトキシシラン、ビニルsec−ブトキシシラン、ビニルtert−ブトキシシラン、
ビニルジメトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、ビニルジプロポキシシラン、ビニルジイソプロポキシシラン、ビニルジブトキシシラン、ビニルジイソブトキシシラン、ビニルジsec−ブトキシシラン、ビニルジtert−ブトキシシラン等があげられる。
【0054】
またビニルメチルメトキシシラン、ビニルメチルエトキシシラン、ビニルエチルメトキシシラン、ビニルエチルエトキシシラン、ビニルn−プロピルメトキシシラン、ビニルn−プロピルエトキシシラン、ビニルイソプロピルメトキシシラン、ビニルイソプロピルエトキシシラン、ビニルn−ブチルメトキシシラン、ビニルn−ブチルエトキシシラン、ビニルイソブチルメトキシシラン、ビニルイソブチルエトキシシラン、ビニルsec−ブチルメトキシシラン、ビニルsec−ブチルエトキシシラン、ビニルtert−ブチルメトキシシラン、ビニルtert−ブチルエトキシシラン、ビニルフェニルメトキシシラン、ビニルフェニルエトキシシラン、
ジビニルメトキシシラン、ジビニルエトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
白金触媒としては、四塩化白金、二塩化白金、四臭化白金、二臭化白金、四ヨウ化白金、二ヨウ化白金、六塩化白金酸、六臭化白金酸、六ヨウ化白金酸、六塩化白金酸六水和物、六臭化白金酸六水和物、六ヨウ化白金酸六水和物等があげられる。特に白金触媒としては、これらを還元剤によって還元した白金化合物、またビニル基を有するシラン化合物とシロキサン化合物と上記白金化合物から合成された白金の金属錯体が好ましい。
【0056】
殊に下記一般式(6)で示される二級もしくは三級炭素原子が直結し、かつアルケニル基を有するケイ素原子を有する環状シロキサン
【0057】
【化6】

(式中、R,Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。R,Rは、互いに結合し、環状構造を形成してもよい。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子を表す。cは、2以上の整数を表す。)
と上記白金化合物とを混合し、還元した白金触媒が好ましい。このような白金触媒を使用することにより、耐プラズマ性が高く、機械的強度が高いポリ環状シロキサンを製造することができる。
【0058】
一般式(1)の環状シロキサン化合物を重縮合または重付加することにより、ポリ環状シロキサンを製造する。その方法については特に限定されるものではないが、例えば、上記一般式(1)を酸または塩基の共存下、水と反応させることにより、一般式(1)のアルコキシシラン置換基ORを重縮合し製造する方法や、上記一般式(1)にラジカル重合開始剤を加え、ビニル基を重付加し製造する方法をあげることができる。また一般式(1)の環状シロキサン化合物を2種以上用いてポリ環状シロキサンを製造してもよい。さらに、上記一般式(3)および/または(5)のシラン化合物を共存させ、共重合させることも、本発明の範囲に入る。
【0059】
重縮合の際、共存させる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、またはトルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。また、チタンテトラエトキシド、チタンテトラブトキシド等の重縮合を促進させる触媒を添加しても良い。
【0060】
重縮合により上記一般式(1)からポリ環状シロキサン化合物を製造する際、一般式(1)で示される環状シロキサン及び/又は、上記一般式(3)と(5)のシラン化合物それ自身を反応媒体としてもよいが、不活性溶媒を反応媒体として用いることもできる。使用できる反応溶媒は、当該技術分野で使用されるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン、デセン−1等の不飽和炭化水素類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、tert.−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert.−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコールを使用することができる。また、これらの混合溶媒も使用することができる。殊にエーテル類もしくは、アルコール類を用いた場合に特定の分子量を有するポリ環状シロキサン化合物を高収率に製造できる場合がある。
【0061】
ポリ環状シロキサン化合物製造の際の重縮合反応の温度については、通常、工業的に使用されている温度である−100〜200℃の範囲、好ましくは、−85〜150℃の範囲で行うことが好ましい。反応の圧力条件は、加圧下、常圧下、減圧下いずれであっても可能である。
【0062】
合成したポリ環状シロキサンの精製法については、ガラスフィルター、焼結多孔体等を用いた濾過、常圧もしくは減圧蒸留又はシリカ、アルミナ、高分子ゲルを用いたカラム分離等の精製手段を用いることができる。この際、必要に応じてこれらの手段を組合わせて使用してもよい。
【0063】
製造に際しては、当該有機金属化合物合成分野での方法に従う。すなわち、脱水及び脱酸素された窒素又はアルゴン雰囲気下で行い、使用する溶媒及び精製用のカラム充填剤等は、予め脱水操作を施しておくことが好ましい。また、金属残渣及びパーティクル等の不純物も除去しておくことが好ましい。
【0064】
重付加の方法としては、通常のアニオン重合、カチオン重合、ラジカル重合、配位アニオン重合のいずれであっても使用することができる。なかんずく、重合開始剤の残渣が残らないラジカル重合が好ましい。
【0065】
重付加は、気相中または液相中で行う。重合を液相中で行う場合は、一般式(1)で示される環状シロキサン化合物及び/又は、上記一般式(3)と(5)のシラン化合物それ自身を反応媒体としてもよいが、不活性溶媒を反応媒体として用いることもできる。この不活性溶媒は、当該技術分野で通常用いられるものであれば使用することができるが、重付加により生成した重合体が溶解する溶媒であることが好ましい。
【0066】
使用できる溶媒の例としては、炭化水素溶媒としては、4〜20個の炭素原子を有するアルカン、シクロアルカン、例えばイソブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等、芳香族溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。また、ヘテロ原子を有する溶媒としては、当該技術分野で用いられるジエチルエーテル、ターシャリーブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチル炭酸、プロピレンカーボネート等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ターシャリーブタノール、イソアミルアルコール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類、N,N−ジメチルホルミアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、臭化プロピル等のハロゲン化炭化水素類、及び、水等を挙げることができる。
【0067】
重付加がランダム共重合の場合、用いる重合開始剤については、当該技術分野で通常用いられるものであれば使用することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系ラジカル開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系ラジカル開始剤を挙げることができる。
【0068】
重付加がリビングラジカル共重合の場合、用いる重合開始剤については、当該技術分野で通常用いられるものであれば使用することができる。例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペジリニルオキシ(TEMPO)等のニトロキシル系開始剤、フェニルチオカルボニルチオベンジル等のチオカルボニルチオエステル系開始剤、4,4’−ジヘプチル−2,2’−ビビリジル銅(I)等の遷移金属錯体系開始剤を挙げることができる。
【0069】
重合工程において使用する反応器は、当該技術分野で通常用いられるものであれば、適宜使用することができる。攪拌槽型反応器、流動床型反応器、または循環式反応器を用いて、重合操作を連続方式、半回分方式及び回分方式のいずれかの方式で行うことができる。更に異なる重合の反応条件で2段階以上に分けて行うことも可能である。
【0070】
このようにして本発明のポリ環状シロキサンを得ることができる。このポリ環状シロキサンは封止材として使用することができる。例えば、例えばLEDチップ、LEDデバイス、半導体、パワー半導体を封止するに好適である。
【0071】
また樹脂部材に本発明のポリ環状シロキサンを塗布することにより、樹脂部材の耐プラズマ性を向上させることができる。ここで樹脂部材とは、樹脂フィルム、樹脂基板等をあげることができる。耐プラズマ性を向上させた樹脂部材は、CVDまたはPVDによりガスバリア層を成膜して、ガスバリア性樹脂部材とすることができる。このときのCVDとしては、例えばPECVD、触媒化学気相成長法等があげられる。特にこの樹脂部材は耐プラズマ性を向上させたものであるため、PECVDによりガスバリア層を成膜した場合であっても、PECVDのプラズマによるダメージが小さく、ガスバリア性に優れたものが得られる。
【0072】
本発明により得られた封止材は、FPDデバイスや半導体デバイスに用いることができる。また本発明により得られた耐プラズマ性を向上させた樹脂部材やガスバリア性樹脂部材は、FPDデバイスとして用いることができる。
【発明の効果】
【0073】
本発明によるポリ環状シロキサンは封止材として用いることができる。また本発明のポリ環状シロキサンを塗布することにより、耐プラズマ性を向上させた樹脂部材を提供することができる。更にそれを用いることでガスバリア性樹脂部材を提供できる。これらはFPDデバイスや半導体デバイスとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】平行平板容量結合型PECVD装置を示した図である。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
膜厚測定は、株式会社アルバック製の触針式表面形状測定器デックタック(Dektak)6Mを用いた。また、生成膜の組成をPerkin Elmer製ESCA5400MCを用いて測定した。酸素透過性は、JIS K 7126−1法により、水透過性は、JIS K 7129A法でにより測定した。全光線透過率は、JIS K 7361−1法により測定した。線膨張係数は、オーブン中で無荷重状態のフィルムサンプルをで室温から240℃まで5deg./min.で昇温し、この間のフィルム長さの変化をCCDカメラにより測定することで算出した。表面粗さは、Veecoo社製走査型プローブ顕微鏡 NanoScopeIIIaを用い、タッピングモードAFMにて測定した。
【0077】
実施例1
[ビニル基と二級炭素原子直結したケイ素原子を有する環状シロキサンと白金から成る金属触媒の合成]
窒素気流下、攪拌装置を備えた50mlのシュレンク管反応器に特開2005−51192号公報に記載の方法に従って合成した2,4,6−トリビニル−2,4,6−トリイソプロピルシクロトリシロキサン17.1g(50mmol)とエタノール16.4mlに塩化白金酸六水和物2.59g(5.0mmol)を仕込み、室温で攪拌し、均一溶液とした。この均一溶液に炭酸水素ナトリウム4.20g(50mmol)を10分間で加えた後、70℃で6時間攪拌した。得られた懸濁液からガラスフィルターで濾過することにより灰色の残渣を濾別し、透明黄色の白金触媒溶液を得た。得られた透明黄色の白金触媒溶液の白金の濃度は、0.297mmol/gであった。
【0078】
[一般式(1)の環状シロキサンの合成]
窒素気流下、滴下濾斗、攪拌装置を備えた200mlのシュレンク管反応器にビニルトリメトキシシラン52.2g(352mmol)と上記で合成した白金触媒の1.0g(0.297mmol)を仕込み、室温で攪拌を開始した。これに攪拌しつつ、テトラメチルシクロテトラシロキサン9.62g(40mmol)を150分間で滴下し、室温で40時間反応させた。ガスクロマトグラフでテトラメチルシクロテトラシロキサンの消失を確認することにより、反応が完結したことを確認した。また、GC−MSにより生成物がモノ(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、ジ(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリ(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラ(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、ビニルトリメトキシシランの混合物であることを確認した。
【0079】
[ポリ環状シロキサンの合成]
窒素気流下、攪拌装置を備えた50mlのシュレンク管反応器に上記で得た環状シロキサンとビニルトリメトキシシランの混合物の12.0gにメチルイソブチルケトン12.0g、水3.0g、0.1規定の硝酸0.5gを仕込み、室温にて20時間攪拌し、ポリ環状シロキサン溶液とした。
【0080】
[樹脂基板へのポリ環状シロキサンの塗布]
バーコーターにより、ポリエチレンナフタレートフィルム基板(帝人デュポンフィルム社製Q65FA、膜厚125μm)に上記のポリ環状シロキサン溶液を塗布し、100℃、5分間の条件で溶媒を除去し、乾燥させた。ポリ環状シロキサンの膜厚は、3μmであった。10×10=100マス(1mm角)のクロスカットを施した後、スコッチテープによる剥離試験を行ったところ、全く剥離がなかった。また、表面粗さは、0.5nmであった。
【0081】
[ポリ環状シロキサン塗布ポリエチレンナフタレートフィルム基板へのPECVD薄膜の形成]
図1に示した容量結合型PECVD装置を用いて、上記のポリ環状シロキサン塗布ポリエチレンナフタレートフィルム基板にPECVD薄膜を成膜した。成膜条件は、気化させたtert.−ブチルトリエトキシシランの流量50sccm、ヘリウムガスの流量50sccm、チャンバー内圧50Pa、基板温度室温、RF電源電力200W、RF電源周波数13.56MHzの条件で20分間成膜した。結果は、膜厚962nmであった。ガス透過性を測定したところ、酸素透過性0.35cc/m・day、水透過性<0.01g/m・day(検出限界未満)であった。表面の組成は、Si=33%、O=44%、C=26%であった。全光線透過率は、91.7%、線膨張係数=12ppm/deg.、表面粗さは、1.1nmであった。
比較例1
ポリ環状シロキサン塗布ポリエチレンナフタレートフィルム基板に変えて、ポリエチレンナフタレートフィルム基板(帝人デュポンフィルム社製Q65FA、膜厚125μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にPECVD成膜を行った。結果は、膜厚962nmであった。ガス透過性を測定したところ、酸素透過性1.49cc/m・day、水透過性0.70g/m・dayであった。表面の組成は、Si=33%、O=44%、C=26%であった。全光線透過率は、91.5%、線膨張係数=19ppm/deg.、表面粗さは、24.3nmであった。
【0082】
実施例2
[ポリ環状シロキサン塗布ポリエチレンナフタレートフィルム基板へのPECVD薄膜の形成]
図1に示した容量結合型PECVD装置を用いて、実施例1で作製したポリ環状シロキサン塗布ポリエチレンナフタレートフィルム基板にPECVD薄膜を成膜した。成膜条件は、ヘリウム400sccm、酸素100sccm、チャンバー内圧100Pa、基板温度室温、RF電源電力200W、RF電源周波数13.56MHzの条件で10分間、ポリ環状シロキサン塗布ポリエチレンナフタレートフィルム基板をヘリウム/酸素プラズマ処理した後、実施例1と同様に気化させたtert.−ブチルトリエトキシシランの流量50sccm、ヘリウムガスの流量50sccm、チャンバー内圧50Pa、基板温度室温、RF電源電力200W、RF電源周波数13.56MHzの条件で20分間成膜した。結果は、膜厚954nmであった。ガス透過性を測定したところ、酸素透過性0.33cc/m・day、水透過性<0.01g/m・day(検出限界未満)であり、酸素プラズマによるダメージが無く、耐プラズマ性に富む樹脂基板であることが解った。
【0083】
比較例2
ポリ環状シロキサン塗布ポリエチレンナフタレートフィルム基板に変えて、ポリエチレンナフタレートフィルム基板(帝人デュポンフィルム社製Q65FA、膜厚125μm)を用いたこと以外は、実施例2と同様に基板をヘリウム/酸素プラズマ処理し、PECVD成膜を行った。結果は、膜厚909nmであった。ガス透過性を測定したところ、酸素透過性46.3cc/m・day、水透過性0.85g/m・dayであり、酸素プラズマにより著しくダメージを受け、ガスバリア性が悪化した。

【符号の説明】
【0084】
1 平行平板容量結合型PECVD装置
2 PECVDチャンバー
3 シャワーヘッドを有する上部電極
4 下部電極
5 薄膜形成用基板
6 マッチング回路
7 RF電源
8 温度制御装置
9 気化器
10 液体流量制御装置
11 気体流量制御装置
12 容器
13 原料化合物
14 不活性ガスを気化器経由でPECVD装置チャンバー内に供給する為の配管
15 不活性ガスにより加圧する配管
16 排気装置
17 アース
18 アース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)の環状シロキサン化合物
【化1】

(式中、R,R,R,R,Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRとRの少なくとも一部は互いに結合し環状構造を形成してもよい。mは1乃至3の整数、nは0乃至2の整数を表し、m+nは3以下の整数を表す。xは1以上の整数を表し、y及びzは0以上の整数を表し、x+y+zは3以上の整数を表す。)
を重縮合または重付加することを特徴とするポリ環状シロキサンの製造方法。
【請求項2】
x+y+zが4以上の整数である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法により得られるポリ環状シロキサン。
【請求項4】
請求項3に記載のポリ環状シロキサンよりなる封止材。
【請求項5】
樹脂部材に請求項3記載のポリ環状シロキサンを塗布した耐プラズマ性樹脂部材。
【請求項6】
請求項5記載の耐プラズマ性樹脂部材に、化学気相成長法または物理的気相成長法によりガスバリア層を成膜したガスバリア性樹脂部材。
【請求項7】
化学気相成長法が、プラズマ励起化学気相成長法である、請求項6に記載のガスバリア性樹脂部材。
【請求項8】
化学気相成長法が触媒化学気相成長法である、請求項6に記載のガスバリア性樹脂部材。
【請求項9】
請求項4の封止材を含んでなることを特徴とするフラットパネルディスプレイデバイス。
【請求項10】
請求項5〜8いずれかに記載の樹脂部材を含んでなることを特徴とするフラットパネルディスプレイデバイス。
【請求項11】
請求項4に記載の封止材を含んでなることを特徴とする半導体デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2011−241291(P2011−241291A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114135(P2010−114135)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】