説明

ポリ酸無水物ホトクロミック被覆組成物およびホトクロミック物品

【課題】ホトクロミック被膜を使用し、ホトクロミック化合物をプラスチック基材中に導入する必要性がなく、それがホトクロミック化合物とともに使用する特殊な光学樹脂材料の開発をも不要にし、ホトクロミックプラスチック物品の調製を容易にする被覆組成物及びその物品を提供する。
【解決手段】ポリ酸無水物ホトクロミック被膜を有する物品。この被膜はフィッシャーミクロ硬度50〜130N/mmを有し、かつ望ましいホトクロミック特性、即ち紫外線照射時により暗い活性色の形成およびホトクロミック活性と退色の速い速度を示すポリ酸無水物ホトクロミック物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の説明)
本発明は、ヒドロキシル官能性成分とポリマー状酸無水物官能性成分およびホトクロミック成分を含有する被膜(以下、ホトクロミックポリ酸無水物被膜という)、そのような被膜を塗装した物品およびそのような被覆組成物から形成されたホトクロミック物品、すなわち重合体に関する。より詳しくは、本発明は基材に塗装し活性光に露光した場合に、改良されたホトクロミック性能を示すある種のホトクロミックポリ酸無水物被膜に関する。さらに、本発明は光学要素、例えばレンズに適用される光学被膜用の「外観(cosmetic)」標準の許容値を満足するホトクロミックポリ酸無水物被膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ホトクロミック化合物は紫外線を含む光、例えば太陽光中の紫外線または水銀ランプの光に照射したときに可逆的に色が変化する。数多くのホトクロミック化合物が合成され、太陽光が誘導する可逆的色の変化または暗色化を必要とする用途に用いられてる。最も広く記載されているホトクロミック化合物はオキサジン類、ピラン類およびフルギド類である。
【0003】
本発明ではホトクロミックポリ酸無水物被膜を用いて、所望のホトクロミック特性、例えば許容し得る速度で着色および退色し、工業的かつ一般消費者に要求される光学被膜「外観」標準を満足する特性を示すのに十分な被膜厚を有するホトクロミック被覆物品を提供する。本発明の新規な被膜は50〜130N/mmのフィシャーミクロ硬度を示す。これらの被膜はまた、改良されたホトクロミック特性、すなわちフィッシャーミクロ硬度130N/mm以上を有するそのような被膜と比べて、改良されたホトクロミック特性、即ち紫外光に照射したときにより暗い活性色の形成およびホトクロミック活性のより早い速度での形成および退色を示す。また被膜を形成するのに用いられる組成物はホトクロミックポリ酸無水物重合物を形成するのにも用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(発明の詳細な説明)
最近、ホトクロミック物品、特に光学用途用のホトクロミックプラスチック材料は注目を浴びている。特に、ホトクロミック眼科用プラスチックレンズはガラスレンズに比較して重量の利点のために研究されている。さらに、車両、例えば車や飛行機用のホトクロミック透明体また、それらが提供する潜在的な安全性のために興味が注がれている。最も有用なホトクロミック物品は、ホトクロミック化合物が高い活性濃度、高い着色率および許容し得る退色速度のものである。
【0005】
ホトクロミック被膜の使用は、ホトクロミック化合物をプラスチック基材中に導入する必要性がなく、それがホトクロミック化合物とともに使用する特殊な光学樹脂材料の開発をも不要にし、ホトクロミックプラスチック物品の調製が容易になる。このことは、プラスチック、例えば熱可塑性ポリカーボネートがプラスチック中に導入されるホトクロミック化合物のための十分な内部自由容量がなく、十分な機能を発揮し得ないときに、有用である。本発明の被覆組成物はそのようなプラスチックを用いるホトクロミック物品の調製を可能にする。さらに、ホトクロミック被膜の使用はより一般的な移行方法、例えば吸収(imbibition)または浸透に付随する損失を避けてホトクロミック物品を形成することにより、ホトクロミック化合物のより効果的な利用が図られる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施例および別途指示するとき以外は、すべての数値、例えば波長、使用材料の量、範囲または反応条件のすべては明細書中および請求項中を通して、「約」という用語で修飾しうることを理解すべきである。
【0007】
本発明のホトクロミック被膜は少なくとも2つのヒドロキシル基を有するヒドロキシル官能性成分と少なくとも2つのカルボキシル無水物基を有するポリマー状無水物官能性成分の反応時に、組成物中に少なくとも1種の有機ホトクロミック成分を配合して調製してもよい。他の光学成分は架橋剤(エポキシ官能性成分、アクリルアミド官能性成分またはメラミン樹脂)および可塑剤を含み、フィッシャーミクロ硬度値ならびにホトクロミック性能を調製するのに十分な量で用いる。被覆組成物はさらに触媒を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
溶媒は被覆組成物中に存在してもよい。しかしながら、溶媒は重量比および重量%中には本明細書中では含まれていない。すべての重量比および重量%は別途指示する以外は、被覆組成物中の総固形分に基づく。
【0009】
本発明の被覆組成物を被膜として塗布し硬化する場合、それらはフィッシャーミクロ硬度において、少なくとも50N/mm、好ましくは少なくとも60N/mm、より好ましくは少なくとも70N/mmであり、それらはまた130N/mm以下、好ましくは120N/mm以下、より好ましくは110N/mm以下である。フィッシャーミクロ硬度は上記値をすべて包含するこれらの値の組合せの範囲でありうる。本発明の硬化した被膜のホトクロミック特性は30秒後のΔOD少なくとも0.15、好ましくは少なくとも0.17および最も好ましくは少なくとも0.18であり、15分後のΔODでは少なくとも0.50、好ましくは少なくとも0.60、最も好ましくは少なくとも0.63であり、ブリーチ比は200秒以下、好ましくは195秒以下、最も好ましくは190秒以下である。すべての測定は72°F(22℃)で行われ、実施例8のパートC中に記載の方法で行った。
【0010】
ミクロ硬度およびホトクロミック特性が上記範囲にあるポリ酸無水物被膜は被膜マトリックスの硬さおよび軟らかさに寄与する成分をバランス的に配合することにより製造できる。被膜または重合体を形成する成分のポリ酸無水物マトリックスのミクロ硬度およびホトクロミック特性に影響を与える特性は、ガラス転移点、分子量および架橋密度である。一般的に、高いガラス転移点および高い分子量を有する成分を使うと、高いミクロ硬度を有する被膜および重合物が得られ、逆もまた正しい。成分の反応性基の数の増加はすべての反応基が反応したとしたら、ミクロ硬度の増加に繋がる。後者の場合、反応性基、例えば架橋部位の数の増加は硬化被膜の架橋密度の増加になる。しかしながら、被膜または重合物が硬くなれば硬くなるほど、それに含まれているホトクロミック化合物の特性が遅くなると考えられる。
【0011】
特定の成分、例えばヒドロキシル官能性成分、の硬度または柔軟性のいずれかへの寄与は得られたポリ酸無水物被膜のフィッシャーミクロ硬度を測定することにより容易に決定することができる。明細書中において、硬度付与剤は濃度が増加するにつれてポリ酸無水物被膜のミクロ硬度を増加する成分である。同様に、本明細書中において、柔軟性付与剤はその濃度が増加するにつれてポリ酸無水物被膜のミクロ硬度が減少する成分である。硬度付与性ヒドロキシル官能性成分、例えば有機ポリオールの例としては、限定的ではないが、低分子量ポリオール、アミド含有ポリオール、エポキシポリオールおよびウレタンポリオールが挙げられる。柔軟性付与ヒドロキシル官能性成分、例えば有機ポリオールは限定的ではないが、ポリエステルポリオール、ポリアクリル酸ポリオール、ポリエーテルポリオール(例えばポリオキシアルキレンおよびポリ(オキシテトラメチレン)ジオール)が挙げられる。上記ポリオールのすべてはさらに詳しく以下に説明する。
【0012】
典型的には、本発明のヒドロキシ官能性成分はフィルム形成性ポリマーであるが、ポリマー状でないヒドロキシ成分を用いてもよい。しかしながら、少なくともヒドロキシ官能性成分と酸無水物官能性成分との組合せが架橋ポリマー被膜をもたらす必要がある。
【0013】
ヒドロキシ官能性成分の例としては限定的ではないが、(a)低分子量ポリオール、すなわち重量平均分子量500以下のポリオール、例えば脂肪族ジオール、特にC−C10脂肪族ジオール、トリオールおよび多価アルコール、(b)ポリエステルポリオール、(c)ポリエーテルポリオール、(d)アミド含有ポリオール、(e)ポリアクリルポリオール、(f)多価ポリビニルアルコール、(g)エポキシポリオール、(h)ウレタンポリオールおよび(i)それらの混合物が挙げられる。好ましくは、有機ポリオールは低分子量ポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ウレタンポリオールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、有機ポリオールはポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ウレタンポリオールおよびそれらの混合物から選択され、最も好ましくはポリアクリルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
本発明の被覆組成物に用いられる低分子量ポリオールの例としては、テトラメチロールメタン(例えば、ペンタエリスリトール)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、ジメチロールプロピオン酸、1,2−エタンジオール(すなわち、エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(すなわち、プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(すなわち、ネオペンチルグリコール)、1,2,3−プロパントリオール(すなわち、グリセリン)、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、2,2,4−トリメチロール−1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1−(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル)−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート、5価アルコール(すなわち、ソルビトール)、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,2−ビス(ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン、ビスヒドロプロピルヒダントイン、TMP/ε−カプロラクトントリオール、水素化ビスフェノールA、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、1モルの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)と2モルのプロピレンオキシドとのアルコキシル化生成物、エトキシル化またはプロポキシル化トリメチロールまたはペンタエリスリトール(数平均分子量500以下)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール(数平均分子量500以下)およびそれら低分子量ポリオールの混合物が挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオールは公知であり、数平均分子量500〜10000の範囲であり得る。ポリエステルポリオールは公知の低分子量ジオール、トリオールおよび多価アルコールを用いて通常の方法で調製され、それらの非限定的な例としては前述の低分子量ポリオール(要すれば、一価アルコールとの組合せ)とポリカルボン酸が含まれる。
【0016】
ポリエステルを調製するために用いる適当なポリカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クロレンド酸、トリメリット酸、トリカルバリル酸およびそれらの混合物が包含される。上記酸の無水物はそれが存在するならば用いてもよい。また、酸と同様に反応してポリエステルポリオールを形成するある種の物質を用いてもよい。そのような物質は、ラクトン類(例えば、カプロラクトン、プロピオラクトンおよびブチロラクトン)、あるいはヒドロキシ酸(例えば、ヒドロキシカプロン酸およびジメチロールプロピオン酸)が挙げられる。トリオールまたは多価アルコールを用いる場合には、一価カルボン酸、例えば酢酸および/または安息香酸をポリエステルポリオールの調製に用いてもよく、そのようなポリエステルポリオールが望ましい場合もある。さらに、ポリエステルポリオールは本明細書中では脂肪酸または脂肪酸のグリセリド油で変性されたポリエステルポリオール(すなわち、そのような変性を有する常套のアルキドポリオール)を包含する。使用しうる他のポリエステルポリオールは、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどと、バーサティック(versatic)酸とメタクリル酸とのグリシジルエステルとの反応により形成される対応するエステル化物であってもよい。
【0017】
ポリエーテルポリオールは公知であり、数平均分子量500〜10,000を有してもよい。ポリエーテルポリオールの例としては、分子量500以上の種々のポリオキシアルキレンポリオール、ポリアルコキシル化ポリオール、例えばポリ(オキシテトラメチレン)ジオールおよびそれらの混合物が挙げらける。ポリオキシアルキレンポリオールは公知の方法に従って、アルキレンオキシドまたは酸または塩基触媒化を用いたアルキレンオキシドの混合物と、多価開始剤または多価開始剤の混合物、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどと縮合することにより調製してもよい。アルキレンオキシドの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド(例えば、1,2−ブチレンオキシド)、アミレンオキシド、アラルキレンオキシド(例えば、スチレンオキシド)、ハロゲン化アルキレンオキシド(例えば、トリクロロブチレンオキシド)などが挙げられる。より好ましいアルキレンオキシドはランダムまたは段階状オキシアルキル化を用いるブチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシドまたはそれらの混合物を包含する。そのようなポリオキシアルキレンポリオールの例としては、ポリオキシエチレン(すなわち、ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレン(すなわち、ポリプロピレングリコール)およびポリオキシブチレン(すなわち、ポリブチレングリコール)が挙げられる。ソフトセグメントとして用いるそのようなポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は600以上、より好ましくは725以上、最も好ましくは1000以上である。
【0018】
ポリエーテルポリオールはまたルイス酸触媒、例えば三フッ化ヨウ素、塩化錫(IV)および塩化スルホニルの存在下にテトラヒドロフランの重合により得られた公知のポリ(オキシテトラメチレン)ジオールが挙げられる。ソフトセグメントとして用いるポリ(オキシテトラメチレン)グリコールの数平均分子量は500〜5,000、好ましくは650〜2,900、より好ましくは1,000〜2,000、最も好ましくは1,000である。
【0019】
数平均分子量500以上を有するポリアルコキシル化ポリオールは一般式I
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、mおよびnはそれぞれ整数を示し、mとnの合計は5〜70であり、RおよびRはそれぞれ水素、メチルまたはエチル、好ましくは水素またはメチルを示し、Aは直鎖または分岐鎖アルキレン(通常1〜8の炭素数)、フェニレン、C−Cアルキル置換フェニレンおよび次の式IIで表される基
【0022】
【化2】

【0023】
(式II中、RおよびRは各々C−Cアルキル、塩素または臭素、pおよびqは各々0〜4の整数を示し、式
【0024】
【化3】

【0025】
は二価のベンゼン基または二価のシクロヘキサン基を示し、およびDは、O、S、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、または
【0026】
【化4】

【0027】
を示し(ただし、
【0028】
【化5】

【0029】
が二価のベンゼン基であるとき)、Dは、また、O、S、−CH−、または−C(CH−を示し(ただし、
【0030】
【化6】

【0031】
が二価のシクロヘキサン基であるとき)
で表される基、から成る群から選択される二価の結合基を示す。)で表される。
【0032】
好ましくは、ポリアルコキシル化は一般式Iにおいてmおよびnの合計が15〜40、例えば25〜35であり、RおよびRが各々水素であり、Aが一般式IIで表される二価の結合基であって、式中、
【0033】
【化7】

【0034】
が二価のベンゼン基を示し、pおよびqが各々0であり、Dが−C(CH−で、最も好ましくはmおよびnの合計が25〜35であり、例えば30であるものである。そのような材料は当業者に公知の方法で調製してもよい。そのような一般的に用いられる方法はポリオール(例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール)をオキシラン含有物質(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、α−ブチレンオキシドまたはβ−ブチレンオキシド)と反応させて、一般にヒドロキシ官能性を有するエトキシル化、プロポキシル化またはブトキシル化ポリオールと呼ばれるものを形成することを含む。
【0035】
ポリアルコキシル化ポリオールを調製するのに用いるポリオールの例としては、前記低分子量ポリオール類、フェニレンジオール(例えば、o−、m−およびp−ジヒドロキシベンゼン)、アルキル置換フェニレンジオール(例えば、2,6−ジヒドロキシトルエン、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、3−ヒドロキシベンジルアルコール、および4−ヒドロキシベンジルアルコール)、ジヒドロキシジフェニル(例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよび2,2’−ジヒドロキシビフェニル)ビスフェノール(例えば、4,4’−イソプロピリデンジフェノール)、4,4’−オキシビスフェノール、 4,4’−ジヒドロキシベンゼンフェノン、4,4’−チオビスフェノール、フェノールフタレイン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−(1,2−エテンジイル)ビスフェノール、および4,4’−スルホニルビスフェノール、ハロゲン化ビスフェノール(例えば、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)および4,4’−イソプロピリデンビス(2,3,5,6−テトラクロロフェノール))、およびビスシクロヘキサン類(対応するビスフェノール類、例えば4,4’−イソプロピリデン−ビスシクロヘキサノールを水素化することによって得られるもの;4,4’−オキシビスシクロヘキサノール;4,4’−チオビスシクロヘキサノール;およびビス(4−ヒドロキシシクロヘキサノールメタン)が挙げられる。
【0036】
好ましくは、ポリエーテルポリオールはポリオキシアルキレンポリオール、ポリアルコキシル化ポリオール、ポリ(オキシテトラメチレン)ジオールおよびそれらの混合物から選択される群から選択され、最も好ましくは数平均分子量1,000以上を有するポリオキシアルキレンポリオール、約30のエトキシ基を有するエトキシル化ビスフェノールA、数平均分子量1,000のポリ(オキシテトラメチレン)ジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0037】
アミド含有ポリオールは公知であり、典型的には、二塩基酸またはラクトンおよび前記低分子量ポリオールと後述のジアミン類またはアミノアルコール類との反応から調製される。例えば、アミド含有ポリオールはネオペンチルグリコール、アジピン酸およびヘキセメチレンジアミンの反応により得てもよい。アミド含有ポリオールはまたカルボキシレート、カルボン酸またはラクトンとアミノアルコールとの反応によりアミノ化により得て調製してもよい。ジアミンおよびアミノアルコールの例としては、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、フェニレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0038】
多価ポリビニルアルコールは公知であり、例えば、ビニルアセテートを適当な開始剤の存在下で重合した後、アセテート部分の少なくとも一部を加水分解することによって調製することができる。加水分解工程において、ヒドロキシル基が形成され、ポリマー骨格に直接付加される。ホモポリマーの他に、ビニルアセテートと他のモノマー、例えば塩化ビニルとの共重合体を調製して同様の方法で加水分解して、多価ポリビニルアルコール−ポリビニルクロリド共重合体を形成してもよい。
【0039】
エポキシポリオールも公知であり、例えばポリフェノールのグリシジルエーテル、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのジグリシジルエーテルと、ポリフェノール、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとの反応により調製してもよい。種々の分子量と種々の平均ヒドロキシ官能性を有するエポキシポリオールを出発物質の量比に基づいて調製することができる。
【0040】
ウレタンポリオールも公知であり、例えばポリイソシアネートと過剰の有機ポリオールを反応してヒドロキシ官能性生成物を得てもよい。ウレタンポリオールの調製に用いられるポリイソシアネートの例としては、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル− 4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、リシンメチルエステルジイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)フマレート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ドデカン−1,12−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェノールイソシアネートパーヒドロジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネートパーヒドロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0041】
ウレタンポリオールの調製に用いられる有機ポリオールの例としては、前記他のポリオール類、例えば低分子量ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アミド含有ポリオール、ポリアクリルポリオール、多価ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物を包含する。
【0042】
ポリアクリルポリオールは公知であって、前記モノマーを遊離ラジカル付加重合方法によって調製することができる。好ましくはポリアクリルポリオールは数平均分子量500〜50,000およびヒドロキシル価20〜270を有する。より好ましくは、重量平均分子量1,000〜30,000でヒドロキシル価80〜250である。最も好ましくは数平均分子量3,000〜20,000であり、かつヒドロキシル価100〜225である。
【0043】
ポリアクリルポリオールの例としては、これらに限定されないが、アクリルまたはメタクリル酸のヒドロキシ官能性付加重合体および共重合体であり、それらのエステル誘導体としては、それらに限定されないが、ヒドロキシ官能性エステル誘導体である。ヒドロキシ官能性付加重合物の調製に用いられるヒドロキシ官能性エチレン系不飽和モノマーの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(すなわち、ヒドロキシアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチルエチルアクリレート、ヒドロキシメチルプロピルアクリレートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0044】
より好ましくは、ポリアクリルポリオールはヒドロキシ官能性エチレン系不飽和(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン系不飽和モノマーとの共重合体であり、前記他のエチレン系不飽和モノマーはビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレンおよびビニルトルエン)、ビニル脂肪族モノマー(例えば、エチレン、プロピレンおよび1,3−ブタジエン)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルおよびビニリデンハライド(例えば、塩化ビニルおよび塩化ビニリデン)、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート)、アクリルおよびメタクリル酸のアルキルエステル(すなわち炭素数1〜17を有するアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレート)、エポキシ官能性エチレン系不飽和モノマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート)、カルボキシ官能性エチレン系不飽和モノマー(例えば、アクリルまたはメタクリル酸)およびそれらエチレン系不飽和モノマーの混合物が挙げられる。
【0045】
ヒドロキシ官能性エチレン系不飽和(メタ)アクリルモノマーはポリアクリルポリオール共重合体の最大95重量%までを包含できる。好ましくは、最大70重量%までで、より好ましくはヒドロキシル官能性エチレン系不飽和(メタ)アクリルモノマーは総合共重合体の45重量%までを占有する。
【0046】
上記ポリアクリルポリオールは前記モノマーの遊離ラジカル開始付加重合でかつ有機溶媒重合方法により調製することができる。モノマーは典型的には、有機溶媒または有機溶媒の混合物中に溶解し、有機溶媒または有機溶媒の混合物はケトン、例えばメチルエチルケトン;エステル、例えばブチルアセテート、プロピレングリコールのアセテートおよびヘキシルアセテート;アルコール、例えばエタノールブタノール;エーテル、例えばプロピレングリコールモノプロピルエーテルおよびエチル−3−エトキシプロピオネート;および芳香族溶媒、例えば、キシレンおよびソルベッソ(SOLVESSO)100;エクソン化学社から市販の高沸点炭化水素溶媒の混合物が挙げられる。最初に溶媒を加熱して通常70〜160℃で還流し、モノマーまたはモノマーの混合物および遊離ラジカル開始剤を徐々に還流溶媒中へ約1〜7時間の時間をかけて添加する。モノマーをあまり速く添加すると、変換が悪くなり、高くかつ急な発熱反応が起こり、安全性が損なわれる。好適な遊離ラジカル開始剤の例としてはt−アミルパーオキシアセテート、ジ−t−アミルパーオキシアセテートおよび2,2’−アゾ(2−メチルブタントリル)が挙げられる。遊離ラジカル開始剤は典型的には反応混合物中にモノマー総量の約1〜10重量%の量で存在する。前記方法により調製されたポリマーは非ゲル状あるいはゲル化せずに、好ましくは重量平均分子量500〜50,000g/モルを有する。
【0047】
本発明の組成物を調製するための、ヒドロキシ官能性成分の分子量は大きな範囲で選択されたポリオールの群の性質に変化してよい。典型的には、適当なポリオールの数平均分子量は62〜50,000、好ましくは500〜20,000であり、ヒドロキシ当量は31〜25,000、例えば100〜2,000、または250〜1,000であり得る。ヒドロキシル基含有ポリマーの分子量はポリスチレン標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される。
【0048】
組成物の酸無水物官能性成分はポリマー分子中に少なくとも2個の環状酸無水物基を有するポリマー状物質である。数平均分子量1,000〜50,000、好ましくは2,000〜5,000を有するポリマーが好ましく、分子量はポリスチレン標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される。酸無水物官能性成分はポリアクリル酸ポリオールで用いた前記方法、例えばモノマーの遊離ラジカル開始付加重合および有機溶媒重合方法により調製することができる。
【0049】
酸無水物官能性を有する重合性エチレン系不飽和モノマー、例えばマレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、プロペニルコハク酸無水物などと他のエチレン系不飽和モノマーであって、実質上酸無水物官能性を有さないものとを重合することにより調製される遊離ラジカル付加重合物の使用が本発明の実施に特に好ましい。好ましくは、エチレン系不飽和酸カルボン酸無水物モノマーはモノマー混合物の総重量に基づいて少なくとも11重量%の量でモノマー混合物中に存在する。そのようなエチレン系不飽和材料の例としては、(メタ)アクリル酸(すなわち、アクリル酸およびメタクリル酸)のエステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレート;ビニル化合物、例えばビニルアセテートおよびビニルクロライド;スチレンベース材料、例えばスチレンおよびα−メチルスチレン;アリル化合物、例えば塩化アリルおよびアリルアセテート;他の共重合性エチレン系不飽和モノマー、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;アミド、例えばアクリルアミドおよびメタクリルアミド;ジエン、例えば1,3−ブタジエン;およびエチレン系不飽和モノマーの混合物が挙げられる。
【0050】
典型的には、ヒドロキシ官能性成分および酸無水物官能性成分の量は、ヒドロキシル基の当量/酸無水物基の当量比で、3:1〜1:3、例えば2:1〜1:2、好ましくは1:1を与えるように選択される。ヒドロキシ官能性成分と酸無水物官能性成分は組み合わせて被覆組成物中に1.0〜99.9、好ましくは20〜95%、より好ましくは50〜90重量%(総樹脂固形分に基づく)に存在する。
【0051】
本発明の被覆組成物はさらにヒドロキシ官能性成分のヒドロキシル基と酸無水物官能性成分の酸無水物基との間の硬化反応を促進するための触媒量で含んでもよい。多くの場合、触媒はアミノ基、好ましくは第3級アミノ基を含む。アミノ基はヒドロキシル成分の分子中に存在してもよく、また別成分としてアミン化合物、例えばジメチルココアミン、ジメチルドデシルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンおよび少なくともジアルキルアミノ基を有するフェノール化合物として存在してもよい。好ましくは、アミノ基は分離アミン化合物として存在する。使用しうる触媒の量は触媒量、すなわちモノマーの重合を触媒するのに必要な量である。典型的には、触媒の量は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0052】
アミノ基を含む触媒剤をヒドロキシ成分に投入した場合には、1またはそれ以上のアミノ基をヒドロキシル含有共重合体中にペンダント基として存在させる。例えば、アクリルポリオールはジアルキルアミノアルキルアクリレートまたはメタクリレート(例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびジエチルアミノエチルメタクリレート)またはジアルキルアミノアルキル置換アミド(例えば、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)を用いて調製してもよい。あまり好ましくないが、第2級アミン、例えばt−ブチルアミノエチルメタクリレートを用いてもよい。また、第3級アミノ基をグリシジルアクリレートまたはメタクリレートと他の適当な不飽和モノマーとを共重合し、次いでグリシジル基を第2級アミン基と反応させることによってアクリルポリオール中に導入してもよい。
【0053】
触媒の効果的な量を添加した後、特定の組成物および基材に有効な本発明の重合性組成物を硬化する方法を用いてもよい。そのような方法は紫外線、可視光、熱、超音波、赤外線、マイクロウェーブ、ガンマー線、電子線および他の放射線の形態を含む。
【0054】
被覆組成物中に存在してもよい溶媒は固形成分を溶解するのに必要なものである。組成物中に存在する溶媒の最小の量は溶媒量、すなわち固形状成分が被覆組成物中に溶解するのに十分な量である。例えば、存在する溶媒の量は被覆組成物の総重量に基づいて10〜80重量%である。
【0055】
好適な溶媒の例としては、これらに限定されないが、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピルアルコール、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N−アセチルピロリドン、N−ヒドロキシメチルピロリドン、N−ブチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−(N−オクチル)ピロリドン、N−(N−ドデシル)ピロリドン、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メタノール、アミルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、エチレングリコールのモノ−およびジ−アルキルエーテルおよびユニオンカーバイド社からセロソルブ工業溶媒として市販の誘導体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0056】
被覆組成物中に用い得る随意成分としては、架橋剤、例えばポリエポキシドが挙げられる。好適なポリエポキシドは、エポキシ含有アクリルポリマー、エポキシ縮合ポリマー、例えばアルコールおよびフェノールのポリグリシジルエーテル、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル、ある種のポリエポキシドモノマーおよびオリゴマー、かつそれらポリエポキシドの混合物が挙げられる。このような成分の例としては、米国特許5,256,452の第3欄、第28行〜第4欄第46行に記載されている。好ましいエポキシドはエポキシ含有アクリルポリマーである。
【0057】
エポキシ縮合ポリマーの特定の例はポリカルボン酸とエピハロヒドリン、たとえばエピクロロヒドリンとの反応から得られるポリグリシジルエーテルを包含する。ポリカルボン酸は公知の方法で形成してもよく、特に脂肪族アルコール、ジオールまたはポリオールと酸無水物との反応により形成してもよい。たとえば、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールをヘキサヒドロフタロ酸無水物と反応して、ポリカルボン酸を形成し、これをエピクロロヒドリンと反応してポリグリシジルエステルを得てもよい。
【0058】
そのようなポリエポキシドの別の例は多価フェノールおよび脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルである。ポリエポキシドは多価フェノールまたは脂肪族アルコールとエペハロヒドリン、たとえばエピクロロヒドリンとをアルカリの存在下でエーテル化することによって製造してもよい。好適なポリフェノールの例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。好適な脂肪族アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,2−プロピレングリコールおよび1,4−エチレングリコールが挙げられる。また、環状脂肪族ポリオール、たとえば1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよび水素化ビスフェノールAを用いてもよい。
【0059】
上記エポキシ含有ポリマーの他に、ある種の低分子量ポリエポキシドモノマーおよびオリゴマーを用いてもよい。これらの物質の例は米国特許4,102,942の第3欄第1〜16行に記載されており、この記載をここに挿入する。そのような低分子量ポリエポキシドの特定の例は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートである。これらの物質はエポキシ含有アクリルポリマーである脂肪族ポリエポキシドである。前記ポリエポキシドの代りにあるいは共に用いることができる他の物質は、グリシドールとイソシアネートの反応生成物、たとえばm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、ジ−官能性イソシアネート、トリ官能性イソシアネートおよびこれらの反応生成物の混合物を含んでもよい。
【0060】
好ましいエポキシ含有アルリルポリマーはアクリル官能性および少なくとも1つのエポキシ基を有するエチレン系不飽和モノマーと少なくとも1つの重合性エチレン系モノマーであってエポキシ基を有さないものとの共重合体である。使用に好ましいエポキシ基を有するエチレン系不飽和モノマーは1,2−エポキシ基を有するものであって、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートおよびアリルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0061】
エポキシ基を有さないエチレン系不飽和モノマーはエポキシ含有不飽和モノマーと遊離ラジカル付加重合により反応して、エポキシ官能性共重合体を形成する公知のものである。そのようなエポキシ基を有さないエチレン系不飽和モノマーの非限定的な例としては、アルキル基に炭素数1〜20を有するアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル、たとえばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなど;ビニルモノマー、たとえばスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0062】
使用しうる他の架橋剤はブロックまたは非ブロック化ポリイソシアネート、サイテック・インダストリーズ・インク(Cytec Industries,Inc.)から市販のサイメル(CYMEL(登録商標))シリーズの樹脂のごときメラミンホルムアルデヒド樹脂およびアクリルアミド官能性ポリマー(たとえば、N−ブトキシメチル(メタ)アクリロアミド;米国特許5,618,586に記載、この記載をここに挿入する)が挙げられる。配合してもよい他の成分は可塑剤、たとえばベンゾエートエステル(BENZOFLEX(登録商標)P−200可塑剤)である。架橋剤と可塑剤はより硬い硬化被膜あるいは柔軟性のある硬化被膜をそれぞれ提供するのに十分な量で用いる。
【0063】
本発明のホトクロミックポリ酸無水物被覆組成物はさらに組成物に望ましい特性を与えるかまたは組成物を基材へ塗布および硬化するのに用いられる方法に対して必要であるかまたはそれらから得られる硬化被膜を向上するための一般的な他の成分を含んでもよい。そのような成分はレオロジーコントロール剤、レベリング剤(たとえば界面活性剤)、開始剤、硬化禁止剤、遊離ラジカルスカベンジャーおよび接着促進剤(たとえば炭素数1〜4のアルコキシ基を有するトリアルコキシシラン類、たとえばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランおよびアミノエチルトリメトキシシラン)が挙げられる。
【0064】
本発明のポリ酸無水物被覆組成物中に用いてもよいホトクロミック成分は有機ホトクロミック化合物であって、これらは単独でまたは他の補足的なホトクロミック化合物、すなわち約400〜700nmの範囲内に少なくとも1つの最大活性吸収を有する有機ホトクロミック化合物、またはそれらを含む物質であって、それらは被膜を調製するのに用いられるポリ酸無水物組成物中に導入、たとえば溶解または分散され、その化合物または化合物の混合物は活性時に適当な色相に着色するものと共に用いてもよい。
【0065】
より好適には、有機ホトクロミック化合物は:
(a)400〜525nmの可視光λmaxを有する少なくとも1つのホトクロミック有機化合物;および
(b)525〜700nmの可視光λmaxを有する少なくとも1つのホトクロミック有機化合物
を含有する。
【0066】
本発明のポリ酸無水物被覆組成物中に用いる適当なホトクロミック化合物の例としては、ベンゾピラン、ナフトピラン(たとえば、ナフト[1,2−b]ピランおよびナフト[2,1−b]ピラン)、エナンスロピラン、キノピラン、ベンゾキサジン、ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾキサジンおよびインデノ融合ナフトピラン類(米国特許5,645,767に記載)が挙げられる。特定の例としては米国特許5,658,501の新規なナフトピラン類およびこの特許の第11欄第57行から第13欄第36行に記載の補助的有機ホトクロミック物質が包含される。他のホトクロミック物質はホトクロミック金属ジチゾネート、たとえば水銀ジチゾネート(たとえば米国特許3,361,706に記載のもの);およびフルギドあるいはフルギミド、たとえば3−フリルおよび3−チエニルフルギドおよびフルギミド、米国特許4,931,220の第20欄第5行から第21欄第38行に記載のもの、および上記適当なホトクロミック物質の混合物が挙げられる。
【0067】
上記特許におけるホトクロミック化合物に関する記載はここに参考としてすべて導入する。本発明のホトクロミック被膜は1つのホトクロミック化合物または所望によりホトクロミック化合物の混合物を含んでもよい。ホトクロミック化合物の混合物はある種の活性色、たとえば中間色のグレーまたは茶色のごとき色を達成するのに用いられる。さらにそのような色を記載する中間色または方法に関して米国特許5,645,767の第12欄第66行〜第13欄第19行に記載されている。
【0068】
本発明の被膜または重合体に用いられうる前記ホトクロミック物質の量は活性時に裸眼でホトクロミック効果を認識するのに十分な量である。一般的にそのような量はホトクロミック量と記載している。
【0069】
使用する前記ホトクロミック化合物の相対量はそのような活性種化合物の色の相対濃度および適当な所望の色に基づいて変化してもよい。一般に、被覆組成物中へ導入されるホトクロミック化合物の量は被覆組成物の固形分の重量に基づいて0.1〜40重量%の範囲内でありうる。好ましくは、ホトクロミック物質の濃度は1.0〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%、もっとも好ましくは5〜15重量%、たとえば7〜14重量%である。
【0070】
前記ホトクロミック化合物を被覆組成物中に導入する方法は、ホトクロミック物質を有機ポリオール中に溶解または分散する方法、ホトクロミック物質をポリ酸無水物形成性被覆組成物の混合物中に加える方法、および/またはそれを有機ポリオールまたは被覆組成物中に加える前に溶媒に溶解する方法がある。また、ホトクロミック化合物を当業者に公知の浸透、吸着または他の移行方法によって硬化した被膜または重合物中に導入してもよい。
【0071】
化学的にあるいは色相的に適合し得る色相、すなわち染料を被覆組成物に添加したり、被覆物品に塗布したりまたは塗装前に基材に塗布したりしてより美的結果、たとえば医療的理由あるいはフアッションの理由を達成してもよい。選択しうる特定の染料はいかなるものであってもよく、前記必要性あるいは達成しうる結果に基づいて変化する。1つの態様では染料を選択して活性時にホトクロミック物質から得られる色を適合させ、たとえば特定の入射光の波長を吸収したりより中間色を達成したりする。また他の態様では、染料を選択してホトクロミック物質が不活性状態にあるときに、所望の色相を基材および/または塗装物品に与える。
【0072】
補助剤をホトクロミック物質と共に被覆組成物中に、被覆組成物または硬化被膜中のホトクロミック物質の適用または導入前、同時もしくは後に導入してもよい。たとえば、紫外線吸収剤をホトクロミック物質に加えて、被覆組成物に加えてもよく、そのような吸収剤をホトクロミック被膜と入射光との間の層として重ねてもよい。さらに、安定化剤をホトクロミック物質に加えて、被覆組成物に添加する前に混合して、ホトクロミック物質の光劣化耐性を改良する。安定化剤、たとえばヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、酸化防止剤、たとえばポリフェノール酸化防止剤、非対照ジアリールオキサルアミド(オキサニリド)化合物および一重項酸素クエンサー、たとえば有機配位子によるニッケルイオン錯体または安定化剤の混合物が適当である。それらは単独または組合せて用いてもよい。そのような安定化剤は米国特許4,720,356、5,391,327および5,770,115に記載されており、その記載をここに導入する。
【0073】
本発明の被覆組成物はいかなるタイプの基材、たとえば紙、ガラス、セラミックス、木、メーソンリー(石壁)、布、金属およびポリマー有機材料に塗布してもよい。好ましくは、基材はポリマー有機材料、特に熱硬化または熱可塑性ポリマー有機材料、たとえば、熱可塑性ポリカーボネート型ポリマーおよびコポリマーならびにポリオール(アリルカーボネート)のホモポリマーまたはコポリマーを用いてもよい。
【0074】
基材の少なくとも1表面に塗布する被覆組成物の量は、硬化被膜が紫外照射した場合に光学濃度(ΔOD)において必要な変化を示す被膜を製造するのに十分な有機ホトクロミック化合物の量を導入するのに必要な量である。光学濃度における必要な変化は72°F(22℃)でテストした場合に、30秒後に少なくとも0.15のΔODを示し、15分後に少なくとも0.50のΔODを示すことである。ホトクロミック被膜(被膜中のホトクロミック)のブリーチ比は実施例8のパートC中で記載されたホトクロミック反応テストを用いて200秒以下であるべきである。被膜の厚さは、5ミクロン以上、好ましくは10ミクロン以上、より好ましくは20ミクロン以上、たとえば25ミクロン以上であり、200ミクロン以下、好ましくは100ミクロン以下、より好ましくは50ミクロン以下、たとえば40ミクロン以下である。被膜の厚さは上記値内で、上記値のいかなる組合せの範囲であってもよい。
【0075】
典型的には基材を被覆組成物を塗布する前に、表面を洗浄または接着力を向上するために処理するのか好ましい。プラスチック、たとえばCR−39ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーまたは熱可塑性ポリカーボネートから得られるもの、たとえばビスフェノールAとホスゲンから誘導される樹脂の場合の効果的な処理方法は、超音波洗浄、有機溶媒の水混合物、たとえばイソプロパノール:水またはエタノール:水の50:50混合物での洗浄、紫外線処理、活性ガス処理、たとえば低温プラズマ、またはコロナ放電での処理、および化学処理、たとえば加水分解、即ち表面をアルカリの水溶液、すなわち水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液での処理(フッ素界面活性剤を含んでもよい)での表面のエッチングが挙げられる。ポリマー有機材料の表面処理については、米国特許3,971,872第3欄第13〜25行;米国特許4,904,525、第6欄第10〜48行;米国特許5,104,692第13欄第10〜59行に記載されている。
【0076】
ガラス表面の洗浄に用いる処理はガラス表面に存在する汚れの種類に依存する。そのような処理は当業者に公知である。たとえば、低い発泡性で容易にリンスする洗剤を含む水溶液でガラスを洗浄し、ついでリンス後、リントフリー布などで乾燥する方法、および昇温(約50℃)洗浄水中で超音波力処理して、その後リンスおよび乾燥する方法が挙げられる。洗浄前にアルコール系洗浄剤または有機溶媒で前洗浄することがラベルまたはテープからの接着剤を除去するために必要であるかも知れない。
【0077】
ある種の場合、本発明の被覆組成物の塗布前に基材の表面にプライマーを塗布することが必要であるかも知れない。プライマーは被覆成分と基材との相互作用を共に防止するバリア被膜としておよび/または基材に対する被覆組成物の接着する接着被膜として機能する。プライマーの塗布は種々の塗装方法によって行ってもよく、たとえばスプレー塗装、スピン塗装、拡散塗装、カーテン塗装、浸漬塗装、キャスティングまたはロール塗装が挙げられる。
【0078】
保護被膜、通常ポリマー形成性オルガノシランを含むものを、後に塗布する被膜との接着性を向上するためのプライマーとして使用することは記載した。特に、非着色性被膜の使用が好ましい。市販の被覆製品の例としてはSDC・コーティングズ・インクおよびPPG・インダストリーズ・インクからそれぞれ市販のSILVUE124およびHI−GARDが挙げられる。また、被覆される物品の用途によるが、適当な保護被膜、すなわち被覆組成物の物質表面に研磨防止被膜を形成して、摩擦あるいは研磨の影響による傷を防止する。ある種の場合には、プライマーと保護被膜とは相互に交換することができる、すなわち同じ被膜がプライマーおよび保護被膜として用いることができる。他の被膜および表面処理、たとえば着色性被膜、非反射表面などを本発明の硬化被膜に適用してもよい。
【0079】
本発明の被覆組成物はプライマーおよび保護被膜に記載した同じ方法で、当業者に公知の方法を用いて塗装してもよい。被覆組成物はスピンコーティング、カーテン塗装、浸漬塗装、スプレー塗装または積層被膜を形成するのに用いる方法によって塗布してもよい。そのような積層被膜形成方法は米国特許4,873,027に記載されており、その特許をここに導入する。
【0080】
被覆組成物を基材の処理表面に塗布して被膜を硬化する。基材および本発明の被覆組成物に選択された成分に基づいて、被覆を22℃〜200℃の温度で硬化する。加熱が硬化被膜をうるために必要であるならば、80℃から加熱により基材が損傷を受けない温度以下の温度、たとえば80℃〜200℃の温度が好ましい。たとえば、ある種の有機ポリマー材料は基材に損傷を与えないで被膜を硬化するために130℃以下で1〜16時間加熱してもよい。温度範囲は基材を硬化すると記載されているが、当業者は上記温度以外の温度も用いてもよいことに認識する。ホトクロミックポリ酸無水物被覆組成物を硬化する別の方法には、被膜を赤外線、紫外線、熱、マイクロウェーブ、ガンマー線または電子線に照射して、ポリマー成分のポリマーに重合反応を被膜中で開始することが含まれる。これは加熱した後に行ってもよい。
【0081】
好ましくは、得られた硬化被膜は光学被膜として許容しうる「外観(cosmetic)」標準を満足する。塗装レンズの化粧結果の例としてはピット、スポット、インクロージョン、クラックまたは被膜のクレーターが挙げられる。最も好ましくは、本発明のホトクロミック被覆組成物を用いて調製された被膜は実質上そのような表面欠陥を有さない。
【0082】
本発明の被覆組成物の基材でありうるポリマー有機材料の例としては、米国特許5,658,501、第15欄第28行から第16欄第17行に記載のモノマーまたはモノマー混合物のホモポリマーおよび共重合体のポリマーでありうる(この記載をここに挿入する)。
【0083】
上記モノマーおよびポリマーの例としては、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、たとえばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(CR−39として市販)、ポリオール(メタ)アクリロイル末端カーボネートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、ウレタンアクリレートモノマー、ポリ(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンクロライド)、ポリウレタン、ポリチオウレタン、熱可塑性ポリカーボネート(たとえば、ビスフェノールAとホスゲンから誘導されるカーボネート結合樹脂;LEXANとして市販)、ポリエステル(たとえば、MYLARとして市販の物質)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルブチラール、およびポリ(メチルメタクリレート)(たとえば、PLEXIGLASとして市販の材料)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0084】
さらに好ましい組合せとしては、本発明のホトクロミックポリ酸無水物被覆組成物と、ポリマー状有機材料、たとえば光学的にクリアーな重合体(すなわち、光学用途に適当な材料)、たとえば光学要素、なかんずく平面および視力矯正眼科用レンズ、窓、クリアポリマー状フィルム、自動車用透明体(たとえばウインドシールド)、飛行機用透明体、プラスチックシートなどとの組合せである。そのような光学的にクリアな重合体は屈折率約1.48〜約1.75、たとえば約1.495〜約1.66を有してもよい。特に好ましくは、熱可塑性ポリカーボネートから得られる光学要素である。本発明のホトクロミックポリ酸無水物被覆組成物をポリマーフィルムに「アップリケ」の形で塗布することは米国特許5,198,267の第17欄第28行〜第18欄第57行に記載の方法で行ってもよい。
【0085】
特に最も好適な組合せは本発明のホトクロミックポリ酸無水物被覆組成物と光学要素との組み合わせで、ホトクロミック光学物品を得ることである。そのような物品は光学要素に対しプライマーを塗布し、その後本発明のホトクロミックポリ酸無水物組成物および適当な保護被膜を塗布することにより得てもよい。得られた硬化被膜は好ましくは光学被膜用の許容しうる「外観」標準を満足し、最も好ましくは実質上外観の欠点を有しない。
【0086】
本発明の他の態様において、ホトクロミック被覆組成物を用いて重合物、たとえば成形固体状光学クリア重合体(ポリマー状有機材料と定義できる)に形成する。被覆組成物の重合は重合性組成物に触媒を加えて、組成物および所望の形に適当な方法で硬化することにより行ってもよい。得られた重合物は厚さ0.5mm以上を有してよい。
【0087】
1つの意図した態様においては、ガラスの2つの部分に分かれたレンズモールドを脱溶解ホトクロミック被覆組成物、すなわち極力溶媒を少なくした重合性組成物であって触媒量のN,N−ジメチルドデシルアミンを含んでいるもので満たす。ガラスモールドを封止してオーブン中に置く。熱重合サイクルを10〜20時間で約45〜90℃で開始する。その後、モールドを開けてレンズ、すなわち重合物、を取り出す。このようにして得られたポリマーレンズをレンズ中の残存ストレスを解消するのに十分な期間と温度でアニールする。温度は一般的に100〜120℃で、アニールは1〜5時間続ける。ホトクロミック材料が重合性組成物中に包含していない場合には、重合物中に当業者に公知の吸収、透過または他の移行方法によって導入してもよい。
【0088】
さらに有用な態様では、本発明のホトクロミック重合性組成物の予め決められた量を球状ネガティブガラスモールドによって限定された体積中に分配する。そのモールドはほぼ表面カーブ(±0.05ジオプター)およびセミフィニッシュドシングルバージョン(SFSV)レンズの外径にマッチする。ガラスモールドは環状ポリビニルクロライドガスケットで合成させ、ガスケットはモールド上約0.2mmに広がり、ガラスモールドの外径より約4mm小さな内径を有する。モノマーを分配した後、SFSVレンズを注意深く重合組成物上に置き、組成物が限定された体積を満たすように広がる。レンズの外径と等しいかまたはそれ以上の外径を有する円状ガラスプレートをレンズの後ろの表面に置く。スプリングクランプを位置し、クランプの一方の端はネガチブモールドの前面に置き、他方はガラスプレートの裏面に置いた。得られたアッセンブリをプレートレンズガスケットモールドとの外周をポリウレタンテープを用いてシールした。アッセンブリをエアーオーブンで60分間32〜95℃に予熱した。温度を95℃〜125℃に上げ、3時間のインターバルで82℃に落とした。アセンブリをレンズとモールドとの間のガスケットの下にウエッジを挿入して分離した。レンズは180〜200ミクロンの接着層を有する。ホトクロミック材料が重合性組成物中に含まれていないならば、ホトクロミック物質を接着層中に吸着、浸透または他の当業者に公知の移行方法で導入してもよい。
【0089】
重合物、すなわちレンズおよび接着層を有するレンズを共に、フィッシャーミクロ硬度および実施例8のパートCに記載の方法によるホトクロミック性能をテストした時に、フィッシャーミクロ硬度50〜130N/mmおよびΔOD30秒後少なくとも0.15で、15分後少なくとも0.50であり、ブリーチ比200秒以下であった。
【実施例】
【0090】
本発明を以下の実施例に基づき詳細に説明する。これら実施例は単に説明のみであり、数字上の変更または変性は当業者に公知の範囲でなし得る。
【0091】
組成物A
以下の材料を記載の順番と方法に応じて攪拌器、還流管、添加ロート、窒素ガス導入管、外の電子コントローラに連結された内部温度プローブおよび加熱マントルを備えた適当な反応容器に添加した。
【0092】
チャージ1
成分 重量(g)
メチルアミルケトン 508.9
【0093】
チャージ2
成分 重量(g)
ヒドロキシプロピルメタクリレート 577.6
ブチルメタクリレート 396.7
アクリル酸 19.2
メチルメタクリレート 485.3
ACE(1) 96.3
第3級ドデシルメルカプタン 19.2
【0094】
チャージ3
成分 重量(g)
メチルアミルケトン 380.0
ジ−t−アミルパーオキシド 144.5
【0095】
チャージ4
成分 重量(g)
メチルアミルケトン 128.3
ジ−t−アミルパーオキシド 9.8
【0096】
チャージ5
成分 重量(g)
メチルアミルケトン 83.5
【0097】
(1)等モル量のアクリル酸およびシェル・化学社から「CARDURA E」として市販のバーサティック酸のグリシジルエステルを0.1%オクチル酸亜鉛を触媒として用いて反応したアクリルモノマー。
【0098】
チャージ1を反応容器に加え、窒素を容器中に導入し、攪拌器を回転させて温度をかけた。内容物が還流温度に達したときに、チャージ2および3を同時に3.0時間かけて連続的に添加した。チャージ2および3の添加終了時にチャージ4を1時間かけて添加した。チャージ4の添加終了後、反応混合物を還流下に1時間保持した。チャージ5を加え反応容器内容物を室温に冷却した。得られたポリマー溶液は計算固形分含量は総溶液重量に基づき約60%であった。ポリマーはポリスチレンを標準として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフイーにより測定して重量平均分子量約4,567およびヒドロキシル価170(ボリマー固形分に基づく)を有した。
【0099】
組成物B
米国特許4,798,746の実施例1のそれと比較方法を行って、以下の組成物Bを得た。
【0100】
チャージ1
成分 重量(g)
エチル−3−エトキシプロピオネート 93.5
ブチルアセテート 72.5
【0101】
チャージ2
成分 重量(g)
スチレン 234.0
無水マレイン酸 110.0
ブチルアクリレート 78.0
メチルメタクリレート 78.0
エチル−3−エトキシプロピオネート 93.8
ブチルアセテート 72.5
【0102】
チャージ3
成分 重量(g)
LUPERSOL PMS(登録商標)(2) 80.0
エチル−3−エトキシプロピオネート 34.2
【0103】
チャージ4
成分 重量(g)
LUPERSOL PMS(登録商標) 5.0
エチル−3−エトキシプロピオネート 26.6
【0104】
チャージ5
成分 重量(g)
ブチルアセテート 21.7
【0105】
(2)ペンワルト・コープ(Pennwalt Corp.)から市販のミネラルスプリット中のt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートの50%溶液。
【0106】
チャージ1を反応容器に添加し、攪拌器を回し、熱を内容物にかけた。チャージが還流温度、約142℃に達したときに、チャージ2および3を同時に連続的に3.0時間の時間をかけて添加し、容器内容物を還流条件に保持した。チャージ2および3の添加終了後、反応混合物を還流下に約1.0時間保持した。チャージ4を30分かけて連続的に添加し、反応混合物を還流下にさらに2.0時間保持した。加熱を止めてチャージ5を添加した。容器内容物を室温に冷却した。得られたポリマー溶液は110℃で1時間後に測定して総固形分含量54.5重量%および固形分に基づいて450当量有した。
【0107】
組成物C
以下の成分をその順序および方法で攪拌器、還流管、添加ロート、窒素ガス導入管、外部電子コントローラに接続した内部温度プローブおよび加熱マントルを有する適当な反応容器に添加した。
【0108】
チャージ1
成分 重量(g)
キシレン 340.1
【0109】
チャージ2
成分 重量(g)
グリシジルメタクリレート 720.0
シクロヘキシルメタクリレート 360.0
ブチルアクリレート 120.0
【0110】
チャージ3
成分 重量(g)
キシレン 110.0
LUPERSOL 555(M60)(9) 40.0
【0111】
チャージ4
成分 重量(g)
キシレン 17.0
ジ−t−アミルパーオキシド 12.0
【0112】
(9)E.I.デュポン・カンパニーから市販のt−アミルパーアセテート。
【0113】
チャージ1を反応容器に加え、窒素ガスを容器中に投入し、攪拌をして加熱した。内容物が還流温度に達したときに、チャージ3を3.5時間かけて連続的に添加した。チャージ3の添加開始後5分後、チャージ2を3.0時間かけて連続的に添加した。チャージ3の添加終了後、反応混合物を還流条件で0.5時間保持した。チャージ4を0.5時間かけて連続的に添加し、反応混合物を還流下に2.0時間保持した。得られたポリマー溶液は総溶液重量に基づき計算総固形分含量約70%であった。ポリマーはスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで約7,652の重量平均分子量を有した。
【0114】
実施例1
以下の成分を記載の順序で攪拌器を有する適当な容器に加えた。
【0115】
チャージ1
成分 重量(g)
組成物A 3.4552
pTHF(3) 1.7876
組成物B 6.6280
ホトクロミック1(4) 0.6003
NMP(5) 1.5078
【0116】
チャージ2
成分 重量(g)
触媒(6) 0.2307
【0117】
(3)グレート・レイクス・ケミカル・コープ(Great Lakes Chemical Corp.)から市販の数平均分子量1000を有するポリ(オキシテトラメチレン)ジオール。
【0118】
(4)紫外線照射したときに青い色を示すホトクロミックナフト[1,2−b]ピラン
【0119】
(5)99%純度のN−メチルピロリドン溶媒。
【0120】
(6)別途指示しない限り実施例および比較例のすべてにおいて触媒として用いられるN,N−ジメチルドデシルアミン。
【0121】
チャージ1のすべての材料を反応容器に添加した後、攪拌をし、30〜60分間混合した。得られた溶液を約24時間静置した。チャージ2を加え、溶液を30〜60分間混合した。
【0122】
実施例2
以下の成分を記載の順序で攪拌器を有する適当な容器に添加した。
【0123】
チャージ1
成分 重量(g)
組成物A 4.0112
pTHF 1.3976
組成物B 6.6500
ホトクロミック1 0.5981
NMP 1.5097
【0124】
チャージ2
成分 重量(g)
触媒(6) 0.2367
【0125】
実施例3
ステップ1
以下の成分を記載の順序で攪拌器を備えた反応容器に添加した。
【0126】
成分 重量(g)
組成物A 33.4
組成物B 35.4
NMP 5.0
【0127】
すべての材料を反応容器に添加終了後、攪拌をし60分間攪拌した。
【0128】
ステップ2
以下の成分を記載した順序で攪拌器を有する適当な容器に添加した。
【0129】
成分 重量(g)
ステップ1の生成物 16.6
BENZOFLEX(登録商標)P−200可塑剤(7) 1.0
NMP 1.0
ホトクロミック1 0.8
触媒(6) 0.3
【0130】
(7)ベルシコール・ケミカル・コーポレーション(Velsicol Chemical Corporation)から市販のポリエチレングリコールジベンゾエート[CAS9004−86−8]。
【0131】
すべての材料を反応容器に添加後、攪拌を開始し60分間混合した。
【0132】
実施例4
ステップ1
以下の成分を記載の順序で攪拌器を有する適当な容器に添加した。
【0133】
成分 重量(g)
pTHF 20.4
組成物A 31.7
NMP 5.0
【0134】
全成分を反応容器に添加した後、攪拌を開始し60分間攪拌した。
【0135】
ステップ2
以下の成分を記載の順序で攪拌器を備えた適当な容器に添加した。
【0136】
成分 重量(g)
ステップ1の生成物 44.7
組成物B 52.6
NMP 5.0
【0137】
すべての成分を容器に添加後、攪拌を開始し60分間攪拌した。
【0138】
ステップ3
以下の成分を用いて記載の順序に従って攪拌器を有する適当な容器に添加した。
【0139】
成分 重量(g)
ステップ2の生成物 15.3
NMP 1.0
ホトクロミック1 0.8
触媒(6) 0.3
CYMEL(登録商標)202樹脂(8) 1.2
【0140】
(8)サイテック・インダストリーズ・インクから市販のメチル化ブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂。
【0141】
すべての成分を容器に添加後、攪拌を開始し60分間混合した。
【0142】
実施例5
実施例4のステップ3の方法をステップ2の生成物15.3gを用い、サイメル202樹脂2.4g用いる以外は同様に行った。
【0143】
実施例6
実施例4のステップ3をサイメル202を組成物C 1.4gに代える以外は同様に行った。
【0144】
実施例7
ステップ1
以下の成分を記載の順序で攪拌器を有する適当な容器に添加した。
【0145】
成分 重量(g)
pTHF 2.7
組成物A 4.1
NMP 1.0
【0146】
すべての成分を容器に添加後、攪拌を開始し60分間混合した。
【0147】
ステップ2
以下の成分を記載の順序で反応機を備えた適当な容器に添加した。
【0148】
成分 重量(g)
ステップ1の生成物 7.8
組成物B 8.8
組成物C 4.2
ホトクロミック1 0.8
NMP 1.0
触媒(6) 0.3
【0149】
すべての成分を容器に添加した後、攪拌を開始し60分間混合した。
【0150】
比較例1
以下の成分を記載の順序で攪拌器を備えた容器に添加した。
【0151】
チャージ1
成分 重量(g)
組成物A 4.3924
pTHF 1.2170
組成物B 6.6362
ホトクロミック1 0.6020
NMP 1.5080
【0152】
チャージ2
成分 重量(g)
触媒(6) 0.2296
【0153】
比較例2
実施例3のステップ2を18.5gをステップ1の生成物を用い、可塑剤(BENZOFLEX(登録商標)P−200)を加えないことを除いては同様に処理した。
【0154】
比較例3
実施例4のステップ3において、ステップ2の生成物17.0gを用いて、サイメル202樹脂を加えない以外は同様に処理した。
【0155】
実施例8
パートA
実施例1〜7および比較例1〜3で調製した溶液をスピン塗装方法でCR−39モノマーから形成したレンズブランクに塗布した。被膜を塗布前にレンズブランクを洗剤で洗浄し水でリンスをし、23〜25℃で保持した水酸化ナトリウム溶液40重量%中で20分間浸漬し、洗剤で洗浄後水でリンスした。溶液を各々のレンズに小分けし、表1に示す時間1500rpmでスピンした。表1の種々の時間を用いて約20ミクロンの被膜厚および約1.8〜約2.2のUV吸収性(390nm)を得た。異なる時間を実施例および比較例の溶液濃度が異なるために用いた。実施例1、2および比較例1の溶液で塗布したレンズを140℃に保持した一般的なオーブン中で60分間硬化した。他の硬化レンズのすべては140℃で30分間硬化した。
【0156】
パートB
パートAにおいて調製したホトクロミック被覆したテストサンプルをフィッシャースコープHCV、モデルH−100(フイッシャ・テクノロジー・インクから市販)を用いてミクロ硬度(F)テストにかけた。被覆テストサンプルのN/mmで測定したミクロ硬度は、各実施例用に調製したテストサンプルの中央部の2ミクロンの深さで100ミリニュートンの負荷で、30負荷ステップおよび各付加ステップ間の間隔0.5秒で少なくとも1回測定することによって行った。テスト結果を表2に示す。
【0157】
パートC
パートAにおいて調製したホトクロミック被覆したテストサンプルを光学ベンチ上でホトクロミック応答のテストを行った。光学ベンチ上でのテストの前に、ホトクロミックテストサンプルを365nm紫外線に約20分間露出して、ホトクロミック化合物を活性化し、次いで75℃のオーブン中で約20分間置いてホトクロミック化合物を脱色(非活性化し)した。被覆テストサンプルを次いで室温に冷却し、少なくとも2時間蛍光室内灯で露光し、少なくとも2時間覆いをかけて、その後オプチカルベンチ上でテストを行った。ベンチは300Wキセノン放電ランプ、リモートコントロールシャッター、短い波長放射線を除去するスコット(Schott)3mmKG−2バンドパスフィルター、ニュートラル濃度フィルタ、測定すべきサンプルを挿入してサンプル温度を維持する水晶プレートウォーターセルサンプルホルダーを備えている。
【0158】
光学ベンチのパワーアウトプット、すなわちテストサンプルを露光する光の光量をUV−Aディテクター(シリアルNo.22411)を有するGRASEBY・ホトプロニクス・モデルS−371ポータブルホットメター(シリアルNo.21536)を用いて0.67mW/cmに調節した。UV−Aディテクターはサンプルホルダー中に置き、ライト放出量を測定した。放出量の調節はランプのワット数の増減またはライトパス中のニュートラル濃度フィルターを加えたり減らしたりすることによって行った。
【0159】
タングステンランプからのモニターした平行光線はサンプルを30°表面に対して角度で通過した。レンズを通過後、タングステンランプからの光をディテクターに備え付けた570nmフィルターを通した。570nmフィルターは実施例に用いているホトクロミック化合物の波長特性を有する。デテクターからの波長シグナルをラジオメーターによって処理した。テスト条件のコントロールとデータの獲得はラブテック・ノートブック・プロ・ソフトウェアおよびI/Oボードによって処理した。
【0160】
退色状態から暗色状態への光学濃度(ΔOD)は初期トランスミッタンスを確立し、キセノンランプからのシャッターを開けて紫外放射線を供給しテストサンプルを脱色状態から活性化(すなわち、暗色)状態へ選択された間隔で変色させ、活性状態のトランスミッタンスを測定し、式:ΔOD=log(%Tb/%Ta)(式中、%Tbは退色状態でのトランスミッタンスの%であり、%Taは活性状態でのトランスミッタンス%であり、対数の底は10である。)
を用いて光学濃度における変化を計算することにより決定した。
【0161】
ΔODは570nmフィルターを用いて、UV露光の30秒後に、(72°F,22℃)の温度で保持した光学ベンチを用いて15分後に測定した。退色率(T1/2)は被覆テストサンプルにおけるホトクロミック化合物の活性形態のΔODは活性光源の除去から最大のΔOD(72°F,22℃)の2分の1に到達するまでの時間を示す。各実施例のホトクロミック被覆テストサンプルの結果を表3に示す。
【0162】
表1
実施例番号 スピン時間(秒)
1,2,7 および CE1 7
3,4 および CE2 8
5 および 6 11
CE3 5
CE:比較例
【0163】
表2
実施例No フィッシャーミクロ硬度
(N/mm
1 56
2 116
3 66
4 59
5 89
6 63
7 77
CE1 137
CE2 155
CE3 15
【0164】
表3
72°F 72°F 72°F
実施例 ΔOD @30 ΔOD @15 T 1/2
No. (秒)
1 0.29 0.86 97
2 0.20 0.81 187
3 0.22 0.93 188
4 0.28 0.75 102
5 0.21 0.64 134
6 0.35 0.76 74
7 0.34 0.76 76
CE1 0.15 0.75 257
CE2 0.04 0.37 >900
CE3 0.35 0.80 70
【0165】
表2および3の結果は、実施例1から7の溶液で塗布したレンズはミクロ硬度が56〜116N/mmであり、ΔOD30秒後は少なくとも0.20でかつ15分後は少なくとも0.64であり、退色率188秒以下を示す(すべてのテストは72°F(22℃))。
【0166】
組成物B/組成物Aの重量比70:30を有する比較例1の結果は、55/45重量比および65/35重量比を有する実施例1および2の結果と比較して、許容し得るフィッシャーミクロ硬度を示すが、T1/2は200秒を越える。実施例3と比較例2では組成は同じだが実施例3では可塑剤の量が20重量%で添加されているが、実施例3のそれと比較して比較例2は、物理的およびホトクロミック特性のいずれも好ましい範囲に入らない。
【0167】
実施例4、5では比較例3と同じ配合であるが、メラミン樹脂の量がそれぞれ10重量%および20重量%である。また実施例6および7では比較例3と同じ組成だが、エポキシ樹脂の量が20および30重量%と異なる。このような比較例3では被覆したレンズのフィッシャーミクロ硬度の結果はそれぞれ所望のレベル50N/mmよりもはるかに低い。
【0168】
本発明は、特定の実施例の詳細な記載を参照して記載したが、そのような詳細な部分に本発明の範囲が限定されるとは解してはならず、添付する特許請求の範囲に記載する範囲であると理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および該基材の少なくとも一表面上のホトクロミックポリ酸無水物被膜の組合せから成る物品であって、該被膜が(a)ヒドロキシル官能性成分とポリマー状酸無水物官能性成分との反応生成物、および(b)ホトクロミック量のホトクロミック材料を含有し、該ホトクロミック被膜がフィッシャーミクロ硬度50〜130N/mm、72゜FのΔOD 30秒後で少なくとも0.15、15分後で少なくとも0.50、かつブリーチ比200秒以下を有する物品。
【請求項2】
前記被膜のフィッシャーミクロ硬度が70〜110N/mmで、ΔODが30秒後に少なくとも0.18であり、15分後に少なくとも0.63であり、ブリーチ比が190秒以下である請求項1記載の物品。
【請求項3】
ホトクロミックポリ酸無水物被膜が、
(a)(i)少なくとも2つのヒドロキシル基および数平均分子量62〜50,000を有するヒドロキシル官能性成分と(ii)平均少なくとも2つの環状カルボン酸無水物基および数平均分子量1,000〜50,000を有するポリマー状酸無水物官能性成分との反応生成物であって、(i)のヒドロキシル基/(ii)の酸無水物基の当量比が1.0:3.0〜3.0:1.0であるもの、および
(b)ホトクロミック量のホトクロミック材料
を含有する請求項1記載の物品。
【請求項4】
ホトクロミックポリ酸無水物被膜がさらに、(i)のヒドロキシル基と(ii)の酸無水物基との硬化反応を促進するために触媒量の触媒を含有する請求項1記載の物品。
【請求項5】
触媒がジメチルココアミン、ジメチルドデシルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンまたはそれらの触媒の混合物である請求項4記載の物品。
【請求項6】
ホトクロミックポリ酸無水物被膜がさらに架橋剤、可塑剤または架橋剤と可塑剤の混合物を包含する請求項1記載の物品。
【請求項7】
架橋剤がポリエポキシド、アクリルアミド官能性ポリマー、ポリイソシアネートまたはメラミンホルムアルデヒド樹脂であり、可塑剤がベンゾエートエステルである請求項6記載の物品。
【請求項8】
ヒドロキシル官能性成分がポリアクリル酸ポリオール、ポリエステルポリオール、ウレタンポリオール、ポリエーテルポリオールまたはそれらのポリオールの混合物である請求項1記載の物品。
【請求項9】
ヒドロキシル官能性成分がポリアクリル酸ポリオール、ポリエーテルポリオールまたはそれらのポリオールの混合物である請求項8記載の物品。
【請求項10】
ポリアクリル酸ポリオールが、少なくとも2つのヒドロキシル基を有するエチレン系不飽和モノマーと、ヒドロキシル基を有さない少なくとも1つの重合性エチレン系不飽和モノマーとの共重合体である請求項9記載の物品。
【請求項11】
ポリマー状酸無水物官能性成分が、カルボン酸無水物官能性を有するエチレン系不飽和モノマー少なくとも11重量%と、酸無水物官能性を有さない他のエチレン系不飽和モノマーとを含有するモノマー混合物から誘導される請求項1記載の物品。
【請求項12】
酸無水物官能性を有さないエチレン系不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸エステル、ビニルモノマー、スチレンまたはそれらのモノマーの混合物である請求項11記載の物品。
【請求項13】
カルボン酸無水物官能性が、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、マレイン酸無水物またはそれらの酸無水物の混合物によって与えられる請求項11記載の物品。
【請求項14】
ホトクロミック材料が:
(a)可視光λmax 400nm〜525nmを有する少なくとも1つのホトクロミック化合物、および
(b)可視光λmax 525nm〜700nmを有する少なくとも1つのホトクロミック化合物
を含有する請求項1記載の物品。
【請求項15】
ホトクロミック化合物が、ベンゾピラン類、ナフトピラン類、フェナントロピラン類、キノピラン類、インデノ縮合ナフトピラン類、ベンゾキサジン類、ナフトキサジン類、スピロ(インドリン)ピリドベンゾキサジン類、金属ジチゾネート類、フルギド類、フルギミド類またはそれらの混合物である請求項14記載の物品。
【請求項16】
ホトクロミックポリ酸無水物被膜が、5〜200μmの厚さを有する請求項1記載の物品。
【請求項17】
ホトクロミックポリ酸無水物被膜が、厚さ10〜40μmを有する請求項16記載の物品。
【請求項18】
基材が、紙、ガラス、セラミック、木、メーソンリー、布、金属またはポリマー状有機材料である請求項1記載の物品。
【請求項19】
ポリマー状有機材料が、ポリ(メチルメタクリレート);ポリ(エチレングリコールビスメタクリレート);ポリ(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート);熱可塑性ポリカーボネート;ポリ(ビニルアセテート);ポリビニルブチラール;ポリウレタン;ポリチオウレタン;およびジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、エトキシル化フェノールメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーおよびそれらの混合物からなる群から成るポリマー、からなる群から選択される固体状透明ポリマーである、請求項18記載の物品。
【請求項20】
基材が光学要素である請求項19記載の物品。
【請求項21】
光学要素がレンズである請求項20記載の物品。
【請求項22】
レンズの屈折率が1.48〜1.75である請求項21記載の物品。
【請求項23】
(a)少なくとも2つのヒドロキシル基および数平均分子量62〜50,000を有するヒドロキシル官能性成分、
(b)平均少なくとも2つの環状カルボン酸無水物基および数平均分子量1,000〜50,000を有し、(a)のヒドロキシル基/(b)の酸無水物基の当量比が1.0:3.0〜3.0:1.0であるポリマー状酸無水物官能性成分、および
(c)ホトクロミック量のホトクロミック材料
を含有する重合性組成物の重合体であり、該重合体がフィッシャーミクロ硬度50〜130N/mm、72°FのΔODが30秒後で少なくとも0.15および15分後で少なくとも0.50、ブリーチ比200秒以下を有するものを含む、ホトクロミック物品。
【請求項24】
重合性組成物がさらに触媒量の触媒を含む請求項23記載のホトクロミック物品。
【請求項25】
前記物品がレンズである請求項23記載のホトクロミック物品。
【請求項26】
物品の厚さが少なくとも0.5mmである、請求項23記載のホトクロミック物品。

【公開番号】特開2011−184697(P2011−184697A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−106180(P2011−106180)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【分割の表示】特願2000−586847(P2000−586847)の分割
【原出願日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【出願人】(399074983)ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド (60)
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
【Fターム(参考)】