説明

ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法

ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法
ポリ(アリーレンエーテル)をキャッピング剤と反応させてキャッピング反応混合物を形成するステップと、該キャッピング反応混合物を高濃度の塩基性水溶液で洗浄するステップと、完全分離方法を用いて前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を分離するステップと、を含む方法によりキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)類が調製される。該洗浄方法は、キャッピング関連不純物の除去に効果的であり、驚くことに、該キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を分解させない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリ(アリーレンエーテル)は、その優れた耐水性、寸法安定性および特有の難燃性で知られるプラスチックの一種である。強度、剛性、耐薬品性および耐熱性などの特性は、他のプラスチックとブレンドすることによって調整でき、それによって、衛生器具、配電盤、自動車部品および被覆線などを含む様々な消費財の要件を満たすことができる。また、ポリ(アリーレンエーテル)類は、硬化して非常に硬質なプラスチックを形成する熱硬化性樹脂の添加剤としても使用される。ポリ(アリーレンエーテル)を添加することによって、脆性破壊がはるかに少ない硬化型熱硬化性樹脂を製造できる。
【0002】
いくつかの用途、特に熱硬化性組成物での用途に対しては、該ポリ(アリーレンエーテル)は、末端水酸基をメタアクリレートエステルなどの重合性基でキャップすることによって改質できる。該キャップ化反応は、試薬、触媒、および、生成するキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)に混入して該キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)が組み込まれた熱硬化性組成物の誘電特性を損なう可能性のある副生成物に関連する。キャッピング関連混入物の分離方法にはいくつかの方法が知られているが、それらには実質的な欠点がある。Freshourらの米国特許第6,897,282号に記載されるように、反溶媒から該キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を沈殿させる方法では、完全分離方法に対してキャッピング関連混入物の濃度を低減できる。しかしながら、沈殿物からのキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の収率は低いことがあり、特に固有粘度の低いキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)類に対してはそうである。更に、該沈殿プロセスでは反溶媒の取り扱いとその処理の問題が生じ、また、固形粒子特性の悪いキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)ができてしまう。また、Freshour特許には、不揮発化押出を用いた完全分離の前に、キャップ化反応混合物を水で「洗浄する」(抽出する)方法が開示されている。しかしながら、該方法は、大量の洗浄水溶液(洗浄水:ポリ(アリーレンエーテル)溶液の体積比が少なくとも1:1)が必要であり、また、分離されたキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)中の不純物の残存濃度が高い(例えば、分離されたキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)中には、濃度が2,668〜25,003ppmのメタクリル酸が観察された)という点において結局効果的でなかった。また、本発明者らは、Freshour特許におけるラボスケールでの方法は、商業プロセスに拡大することが難しいことを見出した。こうしたことから、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)類の分離方法を改善することが求められている。特に、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の収率が高く、キャッピング関連不純物の濃度を実質的に低減できるプロセスが求められている。
【発明の開示】
【0003】
上記およびその他の欠点は、溶媒とキャッピング触媒の存在下でポリ(アリーレンエーテル)をキャッピング剤と反応させて、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)、溶媒、キャッピング剤、キャッピング触媒およびキャッピング副生成物を含むキャッピング反応混合物を形成するステップと、前記キャッピング反応混合物を、少なくとも5重量パーセントの塩基を含む塩基性水溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む精製溶液を生成するステップと、完全分離方法を用いて前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を分離するステップと、を含むことを特徴とするキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法により緩和される。
【0004】
別の実施形態は、溶媒とキャッピング触媒の存在下でポリ(アリーレンエーテル)をキャッピング剤と反応させて、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)、溶媒、キャッピング剤、キャッピング触媒およびキャッピング副生成物を含むキャッピング反応混合物を形成するステップであって、前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノールおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含むモノマー類を酸化重合して得られた生成物であり、前記キャッピング剤は(メタ)アクリル酸無水物であり、前記(メタ)アクリル酸無水物と前記ポリ(アリーレンエーテル)の水酸基とのモル比は1:3であり、前記溶媒はトルエンであり、前記キャッピング触媒は、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンであり、前記キャッピング副生成物は(メタ)アクリル酸である、ことを特徴とするステップと、塩基性水溶液を用いた洗浄前に、前記キャッピング反応混合物中のキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の濃度を5〜25重量パーセントに調整するステップと、前記キャッピング反応混合物を、5〜15重量パーセントの水酸化ナトリウムを含む塩基性水溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第1の精製溶液を生成するステップであって、前記キャッピング反応混合物を塩基性水溶液で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、前記第1の精製溶液を、0.2〜1モル/Lの酢酸を含む酸性溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第2の精製溶液を生成するステップであって、前記第1の精製溶液を酸性水溶液で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、前記第2の精製溶液を水で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第3の精製溶液を生成するステップであって、前記第2の精製溶液を水で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を不揮発化押出により分離するステップと、を含むことを特徴とするキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法である。
【0005】
別の実施形態は、前段落に記載の方法で調製された(メタ)アクリレートキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)であり、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリロイル無水物として、2,500重量ppm以下の(メタ)アクリロイル基と、1,000重量ppm以下の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンと、を含むことを特徴とする。
【0006】
以下、上記の実施形態およびその他の実施形態の詳細について説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは、溶媒とキャッピング触媒の存在下でポリ(アリーレンエーテル)をキャッピング剤と反応させて、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)、溶媒、キャッピング剤、キャッピング触媒およびキャッピング副生成物を含むキャッピング反応混合物を形成するステップと、前記キャッピング反応混合物を、少なくとも5重量パーセントの塩基を含む塩基性水溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む精製溶液を生成するステップと、完全分離方法を用いて前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を分離するステップと、を含むことを特徴とするキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法を用いて、キャッピング関連不純物の濃度が低いキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を高収率に生成できることを見出した。高濃度の塩基性水溶液を用いた洗浄では、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の塩基触媒性分解を引き起こすと考えられていたが、有意な分解は見られなかったことから、この方法の成功は特に驚くべきものがある。
【0008】
本方法の1ステップで、溶媒とキャッピング触媒との存在下でポリ(アリーレンエーテル)をキャッピング剤と反応させて、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)、溶媒、キャッピング剤、キャッピング触媒およびキャッピング副生成物を含むキャッピング反応混合物を生成する。前記ポリ(アリーレンエーテル)は、前記キャッピング剤と反応する少なくとも1つのフェノール性水酸基を含む。好適なポリ(アリーレンエーテル)類には、下記式を有する繰り返し構造単位を含むものが含まれる。
【0009】
【化1】

式中、Zはそれぞれ独立に、ハロゲン、第3級ヒドロカルビル基ではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシまたは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシであり、Zはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、第3級ヒドロカルビル基ではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシまたは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書では、用語「ヒドロカルビル」は、単独で用いられる場合であってもあるいは接頭辞、接尾辞または他の用語の一部分として用いられる場合であっても、炭素と水素のみを含む残基を指す。該残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和、あるいは不飽和であり得る。また該残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和、および不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含み得る。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換として記載されている場合は、該置換残基の炭素員および水素員上のヘテロ原子を選択的に含み得る。したがって、置換と具体的に記載される場合は、該ヒドロカルビル残基には、ハロゲン類、酸素、窒素、硫黄、シリコンあるいは燐などのヘテロ原子も1つあるいは複数含み得る。置換された場合は、該ヒドロカルビル残基には、炭化水素残基骨格に垂れ下がった、あるいはこの骨格内に前記ヘテロ原子類を含み得る。1例として、Zは、末端の1−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニレン残基と、酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応によって形成されるジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0010】
一部の実施形態では、前記ポリ(アリーレンエーテル)には、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、あるいはこれらの組み合わせが含まれる。一部の実施形態では、前記ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。上記のように、該ポリ(アリーレンエーテル)には、典型的にヒドロキシ基のオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基を有する分子が含まれ得る。また、よく存在するものとしては、テトラメチルジフェノキノン副生成物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から典型的に得られるテトラメチルジフェノキノン(TMDQ)末端基がある。前記ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマ、ランダム共重合体、グラフト共重合体、イオノマー、ブロック共重合体、あるいはこれらのものの少なくとも1つを含む組み合わせの形態で存在し得る。
【0011】
前記ポリ(アリーレンエーテル)には、フェノール性水酸基が1つあるいは複数含まれ得る。ポリ(アリーレンエーテル)にフェノール性水酸基が1つ含まれる場合、単官能性ポリ(アリーレンエーテル)と呼ばれる。ポリ(アリーレンエーテル)に複数のフェノール性水酸基が含まれる場合、多官能性ポリ(アリーレンエーテル)と呼ばれる。一部の実施形態では、前記多官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、下記構造を有する二官能性ポリ(アリーレンエーテル)(すなわち、フェノール性水酸基を2つ有するポリ(アリーレンエーテル))である。
【0012】
【化2】

式中、QとQは、各フェニレンエーテル単位内において同一であり、ハロゲンと、第3級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビルと、C−C12ヒドロカルビルチオと、C−C12ヒドロカルビルオキシと、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシと、から構成される群から選択され、QとQはそれぞれ独立に、水素と、ハロゲンと、第3級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビルと、C−C12ヒドロカルビルチオと、C−C12ヒドロカルビルオキシと、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシと、から構成される群から選択され、xとyはその合計が少なくとも2、具体的には少なくとも3、より具体的には少なくとも4であって、独立に、0〜約30、具体的には0〜約20であり、より具体的には0〜約15であり、さらにより具体的には0〜約10、さらにより具体的には0〜約8であり、また、Lは下記の構造を有している。
【0013】
【化3】

式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素と、ハロゲンと、第3級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビルと、C−C12ヒドロカルビルチオと、C−C12ヒドロカルビルオキシと、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシと、から構成される群から選択され、Zは0または1であり、Yは下記のものから構成される群から選択される構造を有している。
【0014】
【化4】

式中、Rは独立に、水素と、C−C12ヒドロカルビルと、から構成される群から選択され、RとRはそれぞれ独立に、水素と、C−C12ヒドロカルビルと、RとRが共同でC−C12アルキレン基を形成するC−Cヒドロカルビレンと、から構成される群から選択される。一部の実施形態では、QとQはそれぞれメチルであり、Qは水素であり、Qは水素またはメチルであり、xとyの合計は2〜約15であり、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素あるいはメチルであり、Yは下記の構造を有している。
【0015】
【化5】

式中、RとRはそれぞれ独立に、水素と、C−C12ヒドロカルビルと、RとRが共同でC−C12アルキレン基を形成するC−Cヒドロカルビレンと、から構成される群から選択される。
【0016】
上記の二官能性ポリ(アリーレンエーテル)構造においては、該二官能性ポリ(アリーレンエーテル)分子中の2つの異なる場所のフェニレンエーテル繰り返し単位の数に相当する変数xおよびyには制限がある。該構造では、xとyは独立に、0〜約30であり、具体的には0〜約20であり、より具体的には0〜約15であり、さらにより具体的には0〜約10であり、さらにより具体的には0〜約8である。xとyの合計は、少なくとも2であり、具体的には少なくとも3であり、より具体的には少なくとも4である。特別の多官能性ポリ(アリーレンエーテル)では、プロトン核磁気共鳴スペクトル法(H NMR)を用いて分析し、こうした制限が全樹脂に平均して満たされているかどうか判断することができる。具体的には、H NMRによって、内部および末端のフェニレンエーテル基に付随するプロトンの共鳴と、多価フェノールの内部および末端残基および他の末端残基に付随するプロトンの共鳴と、を識別できる。従って、1分子当たりのフェニレンエーテル繰り返し単位の平均数と、二価フェノール由来の内部および末端残基の相対存在量と、を決定することができる。
【0017】
一部の実施形態では、前記多官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、下記の構造を有している。
【0018】
【化6】

式中、QおよびQはそれぞれ独立に、メチルまたはジ−n−ブチルアミノメチルであり、aおよびbはその合計が少なくとも2、具体的には少なくとも3、より具体的には少なくとも4であり、それぞれ独立に0〜約20である。この構造を有する二官能性ポリ(アリーレンエーテル)類は、ジ−n−ブチルアミンを含む触媒の存在下で、2,6−キシレノールと、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンと、を酸化共重合させて合成できる。
【0019】
ポリ(アリーレンエーテル)類は、2,6−ジメチルフェノール、2、3、6、トリメチルフェノールあるいはこれらの混合物などの一価フェノールを含むモノマー類を酸化重合反応することによって調製できる。当分野ではその他多くの好適な一価フェノールが既知である。多官能性ポリ(アリーレンエーテル)類(すなわち複数のフェノール性水酸基を有するポリ(アリーレンエーテル)類)は、一価フェノールおよび多価フェノールの酸化共重合によって調製できる。好適な多価フェノール類としては、例えば、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−メチルフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロノナン、11,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロウンデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロウンデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3,5−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル−1−ケト)ベンゼン)、1,3,5−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル−1−イソプロピリデン)ベンゼン、2,2,4,4−テトラキス(3−メチル−4ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3,5−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルイソプロピル)フェノール、2,4−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルイソプロピル)フェノール、テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、テトラキス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、テトラキス(4−[4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、テトラキス(4−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニルイソプロピル]−フェノキシ)メタン、およびこれらの混合物などがある。一部の実施形態では、多価フェノールは、1分子当たり3〜8個のフェノール性水酸基を含む。一部の実施形態では、多官能性ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノールと2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとの酸化共重合で調製された二官能性ポリ(アリーレンエーテル)である。
【0020】
一部の実施形態では、多価フェノールは下記の構造を有する2価フェノールである。
【0021】
【化7】

式中、zは0または1であり、RとRはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、第3級ヒドロカルビルではない未置換または置換C−C12ヒドロカルビル、C−C12ヒドロカルビルチオ、C−C12ヒドロカルビルオキシ、または少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC−C12ハロヒドロカルビルオキシであり、Yは下記から選択される構造を有している。
【0022】
【化8】

式中、R、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素およびC−C12ヒドロカルビルから選択される。
【0023】
多官能性ポリ(アリーレンエーテル)類も、対応するポリ(アリーレンエーテル)と対応するジフェノキノンの形成に好適な条件において触媒の存在下、一価フェノールを酸化重合するステップと、前記ポリ(アリーレンエーテル)と前記ジフェノキノンとを、前記触媒から分離するステップと、前記ポリ(アリーレンエーテル)と前記ジフェノキノンとを平衡させて2つの末端ヒドロキシ基を有するポリ(アリーレンエーテル)を形成するステップと、を含むことを特徴とするプロセスにより調製できる。対応するポリ(アリーレンエーテル)の例証としては、2,6−ジメチルフェノールの酸化重合で調製されるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が挙げられる。対応するジフェノキノンの例証としては、2,6−ジメチルフェノールの酸化によって形成される3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジフェノキノンが挙げられる。この調製方法を用いる場合には、前記二官能性ポリ(アリーレンエーテル)を精製して多分散指数を2.2未満にする必要があるかもしれない。2,6−ジメチルフェノールと2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとの酸化共重合での例示的な初期反応混合の組成は以下の通りである。50192重量部の2,6−ジメチルフェノール、109581重量部のトルエン、503重量部のジ−n−ブチルアミン、1175重量部のジメチル−n−ブチルアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミンおよびジデシルジメチル塩化アンモニウムを含む264重量部のジアミン混合物、および臭化水素水溶液中に6.5重量パーセントのCuOを含む353重量部の触媒混合物。重合反応は、反応槽中の温度および酸素濃度を制御して行われる。重合反応混合物中の銅の濃度は、反応混合物の全重量に対して約125重量ppm、すなわち、ポリ(アリーレンエーテル)生成物の重量に対して、約420重量ppmである。重合反応混合物中のポリ(アリーレンエーテル)生成物濃度は、反応混合物の全重量に対して29.8の重量パーセントである。二官能性ポリ(アリーレンエーテル)生成物の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して0.06dL/gである。
【0024】
また、多官能性ポリ(アリーレンエーテル)類は、選択的に酸化剤の存在下で、単官能性ポリ(アリーレンエーテル)を多価フェノールと平衡させる、所謂再分配反応でも調製できる。再分配反応は当分野でも既知であり、例えば、Cooperらの米国特許第3,496,236号やLiskaらの同第5,880,221号に記載されている。この調製方法を用いる場合には、多官能性ポリ(アリーレンエーテル)を精製して多分散指数を2.2未満にする必要があるかもしれない。
【0025】
キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法は、広範囲の固有粘度を有するポリ(アリーレンエーテル)類に適用できる。例えば、前記ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して、0.04〜1.0dL/gであり、具体的には0.06〜0.6dL/gであり、より具体的には0.09〜0.4dL/gであり、さらにより具体的には0.09〜0.3dL/gであり、さらにより具体的には0.09〜0.2dL/gであり、さらにより具体的には0.09〜0.15dL/gであり、さらにより具体的には0.09〜0.12dL/gである。固有粘度に関する同様な制限が前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)に適用されることは理解されるであろう。
【0026】
ポリ(アリーレンエーテル)類と反応してキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)類を形成するキャッピング剤は、当分野で既知である。例えば、Percecの米国特許第4,562,243号、同第4,634,742号および同第4,665,137号、Percecらの同第4,663,402号、Braatらの、同第6,306,978B1号および同第6,384,176号、Yeagerらの同第6,627,704B2号およびYeagerの同6,962,965号およびFanの米国法定発明登録H521号を参照のこと。使用可能なキャッピング剤のタイプの中で、例えばハロ炭化水素類(クロロメチルスチレンや塩化アリルなど)、カルボン酸ハライド類(塩化アセチル、塩化アクリロイルおよび塩化メタクリロイルなど)、カルボン酸エステル類(サリチル酸フェニルなど)、カルボン酸無水物類(無水酢酸、アクリル酸無水物およびメタクリル酸無水物など)、炭酸エステル類(炭酸ジフェニルおよびビス(4−ビニルフェニル)カーボネートなど)、イソシアネート類(ジイソシアネートを含む)およびエピクロルヒドリンなどがある。
【0027】
キャッピング剤とポリ(アリーレンエーテル)のフェノール性水酸基とのモル比は、迅速および完全なキャッピングの必要性(この場合はモル比が高い方が好ましい)と、洗浄工程での不純物除去負荷を高めることになる過剰な試薬導入を回避する必要性(この場合はモル比が低い方が好ましい)と、のバランスをとって選択される。キャッピング剤とポリ(アリーレンエーテル)の水酸基とのモル比は、1:3、具体的には1.05:2、より具体的には1.1:1.5とすれば、これらの相反する要求間で良好なバランスがとれることが確認された。
【0028】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、溶媒の存在下でキャッピング剤と反応する。好適な溶媒としては、ハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒類、芳香族炭化水素溶媒類、ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒類およびこれらの組み合わせなどが含まれる。一部の実施形態では、前記溶媒は、少なくとも1つの脂肪族炭素間二重結合およびまたは少なくとも1つの脂肪族炭素間三重結合を含む芳香族炭化水素である。少なくとも1つの脂肪族炭素間二重結合およびまたは少なくとも1つの脂肪族炭素間三重結合を含むこうした芳香族炭化水素溶媒類としては、スチレン、ビニールC−Cアルキルベンゼン類(ビニールトルエン類など)、ジビニルベンゼン、アリルベンゼン、1−エチニルベンゼンなどやこれらの組み合わせがある。一部の実施形態では、前記溶媒はトルエンである。
【0029】
ポリ(アリーレンエーテル)とキャッピング剤との反応は、キャッピング触媒の存在下でも行える。使用するキャッピング触媒のタイプは、使用するキャッピング剤のタイプに依存するであろう。例えば、キャッピング剤がハロ炭化水素、カルボン酸ハライド、カルボン酸エステルあるいはカルボン酸無水物の場合、キャッピング触媒は、典型的にはブレンステッド・ローリー(Bronsted−Lowry)塩基(すなわち、ポリ(アリーレンエーテル)の末端水酸基からプロトンを受け取れる塩基)である。ブレンステッド・ローリー塩基類としては、例えばアルカリ金属水酸化物類(水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなど)、未置換または置換水酸化アンモニウム類(水酸化アンモニウムおよびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど)およびアミン類(第一級アミン類、第二級アミン類、および具体的には4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなどの第三級アミン類が含まれる)などがある。
【0030】
使用するキャッピング副生成物のタイプも、使用するキャッピング剤のタイプに依存するであろう。キャッピング剤がハロ炭化水素またはカルボン酸ハライドの場合、キャッピング副生成物は、典型的にはハロゲン化物イオン(塩素イオンなど)であろう。キャッピング剤がカルボン酸エステルあるいは炭酸エステルの場合には、キャッピング副生成物は、典型的にはアルコール(メタノールまたはフェノールなど)であろう。キャッピング剤がカルボン酸無水物の場合には、キャッピング副生成物は、典型的にはカルボン酸(酢酸、アクリル酸、あるいはメタクリル酸など)であろう。
【0031】
ポリ(アリーレンエーテル)キャッピング方法の一例としては、キャッピング触媒である4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンの存在下で、未キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)とキャッピング剤であるメタクリル酸無水物との反応が挙げられる。この反応では、主要なキャッピング副生成物はメタクリル酸である。
【0032】
溶媒とキャッピング触媒の存在下で、ポリ(アリーレンエーテル)とキャッピング剤とを反応させてキャッピング反応混合物を形成した後、該キャッピング反応混合物を、少なくとも5重量パーセントの塩基を含む塩基性水溶液で洗浄してキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む精製溶液を得る。前記塩基性水溶液中の塩基濃度は、塩基性水溶液の全重量に対して、具体的には5〜15重量パーセント、より具体的には10〜15重量パーセントとすることができる。Freshourらの米国特許第6,897,282号に開示されている水溶液洗浄方法では、最大濃度が約1規定の水酸化ナトリウム水溶液が用いられており、この濃度は水酸化ナトリウム約4重量パーセントに相当し、本方法で用いた塩基性濃度よりも実質的に低いことに留意のこと。上記のとおり、該キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)が実質的に分解することなく、こうした高濃度の塩基性溶液に耐えられることは大変驚きである。
【0033】
また、前記Freshour特許には、分離するポリ(アリーレンエーテル)中に残存する不純物の濃度は、洗浄中の溶液内のポリ(アリーレンエーテル)濃度が高いほど低くなるために、高濃度であることが望ましいことが教示されている。具体的には、ポリ(アリーレンエーテル)が50重量パーセントの溶液濃度が、ポリ(アリーレンエーテル)が21重量パーセントの溶液濃度よりも好ましかった。しかしながら、本発明者らは、溶液中のポリ(アリーレンエーテル)濃度が高ければ、水相および有機相の乳化に繋がりそれらの相分離が非常に困難になる可能性があることを見出した。本発明者らは、Freshour特許で明示された教示に反して進め、溶液中の比較的低濃度のポリ(アリーレンエーテル)を用いることによって良好な結果が得られることを見出した。具体的には、本発明者らは、キャッピング反応混合物が塩基性水溶液による洗浄中のキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を5〜25重量パーセント、具体的には8〜20重量パーセント、より具体的には12〜18重量パーセント含む場合、良好な不純物分離ができ、乳化も回避されることを見出した。キャッピング工程では高濃度のポリ(アリーレンエーテル)を用い、塩基性水溶液による洗浄前に選択的に、キャッピング反応混合物中のキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)濃度を5〜25重量パーセントに調整するステップ(例えば、希釈など)を備えることが望ましい場合が多い。
【0034】
該塩基性水溶液に用いられる塩基は、キャッピング反応混合物からキャッピング関連不純物の抽出向上に効果があるものであれば任意の塩基でよい。好適な塩基類としては、例えば、アルカリ金属水酸化物類、水溶性第1級有機アミン類、水溶性第2級有機アミン類、水溶性第3級有機アミン類、およびこれらの組み合わせなどがある。一部の実施形態では、該塩基はアルカリ金属水酸化物、具体的には水酸化ナトリウムである。
【0035】
また、本発明者らは、洗浄ステップを高温下で行うと効率が改善されることも見出した。例えば、塩基性水溶液を用いたキャッピング反応混合物の洗浄は、温度60〜95℃、具体的には70〜90℃、より具体的には75〜85℃で行うことができる。
【0036】
また、本発明者らは、洗浄を行う温度での該塩基性水溶液の粘度とキャッピング反応混合物の粘度との比率が0.5:1〜3:1であれば、洗浄ステップにおける効率が改善されることも見出した。
【0037】
本方法がFreshour特許における洗浄方法とさらに異なる点は、ポリ(アリーレンエーテル)溶液と洗浄水との体積比である。Freshourらは、水:溶液の比を1:1〜2:1とし、分離ポリ(アリーレンエーテル)中の不純物の濃度を低減させるにはこの比が高いほど好ましいことを表明している。しかしながら、本発明者らは、キャッピング反応混合物と塩基性水溶液との重量比が2:1〜25:1、具体的には3:1〜20:1、より具体的には4:1〜20:1の場合に、効率的な抽出ができることを見出した。
【0038】
該塩基性水溶液が少なくとも1.2モル/Lの塩基を含むという制限内で、塩基性濃度をキャッピング剤に対するモル比として規定することもできる。例えば、本発明者らは、キャッピング剤が酸無水物の場合、塩基性水溶液は、キャッピング反応の副生成物として生成される酸のモル数と、過剰なキャッピング剤のモル数の2倍と、の合計である等価遊離酸1モル当たり、前記塩基を0.5〜2モルを含むことができることを見出した。具体的には、前記塩基性水溶液は、等価遊離酸1モル当たり、前記塩基を0.6〜1.5モル含むことができ、より具体的には、等価遊離酸1モル当たり、前記塩基を0.7〜1モル含むことができる。他の実施形態では、該塩基性水溶液は、等価遊離酸1モル当たり、0.6〜0.9のモルの塩基を含むことができ、具体的には、等価遊離酸1モル当たり、0.7〜0.8モルの塩基を含むことができる。
【0039】
一部の実施形態では、該キャッピングステップは、銅やマンガンなどの酸化重合触媒金属を含む重合反応混合物に対して行うことができる。言い換えれば、該方法は、溶媒と触媒金属の存在下、一価フェノールを酸化重合し、該ポリ(アリーレンエーテル)と、溶媒と、触媒金属と、を含む重合反応混合物を形成するステップを含むことができる。一部の実施形態では、溶剤は、該キャッピングステップ前に除去される。該触媒金属は、該キャッピング反応前に重合反応混合物から除去される。あるいは、該触媒金属は、キャッピング反応後で塩基性水溶液洗浄前に、キレート化により除去される。あるいは、該触媒金属は、該塩基性水溶液洗浄と同時にキレート化により除去される。このように、一部の実施形態では、該塩基性水溶液にはさらにキレートが含まれる。キレートには、ポリアルキレンポリアミンポリカルボン酸類、アミノポリカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類、これらの酸類のアルカリ金属塩類、これらの塩類のアルカリ土類金属塩類、これらの酸類のアルカリ金属とアルカリ土類金属との混合塩類およびこれらの組み合わせなどが含まれる。一部の実施形態では、該キレートはニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩である。一部の実施形態では、該キレートは、触媒金属1モル当たり約1〜約15モル用いられる。さらに他の実施形態では、該触媒金属は前記塩基性水溶液洗浄ステップ後に除去される。
【0040】
触媒金属のキレート化の時期には依存せずに、該キレート水溶液をデカンテーションや遠心分離などの液液分離技術を含む方法によって、該キャッピング反応混合物から分離してもよい。遠心分離を用いる場合には、遠心分離力を1,000〜15,000G、具体的には2,000〜10,000Gとすることができる。
【0041】
該ポリ(アリーレンエーテル)を銅を含む重合触媒の存在下で合成する場合、分離されたキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)には、分離されたキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の重量に対して、15重量ppm以下の触媒金属、具体的には0.1〜8重量ppmの触媒金属、より具体的には0.1〜5重量ppmの触媒金属が含まれ得る。
【0042】
該方法には複数の水溶液洗浄ステップを含めることができる。例えば、一部の実施形態では、該方法にはさらに、水でキャッピング反応混合物を洗浄するステップが含まれる。用語「水」には、水道水、脱イオン水、その他の種々の精製水類および少量の(1重量パーセント未満の)塩類およびまたはその他の改質剤類が添加された水などが含まれることは理解されるであろう。一部の実施形態では、上記水は、25℃において0.05〜1マイクロジーメンスの導電率を有する。別の例として、一部の実施形態では、該方法にはキャッピング反応混合物を酸性水溶液で洗浄するステップが含まれる。酸性洗浄の使用は、キャッピング剤である(メタ)アクリル酸無水物と共に用いられた4−(N,N−ジメチルアミン)ピリジン触媒などのアミン不純物の抽出には特に有効である。好適な酸類としては、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸およびそれらの混合物などがある。本明細書では、接頭辞の(メタ)アクリルはアクリルとメタアクリルとを含む。例えば、用語「(メタ)アクリル酸無水物」には、「アクリル酸無水物」と「メタクリル酸無水物」とが含まれる。一部の実施形態では、前記酸は酢酸である。酸性溶液洗浄における酸濃度は、0.2〜1モル/L、具体的には0.25〜0.8モル/L、より具体的には0.3〜0.6モル/Lとすることができる。
【0043】
各水溶液洗浄ステップに要する時間は、キャッピング反応混合物中のポリ(アリーレンエーテル)濃度、キャッピング剤のタイプと濃度、キャッピング触媒のタイプと濃度、水溶液の組成、洗浄温度および使用装置のタイプなどの要因に依存するであろう。典型的な洗浄時間は1〜240分、具体的には2〜180分、より具体的には5〜60分である。洗浄は通常、エマルジョンの生成を防ぐためにゆるやかに攪拌しながら行われる。通常の攪拌力は、溶液1kg当たり0.5〜25キロジュールである。
【0044】
一部の実施形態では、該キャッピング反応混合物は、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液、酢酸を含む水溶液および水で抽出される。アルカリ金属水酸化物を含む水溶液での洗浄後に、酢酸を含む水溶液での洗浄を行い、その次に水による洗浄を行うことができる。
【0045】
一部の実施形態では、キャッピング反応混合物は、アルカリ金属水酸化物を含む第1の水溶液、アルカリ金属水酸化物を含む第2の水溶液、酢酸を含む水溶液および水で抽出される。アルカリ金属水酸化物を含む前記第1および第2の水溶液による洗浄後に、酢酸を含む水溶液での洗浄を行い、その次に水による洗浄を行うことができる。
【0046】
ある実施形態では、アルカリ金属水酸化物を含む第1の水溶液、アルカリ金属水酸化物を含む第2の水溶液および水を用いてキャッピング反応混合物を洗浄するステップが含まれる。別の実施形態では、アルカリ金属水酸化物を含む第1の水溶液、アルカリ金属水酸化物を含む第2の水溶液、酢酸を含む水溶液および水を用いてキャッピング反応混合物を洗浄するステップが含まれる。別の実施形態では、第1の洗浄水、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液、酢酸を含む水溶液および第2の洗浄水を用いてキャッピング反応混合物を洗浄するステップが含まれる。別の実施形態では、アルカリ金属水酸化物を含む第1の水溶液、アルカリ金属水酸化物を含む第2の水溶液、第1の洗浄水および第2の洗浄水でキャッピング反応混合物を洗浄するステップが含まれる。
【0047】
該水溶液洗浄ステップで用いられる装置としては、例えば、液液遠心分離機類、デカンター類、向流抽出装置およびこれらの装置の組み合わせなどがある。
【0048】
同じ装置を複数の洗浄ステップに用いてもよい。例えば、該方法をバッチ式で行う場合には、塩基性水溶液によるキャッピング反応混合物の洗浄に用いられる装置を、後段の洗浄ステップに用いることができる。こうした後段の洗浄ステップには、例えば、第2の塩基性水溶液、酢酸水溶液または水による洗浄が含まれ得る。あるいは、該方法が連続式で行われ場合には、それぞれの洗浄ステップに対して違った装置が用いられる。
【0049】
該方法には、完全分離方法を用いてキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を分離するステップが含まれる。用語「完全分離方法」とは、揮発性成分を除去する分離方法を指す。好適な完全分離方法には、液化抽出法、噴霧乾燥法、ワイパー式薄膜蒸発法、フレーク蒸発法、フラッシュ液化法(例えば、溶解ポンプを備えたフラッシュ容器の使用)およびこれらの方法の組み合わせなどが含まれる。一部の実施形態では、該完全分離方法には液化抽出法が含まれる。
【0050】
ある特定の実施形態は、溶媒とキャッピング触媒の存在下でポリ(アリーレンエーテル)をキャッピング剤と反応させて、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)、溶媒、キャッピング剤、キャッピング触媒およびキャッピング副生成物を含むキャッピング反応混合物を形成するステップであって、前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノールおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含むモノマー類を酸化重合して得られた生成物であり、前記キャッピング剤は(メタ)アクリル酸無水物であり、前記(メタ)アクリル酸無水物と前記ポリ(アリーレンエーテル)の水酸基とのモル比は1:3であり、前記溶媒はトルエンであり、前記キャッピング触媒は、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンであり、前記キャッピング副生成物は(メタ)アクリル酸である、ことを特徴とするステップと、塩基性水溶液を用いた洗浄前に、前記キャッピング反応混合物中のキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の濃度を5〜25重量パーセントに調整するステップと、前記キャッピング反応混合物を、5〜15重量パーセントの水酸化ナトリウムを含む塩基性水溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第1の精製溶液を生成するステップであって、前記キャッピング反応混合物を塩基性水溶液で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、前記第1の精製溶液を、0.2〜1モル/Lの酢酸を含む酸性溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第2の精製溶液を生成するステップであって、前記第1の精製溶液を酸性水溶液で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、前記第2の精製溶液を水で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第3の精製溶液を生成するステップであって、前記第2の精製溶液を水で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を不揮発化押出により分離するステップと、を含むことを特徴とするキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法である。
【0051】
別の実施形態は、前段落の方法により調製され、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリロイル無水物として2,500重量ppm以下の(メタ)アクリロイル基と、1,000重量ppm以下の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンと、を含む(メタ)アクリレートキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)である。
【0052】
本発明は、上記の方法によって調製され、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリロイル無水物として2,500重量ppm以下の(メタ)アクリロイル基と、1,000重量ppm以下の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、具体的には500重量ppm以下の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、より具体的には200重量ppm以下の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、さらにより具体的には100重量ppm以下の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンと、を含む(メタ)アクリレートキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)まで及ぶ。含まれる不純物が低濃度であることによって、該(メタ)アクリレートキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)は、従来のそれとは区別される。
【0053】
本発明を、以下の限定しない実施例によってさらに説明する。

調製実施例1
【0054】
本実施例では、二官能性ポリ(アリーレンエーテル)溶液の一般的な調製方法について説明する。2,6−ジメチルフェノール(2,6−キシレノール、以下2,6−X)と、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラメチルビスフェノールA、以下TMBPM)と、の二官能性共重合体を、銅アミン触媒の存在下、トルエン中で酸化共重合させて調製した。前記モノマー混合物は、83重量パーセントの2,6−ジメチルフェノールと17重量パーセントの2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとから構成されていた。銅触媒と他の水溶性成分のいずれかは反応混合物中に残存するかあるいはニトリロ三酢酸三ナトリウム(NTA)溶液で抽出された。生成した二官能性ポリ(アリーレンエーテル)(PPE)樹脂の固有粘度(IV)は、25℃のクロロホルム中で測定して0.09dL/gであった。二官能性PPEの末端水酸基は、キャッピング触媒であるN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP、遊離水酸基1モル当たり2.2モル)の存在下、メタクリル酸無水物(MAA、遊離水酸基1モル当たり1.1モル)と反応させてメタアクリレートキャップ化し、53重量%のメタアクリレートキャプ化二官能性ポリ(アリーレンエーテル)トルエン溶液を得た。該二官能性ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して0.09dL/gであった。

比較実施例1および2
【0055】
これらの実施例によって、分離された二官能性ポリ(アリーレンエーテル)中に残存するメタクリル酸、メタクリル酸無水物およびキャッピング触媒の濃度低減の重要性を説明する。
【0056】
比較実施例1(「C 例1」)で示されるサンプルを、調製実施例1に記載の53重量%のメタアクリレートキャプ化二官能性ポリ(アリーレンエーテル)トルエン溶液から調製した。メタノールを用いた(溶液1重量部当たりメタノール3重量部)沈殿により、前記53重量パーセント溶液からメタアクリレートキャプ化二官能性ポリ(アリーレンエーテル)を分離した。沈殿後にスラリーをろ過し、沈殿物はオーブンで乾燥させる前にメタノールで一度すすぎ洗いした。
【0057】
比較実施例1は、2,6−ジメチルフェノールと2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)との同様な共重合体からスタートしているが、キャッピングおよび沈殿方法が異なっている。本バッチのメタアクリレートキャッピングを、ポリ(アリーレンエーテル)の−OH基1モル当たり1.7モルのメタクリル酸無水物と、−OH基1モル当たり0.2モルのDMAPと、を用いて行った。イソプロピルアルコールを用いた反溶媒沈殿によってキャップ化二官能性ポリマを分離した。イソプロピルアルコールと溶媒との重量比は3:1とした。沈殿後にスラリーをろ過し、沈殿物をイソプロピルアルコール中で再度スラリー化した。該第2のスラリーをろ過し、生成した沈殿物をオーブンで乾燥させた。
【0058】
ガラスクロス(17.78cm(7インチ)×19.05cm(7.5インチ))に樹脂のトルエン溶液を含浸させて積層板を調製した。樹脂溶液は30分間混合した後、15〜30秒間65℃に加熱した。ガラスクロスの浸漬を2サイクル行った後、一晩蒸発乾燥させて約50重量パーセントの含浸硬化型組成物(すなわち、「プリプレグ」)得た。プリプレグを数枚重ね、150〜180℃で4分間、13.34kN(3000ポンド)の圧力で圧縮成形し、ホットプレス内で3分間冷却して積層板を製造した。各積層板の平均厚さをマイクロメートルにより測定した。
【0059】
IPC−TM−650−2.4.13に従って、はんだフロート試験を行った。簡潔に言えば、10秒間、溶融はんだ表面に試料(50mm×50mm)を浮かせた後、回収して分析した。積層板の気泡、収縮、変形または溶解などの発生を目視検査した。これらの現象が視覚的に見られない積層板を「合格」とした。
【0060】
以下の表1に結果を示す。残存メタアクリル酸の濃度が3,116ppm、残存メタクリル酸無水物濃度が269ppm、ジメチルアミノピリジン濃度が10,827ppmのポリ(アリーレンエーテル)で調製した比較実施例1の積層板は、はんだフロート試験に不合格であり、これに対して、残存メタアクリル酸の濃度が1,810ppm、残存メタクリル酸無水物濃度が231ppm、ジメチルアミノピリジン濃度が2,102ppmのポリ(アリーレンエーテル)で調製した比較実施例2の積層板は、はんだフロート試験で合格であった。
【0061】
【表1】

実施例1〜5
【0062】
実施例1〜5は、有機相中の固形分濃度と塩基性水溶液濃度が、抽出プロセス中の有機相中の水の保持に与える影響を示す。
【0063】
二官能性ポリ(アリーレンエーテル)のキャッピング後、生成したトルエン溶液(固形分44.4%)を以下の方法で精製した。該溶液10gにトルエンを添加して所定の固形分重量パーセントになるまで希釈し、これを30分間80℃のオイルバスに入れた。所定量の脱イオン水と50重量パーセントNaOH溶液を添加して所望のNaOH重量パーセントの水相を得た。典型的には、トルエン溶液7重量部当たり約1重量部の水溶液を添加した。該水相の添加直後に、混合物を1分間手で振り、次に30分間80℃のオイルバスに入れた。この後、混合物をオイルバスから取り出し、30分間3,000rpmで研究用遠心分離機で処理した。サンプルを遠心分離機から取り出し、二相の内の上相をピペットで取り出して分離した。該有機相を上記と同様な方法に従って、記述した第2あるいは第3の洗浄を行った。
【0064】
生成した有機相の含水量をガスクロマトグラフィーで分析した。結果を表2に示す。
【0065】
塩基性溶液、この場合NaOHの濃度上昇と共に、またトルエン混合物中の固形分の濃度上昇と共に、有機相中の残存水が増えることが表2からわかる。有機相中の固形分濃度が15重量パーセント、塩基性水溶液の濃度が4.1〜4.7重量パーセントであった実施例1では、第1の洗浄後の有機相中の水分は375ppm、第2の洗浄後のそれは451ppmであった。実施例5で示されるように、有機相中の固形分濃度が40重量パーセント、塩基性水溶液の濃度が10.3〜10.7重量パーセントの場合、この値が第1の洗浄後に1564ppmに、第2の洗浄後に7048ppmに上昇している。
【0066】
【表2】

実施例6、比較実施例3
【0067】
これらの実施例では、有機相とNaOH水相との比率を変化させた時の影響について示す。各抽出において、有機相は、42重量パーセントの固形分を含むトルエン中のキャッピング反応混合物である。比較実施例3では、該NaOH水相には3重量パーセントのNaOHが含まれていた。実施例6では、該NaOH水相には9重量パーセントのNaOHが含まれていた。比較実施例3では、2.5重量部の有機相を1重量部のNaOH水溶液で抽出し、実施例6では、9重量部の有機相を1重量部のNaOH水溶液で抽出する。実施例1〜5の抽出方法を用いた。結果を表3に示す。
【0068】
1重量部のNaOH水溶液に対して2.5重量部〜9重量部の有機混合物から抽出した有機留分の量が増えると、メタクリル酸無水物、メタクリル酸および水の残存量に悪影響を与えることが表3からわかる。実施例8において、洗浄1および洗浄2の後の残存MAOHおよびMAA量は、実施例7のものより実質的に大きいことは注目される。また、実施例8における有機相中の残存水量は実施例7のものより実質的に大きい。
【0069】
【表3】

実施例7〜10
【0070】
これらの例では、残存水、キャッピング試薬および副生成物に対する水相組成物(水対NaOH水溶液)と有機相固形分濃度の影響および相分離特性について示す。実施例1〜5の抽出方法を用いた。有機相と水相との分離特性を視覚的に判断し「デカント良好」として、あるいはエマルジョンができた場合には「有機相乳化」として報告する。乾燥ポリマに対するMAOH+MAAの濃度およびDMAPの濃度(*で示す)を求めた。結果を表4にリストアップした。
【0071】
水による抽出によってすべてのDMAPが本質的に除去されて、有機相中の残存水は比較的低濃度になり、分離された相は容易にデカントできることが表4からわかる。しかしながら、残存MAA+MAOHの濃度は比較的高い。一方、水酸化ナトリウム水溶液による抽出はMAAとMAOHの除去にはより効果的であるが、DMAPの残存濃度は比較的高く、また有機相中の残存水もそうである。さらに、有機相は水相とエマルジョンを形成する。有機相中の固形分濃度が15重量パーセントから30重量パーセントに増加すると、残存MAOHおよびMAAの増加および残存水の増加で示されるように、抽出プロセスに悪影響を与えることが実施例8と10からわかる。
【0072】
【表4】

実施例11〜14、比較実施例4
【0073】
これらの例で、25重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)、28,032ppmのMAOH+MAA、2,259ppmのDMAPおよび5ppmのNaを含むトルエン混合物の抽出結果を示す。抽出前に酸化カップリング触媒をキレート化により除去した。比較実施例4は、反溶媒としてイソプロピルアルコールを用いて沈殿させた試料を表すが、その試料は沈殿前には抽出されていない。表5に、各試料の一連の抽出方法と、乾燥ポリマに対する、抽出後の有機相中のMAOH+MAA、DMAPおよびNa残存濃度を示す。「化学量論的」とは、NaOHと、メタクリル酸の全均等物との化学量論を指す。ここで、メタクリル酸の全均等物とは、キャッピング反応の副生成物として出来たメタクリル酸のモル数と、キャッピング反応で用いられた過剰なメタクリル酸無水物のモル数の2倍と、の合計である。表5の「酢酸」は、0.2モル/Lの酢酸と水とから成る水溶液を指す。表5の「水」は脱イオン化水を指す。各洗浄ステップにおいて、7重量単位のキャッピング反応混合物に対して1重量単位の水相を用いた。実施例1〜5の方法に従って該洗浄ステップを行った。
【0074】
この結果から、実施例11で用いた一連の洗浄により、MAOH+MAAは最も効率的に抽出されるが、相当量のDMAPとナトリウムイオンが有機相に残存することが示されている。実施例12および14ではDMAPとナトリウムが共に効率的に抽出できたが、実施例12の方がMaOH+MAAの抽出にはより効果的である。
【0075】
【表5】

実施例15〜18
【0076】
これらの実施例は、25重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)、27,989ppmのMAOH+MAA、2,554ppmのDMAPおよび4ppmのNaを含むトルエン混合の抽出結果を示す。抽出前には酸化カップリング触媒を除去せず、キレート化ステップを水溶性洗浄ステップの1つと一緒に行った。実施例1〜5の方法に従って洗浄ステップを行った。表6では、各試料に対する一連の抽出方法と、抽出後の有機相中に残存するメタクリル酸+メタクリル酸無水物(MAOH+MAA)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)およびNaについてまとめている。表6の「NTA」はキレート剤であるニトリロ三酢酸を指し、表中にこれがある場合には、重合触媒中の銅イオン1モル当たり1.2モル量を用いた。
【0077】
表6の結果から、酸化重合触媒が存在しても抽出プロセスには大きな影響を及ぼさないことが暗示されるという、実施例11〜14と同様な傾向が見られることがわかる。このように、PPEの官能化前または抽出前の酸化カップリング触媒や副生成物の除去を有利に回避することができる。
【0078】
【表6】

実施例19および20、比較実施例5および6
【0079】
これらの例によって、不飽和キャッピング基に対する液液抽出の影響、具体的には水酸化ナトリウム水溶液を用いた抽出によってポリ(アリーレンエーテル)のメタアクリレートキャッピング基が加水分解される範囲が示されている。すべての実施例は、酸化カップリング触媒と触媒反応副生成物とをキャッピング前に除去し、メタクリル酸無水物を用いてキャップ化された固有粘度が0.09dL/gの二官能性PPEのトルエン溶液から出発した。該トルエン溶液には25重量パーセントのポリ(アリーレンエーテル)が含まれていた。比較実施例5および実施例19では、酸化カップリング触媒と触媒反応副生成物とをキャッピング前にキレート化により除去した。比較実施例6および20では、キレート化は行わなかった。比較実施例5および6では、洗浄を行わなかった。実施例19よび20では、実施例1〜5に従って洗浄ステップを行った。具体的には、実施例19では、75%の化学量論的NaOH、75%の化学量論的NaOH(再度)および水で順次洗浄を行った。実施例20では、75%の化学量論的NaOHおよびニトリロ三酢酸、75%の化学量論的NaOHおよび水で順次洗浄を行った。
【0080】
すべての実施例において、真空オーブンで揮発成分を蒸発させてポリ(アリーレンエーテル)を分離した。ポリ(アリーレンエーテル)の全重量に対するメタクリロイルキャッピング剤(−C(=O)CH(CH)=CH)の重量パーセントをH NMRを用いて求めた。表7に示した結果は、驚くべきことに、濃縮水酸化ナトリウム溶液による抽出ではメタアクリレートキャッピング基に悪影響を及ぼさないことを示している。(比較実施例5に対して実施例19でのキャッピング基濃度の明らかな上昇、および比較実施例6に対して実施例20でのキャッピング基濃度の明らかな上昇は、統計的に有意ではない。)
【0081】
【表7】

【0082】
本明細書では実施例を用いて最良の実施形態を含めて本発明を開示しており、当業者によって本発明をなし使用することを可能にしている。本発明の特許範囲は請求項によって定義され、当業者がもたらすその他の実施例も包含し得る。こうしたその他の実施例は、請求項の文字どおりの解釈と違わない構成要素を有する場合、あるいは請求項の文字どおりの解釈とごくわずかな違いしかない等価な構成要素を含んでいる場合には、請求項の範囲内であると意図される。
【0083】
引用された特許、特許出願および他の参考文献はすべて、参照により本明細書に援用される。しかしながら、本出願中の用語が援用された参考文献の用語と矛盾するか対立する場合、本出願の用語が援用された参考文献の矛盾する用語に優先する。
【0084】
本明細書で開示された範囲はすべて、終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせできる。
【0085】
本発明の記述文脈(特に以下の請求項の文脈)における不定冠詞、定冠詞および同様な言及は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数および複数を含むものと解釈される。また、本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いるものである。量に関連して用いられる修飾語「約」は、述べられた数値を含んでおり、文脈で指図された意味(例えば、特定の量の測定に付随する誤差の程度を含むなど)を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒とキャッピング触媒の存在下でポリ(アリーレンエーテル)をキャッピング剤と反応させて、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)、溶媒、キャッピング剤、キャッピング触媒およびキャッピング副生成物を含むキャッピング反応混合物を形成するステップと、
前記キャッピング反応混合物を、少なくとも5重量パーセントの塩基を含む塩基性水溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む精製溶液を生成するステップと、
完全分離方法を用いて前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を分離するステップと、を含むことを特徴とするキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法。
【請求項2】
キャッピング剤と前記ポリ(アリーレンエーテル)の水酸基とのモル比が1:3であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性水溶液を用いた前記洗浄の間、前記キャッピング反応混合物は5〜25重量パーセントのキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性水溶液を用いた前記洗浄前に、前記キャッピング反応混合物中の前記キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の濃度を5〜25重量パーセントに調整するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記塩基性水溶液は5〜15重量パーセントの塩基を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記塩基は、アルカリ金属水酸化物類、水溶性第1級有機アミン類、水溶性第2級有機アミン類、水溶性第3級有機アミン類、およびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記塩基はアルカリ金属水酸化物であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記キャッピング反応混合物を塩基性水溶液で洗浄するステップは温度60〜95℃の範囲で行なわれることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記キャッピング反応混合物と前記塩基性水溶液との重量比は、2:1〜25:1の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
塩基性水溶液を用いた前記キャッピング反応混合物の前記洗浄ステップは、前記塩基性水溶液が第1の粘度を有し前記キャッピング反応混合物が第2の粘度を有する温度で行われ、前記第1の粘度と前記第2の粘度の比が0.5:1〜3:1であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記キャッピング剤は酸無水物であり、前記塩基性水溶液は、キャッピング反応の副生成物として生成される酸のモル数と、過剰なキャッピング剤のモル数の2倍と、の合計である等価遊離酸1モル当たり0.5〜2モル量の前記塩基を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記塩基性水溶液は、等価遊離酸1モル当たりの0.6〜1.5モル量の前記塩基を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塩基性水溶液はさらにキレートを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
溶媒と触媒金属の存在下、一価フェノールを酸化重合し、前記ポリ(アリーレンエーテル)と、溶媒と、酸化重合触媒金属と、を含む重合反応混合物を形成するステップと、
塩基性水溶液を用いた前記キャッピング反応混合物の前記洗浄前に、前記酸化重合触媒金属をキレート化するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
溶媒と触媒金属の存在下、一価フェノールを酸化重合し、前記ポリ(アリーレンエーテル)と、溶媒と、酸化重合触媒金属と、を含む重合反応混合物を形成するステップと、
塩基性水溶液を用いた前記キャッピング反応混合物の前記洗浄後に、前記酸化重合触媒金属をキレート化するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記方法はバッチ式で行われ、前記方法はさらに、前記キャッピング反応混合物を水、酸性水溶液または第2の塩基性水溶液で洗浄するステップを含み、水、酸性水溶液または第2の塩基性水溶液を用いた前記キャッピング反応混合物の前記洗浄ステップは、前記塩基性水溶液を用いた前記キャッピング反応混合物の前記洗浄ステップと同じ装置内で行われることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記方法は連続式で行われ、前記方法はさらに、前記キャッピング反応混合物を水、酸性水溶液または第2の塩基性水溶液で洗浄するステップを含み、水、酸性水溶液または第2の塩基性水溶液を用いた前記キャッピング反応混合物の前記洗浄ステップは、前記塩基性水溶液を用いた前記キャッピング反応混合物の前記洗浄ステップに用いた装置とは異なる装置内で行われることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記酸化重合触媒をキレート化するステップは、前記重合反応混合物をキレート水溶液と接触させるステップを含み、前記方法はさらに、遠心分離を含むプロセスにより前記キレート水溶液を前記キャッピング反応混合物から分離するステップを含み、前記遠心分離は、遠心力が1,000〜15,000Gであることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記完全分離方法は、液化抽出法、噴霧乾燥法、ワイパー式薄膜蒸発法、フレーク蒸発法、フラッシュ液化法およびこれらの方法の組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記完全分離方法は液化抽出法を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
水で前記キャッピング反応混合物を洗浄するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
酸性水溶液で前記キャッピング反応混合物を洗浄するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記酸性水溶液は0.2〜1モル/Lの酸を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記酸は、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸およびこれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記酸は酢酸であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記キャッピング反応混合物は、
アルカリ金属水酸化物を含む第1の水溶液と、
アルカリ金属水酸化物を含む第2の水溶液と、
水と、
を用いて抽出されることを特徴とする請求項1乃至請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記キャッピング反応混合物は、
アルカリ金属水酸化物を含む水溶液と、
酢酸を含む第2の水溶液と、
水と、
を用いて抽出されることを特徴とする請求項1乃至請求項25のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記キャッピング反応混合物は、
アルカリ金属水酸化物を含む第1の水溶液と、
アルカリ金属水酸化物を含む第2の水溶液と、
酢酸を含む水溶液と、
水と、
を用いて抽出されることを特徴とする請求項1乃至請求項25のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記キャッピング反応混合物は、
第1の洗浄水と、
アルカリ金属水酸化物を含む水溶液と、
酢酸を含む水溶液と、
第2の洗浄水と、
を用いて抽出されることを特徴とする請求項1乃至請求項25のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記キャッピング反応混合物は、
アルカリ金属水酸化物を含む第1の水溶液と、
アルカリ金属水酸化物を含む第2の水溶液と、
第1の洗浄水と、
第2の洗浄水と、を用いて抽出されることを特徴とする請求項1乃至請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
塩基性水溶液、酸性水溶液および水から構成される群から選択される水溶液を用いて、前記精製溶液を洗浄するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記溶媒は、トルエン、キシレン類、スチレン、ビニールC−Cアルキルベンゼン類、ジビニルベンゼン、アリルベンゼン、1−エチニルベンゼンおよびこれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノールおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含むモノマー類を酸化重合して得られた生成物であり、
前記キャッピング剤は(メタ)アクリル酸無水物であり、
前記(メタ)アクリル酸無水物と前記ポリ(アリーレンエーテル)の水酸基とのモル比は1:3であり、
前記溶媒はトルエンであり、
前記キャッピング触媒は、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンであり、
前記キャッピング副生成物は(メタ)アクリル酸であり、
塩基性水溶液を用いた洗浄前に、前記キャッピング反応混合物中のキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の濃度を5〜25重量パーセントに調整するステップであって、
前記キャッピング反応混合物を洗浄するステップは、5〜15重量パーセントの水酸化ナトリウムを含む塩基性水溶液で前記キャッピング反応混合物を洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第1の精製溶液を生成し、前記キャッピング反応混合物を塩基性水溶液で洗浄するステップは温度60〜95℃の範囲で行なわれるステップと、
前記第1の精製溶液を、0.2〜1モル/Lの酢酸を含む酸性溶液で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第2の精製溶液を生成するステップであって、前記第1の精製溶液を酸性水溶液で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、
前記第2の精製溶液を水で洗浄して、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)と溶媒とを含む第3の精製溶液を生成するステップであって、前記第2の精製溶液を水で洗浄するステップを温度60〜95℃の範囲で行うことを特徴とするステップと、をさらに含み、
前記完全分離方法は不揮発化押出を含む
ことを特徴とするキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)の調製方法。
【請求項34】
(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリロイル無水物として、2,500重量ppm以下の(メタ)アクリロイル基と、
1,000重量ppm以下の4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンと、
を含むことを特徴とする請求項33に記載の方法により調製された(メタ)アクリレートキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)。

【公表番号】特表2010−538114(P2010−538114A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523024(P2010−523024)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/072959
【国際公開番号】WO2009/029415
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】