説明

ポリ(アリーレンエーテル)組成物および薄壁と小型の導体を備えた被覆導体

導体と、熱可塑性組成物を含む被覆と、を備える被覆導体であって、前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)と、ポリ(アルケニル芳香族)ポリマーと、ポリオレフィン樹脂と、選択的に難燃剤と、相溶化剤と、を含み、前記被覆導体はISO6722の要求性能を本質的に満たし、前記被覆は前記導体上に設けられ、前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たすことを特徴とする被覆導体。自動車用ワイヤーハーネス組立体は、前記被覆導体を備える。「最終用途装置」は前記ワイヤー組立体を備える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年7月16日出願の米国仮特許出願番号第61/081,218号の優先権の特典を主張し、参照によりそのすべてを本明細書に援用する。
【0002】
本開示は熱可塑性組成物に関する。特に、ポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する。本開示はまた、被覆導体を開示する。該被覆導体は、薄肉(あるいは極薄肉)の被覆と断面積の小さい導体とを有する。該被覆は、ポリ(アリーレンエーテル)組成物を含む。該被覆導体を備える自動車用ワイヤーハーネス組立体と該自動車用ワイヤーハーネス組立体を備える最終用途装置も、本明細書で開示される。
【0003】
ポリ塩化ビニール樹脂は、被覆導体およびケーブル工業におけるコーティング樹脂として長く使用されてきた。しかしながら、ハロゲン化材料による環境影響に関して懸念が高まっており、非ハロゲン化代替材料が求められている。この探索によって、ポリエチレン組成物においていくつかの成功がもたらされたが、しなしながら、有用なポリエチレン組成物は典型的には、一部の機械的特性や加工性の低下をもたらし得る高濃度の無機難燃剤を含んでいる。
【0004】
また、電子デバイスの益々の小型化に伴って、こうしたデバイスやその付属品の一部として用いられるケーブルとワイヤーは、より柔軟で耐久性を有することがいよいよ求められている。同様に、自動車エンジンの電子部品数の増加に伴って、こうした電子部品を接続するワイヤーは、自動車環境における温度範囲においておよび種々の薬品への暴露後に、柔軟で耐久性を有することが益々求められている。車室内(屋根の下、カーペットの下、計器パネルの背後、ドア枠内等)およびトランク内で使用される被覆導体(およびワイヤーハーネス組立体も)も、同じ方向に向かっている。そのために、薄肉あるいは極薄肉の絶縁被覆層および益々小さな径(あるいは断面積)の導体の使用がいよいよ望まれている。被覆薄壁と小型の導体ワイヤーは依然として、いくつかの本質的な要求性能をみたさなければならない。導体のサイズが0.13mm未満の場合は、ISO6722(2002年、12−15改訂版等)などの工業標準を依然として用いてもよく、ISO6722では最小の導体サイズが議論されている。
【0005】
架橋ポリエチレンを使用した場合は、絶縁壁厚みの減少によって困難さがもたらされる。架橋ポリエチレンでは、絶縁層の薄肉化によって、オーブン温度150℃〜180℃で老化させると熱的寿命が短くなる。このために、それらの熱定格が制限される。こうした極薄壁要求によってもたらされる悪影響は、該工業における問題として広く認識されている銅触媒分解によるものとされてきた。
【0006】
銅の架橋ポリエチレンへの接触を避けるために、例えば、スズで銅コアをコーティングすることはできるが、コーティング材料とコーティング処理にかかる付加的コストが高くなる。また、一部の自動車規格では、銅導体はコーティングしないことが要求されている。また、金属不活性化剤としても既知の安定剤を絶縁材料に添加することもできるが、安定剤は、壁厚の薄い電線に対しては部分的な保護しかできないことが認識されている。
【0007】
従って、優れた機械的特性と加工性を有する熱可塑性組成物であって、これを用いて製造された被覆導体およびケーブルの耐久性とコスト有効性に重要な熱可塑性組成物が求められている。
【発明の概要】
【0008】
断面積の小さい(AWG26〜AWG56)被覆導体が本明細書で開示される。該コーティングの厚みは、例えば0.010〜0.85mmとすることができる。該コーティングは、以下に述べるポリ(アリーレンエーテル)組成物を含む。該導体は、単一の糸またはより糸、あるいは数本の糸またはより糸の束であり得る。導体材料は、電力送電用あるいは電子信号送信用の金属(銅、アルミニウム、鋼、銅合金、銅コーティングアルミニウム、ニッケルおよびまたはスズコーティング銅等)であり得る。この開示は、該被覆導体を備える自動車用ワイヤーハーネス組立体、および該自動車用ワイヤーハーネス組立体を備える最終用途製品にも及ぶ。また、該導体材料は、単一伝送用の光ファイバ用途におけるガラスあるいはプラスチックでもあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本明細書に記載の熱可塑性組成物の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】本明細書に記載の熱可塑性組成物の透過型電子顕微鏡写真である。
【図3】本明細書に記載の熱可塑性組成物の透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】本明細書に記載の熱可塑性組成物の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の要求は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)と、スチレン系樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、選択的に難燃剤と、相溶化剤とを、あるいは難燃剤と相溶化剤の組み合わせと、を含む熱可塑性組成物によって満たされる。
【0011】
また、導体と、前記導体上に設けられた被覆と、を備える被覆導体も本明細書に開示される。前記被覆は、熱可塑性組成物を含む。前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)と、スチレン系樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、選択的に難燃剤と、相溶化剤とを、あるいは難燃剤と相溶化剤と、を含む。前記被覆導体はISO6722の要求性能を本質的に満たし、前記被覆は、前記導体上に設けられており、前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たす。前記被覆導体の被覆厚は0.010〜0.85mmである。
【0012】
本明細書での「被覆導体」は、コーティングワイヤー、電線、コーティング導体などを含むものと意図される。
【0013】
該被覆導体を自動車用ワイヤーハーネス組立体に使用してもよい。前段落で述べたように、自動車用ワイヤーハーネス組立体は被覆導体を備える。
【0014】
前段落で述べたように、自動車用ワイヤーハーネスを最終用途装置に使用してもよい。
【0015】
一部の実施形態では、上記のように、被覆導体、自動車用ワイヤーハーネスおよび最終用途装置において有用な前記熱可塑性組成物は、5〜70質量%のポリ(アリーレンエーテル)と、1〜70質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜60質量%のスチレン系樹脂と、選択的に0〜35質量%の難燃剤と、選択的に0〜30質量%の相溶化剤と、を含む。質量%は、熱可塑性組成物の合計質量に対するものである。
【0016】
一部の実施形態では、上記のように、被覆導体、自動車用ワイヤーハーネスおよび最終用途装置において有用な熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、10〜80質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜30質量%の相溶化剤と、1〜55質量%のスチレン系ブロック共重合体と、1〜35質量%の難燃剤と、を含む。
【0017】
該導体は、単一または複数のより糸を含んでいてもよい。一部の実施形態では、複数のより糸を束にし、ねじり、あるいは編んで導体を形成してもよい。また、該導体は、円形あるいは矩形等の種々の形状を有していてもよい。該導体は、信号送信に使用される任意のタイプの導体であってもよい。典型的な信号は、光信号、電気信号および電磁信号などである。ガラス繊維は光導体の一例である。好適な電気導体としては、これに限定されないが、銅、アルミニウム、鉛、およびこれらの金属の1つまたは複数を含む合金などがある。
【0018】
一部の実施形態では、該導体の断面は、米国ワイヤー規格(AWG)におけるAWG56〜AWG26であってもよい。この範囲内で、該導体の断面はAWG30以上、より具体的にはAWG35以上であってもよい。また、この範囲内で、該導体の断面はAWG50以下、より具体的にはAWG45以下であってもよい。
【0019】
一部の実施形態では、該導体の断面積は、0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠してAWG56〜AWG26に対応)であってもよい。この範囲内で、該導体の断面積は0.000497mm(ASTM B258−02に準拠してAWG50)以上、より具体的には0.00487mm(ASTM B258−02に準拠してAWG40)以上であってもよい。また、この範囲内で、該導体の断面積は0.0507mm(ASTM B258−02に準拠してAWG30)以下、より具体的には0.0159mm(ASTM B258−02に準拠してAWG35)以下であってもよい。
【0020】
一部の実施形態では、該導体断面の呼称径は0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠してAWG56に対応)であってもよい。この範囲内で、該導体断面の呼称径は0.0251mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠してAWG50に対応)以上、より具体的には0.0447mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠してAWG40に対応)以上であってもよい。また、この範囲内で、該導体断面の呼称径は0.254mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠してAWG30に対応)以下、より具体的には0.142mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠してAWG35に対応)以下であってもよい。UL1581、第4版、表20.1に準拠した最大呼称径と最小呼称径の範囲も本明細書に適用されるであろう。
【0021】
該導体の断面積および被覆厚は変化してもよく、典型的には該被覆導体の最終用途によって決まる。一部の実施形態では、該被覆導体は、例えば、自動車用ハーネス、家庭用電気器具ワイヤー、電力用ワイヤー、工具用ワイヤー、情報通信用ワイヤー、電気自動車や船、航空機など用のワイヤーを含む電線として、制限なく使用可能な被覆導体である。一部の実施形態では、該被覆導体は光ケーブルであり、内部用途(建物内部)、外部用途(建物外部)あるいはその両方に使用可能である。典型的な用途としては、電話ネットワークやローカルエリアネットワーク(LAN)などのデータ送信ネットワークや音声送信ネットワークなどがある。
【0022】
一部の実施形態では、該導体は複数のより糸を含む。この場合、断面積は、すべてのより糸の全断面積の合計に等しいものとして定義される。
【0023】
任意の実施形態において、該被覆導体の被覆厚は0.010〜0.85mmであってもよい。この範囲内で、該被覆導体の被覆厚は、0.100mm以上、より具体的には0.250mm以上であってもよい。また、この範囲内で、該被覆導体のコーティング厚は、0.60mm以下、より具体的には0.50mm以下であってもよい。
【0024】
典型的な被覆導体はすべてのタイプの電線を含む。一部の実施形態では、該被覆導体は、「自動車用ワイヤーハーネス」(ワイヤーハーネス、ケーブルハーネス、ケーブルワイヤーハーネス、ワイヤーハーネス組立体、ハーネス組立体、配線クリップ、ボード組立体、自動車ハーネス、車両用ワイヤーハーネス、車両ハーネス、ハーネス配線ステム、自動車エレクトロニクス保護用組立体とも呼ばれる)と呼ばれる組立体に組み込まれる。自動車用ワイヤーハーネス組立体用の導体サイズおよびまたはコーティング厚の減少により、例えば、電気、電子および機械部品あるいは要素(コネクタ、ラッピングテープなど)などの他の関連部品も変更の必要があることは予測できる。典型的な電気、電子および機械部品あるいは要素としては、アンチロックブレーキシステム、電子制御送信、電子制御装置、電子燃料噴射、電子進角装置、ヒュージブルリンク、HA集積型点火装置、ロードセンシングタイマ、セントラルドアロック、分配器、デジタル時計、カーオーディオ、自動車用盗難防止装置、ヒューズシートモータ、クラクション、スイッチ、ブザー、コンビネーションメータ、ランプ、イグニションコイル、継電器、反転センサ、オールタネータ、方向指示器、省エネルギー機器、端子、パワーシート装置、モータ部品、カーCD、カーLCD、レギュレータ、整流器、イグニションモジュール、リアビューディスプレイ、クルーズコントローラ、ヘッドライト用バラストコンプリートセット、照明コントローラ、イグニションコイルモジュール、シガーライタ、カーボンブラシ、ソレノイドバルブ、自動車用ハンドフリー携帯電話、カーセキュリティシステム、カーナビゲーションシステム、カーコンピュータ、無線タイヤモニタ、タイヤ低圧インジケータ、水温センサ、油圧センサ、充電器、温度記録計、バッテリ容量インジケータ、ディマースイッチ、電子燃料噴射マニホールド、オーバーヒート防止システム、オーバーヒート警告システム、点火・噴射タイミング制御システム、点火タイミング制御システム、減速進角コントローラ、リタード噴射タイミング制御システム、速度によるリタード噴射タイミング、ロードによるリタード噴射タイミング、燃料制御システム、フィードバックコントローラ、空燃比フィードバック制御システム、電子制御キャブレタ、電子燃料噴射システム、電子式エンジン集中制御システム、温度センサ、圧力センサ、ポジションセンサ、スピードセンサ、ノックセンサ、吸気センサ、温度スイッチ、光電子バリア、発信機、受信機、センサ、オシレータ、デジタルクロノメータ、電磁ビームバリア、アナログ/デジタル変換器(A/D変換器)、乗員補助拘束装置(SIR)、補助拘束装置(SRS)、エアクッション拘束装置(ACRS)、エアバッグ、衝突センサ、電子式衝突センサ、一次センサ、安全センサ、二次センサ、診断モジュール、準備インジケータ、警告インジケータ、膨張装置組体、爆管、変換符号、横電磁(TEM)モード、アンプ、双方向カプラ、方向性カプラ、注入プローブ、疑似ピーク検出器、ソレノイドレギュレータバルブ、変換器バイパスバルブ、電気式アンチロック装置、DC電圧計、電流プローブ、ジェネレータ、DCジェネレータ、固定子アセンブリ(界磁フレームアセンブリ)、界磁コイル(励磁巻線)、電機子アセンブリ、電機子巻線、DCジェネレータレギュレータ、電圧レギュレータ、電流制限器、遮断リレー、交流レギュレータ、フィールドリレー、チャージインジケータリレー、電磁気レギュレータ(振動式レギュレータ)、単相電圧レギュレータ、二相電圧レギュレータ、ICレギュレータ(ソリッドステートレギュレータ)、内蔵式電圧レギュレータ、バッテリ(アキュムレータ)、スタータ、機械係合式ドライブスタータ、予係合式ドライブスタータ、アーマチュアシフト式スタータ、スライディングギアスタータ、同軸駆動スタータ、慣性駆動スタータ、ピックアップコイル、ディストリビュータレス点火システム、点火電圧リザーブ、分圧器、イグニションガバナ、イグニッションディストリビュータ、タイマーロータ、二極コネクタ、内部ケーブル、外部ケーブル、非遮蔽高電圧点火ケーブル、メールタブ、ソケット開口、制動抵抗、抑制フィルタ、平形速結端子、ポジティブロッキング雌コネクタ、肩なしタブ、肩付きタブ、圧着接続、変圧器、整流器、過剰電流保護装置、小型回路遮断器、ヒューズホルダ、ブレード端子、電気笛、ホーンリレー、バックアップブザー、マルチトーンサウンドシグナリング装置、ワイパーモータ、ヒータモータ、冷却ファンモータ、燃料ポンプモータ、ウィンドウリフトモータ、アンテナモータ(空気モータ)、シート調節モータ、ウォッシャポンプ、ウォッシャモータ、潤滑モータ、点火スイッチ、マスターライティングスイッチ、方向指示器コントローラ、ハザード警告シグナルコントローラ、室内灯スイッチ、可聴警告(ホーン)コントローラ、シート調節コントローラ、動力取り出しコントローラ、チルトコントローラ、フロントフード(ボンネット)コントローラ、リアフード(ブーツ)コントローラ、ラジエータシャッタコントローラ、外部バックミラー調節コントローラ、照明スイッチ、ストップランプスイッチ、ハンドブレーキインジケータスイッチ、ディマースイッチ、ターンシグナルスイッチ、バックアップランプスイッチ、パーキングランプスイッチ、計器燈スイッチ、ドアランプスイッチ、読書灯スイッチ、ワイパースイッチ、ウォッシャスイッチ、ヒータスイッチ、フォグランプスイッチ、停電灯スイッチ、スタータスイッチ、エンジン始動予熱スイッチ、バッテリメインスイッチ、バッテリ切換スイッチ、ロッカースイッチ、スライディングルーフコントローラ、自動アンテナコントローラ、ラジオ受信機コントローラ、ディーゼルエンジンカットオフコントローラ、ヘッドライトビーム照準コントローラ、ヘッドライトワイパコントローラ、ヘッドライトクリーナコントローラ、バッテリ断路スイッチコントローラ、光警告コントローラ、ハンドル調節コントローラ、付加的な車輪駆動コントローラ、ディファレンシャルロックコントローラ、ラジエータグリルコントローラ、レンジシフトコントローラ、集中潤滑圧力インジケータ、自動ギアボックスインジケータ、電子速度計、バイメタル式油圧センサ、電磁油圧インジケータ、可動磁石油圧インジケータ、可変抵抗油圧センサ、油量警告センサ、圧力警告センサ、エアーフィルタ詰まり警告センサ、温度警告センサ、電磁式燃料インジケータ、密閉ビーム装置、半密閉ビーム装置、信号システム、複合灯、反射光反射装置、リフレックスリフレクタ、放電ランプ、フォグランプ、集合ランプ、ハザード警告ランプ、ロービーム(ディップビーム)ヘッドライト、アッパービーム(メインビームヘッドライト)、ヘッドライトレベリング装置、クリアランスランプ、ナンバープレートランプ、後部ナンバープレートランプ、サーチランプ、サイドマーカランプ、特殊警告ランプ、ストップランプ、複合ランプ、パーキングランプ、ターンシグナルランプ、半密閉ビームヘッドライト、信号ランプ(インジケータ)、テールランプ、ドアロック警告ランプ、天井灯、読書灯、ステップランプ(カーテーシライト)、計器パネルランプ、エンジンルームランプ、電球アダプタおよび差込みソケットなどが挙げられる。さらに、該ワイヤーハーネスを備える「最終用途装置」は、自動車(乗用車および非乗用車を含めて)であり得る。
【0025】
また、該被覆導体を、例えば家庭用または事務所用備品、電気器具、テレコミュニケーション、鉄道輸送、航空機輸送、電動工具およびエンジニアリング装置などの非自動車用途に適用してもよい。これらの非自動車用途では、被覆ワイヤーは、UL1581およびまたはUL62の性能基準を満たすことが要求され得る。
【0026】
該熱可塑性組成物は、被覆導体に加えて、航空機ワイヤーガイド、航空機床材、および特に医療分野でのフレキシブル管において有用であり得る。
【0027】
一部の実施形態では、該被覆導体は、本質的にISO6722の要求性能を満たす。ISO6722の現行版(2002−12−15改訂版および2004−12−30改訂版)では、導体サイズは少なくとも0.13mm、コーティング厚は少なくとも0.85mmと規定されている。従って、「本質的にISO6722の要求性能を満たす」とは、たとえ該導体の断面が、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たし、およびまたは該被覆厚が0.010〜0.85mmであって、この両者とも現行のISO6722規格を下回っていても、ISO6722試験(試験項目を含めて)の原則は満たされ、より小型の導体とより薄肉の被覆に向けた調整のための変更が可能である、ことを意味する。
【0028】
上記に示唆したように、該熱可塑性組成物は、被覆導体用途、特に、分解を生じ得るガソリンやディーゼル燃料、不凍液などの薬品に暴露される環境で使用される被覆導体において有用である。別の態様では、該組成物は、該ワイヤーに対して好適な接着性を有する。接着は、通常の使用下でワイヤーの一体性を維持するに十分なものでなければならないが、被覆はがしができないほど強すぎてはならない。導体のサイズと熱可塑性コーティングの厚みによって異なるが、熱可塑性コーティングをワイヤーからはがすときの力は、典型的には約2〜100ニュートンであるため、該被覆導体における導体コアと熱可塑性組成物間の接着強度は、導体コアサイズと熱可塑性コーティング厚に対して典型的に用いられるはがし力以下であることが望ましい。種々の導体サイズに対する典型的なはがし力は、現行のISO6722(2002−12−15改訂版および2004−12−30改訂版)と異なっていてもよい。
【0029】
一部の実施形態では、該被覆導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たし、およびまたは該被覆は、本明細書に記載の熱可塑性組成物を含み、その厚みは0.010〜0.85mmである。該被覆導体は、難燃性、熱老化性および引っ掻き摩耗性などにおいて、ISO6722で規定されている現行基準に合致もしくはそれを上回っており、従って、該被覆導体を道路車両での使用に好適なものとしている。特に、該被覆導体は、ISO6722(2002−12−15改訂版および2004−12−30改訂版)に規定されるクラスA、BまたはCの熱老化基準に合致もしくはそれを上回り得る。
【0030】
一部の実施形態では、該組成物の曲げ弾性率は、ASTM D790−03に準拠し、厚み3.2mmの試験片、速度1.27mm/分で測定して600〜4000MPaである。この範囲内で、曲げ弾性率は900MPa以上、より具体的には1200MPa以上であってもよい。また、この範囲内で、曲げ弾性率は1700MPa以下、より具体的には1600MPa以下であってもよい。曲げ弾性率値は3試験片の平均値である。
【0031】
一部の実施形態では、該被覆導体の耐引っ掻き摩耗性は、ISO6722(2002−12−15改訂版および2004−12−30改訂版)の引っ掻き摩耗規定に準拠し、7Nの荷重と、0.45mm径の針と、断面が(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たす導体およびまたは厚みが0.010〜0.85mmの被覆とを有する被覆導体と、を用いて測定して10サイクル超である。
【0032】
一部の実施形態では、導体と、前記導体上に設けられた被覆と、を備える被覆導体であって、前記被覆は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超の(アリーレンエーテル)と、スチレン系樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、選択的に難燃剤と、相溶化剤とを、あるいは難燃剤と相溶化剤と、を含む熱可塑性組成物を含み、前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たし、前記被覆の厚みは0.010〜0.85mmであり、前記熱可塑性組成物の破断引張伸び率は、ASTM D638−03に準拠し、TypeI試験片を用い速度50mm/分で測定して30%超であり、曲げ弾性率は、ASTM D790−03に準拠し、速度1.27mm/分で測定して2500MPa未満であることを特徴とする。この性能および試験方法の詳細については米国特許第7,084,347号に記載されており、該特許のすべては参照により本明細書に援用される。
【0033】
一部の実施形態では、被覆導体は、導体と、前記導体上に設けられた被覆と、を備える。前記被覆は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、10〜80質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜30質量%の相溶化剤と、1〜60質量%のスチレン系ブロック共重合体と、1〜35質量%の難燃剤と、を含む熱可塑性組成物を含む。前記被覆導体はISO6722の要求性能を満たし、前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たし、前記被覆の厚みは約0.010〜約0.85mmであることを特徴とし、さらに、全長13,500〜15,000mの被覆導体に対し、個々の長さが150m以上の各被覆導体が6個以下存在することを特徴とする。
【0034】
一部の実施形態では、被覆導体は、導体と、前記導体上に設けられた被覆と、を備える。前記被覆は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超の(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、10〜80質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜30質量%の相溶化剤と、1〜55質量%のスチレン系ブロック共重合体と、1〜35質量%の難燃剤と、を含む熱可塑性組成物を含み、前記被覆導体はISO6722の要求性能を満たし、前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たし、前記被覆の厚みは0.010〜0.85mmであることを特徴とする。前記コーティング導体のガソリンに対する長期耐薬品性は100日以上である。ガソリンに対する長期耐薬品性は、a)ISO6722に準拠し、ISOl817液を用いてコーティング導体の耐薬品性を試験するステップと、b)外部応力をかけずに、該コーティング導体を温度23℃、相対湿度50%で老化させるステップと、c)該コーティング導体でのクラック発生を毎日検査するステップと、を備える方法であって、a)〜c)はこの順序で行われることを特徴とする方法に準拠して試験される。長期耐薬品性試験の詳細手順は、米国特許公報第2006−0278425号に記載されており、該特許出願の全体は参照により本明細書に援用される。
【0035】
一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ポリオレフィン相とポリ(アリーレンエーテル)相の、少なくとも2相を含む。ポリオレフィン相は連続しており、ポリ(アリーレンエーテル)相は該ポリオレフィン相中に分散している。該2相間の良好な相溶化によって、とりわけ、低温および室温での高衝撃強度を含む改良された物性と、良好な熱老化性と、良好な難燃性と、良好な耐薬品性と、大きな引張伸び率と、がもたらされる。組成物の形態によって相溶化の程度または質が示されることは一般に認められている。該組成物のある領域中に均一に分散した、小型で、比較的均一サイズのポリ(アリーレンエーテル)粒子は、良好な相溶化を示す。
【0036】
一部の実施形態では、該組成物は、連続するポリオレフィン相中に分散したポリ(アリーレンエーテル)粒子を有する。該組成物を射出成形もしくは押出成形する場合、特に、押出成形して被覆導体を形成する場合、該ポリ(アリーレンエーテル)粒子の平均粒径は5μm未満、より具体的には3μm以下、さらにより具体的には2μm以下であってもよい。当業者には容易に理解されるように、該ポリ(アリーレンエーテル)粒子の形状は球状または非球状であってもよい。粒子形状は、射出成形あるいは押出成形条件、特に物品成形中のせん断量に依存し得る。粒子形状が非球状の場合、粒子径は、最長線の長さとして定義される。あるいは、これは主軸として説明される。
【0037】
一部の実施形態では、該組成物は、連続するポリオレフィン相中に分散したポリ(アリーレンエーテル)粒子を有する。該組成物を射出成形もしくは押出成形する場合、該ポリ(アリーレンエーテル)粒子の平均面積は、以下の方法で測定して4μm以下、より具体的には2μm以下、さらにより具体的には1μm以下である。
【0038】
射出成形品中のポリ(アリーレンエーテル)粒子の平均径およびまたは平均粒子面積は、透過型電子顕微鏡法を用いて求めてもよい。ASTM D3763−02試験で用いられるように、該組成物を3.2mm厚の円板に射出成形する。該円板の中心(直径における)部分を除去し、次に、厚みが100nmの断面を該部分の中心(厚みにおける)から除去する。新しく調製した四酸化ルテニウム染色液中で、該断面を30秒間染色する。顕微鏡法による研究は、Technai G2などの電子顕微鏡で行ってもよい。Gatan Model791サイドマウントカメラなどのカメラを用いてデジタル画像を得てもよい。Clemex VISION PEなどの画像解析ソフトウェアを用いて画像を分析し、平均径または平均粒子面積を求めてもよい。視野内に完全に境界を有する粒子だけを分析する。該分析と平均値は少なくとも100個の粒子に対して行う。
【0039】
被覆導体などの押出品中のポリ(アリーレンエーテル)粒子の平均径およびまたは平均粒子面積は、押出熱可塑性部分を除去し、次に、該部分の表面から50〜60μmの深さの、厚み100nmの断面を該部分から除去して求めてもよい。新しく調製した四酸化ルテニウム染色液中で該断面を30秒間染色する。顕微鏡法による研究は、Technai G2などの電子顕微鏡で行ってもよい。Gatan Model791サイドマウントカメラなどのカメラを用いてデジタル画像を得てもよい。Clemex VISION PEなどの画像解析ソフトウェアを用いて画像を分析し、平均径または平均粒子面積を求めてもよい。視野内に完全に境界を有する粒子だけを分析する。該分析と平均値は少なくとも100個の粒子に対して行う。
【0040】
該ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と該ポリオレフィンのメルトフローインデックスは、組成物の形態に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)またはポリ(アリーレンエーテル)類の組み合わせの固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して0.35dl/g超であり、該ポリオレフィンのメルトフローレートは、ASTM D1238に準拠して測定して0.8〜15g/10分である。該ポリ(アリーレンエーテル)またはポリ(アリーレンエーテル)類の組み合わせの固有粘度が0.25dl/g未満の場合、該組成物の熱老化性は低下し得る。
【0041】
本明細書での「ポリ(アリーレンエーテル)」は、式(I)の構造単位を複数含む。
【化1】

式中、各構造単位について、QおよびQは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、第一級または第二級低級アルキル基(例えば、炭素原子数が1〜約7個のアルキル基)、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、アルケニルアルキル基、アルキニルアルキル基、ヒドロカルボノキシ基、アリール基、および少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を分離しているハロヒドロカルボノキシ基である。一部の実施形態では、Qは、それぞれ独立にアルキル基またはフェニル基であり、例えばC1−4アルキルであり、Qは、それぞれ独立に水素またはメチルである。該ポリ(アリーレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基のオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基(類)を有する分子を含んでいてもよい。また、テトラメチルジフェニルキノン副生成物が存在する反応混合物から典型的に得られるテトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)末端基類も存在することが多い。
【0042】
該ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、共重合体、グラフト共重合体、アイオノマー、あるいはブロック共重合体および前述のものを少なくとも1つ含む組み合わせの形態であってもよい。ポリ(アリーレンエーテル)は、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と選択的に組み合わせられた2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を含むポリフェニレンエーテルを含む。
【0043】
2,6−キシレノールおよびまたは2,3,6−トリメチルフェノールなどのモノヒドロキシ芳香族合成物(類)の酸化カップリングにより、該ポリ(アリーレンエーテル)を調製してもよい。そうしたカップリングでは、一般的に触媒系が用いられ、それらの触媒系は、第2級アミン、第3級アミン、ハロゲン化物またはこれらのものの2つ以上の組み合わせなどの種々の他の材料と通常は組み合わせられた、銅、マンガンまたはコバルト化合物などの重金属合成物を含み得る。
【0044】
一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、キャップ化ポリ(アリーレンエーテル)を含む。例えばアシル化反応によるキャッピング剤で、末端ヒドロキシ基をキャップ化してもよい。選択されたキャッピング剤は、反応性の低いポリ(アリーレンエーテル)を生成するものが望ましく、これによって、高温下での処理におけるポリマー鎖の架橋とゲルまたは黒点の生成を低減または防止できる。好適なキャッピング剤は、例えばサリチル酸、アントラニル酸あるいはそれらの置換誘導体のエステル類などを含み、サリチル酸、特にサリチル酸カーボネートのエステル類および直鎖ポリサリチラートが好適である。本明細書での「サリチル酸のエステル」には、カルボキシ基、ヒドロキシ基あるいはその両方がエステル化された化合物が含まれる。好適なサリチラートとしては、例えば、フェニルサリチラート、アセチルサリチル酸、サリチル酸カーボネート、および直鎖ポリサリチラートと、ジサリチリドやトリサリチリドなどの環式化合物の両方を含むポリサリチラートなどの、アリールサリチラートが挙げられる。好適なキャッピング剤は、サリチル酸カーボネートおよびポリサリチラート、特に直鎖ポリサリチラートである。該ポリ(アリーレンエーテル)をキャップ化する場合、該ヒドロキシ基の80%まで、より具体的には約90%まで、さらにより具体的には100%までの任意の望ましい程度までキャップ化してもよい。好適なキャップ化ポリ(アリーレンエーテル)とその調製は、Whiteらの米国特許第4,760,118号およびBraatらの同第6,306,978号に記載されている。
【0045】
また、ポリサリチラートによるポリ(アリーレンエーテル)のキャップ化は、ポリ(アリーレンエーテル)鎖中のアミノアルキル末端基量を減らすと考えられている。該アミノアルキル基は、該ポリ(アリーレンエーテル)を製造するプロセスでアミンを用いる酸化カップリング反応の結果である。該ポリ(アリーレンエーテル)の末端ヒドロキシ基のオルト位置に存在するアミノアルキル基は、高温下で分解され得る。この分解によって、第一級または第二級アミンの再生と、次に2,6−ジアルキル−1−ヒドロキシフェニル末端基を生成し得るキノンメチド末端基の生成とがもたらされると考えられる。アミノアルキル基を含むポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチラートでキャッピングすることにより、こうしたアミノ基を除去し、ポリマー鎖のキャップ化末端ヒドロキシ基と、2−ヒドロキシ−N,N−アルキルベンズアミン(サリチルアミド)の形成と、をもたらすものと考えられる。該アミノ基の除去とキャップ化によって、高温に対してより安定なポリ(アリーレンエーテル)が提供され、ポリ(アリーレンエーテル)処理中における、ゲルあるいは黒点などの分解産物の生成を低減できる。
【0046】
該ポリ(アリーレンエーテル)は、単分散ポリスチレン標準、40℃のスチレンジビニルベンゼンゲル、およびクロロホルム濃度が1mg/mlのサンプルを用い、ゲル透過クロマトグラフィで測定して、数平均分子量が約3,000〜約40,000g/molであり、質量平均分子量が約5,000〜約80,000g/molであり得る。該ポリ(アリーレンエーテル)またはポリ(アリーレンエーテル)類の組み合わせの固有粘度は、25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/gであり得る。前記熱可塑性組成物の製造に用いられるポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度(初期固有粘度)は、該熱可塑性組成物中のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度(最終固有粘度)とは異なり得る。初期固有粘度は、該化合物の他の成分との溶融混合前のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義され、最終固有粘度は、該混合物の他の成分との溶融混合後のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義される。当業者には理解されるように、該ポリ(アリーレンエーテル)の粘度は、溶融混合後には最大で30%高くなり得る。この増加パーセントは、(最終固有粘度−初期固有粘度)/初期固有粘度で求められる。2つの固有粘度を用いる場合、その正確な比率の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度と所望の最終物性とにある程度依存するであろう。
【0047】
該ポリ(アリーレンエーテル)のヒドロキシ末端基含量は、フーリエ変換赤外分光測定(FTIR)で測定して、ポリ(アリーレンエーテル)の合計質量に対して6300ppm以下であってもよい。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)のヒドロキシ末端基含量は、3000ppm以下、より具体的には1500ppm以下、さらにより具体的には500ppm以下であってもよい。
【0048】
該ポリ(アリーレンエーテル)は、目に見える微粒子不純物を本質的に含まないものであってもよい。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)は、約15μm超の微粒子不純物を実質的に含まない。本明細書で使用されるように、ポリ(アリーレンエーテル)に適用される「目に見える微粒子不純物を実質的に含まない」とは、クロロホルム(CHCl)50mlに溶解させたポリマー材料の10gサンプルをライトボックスで見たときの目に見える点が5個未満であることを意味する。通常、肉眼で見える粒子の径は40μmより大きい。本明細書で使用される「約15μm超の微粒子不純物を実質的に含まない」とは、CHCl 400mlに溶解させたポリマー材料の40gサンプル中の、約15μmサイズの微粒子の1g当たりの数が、Pacific Instruments ABS2アナライザを用い、該アナライザを流量1ml/分(±5%)で通過する前記溶解ポリマー材料20ml×5サンプルの平均で求めて、50個未満であることを意味する。
【0049】
該組成物は、その合計質量に対して、5〜70質量%の前記ポリ(アリーレンエーテル)を含んでいてもよい。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)量は、約15質量%以上、より具体的には約35質量%以上であってもよい。また、この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)量は、約55質量%以下、より具体的には約45質量%以下であってもよい。
【0050】
ポリオレフィンの一般構造式はC2nであり、ポリエチレン(HDPE、LDPE、MDPE、LLDPE)、ポリプロピレン、および典型的なホモポリマーがアタクチックポリプロピレンおよびアイソタクチックポリプロピレンであるポリイソブチレンなどが含まれる。この一般構造式を有するポリオレフィン樹脂とその調製方法は当分野で周知であり、例えば、米国特許第2,933,480号、同第3,093,621号、同第3,211,709号、同第3,646,168号、同第3,790,519号、同第3,884,993号、同第3,894,999号、同第4,059,654号、同第4,166,055号および同第4,584,334号に記載されている。一部の実施形態では、該ポリオレフィンは、ポリオレフィンホモポリマーから、より具体的には結晶性ポリオレフィンホモポリマーから本質的に構成される。
【0051】
ポリプロピレンとゴムとの共重合体やポリエチレンとゴムとの共重合体などの、ポリオレフィンの共重合体も使用できる。また、共重合体には、エチレンオクタンゴムなどの共重合体が含まれる。これらは、衝撃性改良ポリプロピレンと呼ばれることもある。こうした共重合体は、典型的には異相共重合体であり、各成分毎に、非晶質相と結晶相とを有する十分に長い断面を有する。一部の実施形態では、該ポリオレフィンは、C−Cオレフィン類のポリオレフィンホモポリマーと、C−C12オレフィン類の共重合体を含む中間ブロックと、から本質的に構成される末端基を有するポリオレフィンブロック共重合体を含む。また、該ポリオレフィンは、ホモポリマーと共重合体の組み合わせ、融点が異なるホモポリマー類の組み合わせ、およびまたはメルトフローレートが異なるホモポリマー類の組み合わせを含んでいてもよい。
【0052】
一部の実施形態では、該ポリオレフィンは、アイソタクチックポリプロピレンなどの結晶性ポリオレフィンを含む。結晶性ポリオレフィンは、結晶度が20%以上、より具体的には25%以上、さらにより具体的には30%以上のポリオレフィンとして定義される。結晶度は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定されてもよい。
【0053】
一部の実施形態では、該ポリオレフィンは、アイソタクチックポリプロピレンなどの結晶性ポリオレフィンを含む。結晶性ポリオレフィンは、結晶度が20%以上、具体的には25%以上、より具体的には30%以上のポリオレフィンとして定義される。パーセント結晶度は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定できる。一部の実施形態では、該ポリオレフィンは高密度ポリエチレンを含む。高密度ポリエチレンの密度は、0.941〜0.965g/mlであり得る。
【0054】
一部の実施形態では、該ポリオレフィンは、融点が120℃以上、具体的には125℃以上、より具体的には130℃以上、さらにより具体的には135℃以上のポリプロピレンを含む。一部の実施形態では、該ポリプロピレンの融点は175℃以下である。一部の実施形態では、該ポリオレフィンは、融点が124℃以上、具体的には126℃以上、より具体的には128℃以上の高密度ポリエチレンを含む。一部の実施形態では、該高密度ポリエチレンの融点は140℃以下である。
【0055】
一部の実施形態では、該ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR)は約0.3〜約10g/10分である。具体的には、メルトフローレートは0.3〜約5g/10分であり得る。メルトフローレートは、ASTM D1238に準拠し、粉末ポリプロピレンまたはペレット化ポリプロピレン、荷重2.16kgを用い、該樹脂に適切な温度(エチレン系樹脂では190℃、プロピレン系樹脂では230℃)で求められる。
【0056】
一部の実施形態では、該ポリオレフィンは、ポリエチレンホモポリエチレンまたはポリエチレン共重合体を含む。また、該ポリエチレンは、ホモポリマーと共重合体の組み合わせ、融点が異なるホモポリマー類の組み合わせ、およびまたはメルトフローレートが異なるホモポリマー類の組み合わせを含んでいてもよい。該ポリエチレンの密度は、0.911g/cm〜0.98g/cmであり得る。
【0057】
該組成物は、前記熱可塑性組成物の合計質量に対して1〜70質量%の前記ポリオレフィンを含んでいてもよい。この範囲内で、ポリオレフィン量は5質量%以上、より具体的には約20質量%以上であってもよい。また、この範囲内で、ポリオレフィン量は約60質量%以下、より具体的には約45質量%以下であってもよい。
【0058】
該熱可塑性組成物はスチレン系樹脂を含む。スチレン系樹脂は、アルケニル芳香族モノマー類のホモポリマーおよび共重合体を含む。本明細書での「アルケニル芳香族モノマー類の共重合体」とは、複数の異なるアルケニル芳香族モノマー類から構成されるモノマー類の共重合体を指す。アルケニル芳香族モノマー類のホモポリマーは、アタクチックポリスチレンおよびシンジオタクチックポリスチレンを含むポリスチレン類を含む。アルケニル芳香族モノマー類の共重合体は、スチレン、メチルスチレン類およびt−ブチルスチレン類から構成される群から選択される複数のモノマー類のランダム共重合体を含む。また、アルケニル芳香族モノマー類の共重合体は、ブロック共重合体(以下、「スチレン系ブロック共重合体」として定義する)も含む。アルケニル芳香族モノマー類のホモポリマーおよび共重合体が存在する場合、その量は、前記熱可塑性組成物の合計質量に対して1〜60質量%、具体的には10〜40質量%とすることができる。
【0059】
一部の実施形態では、該組成物がその合計質量に対して35質量%以上のポリオレフィンを含む場合、該組成物は、ポリスチレンあるいはゴム変性ポリスチレン(高衝撃ポリスチレンあるいはHIPSとして既知)などのポリ(アルケニル芳香族)樹脂を本質的に含まないものにできる。本質的に含まないとは、アルケニル芳香族樹脂の量が、組成物の合計質量に対して10質量%未満、より具体的には7質量%未満、さらにより具体的には5質量%未満、さらにより具体的には3質量%未満であると定義される。
【0060】
スチレン系ブロック共重合体は、(A)アリールアルキレン繰り返し単位を含む少なくとも1つのブロックと、(B)アルキレン繰り返し単位を含む少なくとも1つのブロックと、を含む共重合体である。ブロック(A)および(B)の配置は、直線構造あるいは分子鎖を有する所謂ラジアルテレブロック構造であってもよい。A−Bジブロック共重合体およびA−B−Aトリブロック共重合体は、アリールアルキレン繰り返し単位を含むAブロックを1つまたは複数有する。ペンダントアリール部分は多環式であってもよく、該環式部分上の任意の利用可能な位置に置換基分を有していてもよい。好適な置換基としては、炭素数が1〜4個のアルキル基が含まれる。典型的なアリールアルキレン単位は、式Iに示すフェニルエチレンである。
【化2】

アリールアルキレン単位の量がアルキレン単位の量を上回っている限り、ブロックAはさらに、炭素数が2〜15個のアルキレン単位を含んでいてもよい。ブロックBは、エチレン、プロピレン、ブチレンあるいはこれらのものの2つ以上の組み合わせなどの、炭素数が2〜15のアルキレン単位繰り返し単位を含む。アルキレン単位の量がアリールアルキレン単位の量を上回っている限り、ブロックBはさらにアリールアルキレン単位を含んでいてもよい。あるブロックAの分子量は、他のブロックAのそれと同じであっても違っていてもよい。同様に、あるブロックBの分子量は、他のブロックBのそれと同じであっても違っていてもよい。
【0061】
該アリールアルキレン繰り返し単位は、スチレンなどのアリールアルキレンモノマーの重合から得られる。該アルキレン繰り返し単位は、ブタジエンなどの不飽和繰り返し単位の水素化から得られる。該ブタジエンは、1,4−ブタジエンおよびまたは1,2−ブタジエンを含んでいてもよい。該Bブロックはさらに、いくつかの不飽和炭素−炭素結合を含んでいてもよい。
【0062】
一部の実施形態では、該組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)およびポリオレフィンに加えて、アルケニル芳香族化合物および共役ジエンの水素化スチレン系ブロック共重合体を含む。この水素化スチレン系ブロック共重合体のポリ(アルケニル芳香族)含量は、水素化ブロック共重合体の合計質量に対して約10〜45質量%である。具体的には、該ポリ(アルケニル芳香族)含量は約10〜約40質量%、あるいは約10〜約35質量%とすることができる。該水素化ブロック共重合体の質量平均分子量は200,000原子質量単位であってもよい。上記の通り、この分子量は、ゲル透過クロマトグラフィにより、ポリスチレン標準に対して求められる。一部の実施形態では、該水素化ブロック共重合体の質量平均分子量は200,000〜約400,000原子質量単位、具体的には220,000〜350,000原子質量単位である。高分子量水素化ブロック共重合体の製造方法は当分野で既知であり、例えばJonesの米国特許第3,431,323号に記載されている。また、高分子量水素化ブロック共重合体は市販されてもおり、例えば、Kraton Polymers社からKRATON G1651として市販されている、質量平均分子量が約240,000〜約301,000原子質量単位(AMU)で、スチレン含量が31質量%のポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体などがある。
【0063】
一部の実施形態では、該組成物は、第1のスチレン系ブロック共重合体と第2のスチレン系ブロック共重合体を含んでいてもよい。該第1のスチレン系ブロック共重合体のアリールアルキレン含量は、第1のスチレン系ブロック共重合体の合計質量に対して50質量%以上である。該第2のスチレン系ブロック共重合体のアリールアルキレン含量は、第2のスチレン系ブロック共重合体の合計質量に対して50質量%未満である。該第1のスチレン系ブロック共重合体、第2のスチレン系ブロック共重合体あるいはその両方は、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体との配合物であってもよい。ブロック共重合体の典型的な組み合わせは、スチレン系含量がその合計質量に対して15質量%〜40質量%のポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンであり、スチレン系含量がその合計質量に対して55質量%〜70質量%のポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンを用いてもよい。アリールアルキレン含量が50質量%超の典型的なスチレン系ブロック共重合体は、旭化成ケミカルズ(株)から商標名TUFTEC、商品名H1043などで、また、(株)クラレから、商標名SEPTONでいくつかの商品が市販されている。アリールアルキレン含量が50質量%未満の典型的なスチレン系ブロック共重合体は、Kraton Polymers社から、商標名KRATON、商品名G−1701、G−1702、G−1730、G−1641、G−1650、G−1651、G−1652,G−1657、A−RP6936およびA−RP6935などとして市販されている。
一部の実施形態では、該第1および第2スチレン系ブロック共重合体は、両方ともトリブロック共重合体である。
【0064】
一部の実施形態では、該スチレン系ブロック共重合体(類)の数平均分子量は、ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定して、5,000〜1,000,000g/molである。この範囲内で、数平均分子量は、少なくとも10,000g/mol、より具体的には少なくとも30,000g/mol、さらにより具体的には少なくとも45,000g/molであってもよい。また、この範囲内で、数平均分子量は好適には、800,000g/mol以下、より具体的には700,000g/mol以下、さらにより具体的には650,000g/mol以下であってもよい。
【0065】
該水素化ブロック共重合体の調製に用いる共役ジエンは、C4−C20共役ジエンであり得る。好適な共役ジエン類としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、該共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンあるいはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、該共役ジエンは1,3−ブタジエンから構成される。
【0066】
該水素化スチレン系ブロック共重合体は、(A)アルケニル芳香族化合物から誘導された少なくとも1つのブロックと、(B)共役ジエンから誘導された少なくとも1つのブロックと、を含む共重合体であって、ブロック(B)の脂肪族不飽和基含量は水素化によって低減することを特徴とする共重合体である。ブロック(A)および(B)の配置としては、リニア構造、グラフト構造および分枝鎖の有無に係わらないラジアルテレブロック構造がある。直鎖スチレン系ブロック共重合体には、傾斜型直鎖構造および非傾斜型直鎖構造がある。一部の実施形態では、該水素化スチレン系ブロック共重合体は、傾斜型直鎖構造を有する。分布制御型ブロック共重合体と呼んでもよい傾斜型ブロック共重合体の調製方法は、例えば、Handlinらの米国特許出願第2003/181584 A1号などに記載されている。好適な傾斜型ブロック共重合体も、例えば、Kraton Polymers社からKRATON A RP6936およびKRATON A RP6935などとして市販されている。一部の実施形態では、該水素化スチレン系ブロック共重合体は、非傾斜型直鎖構造を有する。一部の実施形態では、該水素化スチレン系ブロック共重合体は、アルケニル芳香族モノマーがランダムに取り込まれたBブロックを含む。直鎖スチレン系ブロック共重合体構造には、ジブロック(A−Bブロック)構造、トリブロック(A−B−AブロックまたはB−A−Bブロック)構造、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)構造、ペンタブロック(A−B−A−B−AブロックあるいはB−A−B−A−Bブロック)構造、およびA−Bが合計で6個以上含まれた直鎖構造などがあり、ここで、各Aブロックの分子量は、他のAブロックのそれと同じであっても異なっていてもよく、各Bブロックの分子量は、他のBブロックのそれと同じであっても異なっていてもよい。一部の実施形態では、該水素化スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体あるいはこれらの組み合わせである。
【0067】
一部の実施形態では、該水素化スチレン系ブロック共重合体は、酸およびまたはアミン部分で官能化されてもよい。
【0068】
市販の水素化スチレン系ブロック共重合体の具体的なものとしては、Kraton Polymers社からKraton G1701およびG1702として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロック共重合体;Kraton Polymers社からKraton G1641、G1650、G1651、G1654、G1657、G1726、G4609、G4610、GRP−6598、RP−6924、MD−6932M、MD−6933およびMD−6939として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;Kraton Polymers社からKraton RP−6935およびRP−6936として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレン(S−EB/S−S)トリブロック共重合体;Kraton Polymers社からKraton G1730として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;Kraton Polymers社からKraton G1901、G−1924およびMD−6684として販売されている無水マレイン酸−グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;Kraton Polymers社からKraton MD−6670として販売されている無水マレイン酸−グラフト化ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;旭化成ケミカルズ(株)からTUFTEC H1043として販売されている67質量%のポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;旭化成ケミカルズ(株)からTUFTEC H1051として販売されている42質量%のポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;旭化成ケミカルズ(株)からTUFTEC P1000およびP2000として販売されているポリスチレン−ポリ(ブタジエン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;旭化成ケミカルズ(株)からS.O.E.−SS L601として販売されているポリスチレン−ポリブタジエン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリブタジエンブロック共重合体;Chevron Phillips Chemical社からK樹脂KK38、KR01、KR03およびKR05として販売されている水素化ラジアルブロック共重合体;(株)クラレからSEPTON S8104として販売されている約60質量%のポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;(株)クラレからSEPTON S4044、S4055、S4077およびS4099として販売されているポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体;および(株)クラレからSEPTON S2104として販売されている約65質量%のポリスチレンを含むポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体などが挙げられる。複数のブロック共重合体の混合物を用いてもよい。市販の非水素化ブロック共重合体の具体的なものとしては、Kraton Polymers社のKRATON(登録商標)D1101およびD1102を含むKRATON(登録商標)Dシリーズポリマー類およびChevron Phillips Chemical社から、例えばK−RESIN KR01、KR05、KR10dとして販売されているスチレンブタジエンラジアルテレブロック共重合体などが挙げられる。
【0069】
一部の実施形態では、1つまたは複数の該スチレン系ブロック共重合体が一緒に用いられる。該スチレン系ブロック共重合体あるいはスチレン系ブロック共重合体の組み合わせの組成物中の量は、組成物の合計質量に対して1〜60質量%であってもよい。この範囲内で、該スチレン系ブロック共重合体またはその組み合わせの量は、組成物の合計質量に対して5質量%以上、より具体的には15質量%以上であってもよい。また、この範囲内で、該スチレン系ブロック共重合体またはその組み合わせの量は、組成物の合計質量に対して55質量%以下、より具体的には40質量%以下、さらにより具体的には30質量%以下であってもよい。
【0070】
相溶化剤のタイプには制限はない。一部の実施形態では、該相溶化剤は、(i)スチレン系ジブロック共重合体とスチレン系トリブロック共重合体の組み合わせ、(ii)中央ブロックが分布制御型共重合体であるスチレン系ブロック共重合体、(iii)ポリプロピレン−ポリスチレングラフト共重合体、および(iv)前記第1ブロック共重合体およびその混合物の合計質量に対して、アリールアルキレン含量が50質量%以上のスチレン系ブロック共重合体、から構成される群から選択されたポリマー相溶化剤を含む。該ポリマー相溶化剤は、該スチレン性樹脂、特に該スチレン系ブロック共重合体と違っていてもそれを含んでいてもよい。
【0071】
該ポリ(アリーレンエーテル)が連続相、すなわち共連続相でない組成物では、該ポリマー相溶化剤の量は、平均粒径が5μm未満およびまたは平均粒子面積が4μm以下の分散ポリ(アリーレンエーテル)粒子の形成に十分な量とする。一部の実施形態では、該ポリマー相溶化剤の組成物中の量は、組成物の合計質量に対して0〜30質量%であってもよい。この範囲内で、ブロック共重合体の組み合わせの量は、組成物の合計質量に対して5質量%以上、より具体的には10質量%以上であってもよい。
【0072】
該ポリマー相溶化剤の詳細については、米国特許公報第20060135661号および同第20060135695号に記載されており、これらの特許出願の全体は、参照により本明細書に援用される。処理中の高温下で好適に安定である点と、塩素と臭素を含まないという点を除いて、使用する難燃剤のタイプに関しては特に制限はない。典型的な難燃剤としては、メラミン(CAS番号:108−78−1)、メラミンシアヌレート(CAS番号:37640−57−6)、リン酸メラミン(CAS番号:20208−95−1)、ピロリン酸メラミン(CAS番号:15541−60−3)、ポリリン酸メラミン(CAS番号:218768−84−4)、メラム、メレム、メロン、ホウ酸亜鉛(CAS番号:1332−07−6)、リン酸ホウ素、赤リン(CAS番号:7723−14−0)、有機リン酸エステル、リン酸モノアンモニウム(CAS番号:7722−76−1)、リン酸ジアンモニウム(CAS番号:7783−28−0)、アルキルホスホネート(CAS番号:78−38−6および78−40−0)、金属ジアルキルホスフィネート、アンモニウムポリホスフェート(CAS番号:68333−79−9)、低融点ガラスおよびこれらの難燃剤2つ以上の組み合わせなどが挙げられる。
【0073】
一部の実施形態では、該組成物は、有機リン酸エステル、金属ジアルキルホスフィネート、窒素含有難燃剤、金属水酸化物およびこれらの混合物から構成される群から選択された難燃剤を含む。一部の実施形態では、該難燃剤の量は、組成物の合計質量に対して0〜35質量%であってもよい。この範囲内で、有機リン酸エステルの量は5質量%以上、より具体的には10質量%以上にできる。また、この範囲内で、有機リン酸エステルの量は30質量%以下、より具体的には25質量%以下にできる。
【0074】
典型的な有機リン酸エステル難燃剤としては、これに限定されないが、フェニル基、置換フェニル基、またはこれらの組み合わせ、例えばレゾルシノールビス−ジフェニルホスフェートなどのレゾルシノール系ビス−アリールホスフェートエステル、および、例えばビス−フェノールAビス−ジフェニルホスフェートなどのビスフェノール類系のものなどを含むリン酸エステル類が挙げられる。一部の実施形態では、該有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS番号:89492−23−9またはCAS番号:78−33−1)、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(例えばCAS番号:57583−54−7)、ビス−フェノールAビス−ジフェニルホスフェート(例えばCAS番号:181028−79−5)、トリフェニルホスフェート(例えばCAS番号:115−86−6)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えばCAS番号68937−41−7)およびこれらの有機リン酸エステル類の複数のものの組み合わせなどが挙げられる。
【0075】
一部の実施形態では、該有機リン酸エステルは、式IIIのビス−アリールホスフェートを含む。
【化3】

式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数が1〜5個のアルキル基であり、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数が1〜10個のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基またはアルキルアリール基であり、nは1〜25に等しい整数であり、s1とs2はそれぞれ独立に、0〜2に等しい整数である。一部の実施形態では、OR、OR、ORおよびORはそれぞれ独立に、フェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールまたはトリアルキルフェノールから誘導される。
【0076】
当業者には容易に理解されるように、該ビス−アリールホスフェートはビスフェノールから誘導される。典型的なビスフェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(所謂ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられる。一部の実施形態では、該ビスフェノールはビスフェノールAを含む。
【0077】
有機リン酸エステルは、該熱可塑性組成物に用いられる異なった有機リン酸エステル類の決定を困難にする異なった分子量を有し得る。一部の実施形態では、該有機リン酸エステルの結果としてのリン酸の量は、該組成物の合計質量に対して、0.8質量%〜1.2質量%である。
【0078】
該難燃剤が熱可塑性組成物中に存在する場合、その量は、該被覆導体がそのタイプの難燃性基準に合格するに十分なものである。例えば、該被覆導体がある被覆導体である場合、難燃剤の量は、ISO6722で規定される火炎伝播手順に準拠して試験したときの被覆導体の消炎時間が70秒以下とするに十分なものである。
【0079】
一部の実施形態では、該難燃剤は、組成物の合計質量に対して5〜30質量%の量の有機リン酸エステルを含む。この範囲内で、該有機リン酸エステルの量は7質量%以上、より具体的には10質量%以上にできる。また、この範囲内で、該有機リン酸エステルの量は25質量%以下、より具体的には20質量%以下にできる。
【0080】
一部の実施形態では、該組成物は金属ジアルキルホスフィネートを含む。本明細書での「金属ジアルキルホスフィネート」は、少なくとも1つの金属カチオンと少なくとも1つのジアルキルホスフィネートアニオンを含む塩を指す。一部の実施形態では、該金属ジアルキルホスフィネートは、下式の構造を有する。
【化4】

式中、RとRは各々独立に、C−Cアルキルであり、Mはカルシウム、マグネシウム、アルミニウムあるいは亜鉛であり、dは2または3である。RおよびRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基およびフェニル基などが挙げられる。一部の実施形態では、RとRはエチルであり、Mはアルミニウムであり、dは3(すなわち、該金属ジアルキルホスフィネートはアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)である。
【0081】
一部の実施形態では、該金属ジアルキルホスフィネートは微粒子状である。該金属ジアルキルホスフィネート粒子の中央粒径(D50)は40μm以下、より具体的には30μm以下、さらにより具体的には25μm以下であってもよい。また、該金属ジアルキルホスフィネートは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリアミド、ブロック共重合体あるいはこれらの組み合わせなどのポリマーと結合していてもよい。該金属ジアルキルホスフィネートマスタバッチ内の金属ジアルキルホスフィネート量は、熱可塑性組成物中のその量よりも多い。該金属ジアルキルホスフィネートの熱可塑性組成物中の他の成分への添加用マスタバッチの採用によって添加が容易となり、該金属ジアルキルホスフィネートの分散性を向上できる。
【0082】
一部の実施形態では、該難燃剤は、組成物の合計質量に対して0〜20質量%の量の金属ジアルキルホスフィネートを含む。この範囲内で、金属ジアルキルホスフィネートの量は2質量%以上、より具体的には5質量%以上にできる。また、この範囲内で、有機リン酸エステルの量は15質量%以下、より具体的には10質量%以下にできる。
【0083】
一部の実施形態では、該組成物は、窒素含有複素環塩基と、リン酸、ピロリン酸またはポリリン酸と、を含む窒素含有難燃剤を含む。一部の実施形態では、該窒素含有難燃剤は下式の構造を有する。
【化5】

式中、gは1〜約10,000であり、f対gの比率は0.5:1〜1.7:1、具体的には0.7:1〜1.3:1、より具体的には0.9:1〜1.1:1である。この式が、1つまたは複数のプロトンがポリホスフェート基からメラミン基(類)まで移動する種を含むことは理解されるであろう。gが1の場合、該窒素含有難燃剤はリン酸メラミン(CAS登録番号:20208−95−1)である。gが2の場合、該窒素含有難燃剤はピロリン酸メラミン(CAS登録番号:1554160−3)である。gが平均で2より大きい場合、該窒素含有難燃剤はポリリン酸メラミン(CAS登録番号:56386−64−2)である。一部の実施形態では、該窒素含有難燃剤は、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミンあるいはこれらの混合物である。該窒素含有難燃剤がポリリン酸メラミンである一部の実施形態では、gの平均値は2超〜約10,000、具体的には約5〜約1,000、より具体的には約10〜約500である。該窒素含有難燃剤がポリリン酸メラミンである一部の実施形態では、gの平均値は2超〜約500である。リン酸メラミン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンの調製方法は当分野で既知であり、それらすべては市販されている。例えばポリリン酸メラミンを、例えば、Kasowskiらの米国特許第6,025,419号に記載されるように、ポリリン酸とメラミンとの反応によって、あるいは、Jacobsonらの国際特許出願WO98/08898A1号に記載されるように、窒素雰囲気下、290℃で、ピロリン酸メラミンを恒量に達するまで加熱することによって調製してもよい。
【0084】
該窒素含有難燃剤の揮発度は、該硬化性組成物の熱硬化に用いられる温度に対して低くできる。例えば、一部の実施形態では、該窒素含有難燃剤を昇温速度20℃/分で25℃から280℃まで加熱、具体的には25℃から300℃まで加熱、より具体的には25℃から320℃まで加熱したときの、熱質量分析による該難燃剤の質量損失は1%未満である。
【0085】
一部の実施形態では、該難燃剤は、組成物の合計質量に対して0〜20質量%の量の窒素含有難燃剤を含む。この範囲内で、窒素含有難燃剤の量は2質量%以上、より具体的には5質量%以上にできる。また、この範囲内で、有機リン酸エステルの量は15質量%以下、より具体的には10質量%以下にできる。
【0086】
一部の実施形態では、該組成物は金属水酸化物を含んでいてもよい。好適な金属水酸化物としては、難燃性を付与できるものすべて、およびそれらの組み合わせが挙げられる。該金属水酸化物は、難燃剤添加組成物およびまたは難燃性熱可塑性組成物の処理中に実質的に分解しないように選択できる。本明細書での実質的に分解しないとは、該難燃剤添加組成物による所望の難燃性付与を妨げない量の分解として定義される。典型的な金属水酸化物としては、これに限定されないが、水酸化マグネシウム(例えばCAS番号:1309−42−8)、水酸化アルミニウム(例えばCAS番号:21645−51−2)、水酸化コバルト(例えばCAS番号:21041−93−0)およびこれらのものの2つ以上の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、該金属水酸化物は水酸化マグネシウムを含む。一部の実施形態では、該金属水酸化物の平均粒径は10μm以下であり、およびまたはその純度は90質量%以上である。一部の実施形態では、該金属水酸化物が実質的に水分を含まず、つまり、120℃×1時間で乾燥時の質量損失が1%未満であることが望ましい。一部の実施形態では、該金属水酸化物は、例えばステアリン酸あるいは他の脂肪酸でコーティングされ得る。
【0087】
該金属水酸化物の難燃剤添加組成物中の量は、組成物の合計質量に対して0〜35質量%にできる。この範囲内で、該金属水酸化物の量は、組成物の合計質量に対して10質量%、より具体的には15質量%、さらにより明確には20質量%以上にできる。また、この範囲内で、該金属水酸化物の量は、組成物の合計質量に対して30質量%以下、より具体的には25質量%以下にできる。
【0088】
一部の実施形態では、該組成物は、0.1質量%未満の、より具体的には0.05質量%未満のポリシロキサンを含む。
【0089】
また、該組成物は、酸化防止剤;例えばシリケート類、TiO、繊維、ガラス繊維、ガラス球、炭酸カルシウム、タルクおよび雲母などの、平均粒径が10μm以下の充填材や補強材;離型剤;UV吸収剤;光安定剤などの安定剤;潤滑剤;可塑剤;顔料;染料;着色剤;静電防止剤;起泡剤;発泡剤;金属不活性化剤、およびこれらの添加剤の1つまたは複数を含む組み合わせ、などの種々の添加剤を選択的に含んでいてもよい。これらの添加剤の量は、組成物の合計質量に対して0.01〜5質量%の範囲で変えられる。
【0090】
該熱可塑性組成物の製造方法は、典型的には配合押出機あるいはBanburyミキサーなどの溶融混合装置で、該成分を溶融混合(配合)するステップを備える。一部の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)、スチレン系ブロック共重合体類およびポリオレフィンを同時に溶融混合する。別の実施形態では、該ポリ(アリーレンエーテル)、スチレン系ブロック共重合体類および選択的に該ポリオレフィンの一部を溶融混合して第1の溶融混合物を形成する。続いて、該ポリオレフィンあるいは該ポリオレフィンの残りを第1の溶融混合物とさらに溶融混合して、第2の溶融混合物を形成する。あるいは、該ポリ(アリーレンエーテル)と該スチレン系ブロック共重合体類の一部を溶融混合して第1の溶融混合物を形成し、次に、該ポリオレフィンと該スチレン系ブロック共重合体類の残りを第1の溶融混合物とさらに溶融混合して、第2の溶融混合物を形成してもよい。
【0091】
前述の溶融混合プロセスは、第1の溶融混合物を分離することなく実現でき、あるいは、第1の溶融混合物の分離により実現できる。1つまたは複数のタイプの溶融混合装置を含む1台または複数台の溶融混合装置をこれらのプロセスで使用できる。一部の実施形態では、該被覆を形成する熱可塑性組成物の成分の一部を押出機に導入して溶融混合し、該導体をコーティングしてもよい。
【0092】
該難燃剤添加の方法と場所は典型的には、ポリマーアロイとその製造の一般的な技術で十分に理解されているように、該難燃剤の本質と物性、例えば固体か溶液かなど、によって決定づけられる。一部の実施形態では、該難燃剤を、該熱可塑性組成物の一成分、例えば該ポリオレフィンの一部と配合して、その後に残りの成分と溶融混合される濃縮物を形成する。
【0093】
該ポリ(アリーレンエーテル)、スチレン系ブロック共重合体類、ポリオレフィンおよび難燃剤を、ポリ(アリーレンエーテル)のガラス転移温度以上でポリオレフィンの分解温度未満の温度で溶融混合する。例えば、該ポリ(アリーレンエーテル)、スチレン系ブロック共重合体類、ポリオレフィンおよび難燃剤を押出機温度240℃〜320℃で溶融混合してもよい。ただし、溶融混合中は短時間の間、この範囲を超えることが起こり得る。この範囲内で、温度は250℃以上、より具体的には260℃以上であってもよい。また、この範囲内で、温度は310℃以下、より具体的には300℃以下であってもよい。
【0094】
該成分の一部または全部を溶融混合後、溶融混合物を1つまたは複数のフィルタで溶融ろ過できる。一部の実施形態では、該1つまたは複数のフィルタの開口部の径は20μm〜150μmである。この範囲内で、開口部の径は130μm以下、より具体的には110μm以下であってもよい。また、この範囲内で、開口部の径は30μm以上、より具体的には40μm以上にできる。
【0095】
一部の実施形態では、該フィルタの開口部の最大径は、導体に適用される被覆の厚みの半分以下である。例えば、該被覆導体の被覆厚が200μmの場合、フィルタ開口部の最大径は100μm以下である。
【0096】
溶融混合物から微粒子不純物を取り除くことができる限り、任意の好適な溶融ろ過システムまたは装置を用いてもよい。一部の実施形態では、溶融混合物は単一の溶融ろ過システムでろ過される。複数の溶融ろ過システムも考慮される。
【0097】
好適な溶融ろ過システムは、これに限定されないが、焼結金属、金属メッシュまたはスクリーン、繊維金属フェルト、セラミックまたはこれらの材料の組み合わせなどの種々の材料で製造されたフィルタを含む。特に有用なフィルタは、Pall社およびMartin Kurz& Company社製の焼結ワイヤーメッシュフィルタなどの、高屈曲性を有する焼結金属フィルタである。
【0098】
一部の実施形態では、溶融ろ過された混合物をダイヘッドを通し、ストランドペレット化または水中ペレット化のいずれかでペレット化する。ペレット化された材料を包装、貯蔵および輸送してもよい。一部の実施形態では、金属箔で裏打ちしたプラスチックバッグ、典型的にはポリプロピレンバッグ、あるいは金属箔で裏打ちした紙バッグに該ペレットを詰める。
【0099】
一部の実施形態では、該熱可塑性組成物は、目に見える微粒子不純物を実質的に含まない。目に見える微粒子あるいは「黒点」とは、拡大なしに一般に人間の目に見え、平均径が40μm以上の黒色または有色の微粒子である。平均径が30μm未満の粒子を拡大せずに目で検出できる人もいれば、平均径が40μm超の粒子だけを検出できる人もいるが、本明細書で特定の平均径に言及せずに用いる「目に見える粒子」、「目に見える微粒子」および「黒点」は、平均径が40μm以上の微粒子を意味する。本明細書での、該熱可塑性組成物に適用された「目に見える微粒子不純物を実質的に含まない」とは、該組成物を射出成形して大きさが75mm×50mm、厚みが3mmの平板を5枚製作し、この平板の黒点を裸眼で目視検査した場合、5枚の平板すべてでの黒点の合計数が100個以下、より具体的には70個以下、さらにより具体的には50個以下であることを意味する。
【0100】
一部の実施形態では、該ペレットを溶融し、組成物を押出コーティングなどの適切な方法で導体に適用して被覆導体を形成する。例えば、ねじ、クロスヘッド、ブレーカプレート、分配器、ニップルおよびダイを装備したコーティング押出機が使用できる。溶融した熱可塑性組成物によって、導体の周上に設ける被覆が形成される。押出コーティングでは、単一テーパーダイ、二重テーパーダイ、他の適切なダイあるいはダイの組み合わせを用いて導体を中心に位置決めし、ダイリップ堆積を回避してもよい。
【0101】
一部の実施形態では、該組成物を導体に適用して導体上に設けられた被覆を形成する。追加の層を該被覆に適用してもよい。
【0102】
一部の実施形態では、該組成物を、導体と被覆間に1つまたは複数の介在層を有する導体に適用して、導体上に設けられる被覆を形成する。例えば、選択的な接着促進層を導体と被覆間に設けてもよい。別の例では、コーティング適用前に、該導体を金属不活性化剤でコーティングしてもよい。別の例では、該介在層は、発泡性の熱可塑性組成物または熱硬化性組成物を含む。
【0103】
一部の実施形態では、該導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たす。
【0104】
一部の実施形態では、被覆導体は、導体と、熱可塑性組成物を含む被覆と、を含み、前記被覆導体は、ISO6722の要求性能を本質的に満たし、前記被覆は前記導体上に設けられ、前記被覆の厚みは約0.010〜0.85mmであることを特徴とする。
【0105】
一部の実施形態では、押出コーティング前に該熱可塑性組成物を乾燥させることが有用であり得る。典型的な乾燥条件は、温度60〜90℃×2〜20時間である。また、一部の実施形態では、押出コーティングの間、コーティング形成前に、開口部径が20μm〜150μmの1つまたは複数のフィルタで、該熱可塑性組成物を溶融ろ過する。この範囲で、開口部径は30μm以上、より具体的には40μm以上であってもよい。また、この範囲内で、開口部径は130μm以下、より具体的には110μm以下であってもよい。該コーティング押出機は、上記のように、1つまたは複数のフィルタを含んでいてもよい。
【0106】
一部の実施形態では、押出コーティングの間、コーティング形成前に、最大径が導体に適用される被覆厚の半分以下である開口部を有する1つまたは複数のフィルタで、該熱可塑性組成物を溶融ろ過する。
【0107】
別の実施形態では、溶融混合で製造された溶融ろ過混合物はペレット化されない。正確には、溶液状の溶融ろ過混合物は、該溶融混合装置と一体になったコーティング押出機、典型的には配合押出機を用いて、導体用のコーティングに直接形成される。該コーティング押出機は、上記のように、1つまたは複数のフィルタを備えていてもよい。
【0108】
一部の実施形態では、該熱可塑性組成物を押出成形するか、そうでなければ、被覆を付与するチューブに形成するかが考慮される。該導体および選択的な介在層を該チューブ内に挿入して被覆導体を形成してもよい。
【0109】
該押出コーティング前又はその間に、着色濃縮物あるいはマスタバッチを組成物に添加してもよい。着色濃縮物を用いる場合、その量は典型的には、組成物の合計質量に対して3質量%以下である。一部の実施形態では、該着色濃縮物に用いる染料およびまたは顔料は、塩素、臭素およびフッ素を含まない。当業者には理解されるように、着色濃縮物添加前の組成物の色は、実現される最終色に影響を及ぼす可能性があり、漂白剤およびまたは色安定剤の使用が好都合な場合もある。漂白剤および色安定剤は当分野で既知であり、市販されている。
【0110】
押出コーティングの間の押出機温度は、一般に320℃以下、より具体的には310℃以下、さらにより具体的には290℃以下である。また、処理温度は、導体用の被覆を提供するための十分に流動性の液状組成物を提供できるように調節され、例えば、該熱可塑性組成物の融点より高温に、より具体的には組成物の融点より少なくとも10℃高く調節される。
【0111】
押出コーティング後、該被覆導体は通常、水浴、水スプレー、エアジェットあるいはこれらの冷却法の1つまたは複数を含む組み合わせを用いて冷却される。典型的な水浴温度は20〜85℃である。
【0112】
また、シートやトレーなどの物品が、耐薬品性、熱老化性、耐磨耗性および衝撃強度の組み合わせを有することが望ましい場合、該組成物を成形または押出してそうした物品を形成してもよい。
【0113】
該組成物と被覆導体について、以下の非限定実施例によってさらに説明する。
実施例
【0114】
表1の材料を用いて、以下の実施例を調製した。
【表1】

実施例1〜15
【0115】
二軸スクリュー押出機内で成分を混合して実施例1〜15を製造した。PPEとブロック共重合体類は供給口で添加し、PPは下流で添加した。BPADPが存在する場合、押出機の後半部でそれを液体噴射装置を用いて添加した。押出された材料を物性試験用試験片に射出成形した。物性とそれらの試験方法を表2に記載する。ASTM D638−03に準拠した試験では、曲げ弾性率サンプルと同条件で射出成形したタイプIサンプルを用いた。引張伸び率は速度50mm/分で測定した。メガパスカルはMPaと、ジュールはJと、ニュートンはNと、メートルはmと略記する。該実施例の組成物を表3に記載する。データを表4に記載する。変形温度と曲げ弾性率は、3サンプルの平均値である。残りの値は、5サンプルの平均値である。実施例15の射出成形サンプルの形態の透過型電子顕微鏡写真を図1に示す。実施例15の組成物を有する押出被覆導体の熱可塑性コーティング形態の透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。実施例5の射出成形サンプルの形態の透過型電子顕微鏡写真を図3に示す。図4は、実施例5の透過型電子顕微鏡写真であり、平均径と平均粒子面積を決定する準備としてマークした境界(10)を有する粒子(5)を示す。実施例5の平均径は0.96μmであり、平均粒子面積は0.32μmであった。これらの平均値は、129個の粒子を基に求められた。
【表2】

【表3】

【表4】


【0116】
アルケニル芳香族含量が高いブロック共重合体とアルケニル含量が低いブロック共重合体との組み合わせを用いた実施例は、関連の比較実施例より著しく大きな衝撃強度を示し、2倍以上の場合もある。
実施例16
【0117】
実施例15の組成物を用いて被覆導体を製造した。導体のサイズは、0.2mm、0.5mmおよび2mmであった。該熱可塑性組成物を325メッシュでろ過し、82℃×3〜4時間乾燥後、該導体コアと共に押出して被覆導体を形成した。別途、着色マスタバッチを押出機に添加した。被覆厚は、0.2mm(0.2mm導電体ワイヤー)または0.4mm(0.5mmおよび2mm導電体ワイヤー)であった。
【0118】
ガソリン、ディーゼル燃料、エンジンオイル、エタノール、パワーステアリング液、オートマティックトランスミッション液、エンジン冷却液およびバッテリ酸などの種々の自動車液に対する該被覆導体の耐性試験を行った。該被覆導体の難燃性耐温水性についても試験した。試験はISO6722に準拠して行い、該被覆導体は、耐薬品性、難燃性および温水試験に合格した。該被覆導体の引っ掻き摩耗性は420サイクルであった。試験は、ISO6722に準拠し、荷重4N、0.45mm径の針を用いて0.2mm導体の被覆導体で行った。該被覆導体は、ISO6722のクラスCの熱過負荷試験にも合格した。該被覆導体は、ISO6722のクラスCの条件で行った短期熱老化試験に合格した。
実施例17〜29
【0119】
二軸スクリュー押出機内で成分を混合して、実施例17〜24を製造した。PPEとブロック共重合体類を供給口で添加し、ポリオレフィンを下流で添加した。BPADPは、押出機の後半部で液体噴射装置を用いて添加した。押出された材料を物性試験用試験片に射出成形した。物性とそれらの試験方法を表2に記載する。ASTM D638−03に準拠した試験では、曲げ弾性率サンプルと同条件で射出成形したタイプIサンプルを用いた。引張伸び率は速度50mm/分で測定した。ショーアD試験をASTM D2240に準拠して行った。メガパスカルはMPaと、ジュールはJと、ニュートンはNと、メートルはmと略記する。該実施例の組成物を表5に記載する。データを表4に記載する。変形温度と曲げ弾性率は、3サンプルの平均値である。残りの値は、5サンプルの平均値である。
【0120】
実施例15および実施例25〜29の組成物を用いて被覆導体を製造した。該導体のサイズは2.0mmであった。該熱可塑性組成物を325メッシュでろ過し、82℃×3〜4時間乾燥後、該導体コアと共に押出して被覆導体を形成した。被覆厚は0.4mmであった。
【0121】
引張伸び率、引張強度、耐摩耗性(荷重7N)、難燃性、ガソリン耐性、耐温水性、短期熱老化性(クラスC)、長期熱老化性(クラスAおよびB)、熱負荷(クラスB)および高温下での圧力に関して、該被覆導体を試験した。該被覆導体の難燃性と耐温水性についても試験した。試験はISO6722に準拠して行なった。また、該被覆導体の束柔軟性についても試験した。
【表5】

【表6】

【0122】
実施例26〜29は、他の特性の大きな低下がなく、驚くほど曲げ弾性率が低い。例えば、実施例15や25に比べて曲げ弾性率が低下しているにも係わらず、実施例26〜29は依然として優れた耐摩耗性を有している。
【0123】
実施例1〜29の組成物を用いて製造され、コーティング厚が0.010〜0.85mmの小型被覆導体(AWG26〜56)は、ISO6722の要求性能を本質的に満たす。
【0124】
本明細書と特許請求の範囲において、多くの用語について言及されるが、それらは以下の意味を有するように定義されるものとする。本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」など、「一次の」「二次の」など、および「(a)」「(b)」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いるものである。同じ成分あるいは特性に係る範囲はすべて終点を含むものであり、該終点は互いに独立に組み合わせ可能である。「1つの実施形態」「別の実施形態」「ある実施形態」「一部の実施形態」などの言及は、該実施形態に関連して説明される特定の要素(例えば、特長、構造、特性およびまたは特徴など)が本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、他の実施形態に存在してもしなくてもよい。また、記載された要素(類)は種々の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせられるものと理解されるべきである。単数表現は、文脈上明らかにそうでない場合以外は、複数も包含する。「選択的な」あるいは「選択的に」は、続いて記載される事象あるいは状況が生じても生じなくてもよく、該記載には該事象が生じる場合と生じない場合を含むことを意味する。
【0125】
好適な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が可能でありその要素を均等物で置換できることは当業者には理解されるであろう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの変更を行って特定の状況や材料を本発明が教示するものに適応させることができる。したがって、本発明は、その実施のために考慮された最良の実施形態として開示された特定の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものと意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体上に設けられた被覆と、を備える被覆導体であって、
前記被覆は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)と、スチレン系樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、選択的に難燃剤と、相溶化剤とを、あるいは難燃剤と相溶化剤の組み合わせと、を含む熱可塑性組成物を含み、
前記被覆導体はISO6722の要求性能を本質的に満たし、
前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たすことを特徴とする被覆導体。
【請求項2】
前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、1〜70質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜60質量%のスチレン系樹脂と、0〜35質量%の難燃剤と、0〜30質量%の相溶化剤と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆導体。
【請求項3】
前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、10〜80質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜30質量%の相溶化剤と、1〜55質量%のブロック共重合体と、1〜35質量%の難燃剤と、を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆導体。
【請求項4】
前記被覆の厚みは0.010〜0.85mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の被覆導体。
【請求項5】
被覆導体を備える自動車用ワイヤーハーネス組立体であって、
前記被覆導体は、導体と、前記導体上に設けられた被覆と、を備え、
前記被覆は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)と、スチレン系樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、選択的に難燃剤と、相溶化剤とを、あるいは難燃剤と相溶化剤との組み合わせと、を含む熱可塑性組成物を含み、
前記被覆導体はISO6722の要求性能を本質的に満たし、
前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たすことを特徴とする自動車用ワイヤーハーネス組立体。
【請求項6】
前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、1〜70質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜60質量%のスチレン系樹脂と、0〜35質量%の難燃剤と、0〜30質量%の相溶化剤と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の自動車用ワイヤーハーネス組立体。
【請求項7】
前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、10〜80質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜30質量%の相溶化剤と、1〜55質量%のブロック共重合体と、1〜35質量%の難燃剤と、を含むことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の自動車用ワイヤーハーネス組立体。
【請求項8】
前記被覆の厚みは0.010〜0.85mmであることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の自動車用ワイヤーハーネス組立体。
【請求項9】
自動車用ワイヤーハーネス組立体を備える最終用途装置であって、
前記自動車用ワイヤーハーネスは被覆導体を備え、
前記被覆導体は、導体と、前記導体上に設けられた被覆と、を備え、
前記被覆は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)と、スチレン系樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、選択的に難燃剤と、相溶化剤とを、あるいは難燃剤と相溶化剤との組み合わせと、を含む熱可塑性組成物を含み、
前記被覆導体はISO6722の要求性能を本質的に満たし、
前記導体の断面は、(i)米国ワイヤーゲージ規格(AWG)のAWG56〜AWG26、(ii)断面積が0.000122〜0.128mm(ASTM B258−02に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)、および(iii)呼称径が0.0124〜0.404mm(UL1581、第4版、表20.1に準拠し、AWG56〜AWG26に対応)の内の少なくとも1つを満たすことを特徴とする最終用途装置。
【請求項10】
前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、1〜70質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜60質量%のスチレン系樹脂と、0〜35質量%の難燃剤と、0〜30質量%の相溶化剤と、を含むことを特徴とする請求項9に記載の最終用途装置。
【請求項11】
前記熱可塑性組成物は、固有粘度が25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/g超のポリ(アリーレンエーテル)を5〜70質量%と、10〜80質量%のポリオレフィン樹脂と、1〜30質量%の相溶化剤と、1〜55質量%のブロック共重合体と、1〜35質量%の難燃剤と、を含むことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の最終用途装置。
【請求項12】
前記被覆の厚みは0.010〜0.85mmであることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の最終用途装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−533854(P2012−533854A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520803(P2012−520803)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042206
【国際公開番号】WO2011/009013
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】