説明

ポリ(アリーレンエーテル)組成物並びにその硬化組成物及び製品

硬化性組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)、オレフィン性不飽和モノマー、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.2〜約5重量部の硬化開始剤、並びに官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.005〜約1重量部の硬化抑制剤を含む。硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比が約1.2:1〜約50:1である。組成物は、成形の初期段階の、硬化時間を損なうことなく、改善された再現性のある流れを提供する。組成物は、プラスチック封止電子デバイスを製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性ポリ(アリーレンエーテル)樹脂とスチレンやアクリル酸エステルのようなコモノマーを含む硬化性組成物は、例えばYeager他の米国特許第6352782号及びYeager他の米国特許出願公開第2001−0053820号に記載されている。かかる組成物の潜在的用途の一つはプラスチック封止電子デバイスの製造用である。こうした電子デバイスの製造の経験から、硬化に要する総所要時間を増やさずに、成形の初期段階の流動性の向上した硬化性組成物に対する必要性が示唆された。
【特許文献1】米国特許第6352782号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2001−0053820号明細書
【特許文献3】米国特許第3306875号明細書
【特許文献4】米国特許第3375228号明細書
【特許文献5】米国特許第4148843号明細書
【特許文献6】米国特許第4562243号明細書
【特許文献7】米国特許第4663402号明細書
【特許文献8】米国特許第4665137号明細書
【特許文献9】米国特許第5091480号明細書
【特許文献10】米国特許第5071922号明細書
【特許文献11】米国特許第5079268号明細書
【特許文献12】米国特許第5304600号明細書
【特許文献13】米国特許第5310820号明細書
【特許文献14】米国特許第5338796号明細書
【特許文献15】欧州特許第261574号明細書
【特許文献16】米国特許第4923932号明細書
【特許文献17】米国特許第5407972号明細書
【特許文献18】米国特許第5218030号明細書
【特許文献19】米国特許第6251308号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2002−0169256号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2002−0173597号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2002−0177027号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2003−0096123号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2003−0215588号明細書
【特許文献25】米国特許第4634742号明細書
【特許文献26】ドイツ特許出願公開第3117514号明細書
【特許文献27】ドイツ特許出願公開第4103140号明細書
【特許文献28】米国特許第4677185号明細書
【特許文献29】米国特許第4701514号明細書
【特許文献30】米国特許第4760118号明細書
【特許文献31】米国特許第4806601号明細書
【特許文献32】米国特許第5171761号明細書
【特許文献33】米国特許第5219951号明細書
【特許文献34】米国特許第5352745号明細書
【特許文献35】米国特許第5834565号明細書
【特許文献36】米国特許第5965663号明細書
【特許文献37】米国特許第6051662号明細書
【特許文献38】米国特許第6384176号明細書
【特許文献39】米国特許第6469124号明細書
【特許文献40】米国特許第6521703号明細書
【特許文献41】米国特許第6569982号明細書
【特許文献42】米国特許第6617398号明細書
【特許文献43】米国特許第6627704号明細書
【特許文献44】米国特許第6627708号明細書
【特許文献45】米国防衛出願第521号明細書
【特許文献46】米国特許第6355832号明細書
【特許文献47】米国特許第6534673号明細書
【特許文献48】米国特許第6547992号明細書
【特許文献49】米国特許第6388046号明細書
【非特許文献1】“Plastic Additives Handbook, 4th Edition” R. Gachter and H. Muller (eds.), P.P. Klemchuck (assoc. ed.) Hanser Publishers, New York 1993, pp.901−948
【非特許文献2】S.J.Monte et al. in Ann. Chem. Tech Conf. SPI(1980), Ann. Tech Conf. Reinforced Plastics and Composite Inst. SPI 1979, Section 16E, New Orleans
【非特許文献3】S.J.Monte, Mod. Plastics Int., Vol.14, Nol.6, pg. 2 (1984)
【非特許文献4】L.B. Cohen in Plastics Engineering, Vol.39, Nol.11, p.29 (1983)
【非特許文献5】“SEMI G11−88. Recommended Practice for Ram Follower Gel Time and Spiral Flow of Thermal Setting Molding Compounds”, published by Semiconductor Equipment and Materials International
【非特許文献6】C. Pugh and V. Percec, Polym. Prepr. (Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem.)(1985), 26(2), 303−5
【非特許文献7】S.J.Monte et al., Ann. Chem. Tech. Conf. SPI (1980), Ann. Tech. Conf. Reinforced Plastics and Composite Inst. SPI(1979), Section 16E, New Orleans, pp1−10
【非特許文献8】L.B. Cohen, “Zircoaluminates Strengthen Premium Ranges of Chemical Coupling Agents”, Plastics Engineering, Volume 39, Number 11, (1983) pp.29−32
【非特許文献9】S.J.Monte et al., “Coupling Composites With Titanate During Extrusion Process”, Modern Plastics, May (1984), pp.74, 76, and 78
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)と、オレフィン性不飽和モノマーと、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.2〜約5重量部の硬化開始剤、及び官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.005〜約1重量部の硬化抑制剤を含んでなる硬化性組成物であって、硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比が約1.2:1〜約50:1である硬化性組成物は、総硬化時間と硬化の初期段階の流動性向上との優れたバランスを示す。
【0004】
硬化組成物、その硬化組成物を含む物品並びに硬化組成物の製造方法を始めとする他の実施形態については、以下で詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
一実施形態は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)と、オレフィン性不飽和モノマーと、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.2〜約5重量部の硬化開始剤、及び官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.005〜約1重量部の硬化抑制剤を含んでなる硬化性組成物であって、硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比が約1.2:1〜約50:1である硬化性組成物である。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、高いガラス転移温度、低い熱膨張率及び低い誘電率のようなポリ(アリーレンエーテル)系熱硬化樹脂に通常付随する望ましい特性を呈するとともに、現在市場で優勢なエポキシ熱硬化性樹脂の成形特性と同様の成形特性を示す組成物を見出した。初期の研究では、このような組成物は迅速に硬化するが、硬化の初期段階での流動性に乏しいことが示唆された。鋭意検討を加えた結果、比較的高濃度の硬化開始剤と硬化抑制剤を使用するとともに、これらの2成分の比を注意深く制御することによって総硬化時間を損なわずに、流動性の向上及び流動性の再現性の改善を達成できることが判明した。後記の実施例に示すように、流動性の向上は例えばスパイラルフローの増大として現れる。
【0007】
本組成物は官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む。官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)でも、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)でも、或いは酸もしくは無水物官能化ポリ(アリーレンエーテル)でもよい。
【0008】
本明細書では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)とは、封鎖剤との反応によって対応非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)に存在する遊離ヒドロキシル基の50%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに一段と好ましくは95%以上、なお一段と好ましくは99%以上が官能化されたポリ(アリーレンエーテル)と定義される。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造で表される。
【0009】
Q(J−K)
式中、Qは一価、二価又は多価フェノールの残基、好ましくは一価又は二価フェノールの残基、さらに好ましくは一価フェノールの残基であり、yは1〜100であり、Jは次式の繰返し構造単位からなる。
【0010】
【化1】

式中、mは1〜約200、好ましくは2〜約200であり、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシなどである。Kはポリ(アリーレンエーテル)のフェノール性ヒドロキシル基と封鎖剤との反応で生成した封鎖基である。得られる封鎖基Kには、以下のものがある。
【0011】
【化2】

式中、Rは1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC〜C12ヒドロカルビルであり、R〜Rは各々独立に水素、1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC〜C18ヒドロカルビル、C〜C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボン酸、イミデート、チオカルボン酸などであり、R〜R13は各々独立に水素、ハロゲン、C〜C12アルキル、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸などであり、Yは以下に挙げるような二価基である。
【0012】
【化3】

式中、R14及びR15は各々独立に水素、C〜C12アルキルなどである。本明細書で用いる「ヒドロカルビル」とは、炭素と水素のみからなる残基をいう。この残基は、脂肪族又は芳香族でも、直鎖又は環式又は二環式又は枝分れでも、飽和又は不飽和でもよい。ただし、ヒドロカルビル残基は、その旨明記したときは、置換基の炭素と水素に加えてヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、かかるヘテロ原子を含むと特記されている場合、ヒドロカルビル基は、カルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、ハロゲン原子などを含んでいもよいし、或いは、ヒドロカルビル基の主鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0013】
一実施形態では、Qは、多官能性フェノールを含めたフェノール類の残基であり、次式の構造の基を包含する。
【0014】
【化4】

式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、Xは水素、C〜C18ヒドロカルビル、又はカルボン酸、アルデヒド、アルコール、アミノ基などの置換基を有するC〜C18ヒドロカルビルでもよいし、Xは硫黄、スルホニル、スルフリル、酸素その他の2以上の原子価を有していて各種のビス−又はそれ以上のポリフェノールを生成する橋かけ基でもよく、n(すなわち、Xに結合したフェニレンエーテル単位の数)は1〜約100、好ましくは1〜3、さらに好ましくは約1〜2である。Qは2,6−ジメチルフェノールのような一価フェノールの残基であってもよく、この場合nは1である。Qは2,2′,6,6′−テトラメチル−4,4′−ジフェノールのようなジフェノールの残基であってもよく、この場合nは2である。
【0015】
一実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、以下の構造の1種以上の一価フェノールの重合生成物から基本的になるポリ(アリーレンエーテル)を封鎖することによって製造される。
【0016】
【化5】

式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシなどである。適当な一価フェノールとしては、例えばHayの米国特許第3306875号に記載されているものが挙げられ、非常に好ましい一価フェノールとしては、2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールが挙げられる。ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールのような2種以上の一価フェノールの共重合体であってもよい。一実施形態では、一価フェノールは純度約99重量%超、好ましくは約99.6重量%超、さらに好ましくは約99.8重量%超の2,6−ジメチルフェノールである。2,6−ジメチルフェノールは好ましくは水分量が約1000重量ppm未満、さらに好ましくは約500重量ppm未満である。水は反応生成物であるので、2,6−ジメチルフェノールモノマー中の水分量を最低限に抑えることによって、酸化重合プロセスを改善することができると考えられる。
【0017】
一実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0018】
【化6】

式中、R〜Rは各々独立に水素、1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC〜C18ヒドロカルビル、C〜C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボン酸、イミデート、チオカルボン酸などである。非常に好ましい封鎖基として、アクリレート(R=R=R=水素)及びメタクリレート(R=メチル、R=R=水素)が挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0019】
別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0020】
【化7】

式中、Rは、1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC〜C12ヒドロカルビル、好ましくはC〜Cアルキル、さらに好ましくはメチル、エチル又はイソプロピルである。本発明の有益な特性は、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)に炭素−炭素二重結合のような重合性官能基がない場合であっても達成できる。
【0021】
さらに別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0022】
【化8】

式中、R〜R13は各々独立に水素、ハロゲン、C〜C12アルキル、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸などである。この種の好ましい封鎖基としては、サリチレート(R=ヒドロキシ、R10〜R13=水素)が挙げられる。
【0023】
さらに別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0024】
【化9】

式中、Aは、例えばエチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、2−メチル−1,4−ブチレン、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン、2,3−ジメチル−1,4−ブチレン、ビニレン(−CH=CH−)、1,2−フェニレンなどの飽和又は不飽和C〜C12二価炭化水素基である。これらの封鎖ポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、例えば非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と環状無水物封鎖剤との反応によって簡便に製造できる。かかる環状無水物封鎖剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水フタル酸などが挙げられる。
【0025】
封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の製造方法に特段の制限はない。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と封鎖剤との反応によって形成することができる。封鎖剤には、文献でフェノール基と反応することが知られている化合物が挙げられる。かかる化合物には、例えば無水物、酸塩化物、エポキシ、カーボネート、エステル、イソシアネート、シアン酸エステル又はハロゲン化アルキル基を有するモノマー及びポリマーがいずれも包含される。リン系及び硫黄系封鎖剤も挙げられる。封鎖剤の具体例としては、例えば無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水サリチル酸、サリチレート単位を有するポリエステル、サリチル酸のホモポリエステル、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、炭酸ジ(4−ニトロフェニル)のような炭酸ジフェニル、アクリロイルエステル、メタクリロイルエステル、アセチルエステル、フェニルイソシアネート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルフェニルイソシアネート、シアナトベンゼン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、3−(α−クロロメチル)スチレン、4−(α−クロロメチル)スチレン、臭化アリルなど、これらの置換誘導体並びに混合物が挙げられる。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の上記その他の製造方法は、例えばHoloch他の米国特許第3375228号、Goossensの米国特許第4148843号、Percec他の米国特許第4562243号、同第4663402号、同第4665137号及び同第5091480号、Nelissen他の米国特許第5071922号、同第5079268号、同第5304600号及び同第5310820号、Vianello他の米国特許第5338796号、Yeager他の米国特許出願公開第2001/0053820号、並びにPeters他の欧州特許第261574号に記載されている。
【0026】
未封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と無水物との反応に封鎖触媒を使用してもよい。かかる化合物の例としては、フェノールと上記封鎖剤との縮合を触媒することができる当技術分野で公知のものがある。有用な物質としては、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムなどの塩基性化合物水酸化物塩、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルブチルアミンなどの第三アルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどアルキル−アリール混成第三アミン及びその置換誘導体、イミダゾール、ピリジンなどの複素環式アミン及びそれらの置換誘導体、例えば2−メチルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、4−(1−ピロリノ)ピリジン、4−(1−ピペリジノ)ピリジン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどを始めとする塩基性化合物が挙げられる。例えばイソシアネートやシアン酸エステルとフェノールとの縮合触媒として公知のスズや亜鉛の塩などの有機金属塩も有用である。これに関して有用な有機金属塩は、当業者に周知の多数の刊行物及び特許で当技術分野で公知である。
【0027】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)は環官能化ポリ(アリーレンエーテル)であってもよい。一実施形態では、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)は次の繰返し構造単位を含むポリ(アリーレンエーテル)である。
【0028】
【化10】

式中、L〜Lは各々独立に水素、C〜C12アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基であり、アルケニル基は次式で表され、
【0029】
【化11】

(式中、L〜Lは独立に水素又はメチルであり、aは0、1、2、3又は4である。)、アルキニル基は次式で表され、
【0030】
【化12】

(式中、Lは水素、メチル又はエチルであり、bは0、1、2、3又は4である。)、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)中の全L〜L置換基の約0.02〜約25モル%はアルケニル及び/又はアルキニル基である。この範囲内で、アルケニル及び/又はアルキニル基は好ましくは約0.1モル%以上、さらに好ましくは約0.5モル%以上である。おなじくこの範囲内で、アルケニル及び/又はアルキニル基は好ましくは約15モル%以下、さらに好ましくは約10モル%以下である。
【0031】
環官能化ポリ(アリーレンエーテル)は公知の方法で製造し得る。例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)のような非官能化ポリ(アリーレンエーテル)をn−ブチルリチウムのような試薬で金属化した後、臭化アリルのようなハロゲン化アルケニル及び/又は臭化プロパルギルのようなハロゲン化アルキニルと反応させればよい。環官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂の上記その他の製造方法は、例えばKatayose他の米国特許第4923932号に記載されている。
【0032】
別の実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)とα,β−不飽和カルボニル化合物又はβ−ヒドロキシカルボニル化合物との溶融反応の生成物であり、酸又は無水物官能化ポリ(アリーレンエーテル)を生ずる。実施形態によっては、酸官能基と無水物官能基が共に存在することがある。α,β−不飽和カルボニル化合物の具体例としては、例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、並びに上記その他の類似化合物の各種誘導体が挙げられる。β−ヒドロキシカルボニル化合物の具体例としては、例えばクエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。かかる官能化は、通常は約190〜約290℃の温度でのポリ(アリーレンエーテル)と所望のカルボニル化合物との溶融混合によって実施される。
【0033】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)の分子量又は固有粘度に特段の制限はない。一実施形態では、本組成物は、数平均分子量約1000〜約25000原子質量単位(AMU)の官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、数平均分子量約2000AMU以上、さらに好ましくは約4000AMU以上の官能化ポリ(アリーレンエーテル)を使用するのが好ましいことがある。別の実施形態では、本組成物は、クロロホルム中25℃で測定して約0.05〜約0.6dL/gの固有粘度を有する官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、好ましくは約0.08dL/g以上、さらに好ましくは約0.1dL/g以上である。同じくこの範囲内で、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は好ましくは約0.5dL/g以下、さらに一段と好ましくは約0.4dL/g以下である。一般に、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と対応非官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度との差はわずかである。具体的には、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は概して非官能化ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度の10%以内である。分子量及び固有粘度の異なる2種以上の官能化ポリ(アリーレンエーテル)のブレンドの使用も当然に考えられる。組成物は、2種以上の官能化ポリ(アリーレンエーテル)のブレンドを含んでいてもよい。かかるブレンドは、別個に製造・単離された官能化ポリ(アリーレンエーテル)から製造し得る。別法として、かかるブレンドは、1種類のポリ(アリーレンエーテル)と2種以上の官能化剤との反応で製造することもできる。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)を2種類の封鎖剤と反応させてもよいし、或いはポリ(アリーレンエーテル)を金属化して2種類の不飽和アルキル化剤と反応させてもい。別法では、モノマー組成及び/又は分子量の異なる2種以上のポリ(アリーレンエーテル)樹脂の混合物を、1種類の官能化剤と反応させてもよい。組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂と非官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂のブレンドを適宜含んでいてもよく、これらの2成分の固有粘度は適宜異なっていてもよい。
【0034】
硬化性組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約5〜約90重量部の官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂の量は、好ましくは約10重量部以上、さらに好ましくは約15重量部以上である。同じくこの範囲内で、官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂の量は、好ましくは約80重量部以下、さらに好ましくは約60重量部以下、さらに一段と好ましくは約50重量部以下である。
【0035】
本組成物はオレフィン性不飽和モノマーを含む。本明細書では、オレフィン性不飽和モノマーとは、炭素−炭素二重結合を有する重合性モノマーと定義される。適当なオレフィン性不飽和モノマーとしては、例えばアルケニル芳香族モノマー、アリルモノマー、アクリロイルモノマーなど、さらにはこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
アルケニル芳香族モノマーとしては、次式のものがある。
【0037】
【化13】

式中、R16は各々独立に水素又はC〜C18ヒドロカルビルであり、R17は各々独立にハロゲン、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシル又はC〜C18アリールであり、pは1〜4であり、qは0〜5である。芳香族環上の任意の部位が水素原子で置換される。適当なアルケニル芳香族モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−t−ブチルスチレン、3−t−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、芳香族環上に1〜5個のハロゲン置換基を有するスチレンなど、並びにこれらの組合せが挙げられる。スチレンが特に好ましいアルケニル芳香族モノマーである。
【0038】
オレフィン性不飽和モノマーはアリルモノマーでもよい。アリルモノマーは、1以上、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上のアリル(−CH−CH=CH)基を含む有機化合物である。適当なアリルモノマーとしては、例えばフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、メリト酸トリアリル、メシン酸トリアリル、トリアリルベンゼン、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、これらの混合物、これらの部分重合生成物などが挙げられる。
【0039】
好ましい実施形態では、オレフィン性不飽和モノマーはアクリロイルモノマーであってもよい。アクリロイルモノマーは次の構造の1以上のアクリロイル部分を有する化合物である。
【0040】
【化14】

式中、R20〜R22は各々独立に水素、C〜C12ヒドロカルビル、C〜C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボン酸、イミデート、チオカルボン酸などである。一実施形態では、アクリロイルモノマーは2以上のアクリロイル部分を含む。別の実施形態では、アクリロイルモノマーは、3以上のアクリロイル部分を含む。適当なアクリロイルモノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートともいう。)、エトキシル化(2)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(なお、エトキシル化という語に続く数は、ビスフェノールAの各酸素に結合したエトキシレート鎖中のエトキシ基の数の平均を意味するが、アクリロイルモノマーについて「エトキシル化」と記載されているが数が特定されていない場合は、任意の数のエトキシレート基が存在し得る。)など、さらにはこれらのアクリロイルモノマーの1種類以上を含む混合物が挙げられる。
【0041】
本組成物は、一般に封鎖ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約10〜約95重量部のオレフィン性不飽和モノマーを含む。この範囲内で、約20重量部以上、さらに好ましくは約30重量部以上の量のオレフィン性不飽和モノマーを使用するのが好ましい。同じくこの範囲内で、約80重量部以下、さらに好ましくは約60重量部以下のオレフィン性不飽和モノマーを使用するのが好ましい。
【0042】
本組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.2〜約5重量部の硬化開始剤を含む。この範囲内で、硬化開始剤量は、好ましくは約0.5重量部以上、さらに好ましくは約1重量部以上、さらに一段と好ましくは約1.5重量部以上である。同じくこの範囲内で、硬化開始剤量は、好ましくは約4重量部以下、さらに好ましくは約3重量部以下である。一実施形態では、硬化開始剤の量はマイクロモル/g樹脂単位で表すが、ここでの「樹脂」は官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーからなる。この実施形態では、硬化開始剤量は好ましくは約100マイクロモル/g樹脂以上である。
【0043】
硬化開始剤は、硬化触媒とも呼ばれ、当技術分野で周知の不飽和ポリエステル、ビニルエステル及びアリル熱硬化性樹脂を始めとする多数の熱可塑性樹脂並びに熱硬化性樹脂の重合、硬化又は架橋の開始に使用し得る。硬化開始剤の非限定的な具体例としては、Smith他の米国特許第5407972号及びKatayose他の第5218030号に記載されているものが挙げられる。硬化開始剤には、高温でフリーラジカルを生成し得る化合物が包含される。かかる硬化開始剤には、ペルオキシ系及び非ペルオキシ系ラジカル開始剤が包含される。有用なペルオキシ系開始剤の具体例としては、例えば過酸化ベンゾイル、ジクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化ラウリル、シクロヘキサノンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキシ−3−イン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)ペルオキシド、トリメチルシリルフェニルトリフェニルシリルペルオキシドなど、さらにこれらの硬化開始剤の1種以上を含む混合物が挙げられる。適当な非ペルオキシ系開始剤としては、例えば2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−トリメチルシリルオキシ−2,3−ジフェニルブタンなど、さらにこれらの硬化開始剤の1種以上を含む混合物が挙げられる。熱硬化性樹脂の不飽和基用の硬化開始剤は、不飽和成分のアニオン重合を開始し得る化合物をさらに含んでいてもよい。かかるアニオン重合開始剤としては、例えばナトリウムアミド(NaNH)やリチウムジエチルアミド(LiN(C)のようなアルカリ金属アミド、C〜C10アルコキシドのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、水酸化アルカリ金属及び水酸化アンモニウム、シアン化アルカリ金属、アルキルリチウム化合物であるn−ブチルリチウムのような有機金属化合物、フェニル臭化マグネシウムのようなグリニャール試薬など、さらにこれらのアニオン重合開始剤の1種以上を含む組合せが挙げられる。好ましい実施形態では、硬化開始剤は、t−ブチルペルオキシベンゾエート又はジクミルペルオキシドを含む。硬化開始剤は、約0℃〜約200℃の温度で硬化を促進し得る。
【0044】
本組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.005〜約1重量部の硬化抑制剤を含む。この範囲内で、硬化抑制剤量は、好ましくは約0.05重量部以上、さらに好ましくは約0.1重量部以上である。同じくこの範囲内で、硬化抑制剤量は、好ましくは約0.5重量部以下、さらに好ましくは約0.3重量部以下である。一実施形態では、硬化抑制剤量は、マイクロモル/g樹脂単位で表すが、ここでの「樹脂」は官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーからなる。この実施形態では、硬化抑制剤量は好ましくは約50マイクロモル/g樹脂以上である。
【0045】
適当な硬化抑制剤としては、例えばジアゾアミノベンゼン、フェニルアセチレン、sym−トリニトロベンゼン、p−ベンゾキノン、アセトアルデヒド、アニリン縮合物、N,N′−ジブチル−o−フェニレンジアミン、N−ブチル−p−アミノフェノール、2,4,6−トリフェニルフェノキシル、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、モノアルキルヒドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルヒドロキノン、C〜C−アルキル置換カテコール、ジアルキルヒドロキノン、2,4,6−ジクロロニトロフェノール、ハロゲン−オルト−ニトロフェノール、アルコキシヒドロキノン、フェノール及びカテコールのモノ−及びジ−及びポリスルフィド、キノンのチオール、オキシム及びヒドラゾン、フェノチアジン、ジアルキルヒドロキシルアミンなど、さらにこれらの硬化抑制剤の1種以上を含む組合せが挙げられる。適当な硬化抑制剤としては、さらに非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)(すなわち、遊離ヒドロキシル基を有するポリ(アリーレンエーテル))も挙げられる。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)Q(J−K)を参照して、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)はQ(J−H)と表すことができ、封鎖基Kの代わりに水素原子Hを有する。好ましい硬化抑制剤としては、ベンゾキノン、ヒドロキノン及び4−t−ブチルカテコールが挙げられる。
【0046】
硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比は約1.2:1〜約50:1である。この範囲内で、重量比は、好ましくは約2:1以上、さらに好ましくは約5:1以上である。同じくこの範囲内で、重量比は好ましくは約20:1以下、さらに好ましくは約12:1以下である。最適重量比は、所望の特性バランス、硬化開始剤の種類、硬化抑制剤の種類、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の種類と量、オレフィン性不飽和モノマーの種類と量、並びにオプションの成分の種類と量を始めとする要因に依存する。一実施形態では、硬化開始剤と硬化抑制剤の相対量はモル比で特定される。この実施形態では、硬化開始剤と硬化抑制剤のモル比は約20:1〜約1:1とすることができる。この範囲内で、モル比は好ましくは約2:1以上である。同じくこの範囲内で、モル比は好ましくは約10:1以下、さらに好ましくは約5:1以下である。
【0047】
組成物は、さらに粒状充填剤及び繊維状充填剤を始めとする1種以上の充填剤を適宜含んでいてもよい。かかる充填剤の例は当技術分野で周知であり、“Plastic Additives Handbook, 4th Edition” R. Gachter and H. Muller (eds.), P.P. Klemchuck (assoc. ed.) Hanser Publishers, New York 1993, pp.901−948に記載されているものがある。本明細書では、粒状充填剤とは、平均アスペクト比約5:1未満の充填剤と定義される。充填剤の非限定的な具体例としては、溶融シリカや結晶シリカのようなシリカ粉末、熱伝導性が高く、誘電率が低く誘電正接の低い硬化生成物を得るための窒化ホウ素粉末及びホウケイ酸塩粉末、これらの粉末とアルミナ、及び高温伝導性用の酸化マグネシウム(又はマグネシア)、並びに、表面処理ウォラストナイトを始めとするウォラストナイト、硫酸カルシウム(その無水塩、半水塩、二水塩又は三水塩)、チョーク、石灰石、大理石及び合成沈降炭酸カルシウム(概して粉砕粒子の形態であり、98+%のCaCOと残部の炭酸マグネシウム、酸化鉄、アルミノケイ酸塩のような他の無機物を含むことが多い)を始めとする炭酸カルシウム、表面処理した炭酸カルシウム、繊維状、結節状、針状及び層状タルクを始めとするタルク、中空ガラス球、中実ガラス球、及び通常はシランカップリング剤のようなカップリング剤及び/又は導電性コーティングを含む表面処理ガラス球、硬質、軟質、焼成カオリン、並びに熱硬化性樹脂中での分散性及び相溶性を高める当技術分野の公知の各種コーティングを有するカオリンを始めとするカオリン、メタライズドマイカ、及び良好な物性をブレンドに付与するためアミノシラン又はアクリロイルシランコーティングで表面処理したマイカを始めとするマイカ、長石及び霞石閃長岩、ケイ酸塩球、煙塵、セノスフェア、フィライト、シラン化及び金属化アルミノケイ酸塩を始めとするアルミノケイ酸塩(アモルスフェア)、天然ケイ砂、石英、ケイ石、パーライト、トリポリ、珪藻土、各種シランコーティングを有するものを始めとする合成シリカのような充填剤が挙げられる。
【0048】
好ましい粒状充填剤としては、平均粒径約1〜約50μmの溶融シリカが挙げられる。特に好ましい粒状充填剤は、メジアン径約0.03μm乃至1μm未満の第1の溶融シリカと、メジアン径1μm〜約30μmの第2の溶融シリカとを含む。好ましい溶融シリカは、通常は再溶融によって達成される本質的に球状の粒子を有する。上記の粒径範囲内で、第1の溶融シリカは、好ましくは約0.1μm以上、好ましくは約0.2μm以上のメジアン径を有する。同じく上記粒径範囲内で、第1の溶融シリカは、好ましくは約0.9μm以下、さらに好ましくは約0.8μm以下のメジアン径を有する。上記の粒径範囲内で、第2の溶融シリカは、好ましくは約2μm以上、好ましくは約4μm以上のメジアン径を有する。同じく上記粒径範囲内で、第2の溶融シリカは、好ましくは約25μm以下、さらに好ましくは約20μm以下のメジアン径を有する。一実施形態では、本組成物は、第1の溶融シリカと第2の溶融シリカを約70:30〜約99:1、好ましくは約80:20〜約95:5の重量比で含む。
【0049】
繊維状充填剤としては、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び硫酸カルシウム半水和物の1種以上を含むブレンドに由来するものなど処理無機繊維を始めとする無機短繊維が挙げられる。繊維状充填剤には、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、炭素、鉄、ニッケル、銅を始めとする単結晶繊維又は「ウィスカー」も包含される。繊維状充填剤には、E、A、C、ECR、R、S、D及びNEガラスのような織物用ガラス繊維を始めとするガラス繊維、並びに石英も包含される。好ましい繊維状充填剤には、直径約5〜約25μm、コンパウンディング前の長さが約0.5〜約4cmのガラス繊維が挙げられる。その他多数の適当な充填剤は、Yeager他の米国特許出願公開第2001/0053820号に記載されている。
【0050】
組成物は、充填剤又は外部コーティング又は基板との熱硬化性樹脂の接着性を向上させる接着促進剤を含んでいてもよい。上述の無機充填剤を接着促進剤で処理して、接着性を高めることもできる。接着促進剤としては、クロム錯体、シラン、チタネート、ジルコアルミネート、プロピレン−無水マレイン酸コポリマー、反応性セルロースエステルなどが挙げられる。クロム錯体としては、DuPont社からVOLAN(登録商標)という商品名で市販されているものがある。シランとしては、一般構造(RO)(4−n)SiYの分子(式中、n=1〜3、Rはアルキル又はアリール基であり、Yはポリマー分子との結合を形成し得る反応性官能基である)が挙げられる。カップリング剤の特に有用な例は、構造(RO)SiYを有するものである。代表例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。シランには、例えばトリメトキシフェニルシランのような反応性官能基のない分子も包含される。チタネートとしては、S. J. Monte et al. in Ann. Chem. Tech Conf. SPI (1980), Ann. Tech Conf. Reinforced Plastics and Composite Inst. SPI 1979, Section 16E, New Orleans、及びS. J. Monte, Mod. Plastics Int., volume 14, number 6, pg. 2 (1984)によって開発されたものが挙げられる。ジルコアルミネートとしては、L.B. Cohen in Plastics Engineering, volume 39, number 11, page 29 (1983)に記載されているものが挙げられる。接着促進剤は熱硬化性樹脂自体に配合してもよいし、或いは充填剤と熱硬化性樹脂との接着性を高めるため上述の充填剤のいずれかにコートしてもよい。例えば、かかる接着促進剤は、樹脂マトリックスの接着性を向上させるため、ケイ酸塩繊維又は充填剤の被覆に使用し得る。
【0051】
粒状充填剤が存在する場合、組成物の全量を基準にして、約5〜約95重量%の量で使用し得る。この範囲内で、約20重量%以上、さらに好ましくは約40重量%以上、さらに一段と好ましくは約75重量%以上の量の粒状充填剤を使用するのが好ましい。同じくこの範囲内で、約93重量%以下、さらに好ましくは約91重量%以下の量の粒状充填剤を使用するのが好ましい。
【0052】
繊維状充填剤が存在する場合は、組成物の全量を基準にして、約2〜約80重量%の量で使用し得る。この範囲内で、約5重量%以上、さらに好ましくは約10重量%以上、さらに一段と好ましくは約15重量%以上の量の繊維状充填剤を使用するのが好ましい。同じくこの範囲内で、約60重量%以下、さらに好ましくは約40重量%以下、さらに一段と好ましくは約30重量%以下の量の繊維状充填剤を使用するのが好ましい。
【0053】
以上の充填剤は、処理せずに熱硬化性樹脂に添加してもよいし、表面処理(概して接着促進剤による)後に熱硬化性樹脂に添加してもよい。
【0054】
硬化性組成物は、さらに当技術分野で公知の1種以上の添加剤を適宜含んでいてもよく、例えば染料、顔料、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、流動性調整剤、ドリップ抑制剤、粘着防止剤、帯電防止剤、流動性促進剤、処理助剤、基板接着剤、離型剤、強化剤、低収縮剤、応力除去添加剤、難燃剤など、並びにこれらの組合せなどを含んでいてもよい。当業者であれば、過度の実験を行わなくても、適当な添加剤を選択し、適量を決定することができる。
【0055】
一実施形態では、硬化性組成物は、(メタ)アクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)樹脂、(メタ)アクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル)樹脂又はこれらの混合物を含む官能化ポリ(アリーレンエーテル)と、2以上のアクリロイル部分を含むアクリロイルモノマーと、粒状充填剤と、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.2〜約5重量部の硬化開始剤であって、過酸化ベンゾイル、ジクミルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化ラウリル、シクロヘキサノンペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−ヘキシ−3−イン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)ペルオキシド、トリメチルシリルフェニルトリフェニルシリルペルオキシド及びこれらの混合物から選択される硬化開始剤と、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.005〜約1重量部の硬化抑制剤であって、ジアゾアミノベンゼン、フェニルアセチレン、sym−トリニトロベンゼン、p−ベンゾキノン、アセトアルデヒド、アニリン縮合物、N,N′−ジブチル−o−フェニレンジアミン、N−ブチル−p−アミノフェノール、2,4,6−トリフェニルフェノキシル、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、モノアルキルヒドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルヒドロキノン、C〜C−アルキル置換カテコール、ジアルキルヒドロキノン、2,4,6−ジクロロニトロフェノール、ハロゲン−オルト−ニトロフェノール、アルコキシヒドロキノン、フェノール及びカテコールのモノ−及びジ−及びポリスルフィド、キノンのチオール、オキシム及びヒドラゾン、フェノチアジン、ジアルキルヒドロキシルアミン及びこれらの混合物から選択される硬化抑制剤とを含む。ここで、硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比は約1.2:1〜約50:1である。
【0056】
別の実施形態では、硬化性組成物は、約5〜約90重量部のメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と、約10〜約95重量部のエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートと、約200〜約2000重量部の溶融シリカと、約0.2〜約5重量部のジクミルペルオキシドと、約0.005〜約1重量部の4−t−ブチルカテコールとを含む。ただし、重量部はすべて、メタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)とエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートの合計100重量部を基準にしたものであり、硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比は約2:1〜約20:1である。
【0057】
組成物の製造方法には、硬化組成物が支障なく所望の特性バランスを示すことができる限り、特に制限はない。組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーと硬化開始剤と硬化抑制剤とを含む均質ブレンドを形成することによって製造し得る。例えば、一実施形態は、硬化性組成物の形成方法であって、官能化ポリ(アリーレンエーテル)、オレフィン性不飽和モノマー、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.2〜約5重量部の硬化開始剤、及び官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.005〜約1重量部の硬化抑制剤をブレンドすることを含む手順で均質ブレンドを形成する段階を含む。ただし、硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比は約1.2:1〜約50:1である。組成物が封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含む場合、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を出発材料として、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)をオレフィン性不飽和モノマーの一部に溶解し、封鎖剤を添加してオレフィン性不飽和モノマーの存在下で封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を形成し、硬化開始剤及び硬化抑制剤を添加し、その他の任意成分を添加して硬化性組成物を形成することを含む方法によって組成物を製造することができる。
【0058】
本組成物の硬化方法に特段の制限はない。組成物は、例えば熱又は高周波加熱、UV照射及び電子線照射を始めとする照射法を用いて硬化することができる。例えば、組成物は、10秒間の高周波加熱で連鎖反応硬化を開始することによって硬化させてもよい。熱硬化を用いる場合、選択温度は約80°〜約300℃とすることができる。加熱期間は約5秒〜約24時間とすることができる。硬化は数段階で実施してもよく、まず不粘着性樹脂へと部分硬化し、次いで長時間又は高温で加熱して完全に硬化する。
【0059】
一実施形態は、上述の硬化性組成物の硬化によって得られる硬化組成物である。「硬化」という用語には、部分硬化と完全硬化が包含される。硬化性組成物の成分は、硬化時に互いに反応し得るので、硬化組成物は、硬化性組成物成分の反応生成物を含むものとして表現することができる。
【0060】
別の実施形態は、硬化組成物を含む物品である。硬化性組成物は、広範な物品の製造に有用であり、電子デバイス用封止材としての使用に特に適している。かかる電子デバイスの封止材部分は、例えばトランスファー成形のような当技術分野で公知の技術を用いて製造できる。組成物は非常に望ましい特性を示す。例えば、硬化性組成物は、後記の方法に従って、温度約140〜約180℃及び圧力約3〜約7MPaで測定して、約70cm以上、好ましくは約80cm以上、さらに好ましくは約90cm以上、さらに一段と好ましくは約100cm以上のスパイラルフローを示す。別の例として、硬化性組成物は、約140〜約180℃の成形温度で120秒間硬化した後、成形温度で70以上、好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上のショアD硬さを示す。このショアD硬さは、好ましくは約110秒、さらに好ましくは約100秒、さらに一段と好ましくは約90秒で達成し得る。ショアD硬さは、ISO868に準拠して測定される。別の例として、硬化性組成物は、160℃で約50〜約160秒間硬化した後、誘電硬化モニタリングによって測定して、一定のd(対数イオン粘度)/d(時間)値を示す。ここで、対数イオン粘度はオーム−cmで表され、時間は分単位で表される。一定のd(対数イオン粘度)/d(時間)値は好ましくは約60〜約150秒で達成される。d(対数イオン粘度)/d(時間)値は、例えばHolometric Micromet社から市販のICAM−1500 Cure Analyzerのような、様々な供給元から市販の装置で測定できる。
【実施例】
【0061】
次の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0062】
実施例1及び2、比較例1〜4
抑制剤濃度の異なる3種類の試験組成物を製造し、試験した。3種類の市販エポキシ熱硬化性樹脂についても試験した。比較例2は、日立化成(株)からCEL−410として市販の推奨成形温度175〜185℃及び推奨成形時間90〜120秒のエポキシ熱硬化性樹脂であった。比較例3は、日立化成(株)からCEL−9500として市販の推奨成形温度175〜185℃及び推奨成形時間90〜120秒のエポキシ熱硬化性樹脂であった。比較例4は、Henkel Loctite Chemical社からHYSOL(登録商標)MG40F−2000として市販の推奨成形温度165〜180℃及び推奨成形時間70〜100秒のエポキシ熱硬化性樹脂であった。各試験組成物は、電気化学工業(株)からFB−74として市販の平均粒径30.4μm表面積及び1.6m/gの溶融シリカ65.2重量部、電気化学工業(株)からFS−20として市販の平均粒径5.0μm及び表面積6.7m/gの溶融シリカ16.30重量部、クロロホルム中25℃で0.30dL/gの固有粘度を有するメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)3.0重量部、Clariant社からLICOWAX(登録商標)OPとして市販のモンタン酸の部分ケン化エステル0.40重量部、ヘキサンジオールジアクリレート中の10重量%ジクミルペルオキシド溶液3.30重量部(ヘキサンジオールジアクリレートはSartomer社からSR238として市販されているもの)、Sartomer社からSR350として市販のトリメチロールプロパントリメタクリレート3.0重量部、及びDow Corning社からZ−6030として市販の3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.50重量部を含んでいた。この混合物に、ヘキサンジオールジアクリレート中の10重量%4−t−ブチルカテコール溶液0重量部(比較例1)、0.34重量部(比較例2)又は0.68重量部(実施例1)重量部を添加して、それぞれ0重量部、0.034重量部及び0.068重量部量の4−t−ブチルカテコールを得た。追加量のヘキサンジオールジアクリレートを添加して、追加ヘキサンジオールジアクリレートと、4−t−ブチルカテコール溶液中のヘキサンジオールジアクリレートとの全量を6.03重量部とした。したがって、各試験組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーを合計15.50重量部及び開始剤0.33重量部を含んでおり、これは官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり開始剤2.13重量部に相当する。比較例1は、抑制剤を含んでいなかった。実施例1は、0.034重量部の抑制剤を含んでおり、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり抑制剤0.219重量部に相当し、開始剤/抑制剤の重量比は9.70:1であった。実施例2は、0.068重量部の抑制剤を含んでおり、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり抑制剤0.439重量部に相当し、開始剤/抑制剤の重量比は4.85:1であった。
【0063】
硬化速度は、Holometric Micromet社から市販のICAM−1500 Cure Analyzerを用いた誘電硬化モニタリングで調べた。対数(イオン粘度)を一定硬化温度160℃での時間の関数としてモニターした。この測定で得られた応答は、臨界点「CP2」、「CP3」及び「CP4」を有していた。CP2は、イオン粘度が最小に達する時間に該当する。CP3は最大硬化速度(つまりd(対数イオン粘度)/d(時間)の傾き最大)の時間に該当する。CP4はd(対数イオン粘度、単位オーム−cm)/d(時間、単位分)の傾きが一定となる時間、ほぼ硬化終点に該当する。
【0064】
表1に、硬化データをまとめた。4−t−ブチルカテコール及びジクミルペルオキシドの濃度は部/樹脂100重量(phr)で表すが、これは官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たりの重量部に等しい。データから、実施例1及び実施例2では、硬化速度が最大に達する時間と、硬化終点付近までの時間とが良好なバランスを示すことが分かる。一方、比較例1は、硬化が速すぎて金型内で良好に流動できなくなる。
【0065】
【表1】

実施例3、比較例5〜7
メタクリレート封鎖ポリフェニレンエーテルの量、フタル酸ジアリルモノマーの量、トリメチロールプロパントリメタクリレートモノマーの量、並びにモンタン酸及びエステル化モンタン酸の有無の異なる4種類の組成物を製造した。表2において、固有粘度0.12dL/gのメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)樹脂をMA−PPE(0.12)と略す。フタル酸ジアリルは、Avocado Research Chemicals社から製品番号24648として入手した。部分ケン化モンタン酸エステル(部分エステル化モンタン酸とも呼ばれる。)は、ClariantからLICOWAX(登録商標)OPとして市販されているものであった。カーボンブラック顔料は、Degussa社からPRINTEX(登録商標)XE 2として市販されているものであった。シランカップリング剤であるメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランは、Dow Corning社からZ−6030として市販されているものであった。溶融シリカはFB74(球状、平均粒径31.5μm)とFS20(不規則形状、平均粒径5.6μm)の80/20重量/重量の混合物であり、いずれも電気化学工業(株)から入手した。
【0066】
スパイラルフロー長は、予備加熱していない成形用粉末試料15gについて、トランスファー圧力5.5MPa及び150℃で測定した。トランスファーポットとEMMIスパイラルフローツールを使用した。スパイラルフローの測定は“SEMI G11−88. Recommended Practice for Ram Follower Gel Time and Spiral Flow of Thermal Setting Molding Compounds”, published by Semiconductor Equipment and Materials Internationalに記載の常法に従って行った。表2に、組成物及び結果をまとめた。成分量はすべて重量部単位である。この結果から、スパイラルフローはペルオキシド開始剤が存在しない場合でも低いこと(比較例9参照)、本発明に規定する開始剤及び抑制剤の濃度の実施例3の試料で最良(最高)のスパイラルフローが観察されたことが分かる。
【0067】
【表2】

実施例4〜12
アクリロイルモノマー、官能化ポリ(アリーレンエーテル)、硬化開始剤及び硬化抑制剤の濃度の種々異なる9種類の試料を製造して試験した。アクリロイルモノマーは、Sartomer社からSR−348として市販のエトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレートであった。アクリロイルモノマーは、公称340重量ppmのヒドロキノンモノメチルエーテルを含んでいた。官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、固有粘度0.3dL/gのメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)であった。開始剤は、Elf Atochem社からLUPEROX(登録商標)505Rとして市販のジクミルペルオキシドであった。追加の抑制剤を4−t−ブチルカテコールとして添加した。表3に成分量を示す。量は部/樹脂100重量(pph)で表すが、ここで樹脂は封鎖ポリフェニレンエーテルとアクリロイルモノマーからなる。開始剤及び抑制剤の量も、mol/g全組成物として表す。
【0068】
147℃及び157℃で90秒間及び10分間硬化したとき発生した全熱量、並びに発熱開始までの時間を、TA Instruments 2920示差走査熱量計を用いた示差走査熱量測定で求めた。試料を計量し、アルミニウム試料パンに気密シールした。各試料を2通りの昇温速度で分析し、もう一方の熱転移から反応熱を分離できるようにした。最初の昇温を第2の昇温を減じて計算を行った。各昇温は、25℃での熱平衡、200℃から目標温度までの昇温及び目標温度での10分間からなる。時間0を、測定温度が最初に目標温度に達した時間と定義する。発熱開始は、熱流が負(発熱性)になった時間と定義される。試料温度は測定温度から遅延するので、最初の熱流は低いが、正である。熱のキロジュール/モル炭素−炭素二重結合(kJ/molC=C)としての正規化は、アクリロイルモノマー中の炭素−炭素二重結合に基づくもので、メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の寄与する炭素−炭素結合は無視した。正規化した値は、完全硬化で予測される最大値47.9kJ/molに匹敵する。結果から、本発明に規定する開始剤及び抑制剤濃度を有する組成物は、迅速な硬化時間を保持しつつ(90秒及び10分でのkJ/molC=Cの比較で示される)、有用な抑制時間を示す(発熱開始時間として現れる)ことが分かる。例えば、実施例11の試料は、25.5秒の発熱開始時間を示したが、90秒でほぼ完全に硬化した。この特性の組合せは、短い成形サイクルで適当な成形流動性を呈する点で実用上有用である。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

実施例13〜28、比較例8〜12
開始剤(ジクミルペルオキシド)及び抑制剤(t−ブチルカテコール)の濃度を種々変更した19種類の組成物を製造した。試料はすべて、固有粘度約0.30dL/gのメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(MA−PPE)10重量部及びSartomer社からSR−348として市販のエトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレート40重量部を含んでいた。硬化速度を、Holometric Micromet社から市販のICAM−1500 Cure Analyzerを用いた誘電硬化モニタリングによって調べた。一定の硬化温度160℃における時間の関数として対数(イオン粘度)をモニターした。この測定で得られた応答は、臨界点「CP2」、「CP3」及び「CP4」を有していた。CP2はイオン粘度が最小に達する時間に該当する。CP3は最大硬化速度(つまりd(対数イオン粘度)/d(時間)の傾き最大)の時間に該当する。CP4は、d(対数イオン粘度、単位オーム−cm)/d(時間、単位分)の傾きが一定となる時間、ほぼ硬化終点に該当する。表4に、組成物及び結果をまとめた。成分量はすべて重量部で表す。開始剤及び抑制剤の量も部/樹脂100重量部(phr)で表すが、これは重量部/ポリ(アリーレンエーテル)+オレフィン性不飽和モノマー100部に相当する。開始剤と抑制剤の重量比も示す。CP2、CP3、及びCP4の値はすべて秒単位で表し、2回の試験の平均を表す。表4において、「(ゲル化)」とは、機器で実験を開始する前に組成物が硬化してゲル化したことを示す。表4において、「(硬化せず)」とは、200秒という実験の時間枠内で試料が実質的に硬化しなかったことを示す。結果の統計解析から、硬化終点のCP4が、抑制剤の濃度、開始剤の濃度及び開始剤の濃度の2乗と多大な相関関係をもつことが判明した。さらに、この結果から、本発明の実施例は、低粘度の時間(硬化開始時における金型内での流動が可能となる)と、ほぼ完全な硬化までの時間(迅速な成形サイクル時間が可能となる)との望ましい組合せを与えることが分かる。
【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

本発明を好ましい実施形態を参照して説明したが、様々な変更を行うことができ、等価形態を、本発明の範囲から逸脱することなくその要素と置換できることを当業者は理解されよう。さらに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるように、多くの修正をその本質的な範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられた最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではないこと、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を包含するものであることを意図する。
【0073】
引用された特許、特許出願、及び他の参考文献はすべて、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)、
オレフィン性不飽和モノマー、
官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.2〜約5重量部の硬化開始剤、及び
官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーの合計100重量部当たり約0.005〜約1重量部の硬化抑制剤
を含んでなる硬化性組成物であって、硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比が約1.2:1〜約50:1である硬化性組成物。
【請求項2】
約1重量部以上の硬化開始剤を含む、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
100マイクロモル以上の硬化開始剤/g樹脂を含み、樹脂が官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン性不飽和モノマーからなる、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項4】
硬化開始剤と硬化抑制剤のモル比が約20:1〜約1:1である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項5】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂が次式の封鎖ポリ(アリーレンエーテル)樹脂である、請求項1記載の硬化性組成物。
Q(J−K)
式中、Qは一価、二価又は多価フェノールの残基であり、yは1〜100であり、Jは次式の繰返し構造単位からなり、
【化1】

(式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシからなる群から選択され、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルビルオキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルビルオキシからなる群から選択され、mは1〜約200である。)、Kは以下の式からなる群から選択される封鎖基である。
【化2】

(式中、Rは1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC〜C12ヒドロカルビルであり、R〜Rは各々独立に水素、1又は2個のカルボン酸基で適宜置換されたC〜C18ヒドロカルビル、C〜C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボン酸、イミデート及びチオカルボン酸からなる群から選択され、R〜R13は各々独立に水素、ハロゲン、C〜C12アルキル、ヒドロキシ、カルボン酸及びアミノからなる群から選択され、Yは以下の式からなる群から選択される二価基である。
【化3】

(式中、R14及びR15は各々独立に水素及びC〜C12アルキルからなる群から選択される。))
【請求項6】
前記オレフィン性不飽和モノマーがアルケニル芳香族モノマー、アリルモノマー、アクリロイルモノマー又はこれらの混合物を含む、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項7】
温度約140〜約180℃及び圧力約3〜約7MPaで測定して約70cm以上のスパイラルフローを有する請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記官能化ポリ(アリーレンエーテル)がメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含んでいて約5〜約90重量部存在し、
前記オレフィン性不飽和モノマーがエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートを含んでいて約10〜約95重量部存在し、
前記硬化開始剤がジクミルペルオキシドを含んでおり、
前記硬化抑制剤が4−t−ブチルカテコールを含んでおり、
約200〜約2000重量部の溶融シリカをさらに含んでいて、
上記重量部はすべてメタクリレート封鎖ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)とエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートの合計100重量部を基準にしたものであり、
硬化開始剤と硬化抑制剤の重量比が約2:1〜約20:1である、請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1記載の硬化性組成物の硬化によって得られる反応生成物を含んでなる硬化組成物。
【請求項10】
請求項9記載の硬化組成物を含んでなる物品。

【公表番号】特表2007−524736(P2007−524736A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534002(P2006−534002)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/031685
【国際公開番号】WO2005/035661
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】