説明

ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを製造する方法

ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの新規(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法が提供される。本方法は、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを(メタ)アクリル酸またはその同等物と反応させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル(モノエステルおよび/またはジエステル)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリレートポリマーは、多くの塗料および放射線硬化性の特性の用途に使用される。現在用いられているアクリレートの殆どは、ポリ(エチレン)グリコールジアクリレート、ポリ(1,2−プロピレン)グリコールジアクリレートおよびポリ(テトラメチレン)グリコールジアクリレートを含む、ポリエーテルグリコールから誘導されるものである。アクリレートポリマーは、例えば、非特許文献1;非特許文献2および非特許文献3において開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A.Priolaら、Polymer33(17),3653,1993年
【非特許文献2】A.Priolaら、Polymer37(12),2565,1996年
【非特許文献3】A.Priolaら、J.Appl.Polym.Sci.65 491−497,1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、既知の数種のアクリレートポリマーは、製造中の劣化のみでなく、特定の用途に必要とされるより低い柔軟性を有し得る。所望の物理的特性を有し、製造中の劣化が低いアクリレートポリマーが必要とされ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、
a)100〜250℃の間の温度で酸触媒の存在下で再生可能源から生化学的に得られた1,3プロパンジオールを主として含むヒドロキシル基含有モノマーを重縮合して、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを形成する工程と、
b)25〜250℃の間の温度で重合抑制剤、および任意選択により溶媒の存在下で、得られたポリ(トリメチレンエーテル)グリコールをアクリル化合物によりエステル化する工程とを含む方法である。
【0006】
本発明の別の態様は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、25〜250℃の間の温度でエステル化触媒、重合抑制剤および任意選択により溶媒の存在下で、134〜5000の数平均分子量を有するポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを(メタ)アクリル酸と反応させる工程を含む方法である。
【0007】
本発明の更なる態様は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、5〜150℃の間の温度で有機塩基または触媒の存在下でポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と反応させる工程を含む方法である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの新規(メタ)アクリル酸エステルを提供する。本発明は、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを(メタ)アクリル酸またはその同等物と反応させることによりポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの新規(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法も提供する。モノカルボン酸同等物には、例えば、モノカルボン酸のエステルならびに酸ハロゲン化物(例えば酸塩化物)および酸無水物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0009】
幾つかの実施形態において、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコール(メタ)アクリレートは、再生可能に得られる源(生物源)の1,3−プロパンジオールおよびポリトリメチレンエーテルグリコールに基づいている。
【0010】
一実施形態において、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの(メタ)アクリル酸エステルは、最初に、触媒(好ましくは鉱酸触媒)の存在下で1,3−プロパンジオール反応物を重縮合し、次に、縮合反応およびエステル化反応の両方で形成された副生物(水)を同時に除去しつつ、重合抑制剤の存在下で縮合生成物を(メタ)アクリル酸によりエステル化することにより製造される。
【0011】
他の実施形態において、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの(メタ)アクリル酸エステルは、エステル化中に形成される副生物(水)を除去しながら、エステル化触媒および重合抑制剤の存在下で134〜5000の数平均分子量を有するポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを(メタ)アクリル酸と反応させることにより製造される。
【0012】
別の実施形態において、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの(メタ)アクリル酸エステルは、有機塩基の存在下でポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを(メタ)アクリル酸塩化物と反応させることにより製造され、同時にエステル化反応中に副生物(水)が形成される。少なくとも1種の重合抑制剤および少なくとも1種の抗酸化剤が、得られた生成物に添加される。
【0013】
上述の方法から得られた生成物は、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのモノエステルおよび/またはジエステル、ならびに1,3−プロパンジオール、未反応出発材料および触媒残渣の混合物を含む。組成物は末端使用用途においてそのまま用いることが可能であるか、または望むならば、公知の分離方法によって触媒残渣および未反応出発材料を除去するために生成物を更に精製することが可能である。
【0014】
好ましくは、上述の方法において用いられる1,3−プロパンジオールおよびポリ(トリメチレンエーテル)グリコールは、再生可能な源からの原材料から誘導され、従って、本発明のポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルは、最少で20重量%のバイオ含有率を有する。従って、本発明の組成物は環境影響が低減されている。
【0015】
別段に定義がない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。不一致がある場合、定義を含む本明細書が支配する。
【0016】
別段に指定がない限り、すべての百分率、部、比などは重量による。
【0017】
量、濃度もしくは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値と好ましい下方値のリストのいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、あらゆる上方範囲限界または好ましい上方値とあらゆる下方範囲限界または好ましい下方値のあらゆる対から形成されたすべての範囲を本質的に開示しているとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書において挙げられる場合、別段に指定されない限り、その範囲は、範囲の終点、範囲内のすべての整数および端数を含むべく意図されている。範囲を定めるとき、挙げられた特定の値に本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0018】
本明細書で用いられる「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的包含を含めることを意図している。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品または装置は、こうした要素のみに必ずしも限定されず、明示的にリストされなかった他の要素、またはこうしたプロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含んでよい。更に、逆であることが明示的に指定されないかぎり、「or」は、包含的なオア(inclusive or)を意味し、排他的なオア(exclusive or)を意味しない。例えば、条件AまたはBは、次のいずれか1つによって満たされる。Aは真(または存在する)であり、且つBは偽(または存在しない)である。Aは偽(または存在しない)であり、且つBは真(または存在する)である。AとBの両方は真(または存在する)である。
【0019】
「a」または「an」の使用は、本発明の要素および成分を記載するために用いられる。これは、本発明の一般的な観念を示すために単に便宜上行われる。別段に指定がない限り、この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数は複数も含む。
【0020】
本明細書における材料、方法および実施例は例示のみであり、特に指定された場合を除き限定であることを意図されていない。本明細書において記載された方法および材料に類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用できるが、好適な方法および材料は本明細書において記載される。
【0021】
「(メタ)アクリル」という用語は、酸またはエステルを指す時、「アクリルおよびメタクリル」に関する略記として本明細書において用いてよい。別段に規定がない限り、この用語が用いられた時、この用語は、「アクリル」と「メタクリル」の両方を包含するべく意図されている。
【0022】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールのエステル(モノエステル、ジエステルまたはそれらの混合物)と少なくとも1種の重合抑制剤とを含むポリ(トリメチレンエーテル)グリコール組成物の(メタ)アクリル酸エステルおよびこうした組成物を製造する方法を提供する。
【0023】
ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの(メタ)アクリル酸エステルは、式(I)
CH=CR−C(O)−O−Q−OR (I)
(式中、Qはヒドロキシル基の引抜き後のポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの残基を表し、RはHまたはCHであり、Rの各々はHまたはCH=CR−C(O)である)
の1種以上の化合物を含む。
【0024】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの(メタ)アクリル酸エステルは、原料として1,3−プロパンジオールまたはポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのいずれかを用いる種々の方法によって製造することが可能である。
【0025】
ポリ(トリメチレンエーテル)グリコール(PO3G)
本明細書において用いられるPO3Gは、反復単位の少なくとも50%がトリメチレンエーテル単位である高分子エーテルグリコールである。反復単位のより好ましくは約75〜100%、なおより好ましくは約90%〜100%、更により好ましくは約99%〜100%がトリメチレンエーテル単位である。
【0026】
PO3Gは、好ましくは、1,3−プロパンジオールを含むモノマーの重縮合によって調製され、よって−(CHCHCHO)−連結(例えば、トリメチレンエーテル反復単位)を含むポリマーまたはコポリマーをもたらす。上で示した通り、反復単位の少なくとも50%はトリメチレンエーテル単位である。
【0027】
トリメチレンエーテル単位に加えて、他のポリアルキレンエーテル反復単位などの、より少ない量の他の単位が存在してよい。この開示の文脈において、「ポリトリメチレンエーテルグリコール」という用語は、約50重量%までのコモノマーを含有するオリゴマーおよびポリマー(以下で記載されるオリゴマーおよびポリマーを含む)のみならず本質的に純粋な1,3−プロパンジオールから製造されたPO3Gを包含する。
【0028】
PO3Gを調製するために用いられる1,3−プロパンジオールは、公知の種々の化学経路または生化学形質転換経路のいずれかによって得てよい。好ましい経路は、例えば、米国特許第5,364,987号明細書および米国特許第5,633,362号明細書に記載されている。
【0029】
好ましくは、1,3−プロパンジオールは、再生可能源から生化学的に得られる(「生物から誘導された」1,3−プロパンジオール)である。
【0030】
1,3−プロパンジオールの特に好ましい供給源は、再生可能生物源を用いる発酵プロセスを経由する。再生可能源からの出発材料の例示的な例として、トウモロコシ原料などの生物的で再生可能な資源から作られた原料を用いる1,3−プロパンジオール(PDO)への生化学経路が記載されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに転化できる菌株は、クレブシエラ(Klebsiella)属、シトロバクター(Citrobacter)属、クロストリジウム(Clostridium)属およびラクトバシラス(Lactobacillus)属の中に見られる。こうした技術は、米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書および米国特許第5,821,092号明細書を含む数種の刊行物において開示されている。米国特許第5,821,092号明細書は、特に、組換え微生物を用いてグリセロールから1,3−プロパンジオールを生物生産する方法を開示している。本方法は、1,2−プロパンジオールに関する特異性を有する、異種pduジオールデヒドラターゼ遺伝子で形質転換を起こさせた大腸菌(E.coli)を導入している。形質転換大腸菌(E.coli)は、炭素源としてグリセロールの存在下で増殖し、1,3−プロパンジオールは増殖培地から単離される。細菌と酵母の両方がグルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の炭水化物をグリセロールに転化できるため、これらの刊行物において開示された方法は、迅速で、安価で環境責任を果たす1,3−プロパンジオールモノマー源を提供する。
【0031】
上で記載され参照された方法によって製造されたもののような、再生可能な源からの(生物から誘導されたとしても知られている)1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産のための原料を構成する植物によって導入された、大気二酸化炭素からの炭素を含有する。こういう点で、本発明の文脈において用いるために好ましい生物から誘導された1,3−プロパンジオールは、再生可能炭素のみを含有し、化石燃料系炭素も石油系炭素も含有しない。従って、生物から誘導された1,3−プロパンジオールを用いる再生可能炭素に基づくPO3Gおよびエラストマーは、組成物中で用いられる1,3−プロパンジオールが、逓減する化石燃料を枯渇させず、劣化の際は、植物が用いるための炭素をもう一度大気に放出して戻すため、環境に及ぼす影響がより少ない。従って、本発明の組成物は、石油系グリコールを含む類似組成物よりも、より自然であり、かつ環境影響がより少ないと特徴付けることが可能である。
【0032】
再生可能な源からの(生物から誘導されたとしても知られている)1,3−プロパンジオール、PO3GおよびPO3Gアクリレートエステルは、石油化学源炭素または化石燃料炭素から生産された類似化合物から、二重炭素−同位体フィンガープリント法によって識別され得る。本方法は、有用にも、化学的に同じ材料を識別し、生物圏(植物)成分の成長のソース(およびおそらく年)によってコポリマー中の炭素を配分する。同位体14Cおよび13Cは、この問題に補足情報をもたらす。5730年の核半減期を有する放射性炭素年代測定法同位体(14C)は、化石原料(「死滅」)と生物圏(「生存」)原料との間で検体炭素を配分することを明確に可能にする(Currie,L.A.著「Characterization of Environmental Particles」,Characterization of Environmental Particles,J.BuffleおよびH.P.van Leeuwen編,IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc)(1992年)3−74の巻Iの1)。放射性炭素年代測定法における基本的仮定は、大気中の14C濃度の定常性が生存微生物中の14Cの定常性につながることである。単離されたサンプルを扱う時、サンプルの年代は、以下の関係式
t = (−5730/0.693)ln(A/A
(式中、t=年代、5730年は放射性炭素の半減期であり、AおよびAは、それぞれサンプルと現代標準の14C比放射能である)
によって近似的に演繹することが可能である(Hsieh,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460,(1992年))。しかし、1950年以来の大気圏核実験および1850年以来の化石燃料の燃焼のゆえに、14Cは第2の地球化学的時間特性を獲得した。大気圏COにおける14C濃度および従って生存生物圏における14C濃度は、1960年代中頃における核実験のピーク時におよそ倍増した。14C濃度は、7〜10年の近似緩和「半減期」により、それ以来約1.2×10−12の定常状態宇宙線(大気圏)ベースライン同位体率(14C/12C)に徐々に戻ってきている(この後者の半減期は、文字通り解釈してはならず、むしろ、核時代の開始以来の大気圏14Cおよび生物圏14Cの変動を追跡するために詳細な大気圏核インプット/ディケイ関数を用いなければならない)。最近の生物圏炭素の年次の年代測定法の保証を約束するのは、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cはアクセレレータ質量分析法(AMS)によって測定することが可能であり、結果は、「現代炭素のフラクション(fraction of modern carbon)」が(f)の単位で与えられる。fは、アメリカ国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology(NIST))の標準物質(Standard Reference Materials(SRM))の、それぞれシュウ酸標準HOxIおよびHOxIIとして知られている、4990Bおよび4990Cによって定義される。基本定義は、0.95×14C/12C同位体比HOxI(AD1950年を基準として)に関連付けられる。これは、ディケイ−補正された産業革命前の森林におおよそ等しい。現在生存生物圏(植物材料)の場合、f≒1.1。
【0033】
安定な炭素同位体比(13C/12C)はソースの識別および配分に補足経路を与える。所与の再生可能な源からの材料における13C/12C比は、二酸化炭素が固定された時点での大気圏二酸化炭素における13C/12C比の結果であり、厳密な代謝経路も反映している。地域変動も起きる。石油、C植物(広葉樹)、C植物(草類)および海洋カーボネートは、すべて、13C/12C値および対応するδ13C値において有意差を示す。さらに、C植物およびC植物の脂質物質は、同じ植物の炭水化物成分から代謝経路の結果として得られた材料とは異なって分析する。測定の精度内で、13Cは、等方性分別作用のゆえに大きな変動を示し、本発明に関するその最も顕著な等方性分別作用は、光合成メカニズムである。植物における炭素同位体比の差の主原因は、植物における光合成炭素代謝の経路の差に密接に関連し、特に一次カルボキシル化中に起きる反応、すなわち、大気圏COの初期固定に密接に関連している。植生の大きな2つのクラスは、「C」(またはCalvin−Benson)光合成サイクルを導入しているクラスと、「C」(またはHatch−Slack)光合成サイクルを導入しているクラスとである。硬材および針葉樹などのC植物は温暖気候域において主流である。C植物において、一次CO固定反応またはカルボキシル化反応は、酵素リブロース−1,5−ジホスフェートカルボキシラーゼを必要とし、最初の安定な生成物は3−炭素化合物である。他方、C植物は、熱帯草類、トウモロコシおよびサトウキビのような植物を含む。C植物において、別の酵素ホスフェノール−ピルビン酸カルボキシラーゼを必要とする追加のカルボキシル化反応は、一次カルボキシル化反応である。最初の安定な炭素化合物は4−炭素酸であり、それは後で脱カルボキシル化される。こうして放出されたCOはCサイクルによって再固定される。
【0034】
植物とC植物の両方は、ある範囲の13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は、約−10〜−14/ミル(C)および−21〜−26/ミル(C)である(Weberら、J.Agric.Food Chem.,45,2042(1997年))。石炭および石油は、一般に、この後者の範囲に入る。13C測定スケールは、ピーディーベレムナイト(PDB)石灰岩による零設定によって当初は定義され、ここで、値は、この材料からの千偏差当たり部で与えられる。「δ13C」値は、0/00と略記される千当たり(ミル当たり)部であり、次の通り計算される。
【数1】

【0035】
PDB基準材料(RM)は枯渇したため、一連の代替RMが、IAEA、USGS、NISTおよび選ばれた他の国際同位体試験所と協同して開発されてきた。PDBからのミル偏差当たりに関する表記法はδ13Cである。測定は、質量44、45および46の分子イオンに関する高精度安定比質量分析法(IRMS)によってCOで行われる。
【0036】
従って、再生可能な源からの(生物から誘導されたとしても知られている)1,3−プロパンジオールおよび再生可能な源からの(生物から誘導された)1,3−プロパンジオールを含む組成物は、物質の新組成物を指示する14C(f)および二重炭素−同位体フィンガープリント法に基づいて、石油から誘導された1,3−プロパンジオールおよび石油から誘導された1,3−プロパンジオールを含む組成物から完全に識別され得る。これらの生産物を識別する能力は、商業でこれらの材料を追跡する際に有益である。例えば、「新」炭素同位体プロフィールと「旧」炭素同位体プロフィールの両方を含む生産物は、「旧」材料のみから作られた生産物から識別され得る。従って、本材料は、それらの独特のプロフィールに基づいて、および競合を定める目的のために、保存寿命を決定するために、ならびに特に環境影響を評価するために、商業において追跡され得る。
【0037】
好ましくは、反応物として、または反応物の成分として用いられる1,3プロパンジオールは、ガスクロマトグラフ分析より決定して約99重量%より高い純度、より好ましくは約99.9重量%より高い純度を有する。米国特許第7,038,092号明細書において開示された精製1,3プロパンジオールおよび米国特許出願公開第20050020805A1号明細書において開示された通り作られたPO3Gは特に好ましい。
【0038】
精製1,3−プロパンジオールは、好ましくは、以下の特性を有する。
(1)約0.200未満の220nmでの紫外線吸収、および約0.075未満の250nmでの紫外線吸収ならびに約0.075未満の275nmでの紫外線吸収、および/または
(2)約0.15未満のL「b」明度(ASTM D6290)および約0.075未満の270nmでの吸光度を有する組成、および/または
(3)約10ppm未満の過酸化物組成、および/または
(4)ガスクロマトグラフィによって測定して、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、なおより好ましくは約150ppm未満の全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度
【0039】
PO3Gを製造するための出発材料は、所望のPO3G、出発材料の入手可能性、触媒、装置などに応じて異なり、「1,3プロパンジオール反応物」を含む。「1,3プロパンジオール反応物」は、1,3プロパンジオール、ならびに好ましくは2〜9の重合度を有する1,3プロパンジオールのオリゴマーおよびプレポリマーならびにそれらの混合物を意味する。場合によって、入手可能である場合、低分子量オリゴマー10%まで、またはそれ以上を用いることが望ましい場合がある。従って、好ましくは、出発材料は1,3プロパンジオールならびにそのダイマーおよびトリマーを含む。特に好ましい出発材料は、1,3プロパンジオール反応物の重量を基準にして約90重量%以上の1,3プロパンジオール、より好ましくは99重量%以上の1,3プロパンジオールよりなる。
【0040】
PO3Gは、米国特許第6,977,291号明細書および米国特許第6,720,459号明細書において開示されたような当該技術分野において知られている多くの方法を介して製造することが可能である。好ましい方法は米国特許出願公開第20050020805A1号明細書において記載された通りである。
【0041】
上で示した通り、PO3Gは、トリメチレンエーテル単位に加えて、より少ない量の他のポリアルキレンエーテル反復単位を含んでよい。従って、ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する際に用いるためのモノマーは、1,3プロパンジオール反応物に加えて、50重量%までの(好ましくは約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、なおより好ましくは約2重量%以下)コモノマーポリオールを含有することが可能である。本方法において用いるために適するコモノマーポリオールには、脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、および3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,12−ドデカンジオール;脂環式ジオール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびイソソルビド;およびポリヒドロキシ化合物、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールが挙げられる。コモノマージオールの好ましい群は、エチレングリコール、2−メチル−1,3プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3プロパンジオール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3プロパンジオール、C〜C10ジオール(1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオールなど)およびイソソルビドならびにそれらの混合物からなる群から選択される。1,3プロパンジオール以外の特に好ましいジオールはエチレングリコールであり、C〜C10ジオールも特に有用であり得る。
【0042】
コモノマーを含有する好ましい1種のPO3Gは、米国特許出願公開第2004/0030095A1号明細書において記載されたようなポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールである。好ましいポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールは、50〜約99モル%(好ましくは約60〜約98モル%、より好ましくは約70〜約98モル%)の1,3プロパンジオールと50以下〜約1モル%(好ましくは約40〜約2モル%、より好ましくは約30〜約2モル%)のエチレングリコールの酸触媒重縮合によって調製される。
【0043】
本明細書において開示された方法において用いるために好ましいPO3Gは、少なくとも約250、より好ましくは少なくとも約1000、なおより好ましくは少なくとも約2000のMn(数平均分子量)を有する。Mnは、好ましくは約5000未満、より好ましくは約4000未満、なおより好ましくは約3500未満である。PO3Gのブレンドも用いることが可能である。例えば、PO3Gは、より高い分子量のPO3Gとより低い分子量のPO3Gのブレンドを含むことが可能である。ここで、好ましくは、より高い分子量のPO3Gは約1000〜約5000の数平均分子量を有し、より低い分子量のPO3Gは約200〜約950の数平均分子量を有する。ブレンドPO3GのMnは、好ましくは、上述した範囲内にあるままである。
【0044】
本明細書において用いるために好ましいPO3Gは、典型的には多分散であり、好ましくは約1.0〜約2.2、より好ましくは約1.2〜約2.2、なおより好ましくは約1.5〜約2.1の多分散性(すなわち、Mw/Mn)を有する。多分散性は、PO3Gのブレンドを用いて調節することが可能である。
【0045】
本発明において用いるためのPO3Gは、好ましくは約100APHA未満、より好ましくは約50APHA未満の明度を有する。
【0046】
ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールの(メタ)アクリル酸エステル
PO3Gのエステル化は、(メタ)アクリル酸またはその同等物との反応によって行われる。「(メタ)アクリル酸同等物」は、当業者によって一般に認識されている通り、高分子グリコールとの反応において実質的に「(メタ)アクリル酸のように行動する化合物を意味する。本発明の目的のためのモノカルボン酸同等物は、例えば、モノカルボン酸のエステル、および酸ハロゲン化物(例えば、酸塩化物)および酸無水物などのエステル形成性誘導体を含む。アクリル酸、メタクリル酸および/または同等物の混合物も適する。
【0047】
ポリ(トリメチレンエーテル)グリコール?のアクリル酸エステル組成物は、エステルの全重量を基準にして、好ましくは約50〜100重量%、より好ましくは約75〜100重量%のジエステル、および0〜約100重量%、より好ましくは50〜約100重量%のモノエステルを含む。好ましくは、モノエステルおよびジエステルは(メタ)アクリル酸のエステルである。
【0048】
エステル化方法
好ましい1つの方法において、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルは、酸触媒の存在下で1,3プロパンジオールを主として含むヒドロキシル基含有モノマー(2個以上のヒドロキシル基を含むモノマー)を重縮合してポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを形成し、その後、重合抑制剤の存在下でポリトリメチレンエーテルグリコール混合物をアクリル酸によりエステル化することにより調製される。
【0049】
エステルの調製のために、PO3Gは、好ましくは、不活性ガスの存在下で約25℃〜約250℃、好ましくは約75℃〜約150℃の範囲の温度で(メタ)アクリル酸に接触させることが可能である。本方法は、大気圧または真空下で行うことが可能である。接触中に水が生成されるが、反応を完了まで進めるために、不活性ガスストリーム中で除去するか、または真空下で除去することが可能である。
【0050】
(メタ)アクリル酸またはその同等物対ヒドロキシル基の任意の比を用いることが可能である。酸対ヒドロキシル基の好ましい比は、約3:1〜約1:2であり、ここで、この比は、生成物中のモノエステル対ジエステルの比を変えるために調節することが可能である。高度のジ(メタ)アクリレートの生産を一般に好むために、1:1比より僅かに上回る比が用いられる。
【0051】
PO3Gとアクリル酸の反応を促進するために、エステル化触媒、好ましくは鉱酸触媒が一般に用いられる。酸触媒の例には、硫酸、アリールスルホン酸またはアルキルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヨウ化水素酸;、およびゼオライト、ヘテロポリ酸、Amberlyst、ジアリル錫ジラウレート、チタニウムアルコキシドおよびイオン交換樹脂などの不均一触媒が挙げられるが、それらに限定されない。好ましいエステル化酸触媒は、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジアルキル錫ジラウレート、チタニウムアルコキシドおよびヨウ化水素酸からなる群から選択される。特に好ましい酸触媒は、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびイオン交換樹脂である。
【0052】
用いられる触媒の量は、反応混合物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは反応混合物の0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約2重量%であることが可能である。
【0053】
ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルのフリーラジカル重合を防ぐために、抑制剤、好ましくは4−メトキシフェノールが用いられる。抑制剤の例には、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、ヒドロキシベンジルアルコールおよび以下の構造
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は、H、−CH、−C、−C、−C、−OCH、−OC、−OC、−OC、−CHOHまたはそれらの混合物である)
を有するヒドロキノンが挙げられるが、それらに限定されない。抑制剤の量は、生成物の約0.001〜5重量%であることが可能である。好ましい範囲は約0.01〜2.0重量%である。
【0054】
エステル化反応は、溶媒の存在下でまたは溶媒の存在しない状態で行うことが可能である。溶媒の例には、アセトニトリル、シクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、テトラヒドロフラン、トルエンおよびキシレンが挙げられるが、それらに限定されない。好ましい溶媒はアセトニトリルまたはトルエンである。用いられる溶媒の量は、反応混合物の約0重量%〜約100重量%、好ましくは反応混合物の20重量%〜約100重量%、より好ましくは約50重量%〜約100重量%であることが可能である。
【0055】
エステル化のために好ましい方法は、鉱酸触媒を用いて1,3プロパンジオール反応物をポリトリメチレンエーテルグリコールに重縮合し、その後、(メタ)アクリル酸を添加し、PO3Gの単離も精製もせずにエステル化を行うことを含む。この方法において、1,3プロパンジオール反応物をエステル化してまたは重縮合してポリトリメチレンエーテルグリコールを形成するのは、米国特許第6,977,291号明細書および米国特許第6,720,459号明細書において開示された通り酸触媒を用いて行われる。エステル化反応は、特開2004−182974A号公報において記載された通り酸と塩基の両方を含有する重縮合触媒を用いても行ってよい。重縮合反応またはエステル化反応は、所望の分子量に達するまで継続され、その後、溶媒、計算された量の(メタ)アクリル酸および抑制剤が反応混合物に添加される。混合物は還流され、ここで、約30〜70%のエステル化が起きる。反応がさらに継続される一方で、さらなるエステル化が進行しつつ水副生物および溶媒が除去される。この好ましいエステル化方法において、ジオールの重縮合のために用いられる酸触媒もエステル化のために用いられる。必要ならば、追加のエステル化触媒をエステル化段階で添加することが可能である。
【0056】
代替手順において、エステル化反応は、エステル化触媒の存在下で原液PO3Gを(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸同等物と反応させ、その後、加熱し副生物を除去することにより行うことが可能である。
【0057】
別の代替手順において、エステル化反応は、低温でトリアルキルアミンなどの有機塩基の存在下で原液PO3Gを(メタ)アクリル酸塩化物と反応させ、その後、加熱することにより行うことが可能である。
【0058】
エステル化反応において生成したエステルは、反応条件に応じて、ジエステル、モノエステル、またはジエステルとモノエステルの組合せ、および少量の酸触媒、未反応(メタ)アクリル酸およびジオールを含有してよい。望むならば、この生成物混合物は、水洗浄、塩基中和、濾過および/または蒸留などの従来の既知技術によって、酸触媒、未反応カルボン酸およびジオールを除去するためにさらに処理される。未反応ジオールおよび酸触媒は、例えば、脱イオン水による洗浄によって除去することが可能である。未反応カルボン酸も、例えば、脱イオン水または塩基性水溶液により洗浄することによって除去することが可能である。
【0059】
陽子NMRは、エステル化反応の生成物を特定するため、エステル化を定量化するため、および数平均分子量を決定するために用いることが可能である。
【0060】
得られたポリトリメチレンエーテルグリコールアクリレートは以下の構造式(I)
CH=CR−C(O)−O−Q−OR (I)
(式中、Qはヒドロキシル基の引抜き後のポリトリメチレンエーテルグリコールの残基を表し、RはHまたはCHであり、Rの各々はHまたはCH=CR−C(O)である)
を有する。Qは約134〜約5000の範囲内のMnを有する。
【0061】
上で開示された方法によって製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールの各アクリル酸エステルは、それ自体とさらに反応してホモポリマーを作ることが可能であるか、または別のアクリルモノマーまたはビニルモノマーと反応して、注文通りの様々な特性を有する広範囲のコポリマーを作ることが可能である。共重合のために有用なアクリル酸エステルモノマーには、以下のアクリル酸エステルモノマー、すなわちメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、イソボルニルアクリレートおよびシクロヘキシルアクリレートがある。望むならば、2種以上のモノマーを共重合のために用いることが可能である。アクリル酸エステルモノマーに加えて、本明細書において開示されたポリトリメチレンエーテルグリコールのアクリル酸エステルは、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンおよび酢酸ビニルなどの他のタイプのモノマーと反応させることが可能である。
【0062】
アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(azobisizobutironitrile))、過酸化物(例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル)、またはヒドロペルオキシドなどのラジカル開始剤は、アクリル酸エステルモノマーの重合を開始させるために用いることが可能である。光化学重合および放射線開始重合も可能である。所望のホモポリマー組成物およびコポリマー組成物を塊重合、溶液重合、乳化重合または懸濁重合によって得ることが可能である。コポリマーの場合、ポリトリメチレンエーテルグリコールのアクリル酸エステル含有率は、1%から99%まで変動することが可能であり、他のコモノマー含有率は1%から99%まで、より好ましくは1%から50%まで、最も好ましくは1%から25%まで変動することが可能である。
【0063】
本明細書において開示された方法によって製造された材料は、ラジカル架橋剤としての使用、ポリマー分散液の中での使用、ペイント、木材、紙およびプラスチックのための塗料、インク、接着剤、平版印刷および印刷回路の中での使用を含む広範囲の用途において使用が見出されている。本明細書において開示された方法の生産物を含有するシステムの多くは放射線硬化性である、すなわち、材料は放射線源に露光された時に架橋される。また、本方法は、再生可能な源からのポリマーを提供し、こうしたポリマーは、軟質プラスチック、架橋剤および共薬剤などのための官能性コモノマーとして用途を見出すことが可能である。これらの生産物は、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールジアクリレートに基づかない類似生産物より、高い柔軟性、高い耐裏面衝撃性および低い収縮性を示す。
【0064】
アクリルエマルジョンポリマーは、均一性、破壊改善、より良好な耐久性および表面抵抗を提供する動物皮革生産において用いることが可能である。得られたポリマーは、セラミック工業において有用な品目であることが可能であり、結合剤、解膠剤および添加剤として作用することが可能である。これらのポリマーは、織物接着、織物積層、フロック加工、裏面塗布および顔料印刷用途を含む織物用途において多様な用途を有する。ポリアクリレートは繊維充填剤および不織布のための結合剤としても用いられる。ポリアクリレートは、カーシートの裏地として自動車用途において、および家具備品のための裏地としてもしばしば用いられる。化粧配合物およびパーソナルケア配合物において、ポリアクリレートは増粘剤として広く用いられている。
【0065】
本明細書において開示された方法から形成されたポリ(トリメチレンエーテル)グリコールジアクリレートは、類似材料に関連した困難の幾つかを克服することが可能である。例えば、ポリ(エチレン)グリコールジアクリレートは、一次反応性二官能価を有する線状半結晶ポリマーである。同様に、ポリ(プロピレン)グリコールおよびポリ(テトラメチレン)グリコールから二官能性アクリレートを製造することが可能である。しかし、これらのポリマーは合成中に一般に劣化を受ける。本明細書において開示された方法から形成されたジアクリレートは、合成中に劣化を受けない材料のみならずより高い分子量のジアクリレートの生産を可能にすることにより、これらの困難を克服する。
【実施例】
【0066】
本発明を以下の実施例においてさらに規定する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示としてのみ提示される。上の議論およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することが可能であり、本発明の精神および範囲を逸脱せずに、種々の使用および条件に本発明を適応させるために本発明の種々の変更および修正を行うことが可能である。
【0067】
すべての部、百分率などは別段に指示がない限り重量による。
【0068】
Susterra(登録商標)プロパンジオールおよびCerenol(商標)ポリオールは、それぞれDuPont Tate & Lyle Bioproducts,LLC(Loudon,TN)およびDuPont de Nemours Co.Inc.,(Wilmington,DE)から市販されている。
【0069】
NMR分光法を用いる末端基分析によって数平均分子量(Mn)を決定した。%エステル化およびポリマー中の未反応アクリル酸を特定し定量化するためにもこの方法を用いた。
【0070】
XWINNMRバージョン3.5ソフトウェアを用いるBruker DPX500で1H NMRスペクトルを記録した。90度パルス(p1)および30秒リサイクルディレー(d1)を用いてデータを取得した。サンプルを重水素化クロロホルムに溶解させ、非重水素化クロロホルムを内部標準として用いた。
【0071】
実施例1
Susterra(登録商標)プロパンジオールから出発するポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルの合成
Susterra(登録商標)プロパンジオール(3.04kg)、27.58gの濃硫酸(EMD、95%)および14.06gのNaCO溶液(水12.6gに溶解させた1.46gのNaCO)を攪拌機、凝縮器および窒素入口が装着された5Lフラスコに投入した。8時間にわたり攪拌しつつ混合物を166℃に加熱した。この時間中に合計で550mLの留出液を集めた。得られたポリ(トリメチレンエーテル)グリコール生成物はNMRによって分析し、278の数平均分子量を有していた。
【0072】
上の生成物の一部(61.2g)、60gのアセトニトリル、0.3gのメトキシフェノールおよび31.1gのアクリル酸を250mL三ツ口丸底フラスコに取り、この混合物を3時間にわたり還流した。3時間後、蒸留ヘッドをフラスコに取り付け、溶媒を85℃で反応混合物から蒸留除去した。温度を115℃にゆっくり上げ、反応を放置して115℃で90分間にわたり継続した。反応混合物を放置して室温に冷却し、その後、100mLの脱イオン(DI)水で希釈した。水性混合物を精製するために、水性混合物を完全に混合し、分液漏斗に移送した。有機生成物を集め、ロータリーエバポレータを用いて35℃で乾燥させた。アクリル酸エステル生成物を2,6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール(BHT)200ppmによって安定化させ、表1に示した通り陽子NMRを用いて生成物を分析した。
【0073】
実施例2
Cerenol(商標)H1400およびアクリル酸から出発するポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルの合成
91gのCerenol(商標)H1400、90gのアセトニトリル、0.1gの4−メトキシフェノールおよび9.5gアクリル酸を250mL三ツ口丸底フラスコに取った。成分原料を完全に混合し、その後、0.46gのHSO(95重量%)を添加し、反応混合物を加熱し、5時間にわたり還流した。溶媒を除去し、その後、反応温度を115℃にゆっくり上げ、反応を放置して115℃で3時間にわたり続けた。生成物を実施例1に記載された通りさらに精製した。200ppmのBHTを最終生成物に添加した。表1において示した通り陽子NMRを用いて精製の前後にアクリル酸エステル生成物を分析した。
【0074】
実施例3
Cerenol(商標)H1400およびアクリル酸から出発するポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルの合成
91gのCerenol(商標)H1400、90gのアセトニトリル、0.1gの4−メトキシフェノールおよび9.5gアクリル酸を250mL三ツ口RBフラスコ内で混合した。この混合物に、0.46gのHSO(95重量%)を添加し、反応混合物を83℃(±1℃)に加熱した。反応を還流条件下で5時間にわたり行った。5時間後、蒸留ヘッドを取り付け、溶媒を85℃での蒸留により除去した。溶媒を蒸留除去した後、反応温度を125℃にゆっくり上げ、反応を放置して125℃で2時間にわたり継続した。200ppmのBHTを最終生成物に添加した。
【0075】
得られたアクリル酸エステル生成物を表1において示した通り陽子NMRを用いて分析した。
【0076】
実施例4
Cerenol(商標)H1740およびアクリロイル塩化物から出発するポリ(トリメチレンエーテル)グリコールのアクリル酸エステルの合成
49.8gのポリ(トリメチレンエーテル)グリコール(Mn=1740)および6.9gのトリエチルアミン(Aldrich、99.5%)を三ツ口ガラス反応器に取った。その後、氷浴を用いて混合物を8℃に冷却した。乾燥窒素ガスを1時間にわたり反応混合物上に通して、空気および水分を除去した。混合物を完全に攪拌するとともに温度を12℃未満に保ちつつ、6.3gのアクリロイル塩化物(Aldrich、98%)をゆっくり添加した。添加が完了した後、氷浴の氷を水と交換して、抑制された方法で反応温度を上げ、温度のいかなる急上昇も避けた。反応を28℃にもっていった後、反応混合物を30分にわたり攪拌した。反応温度を60℃にゆっくり上げ、その温度で6時間にわたり維持した。反応混合物を約35℃に冷却し、その後、50mLの5%KOH溶液、100mLのジクロロメタンおよび50mLの水を添加した。混合物を30分にわたり完全に攪拌し、分液漏斗に移送した。得られた生成物を放置して一晩沈殿させた。混合物の有機部分を単離し、500ppmの4−メトキシフェノールを添加した。30℃において、減圧(300〜500mTorr)下でロータリーエバポレータを用いて溶媒を除去した。200ppmのBHTを最終生成物に添加した。得られた生成物を表1において示した通りNMRを用いて分析した。
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、
a)100〜250℃の間の温度で酸触媒の存在下に再生可能資源から生化学的に得られた1,3プロパンジオールを主として含むヒドロキシル基含有モノマーを重縮合して、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを形成させる工程と、
b)得られた前記ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを、重合禁止剤、および任意選択で溶媒の存在下に、25〜250℃の間の温度でアクリル化合物でエステル化する工程と、
を含む、上記方法。
【請求項2】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、134〜5000の数平均分子量を有するポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを、エステル化触媒、重合禁止剤、および任意選択で溶媒の存在下に、25〜250℃の間の温度で(メタ)アクリル酸と反応させる工程を含む、上記方法。
【請求項3】
ポリトリメチレンエーテルグリコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールを有機塩基または触媒の存在下に、5〜150℃の間の温度で(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と反応させる工程を含む、上記方法。
【請求項4】
ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールアクリレートを単離する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリ(トリメチレンエーテル)グリコールが再生可能資源から誘導される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、硫酸、アリールスルホン酸またはアルキルスルホン酸、トリフリン酸およびイオン交換樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エステル化で触媒が、ジアルキルスズジラウレート、チタニウムアルコキシド、鉱酸およびそれらの組合せである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
有機塩基がトリアルキルアミンまたはピリジンである、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
重合禁止剤が、アルコキシフェノール、アルキルフェノール類、アルコキシフェノール、ヒドロキシベンジルアルコール、および構造
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は、独立して、H、−CH、−C、−C、−C、−OCH、−OC、−OC、−OC、−CHOHからなる群から選択される)
を有するヒドロキノン類からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−513524(P2012−513524A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543517(P2011−543517)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/062287
【国際公開番号】WO2010/074805
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】