説明

ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体、並びにそれらの製造方法

【課題】ポリウレタン、熱可塑性エラストマー等の原料として有用な、耐熱安定性及び耐加水分解性に優れたポリカーボネートジオールの提供。
【解決手段】少なくとも1つの水酸基(OH基)が二級又は三級の炭素原子に結合した分岐鎖状アルキレンジオールと特定のカーボネートを原料として用いる新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及び異なる2種以上の分岐鎖状アルキレンジオールと特定のカービネート原料として用いるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体、並びにそれらの製造方法が提供される。得られた新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、例えば、自動車分野、OA機器分野での外観用塗料、コート剤等として工業的に広く使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐鎖状アルキレンジオールを用いた、耐加水分解性、及び室温下でのハンドリング性に優れた、ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にポリアルキレンカーボネートジオールは、例えば、優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性等に優れた素材として期待されており、ポリウレタンや熱可塑性エラストマー等のソフトセグメント用原料として有用である。
【0003】
ポリアルキレンカーボネートジオールの製造において、アルキレンジオールは原料の一成分として使用され、これまで、例えば、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状のアルキレンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロアルカンジメタノール等の脂環式骨格を有するアルキレンジオール、ベンゼンジメタノール等の芳香族ジメタノール等のアルキレンジオールなどが広く使用されてきた(例えば、特許文献1から3参照)。また、ポリアルキレンカーボネートジオールの低融点化を図る目的で、例えば、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオール等のアルキレン主鎖の途中に分岐鎖を有するアルキレンジオールを使用したポリアルキレンカーボネートジオールの製造例についても、既に報告されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、例えば、前記の分岐鎖状アルキレン基を有するポリアルキレンカーボネートジオールを、ポリウレタンの原料として使用した場合、原料のポリアルキレンカーボネートジオールが低融点化されているため、製造時のハンドリングは改善されるものの、それと引き換えに、製造されたポリウレタンは、耐光性や耐酸化劣化性等の材料特性が低下してしまう恐れがあることが問題であった。
さらに、これまでのポリアルキレンカーボネートジオールは、その合成上の制約から、原料であるアルキレンジオールは、上記でも挙げられているような水酸基(OH基)が一級炭素原子に結合したヒドロキシメチル骨格(HO−CH−)を有するものが主に使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−290342号公報
【特許文献2】特開2000−336140号公報
【特許文献3】特開2003−183376号公報
【特許文献4】特開昭60−195117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、少なくとも1つの水酸基(OH基)が2級又は3級の炭素原子に結合した分岐鎖状アルキレンジオールを用いたポリアルキレンカーボネートジオールについては、これまで一切知られていない。その理由のひとつとして、例えば、当該ジオール化合物を原料として使用した場合、分子間のエステル交換重合反応が非常に起こり難く、所望のポリアルキレンカーボネートジオールが得られにくいことが考えられている。
【0006】
そこで、本発明は、耐加水分解性に優れ、また耐熱安定性とのバランスもよく、また、例えば、ポリウレタンの原料として使用した場合においても良好な物性を示すことができるポリアルキレンカーボネートジオール、又はポリアルキレンカーボネートジオール共重合体を提供することを目的とする。さらに詳しくは、少なくとも1つの水酸基(OH)基が2級又は3級の炭素原子に結合した分岐鎖状のアルキレン基を有するアルキレンジオールを用いた、新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体、並びにそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の課題は、次の〔1〕から〔12〕の発明によって示される、少なくとも1種の分岐鎖状アルキレンジオールを含むアルキレンジオールを使用することを特徴とする、ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体、並びにそれらの製造方法により解決される。
【0008】
〔1〕 式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、
からRは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基、又は下記式(2)で示されるZ基を示す。
【0011】
【化2】

【0012】
[式(2)中、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmはメチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。]
Xは、Zを有するアルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。)
〔2〕 異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体。
【0013】
【化3】

【0014】
(式(A)中、
からRは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基、又は下記式(2)で示されるZ基を示す。
【0015】
【化4】

【0016】
[式(2)中、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmはメチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。]
Xは、Zを有するアルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。)
〔3〕 少なくとも1種の式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体。
【0017】
【化5】

【0018】
(式(A)中、RからR及びXは、それぞれ前記式(A)のものと同じである。)
【0019】
【化6】

【0020】
(式(B)中、Yは、式(B)で示されるメチレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。また、kは、メチレン基の個数を示し、1から12の整数を示す。)
〔4〕 アルカリ金属化合物の存在下、式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、式(4)及び式(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートとを反応させる、式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの製造方法。
【0021】
【化7】

【0022】
(式(1)中、
からRは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基、又は式(2)で示されるZ基を示す。
【0023】
【化8】

【0024】
[式(2)中、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmはメチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。]
Xは、Zを有するアルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。)
【0025】
【化9】

【0026】
(式(3)中、RからR及びZは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0027】
【化10】

【0028】
(式(4)中、R及びRは、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基;ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数6〜14のフェニル基である。なお、RとRは、互いに同一、又はそれぞれ異なっていてもよい。)
【0029】
【化11】

【0030】
(式(5)中、RからR及びZは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
〔5〕 カーボネートとして、少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートを使用する前記〔4〕に記載の式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの製造方法。
【0031】
〔6〕 アルカリ金属化合物の存在下、異なる2種以上の式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、式(4)及び式(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートとを反応させる、異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【0032】
【化12】

【0033】
(式(A)中、RからR、並びにZ及びXは、前記式(A)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0034】
【化13】

【0035】
(式(3)中、RからR及びZは、前記式(3)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0036】
【化14】

【0037】
(式(4)中、R及びRは、前記式(4)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0038】
【化15】

【0039】
(式(5)中、RからR及びZは、前記式(5)に記載のものとそれぞれ同じである。)
〔7〕 カーボネートとして、少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートを使用する前記〔6〕に記載の異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【0040】
〔8〕 アルカリ金属化合物の存在下、少なくとも1種の式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオール、少なくとも1種の炭素数2〜12の直鎖状アルキレンジオール、及び式(4)、式(5)及び式(8)で示されるカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートを反応させる、少なくとも1種の下記式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の下記式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【0041】
【化16】

【0042】
(式(A)中、RからR及びXは、それぞれ前記(1)のものと同じである。)
【0043】
【化17】

【0044】
(式(B)中、Yは、式(B)で示されるメチレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。また、kは、メチレン基の個数を示し、1から12の整数を示す。)
【0045】
【化18】

【0046】
(式(3)中、RからR及びZは、前記式(3)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0047】
【化19】

【0048】
(式(4)中、R及びRは、前記式(4)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0049】
【化20】

【0050】
(式(5)中、RからR及びZは、前記式(5)に記載のものとそれぞれ同じである。)
〔9〕 カーボネートとして、少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートを使用する、前記〔8〕に記載の少なくとも1種の前記式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の前記式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【0051】
〔10〕 大気圧下(101.133kPa以下)、かつ反応液の液温150℃以下にて反応させて副生する、式(6)及び式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、その理論生成量(質量)に対して、まず70質量%以上を留去し、次いで、反応圧力を大気圧以下へと減圧して、残りの副生した前記アルコールを留去する、前記〔5〕に記載の前記式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの製造方法。
【0052】
【化21】

【0053】
(式(6)中、Rは、前記式(4)に記載のものと同じである。)
【0054】
【化22】

【0055】
(式(7)中、Rは、前記式(4)に記載のものと同じである。)
〔11〕 大気圧下(101.133kPa以下)、かつ反応液の液温150℃以下にて反応させて副生する、前記式(6)及び前記式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、その理論生成量(質量)に対して、まず70質量%以上を留去し、次いで、反応圧力を大気圧以下へと減圧し、残りの副生したアルコールを留去する、前記〔7〕に記載の異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【0056】
〔12〕 大気圧下(101.133kPa以下)、かつ反応液の液温150℃以下にて反応させて副生する、前記式(6)及び前記式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、その理論生成量(質量)に対して、まず70質量%以上を留去し、次いで、反応圧力を大気圧以下へと減圧し、残りの副生したアルコールを留去する、前記〔9〕に記載の少なくとも1種の前記式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の前記式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0057】
本発明の製造方法により、少なくとも1つの水酸基(OH基)が2級又は3級の炭素原子に結合した分岐鎖状のアルキレン基を有するアルキレンジオールから、新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体を得ることができる。
また、本発明の新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、ポリアルキレンカーボネートの主鎖構造に、少なくとも一つの分岐鎖アルキレン基を有するという構造的要因から融点が低い性質を有している。従って、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、例えば、室温下(30℃以下)でも液状であるため、ハンドリングが良好であり、かつカーボネート結合由来の耐熱安定性も有するため、工業的に好適に使用できる化合物である。
さらに、本発明の製造方法より得られるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、カーボネート結合に隣接した炭素原子の少なくとも一つが分岐鎖を有する炭素原子からなるアルキレン主鎖構造を有する新規なポリマーである。従って、分岐鎖による立体構造の影響により、外部からの分解促進因子、特に、湿気や水による加水分解が抑制され、より良好な耐加水分解特性を示す化合物である。
上記の特徴から、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、例えば、自動車分野、OA機器分野での外観用塗料、コート剤、接着剤等の構成材料として利用することができる。
また、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体を、ポリウレタンの製造用原料として使用した場合、得られた新規なポリウレタンは、例えば、前記特許文献4のポリウレタンでみられたような低い耐候性や低い耐劣化性を改善することが期待され、従って、様々な材料分野での幅広く使用することが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、少なくとも1種の下記式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールを含むアルキレンジオールを使用することを特徴とする、ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法に関する。
≪製造原料≫
次に、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造原料について説明する。
【0059】
<本発明で使用されるアルキレンジオール>
本発明で使用されるアルキレンジオールとしては、少なくとも1種の下記式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールを含むアルキレンジオールが使用される。
さらに、本発明は、後述の本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)を製造する方法も含むため、本発明で使用されるアルキレンジオールとしては、少なくとも1種の下記式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、少なくとも1種の炭素数2〜12の直鎖状アルキレンジオールとからなるアルキレンジオールも使用される。
【0060】
(式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオール)
本発明で使用される式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールは、2つの水酸基のうち少なくとも1つの水酸基が2級又は3級の炭素原子に結合した、炭素数は4〜36のアルキレンジオールである。なお、本発明の式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールは、単独で使用しても、又は複数種類使用してもよい。
【0061】
【化23】

【0062】
式(3)において、RからRは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。なお、RからRにおける前記アルキル基は、直鎖状、又は分岐鎖状のアルキル基で、さらに分岐鎖状の場合は位置異性体も含む。
【0063】
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、又は下記式(2)で示されるZ基を示す。
【0064】
【化24】

【0065】
式(2)のZにおいて、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmは、メチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。
【0066】
上記より、式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールとしては、
2,7−オクタンジオール、2,6−ヘプタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオールなどの炭素数が3〜36の分岐鎖状アルキレンジオール;1,2−シクロプロパンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの炭素数が3〜36の脂環式アルキレンジオール;ジ(プロピレングリコール)、ジ(プロピレンチオグリコール)などのエーテル結合又はチオエーテル結合を有する炭素数が3〜36のヘテロ原子含有アルキレンジオールが好ましく使用され、
2,7−オクタンジオール、2,6−ヘプタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ジ(プロピレングリコール)、ジ(プロピレンチオグリコール)がより好ましく使用される。
【0067】
(直鎖状アルキレンジオール)
本発明で使用される直鎖状アルキレンジオールとしては、例えば、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールなどの分子両末端に水酸基を有する炭素数1から12の直鎖状のアルキレンジオールを示す。
【0068】
(入手方法)
前記の本発明で使用されるアルキレンジオールは、市販品が有れば、それをそのまま使用してもよい。また市販品が無いものについては、例えば、対応するケトン化合物やカルボン酸化合物をヒドリド還元する等の公知の方法により別途合成される。さらに、市販品又は合成品を、例えば、蒸留、晶析、カラムクロマトグフィー等で精製して使用してもよい。
【0069】
<本発明で使用されるカーボネート>
本発明で使用されるカーボネートとしては、少なくとも1種の、式(4)又は式(5)で示されるカーボネートを含むカーボネートが使用される。
さらに、本発明は、後述の本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)を製造する方法も含むため、本発明で使用されるカーボネートとしては、式(4)又は式(5)で示されるカーボネートを含む少なくとも1種のカーボネートと式(8)で示される少なくとも1種のカーボネートとからなるカーボネートも使用される。
【0070】
(式(4)で示されるカーボネート)
まず、本発明で使用される下記式(4)で示されるカーボネートについて説明する。
【0071】
【化25】

【0072】
式(4)で示されるカーボネートにおいて、R及びRは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基;ベンジル基、アリル基である。なお、式(4)で示されるカーボネートの炭素数は3から37である。また、前記アルキル基は、直鎖状、又は分岐鎖状のアルキル基であって、さらに分岐鎖状の場合は位置異性体も含む。なお、本発明の式(4)で示されるカーボネートは、単独で使用しても、又は複数種類使用してもよい。
【0073】
上記より、本発明で使用される式(4)で示されるカーボネートとしては、
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート等の対称カーボネート;メチルエチルカーボネート等の非対称カーボネート、ジフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、及びジアリルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートが好ましく使用され;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートがより好ましく使用され;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、又はメチルエチルカーボネートが特に好ましく使用される。
【0074】
また、本発明の製造方法では、使用するカーボネートの沸点の影響を受けて反応溶液の液温が低くなり、反応が進行しなくなることがある。そこで、このような反応性の低い状態を避けるために、式(4)で示されるカーボネートを複数種類使用してもよい。
【0075】
(式(5)で示されるカーボネート)
次に、本発明で使用される下記式(5)で示されるカーボネートについて説明する。
【0076】
【化26】

【0077】
式(5)で示されるカーボネートにおいて、RからR及びZは、前記式(1)のRからR及びZとそれぞれ同じである。なお、本発明の式(5)で示されるカーボネートは、前記式(4)で示されるカーボネートと併用してもよい。また、本発明において、式(5)で示されるカーボネートを使用した場合、反応後に式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールが生じる。そこで、例えば、これを本発明の反応に利用して、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体を製造してもよい。
【0078】
式(5)で示されるカーボネートとしては、例えば、1−メチルエチレンカーボネート(4-methyl-1,3-dioxolan-2-one)、1,1−ジメチルエチレンカーボネート(4,4-dimethyl-1,3-dioxolan-2-one)、1,2−ジメチルエチレンカーボネート(4,5-dimethyl-1,3-dioxolan-2-one)、1−エチルエチレンカーボネート(4-ethyl-1,3-dioxolan-2-one)、1−エチル−2−メチルエチレンカーボネート(4-ethyl-5-methyl-1,3-dioxolan-2-one)、1,1−ジエチルエチレンカーボネート(4,4-diethyl-1,3-dioxolan-2-one)、1,2−ジエチルエチレンカーボネート(4,5-diethyl-1,3-dioxolan-2-one)、1−メチルプロピレンカーボネート(4-methyl-1,3-dioxan-2-one)、1,1−ジメチルプロピレンカーボネート(4,4-dimethyl-1,3-dioxan-2-one)、1,2−ジメチルプロピレンカーボネート(4,5-dimethyl-1,3-dioxan-2-one)、1,3−ジメチルプロピレンカーボネート(4,6-dimethyl-1,3-dioxan-2-one)、1,1,3,3−テトラメチルプロピレンカーボネート(4,4,6,6-tetramethyl-1,3-dioxan-2-one)、1−エチルプロピレンカーボネート(4-ethyl-1,3-dioxan-2-one)、1,1−ジメチルプロピレンカーボネート(4,4-dimethyl-1,3-dioxan-2-one)、1−エチル−2−メチルプロピレンカーボネート(4-ethyl-5-methyl-1,3-dioxan-2-one)、1−エチル−3−メチルプロピレンカーボネート(4-ethyl-6-methyl-1,3-dioxan-2-one)、1−メチル−2−エチルプロピレンカーボネート(4-methyl-5-ethyl-1,3-dioxan-2-one)、1−エチル−2−エチルプロピレンカーボネート(4,5-diethyl-1,3-dioxan-2-one)、又は1−エチル−3−エチルプロピレンカーボネート(4,6-diethyl-1,3-dioxan-2-one)等が使用される。
【0079】
(式(8)で示されるカーボネート)
さらに、後述の本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)を製造する場合に使用することができる、下記式(8)で示されるカーボネートについて説明する。
【0080】
【化27】

【0081】
本発明で使用される式(8)で示されるカーボネートにおいて、kは、メチレン基の個数を示し、1から12の整数を示す。
【0082】
式(8)で示されるカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンタメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどの炭素数3から13の直鎖状のカーボネートが使用される。
【0083】
(入手方法)
本発明で使用される式(4)、式(5)又は式(8)で示されるカーボネートは、市販品が有れば、それをそのまま使用してもよい。また市販品が無いものについては、例えば、特開2006−104095等を参考に別途合成してもよい。さらに、市販品又は合成品を、例えば、蒸留、晶析、カラムクロマトグフィー等で精製して使用してもよい。
【0084】
(本発明で使用されるカーボネートの使用量)
本発明の製造方法において、前記式(4)で示されるカーボネートは、単独で使用しても、又は複数種類使用してもよい。また、式(4)で示されるカーボネートと式(5)で示されるカーボネートとを混合して使用してもよい。
さらに、本発明は、後述の本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)を製造する方法も含むため、式(4)及び式(5)で示されるカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートと、少なくとも1種の式(8)で示されるカーボネートとからなるカーボネートを本発明で使用されるカーボネートとして使用してもよい。
なお、前記式(4)、式(5)及び/又は式(8)で示されるカーボネートを含む本発明のカーボネートの(合計)使用量は、本発明のアルキレンジオールの(合計)使用量を1モルとした場合、0.5〜2モルが好ましく使用され、0.8〜2モルがより好ましく使用され、1〜1.5モルが特に好ましく使用される。
【0085】
<本発明で使用されるアルカリ金属化合物>
本発明で使用されるアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等);金属アルコキシド(例えば、炭素数1〜6のアルコールのリチウム、カリウム、ナトリウム塩等)を示す。
【0086】
本発明で使用されるアルカリ金属化合物としては、炭素数1〜6のアルカリ金属アルコシドが好ましく使用され、
リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、及びナトリウムt−ブトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属アルコシドがさらに好ましく使用され、
カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、及びナトリウムt−ブトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属アルコシドがより好ましく使用され、
カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、及びナトリウムエトキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属アルコシドがより好ましく、
ナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドが特に好ましく使用される。
【0087】
(入手方法、又は製造方法)
本発明で使用される、アルカリ金属化合物は市販品をそのまましてもよい。なお、例えば、金属アルコキシドであれば、対応するアルカリ金属とアルコールから別途調製して使用してもよい。
【0088】
(アルカリ金属化合物の使用量)
本発明の製造方法において、アルカリ金属化合物は、単独で使用しても、又は複数種類使用してもよい。
【0089】
また、前記アルカリ金属化合物の(合計)使用量は、本発明のアルキレンジオールの(合計)使用量に対して、0.001〜0.5質量%(10〜5000ppm)となる量を使用することが好ましく、
0.005〜0.1質量%(50〜1000ppm)となる量を使用することがより好ましく、
0.01〜0.05質量%(100〜500ppm)となる量を使用することが特に好ましい。
【0090】
本発明の製造方法によれば、上記のアルカリ金属化合物の種類及び使用量を用いて反応を行うことにより、オレフィン化合物の生成も抑え、良好に重合反応を進行させることが出来る。その結果、初めて十分な重合度(数平均分子量)を有する、式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体が得られるようになった。
【0091】
<本発明で使用される反応溶媒>
本発明の反応は、別途反応溶媒の存在下で行っても、又は非存在下で行ってもよい。
別途、反応溶媒を使用する場合、使用できる反応溶媒としては、反応を阻害しないものであれば、特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。上記反応溶媒としては、エーテル類、ニトリル類、及び/又はアミド類が好ましく使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は2種以上を混合して使用しても良く、その使用量は、適宜調整される。しかしながら、本発明の反応では、例えば、使用する原料の溶解性が低い場合等には、別途反応溶媒を使用することもあるが、通常は、反応終了後の処理の煩雑さも考慮し、別途反応溶媒を出来るだけ使用すること無く反応を行うことが望ましい。
【0092】
≪製造方法≫
次に、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法について説明する。
【0093】
<式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの製造方法>
本発明の式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールは、アルカリ金属化合物の存在下、式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、式(4)又は式(5)で示される少なくとも1種のカーボネートとを反応させる方法にて製造される。
【0094】
【化28】

【0095】
(式(1)中、R〜R、Z及びXは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0096】
【化29】

【0097】
(式(3)中、RからR及びZは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0098】
【化30】

【0099】
(式(4)中、R及びRは、前記式(4)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0100】
【化31】

【0101】
(式(5)中、RからR及びZは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0102】
<本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法>
本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法としては、例えば、前記式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールを2種以上使用した場合、異なる2種以上の前記式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(以降、ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)と称することがある)が得られる。
また、例えば、少なくとも1種の式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、少なくとも1種の直鎖状アルキレンジオールとを使用した場合、少なくとも1種の式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の式(B)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(以降、ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)と称することがある)が得られる。
【0103】
【化32】

【0104】
式(B)中、Yは、式(B)で示されるメチレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。また、kは、メチレン基の個数を示し、1から12の整数を示す。
【0105】
(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)の製造方法)
本発明の異なる2種以上の前記式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)は、アルカリ金属化合物の存在下、式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、式(4)及び式(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートとを反応させる方法によって製造される。
【0106】
【化33】

【0107】
(式(A)中、RからR、並びにZ及びXは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0108】
【化34】

【0109】
(式(3)中、RからR及びZは、前記式(3)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0110】
【化35】

【0111】
(式(4)中、R及びRは、前記式(4)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0112】
【化36】

【0113】
(式(5)中、RからR及びZは、前記式(5)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0114】
(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)の製造方法)
本発明の少なくとも1種の式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の式(B)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)は、アルカリ金属化合物の存在下、少なくとも1種の式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、式(4)、式(5)及び式(8)で示されるカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートとを反応させる方法によって製造される。
【0115】
【化37】

【0116】
(式(A)中、RからR及びXは、それぞれ前記(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0117】
【化38】

【0118】
(式(B)中、Y及びkは、それぞれ前記(B)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0119】
【化39】

【0120】
(式(3)中、RからR及びZは、前記式(3)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0121】
【化40】

【0122】
(式(4)中、R及びRは、前記式(4)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0123】
【化41】

【0124】
(式(5)中、RからR及びZは、前記式(5)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【0125】
<反応方式、反応機器>
本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法は、アルカリ金属化合物の存在下、本発明で使用されるアルキレンジオールと本発明で使用されるカーボネートとを、反応溶媒の存在下又は非存在下、大気圧又は減圧下、及び/又は不活性ガス気流下にて、加熱しながら撹拌等により混合させて行う、エステル交換による重合反応である。
また、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方式は、例えば、バッチ方式、連続方式等いずれも方式も可能である。
そこで、使用される反応機器として、具体的には、撹拌槽型反応器、薄膜反応器、遠心式薄膜蒸発反応器、表面更新型二軸混練反応器、二軸横型撹拌反応器、濡れ壁式反応器、自由落下させながら重合する多孔板型反応器、ワイヤーに沿わせて落下させながら重合するワイヤー付き多孔板型反応器等が挙げられるが、特に限定されない。なお、これらの重合機器は単独もしくは組み合わせて使用してもよい。さらに、これらの重合機器の材質についても特に制限はなく、例えば、ステンレススチール、ニッケル、又はグラスライニング等から適宜選んで使用される。
【0126】
<反応条件>
(反応温度、及び反応圧力)
本発明の反応の反応温度は、90℃〜150℃が好ましく、100℃〜140がより好ましく使用される。また、反応圧力は、0.01kPa〜102kPa(絶対圧)が好ましく、0.01kPa〜20kPa(絶対圧)がより好ましく使用される。なお、反応系内(反応環境)が非水条件下であることが望ましい。
また、本発明の重合反応は、平衡反応であって、加熱や減圧より反応平衡を生成物側へと偏らせることで、重合反応を促進させることができる。
そこで、本発明の好適な製造方法の一つとしては、例えば、カーボネートとして、少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートを使用する場合、反応中に必要に応じて副生した式(6)及び式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを反応系外の抜き出しながら、所望の分子量(例えば、数平均分子量など)に達するまで反応を行って、ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体を取得する方法が挙げられる。
【0127】
【化42】

【0128】
(式(6)中、Rは、前記式(4)に記載のものと同じである)
【0129】
【化43】

【0130】
(式(7)中、Rは、前記式(4)に記載のものと同じである)
【0131】
より具体的な操作方法としては、例えば、大気圧下(101.133kPa以下)、かつ反応液の液温150℃以下の反応条件下において、本発明の少なくとも1種の分岐鎖状アルキレンジオール(及び少なくとも1種の直鎖状アルキレンジオール)と少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートとを反応させ、副生した前記式(6)及び前記式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、その理論生成量(質量)に対して、まず70質量%以上を留去し、次いで、反応圧力を大気圧以下へと減圧し、残りの副生したアルコール類を留去させる、ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法によって実施される。
【0132】
≪本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール≫
上記より、本発明の製造方法によれば、下記式(1)で示される新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールが得られる。
【0133】
【化44】

【0134】
本発明の式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールにおいて、
からRは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。
Xは、アルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基、又は下記式(2)で示されるZ基を示す。
【0135】
【化45】

【0136】
式(2)において、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmは、メチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。
【0137】
≪本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体≫
また、本発明の製造方法よれば、例えば、異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有する前記ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)や、少なくとも1種の式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の式(B)で示される分子構造を有する前記ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)が得られる。
【0138】
<ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)>
本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)として、例えば、前記式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールを2種類使用した場合、本発明の前記製造方法より、下記式(A−a)及び式(A−b)示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)が得られる。
【0139】
【化46】

【0140】
【化47】

【0141】
ここで、式(A−a)及び式(A−b)中、
1aからR4a及びR1bからR4bは、それぞれ前記式(A)のRからRと同じである。但し、式(A−a)と式(A−b)は、互いに異なる繰り返し単位の分子構造を示す。
及びXは、前記式(A−a)と式(A−b)で示されるアルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。
及びZは、それぞれ、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、又は下記式(2a)並びに式(2b)でそれぞれ示される。
【0142】
【化48】

【0143】
ここで、L及びLは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びma、並びn及びmは、それぞれメチレン基の個数を示し、1から6の整数示す。
【0144】
さらに、前記と同様に、3種以上の前記式(3)の分岐鎖状アルキレンジオールを使用した場合も、上記同様に前記式(A)で示される分子構造を3種以上有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体が得られる。
【0145】
<ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)>
一方、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)として、例えば、少なくとも1種の前記式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、少なくとも1種の直鎖状アルキレンジオールを使用した場合、少なくとも1種の下記式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の下記式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)が得られる。
【0146】
【化49】

【0147】
(式(A)中、RからR及びXは、それぞれ前記(1)のものと同じである)
【0148】
【化50】

【0149】
式(B)中、Yは、式(B)で示されるメチレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。また、kは、メチレン基の個数を示し、1から12の整数を示す。
【0150】
(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の数平均分子量)
本発明の式(1)で示される新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、或いは、前記ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)又は前記ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)の数平均分子量は、300〜5000であることが好ましく、500〜3000であることがより好ましく、500〜2000であることが特に好ましい。ここで、数平均分子量は、例えば、H-NMRスペクトルから公知の方法で算出される数平均分子量であっても、水酸基価測定から算出される数平均分子量であっても、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC:標準物質;ポリスチレン)から算出される数平均分子量であっても、いずれの場合から算出されたものであってもよい。
また、式(1)で示される新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(I)の繰り返し単位数Xa並びにXb、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)の繰り返し単位数Xa並びにYは、上記で算出された数平均分子量を満足する実数となる。
【0151】
本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、少なくとも一つの分岐鎖状アルキレン基をポリアルキレンカーボネート主鎖中に有するため、その構造的要因からこれまでのポリアルキレンカーボネートジオールに比べて融点が低い性質を有する。従って、本発明の新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールは、カーボネート結合由来の耐熱安定性も有するほか、例えば、室温下でも液状であるため、そのハンドリング(操作性、作業性)も良好であることから、これまでその使用が難しかった狭所環境下や微細部分などにおいても問題なく使用することができる。
【実施例】
【0152】
次に、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0153】
≪分析方法≫
<本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の数平均分子量の算出方法>
H−NMRの測定)
本発明で得られた式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、それぞれ、重クロロホルム又は重アセトニトリルに溶解してNMR測定用サンプルを調整し、これをNMR(「AVANCE500型」、ブルカー・バイオスピン社製)を用いて、H−NMRスペクトルの測定をノンデカップリングで行った。
【0154】
(繰り返し単位の分子構造の数の算出方法)
繰り返し単位の分子構造の数は、「高分子の核磁気共鳴(高分子学会高分子実験学編集委員会編 共立出版 282〜285ページ)」を参照して算出した。
【0155】
より具体的には、上記で得られたH−NMRスペクトルデータより、分子末端の水酸基に隣接するメチン部位、又はメチレン部位の水素原子(1H−NMRでの化学シフトの値:3.50〜3.80ppm)の積分値を1とした場合における、ポリカーボネート主鎖中のカーボネート基に隣接するメチン部位又はメチレン部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値:4.50〜4.80ppm又は4.00〜4.20ppm)の積分値の比が、前記式(3)及び前記式(A)中に示される繰り返し単位の分子構造数であるXとして示され、また同様に比較された積分値より、式(A−a)、式(A−b)中に示される繰り返し単位の分子構造数は、X、Xとして示される。
【0156】
(数平均分子量の算出方法)
本発明で得られた式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の数平均分子量は、前記にて算出された繰り返し単位の分子構造の個数(X、X又はX)と繰り返し単位の分子構造の分子量の積に、末端部分の分子構造の分子量を加味して算出される。例えば、式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールを2種以上使用した場合、得られたポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の数平均分子量は、上記のH-NMRスペクトル分析、並びに原料の仕込み量及び回収量から組成比を換算して算出した。
【0157】
<本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の熱的挙動の測定方法>
本発明で得られたポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の融点及びガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)により、測定温度範囲を−100〜150℃として測定を行った。
【0158】
<本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の粘度の測定方法>
本発明で得られたポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の粘度は、E型回転粘度計(「プログラマブルデジタル粘度計DV−II+」、ブルックフィールド社製)により測定した。
【0159】
<本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の末端水酸基純度の算出方法>
本発明では、得られたポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の末端基が水酸基である割合を、末端水酸基純度として算出した。この末端水酸基純度は、得られたH−NMRスペクトルデータより、末端水酸基に隣接するメチン部位或いはメチレン部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値:3.50〜3.80ppm)の積分値をA(メチレンの場合はA/2)、オレフィン部位の水素原子(1H−NMRでの化学シフトの値:5.20〜6.00ppm)の1プロトン分の積分値をB、分子末端のメチルカーボネート基のメチル基部位の水素原子(H−NMRでの化学シフトの値:3.65〜3.85ppm)の積分値をCとした場合において、A/(A+B+[C/3])で算出される値をさらに百分率(%)で示した値である。
【0160】
実施例1(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの合成)
撹拌装置、加熱装置、蒸留装置、及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに2,5−ヘキサンジオール62.77g(0.53mol)、ジメチルカーボネート47.85g(0.53mol)及び28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液20mgを入れ、大気圧下、アルゴン気流下、内温105℃〜110℃で1.5時間加熱撹拌した。次いで、反応で生じたメタノールを含む低沸点液を留出液温度65℃以下で蒸留にて留去させながら、内温100〜140℃で6.5時間加熱撹拌した。さらに内温を140℃に保ちながら、内圧を13.3kPaで12.5時間加熱撹拌を行い、メタノールを完全に蒸留にて留去した後、引き続き、内温130〜140℃、内圧0.4〜0.6kPaにして、22時間加熱撹拌を行い、未反応の2,5−ヘキサンジオールを蒸留にて留去した。反応終了後、得られた反応液に酢酸30mg、トルエン55gを加え、30分間撹拌させた後、純水で洗浄した有機層を濃縮し、淡黄色粘性液状物としてポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールを50.12g得た(下記反応式<1>)。
【0161】
【化51】

【0162】
得られたポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールは、H-NMRスペクトル分析から、数平均分子量及び末端水酸基純度を求め、また、示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定し、さらに、E型回転粘度計を用いて、温度75℃での粘度を測定した。その結果を以下に示す。
【0163】
数平均分子量:1300
末端水酸基純度:99.7%
融点:DSC測定からは確認不能
ガラス転移点:−18℃
粘度(75℃):2840mPa・sec
【0164】
実施例2(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの合成)
撹拌装置、加熱装置、蒸留装置、及び温度計を備えた内容積500mlのガラス製フラスコに2,5−ヘキサンジオール194.38g(1.64mol)、ジメチルカーボネート162.99g(1.81mol)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液70mgを入れ、大気圧下、アルゴン気流下、内温100℃で5.5時間加熱撹拌した。次いで、反応で生じたメタノールを含む低沸点液を留出液温度65℃以下で蒸留にて留去させながら、内温100〜140℃で7時間加熱撹拌した。さらに内温を140℃に保ちながら、内圧を13.3kPaで10時間加熱撹拌を行い、メタノールを完全に蒸留にて留去した後、引き続き、内温135〜140℃、内圧0.3〜0.6kPaにして、20時間加熱撹拌を行い、未反応の2,5−ヘキサンジオールを蒸留にて留去した。反応終了後、得られた反応液に酢酸100mg、トルエン200gを加え、1時間撹拌させた後、純水で洗浄した有機層を濃縮し、淡黄色粘性液状物としてポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールを183.42g得た(下記反応式<2>)。
【0165】
【化52】

【0166】
得られたポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールは、H-NMRスペクトル分析から数平均分子量、末端水酸基純度を求め、また、示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定し、さらに、E型回転粘度計を用いて、温度75℃での粘度を測定した。その結果を以下に示す。
【0167】
数平均分子量:1120
末端水酸基純度:99.9%以上
融点:DSC測定からは確認不能
ガラス転移点:−21℃
粘度(75℃):1800mPa・sec
【0168】
実施例3(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの合成)
撹拌装置、加熱装置、蒸留装置、及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フラスコにジ(プロピレングリコール)75.18g(0.56mol)、ジメチルカーボネート50.47g(0.56mol)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液30mgを入れ、大気圧下、アルゴン気流下、内温100℃で1時間加熱撹拌した。次いで、反応で生じたメタノールを含む低沸点液を留出液温度65℃以下で蒸留にて留去させながら、内温100〜140℃で4.5時間加熱撹拌した。更に内温を140℃に保ちながら、内圧13.3kPa〜2.0kPaで10時間加熱撹拌を行い、メタノールを完全に蒸留にて留去した後、引き続き、内温を135〜140℃、内圧0.4〜0.6kPaで、6時間加熱撹拌を行い、未反応のジ(プロピレングリコール)を蒸留にて留去した。反応終了後、得られた反応液に酢酸50mg、トルエン70gを加え、1時間撹拌させた後、純水で洗浄した有機層を濃縮し、無色粘性液状物として、ポリ(エーテル結合を有する分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールを61.13g得た(下記反応式<3>)。
【0169】
【化53】

【0170】
得られたポリ(エーテル結合を有する分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールは、水酸基価測定から数平均分子量、水酸基価測定及び1H−NMRスペクトル分析から末端水酸基純度を求め、また、示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点、を測定し、更に、E型回転粘度計を用いて、温度75℃での粘度を測定した。その結果を以下に示す。
【0171】
数平均分子量:1600
末端水酸基純度:99.9%以上
融点:DSC測定からは確認不能
ガラス転移点:−32℃
粘度(75℃):730mPa・sec
【0172】
実施例4(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの合成)
撹拌装置、加熱装置、蒸留装置、及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに1,4−ペンタンジオール48.91(0.470mol)、ジメチルカーボネート42.30g(0.470mol)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液20mgを入れ、大気圧下、アルゴン気流下、内温96.6〜98℃で1時間加熱撹拌した。次いで、反応で生じたメタノールを含む低沸点液を留出液温度65℃以下で蒸留にて留去させながら、内温を96.6〜140℃で4時間加熱撹拌した。さらに内温を140℃に保ちながら、内圧を13.3kPaで10.5時間加熱撹拌を行い、メタノールを完にして15.5時間加熱撹拌を行い、未反応の1,4−ペンタンジオールを蒸留にて留去全に蒸留にて留去した後、引き続き、内温125〜140℃、内圧0.1〜0.5kPaした。反応終了後、得られた反応液に酢酸50mg、トルエン50gを加え、1時間撹拌させた後、純水で洗浄した有機層を濃縮し、淡黄色粘性液状物としてポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールを32.45g得た(下記反応式<4>)。
【0173】
【化54】

【0174】
得られたポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールは、H-NMRスペクトル分析から数平均分子量及び末端水酸基純度を求め、また、示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定し、さらに、E型回転粘度計を用いて、温度75℃での粘度を測定した。その結果を以下に示す。
【0175】
数平均分子量:1200
末端水酸基純度:99.9%以上
融点:DSC測定からは確認不能
ガラス転移点:−35℃
粘度(75℃):1120mPa・sec
【0176】
実施例5(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)の合成)
撹拌装置、加熱装置、蒸留装置、及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに1,4−ペンタンジオール30.65g(0.294mol)、1,5−ペンタンジオール29.92g(0.287mol)、ジメチルカーボネート47.81g(0.53mol)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液20mgを入れ、大気圧下、アルゴン気流下、内温94℃で30分間加熱撹拌した。次いで、反応で生じたメタノールを含む低沸点液を留出液温度65℃以下で蒸留にて留去させながら、内温94〜140℃で4時間加熱撹拌した。さらに内温を140℃に保ちながら、内圧13.3kPaで3時間加熱撹拌を行い、メタノールを完全に蒸留にて留去した後、引き続き、内温130℃(内圧0.20kPa)で4時間、内温140〜150℃、内圧0.25〜0.28kPaにして3時間加熱撹拌を行い、未反応の1,4−ペンタンジオール及び1,5−ペンタンジオールを蒸留にて留去した。反応終了後、得られた反応液に酢酸50mg、トルエン50gを加え、1時間撹拌させた後、純水で洗浄した有機層を濃縮し、淡黄色粘性液状物としてポリ(分岐鎖状ブチレン−ペンタメチレン)カーボネートジオール共重合体を48.22g得た(下記反応式<5>)。
【0177】
【化55】

【0178】
得られたポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオール共重合体は、H-NMRスペクトル分析から数平均分子量及び末端水酸基純度を求め、また、示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定し、さらに、E型回転粘度計を用いて、温度75℃での粘度を測定した。その結果を以下に示す。
【0179】
数平均分子量:1290
末端水酸基純度:>99.9%
融点:DSC測定からは確認不能
ガラス転移点:−47℃
粘度(75℃):810mPa・sec
【0180】
実施例6(ポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体(II)の合成)
撹拌装置、加熱装置、蒸留装置、及び温度計を備えた内容積200mlのガラス製フラスコに2,5−ヘキサンジオール35.00g(0.296mol)、1,6−ヘキサンジオール35.04g(0.296mol)、ジメチルカーボネート53.40g(0.593mol)及びナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液10mgを入れ、大気圧下、アルゴン気流下、内温99〜100℃で1時間加熱撹拌した。次いで、反応で生じたメタノールを含む低沸点液を留出液温度65℃以下で蒸留にて留去させながら、内温100〜140℃で3時間加熱撹拌した。さらに内温140℃に保ちながら、内圧13.3kPaで6時間加熱撹拌を行い、メタノールを完全に蒸留にて留去した後、引き続き、内温129℃〜140℃、内圧0.40〜0.27kPaにして、3時間加熱撹拌を行い、未反応の2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールを蒸留にて留去した。反応終了後、得られた反応液に酢酸50mg、トルエン50gを加え、1時間撹拌させた後、純水で洗浄した有機層を濃縮し、淡黄色粘性液状物としてポリ(分岐鎖状ブチレン−直鎖状ヘキサメチレン)カーボネートジオール共重合体を62.5g得た(下記反応式<6>)。
【0181】
【化56】

【0182】
得られたポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオール共重合体は、H-NMRスペクトル分析から数平均分子量及び末端水酸基純度を求め、また、示差走査熱量計(DSC)分析により融点及びガラス転移点を測定し、さらに、E型回転粘度計を用いて、温度75℃での粘度を測定した。その結果を以下に示す。
【0183】
数平均分子量:1310
末端水酸基純度:>99.9%
融点:DSC測定からは確認不能
ガラス転移点:−46℃
粘度(75℃):900mPa・sec
【0184】
上記実施例1〜6より、本発明で得られたポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、いずれも末端水酸基純度が高い化合物であることが確認された。これは、即ち、得られた生成物の分子末端がカーボネート基ではなく、例えば、前記式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールのように、分子末端が水酸基である構造を有するポリアルキレンカーボネートジオールであることを示している。
【0185】
さらに、本発明の製造方法で得られたポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、いずれもガラス転移点が室温(25℃)以下であることから、通常の作業環境下において、良好にハンドリングできる。
【0186】
<耐(アルカリ性)加水分解性試験>
実施例7
撹拌装置、加熱装置、及び温度計を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、2,5−ヘキサンジオールを用いて実施例1と同様の方法で得た、ポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオール(数平均分子量1740)0.90g、t−ブチルアルコール4.50g、及び0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.45gを入れ、大気圧下、内温75〜80℃で72時間加熱撹拌した。その際、ポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールが加水分解された割合の経時変化を測定するため、適宜サンプリングして、H-NMRスペクトル分析を行い、数平均分子量を算出した。その結果を表1に示す。
【0187】
【表1】

【0188】
*1:実施例7で使用したポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールの数平均分子量
*2:分子量減少=〔開始時の数平均分子量(1740)〕−〔各時間経過後の数平均分子量〕
【0189】
比較例1
撹拌装置、加熱装置、及び温度計を内容積20mlのガラス製フラスコに、2,5−ヘキサンジオールの代わりに1,4−ブタンジオールを使用して、実施例1と同様の方法で得た、ポリ(直鎖状ブチレン)カーボネートジオール(数平均分子量1770)0.90g、t−ブチルアルコール4.50g、及び0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液0.45gを入れ、大気圧下、内温75〜80℃で72時間加熱撹拌した。その際、ポリ(直鎖状ブチレン)カーボネートジオールが加水分解された割合の経時変化を測定するため、適宜サンプリングして、H-NMRスペクトル分析を行い、数平均分子量を算出した。その結果を表2に示す。
【0190】
【表2】

【0191】
*1:比較例1で使用したポリ(直鎖状ブチレン)カーボネートジオールの数平均分子量
*2:分子量減少=〔開始時の数平均分子量(1770)〕−〔各時間経過後の数平均分子量〕
【0192】
<耐(酸性)加水分解性試験>
実施例8
撹拌装置、加熱装置、及び温度計を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、実施例7で使用したものと同じポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオール(数平均分子量1740)1.00g、t−ブチルアルコール5.00g、及び0.1mol/L硫酸水溶液0.50gを入れ、大気圧下、内温75〜80℃で72時間加熱撹拌した。その際、ポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールが加水分解された割合の経時変化を測定するため、適宜サンプリングして、H-NMRスペクトル分析を行い、数平均分子量を算出した。その結果を表3に示す。
【0193】
【表3】

*1:実施例7で使用したものと同じポリ(分岐鎖状ブチレン)カーボネートジオールの数平均分子量
*2:分子量減少=〔開始時の数平均分子量(1740)〕−〔各時間経過後の数平均分子量〕
【0194】
比較例2
撹拌装置、加熱装置、及び温度計を備えた内容積20mlのガラス製フラスコに、比較例1で使用したものと同じポリ(直鎖状ブチレン)カーボネートジオール(数平均分子量1770)1.10g、t−ブチルアルコール5.50g、及び0.1mol/L硫酸水溶液0.55gを入れ、大気圧下、内温75〜80℃で72時間加熱撹拌した。その際、ポリ(直鎖状ブチレン)カーボネートジオールが加水分解された割合の経時変化を測定するため、適宜サンプリングして、H-NMRスペクトル分析を行い、数平均分子量を算出した。その結果を表4に示す。
【0195】
【表4】

【0196】
*1:比較例1で使用したものと同じポリ(直鎖状ブチレン)カーボネートジオールの数平均分子量
*2:分子量減少=〔開始時の数平均分子量(1770)〕−〔各時間経過後の数平均分子量〕
【0197】
実施例(表1及び表3)、並びに比較例(表2及び表4)の結果から、本発明の新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及び異なる2種以上の式(A)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、従来の直鎖状のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールよりも一定加熱時間経過後の数平均分子量の減少(分子量減少)が小さく、すなわち、耐加水分解性(耐酸性、耐アルカリ性)に優れる特長を有する。従って、上記の特徴から、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール、又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体を、例えば、ポリウレタンの製造用原料として使用した場合、従来のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールに見られたような、低い耐候性や低い耐劣化性の改善が期待される新規なポリウレタンを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明の新規なポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール及びポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、いずれも、耐熱安定性、耐加水分解性等に優れたポリアルキレンカーボネートジオールであることから、例えば、自動車分野、OA機器分野での外観用塗料、コート剤、接着剤等の構成材料として工業的に広く利用することができる。また、本発明のポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール又はポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体は、いずれも、例えば、ポリウレタン、又は熱可塑性エラストマー等の原料としても使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール。
【化1】

(式(1)中、
からRは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基、又は下記式(2)で示されるZ基を示す。
【化2】

[式(2)中、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmはメチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。]
Xは、Zを有するアルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。)
【請求項2】
異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体。
【化3】

(式(A)中、
からRは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基、又は下記式(2)で示されるZ基を示す。
【化4】

[式(2)中、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmはメチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。]
Xは、Zを有するアルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。)
【請求項3】
少なくとも1種の式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の式(B)で示される分子構造とを有するポリ(含分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体。
【化5】

(式(A)中、RからR及びXは、それぞれ前記式(1)のものと同義である)
【化6】

(式(B)中、Yは、式(B)で示されるメチレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。また、kは、メチレン基の個数を示し、1から12の整数を示す。)
【請求項4】
〔4〕 アルカリ金属化合物の存在下、式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、式(4)及び下記式(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートとを反応させる、式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの製造方法。
【化7】

(式(1)中、
からRは、水素原子、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基である。但し、RからRがすべて水素原子となる場合はない。
Zは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2〜12のアルキレン基、又は下記式(2)で示されるZ基を示す。
【化8】

[式(2)中、Lは、酸素原子;硫黄原子;カルボニル基;チオカルボニル基;アミド基(−CONH−、−NHCO−);スルホニル基;ホスホニル基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいビフェニレン基;ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる一つの連結基を示す。また、n及びmはメチレン基の個数を示し、1から6の整数を示す。]
Xは、Zを有するアルキレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。)
【化9】

(式(3)中、RからR及びZは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【化10】

(式(4)中、R及びRは、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基;ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい炭素数6〜14のフェニル基である。なお、RとRは、互いに同一、又はそれぞれ異なっていてもよい。)
【化11】

(式(5)中、RからR及びZは、前記式(1)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【請求項5】
カーボネートとして、少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートを使用する、請求項4に記載の式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属化合物の存在下、異なる2種以上の式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオールと、式(4)及び下記式(5)で示されるカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートとを反応させる、異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【化12】

(式(A)中、RからR、並びにZ及びXは、前記式(A)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【化13】

(式(3)中、RからR及びZは、前記式(3)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【化14】

(式(4)中、R及びRは、前記式(4)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【化15】

(式(5)中、RからR及びZは、前記式(5)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【請求項7】
カーボネートとして、少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートを使用する、請求項6に記載の異なる2種以上の式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【請求項8】
アルカリ金属化合物の存在下、少なくとも1種の式(3)で示される分岐鎖状アルキレンジオール、少なくとも1種の炭素数2〜12の直鎖状アルキレンジオール、及び式(4)、式(5)及び式(8)で示されるカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のカーボネートを反応させる、少なくとも1種の式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【化16】

(式(A)中、RからR及びXは、それぞれ前記(1)のものと同じである。)
【化17】

(式(B)中、Yは、式(B)で示されるメチレンカーボネート構造の繰り返し単位の個数を示し、1以上の任意の実数である。また、kは、メチレン基の個数を示し、1から12の整数を示す。)
【化18】

(式(3)中、RからR及びZは、前記式(3)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【化19】

(式(4)中、R及びRは、前記式(4)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【化20】

(式(5)中、RからR及びZは、前記式(5)に記載のものとそれぞれ同じである。)
【請求項9】
カーボネートとして、少なくとも1種の前記式(4)で示されるカーボネートを使用する、請求項8に記載の少なくとも1種の前記式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の前記式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【請求項10】
大気圧下、かつ反応液の液温150℃以下にて反応させて副生する、式(6)及び式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、その理論生成量(質量)に対して、まず70質量%以上を留去し、次いで、反応圧力を大気圧以下へと減圧して、残りの副生した前記アルコールを留去する、請求項5に記載の式(1)で示されるポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオールの製造方法。
【化21】

(式(6)中、Rは、前記式(4)に記載のものと同じである。)
【化22】

(式(7)中、Rは、前記式(4)に記載のものと同じである。)
【請求項11】
大気圧下、かつ反応液の液温150℃以下にて反応させて副生する、前記式(6)及び前記式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、その理論生成量(質量)に対して、まず70質量%以上を留去し、次いで、反応圧力を大気圧以下へと減圧し、残りの副生したアルコールを留去する、請求項7に記載の異なる2種以上の前記式(A)で示される分子構造を有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。
【請求項12】
大気圧下、かつ反応液の液温150℃以下にて反応させて副生する、前記式(6)及び前記式(7)で示されるアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコールを、その理論生成量(質量)に対して、まず70質量%以上を留去し、次いで、反応圧力を大気圧以下へと減圧し、残りの副生したアルコールを留去する、請求項9に記載の少なくとも1種の前記式(A)で示される分子構造と少なくとも1種の前記式(B)で示される分子構造とを有するポリ(分岐鎖状アルキレン)カーボネートジオール共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2012−214723(P2012−214723A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63202(P2012−63202)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】