説明

ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)樹脂系発泡成形体、及びその製造方法

【課題】 軽量化が改善されたP3HA樹脂系発泡成形体及び、その製造方法を提供すること。
【解決手段】 ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)からなる発泡粒子50体積%以上99体積%以下と、P3HAと異なる樹脂からなる発泡粒子1体積%以上50体積%以下とが略均一に混合し、互いに融着してなるP3HA樹脂系発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)を含んでなる樹脂系発泡成形体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物生産性脂肪族ポリエステルであるポリヒドロキシアルカノエートは、生分解性プラスチックとして知られ、特にポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(以下、P3HAと称す)は好気性、嫌気性何れの環境下でも分解性に優れ、通常の使用条件下での耐水性、耐水蒸気透過性、耐熱性に優れる。又、構成するモノマーの組成比を制御することで、融点、耐熱性、柔軟性といった物性を変化させることが可能であり、例えば、PHBHの場合、ポリエチレンからポリプロピレン並の、比較的軟質系の素材を得ることができる(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、P3HAは予備発泡の倍率調整が大変難しく、安定的に軽量化を図ることは難しい。また、耐熱性等の物性を改善するために変性剤を用いた場合においても、例えば、発泡倍率45倍以上の成形体を得ようとすると、成形時に発泡粒子が収縮する場合があり、安定的な軽量化が要求される用途への適用が困難となる場合や寸法安定性に問題がある場合があった。
【特許文献1】特開2000−319438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)にあって、定常的に、軽量化が改善されたP3HA系樹脂発泡成形体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、P3HA発泡粒子と他の樹脂からなる発泡粒子を略均一混合し、金型に充填し、加熱成形することで、P3HA発泡粒子からなる発泡成形体が有していた、軽量化の課題を解決しうる事を見出し本発明の完成に至った。
【0006】
即ち、本発明の第一は、 式(1)
[−O−CHR−CH2−CO−] (1)
(ここでRはCn2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される一種以上の単位からなる共重合体(以下、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート):略称はP3HA)からなる発泡粒子50体積%以上99体積%以下と、P3HAと異なる樹脂からなる発泡粒子1体積%以上50体積%以下とが略均一に混合され、互いに融着してなるP3HA樹脂系発泡成形体に関する。
【0007】
好ましい実施態様としては、
(1)前記P3HAが、変性剤を含んでなる、
(2)P3HAと異なる樹脂が、ポリ乳酸系樹脂、又は、ポリメタクリル酸メチル系樹脂である、
(3)P3HAが、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(以下、略称はPHBH)である、
(4)PHBHの共重合成分の組成中、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)が1mol%以上20mol%以下である、
前記記載のP3HA樹脂系発泡成形体に関する。
【0008】
本発明の第2は、P3HAからなる発泡粒子と、P3HAと異なる樹脂からなる発泡粒子とを金型に略均一に混合、充填し、次いで加熱成形してなる、請求項1〜5何れか一項に記載のP3HA樹脂系発泡成形体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、軽量化が改善された、P3HA系樹脂発泡成形体を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明においてポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)とは、式(1)で示される3−ヒドロキシアルカノエートよりなる繰り返し構造を有するポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(略称はP3HA)からなる組成物である。
[−CHR−CH2−CO−O−]………式(1)
ここで、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、n=1〜15の整数である。
【0012】
本発明におけるP3HAとしては、前記3−ヒドロキシアルカノエートのホモポリマー、またはnの異なる2種以上の3−ヒドロキシアルカノエート組み合わせからなる共重合体、つまりジ−コポリマー、トリ−コポリマー、テトラ−コポリマーなど、またはこれらホモポリマー及び共重合体から選ばれる2種以上のブレンド物が挙げられ、中でもn=1の3−ヒドロキシブチレート、n=2の3−ヒドロキシバリレート、n=3の3−ヒドロキシヘキサノエート、n=5の3−ヒドロキシオクタノエート、n=15の3−ヒドロキシオクタデカノエートなどのホモポリマー、又はこれら前記nが異なる3−ヒドロキシアルカノエート単位2種以上の組み合わせからなる共重合体、又はこれらのブレンド物が好ましく使用できる。P3HAとしては、n=1の3−ヒドロキシブチレートとn=3の3−ヒドロキシヘキサノエートの共重合体であるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)がより好ましく、さらにその組成比としては、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート=99/1〜80/20(mol/mol)であるのが更に好ましい。3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシヘキサノエート組成比が当該範囲内であると、高温に加熱せずとも加工できるため、加熱加工時の熱分解による分子量低下を抑制することが出来、また加熱加工時の再結晶化に多くの時間を要さない傾向にある。又、P3HAとしては、環境適合性の面から、植物系油脂を原料として、微生物から生産されるものが特に好ましく用いられる。
【0013】
本発明において、P3HAと異なる樹脂とは、特に、限定はなく公知の樹脂を使用することが出来る。例えば、ポリ乳酸系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、等の脂肪族ポリエステル系樹脂、澱粉や酢酸セルロース系樹脂等の天然高分子物、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂等の樹脂からなる発泡粒子が挙げられる。中でも、ポリ乳酸系樹脂、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル系樹脂を使用する事が、P3HAからなる発泡粒子と熱融着しやすいため好ましく、更には、ポリ乳酸系樹脂、ポリメタクリル酸メチル系樹脂を使用することが好ましい。特には、環境適合性、軽量化の改善という観点から、本発明のP3HA樹脂系発泡成形体としては、P3HAからなる発泡粒子とポリ乳酸系樹脂からなる発泡粒子からなることが好ましい。
【0014】
本発明におけるポリ乳酸系樹脂とは、例えば、とうもろこしやサツマイモ等の植物資源から得られる澱粉を酵素分解して得たグルコースを乳酸菌で発酵して乳酸とし、単量体単位として、樹脂中70重量%以上含有したものを言う。単量体単位として、乳酸を70重量%以上含んでいれば、乳酸のホモポリマーは勿論のこと、他のヒドロキシカルボン酸単位等との共重合体でも、他の樹脂とのブレンドでもよい。
【0015】
本発明のポリメタクリル酸メチル系樹脂とは、その組成としてはメタクリル酸メチル単量体単位70〜100重量%とメタクリル酸メチルと共重合可能な他の単官能不飽和単量体単位0〜30重量%、および、全単量体組成中、多官能性単量体0〜0.2ビニル基mol%とからなる。共重合可能な単官能不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロール等のヒドロキシル基含有のエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドがある。ニトリル類には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有単量体;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。
【0016】
本発明のP3HA樹脂系発泡成形体とは、前記P3HAからなる発泡粒子50体積%以上99体積%以下と、P3HAと異なる樹脂からなる発泡粒子1体積%以上50体積%以下とを略均一混合し互いに融着してなるものであり、両者の樹脂発泡粒子の混合割合は、目的に応じて適宜調整可能である。
【0017】
本発明で使用するP3HAを発泡させてなる発泡粒子は、例えば、以下のようにして製造する事ができる。まず基材樹脂であるP3HAを押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて加熱溶融混錬し、次いで円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などの本発明の発泡に利用しやすい粒子形状に成形することにより得られるP3HA樹脂粒子を使用する。粒子1個当たりの重量は0.1mg以上、好ましくは0.5mg以上が好ましい。0.1mg未満ではP3HA樹脂粒子自体の製造が困難な場合がある。
【0018】
又、耐熱性や発泡性といった物性を向上させるために、変性剤等を用い、樹脂変性を行うことも可能である。変性剤として、何ら限定されるものではないが、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、多価カルボン酸、多価アルコール、有機過酸化物、イソシアネート化合物等が挙げられ、反応性の点からイソシアネート化合物を好ましく使用することができる。イソシアネート化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであり、種類としては芳香族、脂環族、脂肪族系のイソシアネート等がある。例えば、芳香族イソシアネートとしてはトリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレン、トリフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、脂環族イソシアネートとしてはイソホロン、水素化ジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、脂肪族イソシアネートとしてはヘキサメチレン、リジンを骨格とするイソシアネート化合物等がある。更に、これらイソシアネート化合物を2種類以上組み合わせたものも使用可能であるが、汎用性、取扱い性、耐候性等からトリレン、ジフェニルメタン、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートが好ましく使用される。
【0019】
こうして得られたP3HA樹脂粒子を、分散剤とともに密閉容器内で水系分散媒に分散後、発泡剤を密閉容器内に導入し、該P3HA樹脂粒子の軟化温度以上に加熱し、必要で有れば発泡させる温度付近で一定の時間保持した後、密閉容器の一端を解放し、該P3HA樹脂粒子と水系分散媒とを密閉容器の圧力よりも低圧の雰囲気下に放出して、P3HA樹脂発泡粒子が製造される。
【0020】
前記分散剤としては、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、塩基性炭酸亜鉛等の無機物と、アニオン界面活性剤たとえば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ、ノルマルパラフィンスルフォン酸ソーダ等を組み合わせて使用される。無機物の量はP3HA樹脂100重量部に対して0.1〜3.0重量部、アニオン界面活性剤量はP3HA樹脂100重量部に対し0.001〜0.2重量部が通常である。また、分散媒としては経済性、取り扱い性の点から通常は水が好ましいが、これに限られたものではない。
【0021】
前記の発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、及びメチルエチルエーテル等のエーテル、モノクロルメタン、ジクロロメタン、ジクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、空気などの無機ガス、水等が挙げられるが、これらを少なくとも1種使用してもよい。環境適合性を考えるとハロゲン化炭化水素以外の発泡剤が好ましい。発泡剤の添加量は目的の予備発泡粒子の発泡倍率、発泡剤の種類、ポリエステル系樹脂の種類、樹脂粒子と分散媒の比率、容器の空間容積、含浸または発泡温度などによって異なるがP3HA樹脂粒子100重量部に対し、通常2〜10000重量部の範囲である。
【0022】
本発明のポリ乳酸系樹脂を発泡させてなる樹脂発泡粒子は例えば以下のようにして製造する事ができる。
【0023】
まず、ポリ乳酸系樹脂に発泡剤を含浸させるが、その方法としては、所望の発泡性が得られる発泡剤の存在下で、十分な圧力がかかる条件さえそろっていれば特に限定されるものではなく、水系、非水系のいずれでも含浸が可能である。
【0024】
発泡性を付与するために用いられる発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の炭化水素系発泡剤に加え、フロンガスも好適に用いることが可能であるが、上述同様に、環境適合性を考えるとハロゲン化炭化水素以外の発泡剤が好ましい。
【0025】
本発明のポリメタクリル酸メチル系樹脂を発泡させてなる樹脂発泡粒子は、例えば以下のようにして製造する事ができる。
【0026】
例えば、分解型発泡剤とメタクリル酸メチル系樹脂組成物を押出し機で溶融混練し、発泡させる方法、メタクリル酸メチル系樹脂組成物を押出し機で溶融させ、蒸発型発泡剤をシリンダー途中から直接圧注入し、混練、発泡させる方法、該メタクリル酸メチル系樹脂からなるペレットまたはビーズを押出し機または水系懸濁液中で蒸発型発泡剤を含浸させ、その含浸ペレットまたはビーズを水蒸気等で加熱しで発泡させる方法などが挙げられる。
【0027】
その他の樹脂からなる発泡粒子も公知の方法で製造する事ができる。
【0028】
本発明に使用する発泡粒子には、その要求性能を阻害しない範囲において、各種添加剤を加えても良い。ここで添加剤とは、たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料などの着色剤、可塑剤、滑剤、結晶化核剤、無機充填剤等目的に応じて使用できるが、中でも生分解性を有する配合剤が好ましい。添加剤としては、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素等の無機化合物や、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸バリウム等の脂肪酸金属塩、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などが挙げられるが、これらに限定された物ではない。また、発泡粒子の気泡径を調節する必要がある場合は気泡調整剤を添加する。気泡調整剤としては無機造核剤には、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレイ、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等があり、その使用量は通常0.005〜2重量部を添加する。
【0029】
以上のようにして得られた、P3HAからなる発泡粒子と、P3HAとは異なる樹脂からなる発泡粒子は、必要であれば加圧空気で加圧熟成して発泡粒子に発泡能を付与し、閉鎖しうるが密閉できない金型に、略均一に混合して、充填し、次いで、金型内に水蒸気を導入することにより、樹脂発泡粒子同士を加熱融着させ、P3HA樹脂系発泡成形体が製造される。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、実施例において「部」は重量基準である。本発明で使用した物質は以下の様に略した。
P3HA:ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)
PHBH:ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)
PLA:ポリ乳酸系樹脂
PMMA:ポリメタクリル酸メチル系樹脂
HH率:PHBH中のヒドロキシヘキサノエートのモル分率(mol%)
【0031】
<発泡粒子及び発泡成形体の発泡倍率測定法>
23℃のエタノールの入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて7日間放置した500個以上のPHBH発泡粒子、PLA発泡粒子、PMMA発泡粒子(発泡粒子群の重量W(g))及び、適当な大きさに切り出した発泡成形体を金網などを使用して沈め、エタノール水位上昇分より読みとられる発泡粒子群及び、成形体の容積V(cm3)としたときに、樹脂密度ρ(g/cm3)から次式で与えられる。
発泡倍率=V/(W/ρ)
【0032】
<発泡粒子及び発泡成形体の独立気泡率測定法>
マルチピクノメーター(ベックマン・ジャパン(株)社製)を用い、ASTM D−2856に準じて測定した。
【0033】
<PHBH発泡粒子の製造>
微生物として、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32(J.Bacteriol.,179,4821(1997))を用いて原料、培養条件を適宜調整して生産されたPHBH、HH率12mol%のPHBH(比重1.2g/ml)100重量部とポリイソシアネート化合物2重量部(日本ポリウレタン製、ミリオネートMR-200(イソシアネート基2.7〜2.8当量/モル))とをハンドブレンドした後、ニーダー付きφ35mm単軸押出成形機(笠松加工製ラボ万能押出機)でシリンダー温度145℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられた3mmφの小孔ダイより押し出されたストランドを、ペレタイザーでカットして粒重量5mg、融点135℃のPHBH樹脂組成物を作製した。
【0034】
該樹脂組成物100重量部を、4.5L耐圧容器に仕込んだ後、発泡剤としてイソブタン25重量部を添加、攪拌し、容器内温度が119℃となるまで昇温(発泡温度とする)後、容器内圧が1.8MPaの状態で1時間保持したのち、耐圧容器下部に設けた小孔ノズルを通して大気圧下に放出発泡し、発泡倍率が18倍、独立気泡率98%のPHBH発泡粒子を得た。
【0035】
<PLA発泡粒子の製造>
D体比率10%、数平均分子量10万、重量平均分子量21万のPLA(比重1.2g/ml)100重量部と、上記同様のポリイソシアネート化合物2重量部とを溶融混練し、水中カッターを用いて約1mm径のビーズ状樹脂組成物を作製した。次いで、ビーズ状樹脂組成物を各々42℃の温水中で15時間熟成・二次架橋した後、脱水、乾燥し、発泡剤含浸を行った。発泡剤含浸は、各熟成ビーズを各々10L回転ドラム型密閉容器に4.3kg仕込み、メタノール215g、イソブタン1720gを添加して、85℃にて3時間含浸を行い、常温で通気風乾して、発泡剤含浸したビーズ状樹脂組成物を得た。それを発泡スチロール用予備発泡機(ダイセン工業(株)製DYHL−300)にて発泡し、発泡倍率が35倍、独立気泡率98%のPLA発泡粒子を得た。
【0036】
<PMMA発泡粒子の製造>
攪拌機を具備した200Lオートクレーブに、イオン交換水111重量部、第三リン酸カルシウム1.8重量部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.036重量部を入れ攪拌し水懸濁液とした後、メタクリル酸メチル系樹脂粒子100重量部を加え、90℃まで昇温した。ブタン(i/n=60/40)9重量部、トルエン1重量部、シクロヘキサン1重量部を圧入した後、105℃まで昇温し5時間30分含浸して冷却した。得られた発泡性メタクリル酸メチル系樹脂粒子を予備発泡し発泡倍率50倍、独立気泡率98%のPMMA発泡粒子を得た。
【0037】
(実施例1)
PHBH発泡粒子75体積%とPLA発泡粒子25体積%とを予め混合し、混合した発泡粒子を300×400×30mmの金型に充填し、0.10〜0.32MPa(ゲージ)の水蒸気を金型に導入し、両者の発泡粒子を加熱、融着させ、発泡倍率23倍、独気率92%のP3HA系樹脂発泡成形体を得た。比較例1と比べると、発泡倍率の向上が得られ、軽量化した発泡成形体を得ることができた。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例2)
PHBH発泡粒子60体積%とPLA発泡粒子40体積%と、混合割合が異なる以外は、実施例1と同様に行った。水蒸気導入後、発泡倍率26倍、独気率91%のP3HA系樹脂発泡成形体を得た。比較例1と比べると、発泡倍率の向上が得られ、軽量化した発泡成形体を得ることができた。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例3)
PHBH発泡粒子75体積%とPMMA発泡粒子25体積%を用いた以外は、実施例1と同様に行った。水蒸気導入後、発泡倍率26倍、独気率93%のP3HA樹脂系発泡成形体を得た。比較例1と比べると、発泡倍率の向上が得られ、軽量化した発泡成形体を得ることができた。結果を表1に示す。
【0040】
(実施例4)
PHBH発泡粒子60体積%とPMMA発泡粒子40体積%と、混合割合が異なる以外は、実施例1と同様に行った。水蒸気導入後、発泡倍率33倍、独気率92%のP3HA樹脂系発泡成形体を得た。比較例1と比べると、発泡倍率の向上が得られ、軽量化した発泡成形体を得ることができた。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例1)
PHBH樹脂発泡粒子のみを用いた以外は、実施例1と同様に行った。水蒸気導入後、発泡倍率18倍、独気率92%のP3HA樹脂系発泡成形体を得た。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
[−O−CHR−CH2−CO−] (1)
(ここでRはCn2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される一種以上の単位からなる共重合体(以下、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート):略称はP3HA)からなる発泡粒子50体積%以上99体積%以下と、P3HAと異なる樹脂からなる発泡粒子1体積%以上50体積%以下とが略均一に混合され、互いに融着してなるP3HA樹脂系発泡成形体。
【請求項2】
前記P3HAが、変性剤を含んでなる請求項1記載のP3HA樹脂系発泡成形体。
【請求項3】
P3HAと異なる樹脂が、ポリ乳酸系樹脂、又は、ポリメタクリル酸メチル系樹脂である請求項1または2に記載のP3HA樹脂系発泡成形体。
【請求項4】
P3HAが、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(以下、略称はPHBH)である請求項1〜3何れか一項に記載のP3HA樹脂系発泡成形体。
【請求項5】
PHBHの共重合成分の組成中、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)が1mol%以上20mol%以下である請求項4に記載のP3HA樹脂系発泡成形体。
【請求項6】
P3HAからなる発泡粒子と、P3HAと異なる樹脂からなる発泡粒子とを金型に略均一に混合、充填し、次いで加熱成形してなる、請求項1〜5何れか一項に記載のP3HA樹脂系発泡成形体の製造方法。

【公開番号】特開2007−291159(P2007−291159A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117619(P2006−117619)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】