説明

ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物及びそれからなるトレイ

【課題】 耐衝撃性、耐熱性、熱成形性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物及びそれからなるトレイを提供する。
【解決手段】ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、タルク、熱可塑性ポリウレタン及び重量平均分子量(0.03重量%テトラヒドロフラン溶液、38℃の条件下のゲルパーミエイションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値。)が0.5×10以上のメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体からなるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物及びそれよりなるトレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性、耐熱性及び熱成形性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物及びそれからなるトレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物由来のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は植物を原料として得られることから、環境負荷の少ない材料として近年注目を集めている。しかしながら、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、熱成形時に偏肉、離型不良が発生したり、耐衝撃性に劣るためトレイ等に代表される容器として使用するには制限があった。
【0003】
そこで、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体にポリブチレンサクシネート共重合体、炭酸カルシウムをブレンドした生分解性容器が提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の耐衝撃性を改良するため特定の熱可塑性ポリウレタンと混合することが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−341771号公報
【特許文献2】特開2006−137854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案の生分解性容器は、耐衝撃性に劣るため、例えば食品トレイとして使用する際、食べ物に破片が混入する等の課題があった。また、特許文献2に提案の樹脂組成物は、耐衝撃性には優れるものの真空成形性に劣り、トレイ等に代表される容器とする際の加工性に課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体に特定の添加剤を添加したポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物が、耐衝撃性、耐熱性及び熱成形性に優れ、各種容器として展開をはかることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、タルク、熱可塑性ポリウレタン及び重量平均分子量(0.03重量%テトラヒドロフラン溶液、38℃の条件下のゲルパーミエイションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値。)が0.5×10以上のメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体からなるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物及びそれからなるトレイに関するものである。
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えばポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエート共重合体、等が挙げられ、共重合体である場合の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートとしては、例えば3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシバレレート、3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシヘプタノエート、3−ヒドロキシオクタノエート、3−ヒドロキシノナノエート、3−ヒドロキシデカノエート、3−ヒドロキシウンデカノエート、4−ヒドロキシブチレート、ヒドロキシラウリレートが挙げられる。中でも、耐熱性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物となることからポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体、3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体、3−ヒドロキシブチレート/4−ヒドロキシブチレート共重合体であることが好ましい。また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体中の3−ヒドロキシブチレート以外のヒドロキシアルカノエートの共重合成分量としては、0〜20モル%であることが好ましく、特に0〜10モル%がより好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の融点は、特に耐熱性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物となることから160〜190℃であることが好ましく、特に165〜180℃であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に用いるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、機械的強度、成形加工性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物となることから、クロロホルムに溶解し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が100000〜3000000であることが好ましく、特に120000〜1000000であることが好ましい。
【0012】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、市販品として入手することが可能である。また、その製造方法としては、例えば米国特許4477654号公報、国際公開特許94/11519号公報、米国特許5502273号公報に記載されている方法等により入手することも可能である。
【0013】
本発明に用いるタルクは、特に制限は無く、タルクの範疇に属するかぎりいかなるものも用いることができ、例えばタルク原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕し、更にミクロンミル、ジェット型粉砕機で微粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレーター等で分級調整して製造したものが挙げられる。そして、タルクとしてはその取り扱い性に優れるとともに、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物を成形加工した際の製品外観に優れる成形体を製造することが可能となることから、メジアン径0.1〜10μmのタルクであることが好ましく、特に0.5〜6μmのタルクであることが好ましい。
【0014】
また、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体への分散性に優れることから表面処理を施されたタルクであることが好ましく、表面処理材としては、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のシランカップリング剤;イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート等のチタネートカップリング剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸及びその金属塩;アルミニウム系カップリング剤;クロム系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤;ボラン系カップリング剤;エポキシ等を挙げることができ、特にエポキシ表面処理タルク、シランカップリング剤表面処理タルクが好ましい。
【0015】
該タルクの添加量としては、本発明の目的を達成できる限りにおいて制限はなく、特にポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物の結晶化が速くなり成形加工性に優れたものとなるとともに、耐衝撃性にも優れたものとなることからポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し1〜100重量部の範囲であることが好ましく、特に3〜80重量部であることが好ましい。
【0016】
本発明に用いる熱可塑性ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンの範疇に属するものであればいかなるものでもよく、該熱可塑性ポリウレタンとは一般的にハードセグメントとソフトセグメントをウレタン結合により結合したブロック共重合体である。そして、該熱可塑性ポリウレタンとしては、例えばポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン、アクリル系熱可塑性ポリウレタン、フェノールレジン系熱可塑性ポリウレタン、エポキシ系熱可塑性ポリウレタン、ブタジエン系熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル−ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンなどが挙げられ、その中でも特に耐衝撃性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物となることから、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンまたはポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンであることが好ましい。また、該熱可塑性ポリウレタンとしては、例えば市販品である(商品名)ミラクトランE185(日本ミラクトラン(株)製)、(商品名)ミラクトランE190(日本ミラクトラン(株)製)を用いてもよい。
【0017】
該熱可塑性ポリウレタンの添加量としては、本発明の目的を達成できる限りにおいて制限はなく、特に耐衝撃性、成形加工性、剛性のバランスに優れたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物となることからポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、1〜100重量部の範囲であることが好ましく、さらに3〜70重量部の範囲であることが好ましく、特に5〜60重量部の範囲であることが好ましい。
【0018】
本発明に用いるメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体は、重量平均分子量が0.5×10以上のメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体であり、特に成形加工性に優れるポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物となることから重量平均分子量1×10以上、更に1.5×10以上のメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体であることが好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量とは、0.03重量%テトラヒドロフラン溶液、38℃の条件下のGPCによるポリスチレン換算値である。
【0019】
該メチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体としては、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体との相溶性、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体への分散性に優れることからメチルメタクリレート残基単位の含有量が50〜95重量%、アルキルアクリレート残基単位の含有量が5〜50重量%からなることが好ましく、また必要に応じて第3成分として上記2成分と共重合可能な単量体残基単位を含んでいてもよく、その含有量は45重量%以下であることが好ましい。
【0020】
該メチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体を構成するアルキルアクリレート残基単位としては、炭素数1〜10のアルキル基を有するアクリレート残基であることが好ましく、例えばメチルアクリレート残基単位、エチルアクリレート残基単位、n−ブチルアクリレート残基単位、イソブチルアクリレート残基単位、2−エチルヘキシルアクリレート残基単位、クロロエチルアクリレート残基単位等が挙げられ、特にエチルアクリレート残基単位、n−ブチルアクリレート残基単位が好ましい。また、必要に応じて第3成分として含有される上記2成分と共重合可能な単量体残基単位としては、スチレン残基単位等の芳香族ビニル残基単位;アクリロニトリル残基単位等の不飽和ニトリル残基単位;酢酸ビニル残基単位等のビニルエステル残基単位;n−ブチルメタクリレート残基単位等のメチルメタクリレート残基単位以外のメタクリル酸エステル残基単位等が挙げられ必要に応じてこれらの1種または2種以上が用いられる。また、ジビニルベンゼン残基単位、エチレングリコールジメタクリレート残基単位などの多官能性モノマー残基単位を用いても良いが、この場合の使用量は2重量%以下が好ましい。そして、該メチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体としては、具体的にはメチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、メチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0021】
該メチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体は、例えば特開昭57−74347号公報、特開昭50−123761号公報、特開昭50−123763号公報、特公昭40−5311号公報、特公昭46−1865号公報等に記載されている方法により製造することが可能である。また、(商品名)メタブレンP(三菱レーヨン株式会社製)、(商品名)クレハパラロイドK−Pシリーズ(呉羽化学工業株式会社製)等の市販品として入手することも可能である。
【0022】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物を構成するメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体の添加量は、本発明の目的を達成できる限りにおいて制限はなく、その中でも、熱成形性、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体への分散性に優れたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物となることから、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し0.1〜30重量部の範囲であることが好ましく、0.5〜20重量部の範囲であることがより好ましく、特に1〜15重量部の範囲が好ましい。
【0023】
また、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物は、耐熱性、特に耐熱変色性を向上させるため安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物、ヒドロキシアクリレート系化合物、硫黄含有化合物、スズ系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシルアミン系化合物、ビタミンE系化合物、アリルアミン系化合物、アミン−ケトン系化合物、芳香族第二級アミン系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、ベンツイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物、有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量は特に制限なくポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0024】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物には、例えば染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、紫外線吸収剤、発泡剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等の公知の添加剤を加えることができる。また、無機充填材及び/又は有機充填材を添加してもよい。また、分散性を高めるために、表面改質された無機充填材を用いることも可能である。無機充填材及び/又は有機充填材の添加量は特に制限なくポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体100重量部に対し、0.1〜100重量部が好ましく、特に3〜50重量部が好ましい。
【0025】
さらに、熱可塑性エラストマー、ゴム、熱可塑性樹脂、特に生分解性樹脂と称される熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。
【0026】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物の製造方法としては、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物を製造することが可能であればいかなる方法も用いることが可能であり、ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、タルク、熱可塑性ポリウレタン及びメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体、更に必要に応じ安定剤、難燃剤、添加剤等を、例えば溶液混合、溶融混合等の混合方法により製造することが可能であり、その中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。
【0027】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は120〜200℃が好ましく、特に好ましくは150〜190℃である。特に押出機を使用する際には、押出機のダイから吐出する溶融樹脂組成物の温度が160℃以上185℃以下になるように温度設定することが好ましい。
【0028】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物は、耐衝撃性、耐熱性、熱成形性に優れることから各種用途用成形体として用いることが可能であり、その中でも、熱成形性に優れることからトレイに代表される容器として用いることが適したものとなる。
【0029】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物をトレイとする際の成形方法に特に制限は無く、射出成形、押出成形、トランスファー成形、インフレーション成形、ブロー成形、加熱成形、圧縮成形、熱成形等の通常の熱可塑性樹脂の成形方法を用いることができる。中でも生産性に優れることから、本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物からなるシートを成形した後に熱成形によりトレイとすることが好ましい。その際の熱成形法としては、例えばフリードローイング法、リッジフォーミング法、プラグアンドリング成形法、スリップ成形法、真空成形法、圧空成形法、マッチドモールド成形法等の成形法が挙げられる。中でも真空成形法が好ましく、真空成形法としては、例えば直接法、ドレイプ成形法、エア・スリップ法、スナップバック法、プラグ・アシスト法、エア・クッション法等が挙げられる。
【0030】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物からなるトレイは、例えば食品用トレイ、電気部品用トレイ、機械部品用トレイ等の各種トレイとして使用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物は、耐衝撃性、耐熱性、熱成形性に優れるものであり、各種用途、特に該ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物よりなるトレイは、各種分野において適応できるものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0033】
評価・分析に用いた機器及び方法を以下に示す。
【0034】
〜ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体の重量平均分子量の測定〜
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体は、60℃のクロロホルムに2時間溶解して得られた溶解成分のみを用いて、GPCによる分子量測定を行った。尚、重量平均分子量は標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。測定条件を以下に示す。
【0035】
機種:商品名HLC8020GPC(東ソー(株)製)
溶媒:クロロホルム
サンプル溶解条件:60℃、2時間
カラム温度:40℃
測定濃度:50mg/50mL
注入量:100μL
カラム:商品名TSKgel GMHHR−H(東ソー(株)製)2本
〜メチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体の重量平均分子量の測定〜
GPC測定はHLC−802A(東ソー(株)製)を用い、カラムはTSK−GEL GMHXL(内径7.8mm、長さ300mm、東ソー(株)製)を直列に2本接続し、カラム温度38℃、流量0.9ml/分、0.03重量%テトラヒドロフラン溶液の条件で行い、ポリスチレン換算値として算出した。
【0036】
〜試験片の準備〜
耐衝撃性、耐熱性の評価に用いた試験片は、射出成形機(東芝機械プラスチック社製、商品名IS100E)を用い、ノズル温度175℃、射出時間10秒、金型温度60℃の条件で準備した。
【0037】
成形性の評価に用いた試験片は、厚さ1mmのシートであり圧縮成形機(神藤工業(株)製、50t自動圧縮成形機)を用いて準備した。成形は、185℃で5分間加熱した後、40℃で5分間冷却して行った。
【0038】
〜耐衝撃性の測定法〜
射出成形で得られたノッチ付きIzod試験片を用いて23℃におけるIzod衝撃強度をASTM D 256に従い測定した。衝撃はノッチ側から与えた。
【0039】
〜耐熱性の測定〜
射出試験片を用いて、JIS K 7191(B法)に従い、加重たわみ温度(以下、HDTと言う。)を測定した。
【0040】
〜真空成形性の評価〜
真空成形は、真空圧空成形機(浅野研究所製)を用いて、直径10cm、深さ2cmのトレイ用金型を用いて行った。
【0041】
成形性の評価は以下の通りに行った。
○:成形性良好、×:成形不良
参考例1
攪拌機および還流冷却器付き反応器に、イオン交換水280重量部、アルケニルコハク酸カリウム1.5重量部、過硫酸アンモニウム2重量部、メチルメタクリレート75重量部、n−ブチルアクリレート25重量部を仕込み、該反応器内を窒素で置換した後、攪拌下、反応温度65℃、反応時間4時間で重合反応を行いメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体を得た。
【0042】
得られたメチルアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体は、重量平均分子量4.2×10を有するものであった。
【0043】
参考例2
攪拌機および還流冷却器付き反応器に、イオン交換水280重量部、アルケニルコハク酸カリウム1.5重量部、過硫酸アンモニウム2重量部、メチルメタクリレート35重量部、n−オクチルメルカプタン0.002重量部を仕込み、該反応器内を窒素で置換した後、攪拌下、反応温度65℃、反応時間4時間で重合反応を行った後、さらにメチルメタクリレート40重量部、n−ブチルアクリレート25重量部を仕込み、攪拌下、反応温度65℃、反応時間2時間で重合反応を行いメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体を得た。
【0044】
得られたメチルアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体は、重量平均分子量3.2×10を有するものであった
参考例3
攪拌機および還流冷却器付き反応器に、イオン交換水280重量部、アルケニルコハク酸カリウム1.5重量部、過硫酸アンモニウム2重量部、メチルメタクリレート35重量部、n−オクチルメルカプタン0.006重量部を仕込み、該反応器内を窒素で置換した後、攪拌下、反応温度65℃、反応時間4時間で重合反応を行った後、さらにメチルメタクリレート40重量部、n−ブチルアクリレート25重量部を仕込み、攪拌下、反応温度65℃、反応時間2時間で重合反応を行いメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体を得た。
【0045】
得られたメチルアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体は、重量平均分子量2.0×10を有するものであった
参考例4
攪拌機および還流冷却器付き反応器に、イオン交換水280重量部、アルケニルコハク酸カリウム1.5重量部、過硫酸アンモニウム2重量部、メチルメタクリレート35重量部、n−オクチルメルカプタン0.01重量部を仕込み、該反応器内を窒素で置換した後、攪拌下、反応温度65℃、反応時間4時間で重合反応を行った後、さらにメチルメタクリレート40重量部、n−ブチルアクリレート25重量部を仕込み、攪拌下、反応温度65℃、反応時間2時間で重合反応を行いメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体を得た。
【0046】
得られたメチルアクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体は、重量平均分子量3.1×10を有するものであった。
【0047】
実施例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部に対して、タルク(日本タルク(株)製、商品名SG−2000、表面エポキシ変性、メジアン径1.0μm)15重量部、熱可塑性ポリウレタン(日本ミラクトラン社製、商品名ミラクトランE185)40重量部、参考例1により得られたメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体7重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0048】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを用いて、トレイを成形するとともに、成形性、耐衝撃性、耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT100、重量平均分子量290000)100重量部に対して、タルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)5重量部、熱可塑性ポリウレタン(日本ミラクトラン社製、商品名ミラクトランE190)25重量部、参考例1により得られたメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体3重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0050】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを用いて、トレイを成形するとともに、成形性、耐衝撃性、耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例3
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部に対して、タルク(日本タルク(株)製、商品名SG−2000、表面エポキシ変性、メジアン径1.0μm)5重量部、熱可塑性ポリウレタン(日本ミラクトラン社製、商品名ミラクトランE185)10重量部、参考例2により得られたメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体7重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0052】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを用いて、トレイを成形するとともに、成形性、耐衝撃性、耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部に対して、タルク(日本タルク(株)製、商品名P−3、表面エポキシ変性、メジアン径5.1μm)40重量部、熱可塑性ポリウレタン(日本ミラクトラン社製、商品名ミラクトランE185)55重量部、参考例3により得られたメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体12重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0054】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを用いて、トレイを成形するとともに、成形性、耐衝撃性、耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部に対して、タルク(日本タルク(株)製、商品名SG−2000、表面エポキシ変性、メジアン径1.0μm)15重量部、参考例1により得られたメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体7重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0056】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを用いて、成形性、耐衝撃性、耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物は耐衝撃性に劣るものであった。また、トレイの成形を試みたが成形不良を示した。
【0058】
比較例2
3−ヒドロキシブチレート/3−ヒドロキシバレレート共重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT100、重量平均分子量290000)100重量部に対して、熱可塑性ポリウレタン(日本ミラクトラン社製、商品名ミラクトランE190)10重量部、参考例1により得られたメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体7重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0059】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを用いて、成形性、耐衝撃性、耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物は耐衝撃性に劣るものであった。また、トレイの成形を試みたが成形不良を示した。
【0061】
比較例3
ポリ3−ヒドロキシブチレート単独重合体(Tianan Biologic Material社製、商品名ENMAT200;重量平均分子量660000)100重量部に対して、タルク(日本タルク(株)製、商品名SG−2000、表面エポキシ変性、メジアン径1.0μm)40重量部、熱可塑性ポリウレタン(日本ミラクトラン社製、商品名ミラクトランE185)10重量部、参考例4により得られたメチルメタクリレート−n−ブチルアクリレート共重合体7重量部をドライブレンドした後、二軸押出し機((株)東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて溶融混合を行いポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを得た。その際の溶融混合は、シリンダー温度175℃、ダイス温度165℃、スクリュー回転数80rpmで行った。
【0062】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物ペレットを用いて、成形性、耐衝撃性、耐熱性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
得られたポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物は耐衝撃性に劣るものであった。また、トレイの成形を試みたが成形不良を示した。
【0064】
【表1】

実施例6
実施例1で得られたトレイに水50ccを入れ、電子レンジで1分間加熱した。取出した容器を観察したところ、外観に変化は無く、十分にトレイとして使用できるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体、タルク、熱可塑性ポリウレタン及び重量平均分子量(0.03重量%テトラヒドロフラン溶液、38℃の条件下のゲルパーミエイションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値。)が0.5×10以上のメチルメタクリレート−アルキルアクリレート共重合体からなることを特徴とするポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリ3−ヒドロキシブチレート系重合体組成物からなることを特徴とするトレイ。

【公開番号】特開2008−189862(P2008−189862A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27663(P2007−27663)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】