説明

ポンプおよびポンプの組立方法

【課題】接続配管の取付けおよび取外しが容易であり、製作の手間を減らすことが可能なポンプを提供する。
【解決手段】バランス配管31は、ケーシング7に設けられて吸込口側に連通する吸込側部材39と、ケーシング8に設けられて吐出口側に連通する吐出側部材40と、吸込側部材39と吐出側部材40との間に接続された接続配管41とを有し、吸込側部材39と吐出側部材40とはそれぞれ接続配管41の端部が差込まれる差込部を有し、吐出側部材40の差込部は、バランス配管31の組立後に接続配管41を長さ方向Bへ移動可能にする移動スペース57を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランス配管を備えたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば多段輪切型ポンプにおいては、図21に示すように、吐出側から吸込側への軸方向推力F1が主軸121に作用するため、軸方向推力F1に対して反対方向のバランス推力F2を発生させて軸方向推力F1とバランス推力F2とを釣り合わせるバランス機構122が備えられている。
【0003】
バランス機構122は、主軸121に設けられたバランスディスク123と、ケーシング124に設けられてバランスディスク123に対向するバランスシート125と、バランス配管131とを有している。
【0004】
ケーシング124は吸込ケーシング139と吐出ケーシング140とを有している。また、ケーシング124内には、吸込口126に連通する吸込側室127と、バランス機構122の軸受箱128側に位置するバランス室129と、バランス室129に連通する吐出側室130とが形成されている。
【0005】
バランス配管131は、吸込側室127内の圧力と吐出側室130内の圧力とを均衡させるものであり、接続配管132と、接続配管132の両端部に設けられた接続用のフランジ133,134とを有している。一方のフランジ133は複数のボルト135により吸込ケーシング139に取り付けられ、他方のフランジ134は複数のボルト136により吐出ケーシング140に取り付けられている。
【0006】
尚、一方のフランジ133と吸込ケーシング139との間および他方のフランジ134と吐出ケーシング140との間にはそれぞれガスケット等のシール材(図示省略)が挟まれている。これにより、バランス室129は、吐出側室130、バランス配管131、および、吸込側室127を介して、吸込口126に連通する。
【0007】
ポンプ120を稼動している際、回転する羽根車138の前後(すなわち吸込側と吐出側)における圧力差に起因して、吐出側から吸込側への軸方向推力F1が主軸121に作用するが、この軸方向推力F1に対して反対方向のバランス推力F2がバランスディスク123に作用し、軸方向推力F1とバランス推力F2とが釣り合うことで軸方向推力F1が打ち消される。
【0008】
このとき、最終段の羽根車138を通過した液体の一部は、バランス室129、吐出側室130、バランス配管131、吸込側室127を流れて、吸込口126から流入した液体と合流する。これにより、バランス室129内の圧力がポンプ120の吸込圧力とほぼ同一となり、バランスディスク123の前後に生じる圧力差によってバランス推力F2が発生し、軸方向推力F1と釣り合うバランス推力F2が得られる。
【0009】
上記のようなバランス配管131を備えた多段輪切型ポンプは下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−205165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、接続配管132はフランジ133,134とボルト135,136とによりケーシング124に取付けられているため、接続配管132の取付けおよび取外しに手間を要するといった問題がある。
【0012】
また、ポンプ120を製作する際、バランス配管131の両フランジ133,134の面間距離Gを正確に保つ必要があるため、製作時の寸法精度を上げなければならず、ポンプ120の製作に手間を要するといった問題がある。
【0013】
本発明は、接続配管の取付けおよび取外しが容易であり、また、製作の手間を減らすことが可能なポンプおよびポンプの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本第1発明は、流体の吸込口と吐出口を備えたケーシングと、ケーシング内に回転自在に支持される主軸と、主軸に装着される羽根車と、主軸に生じる軸方向推力を軽減するバランス配管を備えた推力バランス装置付きのポンプであって、
バランス配管は、ケーシングに設けられて吸込口側に連通する吸込側部材と、ケーシングに設けられて吐出口側に連通する吐出側部材と、吸込側部材と吐出側部材との間に接続された接続配管とを有し、
吸込側部材と吐出側部材とはそれぞれ接続配管の端部が差し込まれてシール材でシールされる差込部を有し、
吸込側部材と吐出側部材とのいずれか一方の差込部は、バランス配管の組立後に接続配管を長さ方向へ移動可能にする移動スペースを有しているものである。
【0015】
これによると、接続配管の一端部を吐出側部材の差込部に差し込み、接続配管の他端部を吸込側部材の差込部に差し込むことにより、接続配管が吸込側部材と吐出側部材との間に容易に接続される。
【0016】
また、接続配管の他端部を吸込側部材の差込部から脱抜し、接続配管の一端部を吐出側部材の差込部から脱抜することにより、接続配管が吸込側部材と吐出側部材との間から容易に取外される。
【0017】
また、吸込側部材と吐出側部材とのいずれか一方の差込部は移動スペースを有しているため、接続配管の長さや吸込側部材と吐出側部材との間隔に多少のばらつきがあっても、接続配管の一端部を吐出側部材の差込部に差し込み、接続配管の他端部を吸込側部材の差込部に差し込んで、接続配管を取り付けることができる。
【0018】
この際、上記のような接続配管の長さや吸込側部材と吐出側部材との間隔のばらつきは移動スペースにて吸収され、これにより、製作時、接続配管の全長の寸法精度や吸込側部材と吐出側部材との位置精度を上げる必要はなく、ポンプの製作組立の手間を減らすことができる。
【0019】
また、本第2発明におけるポンプは、接続配管を移動スペース分移動させると、
接続配管は、移動スペースを有する一方の差込部とは異なる他方の差込部より脱抜可能であるものである。
【0020】
これによると、接続配管の一端部が吐出側部材の差込部に差し込まれ、接続配管の他端部が吸込側部材の差込部に差し込まれた状態で、接続配管を、一方の差込部の移動スペースの奥へ移動させることにより、移動スペースを有していない他方の差込部から脱抜することができる。その後、接続配管を、反対方向に移動させて、移動スペースを有する一方の差込部から脱抜する。これにより、接続配管を容易に吐出側部材と吸込側部材とから取外すことができる。
【0021】
また、接続配管を取付ける場合は、接続配管を、一方の差込部の移動スペースの奥まで差し込む。その後、接続配管を、反対方向に移動させて、他方の差込部に差し込む。これにより、接続配管を容易に吐出側部材と吸込側部材とに取付けることができる。
【0022】
また、本第3発明におけるポンプは、移動スペースを有する差込部は吐出側部材に備えられているものである。
これによると、バランス配管をケーシングに取付け、ポンプを運転しているとき、ケーシング内を吸込側から吐出側へ流れている流体の一部は、吐出側部材から接続配管を流れ、接続配管から吸込側部材へ流れる。この際、流体の流れと接続配管との摩擦力および流体の圧力は吐出側が吸込側より高いことから、接続配管には吐出側から吸込側へ向う一方向の力が作用する。
【0023】
したがって、上記一方向の力に逆らって接続配管が吸込側から吐出側へ不用意に移動することはなく、接続配管の一端部が吐出側部材の移動スペースの奥まで達することはない。これにより、接続配管が運転中に移動スペースの奥まで吐出側へ不用意に移動して接続配管が吸込側部材から外れてしまうのを防止することができる。
【0024】
また、本第4発明におけるポンプは、バランス配管の組立後に接続配管の長さ方向への移動を制限する移動制限部材が備えられているものである。
これによると、移動制限部材によって接続配管の長さ方向への移動が制限されるため、接続配管が吸込側および吐出側部材から脱落するのを防止することができる。
【0025】
また、本第5発明におけるポンプは、差込部は差込孔であり、
接続配管の端部がシール材に挿入され、
シール材は、接続配管の端部外周面と差込孔の内周面との間に挿入され、挿入方向における先端部ほど薄い楔状の断面を有する環形状に形成され、押し部材によって挿入方向へ押圧されており、
シール材の内周に、挿入方向における先端側に位置し且つ一定の内径を有するストレート面と、ストレート面から挿入方向とは反対側の基端部に向かって次第に拡径するテーパー面とが形成されているものである。
【0026】
これによると、シール材は楔状の断面を有するので、シール材を接続配管の端部外周面と差込孔の内周面との間に強固に挿入することができ、シール性が向上する。
また、シール材の外周面が差込孔の内周面に圧接すると共に、シール材の内周面が接続配管の端部外周面に圧接する。この際、接続配管の端部外周面に対するシール材のストレート面の面圧がテーパー面の面圧よりも高くなるので、シール性がさらに向上する。また、ストレート面はテーパー面よりも強く接続配管の端部外周面に圧接するため、接続配管が固定され、接続配管が不用意に長さ方向へ移動するのを防止することができる。
【0027】
また、本第6発明におけるポンプは、吐出側部材は、ケーシングに形成された吐出側挿入部に、挿脱自在に差し込まれ、
バランス配管を支持する支持部材がケーシングに設けられているものである。
【0028】
これによると、支持部材を設けることでバランス配管がケーシングから外れるのを防止することができる。吐出側部材はケーシングの吐出側挿入部に差し込まれており、このようにケーシングへの吐出側部材の取付方式を差込式にすることにより、ケーシングへのバランス配管の取付が容易となる。
【0029】
また、本第7発明におけるポンプは、吸込側部材は、ケーシングに形成された吸込側挿入部に、挿脱自在に差し込まれ、
吸込側挿入部に対する吸込側部材の挿脱方向と吐出側挿入部に対する吐出側部材の挿脱方向とが同方向であり、
支持部材は挿脱方向への移動を制限するようにバランス配管を支持し、
吸込側挿入部の深さが吸込側挿入部への吸込側部材の挿入寸法よりも深く、
吐出側挿入部の深さが吐出側挿入部への吐出側部材の挿入寸法よりも深く形成されているものである。
【0030】
これによると、吸込側部材の挿入側先端部と吸込側挿入部の奥端部との間には余分な挿入スペースが形成され、同様に、吐出側部材の挿入側先端部と吐出側挿入部の奥端部との間にも余分な挿入スペースが形成される。
【0031】
支持部材或は吸込側部材や吐出側部材の寸法誤差等により、接続配管が挿脱方向にずれて支持され、吸込側部材の挿入寸法又は吐出側部材の挿入寸法が正規の挿入寸法より増大しても、この増大分は上記挿入スペースによって吸収されるため、バランス配管を容易にポンプのケーシングに取付けることができる。
【0032】
また、本第8発明は上記第1発明から第7発明のいずれか1項に記載のポンプの組立方法であって、
主軸に羽根車を取付け、
ケーシング内に主軸と一体の羽根車を回転自在に取付け、
吐出側部材をケーシングに取付け、
接続配管を吐出側へ移動して接続配管の一端部を吐出側部材の差込部に差し込み、
接続配管を吸込側へ移動して、接続配管の他端部をケーシングに設けられた吸込側部材の差込部に差し込み、
接続配管の一端部と吐出側部材の差込部との間および接続配管の他端部と吸込側部材の差込部との間をそれぞれ、シール材でシールするものである。
【0033】
これによると、バランス配管を容易にケーシングに取付けることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように本発明によると、接続配管の取付けおよび取外しが容易であり、また、ポンプの製作の手間を減らすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態における多段ポンプの断面図である。
【図2】同、多段ポンプに設けられたバランス配管の断面図である。
【図3】図2におけるX−X矢視図である。
【図4】同、バランス配管の吸込側および吐出側部材のケーシングへの挿入部分の断面図である。
【図5】同、バランス配管の接続配管の両端部分の断面図である。
【図6】同、バランス配管の吐出側エルボの断面図である。
【図7】同、バランス配管の吸込側エルボの断面図である。
【図8】同、バランス配管のシール材の断面図である。
【図9】同、バランス配管の組立方法を示す図である。
【図10】同、バランス配管の組立方法を示す図である。
【図11】同、バランス配管の組立方法を示す図である。
【図12】同、バランス配管の組立方法を示す図である。
【図13】同、バランス配管の組立方法を示す図である。
【図14】同、バランス配管の組立方法を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における多段ポンプのバランス配管の接続配管の両端部分の断面図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態における多段ポンプのバランス配管の吐出側エルボの断面図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態における多段ポンプのバランス配管の側面図である。
【図18】本発明の第5の実施の形態における多段ポンプのバランス配管の接続配管の両端部分の断面図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態における多段ポンプのバランス配管の吐出側部材のケーシングへの差込部分の断面図である。
【図20】本発明の第7の実施の形態における多段ポンプの断面図である。
【図21】従来の多段ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
先ず、第1の実施の形態を図1〜図14を参照しながら説明する。図1に示すように、1は一重胴輪切型の多段ポンプであり、水21(流体の一例)の吸込口3と吐出口4とを備えたケーシング2と、ケーシング2内に回転自在に支持される主軸5と、主軸5に装着される複数の羽根車6a〜6cと、主軸5に作用する吐出側から吸込側への軸方向推力F1に対して反対方向のバランス推力F2を発生させて軸方向推力F1を軽減する推力バランス装置30とを有している。
【0037】
ケーシング2は、吸込口3を有する吸込ケーシング7と、吐出口4を有する吐出ケーシング8と、これら吸込ケーシング7と吐出ケーシング8との間に挟み込まれた複数の輪切型の中間ケーシング9a,9bとに分割されている。尚、吸込口3は吸込ケーシング7に設けられた吸込側ノズル部52の先端部に形成され、吐出口4は吐出ケーシング8に設けられた吐出側ノズル部53の先端部に形成されている。
【0038】
上記各ケーシング7,8,9a,9bは、締結手段11によって、主軸5の軸心方向に締め付けられて締結されている。締結手段11は、両端に位置する吸込ケーシング7と吐出ケーシング8とに挿通された複数の締付ボルト12と、締付ボルト12の両端部に螺合されたナット18とを有している。
【0039】
主軸5は、ケーシング2に挿通されており、軸受装置13によって受けられ、吸込側および吐出側の軸封部においてメカニカルシール16,17でシールされている。各羽根車6a〜6cは流出口19と流入口20とを有し、流出口19が流入口20よりも主軸5の径方向の外側に位置している。
【0040】
吸込ケーシング7内には、水21を吸込口3から初段の羽根車6aの流入口20へ導く吸込流路22が形成されている。尚、吸込流路22は、主軸5の外周を取り囲むように円環状に形成されており、狭通路26を介して吸込側のメカニカルシール16に連通している。
【0041】
各中間ケーシング9a,9b内には、水21を各羽根車6a〜6cの流出口19から次段の各羽根車6b,6cの流入口20へ導く中間流路23が形成されている。中間流路23は、各羽根車6a〜6cの流出口19の外側に形成された円環状で且つ周方向に複数の羽根を持つディフューザ24を有している。
【0042】
吐出ケーシング8内には吐出流路25とバランス室28とが形成されている。吐出流路25は、最終段のディフューザ24を通過した水21を吐出口4に導く流路であり、主軸5の軸心周りを旋回する方向に形成されている。また、バランス室28は主軸5の外周を取り囲むように円環状に形成されている。
【0043】
推力バランス装置30は、バランスディスク33と、バランスシート34と、吸込流路22内の圧力とバランス室28内の圧力とを均衡させるバランス配管31とを備えている。バランスディスク33は、主軸5に設けられて主軸5と一体に回転自在な円盤状の部材であり、バランス室28内に収納されている。
【0044】
バランスシート34は、吐出ケーシング8内に設けられて固定された円環状の部材であり、軸方向推力F1の方向側からバランスディスク33に対向している。尚、バランスディスク33は、バランスシート34に摺動自在な摺動面を有している。
【0045】
バランスディスク33の軸方向推力F1の向きの面を前面とし、バランス推力F2の向きの面を背面とすると、バランス室28内において、バランスディスク33の前面側には狭い第1空間35が形成され、バランスディスク33の背面側には第2空間36が形成されている。第1空間35は、連通路37を通じて最終段の羽根車6cの流出口19に連通している。また、第2空間36は狭通路38を介して吐出側のメカニカルシール17に連通している。
【0046】
図1〜図3に示すように、バランス配管31は、吸込ケーシング7に取付けられて吸込流路22(吸込口側の一例)に連通する吸込側部材39と、吐出ケーシング8に取付けられてバランス室28(吐出口側の一例)に連通する吐出側部材40と、吸込側部材39と吐出側部材40との間に接続された接続配管41とを有している。
【0047】
吸込側部材39は吸込側管42と吸込側エルボ43(吸込側継手の一例)とを有し、吐出側部材40は吐出側管48と吐出側エルボ49(吐出側継手の一例)とを有している。接続配管41の一端部は吐出側エルボ49を介して吐出側管48に連通し、接続配管41の他端部は吸込側エルボ43を介して吸込側管42に連通している。
【0048】
吸込側管42の先端部は吸込側エルボ43にねじ込まれて連結されている。また、吸込ケーシング7には吸込側挿入孔44(吸込側挿入部の一例)が形成され、吸込側管42の基端部は吸込側挿入孔44に脱抜自在に挿入されている。図4に示すように、吸込側挿入孔44の深さDは吸込側挿入孔44への吸込側管42の正規の挿入寸法Eよりも深く形成されており、これにより、吸込側管42の挿入側先端部と吸込側挿入孔44の奥端部との間には余分な挿入スペース88が形成される。尚、吸込側挿入孔44の奥端部は、吸込側挿入孔44よりも小径の吸込側連通孔45を通じて、吸込流路22に連通している。
【0049】
吸込側管42の基端部外周面には溝46が形成され、この溝46にOリング47が嵌め込まれており、吸込側管42の外周面と吸込側挿入孔44の内周面との間はOリング47によってシールされている。
【0050】
吐出側管48の先端部は吐出側エルボ49にねじ込まれて連結されている。また、吐出ケーシング8には吐出側挿入孔50(吐出側挿入部の一例)が形成され、吐出側管48の基端部は吐出側挿入孔50に脱抜自在に挿入されている。吐出側挿入孔50の深さDは吐出側挿入孔50への吐出側管48の正規の挿入寸法Eよりも深く形成されており、これにより、吐出側管48の挿入側先端部と吐出側挿入孔50の奥端部との間には余分な挿入スペース89が形成される。尚、吐出側挿入孔50の奥端部は、吐出側挿入孔50よりも小径の吐出側連通孔51を通じて、バランス室28に連通している。
【0051】
吐出側管48の基端部外周面には溝46が形成され、この溝46にOリング47が嵌め込まれており、吐出側管48の外周面と吐出側挿入孔50の内周面との間はOリング47によってシールされている。
【0052】
尚、図2,図4に示すように、吸込側挿入孔44に対する吸込側管42の挿脱方向Aと吐出側挿入孔50に対する吐出側管48の挿脱方向Aとは同方向である。
図5,図6に示すように、吐出側エルボ49は、吐出側管48がねじ込まれる第1のねじ孔55と、接続配管41の一端部(吐出側端部)が差し込まれる第1の差込孔56(一方の差込部の一例)とを有している。これら第1のねじ孔55と第1の差込孔56とは、吐出側エルボ49の内部において直交方向から連通している。
【0053】
第1の差込孔56は、バランス配管31の組立後に接続配管41を長さ方向Bへ移動可能にする移動スペース57を有している。尚、第1の差込孔56の直径は接続配管41の一端部の外径よりも僅かに大きく設定されている。
【0054】
図5,図7に示すように、吸込側エルボ43は、吸込側管42がねじ込まれる第2のねじ孔60と、接続配管41の他端部(吸込側端部)が差し込まれる第2の差込孔61(移動スペースを有する一方の差込部とは異なる他方の差込部の一例)と、連通孔62とを有している。これら第2のねじ孔60と第2の差込孔61とは、吸込側エルボ43の内部において、連通孔62を介して直交するとともに連通している。
【0055】
尚、第2の差込孔61の直径は接続配管41の他端部の外径よりも僅かに大きく設定され、連通孔62の直径は接続配管41の他端部の外径よりも小さく設定され、第2の差込孔61と連通孔62との境界部分には、径方向内側へ突出する段付部63(移動制限部材の一例)が全周にわたって形成されている。
【0056】
図2,図5に示すように、接続配管41は、直管であり、一端部が吐出側エルボ49の第1の差込孔56に差し込まれ、他端部が吸込側エルボ43の第2の差込孔61に差し込まれた状態で、長さ方向Bへ移動可能である。長さ方向Bにおける吸込側から吐出側への向きB1に、接続配管41を移動スペース57分移動させると、接続配管41の他端部が吸込側エルボ43の第2の差込孔61から脱抜可能である。また、向きB1とは反対の向きB2への接続配管41の移動は段付部63によって制限される。
【0057】
尚、ここで寸法関係を説明すると、吐出側エルボ49の第1の差込孔56の移動スペース57の距離L1(すなわち接続配管41の他端部が段付部63に当接した状態で接続配管41の一端部から移動スペース57の奥端までの距離に相当)が吸込側エルボ43の第2の差込孔61の深さL2(すなわち吸込側エルボ43の端面から第2の差込孔61の奥端までの距離に相当)よりも大きくなるように、接続配管41の長さが設定されている。
【0058】
接続配管41の一端部と第1の差込孔56との間は第1のシール材66でシールされ、接続配管41の他端部と第2の差込孔61との間は第2のシール材67でシールされている。
【0059】
接続配管41の両端部はそれぞれ第1および第2のシール材66,67に挿入され、第1のシール材66は、接続配管41の一端部外周面と第1の差込孔56の内周面との間に形成されたシール挿入部68に挿入されており、押し部材69によって挿入方向Cへ押圧されている。
【0060】
また、第2のシール材67は接続配管41の他端部外周面と第2の差込孔61の内周面との間に形成されたシール挿入部68に挿入されており、押し部材69によって挿入方向Cへ押圧されている。
【0061】
図8に示すように、第1および第2のシール材66,67はそれぞれ、挿入方向Cにおける先端部ほど薄い楔状の断面を有する円環形状に形成されている。第1および第2のシール材66,67の内周にはそれぞれ、挿入方向Cにおける先端部に位置し且つ一定の内径を有するストレート面71と、ストレート面71から挿入方向Cとは反対側の基端部に向かって次第に拡径するテーパー面72とが形成されている。尚、図6,図7に示すように、各シール挿入部68は、円錐台形状つまり第1および第2のシール材66,67と同様の形状を有しており、第1および第2の差込孔56,61の開口部側端部に形成されている。
【0062】
図5に示すように、各押し部材69はそれぞれ、接続配管41が挿通される貫通孔74を中心部に有する円板状の部材であり、複数のボルト75によって吸込側および吐出側エルボ43,49に連結されている。
【0063】
吐出側エルボ49には、接続配管41の両端部をそれぞれ第1および第2の差込孔56,61に差し込んでバランス配管31を組立てた後に、接続配管41の長さ方向Bへの移動を制限する移動制限ピン77(移動制限部材の一例)が備えられている。移動制限ピン77は、吐出側エルボ49に形成されたねじ孔78に着脱自在にねじ込まれており、先端部が径方向から第1の差込孔56の移動スペース57内に突出している。尚、移動制限ピン77と吐出側エルボ49との隙間はシールテープ等のシール材でシールされている。
【0064】
図1,図2に示すように、吐出ケーシング8には、挿脱方向Aにおける移動を制限するようにバランス配管31を支持する支持部材79が設けられている。支持部材79の基端部は、複数のボルト81により、吐出ケーシング8に着脱自在に連結されている。また、接続配管41は、Uボルト82とナット83とにより、支持部材79の先端部に着脱自在に連結されている。
【0065】
吐出側のメカニカルシール17と吐出側エルボ49との間には、第1のフラッシング用管85が接続され、吸込側のメカニカルシール16と吸込側エルボ43との間には、第2のフラッシング用管86が接続されている。
【0066】
以下、上記構成における作用を説明する。
先ず、多段ポンプ1の組立方法を以下の手順(1)〜(12)に基づいて説明する。
(1)主軸5に羽根車6a〜6cを取付け、主軸5と一体の羽根車6a〜6cをケーシング2内に回転自在に据付ける。この際、軸受装置13とメカニカルシール16,17とバランスディスク33とバランスシート34等も取付けて、ポンプ本体を組立てる。
【0067】
その後、図9に示すように、ボルト81を用いて、支持部材79を吐出ケーシング8に取付ける。
(2)次に、図10に示すように、吐出側管48の先端部を吐出側エルボ49の第1のねじ孔55にねじ込んで吐出側部材40を組立て、吸込側管42の先端部を吸込側エルボ43の第2のねじ孔60にねじ込んで吸込側部材39を組立てる。
【0068】
(3)図11に示すように、Uボルト82とナット83とを用いて、接続配管41を、長さ方向Bへ移動可能な状態に維持したままで、支持部材79に緩く仮組する。
(4)接続配管41の一端部を第1のシール材66と押し部材69の貫通孔74に挿通し、接続配管41の他端部を第2のシール材67と押し部材69の貫通孔74に挿通して、第1および第2のシール材66,67と押し部材69とを接続配管41に外嵌する。
【0069】
(5)図12に示すように、吐出側部材40の吐出側管48の基端部を吐出側挿入孔50に挿入し、吐出側部材40を吐出ケーシング8に取付ける。
(6)上記手順(3)において支持部材79に仮組された接続配管41を吸込側から吐出側の向きB1へ移動して、接続配管41の一端部を吐出側エルボ49の第1の差込孔56に差し込む。この際、図12に示すように、接続配管41の一端が吐出側エルボ49の移動スペース57の最奥部に達するまで差し込む。
【0070】
(7)図13に示すように、吸込側部材39の吸込側管42の基端部を吸込側挿入孔44に挿入し、吸込側部材39を吸込ケーシング7に取付ける。
(8)図14に示すように、接続配管41を上記向きB1とは反対の向きB2(すなわち吐出側から吸込側への向き)に移動して、接続配管41の他端部を吸込側エルボ43の第2の差込孔61に差し込む。この際、接続配管41の他端が吸込側エルボ43の段付部63に突き当たるまで差し込む。
【0071】
(9)図2に示すように、Uボルト82とナット83とを締付けて、接続配管41を支持部材79に固定する。
(10)図5に示すように、第1のシール材66を吐出側エルボ49のシール挿入部68に挿入し、ボルト75を締付けて、押し部材69により第1のシール材66を挿入方向Cへ押圧し、第2のシール材67を吸込側エルボ43のシール挿入部68に挿入し、ボルト75を締付けて、押し部材69により第2のシール材67を挿入方向Cへ押圧する。これにより、接続配管41の一端部と吐出側エルボ49の第1の差込孔56との間および接続配管41の他端部と吸込側エルボ43の第2の差込孔61との間がそれぞれ、第1および第2のシール材66,67でシールされる。
【0072】
(11)移動制限ピン77を吐出側エルボ49のねじ孔78にねじ込んで取付ける。
(12)図1に示すように、第1のフラッシング用管85を吐出側のメカニカルシール17と吐出側エルボ49との間に接続し、第2のフラッシング用管86を吸込側のメカニカルシール16と吸込側エルボ43との間に接続する。
【0073】
上記(1)〜(12)に示したような組立方法によると、図5に示すように、吐出側エルボ49の第1の差込孔56は余分に移動スペース57を有しているため、接続配管41の長さや吸込側部材39と吐出側部材40との間隔に多少のばらつきがあっても、上記手順(6)(8)に示したように、接続配管41の一端部を第1の差込孔56に差し込むとともに、接続配管41の他端部を第2の差込孔61に差し込むことで、接続配管41を両エルボ43,49間に容易に接続することができる。
【0074】
この際、上記のような接続配管41の長さのばらつきや吸込側部材39と吐出側部材40との間隔のばらつきは移動スペース57にて吸収されるため、製作時、接続配管41の全長の寸法精度や吸込側部材39と吐出側部材40との位置精度を上げる必要はなく、バランス配管31の製作組立の手間を減らすことができる。
【0075】
また、上記手順(11)に示したように、移動制限ピン77を吐出側エルボ49に取付けることにより、移動制限ピン77の先端部が第1の差込孔56の移動スペース57内に突出する。接続配管41の一端部が移動制限ピン77の先端部に当接することにより、接続配管41が吸込側から吐出側の向きB1へ不用意に移動することは制限される。また、接続配管41の他端部が段付部63に当接することにより、接続配管41が上記向きB1とは反対の向きB2へ不用意に移動することは制限される。これにより、接続配管41が不用意に長さ方向B(すなわち向きB1,B2)へ移動することは阻止され、不用意に接続配管41の他端部が吸込側エルボ43の第2の差込孔61から脱抜して接続配管41が両エルボ43,49間から脱落するのを防止することができる。
【0076】
また、図2に示すように、支持部材79をケーシング2に取付け、バランス配管31を支持部材79で支持することにより、バランス配管31がケーシング2から外れるのを防止することができる。
【0077】
また、吸込側部材39の吸込側管42は吸込側挿入孔44に差込まれ、吐出側部材40の吐出側管48は吐出側挿入孔50に差込まれており、このようにケーシング2への吸込側および吐出側部材39,40の取付方式を差込式にすることにより、ケーシング2へのバランス配管31の取付が容易となる。
【0078】
また、吸込側管42の挿入側先端部と吸込側挿入孔44の奥端部との間には余分な挿入スペース88が形成されており、同様に、吐出側管48の挿入側先端部と吐出側挿入孔50の奥端部との間には余分な挿入スペース89が形成されている。
【0079】
ここで、支持部材79の高さHの寸法誤差等により、接続配管41が挿脱方向Aにずれて支持され、吸込側管42の挿入寸法又は吐出側管48の挿入寸法が正規の挿入寸法Eより増大しても、この増大分は上記挿入スペース88,89によって吸収される。
【0080】
これにより、接続配管41が挿脱方向Aにずれて支持された状態であっても、バランス配管31を容易に多段ポンプ1のケーシング2に取付けることができる。
また、図8に示すように、第1および第2のシール材66,67はそれぞれ楔状の断面を有するので、図5に示すように、第1および第2のシール材66,67を各押し部材69によって挿入方向Cへ押圧することにより、第1および第2のシール材66,67を各シール挿入部68(すなわち接続配管41の端部外周面と第1および第2の差込孔56,61の内周面との間)に強固に挿入することができ、接続配管41と吸込側エルボ43との間又は接続配管41と吐出側エルボ49との間のシール性が向上する。
【0081】
この際、第1および第2のシール材66,67の外周面が各シール挿入部68の内周面(すなわち差込孔56,61の内周面)に圧接すると共に、第1および第2のシール材66,67の内周面が接続配管41の端部外周面に圧接する。このとき、接続配管41の端部外周面に対する第1および第2のシール材66,67のストレート面71(図8参照)の面圧がテーパー面72(図8参照)の面圧よりも高くなるので、シール性がさらに向上する。
【0082】
尚、上記のようにストレート面71の面圧がテーパー面72の面圧よりも高くなる理由は、押し部材69でシール材66,67を押し込んだとき、ストレート面71付近におけるシール材66,67の充填度がテーパ面72付近におけるシール材66,67の充填度よりも高くなる事に起因している。
【0083】
すなわち、押し部材69でシール材66,67を押し込んだときに、まず、ストレート面71付近が先にクサビ抗力を受け持って(先にシール材66,67が充填され)、続いてテーパ面72付近がクサビ抗力を受け持ってシール材66,67が充填されるため、ストレート面71付近におけるシール材66,67の充填度がテーパ面72付近におけるシール材66,67の充填度よりも高くなる。
【0084】
また、シール材66,67の内周にストレート面71とテーパ面72を形成した構成は、バランス配管31の組立時に、接続配管41に通しておいたシール材66,67の管長方向への移動を容易とし作業性を向上させる構成でもある。
【0085】
すなわち、シール材66,67のシール性を考慮してシール材66,67の内径と接続配管41の外径を少し締まり嵌めの構成としているため、シール材66,67の内周全面をストレート面71にした場合より、シール材66,67と接続配管41との接触面が小さくなり、摩擦力が減少し、接続配管41上におけるシール材66,67の移動が容易になるためである。
【0086】
また、ストレート面71はテーパー面72よりも強く接続配管41の端部外周面に圧接するため、接続配管41が不用意に長さ方向Bへ移動するのをより一層確実に防止することができる。
【0087】
上記のような手順(1)〜(12)でバランス配管31を取付けた後、多段ポンプ1を稼動することにより、図1に示すように、主軸5と共に各羽根車6a〜6cとバランスディスク33とが回転し、水21が、吸込口3から吸い込まれ、吸込流路22を通って各羽根車6a〜6cの流入口20から流出口19へ流れ、最終段のディフューザ24を通って吐出流路25を流れ、吐出口4に導かれる。この際、主軸5に軸方向推力F1が発生する。
【0088】
上記のように多段ポンプ1が稼動しているとき、最終段の羽根車6cの流出口19から流出した水21の一部は、連通路37を通ってバランス室28内の第1空間35に流れ込み、第1空間35からバランスディスク33とバランスシート34との隙間を通って第2空間36に流れ込み、第2空間36から図2に示すように吐出側連通孔51、吐出側挿入孔50、吐出側管48、吐出側エルボ49、接続配管41、吸込側エルボ43、吸込側管42、吸込側挿入孔44、吸込側連通孔45を流れて、吸込流路22へ流れ込み、吸込口3から流入した水21と合流する。
【0089】
ここで、第1空間35内の圧力をP1、第2空間36内の圧力をP2、吸込流路22内の圧力(すなわち吸込圧力)をP0とすると、第2空間36と吸込流路22とはバランス配管31を介して連通しているため、各圧力は下記のような関係に保たれる。
P1>P2≒P0
これにより、図1に示すように、バランスディスク33を介して主軸5にバランス推力F2が発生し、軸方向推力F1とバランス推力F2とが釣り合うことで互いに打ち消される。
【0090】
また、多段ポンプ1内を流れる水21の圧力は吐出側が吸込側よりも高いことと、水21の流れと接続配管41との摩擦力とにより、図2に示すように、接続配管41には吐出側から吸込側へ向う一方向の力F3が作用する。したがって、上記一方向の力F3に逆らって接続配管41が吸込側から吐出側へ不用意に移動することはなく、接続配管41の一端部が吐出側エルボ49の移動スペース57の最奥部に達することはない。つまり、吐出側エルボ49の移動スペース57は一方向の力F3とは反対方向の位置にあるため、接続配管41の他端部が吸込側エルボ43から外れてしまうのを防止することができる。
【0091】
また、図1に示すように、メカニカルシール17とバランス配管31との圧力差によって、第2空間36に流れ込んだ水21の一部は、第2空間36から狭通路38を通って吐出側のメカニカルシール17内へ供給され、メカニカルシール17内を流れた後、メカニカルシール17から第1のフラッシング用管85を経由して吐出側エルボ49内へ流れ込んだり、或はこのような流れ方向とは逆に、吐出側エルボ49内から第1のフラッシング用管85を経由してメカニカルシール17内を流れる。これにより、吐出側のメカニカルシール17がフラッシング(洗浄)される。
【0092】
同様に、メカニカルシール16とバランス配管31との圧力差によって、吸込流路22に流れ込んだ水21の一部は、吸込流路22から狭通路26を通って吸込側のメカニカルシール16内へ供給され、メカニカルシール16内を流れた後、メカニカルシール16から第2のフラッシング用管86を経由して吸込側エルボ43内へ流れ込んだり、或はこのような流れ方向とは逆に、吸込側エルボ43内から第2のフラッシング用管86を経由してメカニカルシール16内を流れる。これにより、吸込側のメカニカルシール16がフラッシングされる。
【0093】
尚、本実施の形態では、第1および第2のフラッシング用管85,86は、バランス配管31と接続しているが、フラッシングに必要な圧力となるケーシング2に設けられたプラグ座等と接続してもよい。
【0094】
また、バランス配管31を多段ポンプ1から取外す場合は、上述した組立手順(1)〜(12)の逆を行えばよい。この際、移動制限ピン77を吐出側エルボ49から取り外した後、各ボルト75を取外し、第1および第2のシール材66,67を各シール挿入部68から脱抜する。次に、Uボルト82とナット83とを支持部材79から取り外し、図13に示すように、接続配管41を吸込側から吐出側の向きB1へ移動スペース57分移動させ、接続配管41の一端を移動スペース57の最奥部に当接させる。これにより、接続配管41の他端部を吸込側エルボ43の第2の差込孔61から脱抜することができる。
【0095】
その後、吸込側管42を吸込側挿入孔44から脱抜して吸込側部材39を吸込ケーシング7から取り外し、接続配管41を上記向きB1とは反対の向きB2へ移動することにより、接続配管41の一端部を吐出側エルボ49の第1の差込孔56から脱抜して、接続配管41を容易に両エルボ43,49から取外すことができる。
【0096】
上記第1の実施の形態では、吸込側部材39と吐出側部材40を別部材としてケーシング2に設けているが、ケーシング2の一部を吸込側部材又は吐出側部材として用いてもよく、例えば、後述する第7の実施の形態のように、ケーシング2の一部である吸込側ノズル部52を吸込側部材として用いてもよいし、或は、ケーシング2の一部である吐出側ノズル部53を吐出側部材として用いてもよい。
【0097】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態を図15に基いて説明する。
吐出側エルボ49は、第1のねじ孔55と、接続配管41の一端部に差し込まれる円筒状の第1の差込突部93(一方の差込部の一例)と、第1の連通孔94とを有している。第1の連通孔94は、一端が第1の差込突部93の先端面に開口し、他端が吐出側エルボ49内で第1のねじ孔55に直交し連通している。
【0098】
第1の差込突部93は、バランス配管31の組立後に接続配管41を長さ方向Bへ移動可能にする移動スペース57を有している。
吸込側エルボ43は、第2のねじ孔60と、接続配管41の他端部に差し込まれる円筒状の第2の差込突部97(他方の差込部の一例)と、第2の連通孔98とを有している。第2の連通孔98は、一端が第2の差込突部97の先端面に開口し、他端が吸込側エルボ43内で第2のねじ孔60に直交し連通している。また、第2の差込突部97の外周面には、径方向外側へ突出する段付部99(移動制限部材の一例)が全周にわたり形成されている。
【0099】
吐出側エルボ49の第1の差込突部93が接続配管41の一端部に差し込まれ、吸込側エルボ43の第2の差込突部97が接続配管41の他端部に差し込まれることにより、接続配管41は長さ方向Bへ移動可能な状態で両エルボ43,49間に接続される。
【0100】
接続配管41を吸込側から吐出側への向きB1に移動スペース57分移動させると、接続配管41の他端部が吸込側エルボ43の第2の差込突部97から脱抜可能である。また、向きB1とは反対の向きB2への接続配管41の移動は段付部99によって制限される。
【0101】
尚、ここで寸法関係を説明すると、吐出側エルボ49の移動スペース57の距離L1(すなわち接続配管41の他端部が段付部99に当接した状態で接続配管41の一端部から移動スペース57の奥端までの距離に相当)が吸込側エルボ43の第2の差込突部97の差込寸法L3よりも大きくなるように、接続配管41の長さが設定されている。
【0102】
接続配管41の一端部の内周面と吐出側エルボ49の第1の差込突部93の外周面との間は第1のシール材101でシールされ、接続配管41の他端部の内周面と吸込側エルボ43の第2の差込突部97の外周面との間は第2のシール材102でシールされている。第1および第2のシール材101,102はそれぞれOリングであり、第1および第2の差込突部93,97の外周面に形成された溝103に嵌め込まれている。
【0103】
吐出側エルボ49の第1の差込突部93には、バランス配管31を組立てた後に、接続配管41の長さ方向Bへの移動を制限する移動制限ねじ100(移動制限部材の一例)が備えられている。移動制限ねじ100は、第1の差込突部93に形成されたねじ孔78に着脱自在にねじ込まれている。尚、移動制限ねじ100と吐出側エルボ49との隙間はOリング等のシール材でシールされている。
【0104】
以下、上記構成における作用を説明する。
吐出側エルボ49の第1の差込突部93は余分に移動スペース57を有しているため、接続配管41の長さに多少のばらつきがあっても、接続配管41の一端部を第1の差込突部93に差し込むとともに、接続配管41の他端部を第2の差込突部97に差し込むことで、接続配管41を両エルボ43,49間に容易に接続することができる。この際、上記のような接続配管41の長さのばらつきは移動スペース57にて吸収される。
【0105】
また、移動制限ねじ100を吐出側エルボ49の第1の差込突部93に取付けることにより、接続配管41の一端部が移動制限ねじ100に当接し、接続配管41が吸込側から吐出側の向きB1へ不用意に移動することは制限される。また、接続配管41の他端部が段付部99に当接することにより、接続配管41が上記向きB1とは反対の向きB2へ不用意に移動することは制限される。これにより、接続配管41が不用意に長さ方向Bへ移動することは阻止され、接続配管41が両エルボ43,49間から脱落するのを防止することができる。
【0106】
また、接続配管41を両エルボ43,49間から取外す場合は、移動制限ねじ100を吐出側エルボ49から取り外し、図15の仮想線で示すように、接続配管41を吸込側から吐出側の向きB1へ移動スペース57分移動させ、接続配管41の一端を移動スペース57の最奥部に当接させる。これにより、接続配管41の他端部を吸込側エルボ43の第2の差込突部97から脱抜することができる。
【0107】
その後、接続配管41を上記向きB1とは反対の向きB2へ移動することにより、接続配管41の一端部を吐出側エルボ49の第1の差込突部93から脱抜する。これにより、接続配管41を容易に両エルボ43,49から取外すことができる。
【0108】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態を図16に基いて説明する。
移動制限ピン77は、吐出側エルボ49に形成されたねじ孔78に着脱自在にねじ込まれており、接続配管41の長さ方向Bから移動スペース57内に突出している。
【0109】
これによると、接続配管41の一端部が移動制限ピン77の先端部に当接することにより、接続配管41が吸込側から吐出側の向きB1へ不用意に移動することは制限される。
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態を図17に基いて説明する。
【0110】
接続配管41の外周面に、長さ方向Bにおいて相対向する一対の移動制限凸部材105a,105b(移動制限部材の一例)が設けられている。バランス配管31がケーシング2に取付けられた状態で、Uボルト82が一対の移動制限凸部材105a,105b間に嵌め込まれている。
【0111】
これによると、一方の移動制限凸部材105aがUボルト82に当接することにより、接続配管41が吸込側から吐出側の向きB1へ不用意に移動することは制限される。また、他方の移動制限凸部材105bがUボルト82に当接することにより、接続配管41が上記向きB1とは反対の向きB2へ不用意に移動することは制限される。これにより、接続配管41が不用意に長さ方向Bへ移動することは阻止される。
【0112】
また、接続配管41を両エルボ43,49間から取外す場合は、Uボルト82を支持部材79から取外して両移動制限凸部材105a,105b間から離脱させることで、接続配管41に対する移動制限を解除し、接続配管41を長さ方向Bへ移動すればよい。
【0113】
尚、上記第4の実施の形態では、移動制限部材の一例として移動制限凸部材105a,105bを接続配管41に設けたが、移動制限凸部材105a,105bの代りに、移動制限凹部を接続配管41の外周面に形成し、Uボルト82を支持部材79に取付けて移動制限凹部に嵌め込んでもよい。
【0114】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態を図18に基いて説明する。
吸込側および吐出側管42,48の先端部はそれぞれ直角にL形状に屈曲されている。吸込側管42の先端部に設けられた吸込側継手107の第2のねじ孔60と第2の差込孔61とは、接続配管41と同じ軸心上に形成されている。同様に、吐出側管48の先端部に設けられた吐出側継手108の第1のねじ孔55と第1の差込孔56とは、接続配管41と同じ軸心上に形成されている。
【0115】
これによると、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果が得られる。
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態を図19に基いて説明する。
【0116】
吐出側部材40は吐出側管48と吐出側エルボ49(図示省略)とアダプター110とを有している。吐出側エルボ49は吐出側管48の一端部に取付けられている。また、アダプター110は、吐出側管48の外径よりも大きな外径を有する円筒状の部材であり、吐出側管48の他端部をねじ込むことにより、吐出側管48の他端部に接続されている。また、アダプター110の径方向における厚さは吐出側管48の厚さよりも分厚く形成されている。
【0117】
アダプター110は吐出側挿入孔50に脱抜自在に挿入されている。アダプター110の外周面には溝46が形成され、この溝46にOリング47が嵌め込まれており、アダプター110の外周面と吐出側挿入孔50の内周面との間はOリング47によってシールされている。
【0118】
これによると、十分な深さの溝46をアダプター110に形成することが可能であり、溝46を形成するために吐出側管48の厚さを分厚くする必要は無く、吐出側管48の厚さを薄くすることができる。
【0119】
尚、上記第6の実施の形態では、吐出側部材40の吐出側管48にアダプター110を接続しているが、同様に、吸込側部材39の吸込側管42にアダプター110を接続してもよい。
【0120】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態を図20に基いて説明する。
上記第1の実施の形態では、図1,図2に示すように、吸込側管42と吸込側エルボ43とで吸込側部材39を構成したが、第7の実施の形態では、図20に示すように、吸込側管42と吸込側エルボ43とを設けず、吸込ケーシング7の一部である吸込側ノズル部52を吸込側部材として使用している。
【0121】
吸込側ノズル部52は、接続配管41の他端部(吸込側端部)が差し込まれる第2の差込孔61(他方の差込部の一例)と、第2の差込孔61の奥端から吸込側ノズル部52の内周面に連通する連通孔111とを有している。第2の差込孔61と連通孔111との境界部分には、径方向内側へ突出する段付部63(移動制限部材の一例)が全周にわたって形成されている。尚、吸込側の押し部材69はボルト75によって吸込側ノズル部52の外周面に連結されている。
【0122】
これによると、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果が得られる。
尚、本実施の形態では、吐出ケーシング8に支持部材79を設けているが、羽根車6a〜6cの段数が少なく、バランス配管31の長さが短い場合には、吐出側管48が吐出側挿入孔50から抜け落ちる可能性が少なくなるため、支持部材79を設けなくてもよい。
【0123】
上記各実施の形態では、図5,図15,図16,図18に示すように、吸込側管42の先端部が吸込側エルボ43,107にねじ込まれて連結され、図5,図15,図16,図18,図20に示すように、吐出側管48の先端部が吐出側エルボ49,108にねじ込まれて連結されているが、このようなねじ込み式に限定されるものではなく、例えば、吸込側管42の先端部が吸込側エルボ43,107に差込まれて連結され、吐出側管48の先端部が吐出側エルボ49,108に差込まれて連結される差込式であっても或はフランジ式であってもよい。
【0124】
上記各実施の形態では、図2に示すように、接続配管41を一本の直管で構成しているが、長さ方向Bにおいて分割された複数の分割管同士を管継手で接続して一本の直管にしたものを接続配管41としてもよい。
【0125】
上記各実施の形態では、図1に示すように、ポンプの一例として、一重胴輪切型の多段ポンプ1を挙げたが、この型式のポンプに限定されるものではなく、別の型式のポンプであってもよい。
【0126】
上記各実施の形態では、バランスディスク33とバランスシート34およびバランス配管31とを有する推力バランス装置30を挙げたが、バランスディスク33とバランスシート34以外のバランス機構およびバランス配管31とを有する推力バランス装置30であってもよい。
【0127】
上記各実施の形態では、ポンプを流れる流体の一例として水21を挙げたが、水21以外の液体または気体であってもよい。
また、上記各実施の形態では、図5,図18に示すように、吐出側部材40の第1の差込孔56が移動スペース57を有しているが、吸込側部材39の第2の差込孔61が移動スペース57を有していてもよい。同様に、図15に示すように、吐出側部材40の第1の差込突部93が移動スペース57を有しているが、吸込側部材39の第2の差込突部97が移動スペース57を有していてもよい。
【0128】
また、上記第1〜第6の実施の形態では、支持部材79をケーシング2に一台取付けているが、複数台の支持部材79を取付け、複数台の支持部材79でバランス配管31を支持してもよい。
【0129】
また、上記各実施の形態を組み合わせた構成のバランス配管31を用いてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1 多段ポンプ
2 ケーシング
3 吸込口
4 吐出口
5 主軸
6a〜6c 羽根車
21 水(流体)
30 推力バランス装置
31 バランス配管
39 吸込側部材
40 吐出側部材
41 接続配管
44 吸込側挿入孔(吸込側挿入部)
50 吐出側挿入孔(吐出側挿入部)
52 吸込側ノズル部(吸込側部材)
56 第1の差込孔(一方の差込部)
57 移動スペース
61 第2の差込孔(他方の差込部)
63 段付部(移動制限部材)
66 第1のシール材(吐出側のシール材)
67 第2のシール材(吸込側のシール材)
69 押し部材
71 ストレート面
72 テーパー面
77 移動制限ピン(移動制限部材)
79 支持部材
93 第1の差込突部(差込部)
97 第2の差込突部(差込部)
99 段付部(移動制限部材)
100 移動制限ねじ(移動制限部材)
101 第1のシール材
102 第2のシール材
105a,105b 移動制限凸部材(移動制限部材)
A 挿脱方向
B 長さ方向
C 挿入方向
D 吸込側および吐出側挿入孔の深さ(挿入部の深さ)
E 挿入寸法
F1 軸方向推力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の吸込口と吐出口を備えたケーシングと、ケーシング内に回転自在に支持される主軸と、主軸に装着される羽根車と、主軸に生じる軸方向推力を軽減するバランス配管を備えた推力バランス装置付きのポンプであって、
バランス配管は、ケーシングに設けられて吸込口側に連通する吸込側部材と、ケーシングに設けられて吐出口側に連通する吐出側部材と、吸込側部材と吐出側部材との間に接続された接続配管とを有し、
吸込側部材と吐出側部材とはそれぞれ接続配管の端部が差し込まれてシール材でシールされる差込部を有し、
吸込側部材と吐出側部材とのいずれか一方の差込部は、バランス配管の組立後に接続配管を長さ方向へ移動可能にする移動スペースを有していることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
接続配管を移動スペース分移動させると、
接続配管は、移動スペースを有する一方の差込部とは異なる他方の差込部より脱抜可能であることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
移動スペースを有する差込部は吐出側部材に備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
バランス配管の組立後に接続配管の長さ方向への移動を制限する移動制限部材が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項5】
差込部は差込孔であり、
接続配管の端部がシール材に挿入され、
シール材は、接続配管の端部外周面と差込孔の内周面との間に挿入され、挿入方向における先端部ほど薄い楔状の断面を有する環形状に形成され、押し部材によって挿入方向へ押圧されており、
シール材の内周に、挿入方向における先端側に位置し且つ一定の内径を有するストレート面と、ストレート面から挿入方向とは反対側の基端部に向かって次第に拡径するテーパー面とが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項6】
吐出側部材は、ケーシングに形成された吐出側挿入部に、挿脱自在に差し込まれ、
バランス配管を支持する支持部材がケーシングに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項7】
吸込側部材は、ケーシングに形成された吸込側挿入部に、挿脱自在に差し込まれ、
吸込側挿入部に対する吸込側部材の挿脱方向と吐出側挿入部に対する吐出側部材の挿脱方向とが同方向であり、
支持部材は挿脱方向への移動を制限するようにバランス配管を支持し、
吸込側挿入部の深さが吸込側挿入部への吸込側部材の挿入寸法よりも深く、
吐出側挿入部の深さが吐出側挿入部への吐出側部材の挿入寸法よりも深く形成されていることを特徴とする請求項6に記載のポンプ。
【請求項8】
上記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポンプの組立方法であって、
主軸に羽根車を取付け、
ケーシング内に主軸と一体の羽根車を回転自在に取付け、
吐出側部材をケーシングに取付け、
接続配管を吐出側へ移動して接続配管の一端部を吐出側部材の差込部に差し込み、
接続配管を吸込側へ移動して、接続配管の他端部をケーシングに設けられた吸込側部材の差込部に差し込み、
接続配管の一端部と吐出側部材の差込部との間および接続配管の他端部と吸込側部材の差込部との間をそれぞれ、シール材でシールすることを特徴とするポンプの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−113098(P2013−113098A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256881(P2011−256881)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】