説明

ポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造、ポンプゲート用横軸ポンプ、及びポンプゲート設備

【課題】点検・修理等の作業が簡単に行えてその作業負担が大幅に軽減されると共に、作業の安全性が向上するポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造を提供する。
【解決手段】水路を開閉するゲートの扉体21に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプ40のケーシング70を、上部ケーシング72と下部ケーシング73とに分割された形状に構成し、上部ケーシング73を下部ケーシング73から取り外し可能な構造とすることで、横軸ポンプ40本体を扉体21から取り外さずに、上部ケーシング72を取り外すだけで横軸ポンプ40の内部点検・修理ができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプゲート設備に用いられる横軸ポンプのケーシング構造、ポンプゲート用横軸ポンプ、及びポンプゲート設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の本川と支川が合流する場所において、合流場所の手前の支川内に止水用のゲート(水門)を設置し、このゲートに排水用の横軸ポンプを取り付けたポンプゲート設備がある(特許文献1等)。図1は、このポンプゲート設備の構成例を示す図である。ポンプゲート設備は、略平板状の扉体21を備えたゲート20を備えている。扉体21は、地上に設置した躯体30に取り付けた開閉装置31と図示しないガイド機構とによって上下動自在に設置され、上昇位置で止水位置12の水路を開放し、下降位置で閉鎖するようになっている。そしてこの扉体21にポンプゲート用の横軸ポンプ40が取り付けられている。横軸ポンプ40は、その吸込口51が支川11側に開口し、吐出側が扉体21に設置した筒状の弁胴22を介して本川10側に開口している。このポンプゲート設備は、扉体21が上昇位置にあるとき支川11側から本川10側へ河川が自然流下するもので、横軸ポンプ40を支川11側に設置したいわゆる逆圧式の例である。
【0003】
この横軸ポンプ40のケーシング50は、吸込口51を備えた吸込ケーシング52と、羽根車43が収納されるインペラケーシング53と、その一端が扉体21に取り付けられる吐出ケーシング55と、インペラケーシング53と吐出ケーシング55の間に設置される吐出ボウル54の各ケーシングを備えて構成されている。
【0004】
このケーシング50の吐出側端部のフランジ(吐出ケーシング55のフランジ)55aが、扉体21に設置した台板23に取り付けられ、台板23の本川10側の面には弁胴22が取り付けられ、横軸ポンプ40の電動機42が、これら吐出ケーシング55と弁胴22の内部に収納配置されている。そして、弁胴22の本川10側の端部が吐出口24になっていて、この吐出口24にフラップ弁25が取り付けられている。フラップ弁25は、本川10側の水が弁胴22内への逆流することを防止するものである。
【0005】
次に、図2の動作フローを用いてこのポンプゲート設備の一連の動作を説明する。通常時は、同図(a)に示すように、扉体21を上げてゲート20を開放しておくことで、支川11の水を自然流下で本川10側へ放流させる。そして、多量の降雨等により本川10側の水位が支川11の水位よりも上昇して支川11の水流が自然流下できなくなった場合は、同図(b)に示すように、扉体21を下げてゲート20を閉鎖し、本川10側の水が支川11へ逆流するのを防止する。このとき、支川11の水位が予め設定したポンプ運転水位に達したら、同図(c)に示すように、横軸ポンプ40を運転して支川11の水を本川10側へ強制排水する。これにより支川11の水位がポンプ停止水位まで低下したら、同図(d)に示すように、横軸ポンプ40を停止する。その後、同図(e)に示すように、本川10側の水位が支川11の水位よりも低下した場合、再び、同図(a)に示すように、ゲート20を開放して支川11の水を本川10側へ自然流下させる。
【特許文献1】特開2003−3450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示す従来のポンプゲート用の横軸ポンプ40のケーシング50は、横軸ポンプ40の軸方向に略直交する面で輪切状に分割された形状であったため、横軸ポンプ40の内部の点検・修理の際にこのケーシング50を容易に取り外すことができなかった。そのため横軸ポンプ40の点検・修理を行う際には、横軸ポンプ40本体ごと扉体21から取り外して行っていた。図3を用いてこの取り外し作業の手順を説明すると、まず、同図(a)に示すように、扉体21を上昇させて横軸ポンプ40を水路から地上へ引き上げておき、躯体30と点検用架台32の間に仮設踏板33を掛け渡して設置する。そして、横軸ポンプ40の上方に位置する躯体30(図1参照)に支持されている揚重機(図示せず)の支持金具(フック)34に、ケーシング50に取り付けたワイヤ35を架け、横軸ポンプ40本体を揚重機で吊り上げて支持する。このように横軸ポンプ40を吊り上げた状態で、仮設踏板33に載った作業者が、扉体21の台板23と吐出ケーシング55のフランジ55aとの締結を解除し、同図(b)に示すように揚重機で吊り下げた横軸ポンプ40本体を扉体21から取り外す。
【0007】
このポンプゲート用の横軸ポンプ40本体を扉体21から取り外す作業は、横軸ポンプ40本体の一方の端部(フランジ)55aが扉体21に取り付けられている、いわゆる片持ち状態から取り外すため、非常に不安定な状態での作業を強いられ、作業の効率が悪いという問題があった。また横軸ポンプ40本体の重量が非常に重いため、作業の安全性に問題があった。特に容量の大きな横軸ポンプ40を備えたポンプゲート設備では、より作業性が悪くなり、安全面にもより注意が必要となる。さらに、横軸ポンプ40の吊り下げには相当な大きさの揚重機が必要となり、作業設備が大掛かりなものとなる。
【0008】
一方、ポンプゲート設備では、横軸ポンプ40の稼動時は、扉体21が下ろされてゲート20が閉鎖されている。このとき、本川10側と支川11には水位差があるので、扉体21を上げると本川10側から支川11への逆流を生じてしまう。そのため、扉体21に固定されている横軸ポンプ40が運転中に異物の噛み込みや閉塞により故障すると、その迅速な復旧作業が行えず、排水機能の低下により支川11側の浸水被害等につながる可能性があった。このような被害を未然に防止するには、異物の噛み込みや閉塞などにつながる横軸ポンプ40の不具合を可能な限り早い段階で発見することが極めて重要である。また、ゲート20を閉鎖している場合に横軸ポンプ40に故障や不具合が生じたときには、扉体21を下ろしたままの状態で、横軸ポンプ40のケーシング50内に配置されている水力部(羽根車や電動機類)を容易に取り外して陸上へ引き上げることを可能とする構造も有効である。
【0009】
また一方、横軸ポンプ40はその構造上、空気吸い込みによる渦発生を防止してより低水位まで排水を可能とするため、ケーシング50の吸込口51が、下方又は斜め下方に向かって開口している場合が多い。しかしながらこの形状のケーシング50では、外部からその吸込口51を覗き込んで羽根車43等横軸ポンプ40本体の内部の状況を確認(目視確認)することが困難であった。
【0010】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、点検・修理等の作業が簡単に行えてその作業負担が大幅に軽減されると共に、作業の安全性が向上し、また、外部から容易に横軸ポンプの内部を点検でき故障等につながる不具合を発見できる横軸ポンプのケーシング構造、このケーシング構造を備えた横軸ポンプ、及び該横軸ポンプを設置してなるポンプゲート設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本願の請求項1に記載の発明は、水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、前記横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成し、前記上部ケーシングを、前記下部ケーシングから取り外し可能な構造としたことを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2に記載の発明は、水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、前記横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成し、前記上部ケーシングを、前記下部ケーシングに対して開閉可能に取り付けたことを特徴とする。
【0013】
本願の請求項3に記載の発明は、水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、前記横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成すると共に、前記上部ケーシングをさらに複数の分割ケーシングに分割された形状に構成し、前記複数の分割ケーシングの少なくともいずれかを、前記下部ケーシングから取外し可能又は開閉可能に取り付けたこと特徴とする。
【0014】
本願の請求項4に記載の発明は、請求1乃至3のいずれか1項に記載のポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、前記上部ケーシング、又は少なくともいずれかの前記分割ケーシングに、開閉窓を設けたことを特徴とする。
【0015】
本願の請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、前記上部ケーシング、又は少なくともいずれかの前記分割ケーシングを、樹脂製材料又は非鉄金属製材料で形成したことを特徴とする。
【0016】
本願の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、前記樹脂材料で形成したケーシングは、少なくともその一部分が透明であり、この透明な部分から前記横軸ポンプの内部を視認可能であることを特徴とする。
【0017】
本願の請求項7に記載の発明は、水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプにおいて、前記横軸ポンプのケーシングに、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のケーシング構造を用いたことを特徴とする。
【0018】
本願の請求項8に記載の発明は、水路に設置され扉体を上下動させることで前記水路を開閉するゲートと、前記ゲートの扉体に取り付けられたポンプゲート用横軸ポンプとを備えたポンプゲート設備において、前記ポンプゲート用横軸ポンプに、請求項7に記載のポンプゲート用横軸ポンプを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に記載の発明によれば、ポンプゲート用横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成し、上部ケーシングを、下部ケーシングから取り外し可能な構造としたので、横軸ポンプの内部点検時及び内部修理時に、上部ケーシングを取り外すことで点検・修理をすることが可能となり、その作業が非常に効率良く簡単に行えるようになる。また点検・修理の際に、上部ケーシングのみを吊り上げて取り外せば良いので、従来の様に横軸ポンプ自体を吊り上げる必要が無く、吊上荷重を大幅に低減することができ、作業の安全性が向上し、また吊り上げに必要な装置類も小型化・簡単化できる。
【0020】
本願の請求項2に記載の発明によれば、ポンプゲート用横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成し、上部ケーシングを、下部ケーシングに対して開閉可能に取り付けたので、横軸ポンプの内部点検時及び内部修理時に、上部ケーシングを開くことで点検・修理をすることが可能となり、その作業が非常に効率良く簡単に行えるようになる。また点検・修理の際に、上部ケーシングを吊り上げて取り外す必要がないので、作業の安全性が向上し、また吊り上げに必要な装置類が不要となる。
【0021】
本願の請求項3に記載の発明によれば、ポンプゲート用横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成すると共に、上部ケーシングをさらに複数の分割ケーシングに分割された形状に構成したので、横軸ポンプの内部点検時及び内部修理時に、点検箇所あるいは修理箇所に対応する分割ケーシングのみを取り外すかあるいは開ければその箇所の点検・修理ができ、作業をさらに効率良く簡単に行えるようになる。特に、上部ケーシングを吊り上げて取り外す場合でも、点検・修理箇所に対応する分割ケーシングのみを吊り上げれば足りるので、吊上荷重を大幅に低減することができ、作業の安全性が向上し、また吊り上げに必要な装置類も小型化・簡単化できる。
【0022】
本願の請求項4に記載の発明によれば、上部ケーシング、又は少なくともいずれかの分割ケーシングに開閉窓を設けたので、ポンプゲート用横軸ポンプの内部点検時及び内部修理時に、この開閉窓を開けて点検・修理をすることが可能となり、その作業が非常に効率良く簡単に行えるようになる。
【0023】
本願の請求項5に記載の発明によれば、上部ケーシング、又は少なくともいずれかの分割ケーシングを、樹脂製材料又は非鉄金属製材料で形成したので、上部ケーシング等を軽量化することができ、点検・修理の際に、上部ケーシング等を吊り上げる吊上荷重をさらに大幅に低減することができ、作業の安全性が向上し、また吊り上げに必要な装置類もさらに小型化・簡単化できる。また、上部ケーシング等を軽量化したことで、点検・修理を行う際に上部ケーシング等を人手によって取り外したり開いたりすることが可能となれば、上部ケーシング等の吊り上げ等に必要な装置類が不要となり、設備が簡単で済む。
【0024】
本願の請求項6に記載の発明によれば、樹脂材料で形成したケーシングは、少なくともその一部分が透明であり、該透明な部分から横軸ポンプの内部を視認可能であるので、外部から容易に横軸ポンプの内部を点検することができ、異物の噛み込みや閉塞などの故障につながる不具合を早い段階で発見することが可能となる。
【0025】
本願の請求項7に記載の発明によれば、ポンプゲート用横軸ポンプのケーシングに請求項1乃至6のいずれか1項に記載のケーシング構造を用いたので、その内部点検及び内部修理を効率良く簡単に、且つ安全に行うことができるポンプゲート用横軸ポンプを提供できる。
【0026】
本願の請求項8に記載の発明によれば、水路に設置され扉体を上下動させることで水路を開閉するゲートと、ゲートの扉体に取り付けられたポンプゲート用横軸ポンプとを備えたポンプゲート設備において、ポンプゲート用横軸ポンプに、本願の請求項7に記載のポンプゲート用横軸ポンプを用いたので、ポンプゲート設備のメンテナンスにおいて、横軸ポンプの内部点検・修理の作業が非常に簡単に行えて、その作業負担が大幅に軽減されると共に、作業の安全性が向上する。また、外部から容易に横軸ポンプの内部を点検できて故障につながる不具合を発見できるので、横軸ポンプの故障を回避でき、ポンプゲート設備の排水機能の低下を防げるので、河川周囲の浸水被害などを未然に防止できる。また、ゲートを閉鎖している際に横軸ポンプに故障や不具合等が生じたときには、扉体を下ろしたままの状態で、横軸ポンプの上部ケーシングと水力部(羽根車や電動機類)を容易に取り外して陸上へ引き上げることが可能となり、扉体を上げずに横軸ポンプを迅速に修理して復旧させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態においては、上記の従来例と共通する構成部分には同一の符号を付す。また、下記で説明する以外の構成は、上記の従来例と同じである。
〔第1実施形態〕
図4は、本発明の第1実施形態にかかるポンプゲート用の横軸ポンプの構造を示す図である。この横軸ポンプ40のケーシング70は、羽根車43や電動機42等の水力部を囲む筒状で、その一端の吸込口71が斜め下方に向かって開口する形状で、さらにこのケーシング70は、その軸中心線を通る略水平面で上部ケーシング72と下部ケーシング73とに分割できるように構成され、吸込口71が下部ケーシング73側に設けられている。そして、上部ケーシング72の下面外周と下部ケーシング73の上面外周とにはフランジ72a,73aが形成され、このフランジ72aとフランジ73aが図示しないボルト・ナットで接合されている。また、上部ケーシング72と下部ケーシング73は、それらの吐出側の端部に設けたフランジ72b,73bが、扉体21の台板23に固定されており、横軸ポンプ40の内部部品がこの上部ケーシング72と下部ケーシング73の間に収納されている。なお図4では、扉体21に取り付けた横軸ポンプ40から、上部ケーシング72を取り外した状態を示している。なお、フランジ72a,73aの接合手段はボルト・ナットに限定されない。また、フランジ72aとフランジ73aの間にパッキンを介在させて止水性を向上させることも可能である。これらの点は、他の実施形態におけるフランジ同士の接合においても同様である。
【0028】
この横軸ポンプ40の内部点検(分解点検を含む、以下同じ。)や修理を行うには、扉体21を上げて横軸ポンプ40を水路から地上に引き上げた後、上部ケーシング72と下部ケーシング73のフランジ72a,73aの接合を外すと共に、上部ケーシング72端部のフランジ72bと扉体21の台板23との接合を取り外す。そして、図4に示すように、上部ケーシング72に取り付けたワイヤ35を、揚重機(図示せず)のフック34に掛け、揚重機で上部ケーシング72を吊り上げて横軸ポンプ40本体から取り外す。このとき、下部ケーシング73はその端部(フランジ)73bが扉体21に固定されたままの状態で、横軸ポンプ40の内部部品が、この下部ケーシング73上に配置されている。これにより、仮設踏板33に載った作業者が、羽根車43や電動機42など内部部品の点検・修理を行うことができる。このように、横軸ポンプ40の内部点検や、故障による内部修理を行う際に、上部ケーシング72を取り外すことで点検・修理をすることが可能となり、作業が非常に効率良く簡単に行える。また、点検・修理を行う際に、上部ケーシング72のみを吊り上げれば良いので、従来の横軸ポンプ40のように横軸ポンプ40自体を吊り上げる必要が無く、吊上荷重を大幅に低減することができ、作業の安全性が向上し、また吊り上げに必要な揚重機も小型化できる。
【0029】
また、上部ケーシング72だけを取り外すので、横軸ポンプ40の下部ケーシング73と内部部品とが扉体21に固定されたままとなり、従来のように不安定な状態での横軸ポンプ40の取り外し作業が不要となる。また、作業者が仮設踏板33に載った状態で、扉体21に固定された下部ケーシング73を受台として横軸ポンプ40の内部部品の修理・点検作業ができるので、作業が非常に行い易くなり、安全性が向上する。なお、本実施形態のケーシング70は、軸中心線を通る略水平な分割面で上部ケーシング72と下部ケーシング73とに分割されているが、この分割面の位置・形状等は上記に限られず、これ以外にも、例えば分割面が軸中心線に対して傾斜していても良いし、分割面が平面状でなく曲面状等になっていてもよい。また、図4に示す上部ケーシング72及び下部ケーシング73は、軸中心線と交わる面(略直交する面)でさらに複数のケーシングに分割されたものを接合した形状になっているが、本実施形態の横軸ポンプ40のケーシング70は、上部ケーシング72と下部ケーシング73に分割された形状であれば、必ずしも同図のように軸中心線と交わる面でさらに複数に分割されている必要はない。
【0030】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態にかかるポンプゲート用の横軸ポンプの構成を説明する。本実施形態にかかる図面及びその説明においては、上記の第1実施形態と共通する構成部分には同一の符号を付す。なお、ここで説明する事項以外の事項や図示する以外の部分については、第1実施形態と同じである。以下の他の実施形態においても同様とする。図5は、本発明の第2実施形態にかかる横軸ポンプ40の上部ケーシング72−2の構造を示す図である。本実施形態が第1実施形態と相違する点は、第1実施形態の上部ケーシング72を、さらに横軸ポンプ40の軸中心線と交わる面(略直交する面)で複数の分割ケーシングに分割された形状に構成した点である。即ち、図5に示す上部ケーシング72−2は、従来の横軸ポンプ40のケーシング50の吸込ケーシング52、インペラケーシング53、吐出ボウル54、吐出ケーシング55のそれぞれに対応する位置で分割された4個の分割ケーシング74乃至77からなる。各分割ケーシング74,75,76,77には、隣接する分割ケーシングとの接合面にフランジ74a,75a,76a,77aが形成されていて、隣り合うフランジ74a,75a,76a,77aを図示しないボルトで接合することで、1個の上部ケーシング72−2が構成されている。
【0031】
図6は、この上部ケーシング72−2を備えたポンプゲート用の横軸ポンプ40の内部点検・修理を行う際の、上部ケーシング72−2の取り外し手順を説明する図である。内部部品の分解作業を伴う点検・修理を行う場合は、上部ケーシング72−2の各分割ケーシング74乃至77を一体に取り外すことが必要であるが、日常点検のような目視点検や、羽根車43の状態の確認や、電動機42への給油等の比較的簡単で部分的な作業の場合は、上部ケーシング72−2のうち、点検・修理部分に対応するいずれかの分割ケーシング74〜77のみを取り外して行えばよく、これにより横軸ポンプ40の点検・修理がより効率良く簡単に行え、維持管理性が向上する。このように、上部ケーシング72−2を複数の分割ケーシング74乃至77に分割した構成としたことで、分割ケーシング74〜77のいずれかのみを取り外すことができるので、横軸ポンプ40の部分補修や部品交換が簡単に行なえる。なお、図6では、羽根車43の位置に対応する分割ケーシング75のみを取り外して、羽根車43の状態確認等を行う場合を示している。
【0032】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明の第3実施形態にかかるポンプゲート用の横軸ポンプのケーシングの一部の構造を示す図で、同図(a)は側面図、同図(b)は上流側から見た(同図(a)の矢印A方向から見た)正面図、同図(c)は平面図である。本実施形態の横軸ポンプ40のケーシング70は、吸込側の上部ケーシング(分割ケーシング)74−3と下部ケーシング73とからなる吸込ケーシング90の形状を、渦発生の防止に効果的な形状としたものである。即ち、同図に示す吸込ケーシング90は、吸込口71の下端部に、垂直下方に向かいその面が水路の水流に対向する板状体88を設けると共に、吸込口71の両側部に、吸込口71の両外側に向かいその面が水路の水流に対向する板状体89,89を設けている。このように吸込口71の下端部及び両側部に水路の水流に対向する板状体88、板状体89,89を設けることにより、吸込口71の後方(下流側)から吸込口71へ向かって廻り込む水流を抑制し、水中渦の発生を抑制(防止)することができる。なお、板状体88は、吸込口71の下端部に垂直下方に向かって設けているが、垂直方向に対して所定の角度に傾斜させて設けてもよい。またここでは、吸込口71の下端部と両側部にそれぞれ板状体88と板状体89,89を設けた構成としたが、吸込口71の下端部と両側部のいずれかの板状体88又は89,89だけを設けてもよい。なお、本実施形態の吸込ケーシング90に設けた開口部71は、上部ケーシング74−3と下部ケーシング73の分割面を挟んでその上下に渡って設けられている。図7に示す吸込ケーシング90の形状は、水中渦の発生を効果的に防止するケーシングの形状の一例であり、水中渦の発生を防止するケーシングとしては、これ以外にも種々の形状を採用することができ、同図に示す形状には限定されない。
【0033】
この横軸ポンプ40を取り付けたポンプゲート設備を河川に設置した後で、水路の形状や支川11の流れの変化により渦が発生するようになった場合、上記のような吸込ケーシング90に変更することで、渦発生を抑制することができる。このように、上部ケーシング72−3のうちの一部の分割ケーシング74−3等の構成を変更することが簡単に行えるので、横軸ポンプ40に要求される性能を考慮した形状の分割ケーシングを設置することができる。また、横軸ポンプ40を河川に設置した後でも、ケーシング70を水路の特性に適合した形状に変更できるので、ポンプゲート設備の一式を交換するよりも簡単で安価で済む。
【0034】
〔第4実施形態〕
図8は、本発明の第4実施形態にかかるポンプゲート用の横軸ポンプのケーシング構造を示す図である。同図(a)では、上部ケーシング72−3の先端側(吸込側)の分割ケーシング74−4を、そのフランジ74−4aと下部ケーシング73のフランジ73aとの間に取り付けた蝶番(ヒンジ)80で開閉可能に設置している。またこの場合、分割ケーシング74−4に隣接する分割ケーシング75を接合しておけば、これらが一体に開閉されるようになる。この分割ケーシング74−4,75を開くことで、羽根車43の状態を目視で確認することができる。また同図(b)では、先端側の分割ケーシング74−5に、蝶番81を介して開閉する扉82を備えた開閉窓83を設置している。この開閉窓83を開けることで、羽根車43の状態等を目視で確認することが可能となる。なお同図(a),(b)では、蝶番80,81を取り付ける位置は図示する位置に限定されず、ケーシング74−4や扉82がいずれの方向に開閉するように構成してもよく、また開閉窓83は適宜の形状・大きさに形成でき、扉82は、蝶番81以外にも任意の取付手段で取り付けることが可能である。
【0035】
このように、上部ケーシング72−3のうちの一部の分割ケーシング74−4等の構成を変更することが簡単に行えるので、横軸ポンプ40のメンテナンスの利便性を考慮した構成を備えた分割ケーシングを設置することができる。また、横軸ポンプ40を河川に設置した後でも、内部部品の点検・修理等が容易に行える構成に変更することが簡単に行える。
【0036】
〔第5実施形態〕
図9は、本発明の第5実施形態にかかるポンプゲート用の横軸ポンプのケーシング構造を示す図で、同図(a)は、横軸ポンプ40の側面図で、同図(b),(c)はいずれも、同図(a)のA−A部分の概略断面図である。本実施形態の上部ケーシング72−4は、同図(b)に示すように、第1実施形態の横軸ポンプ40の上部ケーシング72の構成に加えて、その下面に形成したフランジ72aと下部ケーシング73のフランジ73aとの間に、蝶番(ヒンジ)85を取り付けたもので、上部ケーシング72−4がこの蝶番85を中心に回転して開閉可能となるように構成している。蝶番85は、横軸ポンプ40の軸中心線に対して左右のどちら側のフランジ72aに取り付けても良く、蝶番85を取り付ける位置により上部ケーシング72−4の開閉方向を選択することが可能である。
【0037】
同図(c)は、本実施形態の上部ケーシング72−4のさらに他の構成例を示す図である。この上部ケーシング72−4は、その軸中心線を含む略垂直な平面で左ケーシング78と右ケーシング79とに分割された形状に構成され、左ケーシング78及び右ケーシング79の下端のフランジ78a,79aにはそれぞれ、下部ケーシング73のフランジ73aとの間に蝶番86,87が取り付けられている。また、左ケーシング78と右ケーシング79の頂部にもフランジ78a,79aが形成されている。この上部ケーシング72−4は、左ケーシング78と右ケーシング79がそれぞれの蝶番86,87により、上方から見て横軸ポンプ40の軸中心線に対して左右方向に開閉するようになっている。また、左ケーシング78及び右ケーシング79を閉じた状態で、頂部のフランジ78aとフランジ79aとをボルト・ナット等で接合できるようになっている。また、各分割面にパッキンを介在させて止水性を向上させることもできる。なお、上記ではフランジ72a(78a,79a)に蝶番85(86,87)を取り付けたものを示したが、これ以外にもフランジ72a(78a,79a)を設けずに上部ケーシング72−4に直接蝶番85(86,87)を取り付けて、上部ケーシング72−4が下部ケーシング73に対して開閉する構造としてもよい。
【0038】
このように上部ケーシング72−4を蝶番85(86,87)で開閉可能に取り付けたことで、横軸ポンプ40の内部点検や内部修理の際に、上部ケーシング72−4を開くことで点検・修理をすることが可能となり、作業が非常に効率良く簡単に行えるようになる。また点検・修理の際に、上部ケーシング72−4を吊り上げて取り外す必要がないので、作業の安全性が向上し、また吊り上げに必要な揚重機が不要となる。なお本実施形態では、図示は省略するが、上部ケーシング72−4の開閉時に人や物の挟み込み等の事故を防止するため、上部ケーシング72−4の開閉角度を規制するストッパー手段を設けるなどして、安全対策を施すことも可能である。
【0039】
また本実施形態においても、上部ケーシング72−4を、さらに複数の分割ケーシングに分割した形状に構成することもできる。この場合は、分割ケーシングのいずれかのみを開閉可能としてもよいし、すべてを開閉可能としてもよい。このように上部ケーシング72−4を複数の分割ケーシングに分割することで、内部点検・修理の際に、分割された上部ケーシング72−4のうち点検・修理箇所に対応する分割ケーシングのみを開閉すれば良くなり、作業がさらに効率良く簡単に行えるようになる。
【0040】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態にかかる横軸ポンプの構成を説明する。本実施形態では、上記の各実施形態における上部ケーシング72〜72−4を形成する材質(材料)に、従来のケーシング50に用いられていた鋼類製材料(FC材又はSS材等)ではなく、樹脂製材料又は非鉄金属製材料を用いたものである。この場合、下部ケーシング73の材料は、従来のケーシング50と同様の鋼類製材料としてよい。このように上部ケーシング72の材料を樹脂製又は非鉄金属製に変更することで、上部ケーシング72が従来よりも軽量化されるため、上部ケーシング72の吊上荷重がさらに低減され、その取り外しの作業性が向上する。また、上部ケーシング72の開閉が簡単になる。これにより、横軸ポンプ40の内部点検及び修理の作業がさらに効率良く簡単に行えるようになる。また、横軸ポンプ40自体の重量が従来よりも軽くなることで、扉体21や開閉装置などの横軸ポンプ40を取り付けているポンプゲート設備の各構成部品への負担も軽減されるので、より故障が少なく信頼性の高いポンプゲート設備となる。
【0041】
また、上部ケーシング72を樹脂製材料で形成することで、従来と比較して上部ケーシング72の重量を大幅に軽くできれば、横軸ポンプ40の内部点検・修理の際に、揚重機で上部ケーシング72を吊り上げる必要がなく、人力でこれを取り外すことが可能となる。これにより、横軸ポンプ40の内部点検・修理の作業をさらに効率良く簡単に行えるようになる。また上部ケーシング72の吊り上げに必要な揚重機等の装置類が不要となる。なお、上部ケーシング72が分割されている場合は、その一部の分割ケーシングのみを樹脂製材料あるいは非鉄金属製材料で形成してもよい。
【0042】
また、上部ケーシング72を樹脂製材料で形成する場合、この樹脂製材料に透明な材料を使用すれば、上部ケーシング72を透明にすることができ、透明な上部ケーシング72を設置した横軸ポンプ40は、その内部の部品の状態を目視で確認できる。これにより、ゲート20が開放状態で支川11側の水が本川10側に自然流下しているときに、図10に示すように、作業者90が、水路から引き上げられている扉体21に取り付けられた横軸ポンプ40の内部を目視で確認でき、不慮の内部閉塞や羽根車の破損などの事故につながる不具合を早期の段階で発見することが可能となる。したがって、ポンプゲート設備の排水機能の低下を防げるので、河川周囲の浸水被害などを未然に防止できる。なおこの場合は、上部ケーシング72の全箇所を透明にする以外にも、その一部箇所のみを透明としてもよい。また、上部ケーシング72を複数の分割ケーシングに分割している場合は、一部の分割ケーシングのみを透明にしてもよい。
【0043】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上部ケーシング72を複数の分割ケーシングに分割した形状に構成する場合、その分割する個数や分割ケーシングの形状は、上記の実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態にかかる横軸ポンプ40及びそのケーシング構造は、ポンプゲート設備に設置する横軸ポンプに適用されるものであるが、横軸ポンプ40を設置するポンプゲート設備の構成は一例であり、上記の実施形態に限定されるものではない。なお、上記各実施形態のうち、第6実施形態に示す上部ケーシング72〜72−4の材料に樹脂材料あるいは非鉄金属製材料を用いた横軸ポンプ40は、ポンプゲート用の横軸ポンプ以外のポンプにも適用することができるもので、例えば排水機場に設置される固定式のポンプなどに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ポンプゲート設備の構成例を示す図である。
【図2】ポンプゲート設備の動作フローを示す図である。
【図3】従来のポンプゲート設備で横軸ポンプを扉体から取り外す手順を説明するための図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる横軸ポンプの構造を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる横軸ポンプの上部ケーシングの構造を示す図である。
【図6】横軸ポンプの内部点検・修理を行う際のケーシングの取り外し手順を説明するための図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる横軸ポンプのケーシングの一部の構造を示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態にかかる横軸ポンプのケーシングの構造を示す図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかる横軸ポンプのケーシングの構造を示す図である。
【図10】外部から横軸ポンプの内部部品の状態を目視で確認することを説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
10 本川
11 支川
12 止水位置
20 ゲート
21 扉体
22 弁胴
23 台板
24 吐出口
25 弁体(フラップ弁)
30 躯体
31 開閉装置
32 点検用架台
33 仮設踏板
34 フック(支持金具)
35 ワイヤ
42 電動機
43 羽根車
70 ケーシング(ポンプケーシング)
71 吸込口
72〜72−4 上部ケーシング
73 下部ケーシング
74〜77 分割ケーシング
78 左ケーシング
79 右ケーシング
83 開閉窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、
前記横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成し、前記上部ケーシングを、前記下部ケーシングから取り外し可能な構造としたことを特徴とするポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造。
【請求項2】
水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、
前記横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成し、前記上部ケーシングを、前記下部ケーシングに対して開閉可能に取り付けたことを特徴とするポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造。
【請求項3】
水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、
前記横軸ポンプのケーシングを、上部ケーシングと下部ケーシングとに分割された形状に構成すると共に、前記上部ケーシングをさらに複数の分割ケーシングに分割された形状に構成し、
前記複数の分割ケーシングの少なくともいずれかを、前記下部ケーシングから取外し可能又は開閉可能に取り付けたこと特徴とするポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、
前記上部ケーシング、又は少なくともいずれかの前記分割ケーシングに、開閉窓を設けたことを特徴とするポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、
前記上部ケーシング、又は少なくともいずれかの前記分割ケーシングを、樹脂製材料又は非鉄金属製材料で形成したことを特徴とするポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造。
【請求項6】
請求項5に記載のポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造において、
前記樹脂材料で形成したケーシングは、少なくともその一部分が透明であり、この透明な部分から前記横軸ポンプの内部を視認可能であることを特徴とするポンプゲート用横軸ポンプのケーシング構造。
【請求項7】
水路を開閉するゲートの扉体に取り付けられるポンプゲート用横軸ポンプにおいて、
前記横軸ポンプのケーシングに、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のケーシング構造を用いたことを特徴とするポンプゲート用横軸ポンプ。
【請求項8】
水路に設置され扉体を上下動させることで前記水路を開閉するゲートと、前記ゲートの扉体に取り付けられたポンプゲート用横軸ポンプとを備えたポンプゲート設備において、
前記ポンプゲート用横軸ポンプに、請求項7に記載のポンプゲート用横軸ポンプを用いたことを特徴とするポンプゲート設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate