説明

ポンプダウン性能を改良したバルブ組立体

本バルブ組立体は、出口(20)まで延びる流路(14)を持つハウジング(12)と、流路内にあり且つ出口の周囲に設けられた弁座(24)と、前記ハウジング内に配置された、弁座と接触して流路を通る流れを遮断する閉鎖位置と、流路を通る流れを許容する開放位置との間で、流路の長さ方向軸線に対して横方向に移動自在の摺動板(26)とを含み、摺動板及び弁座の少なくとも一方が、摺動板と弁座との間に所定量の導通性を提供する少なくとも一つの通路(76)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体としてバルブ組立体に関し、更に詳細には、圧力を解放し且つ改良されたポンプダウン性能すなわち圧力を低減させる性能を提供する通路を持つ摺動板を含む、新規であり且つ改良されたバルブ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
滑り弁組立体及びゲート弁組立体は、全体として、入口と出口との間を延びる流路を形成するハウジングを含む。滑り弁組立体は、例えば、半導体製造工程、又は例えば1トル(1.333hPa)又はそれ以下の非常に低い圧力(高真空)で実施される他の薄膜コーティング工程で使用されるような、高純度ガス送出システムの一部を形成するため、処理チャンバと真空ポンプとの間を連結できる。このような場合には、バルブ組立体の入口のフランジは、処理チャンバに固定され、バルブ組立体の出口のフランジは、真空ポンプに固定される。
【0003】
滑り弁組立体は、バルブ組立体の流路の軸線に関して、開放位置と閉鎖位置との間で横方向に移動する摺動板を含む。振り子型滑り弁組立体では、摺動板は、枢動アームによって回転自在のシャフトに連結されている。完全に開放した位置では、摺動板は、ハウジングの流路の外に移動しており、そのため流体は流路に自由に出入りできるが、閉鎖位置では、摺動板は、弁座又はバルブ組立体の出口を取り囲む環状面とぴったりと接触した状態に移動しており、そのため、流路を通る導通性(conductance)が制限される。摺動板を移動させるには、通常は、完全開放位置(即ち、第1開放位置)と、中間位置(即ち、第2開放位置)との間での回転(即ち、枢動又は横方向移動)移動を必要とし、次いで、中間位置から、摺動板が出口の弁座とぴったりと接触した閉鎖位置まで、少なくとも或る程度の長さ方向(即ち、並進移動、線型移動、又は軸線方向移動)移動が必要とされる。
【0004】
オルムステッドに付与された、本開示の譲受人に譲渡された米国特許第6,089,537号には、完全開放位置と完全閉鎖位置との間の摺動板の回転移動及び長さ方向移動を正確に制御する簡単な回転カム機構を使用する、振り子型バルブ組立体が開示されている。同特許に触れたことにより、この特許に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。このカム機構は、更に、摺動板を出口の弁座から遠ざかる方向に押圧するように作用するばねを含む。
【0005】
幾つかの現存の振り子型バルブは、更に、シールリングを摺動板に対して独立して作動する場合に完全なシール(遮断)を提供するシールリングを含む。ブリダに付与された米国特許第5,577,707号には、例えば、摺動板を閉鎖位置に枢動するとき、摺動板に向かって、及びこれから遠ざかるように移動できるシールリングを含む振り子型滑り弁が開示されている。摺動板が閉鎖位置にあるとき、シールリングは、摺動板を弁座に対してぴったりと閉鎖するため、及び摺動板とシールリングとの間にシールを形成するため、ばね又は圧縮空気を使用して摺動板に押し付けられる。
【0006】
シールリングは、代表的には、バルブ組立体に対して遮断機能を提供し、導通性の制御には使用されない。通常は、シールリングは、定置状態に保持されており、摺動板が移動して導通性を制御する。しかしながら、2003年9月29日に出願された、本開示の譲受人に譲渡された現在継続中の米国特許出願第10/673,989号には、バルブの初期開放中の導通性の制御を改善するようになったシールリングを持つ、振り子型バルブ組立体が開示されている。同特許出願に触れたことにより、この特許出願に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【0007】
処理チャンバと真空ポンプとの間のバルブ組立体の作動は、通常は、遮断、ポンプダウン(すなわち圧力低減、以下ポンプダウンと呼ぶ)及び絞り(throttling)の三つの段階を含む。遮断段階中、シールリングは遮断機能を提供し、バルブ組立体の入口と出口との間の圧力差が大きい。ポンプダウン段階中、シールリングが摺動板から遠ざかる方向に移動し、摺動板と出口の弁座との間で導通性が徐々に増大し、バルブ組立体の入口と出口との間の圧力差が減少する。絞り段階中、摺動板と出口の弁座との間で導通性は所定の一定レベルに維持され、バルブ組立体の入口と出口との間の圧力差は比較的低いが一定のままである。絞り手順は、半導体デバイスの加工中、取り付けられた処理チャンバ内に所望の低い圧力(即ちプロセス圧力)を維持するのに使用される。
【0008】
幾つかの現存のゲート弁又は振り子型バルブの一つの欠点は、バルブのチャンバ側とポンプ側との間に大きな圧力差が存在する場合、摺動板を初期移動してバルブを開放するのに大きな力が必要とされるということである。このような大きな力は、大きな駆動機構を必要とし、このような大きな駆動機構は、バルブ組立体を大きくし且つその費用を追加する。別の態様では、振り子型バルブのチャンバ側に別体のバイパスバルブを連結してもよい。摺動板の初期移動に大きな駆動機構が必要とされないように、振り子型バルブの開放前にこのバイパスバルブを作動して振り子型バルブのチャンバ側の圧力を下げる。しかしながら、この場合も、バルブ組立体を大きくし且つその費用を追加する。
【0009】
大きな駆動機構や別体のバイパスバルブを使用しない場合には、ポンプダウン手順は、摺動板と弁座との間に導通性を発生するのに、及び圧力差を所望のレベルまで低下するのに長い期間を要する。しかしながら、長いポンプダウン期間は、半導体デバイスの加工において望ましくない。これは、このような長い期間が、最終的には、加工した半導体デバイスの生産量を低下してしまうためである。
【特許文献1】米国特許第6,089,537号
【特許文献2】米国特許第5,577,707号
【特許文献3】米国特許出願第10/673,989号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
新規であり且つ改善されたバルブ組立体が未だ所望とされている。好ましくは、新規であり且つ改善されたバルブ組立体は、摺動板の開放前に、バルブ組立体のチャンバ側(即ち、バルブ組立体の入口)とポンプ側(即ち、出口)との間の高い圧力差を自動的に減少し、その結果、ポンプダウン手順中に摺動板を最初に移動してバルブを開放する上で、大きな駆動機構や別体のバイパスバルブを必要としないようになっている。更に、高い圧力差を自動的に減少することにより、好ましくは、半導体デバイスの加工中のポンプダウン期間を短くする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、バルブ組立体の摺動板の開放前に、バルブ組立体の入口と出口との間の圧力を自動的に減少するようになった、新規であり且つ改良されたバルブ組立体を提供する。従って、摺動板を最初に移動してバルブを開放するのに大きな力を必要としない。大きな駆動力が必要とされないため、バルブ組立体を大きくし且つその費用を追加する大きな駆動機構もまた、必要とされない。更に、高い圧力差の自動的減少は、バルブ組立体を大きくし且つその費用を追加する別体のバイパスバルブを使用せずに行われる。更に、新規であり且つ改良されたバルブ組立体により、大きな駆動機構や別体のバイパスバルブを使用せずに、ポンプダウン手順を比較的迅速に行うことができる。
【0012】
一つの例示の実施例によれば、バルブ組立体は、出口まで延びる流路と、流路内及び出口の周囲の弁座とを持つハウジングを含む。摺動板がハウジング内に配置されている。この摺動板は、弁座と接触し、流路を通る流れを遮断する閉鎖位置と、流路を通る流れを許容する開放位置との間で、流路の長さ方向軸線方向に対して横方向に移動自在である。摺動板が閉鎖位置にあるときに摺動板と弁座との間に所定量の導通性を提供するため、摺動板及び弁座のうちの少なくとも一方に、少なくとも一つの通路が設けられている。通路により、ポンプダウン手順中に摺動板を開放位置に移動する前に、バルブ組立体の入口と出口との間で圧力を低下できる。
【0013】
別の例示の実施例によれば、バルブ組立体の流路は、入口から出口まで延びており、流路内及び入口の周囲に弁座を形成する。組立体は、更に、入口の弁座と摺動板との間の流路内に同軸に位置決めされたシールリングを含む。シールリングは、摺動板と入口の弁座との間にシールを形成するため、流路内で摺動板に向かって軸線方向に移動自在である。
【0014】
別の例示の実施例によれば、摺動板及びシールリングの少なくとも一方が、シールリングの移動中に摺動板とシールリングとの間の導通性を向上するための少なくとも一つの通路を備えている。
【0015】
本開示のこの他の特徴及び利点は、本開示を実施する上で最良と考えられる態様の単なる例示である本発明の例示の実施例を図示し且つ説明する以下の詳細な説明を読むことにより、当業者に明らかになるであろう。わかるように、本開示は、この他の及び異なる実施例が可能であり、その幾つかの詳細を、様々な明らかな特徴について、本開示を逸脱することなく、変更できる。従って、添付図面及び以下の説明は、例示であると考えられるべきであって、制限であると考えられるべきではない。
【0016】
添付図面を参照すると、同じ参照番号を付したエレメントは、全図に亘り、同じエレメントを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図1及び図2を参照すると、本開示に従って形成された振り子型バルブ組立体10の例示の実施例は、全体として、入口18と出口20との間を延びる流路14を形成するハウジング12を含む。弁座22、24が、ハウジング12の流路14に、開口部18、20の縁部に亘って設けられている。図示のように、組立体は、ハウジング内に作動的に取り付けられた振り子型バルブ16を含む。この振り子型バルブ16は、流路14から完全に外れた第1開放位置と、図2に示すように流路14内にある第2開放位置との間で枢動自在の摺動板26を有する。摺動板26が流路14内の第2開放位置にある場合、摺動板26により、出口20を通る流体流れを減少できる。摺動板26は、更に、流路14の内側の第2開放位置から、出口20の弁座24に当たり、出口20を通る流体流れを実質的に阻止する、制御可能な導通性(conductance)が最小の位置(即ち実質的に閉鎖された位置)まで軸線方向に移動できる。この実質的に閉鎖された位置では、摺動板26は、出口20の弁座24と物理的に接触していてもよいし接触していなくてもよく、小さな隙間があってもよい。
【0018】
図示していないけれども、振り子型バルブ組立体10の入口18は、例えば、処理チャンバに連結でき、出口20は、1トル(1.333hPa)又はそれ以下のオーダーの圧力等の非常に低い圧力(高度の真空)で実施される半導体製造工程及び他の薄膜コーティング工程で使用されるような真空ポンプに連結でき、高純度ガス送出装置の一部を形成する。一般的には、半導体ウェーハ等の加工物をチャンバ内に置き、処理用ガスをチャンバに導入して加工物と所定の方法で化学的に反応させる。
【0019】
振り子型バルブ組立体10は、摺動板26が流路14の完全に外に配置された第1開放位置と、図2に示すように流路14の内側に配置された第2開放位置と、出口20の弁座24に当たった実質的に閉鎖された位置との間で、処理チャンバと真空ポンプとの間の導通性の制御を補助する。これによって、振り子型バルブ組立体10は、導通性を制御することによって、処理チャンバ内の圧力を制御するのに使用できる。処理チャンバと真空チャンバとの間の距離は、好ましくは、振り子型バルブ組立体10の入口18と出口20との間の距離(即ちフランジ−フランジ寸法)が最小になるように、できるだけ小さくされるということに着目されるべきである。
【0020】
図1及び図2を更に参照すると、バルブ組立体10は、流路14を同軸に取り囲むシールリング30を更に含む。シールリング30は、ハウジング12の入口18に、摺動板26と入口18の弁座22との間に位置決めされる。図2に最もよく示すように、シールリング30は、入口18に面する第1面38と、出口20及び摺動板26に面する第2面40と、第1面38から入口18内に延びるニップル32とを有する。入口18の内面19と入口18の弁座22との間に、ニップル32を受け入れるための肩部21が形成される。図示の例示の実施例では、シールリング30は、エラストマー材料製の二つのO−リング34、36を支持する。これらのO−リング34、36は、シールリング30に形成された溝に夫々配置される。O−リング34は、第2面の溝内に、シールリング30と摺動板26との間に位置決めされるのに対し、O−リング36は、ニップル32の溝内に、ニップル32と入口18の肩部との間に位置決めされる。
【0021】
図示していないけれども、シールリング30は、周方向に順次配置された複数の穴を、摺動板26から遠隔の第1面38上に有する。これらの穴は、夫々、弁座22に形成された穴と軸心が合っている。弁座22の穴は、流路14を同軸に取り囲む環状チャンバ52まで延びている。複数のファスナ(図示せず)が弁座22の穴を通って延びており、シールリング30の対応する穴に固定される。O−リングを備えた環状ピストン54がチャンバ52内に配置され、ファスナに固定される。チャンバ52は入口導管を備えている。この入口導管は、ピストン54に対し、入口導管を通って流れる圧縮空気等の流体が、ファスナに固定されたプレート54の第1側にだけ作用するように配置されている。更に、ファスナから遠方の環状ピストン54の反対側に作用する複数のばね58が設けられている(別の態様では、ばねをなくすため、流体圧力が環状ピストン54の反対側に作用するように、環状チャンバ52内に開放した二つの入口導管を設けてもよい)。このような構成の一例は、現在の米国特許公開第2004/0164264A1号である、2003年2月20日に出願された「振り子型バルブ組立体用シールリング」という表題の米国特許出願第10/369,954号に詳細に説明されている。これは、本開示の譲受人に譲渡されている。同特許文献に触れたことにより、この特許文献に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【0022】
摺動板26を流路14内に枢動させたが、図2に示すように開放位置にとどまっている場合には、シールリング30は、入口18の弁座22に当たった位置のままである。シールリング30がこの位置にある場合には、圧力媒体は環状チャンバ52に流入し、そのため環状ピストン54は、ばね58の押圧力に抗して、シールリング30とともに変位する。摺動板26が弁座24に当たった(又はこの弁座に非常に近い)、制御可能なその最小導通位置、即ち「軟」閉鎖位置にある場合、シールリング30は、弁座22に当たった位置のままである。しかしながら、閉鎖した摺動板26を完全にシールするため、環状チャンバ52から圧力流体を排除する。その結果、ばね58が環状ピストン54を、取り付けられたファスナ60及びシールリング30とともに、摺動板26に押し付け、摺動板26は弁座24に押し付けられ、「硬」閉鎖位置を提供する。閉鎖した摺動板26はシールリング30によって完全にシールされ、遮断機能を果たし、バルブ組立体の入口18と出口20との間の圧力差が最大である。
【0023】
摺動板26の開放は逆の手順で行われる。圧力流体を環状チャンバ52に供給すると、環状ピストン54がファスナとともに摺動板26から遠ざかるように移動し、シールリング30を摺動板26から遠ざかるように移動する。次いで、ポンプダウン手順中、摺動板26と出口20の弁座24との間の導通性が徐々に増大し、バルブ組立体の入口18と出口20との間の圧力差が減少する。絞り手順中、摺動板26と出口20の弁座24との間の導通性は所定レベルに維持され、バルブ組立体の入口と出口との間の圧力差は、比較的低いが一定のレベルを保つ。絞り手順は、半導体デバイスの加工中、取り付けられた処理チャンバ内に所望の圧力(即ちプロセス圧力)を維持するのに使用される。
【0024】
図1に示すように、組立体10は、完全開放位置と完全閉鎖位置との間での摺動板26の回転移動及び長さ方向移動を正確に制御する回転カム機構62を備えていてもよい。適当な回転カム機構の一例が、本開示の譲受人に譲渡された米国特許第6,089,537号に示されている。同特許に触れたことにより、この特許に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。回転カム機構62は、有利には、摺動板26の閉鎖位置近くで、導通性を精密に制御する。回転カム機構62は、摺動板26を出口20の弁座24から遠ざかる方向に常に押圧する少なくとも一つのばね64を含む。ポンプダウン手順中、ばね64が提供する力は、最終的には、入口側圧力が低下するに従って、入口側圧力に打ち勝ち、摺動板26を移動して出口20の弁座24から遠ざける。
【0025】
次に図2、図3、及び図4を参照すると、摺動板26は、出口20から遠方の第1面70と、出口に面する第2面72と、流路14とほぼ平行に延びる半径方向外方に面する側壁74とを有する。摺動板26と、出口20の弁座24のうちの少なくとも一方が、少なくとも一つの通路76を含む。この通路76は、摺動板26が閉鎖位置にあるとき、摺動板26と弁座24との間に所定量の導通性を提供する。
【0026】
図2、図3、及び図4に示す例示の実施例において、摺動板26には、単一の通路76が設けられている。しかしながら、別の態様では、出口20の弁座24に通路を設けてもよく、又は出口20の弁座24及び摺動板26の両方に通路を設けてもよい。
【0027】
通路76は、シールリング30を摺動板26から遠ざかるように移動した後、及び回転カム機構62のばね64の力によって摺動板26を出口20の弁座24から押し離す前に、バルブ組立体10の入口18と出口20との間の圧力を自動的に低下させる。従って、摺動板26を出口20から遠ざかる方向に移動し始めるのに大きな力を必要としない。大きな駆動力が必要とされないため、バルブ組立体10を大きくし且つその費用を追加する大きな駆動機構もまた、必要とされない。更に、大きな圧力差を自動的に減少することは、バルブ組立体10を大きくし且つその費用を追加する別体のバイパスバルブを使用することによっては達成されるものではない。更に、新規なバルブ組立体10により、ポンプダウン手順を、大型の駆動機構や別体のバイパスバルブを使用せずに、比較的迅速に行うことができる。
【0028】
図2、図3、及び図4に示す例示の実施例では、一つの通路は、摺動板26の側壁74まで延びる、第2面72に形成された溝76を含む。この比較的小さな溝76は、比較的小さな処理チャンバ(例えば、100リットルよりも小さい)で使用される。
【0029】
図5及び図6は、図1の振り子型バルブ組立体10で使用するための、本開示に従って形成された摺動板126の追加の例示の実施例を示す。摺動板126は、図1乃至図4の摺動板26と同様であり、同様のエレメントに、頭に「1」を付けた同じ参照番号が付してある。図5及び図6の摺動板126は、多数の通路176を含む。図示の例示の実施例では、各通路は、摺動板126の側壁174まで延びる、第2面172に形成された溝176を含む。比較的大きいこれらの溝176は、比較的大きな処理チャンバ(例えば、500リットルよりも大きい)で使用され、ポンプダウン期間を短くする。例えば、図5及び図6の実施例を使用した場合のポンプダウン期間は、1700リットルのチャンバについて約10分で終了するが、図1乃至図4の実施例を使用した場合のポンプダウン期間は、1700リットルのチャンバについて約200分で終了する。
【0030】
図7、図8、及び図9は、図1の振り子型バルブ組立体10で使用するための、本開示に従って形成された摺動板226の追加の例示の実施例を示す。摺動板226は、図1乃至図4の摺動板26と同様であり、同様のエレメントに、頭に「2」を付けた同じ参照番号が付してある。図7、図8、及び図9の摺動板226は、単一の通路276を含む。この通路は、第2面272から摺動板226の側壁274まで延びる穴276を有し、この穴276の入口278が側壁274に形成されており、穴276の出口280は第2面272に形成されている。図9に最もよく示すように、移動自在のドア282が穴276の出口280を覆うように位置決めされており、摺動板226の両側の圧力差が十分に高い場合に開放するようになっている。図示の例示の実施例では、移動自在のドアは、弾性的に撓むことができる常閉に押圧されたばね板282を有する。ばね板282は、穴276の出口280に亘って延びており、摺動板226に例えばねじで固定されている。図8にねじ穴284を示す。
【0031】
図7、図8、及び図9の摺動板226は、図1乃至図4の摺動板26の利点と、図5及び図6の摺動板126の利点を併せ持つ。即ち、図7、図8、及び図9の摺動板226は、図1乃至図4の実施例26と全く同様に、通常の作動モード中、閉鎖時の導通性に及ぼされる作用が小さく、図5及び図6の実施例126と全く同様に、ポンプダウン中に高い導通性を提供するのである。
【0032】
図示していないけれども、本開示に従って形成された改良振り子型バルブ組立体10は、更に、シールリングの移動中の摺動板とシールリングとの間の導通性を向上するため、摺動板26の第1面70及びシールリング30のうちの一方に少なくとも一つの通路を備えていてもよい。シールリング30の移動中にシールリング30により改良された導通性制御を提供できる、このような通路の実施例は、本開示の譲受人に譲渡された、2003年9月29日に出願された現在継続中の米国特許出願第10/673,989号に開示されている。同特許出願に触れたことにより、この特許出願に開示された内容は本明細書中に含まれたものとする。
【0033】
かくして、本開示に従って形成された、新規であり且つ改良された振り子型バルブ組立体10を説明した。本明細書中で説明した例示の実施例は、限定でなく例示として提供したものであって、当業者は、特許請求の範囲に記載した、本開示の最も広い特徴において、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形、組み合わせ、及び代替を行うことができる。例えば、本開示は、振り子型滑り弁に限定されず、直線的に変位できる摺動板又はゲート弁にも適用できる。
【0034】
本明細書中に開示した本開示のバルブ組立体10、及びその全てのエレメントは、特許請求の範囲のうちの少なくとも一つの範囲内に含まれる。ここに開示したバルブ組立体の構成要素のうち、権利を放棄しようとするものはない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】バルブ組立体の摺動板及びシールリングを示す、本開示に従って形成されたバルブ組立体の例示の実施例の一部を下方から見た斜視図である。
【図2】バルブ組立体の出口の弁座から間隔が隔てられており且つシールリングが摺動板から遠ざかる方向に押圧された部分開放位置でバルブ組立体の摺動板を示す、図1のバルブ組立体の一部を上方から見た部分断面拡大斜視図である。
【図3】図1の振り子型バルブ組立体の摺動板を下方から見た斜視図である。
【図4】図3の円「4」で囲んだ摺動板の一部を下方から見た拡大斜視図である。
【図5】図1の振り子型バルブ組立体で使用するための、本開示に従って形成された摺動板の別の例示の実施例を下方から見た斜視図である。
【図6】図5の円「6」で囲んだ摺動板の一部を下方から見た拡大斜視図である。
【図7】図1の振り子型バルブ組立体で使用するための、本開示に従って形成された摺動板の更に別の例示の実施例を下方から見た斜視図である。
【図8】図7の円「8」で囲んだ摺動板の一部を下方から見た拡大斜視図である。
【図9】摺動板のドアが開放状態及び閉鎖状態で示してある、図7の円「8」で囲んだ摺動板の一部を下方から見た拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 振り子型バルブ組立体
12 ハウジング
14 流路
16 振り子型バルブ
18 入口
20 出口
22、24 弁座
26 摺動板
30 シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ組立体において、
出口まで延びる流路を持ち、前記流路内及び前記出口の周囲に弁座を形成するハウジングと、
前記ハウジング内に配置された摺動板であって、前記弁座と接触し、前記流路を通る流れを遮断する閉鎖位置と、前記流路を通る流れを許容する開放位置との間で、前記流路の長さ方向軸線方向に対して横方向に移動自在の摺動板とを含み、
前記摺動板が前記閉鎖位置にあるとき、前記摺動板と前記弁座との間に所定量の導通性を提供するための少なくとも一つの通路を、前記摺動板及び前記弁座のうちの少なくとも一方が備えている、バルブ組立体。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ組立体において、
前記摺動板と前記弁座との間に所定量の導通性を提供するための前記通路は、前記摺動板に形成されている、バルブ組立体。
【請求項3】
請求項2に記載のバルブ組立体において、
前記摺動板は、前記出口から遠ざかる方に向いた第1面と、前記出口に向かって面する第2面と、前記流路とほぼ平行に延びる半径方向外方に面する側壁とを有し、前記摺動板と前記シールリングとの間に所定量の導通性を提供するための前記通路は、前記摺動板の前記第2面及び前記側壁に形成されている、バルブ組立体。
【請求項4】
請求項3に記載のバルブ組立体において、
前記通路は、前記第2面に形成された、前記摺動板の前記側壁まで延びる溝を含む、バルブ組立体。
【請求項5】
請求項3に記載のバルブ組立体において、
前記通路は、前記第2面に形成された、前記摺動板の前記側壁まで延びる多数の溝を含む、バルブ組立体。
【請求項6】
請求項3に記載のバルブ組立体において、
前記通路は、前記摺動板の前記第2面から前記側壁まで延びる穴を有し、前記穴の入口が前記側壁に形成されるのに対し、前記穴の出口は前記第2面に形成される、バルブ組立体。
【請求項7】
請求項6に記載のバルブ組立体において、更に、
前記穴の前記出口に亘って位置決めされた移動自在のドアを含む
、バルブ組立体。
【請求項8】
請求項7に記載のバルブ組立体において、
前記移動自在のドアは、閉鎖状態に押圧されている、バルブ組立体。
【請求項9】
請求項8に記載のバルブ組立体において、
前記移動自在のドアは、弾性的に撓むことができる常閉に押圧されたばね板を含む、バルブ組立体。
【請求項10】
請求項1に記載のバルブ組立体において、
前記摺動板は、前記流路内で枢動自在である、バルブ組立体。
【請求項11】
請求項10に記載のバルブ組立体において、
前記摺動板は、前記流路から外れた第1開放位置と、前記摺動板が前記流路内に枢動してあるが前記出口の前記弁座から軸線方向に間隔が隔てられた第2開放位置との間で枢動自在であり、次いで、前記出口の前記弁座と接触した実質的に閉鎖された位置まで前記流路内で軸線方向に移動自在である、バルブ組立体。
【請求項12】
請求項11に記載のバルブ組立体において、更に、
前記摺動板に連結されたシャフトを含み、この連結は、前記シャフトから横方向に延びるアームを介して行われ、前記シャフトは、前記シャフトの長さ方向軸線を中心として回転するように前記ハウジング内に少なくとも部分的に取り付けられており、これにより、前記摺動板を前記流路内に前記第2開放位置まで回転させることができ、更に、前記流路の前記軸線と実質的に平行に移動させ、前記摺動板を前記流路内で軸線方向に、前記出口の前記弁座と接触した実質的に閉鎖された位置まで移動させることができる、バルブ組立体。
【請求項13】
請求項12に記載のバルブ組立体において、更に、
前記シャフトの回転移動と平行移動の組み合わせを提供するため、前記シャフトと前記ハウジングとの間に連結されたカム機構を含む、バルブ組立体。
【請求項14】
請求項13に記載のバルブ組立体において、
前記カム機構は、
前記ハウジングが形成するカム面と、
前記シャフトに固定されており、前記ハウジングの前記カム面と係合するカム従動体とを含む、バルブ組立体。
【請求項15】
請求項13に記載のバルブ組立体において、
前記カム機構は、前記シャフトの平行移動を提供し、前記摺動板を前記出口の前記弁座から遠ざかる方向に常に押圧するためのばねを含む、バルブ組立体。
【請求項16】
請求項1に記載のバルブ組立体において、
前記流路は、前記入口から前記出口まで延び、前記流路内に及び前記入口の周囲に弁座を形成し、前記組立体は、更に、
前記流路内に、前記入口の前記弁座と前記摺動板との間に同軸に位置決めされたシールリングを含み、該シールリングは、前記摺動板と前記入口の前記弁座との間にシールを提供するため、前記流路内で前記摺動板に向かって軸線方向に移動自在である、バルブ組立体。
【請求項17】
請求項16に記載のバルブ組立体において、
前記摺動板及び前記シールリングのうちの少なくとも一方が、前記摺動板と前記シールリングとの間の導通性を向上するため少なくとも一つの通路を備えている、バルブ組立体。
【請求項18】
請求項17に記載のバルブ組立体において、
前記シールリングと前記摺動板との間の導通性を向上するため少なくとも一つの通路は、前記シールリングに形成されている、バルブ組立体。
【請求項19】
請求項1に記載のバルブ組立体において、更に、前記摺動板を前記出口の前記弁座から遠ざかる方向に常に押圧するばねを含む、バルブ組立体。
【請求項20】
請求項1に記載のバルブ組立体を備えた、高純度ガス送出装置において、更に、
前記バルブ組立体を通して真空ポンプに連結された処理チャンバを含む、高純度ガス送出装置。
【請求項21】
請求項10に記載のバルブ組立体において、
前記摺動板と前記弁座との間に所定量の導通性を提供するための通路は、前記弁座に形成されている、バルブ組立体。
【請求項22】
請求項11に記載のバルブ組立体において、
前記摺動板と前記弁座との間に所定量の導通性を提供するための通路が、前記摺動板及び前記弁座の両方に形成されている、バルブ組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−531943(P2008−531943A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557039(P2007−557039)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/004448
【国際公開番号】WO2006/091380
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】