説明

ポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置

【課題】 ポンプの吸入側の水面上にフロートを浮かべて、このフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止し、ポンプの吸入側に設けられる下向きのカバーを不要にすることのできるポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置を提供することにある。
【解決手段】 ゲート1aの上流側水路2aの水を下流側水路2bに強制排出するポンプ3が昇降式のゲート1aに取り付けられたポンプ付ゲートにおいて、ポンプ1の吸入側の水面上にフロート5を水位の変動に連動して昇降自在に浮かべ、このフロート5により低水位での運転時にポンプ3の吸入側の水面上に発生する渦を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゲートの上流側水路の水を下流側水路に強制排出するポンプが昇降式のゲートに取り付けられたポンプ付ゲートに係り、特に、ポンプの吸入側の水面上にフロートを浮かべて、このフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止するポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポンプ付ゲートで強制排水運転を行う場合、低水位での運転時にポンプの吸入口と水面との距離が短くなると、水面上に渦が発生し、ポンプへの流れ込み排水効率の低下を生じる。
このため、一般的にポンプの吸入側に下向きのベルマウス状のカバーを取り付けて、渦の発生を防止し、渦の吸入防止の対策としている。
【特許文献3】特開2004−36559
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、排水運転においては、ポンプの吸入側に取り付けた下向きのベルマウス状のカバーによって吸入軸芯が水平なポンプ軸に対して下向きとなっているため、吸入抵抗となり排水効率が低下するという新たな課題があった。
この対策としては、ポンプの吸入口の形状を工夫することだけの対策しかとられていない。また、これらの対策では製作費用が嵩み高価のものとなりやすい。
【0004】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、ポンプの吸入側の水面上にフロートを浮かべて、このフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止し、ポンプの吸入側に設けられる下向きのカバーを不要にすることのできるポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、ゲートの上流側水路の水を下流側水路に強制排出するポンプが昇降式のゲートに取り付けられたポンプ付ゲートにおいて、ポンプの吸入側の水面上にフロートを水位の変動に連動して昇降自在に浮かべ、このフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止する手段よりなるものである。
【0006】
また、請求項2の発明は、ゲートの上流側水路の水を下流側水路に強制排出するポンプが昇降式のゲートに取り付けられたポンプ付ゲートにおいて、ポンプの吸入側の水面上にフロートを水位の変動に連動して昇降自在に浮かべ、該フロートを水面に浮かぶ平面型フロートと該平面型フロートの左右両端に下向きに設けられた側部フロートとから構成し、フロートの両側の水路の左右両側壁に該フロートの昇降を案内するフロートガイド溝を形成し、左右のフロートガイド溝の下端面の高さ位置を、左右の側部フロートの下端側がフロートガイド溝の下端面に当接した位置でフロートを構成する平面型フロートがポンプの最低運転水位で水面に浮かぶ高さになる位置にし、平面型フロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止する手段よりなるものである。
【0007】
また、請求項8の発明は、ゲートの上流側水路の水を下流側水路に強制排出するポンプが昇降式のゲートに取り付けられたポンプ付ゲートにおいて、ポンプの吸入側の水面上に平面型のフロートを水位の変動に連動して昇降自在に浮かべ、該フロートの両側の水路の左右両側壁に該フロートの昇降を案内するフロートガイド溝を形成し、左右のフロートガイド溝の下端面の高さ位置を、平面型のフロートの左右両端側の下端側がフロートガイド溝の下端面に当接した位置で平面型のフロートがポンプの最低運転水位で水面に浮かぶ高さになる位置にし、平面型のフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止する手段よりなるものである。
【発明の効果】
【0008】
以上の記載より明らかなように、請求項1、項2及び請求項8の発明に係るポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置によれば、ポンプの吸入側の水面上に浮かべたフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止し、ポンプの吸入側に設けられる下向きのカバーを不要にすることのできる。また、水面上に発生する渦を防止しできるので、ポンプの吸入側のベルマウス軸芯をポンプ軸芯と一致させることができ、しかもこれらの軸芯を水平にすることにより排水効率が低下するのを防ぐことができる。
【0009】
また、請求項2及び請求項8の発明に係るポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置によれば、フロートの両側の水路の左右両側壁に該フロートの昇降を案内するフロートガイド溝を形成することにより、フロートの昇降をスムーズに行わせることができると共に、ポンプの吸入側の水面上の渦発生水域からフロートが逸脱するのを防ぐことができる。
【0010】
また、請求項3及び請求項9の場合には、開閉フロートが上向きに開動することによって、点検又は自然排水のためにゲートを引き上げるときに、フロートの一部を構成する平面型フロートが上昇するポンプの妨げになるのを回避することができる。
【0011】
また、請求項4の場合には、側部フロートに設けた浮力調整部によってフロートの浮力を調整することができる。
【0012】
また、請求項5の場合には、側部フロートの下端側に設けた喫水深調整ネジによって、最低運転水位でのフロートの喫水深さを調整することができる。
【0013】
また、請求項6及び請求項10の場合には、フロートの一部を構成する平面型フロートの上流端部下面側に設けた水面剥離防止曲面によって、流下水が水没している平面型フロートの下面角から剥離するのを防いで、平面型フロートの下面側で渦が発生するのを防ぐことができる。
【0014】
また、請求項7及び請求項11の場合には、フロートの一部を構成する平面型フロートの下流端に設けた制水板によって、平面型フロートの下流端とゲートとの隙間からの渦流水の吸入を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に記載の発明を実施するための最良の形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
【0016】
〔最良の形態−1〕
ここで、図1は側断面図、図2は正面図である。
【0017】
図1、図2において、ポンプ付ゲート1は、ゲート1aの上流側水路2aの水を下流側水路2bや下流側水路2bに設けられた調圧水槽に強制排出するポンプ3がゲート1aに取り付けられた構造からなり、水路2に対してその横断方向に水路2を遮断するようにして設置されている。ポンプ付ゲート1は扉体としてのゲート1aが昇降することにより、水路2を開閉する構造になっている。
【0018】
ポンプ付ゲート1は、自然排水時にはゲート1aを上昇させて排水し、強制排水時にはゲート1aを閉じた状態でゲート1aに取り付けられたポンプ3を利用して、ゲート1aの上流側水路2aの水を下流側水路2bに強制排水する構造になっている。
【0019】
ゲート1aは、四角形で板状のスキンプレート、スキンプレートの上流側水路2aの臨む側の表面に取り付けられた縦横の補強桁などから構成されている。ゲート1aのスキンプレートはこれらの補強桁によって補強されて剛性が高められている。
【0020】
ポンプ付ゲート1が設置された水路2の左右両側面には、上下方向にゲート1aの左右側端を昇降摺動案内する図示しないガイド溝がそれぞれ形成されていて、ゲート1aはこのガイド溝に沿って昇降する構造になっている。ゲート1aの左右側端にはガイド溝との摺動抵抗を少なくする水路2の横断方向に平行な水平軸回りのローラー1bが上下にそれぞれ設けられていて、ゲート1aが昇降する場合にガイド溝に沿ってスムーズに昇降できるようになっている。
【0021】
ゲート1aの上端には、ゲート1aを昇降させるための図示しない例えばワイヤーロープの下端側が連結される連結具1cが取り付けられている。連結具1cは例えば上端の左右両側に2基取り付けられたりする。連結具1cに下端側が連結された図示しない例えばワイヤーロープの上端側はその上方に設けられた図示しない巻取りドラムに巻き取られていて、図示しない駆動モーターにより巻取りドラムを正逆回転させてワイヤーロープを巻き上げたり巻き下げたりして、ワイヤーロープの下端側が連結されたゲート1aを昇降させる構造になっている。
【0022】
水路2の上流側水路2aに臨む側のゲート1aの下部の表面には、上流側水路2aに向けて突出した状態でポンプ3が垂直なゲート1aに対して略水平に取り付けられている。ポンプ3はゲート1aが閉じられた状態でゲート1aの上流側水路2aの水を下流側水路2bに向けて強制排水する機能を果たす。図面ではポンプ3はゲート1aの下部の左右両側に例えば2基取り付けられている。ポンプ3には例えば軸流ポンプが使用される。
【0023】
例えば軸流ポンプからなるポンプ3は、水が通過する導水管3a、導水管3aの内部中央に取り付けられた図示しない例えばインペラハブ、インペラハブに電動機の駆動力を伝達する図示しない伝導軸などから構成されている。
【0024】
ポンプ3の導水管3aは、内部が円筒形に形成され、上流側水路2aに臨む先端側の吸入口3bがラッパ状に形成され、又ラッパ状の吸入口3bは前方に向けて水平に開口していて、吸入軸芯とポンプ軸とは水平な同一線上にあるため、吸入抵抗となるのが防がれて排水効率が低下するのが回避されている。また、ポンプ3の導水管3aはその吸入口3bがゲート全閉状態で水路の底部近くの高さになるようにゲート1aに取り付けられている。
【0025】
導水管3aの後端の周縁側はゲート1aの表面に取り付けられたポンプ取付板1dに形成された図示しない孔にボルトなどによって一体的に取り付けられている。つまりポンプ3の導水管3aはポンプ取付板1dを介してゲート1aの表面に取り付けられている。
【0026】
ポンプ3の導水管3aの後端側には開閉扉4が取り付けられている。開閉扉4には例えばフラップゲートが使用されている。例えばフラップゲートからなる開閉扉4は、ポンプ3が表面に取り付けられたポンプ取付板1dの裏面側に背中合わせに、下流側水路2bに向けて取り付けられている。例えばフラップゲートからなる開閉扉4はゲート1aのスキンプレートに形成された開口部を通じて下流側水路2bに臨んでいる。
【0027】
開閉扉4は、ポンプ取付板1dの裏面側に取り付けられた吐出管4aの下流側水路2bに向けて臨んでいる先端側表面に開閉自在に取り付けられている。例えばフラップゲートからなる開閉扉4は、その上端部が下流側水路2bに臨む吐出管4aの上方のポンプ取付板1dの裏面側にヒンジ構造4bで連結されている。
【0028】
例えばフラップゲートからなる開閉扉4は、上端のヒンジ構造4bを回転中心として、ゲート1aの下流側水路2bに向けて開き、ゲート1aの上流側水路2aに向けて閉じる、所謂逆止弁の構造になっている。開閉扉4は、下流側水路2bの水圧が高い場合には閉じて下流側水路2bからの逆流を防ぎ、ポンプ3の駆動による強制排水時には、ポンプ3からの吐出排水の水圧によって開いてゲート1aの上流側水路2aの水を下流側水路2bに排水できるようになっている。
【0029】
吐出管4a及び閉じた状態の開閉扉4は、ゲート1aの内部側つまりゲート1aの厚み側となるポンプ取付板1dとスキンプレートとの間内に収容されている。ゲート1aの内部側に取り付けられた吐出管4a及び閉じた状態の開閉扉4は上下に昇降するゲート1aの厚み内に収まっていて、ゲート1aが昇降する際に吐出管4a及び開閉扉4が昇降の妨げとなることはない。
【0030】
フロート5は、低水位での運転時にポンプ3の吸入側の水面上に発生する渦を防止する機能を果たすもので、ポンプ3の吸入側つまり導水管3aの吸入口3bの水面上に水位の変動に連動して昇降自在に浮かべられている。フロート5はゲート1aの上流側水路2aの水面上に配置されている。
【0031】
フロート5は、水に浮く浮体物から構成され、又ポンプ3の導水管3aの吸入口3bの水面上に位置する平面型フロート6と、平面型フロート6の左右両端側に下向きに設けられた垂直型の側部フロート7とから構成されている。フロート5は、平面型フロート6と左右の垂直型の側部フロート7とにより、正面からみて下向きにコ字状に形成されている。
【0032】
フロート5が配置された上流側水路2aの左右両側壁には、フロートガイド溝2cがそれぞれ形成されている。フロート5はこの左右のフロートガイド溝2cに案内されて作用する浮力によって水面の変動に追従して昇降する。また、フロートガイド溝2cの下端面は、ポンプ3の最低運転水位で水面に浮かぶフロート5を支持する位置になっている。
【0033】
つまり、フロート5を構成する左右の側部フロート7の下端側がフロートガイド溝2cの下端面に当接した位置で、フロート5を構成する平面型フロート6がポンプ3の最低運転水位で水面に浮かぶ高さになるように、左右のフロートガイド溝2cの下端面の位置が設定されている。
【0034】
平面型フロート6は、平面からみて方形状の形状を有している。方形状の平面型フロート6の左右両端側は、上流側水路2aの左右両側壁に形成されたフロートガイド溝2c内に案内されている。方形状の平面型フロート6の上流端側はその下方のポンプ3の導水管3aの吸入口3bよりも更に上流側水路2a側に延びていて、ポンプ3の吸入側の水面上に発生する渦の部分を完全に覆う位置まで延びている。方形状の平面型フロート6の下流端は上流側水路2aのゲート1aの正面近くまで延びているが、平面型フロート6の下流端はゲート1aの正面との間に隙間があり、昇降するゲート1aに接触しないように配置されている。
【0035】
方形状の平面型フロート6は一定の厚みを有していて、水面の波によって変形し難い構造になっている。平面型フロート6の上流端部下面側には、流下水が水没している平面型フロート6の下面角から剥離しないように、下方に突出し下流側に向かって滑らかな上向きの曲面からなる水面剥離防止曲面6aが形成されている。
【0036】
ポンプ3の導水管3aの昇降進路上となる平面型フロート6の下流側寄り部分は、自然排水を行うときやポンプ3の点検の際にゲート1aを引き上げる場合に平面型フロート6が邪魔にならないように上向き回りに開いて、ゲート1aと一体となって上昇するポンプ3の導水管3aの通過を妨げない構造になっている。
【0037】
即ち、平面型フロート6の下流側寄り部分には開閉フロート6bが取り付けられている。開閉フロート6bは、上流側端部が例えばヒンジ構造によって平面型フロート6に連結されていて、このヒンジ構造を回動中心として上向きに開動して開く構造になっている。開閉フロート6bは平面型フロート6の一部を構成するものである。
【0038】
ゲート1aを引き上げる場合には、ゲート1aと一体となって上昇するポンプ3の導水管3aが開閉フロート6bを押し上げることにより開口され、開閉フロート6bはヒンジ構造を回動中心として上向きに開いて進路の邪魔になるのを回避するようになっている。ゲート1aの全閉時には手動により開いていた開閉フロート6bを閉じられる。
【0039】
開閉フロート6bは平面型フロート6の一部となる下流側寄り部分に平面からみてコ字状に取り付けられている。つまり、平面型フロート6はその下流側寄り部分がコ字状に切り欠かれて凹所が形成されていて、この凹所部分に開閉フロート6bが取り付けられている。この平面型フロート6の凹所の内周縁は内周側に一部突出する段差状になっており、その段差状の凹所の内周縁に当接する開閉フロート6bの外周縁もこれと上下に係合する段差状の形状に形成されている。そして、この平面型フロート6の凹所の内周縁の段差部分の表面には渦の連行防止ゴム6cが取り付けられている。
【0040】
設計条件つまり流速、最低運転水位とポンプ3の位置などの関係によっては平面型フロート6の下流端にはゲート1a側からの渦流水の吸入を防ぐために、必要に応じて制水板6dが設置される場合がある。制水板6dはゲート1a寄りの平面型フロート6の下流側端部に下方に向けて取り付けられている。制水板6dは平面型フロート6の下面から下方に突出しており、又下流側端部の幅方向にわたって突出して取り付けられている
【0041】
この制水板6dは、ゲート1aを開いて上流水を自然排水させる場合に、流下物がスムーズに流れるように、下流側水路2bに向けて上向きに回動できるように、制水板6dの上端が平面型フロート6の下流端にヒンジ構造で連結されている。
【0042】
左右の側部フロート7は、平面型フロート5aの左右両端から下向きに鉛直にそれぞれ設けられており、フロートガイド溝2c内に配置されて、フロートガイド溝2c内を浮力によって昇降する構造になっている。左右の側部フロート7は、フロート5の浮力や喫水深さの調整ができるようになっている。
【0043】
例えば左右の側部フロート7の内部には浮力調整部7aが設けられている。浮力調整部7aは例えば浮力調整タンク用の空洞が形成され、この浮力調整タンク内に水を注入又は排出してフロート5の浮力の調整ができるようになっている。
【0044】
また、例えば左右の側部フロート7の下端側には喫水深調整ネジ7bが下向きに突出進退自在に取り付けられていて、側部フロート7の下端からの喫水深調整ネジ7bの突出長さを調整することで、側部フロート7の下端側がフロートガイド溝2cの下端面に当接する高さを調整して、最低運転水位でのフロート5の喫水深さを調整できる構造になっている。
【0045】
平面型フロート6の左右両端側の上面には、上流側水路2aの左右両側壁に形成されたフロートガイド溝2cとの摺動抵抗を少なくするフロートガイド溝2cの奥側表面に平行な水平軸回りのローラー6eがそれぞれ設けられている。又左右の側部フロート7の下部にも、フロートガイド溝2cとの摺動抵抗を少なくするフロートガイド溝2cの奥側表面に平行な水平軸回りの水平軸回りのローラー7cがそれぞれ設けられている。フロート5は、これらの上下に設けられたローラー6e、ローラー7cによって、上流側水路2aの水位が変動する場合に作用する浮力によってフロートガイド溝2cに沿ってスムーズに昇降できるようになっている。
【0046】
次に、上記発明を実施するための最良の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
ゲート1aを閉じた状態で上流側水路2aの水を下流側水路2bに強制排水するために、ポンプ3を駆動させると、ゲート1aの上流側水路2aの水はポンプ3の水平な導水管3aの吸入口3bに向けて吸引されることになる。このとき、ポンプ3の導水管3aの吸入口3bの上方の水面上にはフロート5の平面型フロート6が浮かべてある。
【0047】
ポンプ3の水平な導水管3aの吸入口3bから水が吸引される場合において、特に上流側水路2aの水位が最低運転水位又はこれに近い低水位ときには、吸入口3bの上方水面には吸い込みによる渦が発生するが、この吸い込みによる渦が発生し易い水面域には平面型フロート6が浮いていて、この平面型フロート6が吸い込みによる渦の発生を邪魔にするために、吸い込みによる渦の発生が防がれる。
【0048】
このように、低水位の強制排水時において、ポンプ3の導水管3aの吸入口3bの上方の水面での吸い込みによる渦の発生を防ぐことができるため、ポンプ3の導水管3aの吸入口3bの軸芯をポンプ軸に対して下向きにする必要がなく、吸入口3bの軸芯をポンプ軸と平行な水平にすることができ、吸入口3bの軸芯をポンプ軸に対して下向きにすることによって、生じる排水効率の低下を防ぐことができる。
【0049】
ところで、ゲート1aの上流側水路2aの水位が変動する場合、フロート5は作用する浮力により水面の水位の変動に追従して、水面の高さ位置で昇降する。フロート5の昇降は水路2の左右側壁に形成されたフロートガイド溝2cに案内されて行われる。水面の変動に追従するフロート5の昇降は平面型フロート6及び左右の側部フロート7に設けられたローラー6e、ローラー7cによってスムーズに行われる。
【0050】
また、ゲート1aの上流側水路2aの水位が強制排水の最低運転水位より更に低下した場合には、水面の水位の変動に追従するフロート5は、その左右両側の側部フロート7の下端側が上流側水路2aの底面より高い位置に形成されたフロートガイド溝2cの下端面に当接することにより、更に低下した水面に追従することなく、ポンプ3の導水管3aの上方位置でその降下が止まり、フロート5の平面型フロート6は更に低下した水面から離れて導水管3aの上方位置で停止し、フロート5の平面型フロート6がポンプ3の導水管3aに当たるのが回避される。
【0051】
最低運転水位より更に低下していた上流側水路2aの水位が上昇して、その水面が平面型フロート6の停止位置まで上昇すると、平面型フロート6には浮力が作用し始めて、この浮力によってフロート5は上昇する水面に追従して上昇する。
【0052】
このように、フロート5は変動する水面に追従して昇降する一方で、最低運転水位より更に水位が低下した場合には、左右の側部フロート7の下端側がフロートガイド溝2cの底面に当接することで停止して、フロート5の平面型フロート6がポンプ3の導水管3aに当たることがない。
【0053】
また、ゲートの点検或いは自然排水のために、ゲート1aを全開状態に引き上げる場合には、ゲート1aと一体となって上昇するポンプ3の導水管3aが上方側の平面型フロート6の開閉フロート6bを下側から押し上げる。押し上げられた開閉フロート6bは一端のヒンジ構造部分を中心として上向きに回動して開き、ポンプ3は平面型フロート6の開閉フロート6bの開いた部分を通過してその上方にゲート1aと共に引き上げられる。
【0054】
引き上げられていたゲート1aが全閉するために降下する場合には、ポンプ3は平面型フロート6の開閉フロート6bの開いた部分を通過してその下方にゲート1aと共に引き下げられる。その後、開いていた開閉フロート6bは作業の手で閉じられる。
【0055】
また、ゲートの点検或いは自然排水のために、ゲート1aを全開状態に引き上げる場合、開閉扉4はポンプ取付板1dとスキンプレートとの間にあってゲート1aの内部側にあるため、ゲート1aを昇降させる際に開閉扉4がこれの妨げとなることはない。

【0056】
〔最良の形態−2〕
ここで、図3は側断面図、図4は正面図である。
【0057】
図3、図4において、ポンプ付ゲート11は、ゲート11aの上流側水路12aの水を下流側水路12bや下流側水路12bに設けられた調圧水槽に強制排出するポンプ13がゲート11aに取り付けられた構造からなり、水路12に対してその横断方向に水路12を遮断するようにして設置されている。ポンプ付ゲート11は扉体としてのゲート11aが昇降することにより、水路12を開閉する構造になっている。
【0058】
ポンプ付ゲート11は、自然排水時にはゲート11aを上昇させて排水し、強制排水時にはゲート11aを閉じた状態でゲート11aに取り付けられたポンプ13を利用して、ゲート11aの上流側水路12aの水を下流側水路12bに強制排水する構造になっている。
【0059】
ゲート11aは、四角形で板状のスキンプレート、スキンプレートの上流側水路12aの臨む側の表面に取り付けられた縦横の補強桁などから構成されている。ゲート11aのスキンプレートはこれらの補強桁によって補強されて剛性が高められている。
【0060】
ポンプ付ゲート11が設置された水路12の左右両側面には、上下方向にゲート11aの左右側端を昇降摺動案内する図示しないガイド溝がそれぞれ形成されていて、ゲート11aはこのガイド溝に沿って昇降する構造になっている。ゲート11aの左右側端にはガイド溝との摺動抵抗を少なくする水路12の横断方向に平行な水平軸回りのローラー11bが上下にそれぞれ設けられていて、ゲート11aが昇降する場合にガイド溝に沿ってスムーズに昇降できるようになっている。
【0061】
ゲート11aの上端には、ゲート11aを昇降させるための図示しない例えばワイヤーロープの下端側が連結される連結具11cが取り付けられている。連結具11cは例えば上端の左右両側に2基取り付けられたりする。連結具11cに下端側が連結された図示しない例えばワイヤーロープの上端側はその上方に設けられた図示しない巻取りドラムに巻き取られていて、図示しない駆動モーターにより巻取りドラムを正逆回転させてワイヤーロープを巻き上げたり巻き下げたりして、ワイヤーロープの下端側が連結されたゲート11aを昇降させる構造になっている。
【0062】
水路12の上流側水路12aに臨む側のゲート11aの下部の表面には、上流側水路12aに向けて突出した状態でポンプ13が垂直なゲート11aに対して略水平に取り付けられている。ポンプ13はゲート11aが閉じられた状態でゲート11aの上流側水路12aの水を下流側水路12bに向けて強制排水する機能を果たす。図面ではポンプ13はゲート11aの下部の左右両側に例えば2基取り付けられている。ポンプ13には例えば軸流ポンプが使用される。
【0063】
例えば軸流ポンプからなるポンプ13は、水が通過する導水管13a、導水管13aの内部中央に取り付けられた図示しない例えばインペラハブ、インペラハブに電動機の駆動力を伝達する図示しない伝導軸などから構成されている。
【0064】
ポンプ13の導水管13aは、内部が円筒形に形成され、上流側水路12aに臨む先端側の吸入口13bがラッパ状に形成され、又ラッパ状の吸入口13bは前方に向けて水平に開口していて、吸入軸芯とポンプ軸とは水平な同一線上にあるため、吸入抵抗となるのが防がれて排水効率が低下するのが回避されている。また、ポンプ13の導水管13aはその吸入口13bがゲート全閉状態で水路の底部近くの高さになるようにゲート11aに取り付けられている。
【0065】
導水管13aの後端の周縁側はゲート11aの表面に取り付けられたポンプ取付板11dに形成された図示しない孔にボルトなどによって一体的に取り付けられている。つまりポンプ13の導水管13aはポンプ取付板11dを介してゲート11aの表面に取り付けられている。
【0066】
ポンプ13の導水管13aの後端側には開閉扉14が取り付けられている。開閉扉14には例えばフラップゲートが使用されている。例えばフラップゲートからなる開閉扉14は、ポンプ13が表面に取り付けられたポンプ取付板11dの裏面側に背中合わせに、下流側水路12bに向けて取り付けられている。例えばフラップゲートからなる開閉扉14はゲート11aのスキンプレートに形成された開口部を通じて下流側水路12bに臨んでいる。
【0067】
開閉扉14は、ポンプ取付板11dの裏面側に取り付けられた吐出管14aの下流側水路12bに向けて臨んでいる先端側表面に開閉自在に取り付けられている。例えばフラップゲートからなる開閉扉14は、その上端部が下流側水路12bに臨む吐出管14aの上方のポンプ取付板11dの裏面側にヒンジ構造14bで連結されている。
【0068】
例えばフラップゲートからなる開閉扉14は、上端のヒンジ構造14bを回転中心として、ゲート11aの下流側水路12bに向けて開き、ゲート11aの上流側水路12aに向けて閉じる、所謂逆止弁の構造になっている。開閉扉14は、下流側水路12bの水圧が高い場合には閉じて下流側水路12bからの逆流を防ぎ、ポンプ13の駆動による強制排水時には、ポンプ13からの吐出排水の水圧によって開いてゲート11aの上流側水路12aの水を下流側水路12bに排水できるようになっている。
【0069】
吐出管14a及び閉じた状態の開閉扉14は、ゲート11aの内部側つまりゲート11aの厚み側となるポンプ取付板11dとスキンプレートとの間内に収容されている。ゲート11aの内部側に取り付けられた吐出管14a及び閉じた状態の開閉扉14は上下に昇降するゲート11aの厚み内に収まっていて、ゲート11aが昇降する際に吐出管14a及び開閉扉14が昇降の妨げとなることはない。
【0070】
フロート15は、低水位での運転時にポンプ13の吸入側の水面上に発生する渦を防止する機能を果たすもので、ポンプ13の吸入側つまり導水管13aの吸入口13bの水面上に水位の変動に連動して昇降自在に浮かべられている。フロート15はゲート11aの上流側水路12aの水面上に配置されている。
【0071】
フロート15は、水に浮く浮体物から構成され、又ポンプ13の導水管13aの吸入口13bの水面上に位置する平面型の構造から構成されている。フロート15は、正面からみて水平板状に形成されている。
【0072】
フロート15が配置された上流側水路12aの左右両側壁には、フロートガイド溝12cがそれぞれ形成されている。フロート15はこの左右のフロートガイド溝12cに案内されて作用する浮力によって水面の変動に追従して昇降する。また、フロートガイド溝12cの下端面は、ポンプ13の導水管13aより上方位置の高さに形成されていて、ポンプ13の最低運転水位で水面に浮かぶフロート15を支持する位置になっている。
【0073】
つまり、フロート15の左右両端の下端がフロートガイド溝12cの下端面に当接した位置で、平面型のフロート15がポンプ13の最低運転水位で水面に浮かぶ高さになるように、左右のフロートガイド溝12cの下端の位置が設定されている。
【0074】
フロート15は、平面からみて方形状の形状を有している。方形状のフロート15の左右両端側は、上流側水路12aの左右両側壁に形成されたフロートガイド溝12c内に案内されている。方形状のフロート15の上流端側はその下方のポンプ13の導水管13aの吸入口13bよりも更に上流側水路12a側に延びていて、ポンプ13の吸入側の水面上に発生する渦の部分を完全に覆う位置まで延びている。方形状のフロート15の下流端は上流側水路12aのゲート11aの正面近くまで延びているが、フロート15の下流端はゲート11aの正面との間に隙間があり、昇降するゲート11aに接触しないように配置されている。
【0075】
方形状の平面型のフロート15は一定の厚みを有していて、水面の波によって変形し難い構造になっている。平面型のフロート15の上流端部下面側には、流下水が水没している平面型のフロート15の下面角から剥離しないように、下方に突出し下流側に向かって滑らかな上向きの曲面からなる水面剥離防止曲面15aが形成されている。
【0076】
ポンプ13の導水管13aの昇降進路上となる平面型のフロート15の下流側寄り部分は、自然排水を行うときやポンプ13の点検の際にゲート11aを引き上げる場合に平面型のフロート15が邪魔にならないように上向き回りに開いて、ゲート11aと一体となって上昇するポンプ13の導水管13aの通過を妨げない構造になっている。
【0077】
即ち、平面型のフロート15の下流側寄り部分には開閉フロート15bが取り付けられている。開閉フロート15bは、上流側端部が例えばヒンジ構造によって平面型のフロート15に連結されていて、このヒンジ構造を回動中心として上向きに開動して開く構造になっている。開閉フロート15bは平面型のフロート15の一部を構成するものである。
【0078】
ゲート11aを引き上げる場合には、ゲート11aと一体となって上昇するポンプ13の導水管13aが開閉フロート15bを押し上げることにより開口され、開閉フロート15bはヒンジ構造を回動中心として上向きに開いて進路の邪魔になるのを回避するようになっている。ゲート11aの全閉時には手動により開いていた開閉フロート15bを閉じられる。
【0079】
開閉フロート15bは平面型のフロート15の下流側寄り部分に平面からみてコ字状に取り付けられている。つまり、平面型のフロート15はその下流側寄り部分がコ字状に切り欠かれて凹所が形成されていて、この凹所部分に開閉フロート15bが取り付けられている。この平面型のフロート15の凹所の内周縁は内周側に一部突出する段差状になっており、その段差状の凹所の内周縁に当接する開閉フロート15bの外周縁もこれと上下に係合する段差状の形状に形成されている。そして、この平面型のフロート15の凹所の内周縁の段差部分の表面には渦の連行防止ゴム15cが取り付けられている。
【0080】
設計条件つまり流速、最低運転水位とポンプ13の位置などの関係によっては平面型のフロート15の下流端にはゲート11a側からの渦流水の吸入を防ぐために、必要に応じて制水板15dが設置される場合がある。制水板15dはゲート11a寄りの平面型のフロート15の下流側端部に下方に向けて取り付けられている。制水板15dは平面型のフロート15の下面から下方に突出しており、又下流側端部の幅方向にわたって突出して取り付けられている
【0081】
この制水板15dは、ゲート11aを開いて上流水を自然排水させる場合に、流下物がスムーズに流れるように、下流側水路12bに向けて上向きに回動できるように、制水板15dの上端が平面型のフロート15の下流端にヒンジ構造で連結されている。
【0082】
平面型のフロート15の左右両端側の上面には、上流側水路12aの左右両側壁に形成されたフロートガイド溝12cとの摺動抵抗を少なくするフロートガイド溝12cの奥側表面に平行な水平軸回りのローラー15eがそれぞれ設けられている。フロート15は、左右両端側に設けられたローラー15eによって、上流側水路12aの水位が変動する場合に作用する浮力によってフロートガイド溝12cに沿ってスムーズに昇降できるようになっている。
【0083】
次に、上記発明を実施するための最良の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
ゲート11aを閉じた状態で上流側水路12aの水を下流側水路12bに強制排水するために、ポンプ13を駆動させると、ゲート11aの上流側水路12aの水はポンプ13の水平な導水管13aの吸入口13bに向けて吸引されることになる。このとき、ポンプ13の導水管13aの吸入口13bの上方の水面上には平面型のフロート15が浮かべてある。
【0084】
ポンプ13の水平な導水管13aの吸入口13bから水が吸引される場合において、特に上流側水路12aの水位が最低運転水位又はこれに近い低水位ときには、吸入口13bの上方水面には吸い込みによる渦が発生するが、この吸い込みによる渦が発生し易い水面域には平面型のフロート15が浮いていて、この平面型のフロート15が吸い込みによる渦の発生を邪魔にするために、吸い込みによる渦の発生が防がれる。
【0085】
このように、低水位の強制排水時において、ポンプ13の導水管13aの吸入口13bの上方の水面での吸い込みによる渦の発生を防ぐことができるため、ポンプ13の導水管13aの吸入口13bの軸芯をポンプ軸に対して下向きにする必要がなく、吸入口13bの軸芯をポンプ軸と平行な水平にすることができ、吸入口13bの軸芯をポンプ軸に対して下向きにすることによって、生じる排水効率の低下を防ぐことができる。
【0086】
ところで、ゲート11aの上流側水路12aの水位が変動する場合、フロート15は作用する浮力により水面の水位の変動に追従して、水面の高さ位置で昇降する。フロート15の昇降は水路12の左右側壁に形成されたフロートガイド溝12cに案内されて行われる。水面の変動に追従するフロート15の昇降は左右両端側に設けられたローラー15eによってスムーズに行われる。
【0087】
また、ゲート11aの上流側水路12aの水位が強制排水の最低運転水位より更に低下した場合には、水面の水位の変動に追従するフロート15は、その左右両側の下端側がポンプ13の導水管13aの高さより高い位置に形成されたフロートガイド溝12cの下端面に当接することにより、更に低下した水面に追従することなく、ポンプ13の導水管13aの上方位置でその降下が止まり、平面型のフロート15は更に低下した水面から離れて導水管13aの上方位置で停止し、平面型のフロート15がポンプ13の導水管13aに当たるのが回避される。
【0088】
最低運転水位より更に低下していた上流側水路12aの水位が上昇して、その水面が平面型のフロート15の停止位置まで上昇すると、平面型のフロート15には浮力が作用し始めて、この浮力によってフロート15は上昇する水面に追従して上昇する。
【0089】
このように、フロート15は変動する水面に追従して昇降する一方で、最低運転水位より更に水位が低下した場合には、平面型のフロート15の左右の両端側の下端側がフロートガイド溝12cの下端面に当接することで停止して、平面型のフロート15がポンプ13の導水管13aに当たることがない。
【0090】
また、ゲートの点検或いは自然排水のために、ゲート11aを全開状態に引き上げる場合には、ゲート11aと一体となって上昇するポンプ13の導水管13aが上方側の平面型のフロート15の開閉フロート15bを下側から押し上げる。押し上げられた開閉フロート15bは一端のヒンジ構造部分を中心として上向きに回動して開き、ポンプ13は平面型のフロート15の開閉フロート15bの開いた部分を通過してその上方にゲート11aと共に引き上げられる。
【0091】
引き上げられていたゲート11aが全閉するために降下する場合には、ポンプ13は平面型のフロート15の開閉フロート15bの開いた部分を通過してその下方にゲート11aと共に引き下げられる。その後、開いていた開閉フロート15bは作業の手で閉じられる。
【0092】
また、ゲートの点検或いは自然排水のために、ゲート11aを全開状態に引き上げる場合、開閉扉14はポンプ取付板11dとスキンプレートとの間にあってゲート11aの内部側にあるため、ゲート11aを昇降させる際に開閉扉14がこれの妨げとなることはない。

【0093】
〔最良の形態−3〕
ここで、図5は側断面図、図6は正面図である。
【0094】
図5、図6において、ポンプ付ゲート21は、ゲート21aの上流側水路22aの水を下流側水路22bや下流側水路22bに設けられた調圧水槽に強制排出するポンプ23がゲート21aに取り付けられた構造からなり、水路22に対してその横断方向に水路22を遮断するようにして設置されている。ポンプ付ゲート21は扉体としてのゲート21aが昇降することにより、水路22を開閉する構造になっている。
【0095】
ポンプ付ゲート21は、自然排水時にはゲート21aを上昇させて排水し、強制排水時にはゲート21aを閉じた状態でゲート21aに取り付けられたポンプ23を利用して、ゲート21aの上流側水路22aの水を下流側水路22bに強制排水する構造になっている。
【0096】
ゲート21aは、四角形で板状のスキンプレート、スキンプレートの上流側水路22aの臨む側の表面に取り付けられた縦横の補強桁などから構成されている。ゲート21aのスキンプレートはこれらの補強桁によって補強されて剛性が高められている。
【0097】
ポンプ付ゲート21が設置された水路22の左右両側面には、上下方向にゲート21aの左右側端を昇降摺動案内する図示しないガイド溝がそれぞれ形成されていて、ゲート21aはこのガイド溝に沿って昇降する構造になっている。ゲート21aの左右側端にはガイド溝との摺動抵抗を少なくする水路22の横断方向に平行な水平軸回りのローラー21bが上下にそれぞれ設けられていて、ゲート21aが昇降する場合にガイド溝に沿ってスムーズに昇降できるようになっている。
【0098】
ゲート21aの上端には、ゲート21aを昇降させるための図示しない例えばワイヤーロープの下端側が連結される連結具21cが取り付けられている。連結具21cは例えば上端の左右両側に2基取り付けられたりする。連結具21cに下端側が連結された図示しない例えばワイヤーロープの上端側はその上方に設けられた図示しない巻取りドラムに巻き取られていて、図示しない駆動モーターにより巻取りドラムを正逆回転させてワイヤーロープを巻き上げたり巻き下げたりして、ワイヤーロープの下端側が連結されたゲート21aを昇降させる構造になっている。
【0099】
水路22の上流側水路22aに臨む側のゲート21aの下部のポンプ取付箇所の表面は開口されており、この開口された内部にはポンプ23の先端がゲート21aの表面から上流側水路22aに突出しない状態で取り付けられている。またポンプ23は下流側水路22bに向けて突出した状態で垂直なゲート21aに対して略水平に取り付けられている。ポンプ23はゲート21aが閉じられた状態でゲート21aの上流側水路22aの水を下流側水路22bに向けて強制排水する機能を果たす。図面ではポンプ23はゲート21aの下部の左右両側に例えば2基取り付けられている。ポンプ23には例えば軸流ポンプが使用される。
【0100】
例えば軸流ポンプからなるポンプ23は、水が通過する導水管23a、導水管23aの内部中央に取り付けられた図示しない例えばインペラハブ、インペラハブに電動機の駆動力を伝達する図示しない伝導軸などから構成されている。
【0101】
ポンプ23の導水管23aは、内部が円筒形に形成され、上流側水路22aに臨む先端側の吸入口23bがラッパ状に形成され、又ラッパ状の吸入口23bは前方に向けて水平に開口していて、吸入軸芯とポンプ軸とは水平な同一線上にあるため、吸入抵抗となるのが防がれて排水効率が低下するのが回避されている。また、ポンプ23の導水管23aはその吸入口23bがゲート全閉状態で水路の底部近くの高さになるようにゲート21aに取り付けられている。
【0102】
導水管23aの前部側の周縁側はゲート21aの下流側水路22bに臨む表面に取り付けられたポンプ取付板21dに形成された図示しない孔にボルトなどによって一体的に取り付けられている。つまりポンプ23の導水管23aはポンプ取付板21dを介してゲート21aの下流側水路22bに臨む表面に取り付けられている。
【0103】
ポンプ23の導水管23aの後端側には開閉扉24が取り付けられている。開閉扉24には例えばフラップゲートが使用されている。例えばフラップゲートからなる開閉扉24は、下流側水路22bに向けて取り付けられている。
【0104】
開閉扉24は、導水管23aの後端側に取り付けられた吐出管24aの下流側水路22bに向けて臨んでいる先端側表面に開閉自在に取り付けられている。例えばフラップゲートからなる開閉扉24は、その上端部が下流側水路22bに臨む導水管23aの後端と吐出管24aとを接合するフランジの上部にヒンジ構造24bで連結されている。
【0105】
例えばフラップゲートからなる開閉扉24は、上端のヒンジ構造24bを回転中心として、ゲート21aの下流側水路22bに向けて開き、ゲート21aの上流側水路22aに向けて閉じる、所謂逆止弁の構造になっている。開閉扉24は、下流側水路22bの水圧が高い場合には閉じて下流側水路22bからの逆流を防ぎ、ポンプ23の駆動による強制排水時には、ポンプ23からの吐出排水の水圧によって開いてゲート21aの上流側水路22aの水を下流側水路22bに排水できるようになっている。
【0106】
フロート25は、低水位での運転時にポンプ23の吸入側の水面上に発生する渦を防止する機能を果たすもので、ポンプ23の吸入側つまり導水管23aの吸入口23bの前方のゲート21aの上流側水路22aの水面上に水位の変動に連動して昇降自在に浮かべられている。フロート25はゲート21aの上流側水路22aの水面上に配置されている。
【0107】
フロート25は、水に浮く浮体物から構成され、又ポンプ23の導水管23aの吸入口23bの前方のゲート21a水面上に位置する平面型の構造から構成されている。フロート25は、正面からみて水平板状に形成されている。
【0108】
フロート25が配置された上流側水路22aの左右両側壁には、フロートガイド溝22cがそれぞれ形成されている。フロート25はこの左右のフロートガイド溝22cに案内されて作用する浮力によって水面の変動に追従して昇降する。また、フロートガイド溝22cの下端面は、ポンプ23の導水管23aより上方位置の高さに形成されていて、ポンプ23の最低運転水位で水面に浮かぶフロート25を支持する位置になっている。
【0109】
つまり、フロート25の左右両端の下端がフロートガイド溝22cの下端面に当接した位置で、平面型のフロート25がポンプ23の最低運転水位で水面に浮かぶ高さになるように、左右のフロートガイド溝22cの下端の位置が設定されている。
【0110】
フロート25は、平面からみて方形状の形状を有している。方形状のフロート25の左右両端側は、上流側水路22aの左右両側壁に形成されたフロートガイド溝22c内に案内されている。方形状のフロート25の上流端側はその下方のポンプ23の導水管23aの吸入口23bよりも更に上流側水路22a側に延びていて、ポンプ23の吸入側の水面上に発生する渦の部分を完全に覆う位置まで延びている。方形状のフロート25の下流端は上流側水路22aのゲート21aの表面に接している。
【0111】
方形状の平面型のフロート25は一定の厚みを有していて、水面の波によって変形し難い構造になっている。平面型のフロート25の上流端部下面側には、流下水が水没している平面型のフロート25の下面角から剥離しないように、下方に突出し下流側に向かって滑らかな上向きの曲面からなる水面剥離防止曲面25aが形成されている。
【0112】
ゲート1aの表面と接する平面型のフロート25の下流端には、ゲート21aの表面との隙間を無くし渦の発生、空気の混入を防ぐために、水密ゴム25bが設けられている。また、最低運転水位でフロート25の下流端の水密ゴム25bが当接するゲート21aの表面には受け座21eがゲート21aの幅方向に設けられている。
【0113】
平面型のフロート25の左右両端側の上面には、上流側水路22aの左右両側壁に形成されたフロートガイド溝22cとの摺動抵抗を少なくするフロートガイド溝22cの奥側表面に平行な水平軸回りのローラー25cがそれぞれ設けられている。フロート25は、左右両端側に設けられたローラー25cによって、上流側水路22aの水位が変動する場合に作用する浮力によってフロートガイド溝22cに沿ってスムーズに昇降できるようになっている。
【0114】
次に、上記発明を実施するための最良の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
ゲート21aを閉じた状態で上流側水路22aの水を下流側水路22bに強制排水するために、ポンプ23を駆動させると、ゲート21aの上流側水路22aの水はポンプ23の水平な導水管23aの吸入口23bに向けて吸引されることになる。このとき、ポンプ23の導水管23aの吸入口23bの上方の水面上には平面型のフロート25が浮かべてある。
【0115】
ポンプ23の水平な導水管23aの吸入口23bから水が吸引される場合において、特に上流側水路22aの水位が最低運転水位又はこれに近い低水位ときには、吸入口23bの上方水面には吸い込みによる渦が発生するが、この吸い込みによる渦が発生し易い水面域には平面型のフロート25が浮いていて、この平面型のフロート25が吸い込みによる渦の発生を邪魔にするために、吸い込みによる渦の発生が防がれる。
【0116】
このように、低水位の強制排水時において、ポンプ23の導水管23aの吸入口23bの上方の水面での吸い込みによる渦の発生を防ぐことができるため、ポンプ23の導水管23aの吸入口23bの軸芯をポンプ軸に対して下向きにする必要がなく、吸入口23bの軸芯をポンプ軸と平行な水平にすることができ、吸入口23bの軸芯をポンプ軸に対して下向きにすることによって、生じる排水効率の低下を防ぐことができる。
【0117】
ところで、ゲート21aの上流側水路22aの水位が変動する場合、フロート25は作用する浮力により水面の水位の変動に追従して、水面の高さ位置で昇降する。フロート25の昇降は水路22の左右側壁に形成されたフロートガイド溝22cに案内されて行われる。水面の変動に追従するフロート25の昇降は左右両端側に設けられたローラー25eによってスムーズに行われる。
【0118】
また、ゲート21aの上流側水路22aの水位が強制排水の最低運転水位より更に低下した場合には、水面の水位の変動に追従するフロート25は、その左右両側の下端側がポンプ23の導水管23aの高さより高い位置に形成されたフロートガイド溝22cの下端面に当接することにより、更に低下した水面に追従することなく、ポンプ23の導水管23aの上方位置でその降下が止まり、平面型のフロート25は更に低下した水面から離れて導水管23aの吸入口3bの前方の上方位置で停止し、平面型のフロート25がポンプ23の導水管23aの吸入口23bの前方に降下するのが回避される。
【0119】
最低運転水位より更に低下していた上流側水路22aの水位が上昇して、その水面が平面型のフロート25の停止位置まで上昇すると、平面型のフロート25には浮力が作用し始めて、この浮力によってフロート25は上昇する水面に追従して上昇する。
【0120】
このように、フロート25は変動する水面に追従して昇降する一方で、最低運転水位より更に水位が低下した場合には、平面型のフロート25の左右の両端側の下端側がフロートガイド溝22cの下端面に当接することで停止して、平面型のフロート25がポンプ23の導水管23aに当たることがない。
【0121】
また、ゲートの点検或いは自然排水のために、ゲート21aを全開状態に引き上げる場合には、ゲート21aと一体となって上昇するポンプ23の導水管23aは下流側水路22bに向けて突出しているために、平面型のフロート25は上昇の妨げになることはない。また、引き上げられていたゲート21aが全閉するために降下する場合も、平面型のフロート25は降下の妨げになることはない。
【0122】
なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。例えば上記の最良の形態においては、開閉扉4、14、24としてフラップゲートの場合で説明したがこれに限定されるものではなく、フラップゲートに代えて例えば電動の仕切弁・バタフライバルブ、マイターゲート(観音扉)などでもよい。
また、最良の形態−3においては、フロート25は平面型で説明したが、これに限定されるものではなく、最良の形態−1のように、フロート25の左右両端側に下向きに側部フロートがそれぞれ設けられるものでもよい。この場合には、最良の形態−1と同様に、側部フロートには浮力調整部、喫水深調整ネジ、ローラーが設けられる。又フロートガイド溝22cの下端面の位置も現在よりも低い最良の形態−1と同様の位置となる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】この発明を実施するための最良の形態−1を示す側断面図である。
【図2】この発明を実施するための最良の形態−1を示す正面図である。
【図3】この発明を実施するための最良の形態−2を示す側断面図である。
【図4】この発明を実施するための最良の形態−2を示す正面図である。
【図5】この発明を実施するための最良の形態−3を示す側断面図である。
【図6】この発明を実施するための最良の形態−3を示す正面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 ポンプ付ゲート
1a ゲート
1b ローラー
1c 連結具
1d ポンプ取付板
2 水路
2a 上流側水路
2b 下流側水路
2c フロートガイド溝
3 ポンプ
3a 導水管
3b 吸入口
4 開閉扉
4a 吐出管
4b ヒンジ構造
5 フロート
6 平面型フロート
6a 水面剥離防止曲面
6b 開閉フロート
6c 渦の連行防止ゴム
6d 制水板
6e ローラー
7 側部フロート
7a 浮力調整部
7b 喫水深調整ネジ
7c ローラー
11 ポンプ付ゲート
11a ゲート
11b ローラー
11c 連結具
11d ポンプ取付板
12 水路
12a 上流側水路
12b 下流側水路
12c フロートガイド溝
13 ポンプ
13a 導水管
13b 吸入口
14 開閉扉
14a 吐出管
14b ヒンジ構造
15 フロート
15a 水面剥離防止曲面
15b 開閉フロート
15c 渦の連行防止ゴム
15d 制水板
15e ローラー
21 ポンプ付ゲート
21a ゲート
21b ローラー
21c 連結具
21d ポンプ取付板
21e 受け座
22 水路
22a 上流側水路
22b 下流側水路
22c フロートガイド溝
23 ポンプ
23a 導水管
23b 吸入口
24 開閉扉
24a 吐出管
24b ヒンジ構造
25 フロート
25a 水面剥離防止曲面
25b 水密ゴム
25c ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートの上流側水路の水を下流側水路に強制排出するポンプが昇降式のゲートに取り付けられたポンプ付ゲートにおいて、ポンプの吸入側の水面上にフロートを水位の変動に連動して昇降自在に浮かべ、このフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止することを特徴とするポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項2】
ゲートの上流側水路の水を下流側水路に強制排出するポンプが昇降式のゲートに取り付けられたポンプ付ゲートにおいて、ポンプの吸入側の水面上にフロートを水位の変動に連動して昇降自在に浮かべ、該フロートを水面に浮かぶ平面型フロートと該平面型フロートの左右両端に下向きに設けられた側部フロートとから構成し、フロートの両側の水路の左右両側壁に該フロートの昇降を案内するフロートガイド溝を形成し、左右のフロートガイド溝の下端面の高さ位置を、左右の側部フロートの下端側がフロートガイド溝の下端面に当接した位置でフロートを構成する平面型フロートがポンプの最低運転水位で水面に浮かぶ高さになる位置にし、平面型フロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止することを特徴とするポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項3】
昇降するポンプの進路上になる平面型フロートの一部には上向きに開動する開閉フロートが設けられた請求項2記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項4】
側部フロートにはフロートの浮力を調整する浮力調整部が設けられた請求項2記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項5】
側部フロートの下端側には最低運転水位でのフロートの喫水深さを調整できる喫水深調整ネジが設けられた請求項2記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項6】
平面型フロートの上流端部下面側には、下方に突出し下流側に向かって滑らかな上向きの曲面からなる水面剥離防止曲面が形成された請求項2記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項7】
平面型フロートの下流端には、ゲート側からの渦流水の吸入を防ぐ制水板が設置される請求項2記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項8】
ゲートの上流側水路の水を下流側水路に強制排出するポンプが昇降式のゲートに取り付けられたポンプ付ゲートにおいて、ポンプの吸入側の水面上に平面型のフロートを水位の変動に連動して昇降自在に浮かべ、該フロートの両側の水路の左右両側壁に該フロートの昇降を案内するフロートガイド溝を形成し、左右のフロートガイド溝の下端面の高さ位置を、平面型のフロートの左右両端側の下端側がフロートガイド溝の下端面に当接した位置で平面型のフロートがポンプの最低運転水位で水面に浮かぶ高さになる位置にし、平面型のフロートにより低水位での運転時にポンプの吸入側の水面上に発生する渦を防止することを特徴とするポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項9】
昇降するポンプの進路上になる平面型のフロートの一部には上向きに開動する開閉フロートが設けられた請求項8記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項10】
平面型のフロートの上流端部下面側には、下方に突出し下流側に向かって滑らかな上向きの曲面からなる水面剥離防止曲面が形成された請求項8記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。
【請求項11】
平面型のフロートの下流端には、ゲート側からの渦流水の吸入を防ぐ制水板が設置される請求項8記載のポンプ付ゲートの渦吸い込み防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−257824(P2006−257824A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79894(P2005−79894)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000196473)西田鉄工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】