説明

ポンプ制御装置及びポンプ制御方法

【課題】特定の吸水ポンプに負荷を集中させることなく常に目標容量を得ること。
【解決手段】制御部35が、運転・停止順序記憶部33に記憶されている運転順序又は停止順序に関する情報に従って複数台の吸水ポンプP1〜P8の運転台数を1台単位で増加又は減少させる処理を繰り返し実行することによって、複数台の吸水ポンプP1〜P8の総吐出容量を目標容量に制御する。これにより、特定の吸水ポンプに負荷を集中させることなく常に目標容量を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道設備における複数台のポンプの運転台数を制御するポンプ制御装置及びポンプ制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、容量が異なる複数台のポンプの運転台数を制御することによって、ポンプ井内の汚水の水位を所定範囲内に制御するポンプ制御装置が知られている。具体的には、特許文献1には、容量が異なる複数台のポンプの運転台数組合わせパターン(以下、組合せパターンと略記)を目標容量別に記憶する記憶部を備えるポンプ制御装置が開示されている。このポンプ制御装置は、汚水の水位と目標水位との偏差(目標容量)に基づいて記憶部に記憶されている組合わせパターンの中から最適な組合わせパターンを選択する。そして、ポンプ制御装置は、選択された組合わせパターンに従って複数台のポンプの運転台数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−099087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポンプ制御装置によれば、目標容量別の組合わせパターンに従って複数台のポンプの運転台数を制御する構成になっているために、選択された組合せパターンに含まれるポンプが故障等によって動作しない場合、組合せパターンに含まれないポンプを運転させることができず、目標容量が得られないことがある。具体的には、図11に示すような目標容量別の組合せパターンが記憶部に記憶されている場合、目標容量が2000〜3000[m/h]であるときにポンプBが故障した際には目標容量が得られなくなる。
【0005】
また、目標容量が変化しない場合には、選択された組合せパターンに含まれるポンプが継続して運転されることになるために、特定のポンプに負荷が集中することになる。具体的には、図11に示す目標容量別の組合せパターンにおいて目標容量が2000〜3000[m/h]の範囲内に維持された場合には、ポンプB,Dに負荷が集中することになる。このため、特定のポンプに負荷を集中させることなく目標容量を得ることが可能なポンプ制御装置及びポンプ制御方法の提供が期待されている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、特定のポンプに負荷を集中させることなく目標容量を得ることが可能なポンプ制御装置及びポンプ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るポンプ制御装置は、プラント設備における容量が異なる複数台のポンプの運転台数を制御するポンプ制御装置であって、複数台のポンプの運転順序及び停止順序に関する情報を記憶する運転・停止順序記憶部と、運転・停止順序記憶部に記憶されている運転順序又は停止順序に関する情報に従って複数台のポンプの運転台数を1台単位で増加又は減少させる処理を繰り返し実行することによって、複数台のポンプの総吐出容量を目標容量に制御する制御部とを備える。
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るポンプ制御方法は、プラント設備における容量が異なる複数台のポンプの運転台数を制御するポンプ制御方法であって、複数台のポンプの運転順序又は停止順序に関する情報に従って複数台のポンプの運転台数を1台単位で増加又は減少させる処理を繰り返し実行することによって、複数台のポンプの総吐出容量を目標容量に制御するステップを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るポンプ制御装置及びポンプ制御方法によれば、複数台のポンプの運転順序又は停止順序に関する情報に従って複数台のポンプの運転台数を1台単位で増加又は減少させる処理を繰り返し実行することによって複数台のポンプの総吐出容量を目標容量に制御するので、特定のポンプに負荷を集中させることなく目標容量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態であるポンプ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である不等容量台数制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、図2に示すステップS2の処理を説明するためのブロック図であり、図3(a)は加算レベルフラグ作成用運転中ポンプ合計容量の算出方法を説明するためのブロック図であり、図3(b)は減算レベルフラグ作成用運転中ポンプ合計容量の算出方法を説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、図2に示すステップS3の処理を説明するためのブロック図であり、図4(a)は加算レベルフラグの算出方法を説明するためのブロック図であり、図4(b)は減算レベルフラグの算出方法を説明するためのブロック図である。
【図5】図5は、図2に示すステップS4の処理を説明するためのブロック図である。
【図6】図6は、目標容量に応じて吸水ポンプの運転台数を1台単位で増加させる処理の一例を示す図であり、図6(a)は吸水ポンプの運転台数が0台から1台に増加する状態を示し、図6(b)は吸水ポンプの運転台数が1台から2台に増加する状態を示し、図6(c)は吸水ポンプの運転台数が2台から3台に増加する状態を示す。
【図7】図7は、目標容量に応じて吸水ポンプの運転台数を1台単位で減少させる処理の一例を示す図であり、図7(a)は吸水ポンプの運転台数が3台から2台に減少する状態を示し、図7(b)は吸水ポンプの運転台数が2台から1台に減少する状態を示し、図7(c)は吸水ポンプの運転台数が1台から0台に減少する状態を示す。
【図8】図8は、目標容量に応じて吸水ポンプの運転台数を1台単位で減少させる処理の一例を示す図である。
【図9】図9は、従来技術による吸水ポンプの運転台数制御を説明するための図である。
【図10】図10は、本願発明による吸水ポンプの運転台数制御を説明するための図である。
【図11】図11は、目標容量別の運転台数組合せパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるポンプ制御装置の構成及びその動作について説明する。
【0012】
〔ポンプ制御装置の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態であるポンプ制御装置の構成について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態であるポンプ制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の一実施形態であるポンプ制御装置1は、容量が異なる複数台(本実施形態では8台)の吸水ポンプP1〜P8の運転/停止を制御することによって、ポンプ井2内の汚水3を吐出渠4に排出するものである。
【0014】
ポンプ制御装置1は、水位検出装置10、吐出流量測定装置20、及び台数制御装置30を備える。水位検出装置10は、ポンプ井2内の汚水3の水位を検出し、検出された水位を示す検出信号を台数制御装置30に入力する。吐出流量測定装置20は、運転中の吸水ポンプの総吐出流量(吐出渠4に排出される汚水3の流量)を測定し、測定された総吐出流量を示す検出信号を台数制御装置30に入力する。
【0015】
台数制御装置30は、マイクロコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。台数制御装置30は、ポンプ容量記憶部31、制御開始幅記憶部32、運転・停止順序記憶部33、演算部34、及び制御部35を備える。ポンプ容量記憶部31、制御開始幅記憶部32、及び運転・停止順序記憶部33は、ROM等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。ポンプ容量記憶部31は、各吸水ポンプのポンプ容量のデータを記憶する。
【0016】
制御開始幅記憶部32は、各吸水ポンプの運転側制御開始幅(運転ヒステリシス幅)及び停止側制御開始幅(停止ヒステリシス幅)のデータを記憶する。運転ヒステリシス幅とは、吸水ポンプの運転台数を増加させる際の運転中の吸水ポンプの吐出容量(運転側ポンプ容量)を規定する値であり、吸水ポンプのポンプ容量に対する割合(例えば10%)によって表される。停止ヒステリシス幅とは、吸水ポンプの運転台数を減少させる際の運転中の吸水ポンプの吐出容量(停止側ポンプ容量)を規定する値であり、吸水ポンプのポンプ容量に対する割合(例えば30%)によって表される。
【0017】
運転・停止順序記憶部33は、吸水ポンプP1〜P8の運転順序(例えば吸水ポンプP1→吸水ポンプP2…吸水ポンプP7→吸水ポンプP8の順)及び停止順序(例えば吸水ポンプP8→吸水ポンプP7…吸水ポンプP2→吸水ポンプP1の順)に関する情報を記憶する。演算部34及び制御部35の機能は、情報処理装置内のCPUが、ROM内に予め記憶されている制御プログラムをRAM内にロードし、RAM内にロードされた制御プログラムを実行することによって実現される。演算部34及び制御部35の機能については後述する。
【0018】
〔不等容量台数制御処理〕
このような構成を有するポンプ制御装置1は、以下に示す不等容量台数制御処理を実行することによって、特定の吸水ポンプに負荷を集中させることなく常に目標容量を得ることができる。以下、図2に示すフローチャートを参照して、この不等容量台数制御処理を実行する際のポンプ制御装置1の動作について説明する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態である不等容量台数制御処理の流れを示すフローチャートである。図2に示すフローチャートは、ポンプ制御装置1の電源がオフ状態からオン状態へと切り替えられ、不等容量台数制御処理の実行が指示されたタイミングで開始となる。不等容量台数制御処理は、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0020】
ステップS1の処理では、演算部34が、ポンプ容量記憶部31及び制御開始幅記憶部32から各吸水ポンプのポンプ容量、運転ヒステリシス幅、及び停止ヒステリシス幅のデータを読み出す。そして、演算部34は、読み出されたデータを以下に示す数式1,2に代入することによって、各吸水ポンプの運転側ポンプ容量及び停止側ポンプ容量を算出する。具体的には、吸水ポンプP1のポンプ容量が1000[m/h]、運転ヒステリシス幅が10[%]、停止ヒステリシス幅が30[%]である場合、吸水ポンプP1の運転側ポンプ容量及び停止側ポンプ容量はそれぞれ900(=1000×(100−10)/100)[m/h]及び700(=1000×(100−30)/100)[m/h]と算出される。これにより、ステップS1の処理は完了し、不等容量台数制御処理はステップS2の処理に進む。
【0021】
【数1】

【数2】

【0022】
ステップS2の処理では、演算部34が、制御部35から現在運転中の吸水ポンプに関する情報を取得し、現在運転中の吸水ポンプの運転側ポンプ容量の合計値と停止側ポンプ容量の合計値とをそれぞれ加算レベルフラグ作成用運転中ポンプ合計容量(以下、加算レベル容量と略記)及び減算レベルフラグ作成用運転中ポンプ合計容量(以下、減算レベル容量と略記)として算出する。このステップS2の処理をブロック図で記載すると図3(a),(b)に示すようになる。すなわち、加算レベル容量を算出する場合、演算部34は、図3(a)に示すように、吸水ポンプP1〜P8(1号ポンプ〜8号ポンプ)が運転中であるか否かに応じて対応するスイッチ要素SA1〜SA8のオン/オフを切り替え、加算ブロックBL1に入力されたポンプ容量(0.0又は運転側ポンプ容量)を加算することによって、加算レベル容量を算出する。同様に、減算レベル容量を算出する場合には、演算部34は、図3(b)に示すように、吸水ポンプP1〜P8が運転中であるか否かに応じて対応するスイッチ要素SB1〜SB8のオン/オフを切り替え、加算ブロックBL2に入力されたポンプ容量(0.0又は停止側ポンプ容量)を加算することによって、減算レベル容量を算出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、不等容量台数制御処理はステップS3の処理に進む。
【0023】
ステップS3の処理では、演算部34が、水位検出装置10から入力された汚水3の水位を示す検出信号及び吐出流量測定装置20から入力された運転中の吸水ポンプの総吐出流量を示す検出信号に基づいて、目標容量(汚水3の水位を目標水位に制御するための吸水ポンプの総吐出容量)を算出する。そして、演算部34は、目標容量とステップS2の処理によって算出された加算レベル容量及び減算レベル容量とをそれぞれ比較し、比較結果に基づいて加算レベルフラグ及び減算レベルフラグ(要求台数算出用レベルフラグ)を算出する。加算レベルフラグとは、吸水ポンプの運転台数を増加させる際の吸水ポンプの運転台数を規定する識別子であり、H1〜H8レベルの範囲内で変化する。減算レベルとは、吸水ポンプの運転台数を減少させる際の吸水ポンプの運転台数を規定する識別子であり、L1〜L8レベルの範囲内で変化する。このステップS3の処理をブロック図で記載すると図4(a),(b)に示すようになる。
【0024】
すなわち、加算レベルフラグを算出する場合、演算部34は、運転中の吸水ポンプがあるか否かを判別する。そして、運転中の吸水ポンプがない場合、演算部34は、図4(a)に示すように、判別ブロックDA1において目標容量が固定値(1.0)以上であるか否かを判別し、目標容量が固定値以上である場合、チャタリング防止用タイマTONを介して吸水ポンプの運転台数を1台とするH1レベルに加算レベルフラグを設定する。一方、運転中の吸水ポンプがn1(1≦n1≦7)台以上である場合には、演算部34は、判別ブロックDA2〜DA8において目標容量が加算レベル容量(次運転容量)以上であるか否かを判別し、目標容量が加算レベル容量以上である場合、チャタリング防止用タイマTONを介して吸水ポンプの運転台数を(n1+1)台とするH(n1+1)(H2〜H8レベル)レベルに加算レベルフラグを設定する。すなわち、演算部34は、目標容量が加算レベル以上である場合、吸水ポンプの運転台数を1台増加させるように加算レベルフラグを設定する。
【0025】
同様に、減算レベルフラグを算出する場合には、演算部34は、運転中の吸水ポンプが1台であるか否かを判別する。そして、運転中の吸水ポンプが1台である場合、演算部34は、図4(b)に示すように、判別ブロックDB1において目標容量が固定値(0.0)以上であるか否かを判別し、目標容量が固定値以下である場合、チャタリング防止用タイマTONを介して吸水ポンプの運転台数を0台とするL1レベルに減算レベルフラグを設定する。一方、運転中の吸水ポンプがn2(2≦n2≦8)台以上である場合には、演算部34は、運転・停止順序記憶部33に記憶されている停止順序に関する情報に従って次に停止させるべき吸水ポンプを特定し、判別ブロックDB2〜DB8において目標容量が減算レベル容量から次に停止させる吸水ポンプの停止側ポンプ容量を減算した値(次運転容量)以下であるか否かを判別する。そして、目標容量が次運転容量以下である場合、チャタリング防止用タイマTONを介して吸水ポンプの運転台数を(n2−1)台とするL(n2)レベル(L2〜L8レベル)に減算レベルフラグを設定する。すなわち、演算部34は、目標容量が次運転容量以下である場合、吸水ポンプの運転台数を1台減少させるように減算レベルフラグを設定する。これにより、ステップS3の処理は完了し、不等容量台数制御処理はステップS4の処理に進む。
【0026】
ステップS4の処理では、演算部34が、ステップS3の処理によって算出された加算レベルフラグ(H1〜H8レベル)及び減算レベルフラグ(L1〜L8レベル)に基づいて吸水ポンプの運転台数(要求台数)を算出する。このステップS4の処理をブロック図で記載すると図5に示すようになる。すなわち、演算部34は、加算レベルフラグHn(n=1〜8)及び減算レベルフラグLn(n=1〜8)に基づいて、要求台数を示す運転要求レベルを算出する。これにより、ステップS4の処理は完了し、不等容量台数制御処理はステップS5の処理に進む。
【0027】
ステップS5の処理では、制御部35が、ステップS4の処理によって算出された要求台数と現在運転中の吸水ポンプの台数とを比較する。そして、要求台数が現在運転中の吸水ポンプの台数より多い場合、制御部35は、運転・停止順序記憶部33に記憶されている運転順序に関する情報に従って1台の吸水ポンプを起動する。一方、要求台数が現在運転中の吸水ポンプの台数より少ない場合、制御部35は、運転・停止順序記憶部33に記憶されている停止順序に関する情報に従って1台の吸水ポンプの運転を停止する。これにより、ステップS5の処理は完了し、一連の不等容量台数制御処理は終了する。以後、ポンプ制御装置1は、この一連の不等容量台数制御処理を繰り返し実行することによって、吸水ポンプの総吐出容量が目標容量になるように吸水ポンプの運転台数を制御する。
【0028】
〔具体例〕
次に、図6〜図8を参照して、上記不等容量台数制御処理による吸水ポンプの運転台数制御の具体例について説明する。
【0029】
〔具体例1〕
図6(a)〜(c)は、目標容量に応じて吸水ポンプの運転台数を増加させる処理の一例を示す図である。なお、本例では、容量が1000[m/h]である1号ポンプ、容量が1300[m/h]である2号ポンプ、及び容量が2000[m/h]である3号ポンプの3台のポンプがあり、運転順序が1号ポンプ、2号ポンプ、及び3号ポンプの順に設定され、停止順序が3号ポンプ、2号ポンプ、及び1号ポンプの順に設定され、運転ヒステリシス幅が10[%]に設定され、停止ヒステリシス幅が30[%]に設定されているとする。
【0030】
始めに、図6(a)に示すように、目標容量が100[m/h]に設定されると、加算レベルフラグがH1レベル(要求台数1台)に設定され、最初の運転順序である1号ポンプが起動される。次に、図6(b)に示すように、目標容量が1500[m/h]に設定されると、目標容量が運転ヒステリシス幅(ヒス幅)を考慮した1号ポンプの運転側ポンプ容量より大きくなるので、加算レベルフラグがH2レベル(要求台数2台)に設定され、次の運転順序である2号ポンプが起動される。次に、図6(c)に示すように、目標容量が3000[m/h]に設定されると、目標容量が運転ヒステリシス幅(ヒス幅)を考慮した1号ポンプ及び2号ポンプの運転側ポンプ容量の合計値より大きくなるので、加算レベルフラグがH3レベル(要求台数3台)に設定され、次の運転順序である3号ポンプが起動される。このようにして、目標容量の増加に応じて吸水ポンプの運転台数が1台単位で増加する。
【0031】
〔具体例2〕
図7(a)〜(c)は、目標容量に応じて吸水ポンプの運転台数を減少させる処理の一例を示す図である。なお、本例では、容量が1000[m/h]である1号ポンプ、容量が1300[m/h]である2号ポンプ、及び容量が2000[m/h]である3号ポンプの3台のポンプがあり、運転順序が1号ポンプ、2号ポンプ、及び3号ポンプの順に設定され、停止順序が3号ポンプ、2号ポンプ、及び1号ポンプの順に設定され、運転ヒステリシス幅が10[%]に設定され、停止ヒステリシス幅が30[%]に設定されているとする。
【0032】
始めに、図7(a)に示すように、3台の吸水ポンプが運転している状態において目標容量が2000[m/h]に設定されると、目標容量が停止ヒステリシス(ヒス幅)を考慮した1号ポンプ、2号ポンプ、及び3号ポンプの停止側ポンプ容量の合計値から最初の停止順序である3号ポンプの停止側ポンプ容量を減算した値より小さくなるので、減算レベルフラグがL3レベル(要求台数2台)に設定され、最初の停止順序である3号ポンプが停止される。次に、目標容量が700[m/h]に設定されると、目標容量が停止ヒステリシスを考慮した1号ポンプと2号ポンプの停止側ポンプ容量の合計値から次の停止順序である2号ポンプの停止側ポンプ容量を減算した値より小さくなるので、減算レベルフラグがL2レベル(要求台数1台)に設定され、次の停止順序である2号ポンプが停止される。次に、目標容量が0[m/h]に設定されると、減算レベルフラグがL1レベル(要求台数0台)に設定され、次の停止順序である1号ポンプが停止される。このようにして、目標容量の減少に応じて吸水ポンプの運転台数が1台単位で減少する。
【0033】
〔具体例3〕
図8は、目標容量に応じて吸水ポンプの運転台数を減少させる処理の一例を示す図である。なお、本例では、容量が1000[m/h]である1号ポンプ、容量が1300[m/h]である2号ポンプ、及び容量が2000[m/h]である3号ポンプの3台のポンプがあり、運転順序及び停止順序が共に1号ポンプ、2号ポンプ、及び3号ポンプの順に設定され、運転ヒステリシス幅が10[%]に設定され、停止ヒステリシス幅が30[%]に設定されているとする。
【0034】
図8に示すように、3台の吸水ポンプが運転している状態において目標容量が2500[m/h]に設定されると、目標容量が停止ヒステリシス(ヒス幅)を考慮した1号ポンプ、2号ポンプ、及び3号ポンプの停止側ポンプ容量の合計値から最初の停止順序である1号ポンプの停止側ポンプ容量を減算した値より小さくなるので、減算レベルフラグがL3レベル(要求台数2台)に設定され、最初の停止順序である1号ポンプが停止される。
【0035】
最後に、図9及び図10を参照して、従来技術による吸水ポンプの運転台数制御と本願発明による吸水ポンプの運転台数制御との違いについて説明する。
【0036】
図9は、従来技術による吸水ポンプの運転台数制御を説明するための図である。図10は、本願発明による吸水ポンプの運転台数制御を説明するための図である。図9に示すように、従来技術による吸水ポンプの運転台数制御は、予め定められた運転台数組合せパターンに基づいて吸水ポンプの運転台数を制御する構成になっているために、要求台数の判定レベルが変化することはない。これに対して、図10に示すように、本願発明による吸水ポンプの運転台数制御は、現在運転中の吸水ポンプの容量に応じて吸水ポンプの運転台数を増減させるレベルを判定する構成になっている。このため、本願発明による吸水ポンプの運転台数制御によれば、運転容量が変化する度毎に要求台数の判定レベルが変化する。従って、本願発明によるポンプの運転台数制御によれば、ポンプが故障した場合であっても、次の運転順序のポンプを起動することによって目標容量が得られ、また特定のポンプに負荷が集中することを抑制できる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態であるポンプ制御装置1では、制御部35が、運転・停止順序記憶部33に記憶されている運転順序又は停止順序に従って複数台の吸水ポンプP1〜P8の運転台数を1台単位で増加又は減少させる処理を繰り返し実行することによって、複数台の吸水ポンプP1〜P8の総吐出容量を目標容量に制御する。このような構成によれば、吸水ポンプが故障等によって動作しない場合であっても、次の運転順序の吸水ポンプを起動させることによって、目標容量を得ることができる。また、例えば運転順序が1番の吸水ポンプについては停止順序を1番にする等、吸水ポンプの運転順序及び停止順序を適宜設定することによって、特定の吸水ポンプに負荷が集中することを抑制できる。また、吸水ポンプの容量を変更したり、吸水ポンプの総数を変更したりした場合であっても、従来技術のように組合せパターンを作成し直す必要がないので、保守を容易にすることができる。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 ポンプ制御装置
2 ポンプ井
3 汚水
4 吐出渠
10 水位検出装置
20 吐出流量測定装置
30 台数制御装置
31 ポンプ容量記憶部
32 制御開始幅記憶部
33 運転・停止順序記憶部
34 演算部
35 制御部
P1〜P8 吸水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント設備における容量が異なる複数台のポンプの運転台数を制御するポンプ制御装置であって、
前記複数台のポンプの運転順序及び停止順序に関する情報を記憶する運転・停止順序記憶部と、
前記運転・停止順序記憶部に記憶されている運転順序又は停止順序に関する情報に従って前記複数台のポンプの運転台数を1台単位で増加又は減少させる処理を繰り返し実行することによって、前記複数台のポンプの総吐出容量を目標容量に制御する制御部と、
を備えることを特徴とするポンプ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記目標容量が運転中のポンプの総吐出容量以上である場合、前記運転・停止順序記憶部に記憶されている運転順序に関する情報に従ってポンプの運転台数を1台増加させる処理を繰り返し実行することによって、前記複数台のポンプの総吐出容量を目標容量に制御することを特徴とする請求項1に記載のポンプ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記運転・停止順序記憶部に記憶されている停止順序に関する情報に従って次に停止させるポンプを特定し、前記目標容量が運転中のポンプの総吐出容量から次に停止させるポンプの吐出容量を減算した値未満である場合、前記運転・停止順序記憶部に記憶されている停止順序に関する情報に従ってポンプの運転台数を1台減少させる処理を繰り返し実行することによって、前記複数台のポンプの総吐出容量を目標容量に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のポンプ制御装置。
【請求項4】
プラント設備における容量が異なる複数台のポンプの運転台数を制御するポンプ制御方法であって、
前記複数台のポンプの運転順序又は停止順序に関する情報に従って前記複数台のポンプの運転台数を1台単位で増加又は減少させる処理を繰り返し実行することによって、前記複数台のポンプの総吐出容量を目標容量に制御するステップを含むことを特徴とするポンプ制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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