説明

ポンプ式泡吐出容器

【課題】ポンプ式泡吐出容器について、片方の手でノズル体を押し下げ操作するような場合に、押し下げ操作のために強い力を加えたりしても、容器のキャップとノズル体との間に指が強く挟まれて痛い思いをすることがないようにする。
【解決手段】液用ピストン8の外周面に、液用シリンダ52のシリンダ壁よりも外方に突出する突部81を形成して、ノズル体4を押し下げたときに、ノズル体4の外筒部42の下端と容器のキャップ3の天板部32との間隔hが10mm以下となる前に、液用ピストン8の突部81を、空気用シリンダ51と液用シリンダ52とを連結する部分53の上端に衝突させることで、それ以上のノズル体4の下降を阻止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル体とシリンダ体とピストン体を主な構成部材とするポンプ機構を容器に一体的に設置したポンプ式泡吐出容器に関し、特に、容器内に収納された内容液を泡状態として吐出させるために、容器のキャップから上方に突出するノズル体を押し下げ操作した際に、容器のキャップとノズル体との間に指が強く挟まれて痛い思いをすることがないようなポンプ式泡吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー,ハンドソープ,ボディソープ,洗顔剤,整髪剤,ひげ剃り剤,浴槽洗い洗剤等の液体を内容物とし、ノズル体とシリンダ体とピストン体を主な構成部材とするポンプ機構を容器に一体的に設置したポンプ式泡吐出容器については、従来から様々なものが提案され既に商品化されていて、そのようなポンプ式泡吐出容器では、容器のキャップから上方に突出したノズル体の操作により、キャップの天板部を貫通してノズル体と連結されたピストン体が、容器の口部から容器内に垂設されたシリンダ体の内部で、バネ力により常に上方に付勢された状態で所定範囲だけ上下動することにより、容器内に収納されている液体がシリンダ体の下端から吸い上げられ、ピストン体とノズル体の中空軸心部を通って、空気が混入された泡状態で、ノズル体の吐出口から容器の外部に吐出されるようになっている。
【0003】
そのようなポンプ式泡吐出容器では、容器の口部から容器内に垂設されるシリンダ体として、空気ポンプのための大径の空気用シリンダと、液体ポンプのための小径の液用シリンダとを、同心円状に一体成形された二重シリンダとして形成し、一方、シリンダ体の内部で上下動するピストン体として、空気用シリンダに摺接する大径の空気用ピストンと、液用シリンダに摺接する小径の液用ピストンとを、同心円状となるように一体的に結合すると共に、二重シリンダの構造として、空気用シリンダのシリンダ壁の下端から内方上方に円錐台状の連結部分を反転させ、この連結部分の上端側と液用シリンダのシリンダ壁の上端側とを連結させる、ということが下記の特許文献等によって従来から公知となっている。
【0004】
そのような二重シリンダの構造を備えたポンプ式泡吐出容器によれば、空気用シリンダと液用シリンダとを合わせた上下方向の長さを短くすることができて、ポンプ機構全体の高さを低く抑えることができると共に、下端側に反転部が形成され上端側に屈曲部が形成された連結部分により二つのシリンダのシリンダ壁を連結していることで、反転部や屈曲部による補強効果によって、ノズル体を押し下げることにより発生する上方からの押圧力(空気用ピストンと液用ピストンによる押圧力)にも充分に耐えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−156232号公報
【特許文献2】特表平11−513308号公報
【特許文献3】特開2004−217283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような従来公知のポンプ式泡吐出容器によれば、容器内に収納された液体に空気を混入して泡状態としてから吐出させていることで、単に液体だけを吐出させている場合と比べて、身体を洗うときに液体を泡立たせる手間を省くことができて、手早く泡立てることができない子供でも容易に洗うことができ、また、液体と比べて泡の方が手から垂れ落ち難く、しかも、水で薄める必要がないため、大人にとっても丁寧にゆっくりと身体を洗うことができる。しかしながら、液体をそのまま吐出する場合と比べて、ノズル体の押し下げ操作に大きな力が必要となる。
【0007】
すなわち、ポンプ式泡吐出容器では、一般的に、液体と空気を1:10〜1:30の比率で混合して泡立てている(混合室内で泡立ててから、更にスクリーンを通過させて均一な大きさの泡にしている)が、そのためには、空気ポンプのシリンダ内径は、液用ポンプのシリンダ内径の約3.0〜5.5倍の大きさが必要となり、従って、空気用ポンプのピストン外径も、液用ポンプのピストン外径の約3.0〜5.5倍となる。しかも、液用ポンプでは、界面活性剤を含有する内容物の液体が潤滑剤と同様な作用をするのに対して、空気ポンプではそのようなことがない。その結果、液体をそのまま吐出する場合と比べて、空気を混入して泡状態とする場合には、空気用ポンプでのシリンダとピストンの摩擦抵抗により、ノズル体の押し下げ操作に大きな力が必要となる。
【0008】
そのようなポンプ式泡吐出容器について、例えば、一方の腕で赤ん坊を抱いたりする等により、片方の手でノズル体を押し下げ操作するような場合に、図3に示すように、掌をノズル体の吐出口の下に置いて、中指や薬指によりノズル体とキャップの間の部分を保持した状態で、親指によりノズル体の頂部を押し下げて、掌の上に泡を吐出させるという操作を行うことが多いが、そのような場合に、ノズル体の押し下げ操作のために強い力を加えたりすると、ノズル体が一気に下降することで、ノズル体の外筒部とキャップの天板部との間に中指や薬指が強く挟まれて痛い思いをするような虞がある。
【0009】
本発明は、上記のようなポンプ式泡吐出容器の問題の解消を課題とするものであり、具体的には、ポンプ式泡吐出容器について、片方の手でノズル体を押し下げ操作するような場合に、押し下げ操作のために強い力を加えたりしても、容器のキャップとノズル体との間に指が強く挟まれて痛い思いをすることがないようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するために、容器のキャップから上方に突出したノズル体の操作で、キャップの天板部を貫通してノズル体と連結するピストン体を、容器内に垂設されたシリンダ体の内部で所定範囲だけ上下動させることにより、容器内に収納された液体に空気を混入させて泡状態としてから、ノズル体の吐出口から吐出させるポンプ式泡吐出容器であって、シリンダ体が、空気用シリンダのシリンダ壁の下端から内方上方に円錐台状の連結部分を反転させ、この連結部分の上端側と液用シリンダのシリンダ壁の上端側とを連結するように、大径の空気用シリンダと小径の液用シリンダとを同心円状に一体成形した二重シリンダであり、ピストン体が、空気用シリンダに摺接する大径の空気用ピストンと液用シリンダに摺接する小径の液用ピストンとを同心円状に一体結合したものであるポンプ式泡吐出容器において、
液用ピストンの外周面には、液用シリンダのシリンダ壁よりも外方に突出する突部が形成されており、ノズル体を押し下げたときに、ノズル体の外筒部の下端と容器のキャップ天板部との間隔が10mm以下となる前に、液用ピストンの突部が、空気用シリンダと液用シリンダとを連結する部分の上端に衝突することで、それ以上のノズル体の下降が阻止されるようになっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
上記のような本発明のポンプ式泡吐出容器によれば、消費者がノズル体を押し下げて泡を吐出させる際に、例えば、片方の腕で赤ん坊を抱いていたり、或いは、片方の手で濡れた長い髪を押さえたりした状態で、もう一方の片手のみの操作によって、掌をノズル体の吐出口の下に置いて、中指や薬指によりノズル体とキャップの間の部分を保持した状態で、親指によりノズル体の頂部を強く押し下げたとしても、ノズル体の外筒部の下端と容器のキャップ天板部との間隔が10mm以下となる前に、液用ピストンの突部が、空気用シリンダと液用シリンダとを連結する部分の上端に衝突することで、それ以上のノズル体の下降を阻止されることから、ノズル体の外筒部とキャップの天板部との間に中指や薬指が強く挟まれて痛い思いをするようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のポンプ式泡吐出容器の一実施例について、ノズル体が上限位置の状態を示す側面説明図である。
【図2】図1に示したポンプ式泡吐出容器のノズル体が下限位置の状態を示す側面説明図である。
【図3】片方の手でポンプ式泡吐出容器のノズル体を押し下げ操作するときの状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示したノズル体が上限位置でのポンプ式泡吐出容器の具体的な内部構造を示す縦断面図(破断面のみを示す破断面図、なお、筒状係止体の下部のみは断面側面図)である。
【図5】図2に示したノズル体が下限位置でのポンプ式泡吐出容器の具体的な内部構造を示す縦断面図(破断面のみを示す破断面図、なお、筒状係止体の下部のみは断面側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポンプ式泡吐出容器について、片方の手でノズル体を押し下げ操作するような場合に、押し下げ操作のために強い力を加えたりしても、容器のキャップとノズル体との間に指が強く挟まれて痛い思いをすることがないようにするという目的を、以下の実施例に具体的に示すように、液用ピストンの外周面に、液用シリンダのシリンダ壁よりも外方に突出する突部を形成して、ノズル体を押し下げたときに、ノズル体の外筒部の下端と容器のキャップ天板部との間隔が10mm以下となる前に、液用ピストンの突部を、空気用シリンダと液用シリンダとを連結する部分の上端に衝突させることで、それ以上のノズル体の下降を阻止させる、ということで実現した。
【実施例】
【0014】
本実施例のポンプ式泡吐出容器1は、その容器本体2内にシャンプー,ハンドソープ,ボディソープ,洗顔剤,整髪剤,ひげ剃り剤,浴槽洗い洗剤等のような界面活性剤を含有する液体を収容するものであり、図4に示すように、ノズル体4とシリンダ体5とピストン体6とからなるポンプ構造を有するものであって、ノズル体4は、容器本体2の外側でキャップ3の上方に位置し、シリンダ体5は、容器本体2の口部から内部に向けて垂設され、空気用ピストン7と液用ピストン8からなるピストン体6は、キャップ3の下面側に固定されるシリンダ体5の内部に上下動可能に配設されている。
【0015】
容器の口部に冠着されるキャップ3には、その天板部32の中央部に開口部が開設されていると共に、この開口部の周縁から上方に筒状のガイドステム部31が立設されており、一方、容器の外側に配置されるノズル体4には、キャップ3のガイドステム部31の外周面に沿って上下動する外筒部42と、ピストン体6の上端部と連結して内側に吐出通路を形成する内筒部43とが一体的に形成されていて、ノズル体4は、キャップ3のガイドステム部31に案内された状態で、一体的に連結されたピストン体6と共に上下動するようになっている。なお、ノズル体4の外筒部42と内筒部43は、必ずしもノズル体と一体成形しなくても良い(別体として成形してから組み合わせても良い)ものである。
【0016】
キャップ3の下面側に固定されたシリンダ体5に対して一体的に上下動するノズル体4とピストン体6は、シリンダ体5とピストン体6の間に介装されたコイルスプリング11のバネ力によって常に上方に付勢されており、図4に示すようなノズル体4の上限位置から、ノズル体4とピストン体6をコイルスプリング11の付勢力に抗して押し下げることで、図5に示すようなノズル体4の下限位置まで押し下げることができる。
【0017】
上記のようなポンプ式泡吐出容器1のポンプ構造について更に詳しく説明すると、容器本体2の口部に着脱可能に冠着されるキャップ3は、中央に開口部が開設された天板部32と、天板部32の開口部周縁から上方に立ち上がる円筒状のガイドステム部31と、天板部32の周端縁から垂下される円筒状のスカート部33とを一体成形したものであって、スカート部33の内面側には、容器本体2の口部と螺合するためのネジ部が形成され、天板部32の下面には、円筒状のシリンダ挟持部と円筒状のピストン接触部とが同心状に垂下されている。
【0018】
シリンダ体5は、大径のシリンダ壁を有する空気用シリンダ51の下端と、小径のシリンダ壁を有する液用シリンダ52の上端とが、空気用シリンダ51側の下端が反転部となり液用シリンダ52側の上端が屈曲部となる円錐台状の連結部分53を介して同心的に連結されるように、熱可塑性樹脂の射出成形等により一つの部材として一体成形した二重シリンダであって、空気用シリンダ51の上端に形成されたフランジ部が、キャップ3の天板部32の下面側で挟持されることにより、シリンダ体5の上端部がキャップ3に同心円状に一体的に固定され、このキャップ3が容器本体2の口部に冠着(螺着)されることで、シリンダ体5は容器本体2の口部から下方(容器内)に垂設されることとなる。
【0019】
そのようなシリンダ体5には、空気用シリンダ51の上部に、容器本体2のヘッドスペース(容器内の液面よりも上方の空間部)に空気を導入するための空気孔Eが穿設されており、液用シリンダ52の下端には、漏斗状の弁座部が形成されていて、この弁座部の下方には、容器本体2内に収容されている液体を液用シリンダ52内に導入するための導液管15が圧入により連結され、この導液管15の下端は容器本体2の底部付近にまで延びている。
【0020】
シリンダ体5内に上下動可能に配設されるピストン体6は、熱可塑性樹脂の射出成形等により個別の部品としてそれぞれ一体成形された空気用ピストン7と液用ピストン8を、その後に一つのピストン体6として同心的に一体結合したものであって、空気用ピストン7は、空気用シリンダ51のシリンダ壁内面に沿って摺動し、液用ピストン8は、液用シリンダ52のシリンダ壁内面に沿って摺動し、ピストン体6の上端(空気用ピストン7のステム部71の上部)は、ノズル体4の内筒部43の下端と連結されている。
【0021】
ピストン体6の空気用ピストン7は、その上部に位置する小径筒状のステム部71と、その下部に位置する大径筒状のピストン部73を、中間連結部72を介して連結するように一体成形したものであって、ピストン部73の下端には、空気用シリンダ51のシリンダ壁内面との間で充分に気密性を確保でき、且つ、該シリンダ壁内面に対して上下方向に軽く摺動できるように、所定の幅の摺動シール部分が一体的に形成されている。
【0022】
空気用ピストン7のピストン部73の摺動シール部分は、所定の幅に形成されてその幅方向の上下両端で空気用シリンダ51のシリンダ壁内面に密接しており、空気用シリンダ51の上部に開設された空気孔Eに対して、空気用ピストン7が上限位置にある状態では、図4に示すように、ピストン部73の摺動シール部分が空気孔Eを閉鎖していて、空気用ピストン7が上限位置から押し下げられてピストン部73の摺動シール部分が下方に移動することで、図5に示すように、空気孔Eは開口される。
【0023】
空気用ピストン7のステム部71は、その上部がノズル体4との連結部(ノズル体4の内筒部43の下部を外嵌させる部分)となり、その下部が液用ピストン8との連結部(液用ピストン8の上部を内挿させる部分)となるものであって、ステム部71の上部は、ノズル体4の内筒部43を嵌合する際の下限位置を規制すると共に、液用ピストン8の上端部を挿入する際の上限位置を規制するように、段差を持って下部よりも小径の円筒部分に縮径されている。
【0024】
ピストン体6の液用ピストン8は、中途部に形成された段部から上方が僅かに小径となる略円筒形状をしており、その上端部の内面側には、内径が上方に行く程大径となる擂鉢状(又は漏斗状)の弁座部が形成され、中途部の外周面には、環状板の外端縁に放射状の突起を有する突部81が形成され、中途部(段部)の内面側には、液用シリンダ52の下端付近(液用シリンダ52内に装着された筒状係止体12の下端部上面)との間に介装されるコイルスプリング11の上端が当接されている。このコイルスプリング11のバネ力によりシリンダ体5内でピストン体6が常に上方に付勢され、また、図4に示すように、突部81がシリンダ体5の連結部分53の上端(屈曲部)と衝突することで、シリンダ体5内でのピストン体6の下限位置が規制されている。
【0025】
上記のような構造のシリンダ体5とピストン体6とにより、空気用ピストン7で覆われた空気用シリンダ51の内側で液用ピストン8の外側に空気室Aが形成され、液用ピストン8と液用シリンダ52の内側に液室Bが形成され、液室Bの上方で空気用ピストン7のステム部71の上部内側に混合室Cが形成されていて、容器本体2内に空気を導入するための空気孔Eが空気用シリンダ51の上部に開設され、空気室A内に空気を吸入するための吸気孔Fが空気用ピストン7の中間連結部72に開設されている。
【0026】
そして、液用ピストン8が圧入されているステム部71の下端から混合室Cに至るまでの部分に、空気室Aから混合室Cに空気を送り込むための空気通路Dを形成するために、ステム部71の下部内面側には、複数本(好ましくは3〜7本)の縦溝(空気通路D)が放射状に(円周方向に一定の間隔を置いて)形成されている。なお、ステム部71の内面と液用ピストン8の外面の間に空気通路Dを形成するための縦溝(又はリブ)については、空気用ピストン7のステム部71の内面側ではなく、液用ピストン8の外面側に設けるようにしても良い。
【0027】
上記のようにシリンダ体5とピストン体6により空気室Aと液室Bと混合室Cと空気通路Dがそれぞれ形成され、シリンダ体5(空気用シリンダ51の上部)に空気孔Eが開設され、ピストン体6(空気用ピストン7の中間連結部72)に吸気孔Fが開設されているのに対して、液用シリンダ52の下端近傍に形成された弁座部には、ボール弁(ボトムボール)13が載置されていて、この弁座部とボール弁13とにより、液室Bの負圧時に液室Bの下端の入口を開口するための第1逆止弁が構成されている。
【0028】
また、液用ピストン8と液用シリンダ52の内側には、上端部の外面側に逆円錐台状の弁体部が形成された棒状弁体14が配設され、液用シリンダ52の下端の弁座部の上方には、液体の通過が可能な筒状係止体12が装着され、棒状弁体14の下端部が筒状係止体12により所定の範囲だけ上下動可能に保持されていることで、液用ピストン8の上端部に形成された弁座部と、棒状弁体14の上端部に形成された弁体部とにより、液室Bの加圧時に液室Bの上端の出口を開口するための第2逆止弁が構成されている。
【0029】
すなわち、図4又は図5に示すように、棒状弁体14の下部側は小径棒部となっていて、この小径棒部の下端付近には、急に直径を大きくした係止部(段差部)が設けられており、一方、筒状係止体12の上端部の内方には、この係止部よりも内径が少し小径の内方環状突起(内方に突出する環状の突起)が設けられていて、棒状弁体14の下部側(小径棒部)が筒状係止体12内に挿入された状態では、筒状係止体12の内向環状突起により棒状弁体14の係止部の上昇が阻止されて、棒状弁体14のそれ以上の上昇が阻止されることで、棒状弁体14の下端部が筒状係止体12により所定の範囲だけ上下動可能に保持された状態となっているのである。
【0030】
なお、シリンダ体とピストン体とを組み立てる時には、棒状弁体14の下部側(小径棒部)を筒状係止体12内に挿入することになるが、その際には、上方からの押圧力により、棒状弁体14の下端部の係止部によって筒状係止体12の上端部の内向環状突起を押し広げる(弾性変形させる〉ようにして小径棒部を筒状係止体12内に挿入させるのである。
【0031】
さらに、ピストン体6の上下動により容積が変化する空気室Aの負圧時(ピストン体6の上昇時)に、空気用ピストン7の中間連結部72に開設された吸気孔Fから空気室A内に空気を導入し、また、空気室Aの加圧時(ピストン体6の下降時)に、空気室A内から空気通路Dを通して混合室Cに空気を供給するように、吸気孔Fと空気通路Dに共通する第3逆止弁が、空気用ピストン7の中間連結部72の吸気孔Fよりも外側の下面と、液用ピストン8の中途部の外周面に形成された突部81の環状板上面と、軟質合成樹脂製の弾性弁体16とによって構成されている。
【0032】
弾性弁体16は、短い円筒状の筒状基部の下端部近傍から外方に延びる薄肉円環状の外方弁部と内方に延びる薄肉円環状の内方弁部とを一体的に形成したものであって、空気用ピストン7の中間連結部72と液用ピストン8の突部81との間に液用ピストン8と同心的に配置されていて、空気用ピストン7の中間連結部72に筒状基部の上部が挟持され、液用ピストン8の突部81の外端部に形成された適当数の放射状突起により筒状基部の下端が支えられた状態で、空気室Aの上端部に位置決めされている。
【0033】
そのような第3逆止弁では、空気室A内が大気圧時には、弾性弁体16の外方弁部が中間連結部72の下面に接触し、内方弁部が突部81の環状板上面に接触することで、空気通路Dの入口と吸気孔Fの両方を閉鎖しており、ピストン体6が下降して空気室A内が加圧されると、弾性弁体16の内方弁部が上方に変位(弾性変形)して突部81の環状板上面から離れることで空気通路Dの入口が開口され、ピストン体6が上昇して空気室A内が負圧になると、弾性弁体16の外方弁部が下方に変位(弾性変形)して中間連結部72から離れることで吸気孔Fが開口されることとなる。
【0034】
ポンプ式泡吐出容器1の押し下げヘッドとなるノズル体4は、混合室Cの出口(下流側)から吐出口41に至る泡通路Gを、円筒状の内筒部43の筒内を直上してから頂部に沿って吐出口41まで延びるように逆L字状に形成したものであって、吐出口41が形成されているノズル体4の頂部からは、内筒部43との間に間隔を置いて同心的に、内筒部43よりも大径の外筒部42が一体的に垂下されている。また、ノズル体4の頂部には、外筒部42と内筒部43の間を通して容器内に空気を供給するために、外部の空気を吸い込むための吸気口44が開口形成されている。
【0035】
ノズル体4の内筒部43の下端は、その筒内に下方から空気用ピストン7のステム部71の上端部が嵌入されることで、空気用ピストン7のステム部71と一体的に連結されており、この連結部分がキャップ3の天板部32の中央部に開設された開口部を貫通していることで、容器本体2の内外にそれぞれ配置されるノズル体4とピストン体6がキャップ3を貫通して一体的に連結されることとなる。
【0036】
なお、ノズル体4の泡通路Gには、空気用ピストン7との連結に先立って、シート状の多孔体を両端に張設した多孔体ホルダー17が、混合室Cの下流側で泡通路G内に挿着されており、この多孔体ホルダー17は、混合室Cで形成された泡を通過させて均質化するためのもので、例えば、合成樹脂製の糸を編んだ網体のような多孔シートを筒状の合成樹脂製スペーサーの両端に溶着して取付けたようなものであって、上流側(混合室Cに近い側)の多孔シートの網目よりも下流側(吐出口41に近い側)の多孔シートの網目の方が細かくなるように形成されている。
【0037】
上記のような本実施例のポンプ式泡吐出容器の使用状態について簡単に説明すると、製造されてから消費者が使用を開始するまでは、図4に示すように、ノズル体4とピストン体6は上限位置にあり、この状態で、容器内への外気導入手段である空気孔Eは、空気用ピストン7の摺動シール部により閉じられ、ボール弁13による第1逆止弁と棒状弁体14による第2逆止弁と弾性弁体16による第3逆止弁は全て閉じられている。
【0038】
そのような状態から、最初にノズル体4を押し下げて、図5に示すように、ノズル体4とピストン体6を下限位置まで下降させると、ボール弁13による第1逆止弁は閉じて液室Bの下端入口が閉鎖されたまま、棒状弁体14による第2逆止弁が開いて液室Bの上端出口が開口され、また、ピストン体6の下降により空気室Aが加圧されることで、弾性弁体16による第3逆止弁では、吸気孔Fは閉鎖状態を維持し、空気通路Dの入口は開口される。
【0039】
そのため、消費者が使用を開始して、最初にノズル体4を押し下げたときには、空気室Aから混合室Cに空気が送り込まれると共に、液室Bからは溜まっていた空気だけが混合室Cに送り込まれることから、ノズル体4の泡通路Gからは空気だけが吐出されることとなる。
【0040】
そのような最初のノズル体4の押し下げを解除すると、コイルスプリング11の付勢力により、図4に示すような上限位置までノズル体4とピストン体6が上昇する間に、先ず、棒状弁体14による第2逆止弁が閉じて液室Bの上端出口が閉鎖されてから、更にピストン体6の上昇により液室B内が負圧になることで、ボール弁13による第1逆止弁が開いて液室Bの下端入口が開口され、また、ピストン体6の上昇により空気室Aが負圧になることで、弾性弁体16による第3逆止弁では、吸気孔Fが開口されて、空気通路Dの入口は閉鎖される。
【0041】
その結果、液室Bには、導液管15を通して容器本体2内の液体が吸い上げられると共に、ノズル体4の頂部に形成された吸気口44から吸引された外部の空気が、外筒部42と内筒部43の間を通って、吸気孔Fから空気室Aに供給されることで、泡吐出の準備状態が完了する。
【0042】
なお、容器本体2内から液室Bに液体が吸い上げられることで、その分だけ容器本体2のヘッドスペースの容積が増加するため、そのままではヘッドスペースが負圧状態となるが、図5の状態から図4の状態に戻るまでの間は、空気孔Eが開口したままであり、外筒部42と内筒部43の間を通った外部の空気は、空気孔Eから直ちに容器本体2内へ吸い込まれるため、そのようなヘッドスペースの負圧状態は直ちに解消される。
【0043】
上記のように液室Bに液体が満たされて、且つ、図4に示した状態に戻った段階で、再びノズル体4を押し下げると、ピストン体6と各逆止弁(第1〜第3逆止弁)は、上記の押し下げ操作時と同様に作動し、その結果、ピストン体6の下降に連れて空気室Aと液室Bが加圧されることで、空気室Aの空気が空気通路Dを通って混合室Cに空気が圧送されると共に、液室Bの液体が混合室Cに送り込まれて、両者は混合室Cで混ざり合って泡立てられ、多孔体ホルダー17の両端の多孔シートを通過することで均質化された泡となってから、ノズル体4の泡通路Gを通ってノズル体4の吐出口41から吐出される。
【0044】
そして、図5に示した状態から、ノズル体4の押し下げ操作を解除すると、ピストン体6と各逆止弁(第1〜第3逆止弁)は、上記の押し下げ操作の解除時と同様に作動して、その結果、液室Bには、再び容器本体2内の液体が導液管15を通して吸い込まれると共に、吸気孔Fから空気室Aに空気が供給されることで、泡吐出の準備状態となり、以後、ノズル体4の押し下げ操作と該操作の解除を繰り返すことによって、ノズル体4の吐出口41から所望量の泡を吐出させることができる。
【0045】
ところで、上記のような本実施例のポンプ式泡吐出容器1では、第3逆止弁である弾性弁体16に対し、空気通路Dの入口を開閉する逆止弁の弁座部として、液用ピストン8の外周面に、液用シリンダ8のシリンダ壁よりも外方に突出する環状板を有する突部81を形成しているが、この突起81は、ノズル体4を押し下げたときに、図2に示すように、ノズル体4の外筒部42の下端とキャップ3の天板部32との間隔hが10mm以下となる前に、空気用シリンダ51と液用シリンダ52とを連結する連結部分53の上端(屈曲部)に衝突するように形成されており、それによって、それ以上のノズル体4の下降が阻止されることで、ノズル体4が下限位置で停止された状態となる。
【0046】
そのような本実施例のポンプ式泡吐出容器1によれば、図3に示すように、片手のみの操作によって、掌をノズル体4の吐出口41の下に置いて、中指や薬指によりノズル体4とキャップ3の間の部分(本実施例では、キャップ3のガイドステム部31)を保持した状態で、親指によりノズル体4の頂部を強く押し下げたとしても、図2に示すように、ノズル体4の外筒部42の下端とキャップ3の天板部32との間隔hが10mm以下となる前に、液用ピストン8の突部81が、空気用シリンダ51と液用シリンダ52とを連結する連結部分53の上端(屈曲部)に衝突することで、それ以上のノズル体4の下降を阻止されることから、ノズル体4の外筒部42とキャップ3の天板部32との間に中指や薬指が強く挟まれて痛い思いをするようなことはない。
【0047】
以上、本発明のポンプ式泡吐出容器の一実施例について説明したが、本発明は、上記の実施例に示したような具体的な構成にのみ限定されるものではなく、例えば、空気用シリンダと液用シリンダとを連結する部分の上端について、上記の実施例では、連結部分の上端の屈曲部であるが、この屈曲部から上方に延びる部分があれば、その部分の上端が空気用シリンダと液用シリンダとを連結する部分の上端となるものである等、適宜に設計変更可能なものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 ポンプ式泡吐出容器
2 容器本体
3 キャップ
4 ノズル体
5 シリンダ体
6 ピストン体
7 空気用ピストン
8 液用ピストン
16 弾性弁体(空気通路と吸気孔とを開閉する逆止弁)
32 (キャップの)天板部
41 (ノズル体の)吐出口
42 (ノズル体の)外筒部
51 空気用シリンダ
52 液用シリンダ
53 連結部分
81 (液用ピストンの)突部
A 空気室
B 液室
C 混合室
D 空気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のキャップから上方に突出したノズル体の操作で、キャップの天板部を貫通してノズル体と連結するピストン体を、容器内に垂設されたシリンダ体の内部で所定範囲だけ上下動させることにより、容器内に収納された液体に空気を混入させて泡状態としてから、ノズル体の吐出口から吐出させるポンプ式泡吐出容器であって、シリンダ体が、空気用シリンダのシリンダ壁の下端から内方上方に円錐台状の連結部分を反転させ、この連結部分の上端側と液用シリンダのシリンダ壁の上端側とを連結するように、大径の空気用シリンダと小径の液用シリンダとを同心円状に一体成形した二重シリンダであり、ピストン体が、空気用シリンダに摺接する大径の空気用ピストンと液用シリンダに摺接する小径の液用ピストンとを同心円状に一体結合したものであるポンプ式泡吐出容器において、
液用ピストンの外周面には、液用シリンダのシリンダ壁よりも外方に突出する突部が形成されており、ノズル体を押し下げたときに、ノズル体の外筒部の下端と容器のキャップ天板部との間隔が10mm以下となる前に、液用ピストンの突部が、空気用シリンダと液用シリンダとを連結する部分の上端に衝突することで、それ以上のノズル体の下降が阻止されるようになっていることを特徴とするポンプ式泡吐出容器。
【請求項2】
空気用ピストンで覆われた空気用シリンダの内側で液用ピストンの外側に空気室が形成され、液用ピストンと液用シリンダの内側に形成された液室の上方に混合室が形成され、空気室から混合室に空気を流す空気通路が、空気用ピストンと液用ピストンとの結合部分に形成されているのに対して、該空気通路の入口側に、空気通路を開閉する逆止弁が設けられていて、液用ピストンの突部が、該逆止弁の弁座部となっていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ式泡吐出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−213352(P2011−213352A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80246(P2010−80246)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】