説明

ポンプ式製品用の吸上げパイプならびに、この吸上げパイプを備えたポンプユニットおよびポンプ式製品

【課題】ポンプ式製品の容器本体へ内容物詰替え作業に関して、変形可能な移替え元容器から内容物を絞り出だす器具の不使用時における管理負担や紛失のおそれをなくして準備を容易にし、作業の利便化を図る。
【解決手段】容器本体1の蓋を兼ねたポンプユニットAの吸上げパイプ3の上流側を二股形状に分かれた個別筒状部(3b,3c)にし、この個別筒状部同士の間にパウチ2を挟んで内容物を絞り出だすための対向平面部を設けた。ポンプ式製品の通常の使用時にはパイプ3は容器本体の中にあって管理不要であり紛失することもない。また、内容物詰替え作業の際にはポンプユニットAは外され内容物を絞り出だす器具として使用されるので、内容物絞出し用器具の準備は別途不要で、ポンプユニットAの置き場所を別途確保する必要もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式製品の容器本体に収容された内容物をポンプ機構付きのハウジングに供給するための吸上げパイプなどに関する。
【0002】
特にこの吸上げパイプを、利用者が、変形可能な移替え元容器の収容内容物をポンプ式製品の容器本体に移し替える際の、移替え元容器挟持用のいわば内容物絞出し用治具としても使えるようにしたものである。
【0003】
なお、「変形可能な移替え元容器」とはポンプ式製品への移替え用内容物(詰替え用内容物)を収容した軟性状のパウチ,チューブなどの容器である。以下の説明では必要に応じて単に「移替え元容器」と記載する。
【0004】
ポンプ式製品の使用にともないその容器本体の内容物が略空状態になると、利用者は、当該容器本体からこれに螺合しているポンプユニット(スパウト,ステム,ハウジング,ネジキャップ,吸上げパイプなどの一体物)を取外して、当該容器本体にその開口首部から移替え元容器の液状内容物などを移し替える。
【0005】
このような移替え元容器内容物の容器本体への移替え作業を効率的に行なうためには、移替え元容器の外面を何らかの手段によって挟み込んでから当該手段を開口部の方に動かし、これにより移替え元容器の液状内容物などを当該開口部からいわば絞り出すことが必要である。
【0006】
本発明は、もともとポンプ式製品の構成要素にすぎない吸上げパイプに、この移替え元容器の挟込み手段の機能を持たせるべく、当該吸上げパイプの内容物流入側(パイプ上流側)の形状を工夫したものである。
【0007】
容器本体への移替え対象内容物としては、例えば石けん,消毒剤,化粧品,乳液、シェービングフォーム,ヘアスタイリングフォーム,洗剤,染毛剤,シャンプー,リンス,殺虫剤など、後述のように各種のものがある。
【背景技術】
【0008】
移替え用内容物を収容した袋などからその中身を本来の容器に移し替える場合に用いる絞り出し器具が、例えば下記の特許文献1で開示されている。
【0009】
この絞り出し器具は、概略、一方の端部がヒンジ結合し、他方の端部がそれぞれ自由端になっている一対の挟付け部材と、袋を挟み付けて閉じた状態の当該自由端を保持する案内部材とからなっている。
【0010】
そして、袋を挟み付けた後の一対の挟付け部材および案内部材の全体を袋に対してスライドさせることにより袋の収容内容物を容器へ絞り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−170496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記絞り出し器具は、袋からその収容内容物を容器へ簡単な操作で効率的に移し替えるためのいわば専用治具である。
【0013】
当然のことながら、絞り出し器具が使用されないときはそれを別途保管しなければならず、絞り出し器具が使用される際にはそれを保管場所から取り出して準備しなければならない。
【0014】
そのため、絞り出し器具の保管,準備といった正確な作業が必然的であって、当該絞り出し器具を使う利用者に煩雑感を与えやすいという問題点があった。
【0015】
また、この保管が十分に行われないと絞り出し器具の紛失につながりやすく、袋の収容内容物を容器へ絞り出す作業の円滑化を担保しにくいという問題点があった。
【0016】
本発明は、ポンプ式製品の場合、その吸上げパイプの一方の端部側を複数の離間した筒状部で形成すれば、この離間した対向部分で、移替え元容器(パウチ,チューブなど)の表裏などを挟持できることに着目したものである。
【0017】
すなわち、もともとポンプ式製品の構成要素であって、移替え元容器の内容物をポンプ式製品の容器本体へ移し替える際にはそれに先立って必ず容器本体から取り外される吸上げパイプを、この移替え作業時の移替え元容器の挟持部材に援用している。
【0018】
そのため利用者は、移替え元容器の内容物をポンプ式製品の容器本体に移し替える際に、当該容器本体から取り外した吸上げパイプなどの置き場所などを配慮する必要は一切ない、
【0019】
本発明は、このように吸上げパイプを移替え元容器の挟持部材に援用し、これにより当該挟持部材の不使用時におけるその管理負担および紛失のおそれを皆無とし、ポンプ式製品の容器本体への内容物移替え作業に関しての利便化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)ポンプ式製品の容器本体(例えば後述の容器本体1)に収容された内容物をポンプ作動用のハウジング(例えば後述のハウジング4)に供給するための吸上げパイプ(例えば後述の吸上げパイプ3)において、
前記ハウジングの流入部側に接続され、ハウジング内部への内容物流出部として作用する単一の下流側筒状部(例えば後述の単一筒状部3a)と、
前記容器本体からの内容物流入部として作用し、かつ、前記単一の下流側筒状部へと通じる並列離間態様で形成された複数の上流側筒状部(例えば後述の個別筒状部3b,3c)と、を備え、
前記複数の上流側筒状部として、
変形可能な移替え元容器(例えば後述のパウチ2)を挟みこんだ状態で当該移替え元容器の内容物取り出し用開口部の方へ相対的に移動可能な対向外周部分(例えば後述の対向平面部3d,3e)を備えた筒状部を用いる。
(2)前記複数の上流側筒状部として、
その全体が二股形状の筒状部を用い、
前記対向外周部分として、
互いに平行な平面を用いる。
(3)上記(1)または(2)のポンプ式製品用の吸上げパイプと、
前記吸上げパイプの単一の下流側筒状部が取り付けられて吸込弁作用を呈し、かつ、内容物貯留用の内部空間域を備えたハウジングと、
前記ハウジングに配設されて吐出弁作用を呈し、かつ、内容物放出用通路部を有するステムと、
前記ステムをその作動モード位置へ駆動する操作部と、を備え、
その全体が一体化された形のポンプユニットを用いる。
【0021】
本発明は、以上の構成からなるポンプ式製品用の吸上げパイプならびに、この吸上げパイプを備えたポンプユニットおよびポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は以上の課題解決手段により、移替え元容器の挟持部材の不使用時におけるその管理負担および紛失のおそれを皆無とし、ポンプ式製品の容器本体への内容物移替え作業に関しての利便化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ポンプ式製品の構成要素である吸上げパイプを示す説明図である。
【図2】図1の吸上げパイプと一体化した形のポンプユニットを用いて内容物収容済みパウチから内容物を容器本体に移す様子を示す説明図である。
【図3】ポンプ式製品の静止モードを示す説明図である。
【図4】ポンプ式製品の作動モードを示す説明図である。
【図5】ステムの下死点状態から静止モードへ復帰する際の内容物吸上げ(吸込み)状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜図5に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【0025】
以上の図で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば開口首部1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。
【0026】
図1〜図5において、
1は周知のポンプ作用により外部空間域に放出される内容物を収容した容器本体,
1aは当該容器本体への内容物移替え部として作用する開口首部,
2は容器本体1への移替え用内容物が入れられた軟性状のパウチ(袋),
2aは当該パウチの内容物を容器本体1に移し替えるに先立ってパウチ前方の左右方向端部を利用者が切り取ることにより形成される内容物取り出し用の開口部,
2bは当該パウチの表面部,
2cは当該パウチの裏面部,
をそれぞれ示している。
【0027】
また、
3は容器本体1から周知のポンプ機構への内容物通路部として作用する吸上げパイプ,
3aは当該吸上げパイプの下流側を構成する単一筒状部,
3b,3cは当該吸上げパイプの上流側を構成して単一筒状部3aへと連続する半円断面状の計二個からなり、互いに並列離間状態で全体として二股形状の個別筒状部,
3d,3eは当該個別筒状部のそれぞれに形成されて、パウチ2の中身(放出対象の内容物)を略空状態の容器本体1へ移し替えるさいに、利用者が当該パウチの表面部2bおよび裏面部2cを挟み込んでその開口部2aの方(図2の矢印方向)にいわばスライドさせることにより、当該中身を確実に当該開口部の方へと移動させる平行態様の対向平面部,
をそれぞれ示している。
【0028】
また、
4は吸上げパイプ3の単一筒状部3aが取り付けられて、当該吸上げパイプから流入済みの次回放出対象の内容物を収容する筒状のハウジング,
4aは当該ハウジングの上端側を構成する大径筒状部,
4bは当該大径筒状部の外周面に形成された環鍔状部,
4cは当該環鍔状部の下方のハウジング周面に形成されて、ポンプ式製品がその作動モード終了後の静止モードへの復帰時に、容器本体1の内部へその減圧防止用の外気を供給するための孔部,
4dは当該ハウジングの下端側を構成して吸上げパイプ3が取り付けられる小径筒状部,
4eは当該小径筒状部の上端内側部分に下内向き態様で形成されて、後述の吸込弁5の受け部として作用する環テーパ状部,
4fは当該環テーパ状部の上方のハウジング内周面部分に上内向き態様で形成されて、吸込弁5の上動限界設定部として作用する計四個の起立片部,
4gは当該起立片部の外側のハウジング内部に形成された環凹状部,
をそれぞれ示している。
【0029】
また、
5はハウジング4の環テーパ状部4eに接離可能(上下動可能)な形でいわば載置された周知の吸込弁(ボール弁),
6はその下側部分がハウジング4の内部に配設されて内容物放出用の通路部を備えた鞘状のステム(ステム上部材6a+ステム下部材6g),
6aは当該ステムの上側を構成する筒状のステム上部材,
6bは当該ステム上部材の上端側外周面,
6cは当該ステム上部材の中間部上内周面の周方向に対し飛び飛びでそれぞれが上下に連続する態様により形成された計四個の径方向起立片部,
6dは当該ステム上部材の中間部下側に形成された嵌合用の中間内周面,
6eは当該中間内周面からその下方に続く下端側内周面,
6fは中間内周面6dと下端側内周面6eとの境界部分に形成された環天井部,
6gは当該ステム上部材の内周面の一部に嵌合して一体化されたステム下部材,
6hは当該ステム下部材の上側周面部分に形成された内容物通過用の孔部,
6jは当該ステム下部材の下側外周面に形成された環状受け部,
6kは当該ステム下部材の下側内周面に形成された環状段部,
6mは当該環状段部の下方のステム下部材外周面にハウジング4の内周面と当接する態様で形成されて、ステム下部材6gの上下動時のガイド作用を呈する複数の凸状部,
をそれぞれ示している。
【0030】
また、
7はハウジング4の環凹状部4gとステム下部材6gの環状段部6kとの間に配設されてステム6を上方向に付勢するコイルスプリング,
8はハウジング4とステム6との間に配設されて孔部6hの開閉作用を呈する環状の吐出弁,
8aは当該吐出弁の内筒下端側であって、ステム下部材6gの環状受け部6jとの間の開閉作用を呈する弁作用部,
8bは当該弁作用部から上方に続く部分であって、ステム上部材6aの下端側内周面6eに密接しながら相対的に上下動する上内側逆スカート部,
8cはハウジング4の内周面に密接しながら上下方向に移動する上外側逆スカート部,
8dはハウジング4の内周面に密接しながら上下方向に移動する下外側スカート部,
をそれぞれ示している。
【0031】
また、
9はステム6の上端側外周面6bに嵌合状態で取り付けられて押圧操作部および内容物通路部として作用するスパウト,
9aは外部空間域への内容物通路部,
9bは当該内容物通路部の先端部分である放出口,
9cは当該スパウトの上面部分からなる操作面,
9dは当該スパウトの下筒状部の外周面に形成された螺子部分,
10は開口首部1aの外周面とのネジ結合作用で容器本体1に取り付けられる環状のネジキャップ,
10aは当該ネジキャップの環状天板部,
をそれぞれ示している。
【0032】
また、
11はネジキャップ10の環状天板部10aをハウジング4の環鍔状部4bとの間にいくらかの上下動が許容される態様にて挟んだ状態で、当該ハウジングの大径筒状部4aと嵌合して、ステム6および吐出弁8の上動限界位置(図3の静止モード位置)を規定する嵌合キャップ,
11aはその下端部分が静止モード位置の吐出弁8の上外側逆スカート部8cと当接する中央筒状部,
11bはハウジング4の大径筒状部4aと嵌合する環溝状部,
11cは当該中央筒状部の上側内周面に形成されて、店頭展示などの場面で、スパウト9の螺子部分9dとネジ結合して当該スパウトが当該嵌合キャップに近づく状態に設定されることにより、ポンプ式製品全体のいわば身長を低くするための螺子部分,
をそれぞれ示している。
【0033】
また、
Aはネジキャップ10を容器本体1から取り外した状態のポンプユニット,
Bは吐出弁8およびステム下部材6gと吸込弁5との間に設定される内容物貯留用のハウジング内部空間域,
Cは作動モードにおいて、ハウジング内部空間域Bから外部空間域に放出される内容物の流れ(図4参照),
Dはスパウト9の押圧操作解除にともなって静止モードへ復帰するに際し、容器本体1からハウジング内部空間域Bに供給される内容物の流れ(図5参照),
Eはスパウト9の押圧操作解除にともなって静止モードへ復帰するに際し、外部空間域から容器本体1に供給される減圧防止用外気の流れ(図5参照),
をそれぞれ示している。
【0034】
ここで、容器本体1,パウチ2,吸上げパイプ3,ハウジング4,ステム6,吐出弁8,スパウト9,ネジキャップ10,嵌合キャップ11はそれぞれ、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。吸込弁5およびコイルスプリング7は金属製や合成樹脂製のものである。
【0035】
なお、吸上げパイプ3は、利用者がそれでパウチ2の表面部2bおよび裏面部2cを挟み込み、続いて図2の矢印方向にスライドさせるときに変形しない程度の剛性状を有している。
【0036】
本発明はこの吸上げパイプに関するものである。
図示の吸上げパイプ3の基本的特徴は図1および図2で示すように、
(11)容器本体1の収容内容物の流入側(吸上げパイプ自体の上流側)となる部分を、互いに並列離間状態の個別筒状部3b,3cで形成し、
(12)個別筒状部3b,3cは、それぞれ平行態様の対向平面部3d,3eを備え、
(13)利用者が、パウチ2の収容内容物を略空状態の容器本体1に移し替える際に、
この対向平面部3d,3eで、当該パウチの表面部2bおよび裏面部2cそれぞれの開口部2aから遠い部分を挟み込み、続いてポンプユニットAの全体を当該開口部の方に動かせる、
ことである。
【0037】
パウチ2の収容内容物を容器本体1にその開口首部1aから移し替えるには当然のことながら先ず、容器本体1とネジ結合しているポンプユニットAを当該容器本体から取り外さなければならない。
【0038】
従来、この取り外したポンプユニットAは近くの例えば洗面台などに置かれたままであり、容器本体1への内容物移替え終了後に再度容器本体へと取り付けられていた。
【0039】
吸上げパイプ3の個別筒状部3b,3cはこのように、パウチ収容内容物を容器本体1に移し替えるに際して不要でむしろ邪魔ともいえるポンプユニットに、内容物移替え作業の確実化,効率化を図るためのいわば治具機能を付与している。
【0040】
パウチ2の収容内容物を容器本体1に移し替えるとき、利用者は例えば図2に示すように、
(21)パウチ2の所定の隅部分を切ることにより開口部2aを設定し、かつ、この開口部とは反対側(図示上側)の表面部2bおよび裏面部2cをポンプユニットA(吸上げパイプ3の個別筒状部3b,3c)の対向平面部3d,3eで挟み込み、
(22)このパウチ挟み込み状態のポンプユニットAを下方に移動させればよい。
【0041】
上記(22)のポンプユニットAの下動操作にともない、パウチ2の収容内容物は個別筒状部3b,3cの対向平面部3d,3eによって容器本体1へと絞り出される。
【0042】
ポンプユニットAを下動させる際、利用者はその任意の部分(ネジキャップ10,スパウト9,ハウジング4,吸上げパイプ3など)を持って操作すればよい。
【0043】
なお、図1のポンプユニットAは、静止モード位置(図3参照)のスパウト9をさらに下動させてその螺子部分9aを嵌合キャップ11の螺子部分11cとネジ結合させたいわゆる搬送・陳列モード位置にセットされている。
【0044】
吸上げパイプ3の対向平面部3d,3e同士の間隔はパウチ2の表面部2bおよび裏面部2cを挟むことができる程度に設定され、例えば0.5〜3mmである。
【0045】
図3〜図5で示されるポンプ機構の静止モード,作動モードおよび内容物吸上げ(吸込み)状態はいずれも周知のポンプ作動状態である。
【0046】
図3はポンプ機構の静止モード、すなわちスパウト9が押圧操作されていない状態を示している。
【0047】
この静止モードでは、
(31)前回の内容物放出操作の終了(図5参照)にともなって、容器本体1の内容物(次回放出の内容物)が吸上げパイプ3を介してハウジング内部空間域Bに流入済みであり、
(32)吸込弁5は、ハウジング4の環テーパ状部4eに当接した閉状態であり、
(33)吐出弁8も、その弁作用部8aがステム下部材6gの環状受け部6jに当接した閉状態である。
【0048】
上記(33)の吐出弁8の上外側逆スカート部8cは、嵌合キャップ11の中央筒状部11aの下端部分でいわば押さえこまれた状態になっている。
【0049】
図4はポンプ機構の作動モード、すなわちスパウト9が押圧操作されてステム6が下動する状態を示している。
【0050】
図4に示すように、利用者のスパウト9(操作面9c)に対する押圧操作により、当該スパウトと一体のステム上部材6aおよびステム下部材6gがコイルスプリング7に抗する形で押し下げられる。
【0051】
このとき、ステム上部材6aおよびステム下部材6gが下動するのにともない、内容物貯留用のハウジング内部空間域Bの容積が小さくなってそこでの収容内容物の圧力が大きくなる。
【0052】
この圧力増加のため、吐出弁8はステム下部材6gとの関係で相対的に上昇してその弁作用部8aと当該ステム下部材の環状受け部6jとのそれまでの閉状態が開状態へと変化する。なお、吸込弁5は閉状態を維持する。
【0053】
ステム下部材6gに対して上昇する吐出弁8は、その上内側逆スカート部8bの上端部分がステム上部材6aの環天井部6fに当接し、その後はスパウト9と一体のステム6とともに下方向に移動する。
【0054】
その結果、ハウジング内部空間域Bの収容済み内容物は図示矢印Cで示すように、「環状受け部6jと弁作用部8aとの間の開部分−ステム下部材6gの孔部6h−ステム下部材6gの内部通路−ステム上部材6aの内部通路−スパウト9の内容物通路部9a−放出口9b」を経て、外部空間域に放出される。
【0055】
図5は、利用者がスパウト9の押圧操作を解除することによって生じる静止モードへの復帰状態を示している。
【0056】
スパウト9の押圧操作が解除されると、当該スパウトおよびこれと一体のステム6(上部材6a,ステム下部材6g)が、コイルスプリング7の弾性作用により上方向に移動する。
【0057】
このステム6などの上動にともない、
(41)ステム下部材6gの環状受け部6jと吐出弁8の弁作用部8aとの、それまでの開状態が閉状態へと変化し、
(42)ハウジング内部空間域Bは、その容積が増加して容器本体1の内部に対し負圧になるので、吸込弁5が上昇してハウジング4の環テーパ状部4eから離間し、その結果、容器本体1の収容内容物が、図示矢印Dで示すようにこの離間部分から当該ハウジング内部空間域に流入し、
(43)かつ、このハウジング内部空間域Bへの内容物流入に起因する容器本体1の内部の負圧化を防止するため、外気が、図示矢印Eで示すようにハウジング4の孔部4cから容器本体内部に流入する。
【0058】
これらのハウジング内部空間域Bへの内容物流入ならびに、容器本体1の内部への外気流入が終了して、図1の静止モードへと復帰移行する。
【0059】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり例えば、
(51)吸上げパイプ3の個別筒状部を図示のような二股形状ではなく、三個以上の任意の個数、望ましくは偶数からなる形状にする、
(52)対向平面部3d,3eにおける自由端側部分(図1の下端側部分)の間隔を他の部分よりも広くして、吸上げパイプ3をパウチ2の表裏面間に挿しこみやすくする、
(53)対向平面部3d,3eの一方または双方を曲面部にする、
(54)個別筒状部3b,3cを曲線状のものにする、
(55)パウチ2から容器本体1への内容物移替え作業のときに、図2の状態のポンプユニットAに代えて、スパウト9の螺子部分9dと嵌合キャップ11の螺子部分11cとのネジ結合を解除した静止モード相当のポンプユニットを用いる、
(56)パウチ2に代えてチューブ状の移替え元容器を用いる、
(57)押下げ操作タイプのスパウト9に代えて、回動操作タイプのトリガー式レバーを用いる、
ようにしてもよい。
【0060】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0061】
容器本体に収納する内容物は、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いることができ、内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0062】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0063】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0064】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0065】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0066】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0067】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0068】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1:容器本体
1a:開口首部
2:移替え用内容物が入れられたパウチ(袋)
2a:内容物取り出し用の開口部
2b:表面部
2c:裏面部
3:吸上げパイプ
3a:単一筒状部
3b,3c:並列状態の個別筒状部
3d,3e:平行態様の対向平面部
【0070】
4:ハウジング
4a:大径筒状部
4b:環鍔状部
4c:外気供給用の孔部
4d:小径筒状部
4e:環テーパ状部
4f:計四個の起立片部
4g:環凹状部
【0071】
5:吸込弁(ボール弁)
6:鞘状のステム(ステム上部材6a+ステム下部材6g)
6a:筒状のステム上部材
6b:上端側外周面
6c:計四個の径方向起立片部
6d:嵌合用の中間内周面
6e:下端側内周面
6f:環天井部,
6g:ステム下部材
6h:内容物通過用の孔部
6j:環状受け部
6k:環状段部
6m:凸状部
【0072】
7:コイルスプリング
8:吐出弁
8a:弁作用部
8b:上内側逆スカート部
8c:上外側逆スカート部
8d:下外側スカート部
9:スパウト
9a:内容物通路部
9b:放出口
9c:操作面
9d:螺子部分
【0073】
10:ネジキャップ
10a:環状天板部
11:嵌合キャップ
11a:中央筒状部
11b:環溝状部
11c:螺子部分
【0074】
A:ポンプユニット
B:内容物貯留用のハウジング内部空間域
C:外部空間域に放出される内容物の流れ(図4参照)
D:ハウジング内部空間域Bに供給される内容物の流れ(図5参照)
E:容器本体1の内部空間域に供給される減圧防止用外気の流れ(図5参照),

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ式製品の容器本体に収容された内容物をポンプ作動用のハウジングに供給するための吸上げパイプにおいて、
前記ハウジングの流入部側に接続され、ハウジング内部への内容物流出部として作用する単一の下流側筒状部と、
前記容器本体からの内容物流入部として作用し、かつ、前記単一の下流側筒状部へと通じる並列離間態様で形成された複数の上流側筒状部と、を備え、
前記複数の上流側筒状部は、
変形可能な移替え元容器を挟みこんだ状態で当該移替え元容器の内容物取り出し用開口部の方へ相対的に移動可能な対向外周部分を備えている、
ことを特徴とするポンプ式製品用の吸上げパイプ。
【請求項2】
前記複数の上流側筒状部は、
その全体が二股形状であり、
前記対向外周部分は、
互いに平行な平面である、
ことを特徴とする請求項1記載のポンプ式製品用の吸上げパイプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポンプ式製品用の吸上げパイプと、
前記吸上げパイプの単一の下流側筒状部が取り付けられて吸込弁作用を呈し、かつ、内容物貯留用の内部空間域を備えたハウジングと、
前記ハウジングに配設されて吐出弁作用を呈し、かつ、内容物放出用通路部を有するステムと、
前記ステムをその作動モード位置へ駆動する操作部と、を備え、
その全体が一体化されている、
ことを特徴とするポンプ式製品用のポンプユニット。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポンプ式製品用の吸上げパイプを備え、かつ、前記容器本体に放出対象内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210949(P2012−210949A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76383(P2011−76383)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】