説明

ポンプ用弁機構および、このポンプ用弁機構を備えたポンプ式製品

【課題】ポンプ用弁機構を備えたポンプ式製品を、より安価に、より簡単に製造する。
【解決手段】噴出器1は、内容物が流通する筒状の流路に、上流側から順に、弁座11a、弁座11b、および受け部11cが形成されている本体11と、弁座11aと共に逆止弁である上流弁をなす弁体12aと、弁座11bと共に逆止弁である下流弁をなす弁体12bと、受け部11cに位置決めされる基部12cと、弁体12aと弁体12bとの間に設けられ上流弁を閉じるように弁体12aに付勢するばね部12dと、弁体12bと基部12cとの間に設けられ下流弁を閉じるように弁体12bに付勢するばね部12eと、を備える。弁体12a、弁体12b、基部12c、ばね部12d、およびばね部12eは弁体ユニット12として一体に成形されている。基部12cに設けたI字断面部12gが切り欠き11fと勘合しているので、本体11と弁体ユニット12との回動が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ式製品に用いられるポンプ用弁機構に関し、特に、より安価に製造できるようにしたポンプ用弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に格納した液体である内容物を、回動式のトリガーレバーを押圧することにより、噴出するポンプ式製品が広く用いられている。
【0003】
このポンプ式製品においては、シリンダに充填されている内容物が、トリガーレバーが押圧されることにより移動させられるピストンによって押し出されて、下流側の弁を介してノズルから噴出され、トリガーレバーが放されると、ピストンが戻り、容器に格納されている内容物が、上流側の弁を介してシリンダに充填される。
【0004】
従来のポンプ式製品には、単一の直線上通路に噴射口,噴射調整バルブ,上流弁および下流弁を集中して設けることで組立工程を集約し、生産性を向上させたポンプ機構を用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−103369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上流弁および下流弁の機能は、上流弁の弁座および後述の固定用基部のための受け部を備えた本体,上流弁の弁体,その弁体を付勢するバネおよび下流弁の弁座が連なった一体部品ならびに下流弁の弁体,その弁体を付勢するバネおよびそのバネの固定用基部が連なった一体部品により実現されるので部品点数が多く、その製造にコストがかかり、また、その組み立ても面倒であった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より安価に、より簡単に製造することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上の課題を次ぎのようにして解決する。
(1)ポンプ用弁機構において、
容器内容物が流通する筒状の流路に、上流側から順に、第1の弁座(例えば、図1の弁座11a)、第2の弁座(例えば、図1の弁座11b)、および後述の基部(例えば、図1の柱状部12f)を保持する受け部(例えば、図1の受け部11c)が形成されている本体(例えば、図1の本体11)と、
前記第1の弁座と共に第1の逆止弁をなす第1の弁体(例えば、図1の弁体12a)と、
前記第2の弁座と共に第2の逆止弁をなす第2の弁体(例えば、図1の弁体12b)と、
前記受け部に位置決めされる基部(例えば、図1の基部12c)と、
前記第1の弁体と前記第2の弁体との間に設けられ、前記第1の逆止弁を閉じるように前記第1の弁体に作用する第1のバネ(例えば、図1のばね部12d)と、
前記第2の弁体と前記基部との間に設けられ、前記第2の逆止弁を閉じるように前記第2の弁体に作用する第2のバネ(例えば、図1のばね部12e)と
を備え、
前記第1の弁体、前記第2の弁体、前記基部、前記第1のバネ、および前記第2のバネを一体に成形する。
(2)上記(1)において、
前記本体は、前記基部に対する回動防止用の位置決め部(例えば、図1の切り欠き11f)を有し、
前記基部は、前記位置決め部によって保持される被位置決め部(例えば、図1のI字断面部12g)を有る構成とする。
【0009】
本発明は、以上の構成からなるポンプ用弁機構および、このポンプ用弁機構を備えたポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、上流弁および下流弁の各弁体、これらの弁体に作用する各バネならびに基部を一体に成形しているので、より安価に、より簡単に製造することができる。
【0011】
また、本体に対して基部が回動しないようにしているので、基部を開閉バルブなどの回動式機構の固定側部材として理由することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態のポンプ製品1の構成を示す図である。
【0013】
ポンプ製品1は、本体11、弁体ユニット12、ピストン13、バルブ14、操作部15、スプリング16、カバー17、容器18、ネジキャップ19、パッキン20、および吸上管21から構成される。
【0014】
本体11、弁体ユニット12、およびピストン13は、ポンプを形成する。本体11、弁体ユニット12、およびピストン13からなるポンプは、容器18に収容されている内容物を、容器18の中からポンプ製品1の外に移送する。
【0015】
移送される内容物は、例えば、石けん水などの洗剤、シャンプー、リンス、化粧品、または乳液など液状物のほか、芳香剤や消臭剤などの気体とすることができる。
【0016】
本体11および弁体ユニット12は、ポンプ用弁機構を構成する。本体11および弁体ユニット12からなるポンプ用弁機構は、容器18に収容されている内容物を移送する場合、容器18からポンプ製品1の外への方向にのみ、内容物を流通(流動)させる。
【0017】
ここで、例えば、本体11、弁体ユニット12、ピストン13、バルブ14、操作部15、カバー17、スプリング16、容器18、ネジキャップ19、パッキン20、または吸上管21は、熱可塑性樹脂などの合成樹脂、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはABS樹脂などの汎用プラスチック、またはポリアセタール、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートなどのエンジニアリングプラスチックなどにより成形される。なお、本体11乃至吸上管21は、熱硬化性樹脂により成形されるようにしてもよい。さらに、スプリング16は金属により成形してもよい。
【0018】
また、以下、アルファベットを含む符号は、その符号を付した構成要素(例えば、弁座11a)が、原則として、そのアルファベットを含まない符号を付した構成要素(例えば、本体11)の一部であることを示す。
【0019】
本体11のその内側には、内容物が流通する筒状の流路が形成されている。弁体ユニット12は、一体に成形され、本体11の内側、すなわち、流路に挿入されている。
【0020】
本体11の流路には、上流側から順に、弁座11a、弁座11b、および受け部11cが設けられている。図1において、内容物が流通する方向は、右側から左側に向かう方向なので、右から順に、弁座11a、弁座11b、および受け部11cが配置されることになる。
【0021】
弁体ユニット12には、弁体12a、弁体12b、基部12c、ばね部12d、ばね部12e、および柱状部12fが設けられている。
【0022】
本体11の流路に挿入される側の弁体ユニット12の端部から順に説明すれば、弁体ユニット12には、弁体12a、ばね部12d、弁体12b、ばね部12e、基部12c、および柱状部12fが順に設けられる。図1において、左側から右側に向かって、弁体ユニット12は本体11の流路に挿入されるので、右から順に、弁体12a、ばね部12d、弁体12b、ばね部12e、基部12c、および柱状部12fが配置されることになる。
【0023】
本体11の弁座11aと弁体ユニット12の弁体12aとは、内容物を上流側から下流側(図1中の右側から左側)に流し、下流側から上流側への内容物の流動を阻害する逆止弁である上流弁をなす。
【0024】
弁座11aは、本体11の流路の径に比較して小さい径の筒状とされ、その筒の一方の円形の端部の全周が流路に対して所定の距離を保った状態で開き、他方の円形の端部の全周が流路と隙間なくつながっている。すなわち、筒状の開いている一方の端部からだけ内容物が流通できるように弁座11aは形成されている。
【0025】
また、弁体12aの先端部は、半球形状に形成される。弁体12aには、半球形状の先端部の平らな円形の面に続いて、所定の長さのほぼ直方体の2枚の平板が相互に直角に組み合わされた十字状の断面の支柱が設けられる。弁体12aの支柱によって、弁体12aの振れが防止される。なお、流体の圧力を弁体12aに十分にかけるため、半球形状の先端部の平らな円形の面と内容物とがより広い面積で接するように、半球形状の先端部の平らな円形の面につながる側の、十字状の断面の支柱の端部にはテーパーがかけられている。また、弁体12aの支柱を十字状の断面としたのは、流動する内容物の流動抵抗を少なくするためである。
【0026】
筒状の弁座11aの端部であって、流路に対して所定の距離を保った状態で開いている端部と、弁体12aの先端部の半球形状の面とが密着することにより、逆止弁である上流弁は、閉じられる。この場合、内容物の流動は、逆止弁である上流弁で停止させられる。
【0027】
一方、筒状の弁座11aの端部であって、流路に対して所定の距離を保った状態で開いている端部と、弁体12aの先端部の半球形状の面とが離れることにより、逆止弁である上流弁は、開かれる。この場合、逆止弁である上流弁を通して、内容物が流動する。
【0028】
なお、弁座11aおよび弁体12aは、逆止弁として機能すればよく、その形状を限定するものではない。例えば、弁座11aおよび弁体12aをニードルバルブとして構成するようにしてもよい。
【0029】
本体11の弁座11bと弁体ユニット12の弁体12bとは、内容物を上流側から下流側に流し、下流側から上流側への内容物の流動を阻害する逆止弁である下流弁をなす。
【0030】
弁座11bは、所定の円錐状、いわゆるラッパ状(朝顔状に開いた形状)に形成される。すなわち、弁座11aから弁座11bの直前までは、本体11の流路の径が一定であるのに対して、弁座11bの下流側における流路の径が、弁座11bの上流側の流路の径に比較して、大きくなるように、弁座11bは、上流側から下流側に向かって開いた円錐状とされる。
【0031】
弁体12bの形状は、円錐状の弁座11bに密着できる、弁座11bの形状に対応した形状の円錐形状とされる。より詳細には、弁体12bは、円錐形状に加えて、円錐形状の上流側において、弁座11aから弁座11bの直前までの流路の径に対して所定のクリアランス分だけ小さい径の円筒形状とされる。このようにすることで、円筒形状の部分が流路に対するガイドの役割を果たし、弁体12bの流路への挿入が容易になり、また、下流弁の逆止弁としての動作がより確実になる。
【0032】
円錐形状の弁座11bと弁体12bの円錐形状の部分とが密着することにより、逆止弁である下流弁は、閉じられる。この場合、内容物の流動は、逆止弁である下流弁で停止させられる。
【0033】
一方、円錐形状の弁座11bと弁体12bの円錐形状の部分とが離れることにより、逆止弁である下流弁は、開かれる。この場合、逆止弁である下流弁を通して、内容物が流動する。
【0034】
なお、弁座11bおよび弁体12bは、逆止弁として機能すればよく、その形状を限定するものではない。例えば、弁座11bおよび弁体12bをニードルバルブとして構成するようにしてもよい。
【0035】
弁体ユニット12の基部12cが、本体11の受け部11cに当接することにより、本体11に対する基部12cの位置が決められる。すなわち、本体11に対する弁体ユニット12の位置が決められる。
【0036】
図2は、受け部11cおよび基部12cの詳細を示す図である。図2(a)は、図1における断面と同じ断面のうち、図1に示される断面A−A’の範囲の、受け部11cおよび基部12cの断面図である。図2(b)は、図2(a)に示される断面に対して直角の、図2(a)に示される断面B−B’における断面図である。
【0037】
図2(a)および図2(b)で示されるように、基部12cは、所定の外径および所定の長さの鍔状に形成される。基部12cの面であって、本体11の受け部11cに当接する面は、本体11の流路における内容物の流動方向に対して垂直の面とされる。
【0038】
受け部11cは、本体11の流路における内容物の流動方向に対して垂直の面であって、2つの同心円に挟まれた面、いわゆるドーナッツ状の面と、そのドーナッツ状の面の下流側に、基部12cの鍔状の外径および長さに対して所定のクリアランス分だけ大きい径および長さの円筒面と、さらに、その円筒面の下流側に、流路の内側に突出する環状突起から構成される。
【0039】
基部12cの鍔状の部分が、受け部11cのドーナッツ状の面と円筒面とに当接するとともに、受け部11cの環状突起に押さえられることにより、基部12cはがたつくことなく、基部12cの位置は、確実に決められる。
【0040】
さらに、基部12cの鍔状の部分の内側には、上流側と下流側とに開口する、縦長のほぼ直方体の穴が設けられるとともに、基部12cの鍔状の部分の上流側には、横長のI字断面部12gが設けられている。図2(b)に示されるように、縦長のほぼ直方体の穴と、I字断面部12gとは、ほぼ直角に交差している。
【0041】
また、図2(b)に示されるように、受け部11cのドーナッツ状の面には、I字断面部12gが挿入されるほぼ直方体の切り欠き11fが設けられる。
【0042】
I字断面部12gが切り欠き11fに嵌合するので、基部12c(弁体ユニット12)の筒状の流路に対する周の方向の角度が固定される。
【0043】
なお、切り欠き11fはほぼ直方体であると説明したが、I字断面部12gと嵌合して基部12c(弁体ユニット12)の角度を固定できれば良く、十字状、または星形の断面の切り欠きなど、より多くの角のいずれかが、I字断面部12gの角と嵌合するようにしてもよい。
【0044】
図2(a)に示されるように、本体11の流路を流れてきた内容物は、基部12cの鍔状の部分の内側の上流側の開口部から穴に流入し、下流側の開口部から流出する。
【0045】
なお、受け部11cおよび基部12cは、流路に対して基部12cの位置が決められるものであればよく、その形状を限定するものではない。
【0046】
図1に戻り、弁体ユニット12のばね部12dは、弁体12aと弁体12bとの間に設けられ、上流弁を閉じるように弁体12aに付勢する。
【0047】
ばね部12dは、薄板を上下または左右に繰り返し折り返した形状とされる。弁体ユニット12が本体11に挿入される前のばね部12dの長さは、弁体ユニット12が本体11に挿入された場合のその長さより長く、弁体ユニット12が本体11に挿入されて、ばね部12dが圧縮されることにより、ばね部12dは、上流弁を閉じるように弁体12aに付勢する。
【0048】
弁体ユニット12のばね部12eは、弁体12bと基部12cとの間に設けられ、下流弁を閉じるように弁体12bに付勢する。
【0049】
ばね部12eは、薄板を上下または左右に繰り返し折り返した形状とされる。弁体ユニット12が本体11に挿入される前のばね部12eの長さは、弁体ユニット12が本体11に挿入された場合のその長さより長く、弁体ユニット12が本体11に挿入されて、ばね部12eが圧縮されることにより、ばね部12eは、下流弁を閉じるように弁体12bに付勢する。
【0050】
ばね部12eによる弁体12bへの付勢力は、ばね部12dによる弁体12aへの付勢力に比較して、大きくされる。これは、内容物を上流弁と下流弁との間の流路およびシリンダ11d内に充填する充填過程において、下流弁の閉じた状態を維持したまま、上流弁を開くようにして、ポンプ製品1からの内容物のたれを防止するためである。
【0051】
柱状部12fは、バルブ14の内側の略円柱形状の穴に接する略円柱形状とされ、バルブ14に設けられたノズル14a側である先端に向かってその外径が絞り込まれた形状に形成されている。バルブ14の内側の略円柱形状の穴と接する、柱状部12fの略円柱形状の部分の外周には、上流側から略円柱形状の部分の途中まで内容物を流す凹部が設けられている。
【0052】
バルブ14は、本体11に挿入されている弁体ユニット12の柱状部12fと、本体11の、弁体ユニット12が挿入される側とを覆うように、筒状の流路の周方向に回動自在に、本体11に装着される。柱状部12fの略円柱形状の部分と接する、バルブ14の内側の略円柱形状の穴の内周には、柱状部12fの略円柱形状の部分の外周に設けられた凹部とつながり、その凹部からの内容物をバルブ14に設けられているノズル14aまで流通させるための凹部が設けられている。バルブ14の内側の略円柱形状の穴の内周に設けられている凹部の周方向の幅は、柱状部12fの凹部の周方向の幅より若干広く形成されている。
【0053】
バルブ14が本体11に対して回動させられて、柱状部12fの凹部の位置と、バルブ14の凹部の位置とが一致すると、本体11の流路からの内容物は、柱状部12fの凹部と、これにつながったバルブ14の凹部とを流れて、ノズル14aまで流通することになる。この場合、内容物に加圧されていると、ノズル14aから内容物が噴出される。
【0054】
一方、バルブ14が本体11に対してさらに回動させられて、柱状部12fの凹部の位置とバルブ14の凹部の位置とがずれて、バルブ14の内側の略円柱形状の穴の内周の面によって柱状部12fの凹部が閉塞されると、本体11の流路からの内容物の流通は、バルブ14の内側の略円柱形状の穴の内周の面によって止められてしまい、本体11の流路からの内容物は、ノズル14aまで到達できず、この場合、内容物に加圧されていても、ノズル14aから内容物は噴出されない。
【0055】
なお、弁体ユニット12のI字断面部12gが、切り欠き11fに嵌合するので、利用者がバルブ14を本体11に対して回動操作しても、バルブ14と共に弁体ユニット12が回動してしまうことはない。
【0056】
ノズル14aは、本体の流路を介して送られてきた内容物を、上下左右対称の円錐状または帯状などのパターンで拡散・霧化するか、または霧化せず真っ直ぐに噴出させる。
【0057】
ノズル14aは、複数の放出孔からなるものや、空気を取り込んで内容物を泡状に噴出させるためのブッシュを設けたものなどにしてもよい。また、ノズル14aの先に、ブラシ、フェルト、スポンジなどの内容物塗布用部材や、隙間への噴射用チューブ、飛散防止のための覆い、汚れ防止のためのカバー体などを設けてもよい。
【0058】
柱状部12fが、ノズル14a側の先端に向かってその外径が絞り込まれた形状に形成され、バルブ14の内側の略円柱形状の穴が、柱状部12fの形状に沿って絞り込まれているので、ノズル14aに向かって流れる内容物が整流され、拡散や霧化または噴出の状態が安定化される。
【0059】
上流弁から下流弁までの流路とシリンダ11d内との間で内容物が流通できるように、本体11のシリンダ11d内と上流弁から下流弁までの流路とがつながっている。シリンダ11d内にはピストン13が挿入され、ピストン13が移動することにより、シリンダ11d内の内容物の容積が変化する。
【0060】
シリンダ11dおよびピストン13は、いわゆるピストンポンプを構成するが、ピストンポンプに限らず、負圧を生じさせて内容物を吸い込む工程および正圧で内容物を吐出する工程を繰り返すものであれば足り、例えば、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプなどであってもよい。
【0061】
孔部11gは、容器内部の圧力調整用の通路である。容器18の上部の空間域を外気と連通させることで外気圧と一致させることで、使用による内容物の減少や、外環境の変化による、容器18内外の圧力差を解消し、容器18の変形や、吸上管21を通じて内容物を吸い上げるときに必要な力の増加を防ぐ。
【0062】
溝部11hは、ピストン13とともに弁を構成し、ピストン13外周の凹状部および孔部11gを通じて容器18の上部の空間域と外気を連通または遮断する。図1において、溝部11hはピストン13外周のシール部分に完全に覆われているので、前記空間域と外気は遮断された状態になっている。
【0063】
操作部15は、いわゆるトリガーレバーである。本体11の回動軸11eに操作部15の孔部15aが回動自在に嵌り、操作部15は、回動軸11eおよび孔部15aを軸として、回動自在に本体11に軸支されている。
【0064】
スプリング16は、いわゆる、つるまきばねである。スプリング16の一方の端部が本体11に係止され、他方の端部がピストン13に係止され、スプリング16は、ピストン13に対して、シリンダ11dからピストン13を押し出す方向に付勢する。
【0065】
カバー17は、本体11の上側に装着され、本体11の上側を覆う。
【0066】
容器18は、内容物を収容する。本体11は、パッキン20を介して、容器18の口に螺合するネジキャップ19によって、容器18に収容されている内容物が漏れないように、容器18に装着される。
【0067】
吸上管21は、その一方の端部が本体11の上流弁の上流側に挿入されて、本体11に固定される。吸上管21の長さは、本体11が容器18に装着された状態において、吸上管21の他方の端部が、容器18の底部に達する長さとされる。
【0068】
本体11の上流弁の上流側に負圧が生じると、容器18に収容された内容物は、吸上管21内を流れて、本体11の上流弁に流れ込む。
【0069】
図3は、噴出過程を説明する図である。
【0070】
使用者が操作部15を握ることによって、操作部15は、回動軸11eおよび孔部15aを軸として、図3における反時計方向に回動させられる。操作部15が反時計方向に回動させられると、操作部15は、シリンダ11dに挿入されているピストン13を押し込むことになる。その結果、シリンダ11d内の内容物に正圧の圧力が加えられる。
【0071】
シリンダ11d内の内容物に加えられた正圧の圧力は、上流弁から下流弁までの流路の内容物に伝達される。
【0072】
ピストン13によって加えられ、上流弁から下流弁までの流路の内容物に伝達された正圧の圧力は、弁体12aの半球形状の先端部の平らな円形の面と、弁体12bの円錐形状の面に加えられる。
【0073】
弁体12aの半球形状の先端部の平らな円形の面に加わる内容物の正圧の圧力は、弁体12aの先端部を弁座11aにより密着させ、本体11の弁座11aと弁体ユニット12の弁体12aとからなる上流弁を閉じさせるように作用する。
【0074】
一方、弁体12bの円錐形状の面に加わる内容物の正圧の圧力は、弁体12bを弁座11bから離す方向に作用するので、内容物の圧力によって弁体12bにかかる力がばね部12eの付勢力よりも大きくなると、弁体12bと弁座11bとが離れて、本体11の弁座11bと弁体ユニット12の弁体12bとからなる下流弁は、開かれる。
【0075】
その結果、シリンダ11d内の内容物が、上流弁から下流弁までの流路に流れ込み、シリンダ11d内から、上流弁から下流弁までの流路に流れ込んだ内容物は、閉じられている上流弁から逆流することなく、開かれた下流弁から流れ出る。そして、下流弁から流れ出た内容物は、基部12cの穴と、柱状部12fの凹部と、その柱状部12fの凹部につながる、バルブ14の内側の略円柱形状の穴の内周に設けられている凹部と、ノズル14aとを順に通り、ポンプ製品1の外に噴出される。
【0076】
また、使用者が操作部15を握ることによって、シリンダ11dに挿入されているピストン13が押し込まれると、溝部11hがピストン13外周のシール部分から外気側にはみ出るかたちになるので、「外気−溝部11h−ピストン13外周の凹状部−孔部11g−容器18の上部の空間域」が連通して、容器18内外の圧力差を解消される。
【0077】
図4は、充填過程を説明する図である。
【0078】
噴出過程において操作部15を握った後に、使用者が操作部15をはなすと、操作部15からピストン13にかかる力がなくなるので、ピストン13は、スプリング16の付勢力によって、シリンダ11dから出る方向に移動しようとする。すなわち、シリンダ11dから出す方向にピストン13に作用するスプリング16の付勢力は、ピストン13を介して、シリンダ11d内の内容物に負圧の圧力として加えられる。
【0079】
シリンダ11d内の内容物に加えられた負圧の圧力は、上流弁から下流弁までの流路の内容物に伝達される。
【0080】
上流弁から下流弁までの流路の内容物に伝達された負圧の圧力は、弁体12aの半球形状の先端部の平らな円形の面と、弁体12bの円錐形状の面に加えられる。
【0081】
弁体12bの円錐形状の面に加わる内容物の負圧の圧力は、弁体12bを弁座11bにより密着させ、本体11の弁座11bと弁体ユニット12の弁体12bとからなる下流弁を閉じさせるように作用する。
【0082】
一方、弁体12aの半球形状の先端部の平らな円形の面に加わる内容物の負圧の圧力は、弁体12aを弁座11aから離す方向に作用するので、内容物の圧力によって弁体12aにかかる力がばね部12dの付勢力よりも大きくなると、弁体12aと弁座11aとが離れて、本体11の弁座11aと弁体ユニット12の弁体12aとからなる上流弁は、開かれる。
【0083】
その結果、内容物にかかる負圧の圧力によって、容器18に収容された内容物が、吸上管21内を吸い上げられて、開いている本体11の上流弁と上流弁から下流弁までの流路とを通じて、シリンダ11d内に流れ込む。スプリング16の付勢力による、シリンダ11dから出る方向へのピストン13の移動と共に、容器18に収容された内容物がシリンダ11d内に充填されることになる。
【0084】
そして、ピストン13がシリンダ11dから出る方向に移動すると、操作部15は、ピストン13によって、図4における時計方向に、回動軸11eおよび孔部15aを軸として回動させられる。
【0085】
また、溝部11hがピストン13外周のシール部分に完全に覆われるので、容器18の上部の空間域と外気は遮断された状態へ復帰する。
【0086】
このように、操作部15を握ることによって、内容物を噴出することができる。また、操作部15を握ってはなす操作を繰り返すことで、容器18に収容された内容物を連続的に噴出することができる。
【0087】
弁体12a、弁体12b、基部12c、ばね部12d、ばね部12e、および柱状部12fからなる弁体ユニット12が、一体に成形されるので、弁体ユニット12をより安価に製造することができ、よって、ポンプ製品1をより安価に製造することができる。また、弁体ユニット12が、一体に成形されるので、弁体12a、弁体12b、基部12c、ばね部12d、ばね部12e、および柱状部12fの寸法や材質などにばらつきが生じにくく、精度をより良くかつ安定させることができる。
【0088】
ポンプ製品1を組み立てる場合には、弁体ユニット12のI字断面部12gと本体11の切り欠き11fの向きを合わせ、弁体ユニット12の基部12cが、本体11の受け部11cに当接するまで、弁体ユニット12を本体11に挿入するだけで、弁体12aと弁座11aとが逆止弁である上流弁をなすように、弁座11aに対して弁体12aが配置され、弁体12bと弁座11bとが逆止弁である下流弁をなすように、弁座11bに対して弁体12bが配置される。従って、本体11および弁体ユニット12からなるポンプ用弁機構をより簡単に組み立てることができるようになる。すなわち、ポンプ製品1をより簡単に組み立てることができるようになる。
【0089】
なお、弁体ユニット12は、同一の素材でその全体を一体に成形するようにしても、弁体12a、弁体12b、基部12c、ばね部12d、ばね部12e、および柱状部12fに、異なる素材を用いて、その全体を一体に成形するようにしてもよい。例えば、弁体12a、弁体12b、ばね部12d、およびばね部12eに弾性の比較的大きい素材を用い、基部12cおよび柱状部12fに弾性の比較的小さい素材を用いて、弁体ユニット12が一体に成形されるようにしてもよい。
【0090】
本発明のポンプ用弁機構を適用したポンプ式製品により噴出される内容物としては、洗浄剤、清掃剤、制汗剤、冷却剤、筋肉消炎剤、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント剤、染毛剤、育毛剤、化粧品、シェービングフォーム、食品、液滴状のもの(ビタミンなど)、医薬品、医薬部外品、塗料、園芸用剤、忌避剤(殺虫剤)、クリーナー、消臭剤、洗濯のり、ウレタンフォーム、消火器、接着剤、潤滑剤などの各種のものがある。
【0091】
より詳細には、容器18に収納する内容物は、例えば水、油成分、アルコール類、界面活性剤、高分子化合物、粉状物、各用途に応じた有効成分などを含むものとすることができる。
【0092】
粉状物としては、金属塩類粉末、無機物粉末や樹脂粉末などを用いることができる。例えば、タルク、カオリン、アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩)、アルギン酸カルシウム、金粉、銀粉、雲母、炭酸塩、硫酸バリウム、セルロース、これらの混合物などが用いられる。
【0093】
油成分としては、シリコーン油、パーム油、ユーカリ油、ツバキ油、オリーブ油、ホホバ油、パラフィン油、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸などを用いることができる。
【0094】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール、ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール、エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いることができる。
【0095】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いることができる。
【0096】
高分子化合物としては、メチルセルロース、ゼラチン、デンプン、カゼインなどを用いることができる。
【0097】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル、インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム、クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド、ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル、メントールなどの清涼剤、エフェドリン、アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース、アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂、ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン、アミノフェノールなどの染料、リン酸二水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いることができる。
【0098】
さらに、上記以外の、懸濁剤、紫外線吸収剤、乳化剤、保湿剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の一実施の形態のポンプ製品1の構成を示す図である。
【図2】受け部11cおよび基部12cの詳細を示す図である。
【図3】噴出過程を説明する図である。
【図4】充填過程を説明する図である。
【符号の説明】
【0100】
1 ポンプ製品
11 本体
11a 弁座
11b 弁座
11c 受け部
11d シリンダ
11e 回動軸
11f 切り欠き
11g 孔部
11h 溝部
12 弁体ユニット
12a 弁体
12b 弁体
12c 基部
12d ばね部
12e ばね部
12f 柱状部
12g I字断面部
13 ピストン
14 バルブ
14a ノズル
15 操作部
15a 孔部
16 スプリング
17 カバー
18 容器
19 ネジキャップ
20 パッキン
21 吸上管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内容物が流通する筒状の流路に、上流側から順に、第1の弁座、第2の弁座、および後述の基部を保持する受け部が形成されている本体と、
前記第1の弁座と共に第1の逆止弁をなす第1の弁体と、
前記第2の弁座と共に第2の逆止弁をなす第2の弁体と、
前記受け部に位置決めされる基部と、
前記第1の弁体と前記第2の弁体との間に設けられ、前記第1の逆止弁を閉じるように前記第1の弁体に作用する第1のバネと、
前記第2の弁体と前記基部との間に設けられ、前記第2の逆止弁を閉じるように前記第2の弁体に作用する第2のバネと
を備え、
前記第1の弁体、前記第2の弁体、前記基部、前記第1のバネ、および前記第2のバネが一体に成形されている、
ことを特徴とするポンプ用弁機構。
【請求項2】
前記本体は、前記基部に対する回動防止用の位置決め部を有し、
前記基部は、前記位置決め部によって保持される被位置決め部を有している、
ことを特徴とする請求項1記載のポンプ用弁機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のポンプ用弁機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−272672(P2008−272672A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119583(P2007−119583)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】