説明

ポンプ

【課題】 波力により駆動し、水位に関わらず安定してエネルギを取り出すことができるポンプを提供する。
【解決手段】 躯体と、躯体に設けられた第一流路、第二流路、供給流路および吐出流路と、第一ピストンと、第二ピストンと、連結部材とを備え、躯体は、外部水域と内部水域とを隔てるものであり、第一流路は、水中に位置しており、外部水域と内部水域を連通していて、第一ピストンが挿入されており、第二流路は、内部水域側に開口していて、第二ピストンが挿入されており、供給流路は、第二流路に接続されていて、第二流路に流体を供給するものであり、吐出流路は、第二流路に接続されていて、第二流路から流体を吐出するものであり、連結部材は、第一支軸によって第一ピストンと回転自在に連結され、第二支軸によって第二ピストンと回転自在に連結され、躯体支軸によって躯体と回転自在に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波力により駆動するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の自然エネルギの中でも、波力は、エネルギ密度が高いこと、比較的状況の予測がしやすいことから、エネルギ資源として有望視されている。そのため、従来波力発電に関する研究開発が数多く行われている。一般的な波力発電の方式は、波力を利用したポンプによって水をくみ上げ、その水で発電機に接続された水車を回すというものであるが、このポンプにも様々なものがあり、たとえば、特許文献1には、波受板の下端をケーソンの底板に回動自在に軸着し、波受板の上端と、給水管に挿入したピストンとをロッドで連結したポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−10270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、文献1のポンプは、水位が下がるほど、波受板のうち実際に波を受ける部分の面積が小さくなって効率が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、波力により駆動し、水位に関わらず安定してエネルギを取り出すことができるポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、躯体と、躯体に設けられた第一流路、第二流路、供給流路および吐出流路と、第一ピストンと、第二ピストンと、連結部材とを備え、躯体は、外部水域と内部水域とを隔てるものであり、第一流路は、水中に位置しており、外部水域と内部水域を連通していて、第一ピストンが挿入されており、第二流路は、内部水域側に開口していて、第二ピストンが挿入されており、供給流路は、第二流路に接続されていて、第二流路に流体を供給するものであり、吐出流路は、第二流路に接続されていて、第二流路から流体を吐出するものであり、連結部材は、第一支軸によって第一ピストンと回転自在に連結され、第二支軸によって第二ピストンと回転自在に連結され、躯体支軸によって躯体と回転自在に連結されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、躯体支軸が移動可能であって、躯体支軸と、第一支軸および第二支軸との間の距離が可変であることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項3の発明は、吐出流路の途中に、流体をためる貯留槽が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のうち請求項4の発明は、第一流路の外部水域側端を開閉する水門扉を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1の発明によれば、第一流路が水中に位置していて、その中に波を受ける第一ピストンが挿入されているので、水位に関わらず安定してエネルギを取り出すことができる。また、設計時において第一ピストンと第二ピストンの面積の比を変えることにより、ポンプの吸込性能および吐出性能を自在に設定できる。
【0011】
本発明のうち請求項2の発明によれば、波の高さに応じて、躯体支軸を移動させ、躯体支軸と、第一支軸および第二支軸との間の距離を変化させることで、ポンプの揚程が常に一定になるよう、最適制御を行うことができる。
【0012】
本発明のうち請求項3の発明によれば、吐出流路の途中に貯留槽を設けることで、波の変動に伴う流体の供給量の変動を吸収して、流体を安定的に吐出することができる。
【0013】
本発明のうち請求項4の発明によれば、水門扉を閉じるだけで容易にポンプを停止できる。また、水門扉によって、ポンプを構成する躯体以外のすべての構成要素を外部水域から遮断できるので、災害時などにおいてポンプの破損を防ぐことができる。なお、この水門扉は水中に位置するので、特に波力の影響を受けにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のポンプを利用した発電システムの模式図。
【図2】支持部の移動構造の説明図。
【図3】支持部の移動と第一ピストンおよび第二ピストンの動作との関係を示す説明図。
【図4】本発明のポンプを利用した船舶搭載用の発電システムの模式図。
【図5】本発明のポンプを利用した気泡発生装置の模式図。
【図6】本発明のポンプを利用した波力推進器の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポンプの具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図1に示すのは第一実施形態であり、このポンプを利用した発電システムの模式図である。この第一実施形態の発電システムは、沿岸に設置される防波堤に組み込まれたもので、防波堤自体が躯体1となる。躯体1は、外海30(外部水域)と内海40(内部水域)とを隔てており、躯体1の下端は海底に固定されている。そして躯体1には、第一流路2、第二流路3、供給流路4および吐出流路5が設けられている。第一流路2は、躯体1の下部の海底近くに設けられており、水平方向に延びて外海30と内海40とを連通している。なお、水面高さ(水位)は潮汐により変化するが、第一流路2は、最も水面高さが低くなる干潮時でも水中に位置するような高さに設けられる。第二流路3は、第一流路2の上側に設けられており、水平方向に延びて内海側に開口している。第一流路2と第二流路3は、何れも断面円形であって、第一流路2の方が第二流路3よりも径(断面積)が大きい。また、第二流路3の閉止端(外海側端)には、供給流路4の一端が供給側逆止弁14を介して接続されている。供給流路4の他端は内海側に開口しており、その開口部は第一流路2と同様、干潮時でも水中に位置するような高さに設けられる。供給側逆止弁14は、供給流路4から第二流路3へ水を流し、逆向きの流れは遮断するものである。さらに、第二流路3の閉止端(外海側端)には、吐出流路5の一端も吐出側逆止弁15を介して接続されている。吐出流路5は、躯体1の内部を上向きに延びて、躯体1の上端部に設けられた貯留槽12に接続しており、さらに貯留槽12から下向きに延びて、他端が内海側に開口している(この開口部は必ずしも水中に位置していなくてもよい)。貯留槽12は、上側に開口する水槽であり、吐出流路5のうち、第二流路3から貯留槽12までを上流側吐出流路5a、貯留槽12から内海側の開口部までを下流側吐出流路5bとする。吐出側逆止弁15は、第二流路3から吐出流路5へ水を流し、逆向きの流れは遮断するものである。また、下流側吐出流路5bの下端部(内海側の開口部の手前)には、水車16が設けられている。水車は、発電機(図示省略)に接続されている。
【0016】
そして、第一流路2および第二流路3には、それぞれ第一ピストン6および第二ピストン7が挿入され、水平方向に摺動自在となっている。第一ピストン6および第二ピストン7は、それぞれ内海側に向けて延びるロッド61,71を有しており、第一ピストン6のロッド61と、第二ピストンのロッド71が、棒状の連結部材8により連結されている。さらに連結部材8は、上端部が躯体1に連結されている。ここで、連結部材8と、第一ピストン6、第二ピストン7および躯体1との連結部分について説明する。連結部材8には、長手方向に延びる長孔81が形成されている。そして、第一ピストン6のロッド61に取り付けた第一支軸9が、長孔81に挿入されていて、長孔81に沿って摺動自在かつ回転自在に係合している。また、第二ピストン7のロッド71に取り付けた第二支軸10が、長孔81の第一支軸9より上側に挿入されていて、長孔81に沿って摺動自在かつ回転自在に係合している。さらに、躯体1の支持部17に取り付けた躯体支軸11が、連結部材8の長孔81よりも上側部分に回転自在に係合している。なお、図2に示すように、支持部17はボールネジ171によって上下動自在な構成となっている。すなわち、躯体1の内海側面に、ボールネジ171を回転させるモータ172と、ボールネジ171を垂直向きに支持する軸受173が取り付けられており、支持部17がボールネジ171に螺合していて、かつボールネジ171に平行するガイド174に沿って摺動可能で、ボールネジ171を回転させることにより支持部17が上下動する。支持部17を上下動させると、第一支軸9および第二支軸10が連結部材8の長孔81に沿って移動し、躯体支軸11と、第一支軸9および第二支軸10との間の距離が変化する。
【0017】
また、第一流路2の外海側には、水門扉13が設けられている。水門扉13は、上下動して第一流路2の外海側端を開閉する。
【0018】
このように構成した第一実施形態の発電システムにおいては、水門扉13を開放することで、波力により発電をすることができる。以下、その際の動作をより詳しく説明する。水門扉13を開放すると、外海30と内海40の波の高さにより生じる圧力差によって、第一ピストン6が水平方向に往復運動を行う。すると、連結部材8が上端部の躯体支軸11を支点にして往復回転運動するので、連結部材8に連結された第二ピストン7も水平方向に往復運動する。そして、第二ピストン7が挿入された第二流路3の閉止端(外海側端)には、供給流路4が供給側逆止弁14を介して接続されているので、第二ピストン7が内海側へ移動すると、供給流路4から第二流路3へ水が流入する。さらに、第二流路3の閉止端(外海側端)には、吐出流路5が吐出側逆止弁15を介して接続されているので、第二ピストン7が外海側へ移動すると、第二流路3から吐出流路5へ水が流出する。これが繰り返されて、水がくみ上げられる。吐出流路5へ流出した水は、上流側吐出流路5aを通って貯留槽12に貯水され、さらに下流側吐出流路5bを通って内海40へ排出される。その際、下流側吐出流路5bの途中に設けられた水車16を回転させて、発電が行われる。
【0019】
なお、上記のとおり、この発電システムでは、支持部17を上下動させることで、躯体支軸11と、第一支軸9および第二支軸10との間の距離を変化させられる。ここで、図3(a)、(b)に示すように、躯体支軸11と第一支軸9との間の距離をL1、躯体支軸11と第二支軸10との間の距離をL2とし、さらに第一ピストン6に作用する力をF1、第二ピストン7に作用する力をF2とすると、F2=L1/L2×F1という関係式が成り立つ。これによって、ポンプの揚程や流量を制御することができる。すなわち、支持部17を上側に移動させると(図3(a))、L1/L2が小さくなるので、第二ピストン7に作用する力(F2)が小さくなる。この場合、第二ピストン7の移動量が大きくなるので、流量は大きくなる。一方、支持部17を下側に移動させると(図3(b))、L1/L2が大きくなるので、第二ピストン7に作用する力(F2)が大きくなる。この場合、第二ピストン7の移動量が小さくなるので、流量は小さくなる。そして、波が高いときは、第一ピストン6に作用する力(F1)が大きく、波が低いときは、第一ピストン6に作用する力(F1)が小さいので、波の高さを検知し、それに応じて支持部17を上下動させることで(波が高ければ上側に移動させ、波が低ければ下側に移動させる)、ポンプの揚程が常に一定になるよう、最適制御を行うことができる。
【0020】
以上のように構成した本発明のポンプは、第一流路が水中に位置していて、その中に波を受ける第一ピストンが挿入されているので、水位に関わらず安定してエネルギを取り出すことができる。また、設計時において第一ピストンと第二ピストンの径(面積)の比を変えることにより、ポンプの吸込性能および吐出性能を自在に設定できる。また、上記のとおり躯体支軸を移動させることで、最適制御を行うことができる。さらに、吐出流路の途中に貯留槽を設けることで、波の変動に伴う流体の供給量の変動を吸収して、流体を安定的に吐出することができる。また、この貯留槽は上側に開口しているから、防波堤を超える波や雨水が直接流入し、その分も発電に利用できる。さらに、水門扉を閉じるだけで容易にポンプを停止できる。また、水門扉によって、ポンプを構成する躯体以外のすべての構成要素を外部水域から遮断できるので、災害時などにおいてポンプの破損を防ぐことができる。なお、この水門扉は水中に位置するので、特に波力の影響を受けにくい。
【0021】
続いて、連結部材の別構造例について説明する。図3(c)、(d)に示すように、この構造例では、連結部材8の長手方向に延びる長孔81が形成されており、躯体1の支持部17に取り付けた躯体支軸11が、長孔81に挿入されていて、長孔81に沿って摺動自在かつ回転自在に係合している。また、第二ピストン7のロッド71に取り付けた第二支軸10が、長孔81の躯体支軸11より下側に挿入されていて、長孔81に沿って摺動自在かつ回転自在に係合している。さらに、第一ピストン6のロッド61に取り付けた第一支軸9が、連結部材8の長孔81よりも下側部分に回転自在に係合している。なお、支持部17を上下動させる機構については、先に記載の構造と同じであり、支持部17を上下動させると、躯体支軸11が連結部材8の長孔81に沿って移動し、躯体支軸11と、第一支軸9および第二支軸10との間の距離が変化する。そして、このように構成した場合にも、躯体支軸11と第一支軸9との間の距離をL1、躯体支軸11と第二支軸10との間の距離をL2とし、さらに第一ピストン6に作用する力をF1、第二ピストン7に作用する力をF2とすると、F2=L1/L2×F1という関係式が成り立ち、これによって、ポンプの揚程や流量を制御することができる。すなわち、支持部17を上側に移動させると(図3(c))、L1/L2が小さくなるので、第二ピストン7に作用する力(F2)が小さくなる。この場合、第二ピストン7の移動量が大きくなるので、流量は大きくなる。一方、支持部17を下側に移動させると(図3(d))、L1/L2が大きくなるので、第二ピストン7に作用する力(F2)が大きくなる。この場合、第二ピストン7の移動量が小さくなるので、流量は小さくなる。
【0022】
次に、第二実施形態について、図4に基づき説明する。第二実施形態は、本発明のポンプを利用した船舶搭載用の発電システムである。この発電システムを搭載する船舶の船体50の側面部には凹部が形成されており、凹部の入口を塞ぐようにしてポンプの躯体1が取り付けられる。躯体1の外側は外海30(外部水域)であり、躯体1の内側は内部水槽41(内部水域)となり、躯体1は外海30と内部水槽41とを隔てていて、躯体1の下端は船体50に固定されている。ただし、躯体1は外海30と内部水槽41とを完全に遮断するものではなく、躯体1の上部には外海30と内部水槽41とを連通する隙間部18が設けられている。そして躯体1には、第一実施形態と同様に、第一流路2、第二流路3、供給流路4および吐出流路5が設けられている。第一流路2は、躯体1の下部の船体50近くに設けられており、水平方向に延びて外海30と内部水槽41とを連通している。なお、第一流路2は、喫水線よりも下側の常に水中に位置するような高さに設けられる。第二流路3は、第一流路2の上側に設けられており、水平方向に延びて内部水槽側に開口している。第一流路2と第二流路3は、何れも断面円形であって、第一流路2の方が第二流路3よりも径(断面積)が大きい。また、第二流路3の閉止端(外海側端)には、供給流路4の一端が供給側逆止弁14を介して接続されている。供給流路4の他端は内部水槽側に開口しており、その開口部は第一流路2と同様、常に水中に位置するような高さに設けられる。供給側逆止弁14は、供給流路4から第二流路3へ水を流し、逆向きの流れは遮断するものである。さらに、第二流路3の閉止端(外海側端)には、吐出流路5の一端も吐出側逆止弁15を介して接続されている。吐出流路5は、躯体1の内部を通って他端が内部水槽側に開口している(この開口部は必ずしも水中に位置していなくてもよい)。吐出側逆止弁15は、第二流路3から吐出流路5へ水を流し、逆向きの流れは遮断するものである。また、吐出流路5の途中(内部水槽側の開口部の手前)には、水車16が設けられている。水車は、発電機(図示省略)に接続されている。そして、第一実施形態と同様に、第一流路2および第二流路3には、それぞれ第一ピストン6および第二ピストン7が挿入され、水平方向に摺動自在となっている。さらに、第一ピストン6と第二ピストン7とは、棒状の連結部材8により連結されていて、連結部材8は、上端部が躯体1の支持部17に連結されている。連結部材8と、第一ピストン6、第二ピストン7および躯体1との連結部分については、第一実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。また、第一流路2の外海側には、水門扉13が設けられている。水門扉13は、上下動して第一流路2の外海側端を開閉する。
【0023】
このように構成した第二実施形態の船舶搭載用の発電システムにおいても、第一実施形態と同様に、水門扉13を開放することで、波力により発電をすることができる。その際の動作は第一実施形態と同じであるが(ただし、貯留槽はない)、第二実施形態では、船舶の揺れによって生じる外海30と内部水槽41との水面高さの差による発電も可能である。
【0024】
次に、第三実施形態について、図5に基づき説明する。第三実施形態は、本発明のポンプを利用した気泡発生装置である。この気泡発生装置は、第一実施形態と同様に、沿岸に設置される防波堤に組み込まれたもので、防波堤自体が躯体1となる。躯体1は、外海30(外部水域)と内海40(内部水域)とを隔てており、躯体1の下端は海底に固定されている。そして躯体1には、第一流路2、第二流路3、供給流路4および吐出流路5が設けられている。第一流路2は、水平方向に延びて外海30と内海40とを連通している。なお、水面高さ(水位)は潮汐により変化するが、第一流路2は、最も水面高さが低くなる干潮時でも水中に位置するような高さに設けられる。第二流路3は、第一流路2の下側に設けられており、水平方向に延びて内海側に開口している。第一流路2と第二流路3は、何れも断面円形であって、第一流路2の方が第二流路3よりも径(断面積)が大きい。また、第二流路3の閉止端(外海側端)には、供給流路4の一端が供給側逆止弁14を介して接続されている。供給流路4の他端は内海側に向けて延び、躯体1から突出して内海40の水面上に開口しており、その開口部は満潮時でも水面より上に位置するような高さに設けられる。供給側逆止弁14は、供給流路4から第二流路3へ空気を流し、逆向きの流れは遮断するものである。さらに、第二流路3の閉止端(外海側端)には、吐出流路5の一端も吐出側逆止弁15を介して接続されている。吐出流路5の他端は、躯体1から突出して海底近くに延びている。吐出流路5の他端の近傍には複数の放出孔19が設けられており、放出孔19から空気が気泡となって放出される。吐出側逆止弁15は、第二流路3から吐出流路5へ空気を流し、逆向きの流れは遮断するものである。そして、第一実施形態と同様に、第一流路2および第二流路3には、それぞれ第一ピストン6および第二ピストン7が挿入され、水平方向に摺動自在となっている。さらに、第一ピストン6と第二ピストン7とは、棒状の連結部材8により連結されていて、連結部材8は、上端部が躯体1の支持部17に連結されている。第一実施形態とは、第一ピストン6と第二ピストン7の位置関係が逆になっているが、その他、連結部材8と、第一ピストン6、第二ピストン7および躯体1との連結部分については、第一実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。また、第一流路2の外海側には、水門扉13が設けられている。水門扉13は、上下動して第一流路2の外海側端を開閉する。
【0025】
このように構成した第三実施形態の気泡発生装置においては、水門扉13を開放することで、第一ピストン6および第二ピストン7が作動し、供給流路4から空気を吸引して、吐出流路5から気泡を発生する。第一ピストン6および第二ピストン7の作動原理は第一実施形態と同様であるが、第一ピストン6と第二ピストン7の位置関係が逆なので、支持部17を上下動させたときの作用も逆になる。すなわち、支持部17を上側に移動させると、第二ピストン7に作用する力が大きくなるとともに、第二ピストン7の移動量が小さくなるので、流量は小さくなる。一方、支持部17を下側に移動させると、第二ピストン7に作用する力が小さくなるとともに、第二ピストン7の移動量が大きくなるので、流量は大きくなる。この気泡発生装置によれば、気泡の拡散効果により、化学反応を促進したり、微生物の働きを活性化したりすることができ、海や湖などの水質改善や、下水処理施設などでの水の浄化に利用することができる。
【0026】
次に、第四実施形態について、図6に基づき説明する。第四実施形態は、本発明のポンプを利用した波力推進器である。この波力推進器は、船舶の船体50と一体に構成されるものであり、船底が躯体1となる。躯体1の下側は外海30(外部水域)であり、躯体1の上側には水槽が搭載してあって、これが内部水槽41(内部水域)となり、躯体1は外海30と内部水槽41とを隔てている。そして躯体1には、第一実施形態と同様に、第一流路2、第二流路3、供給流路4および吐出流路5が設けられている。第一流路2は、船底に形成された孔であり、垂直方向に延びて外海30と内部水槽41とを連通している。なお、第一流路2は、船底に形成されているのであるから、常に水中に位置する。第二流路3は、船体50の第一流路2よりも後側に設けられており、垂直向きに延びて内部水槽側(上側)に開口している。第一流路2と第二流路3は、何れも断面円形であって、第一流路2の方が第二流路3よりも径(断面積)が大きい。また、第二流路3の閉止端(下端)には、供給流路4が接続されている。供給流路4は、供給側逆止弁14を介して第二流路3に接続されるべきものであるが、本実施形態においては、供給流路4が短く、供給側逆止弁14そのものが供給流路4となっている。なお、供給流路4も、船底に形成されているのであるから、常に水中に位置する。供給側逆止弁14は、外海30から第二流路3へ水を流し、逆向きの流れは遮断するものである。さらに、第二流路3の閉止端(船体50の後側)には、吐出流路5の一端も吐出側逆止弁15を介して接続されている。吐出流路5は、他端が船体50の後側に向けて開口している。この開口部も、喫水線よりも下側の常に水中に位置するような高さに設けられる。吐出側逆止弁15は、第二流路3から吐出流路5へ水を流し、逆向きの流れは遮断するものである。そして、第一実施形態と同様に、第一流路2および第二流路3には、それぞれ第一ピストン6および第二ピストン7が挿入され、垂直方向に摺動自在となっている。さらに、第一ピストン6と第二ピストンとは、棒状の連結部材8により連結されていて、連結部材8は、前端部が躯体1の支持部17に連結されている。この支持部17は、前後動可能となっている。第一実施形態とは、第一ピストン6と第二ピストン7の摺動方向が異なり、また両者の位置関係が逆になっているが、その他、連結部材8と、第一ピストン6、第二ピストン7および躯体1との連結部分については、第一実施形態と同じ構成であり、説明は省略する。
【0027】
このように構成した第四実施形態の波力推進器においては、第一ピストン6と第二ピストン7が作動し、供給流路4(供給側逆止弁14)から水を吸引して、吐出流路5から吐出する。第一ピストン6および第二ピストン7は、第一実施形態とは摺動方向が異なるが、同様に波力によって往復運動する。そして、支持部17を前側に移動させると、第二ピストン7に作用する力が大きくなるとともに、第二ピストン7の移動量が小さくなるので、流量は小さくなる。一方、支持部17を後側に移動させると、第二ピストン7に作用する力が小さくなるとともに、第二ピストン7の移動量が大きくなるので、流量は大きくなる。この波力推進器によれば、船体から水を吐出することで、これを推進力とすることができる。また、波力推進器を設けることで、船体の揺れが吸収されるという効果もある。なお、波力推進器を単体で用いるのではなく、エンジンによって動作するスクリューなどと併用して、補助の推進器としてもよい。その際には、船体の揺れがなくなることにより燃費が向上する。さらに、船体の側面方向に水を吐出させて、船体の方向転換や姿勢制御に用いてもよい。
【0028】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。各部の構造は要件を満たすものであればどのようなものであってもよい。たとえば、第一流路および第二流路の断面形状は、円形以外に、矩形などどのような形状であってもよく、その場合、第一ピストンおよび第二ピストンも、それに合わせた形状となる。また、第一ピストンと第二ピストンの間に支持部が設けられていてもよいし、供給流路や吐出流路が躯体の別の場所に設けられていてもよい。さらに、連結部材と、ピストンや躯体との連結構造、あるいは支持部の移動構造などは、一例を示したものであり、既存の種々の構造を適用できる。なお、発電システム、気泡発生装置や波力推進器は、ポンプの使用例として示したものであり、それ以外の目的に使用するものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 躯体
2 第一流路
3 第二流路
4 供給流路
5 吐出流路
6 第一ピストン
7 第二ピストン
8 連結部材
9 第一支軸
10 第二支軸
11 躯体支軸
12 貯留槽
13 水門扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体と、躯体に設けられた第一流路、第二流路、供給流路および吐出流路と、第一ピストンと、第二ピストンと、連結部材とを備え、
躯体は、外部水域と内部水域とを隔てるものであり、
第一流路は、水中に位置しており、外部水域と内部水域を連通していて、第一ピストンが挿入されており、
第二流路は、内部水域側に開口していて、第二ピストンが挿入されており、
供給流路は、第二流路に接続されていて、第二流路に流体を供給するものであり、
吐出流路は、第二流路に接続されていて、第二流路から流体を吐出するものであり、
連結部材は、第一支軸によって第一ピストンと回転自在に連結され、第二支軸によって第二ピストンと回転自在に連結され、躯体支軸によって躯体と回転自在に連結されていることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
躯体支軸が移動可能であって、躯体支軸と、第一支軸および第二支軸との間の距離が可変であることを特徴とする請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
吐出流路の途中に、流体をためる貯留槽が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のポンプ。
【請求項4】
第一流路の外部水域側端を開閉する水門扉を備えることを特徴とする請求項1、2または3記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100733(P2013−100733A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243748(P2011−243748)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】