説明

ポータブル嗜好品販売装置

【課題】遊技施設内における移動販売を可能にする、特にはカードを利用した移動販売を可能にするポータブル嗜好品販売装置を提供する。
【解決手段】ポータブル嗜好品販売装置1は、販売される商品の対価をカード類にチャージする課金部10と、販売される商品の対価を表示する表示部20と、販売される商品を保持する商品保持部30と、販売装置1全体の動作を制御する制御部50とから構成される。制御部50は、注文商品の金額を表示部20に表示し、表示部20に表示された金額を課金部10にセットされたカード類に課金し、オプションとして該販売実績を記憶するよう構成することができる。課金部10は、少なくとも1種類のカードの読み取り機能、もしくは読み・書き機能を備えている。表示部10には、承認機能を設けて、注文者による承認動作を得た後に課金するよう構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技場、パチスロ遊技場等の遊技施設、野球やサッカー等の競技場、映画館を含む劇場、集会場等の集会施設内において、飲料物等の嗜好品を移動販売する際に使用するポータブル嗜好品販売装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技場などの遊技施設においては通常、遊技者のリフレッシュ用としてコーヒーなどの飲料物、あるいは菓子、タバコなどの嗜好品(以下、これらをまとめて「嗜好品」という。)を販売している。遊技者が遊技施設内においてこれらの嗜好品を購入するには、主として2つの方法が利用されている。1つは遊技者自身がカウンタまたは販売装置まで移動して飲料等を注文し、または購入するものであり、他の1つは遊技中の遊技者が手を挙げたり表示ボタンを押したりして購入の意思表示をし、駆けつけた給仕係に希望する品を注文して給仕係から追って注文品を受け取る方法である。
【0003】
後者の給仕係を呼んで物品を購入する場合の代金支払いは、通常パチンコ玉、コイン、トークンなど(本明細書では、これらをまとめて「遊技媒体」ともいう。)を利用した交換により行われる。例えばパチンコ、パチスロの場合、給仕係はパチンコの玉数をカウントするための計量トレイを持参し、注文品に相当する数量のパチンコ玉を前記計量トレイに入れて数量をカウントし、必要数量を受け取る。通常はこの必要数量を受け取った後にベースカウンタまで引き返し、注文品を用意して改めて遊技者まで届けている。
【0004】
しかしながら、これらの従来システムにはそれぞれ問題があった。まず、遊技者自身がカウンタ又は販売機まで移動して購入する場合、遊技者はその間に遊技を中断しなければならない。これは遊技者に対してはせっかくの遊技を一旦中止しなければならないという気分的な煩わしさを与え、遊技施設側には設備稼働率の低下を及ぼす。さらに、多数の遊技者がこのような行動を取った場合には遊技機間の狭い通路を混雑させる原因にもつながる。
【0005】
給仕係がサービスする場合、計量トレイを持参して玉数を把握する必要があり、この取り扱いの難しさから行動の制約を与える。すなわち、通常は上述のように注文受けと注文品の受け渡しとのため、飲料物等を提供するベースカウンタと遊技者との間を2往復することになり、これが通路を混雑させる原因となっている。また、遊技に集中している遊技者を2度にわたって訪れる結果となり、集中力を途切れさせることにもなった。加えて、不安定な計量トレイを用いて玉数のカウントを行うことから、玉数の誤計算や場合によっては不正の発生にもつながり易かった。一般に計量トレイが枠つきの平坦な形状をしたものであるため、不安定な扱いとなり、受け取った玉が落下する虞も大きかった。
【0006】
従来技術に介在するより大きな問題は、遊技施設業者側における副次的な売上げ増の機会ロスを生んでいることである。すなわち、遊技者はたとえ咽が渇いたとしても、購入の煩わしさ、遊技の中断などを嫌うあまり、飲料をあきらめる傾向を生じさせていた。また、遊技者自身も遊技に熱中している間は、実際には咽の渇きがあっても、それに気付いていない場合もあり得た。遊技施設業者側も、このような副次的な売上げ増の機会にこれまで気付いていなかったか、あるいはそれを実施するためのツールもなかったことから、飲料物等の販売促進には比較的消極的であった。
【0007】
従来技術にあるこれら問題点を解消する1つの対応として、飲料物等の注文品を自動配給する装置が提案されている(例えば、「特許文献1」参照。)。この装置は、遊技者が遊技機に備えられたボタンを押すと、自動払い出し機から払い出された注文品を、搬送ユニットが遊技機上方に設けられた搬送レールを移動して遊技者のもとまで自動的に搬送し、遊技者に取り出し可能なように提供するものである。他の対応として、パチンコ玉などの遊技媒体の数量を容易かつ正確にカウント可能な測定部と、予め注文が予測される飲料物等を搬送するため収納する商品保持部とを備えたポータブル嗜好品販売装置が提案されている(例えば、「特許文献2」参照。)。
【0008】
以上の販売装置とは別件となるが、遊技場ではプリペイドカードが広く使用されるようになっている。例えばパチンコ遊技をする場合、遊技者はまずプリペイドカードを購入し、このプリペイドカードを利用して遊技場内の各所に設けられたカードリーダー・ライターにセットすることで、必要数のパチンコ玉を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平08−276067号公報
【特許文献2】特開2008−29802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来技術で開示された嗜好品販売に関する対応策には未だ改善の余地があった。まず、特許文献1に開示された方法では、遊技機の配列(島)に沿って搬送レールを敷設し、また自動搬送ユニットを制御するなど、大掛かりな設備投資が必要となり、コスト的な面で制約となった。また、特許文献2に開示の装置では、重量物であり、また取扱いが煩雑なパチンコ玉を始めとする遊技媒体を介在させる必要があった。このため、給仕者は重量物である回収された遊技媒体をある程度の時間携行しつつ移動する必要があり、疲労の原因となり得た。また、一定量を回収した後にこれを所定の玉収納装置に移し替えるなどの手間を必要とした。
【0011】
以上より、本発明は遊技施設における飲料物等購入時の煩わしさを解消して売上げ増に貢献することができ、サービス提供を行う給仕係にとっても取り扱いが容易なポータブル嗜好品販売装置を提供することを目的としている。同時に、スポーツ等の競技場や劇場など他の集会施設内において、これまで嗜好品の購入に現金支払いが原則とされていた煩わしさを解消することができるポータブル嗜好品販売装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、パチンコ遊技施設内で利用されているプリペイドカード、「Suica」(登録商標)などの汎用性のあるプリペイドカード、あるいは市場に広く出回っているクレジットカード、ICカード等のカード類に課金することを可能とする機能を備えたポータブル嗜好品販売装置を提供することによって上記目的を達成するもので、具体的には以下の内容を含む。
【0013】
すなわち、本発明にかかる1つの態様は、遊技施設、競技施設、劇場を含む集会施設内を巡って嗜好品を移動販売するために使用されるポータブル嗜好品販売装置であって、販売される商品の金額をカード類に課金する課金部と、販売される商品の金額を表示する表示部と、販売される商品を保持する商品保持部と、販売装置全体の動作を制御する制御部とから構成され、前記制御部が、注文商品の金額を表示部に表示し、表示部に表示された金額を課金部にセットされたカード類に課金し、該販売実績を記憶するよう構成されていることを特徴とするポータブル嗜好品販売装置に関する。
【0014】
前記課金部は、少なくとも1種類のカードの読み取り機能、もしくは読み・書き機能を備えることができる。前記表示部は承認機能を備えることができ、前記制御部は、注文者による承認動作を得た後に課金するよう構成することができる。
【0015】
前記商品保持部は、前記ポータブル嗜好品販売装置からこれのみを単独で着脱可能にすることができる。このように構成することにより、嗜好品の補充を商品保持部ごと置き換えることで簡便に行うことができるようになる。
【0016】
前記ポータブル嗜好品販売装置は搬送用ケースをさらに備えることができ、前記搬送用ケースを除くポータブル嗜好品販売装置本体部を、前記搬送用ケースから着脱可能に構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施により、遊技施設における遊技者に対しては遊技をしばしば中断することなく飲料物等の嗜好品を楽しむ機会を与え、気楽に嗜好品の注文が可能になるという効果をもたらす。遊技施設業者に対しては売上げ増の機会を提供し、さらに遊技者が遊技に専念できる時間を増大させて稼働率の向上につなげることができる。加えて、遊技者にリフレッシュ感が提供されることから遊技者にリラックスした雰囲気でより長時間遊技を楽しむ機会を提供し、結果として客足をつなぎとめ、リピート来訪の意欲を増大させるなどの諸効果を生む。
【0018】
さらに、本発明にかかるポータブル嗜好品販売装置の制御部の機能を充実させることにより、嗜好品販売量の常時把握、販売傾向分析、給仕係ごとの販売達成度、誤計算や不正の排除など、遊技施設における総合的な管理体制の改善につなげることも可能である。
【0019】
また競技場、劇場、集会場などで使用される場合には、これまでの現金取引に制約されることがなくなり、現金取引に関わる各種トラブルが回避されるほか、利用者が支払う際に、支払方法により柔軟性を与えるという効果を生むものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる実施の形態のポータブル嗜好品販売装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示すポータブル嗜好品販売装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる、集会施設内で使用するためのポータブル嗜好品販売装置の実施の形態につき、図面を参照して説明する。なお、説明容易化のため、以下ではパチンコ等の遊技場内で嗜好品を販売する際に使用されるポータブル嗜好品販売装置を対象として説明するが、競技施設等の他の集会施設内であっても同様に適用が可能である。また、ここでいう「嗜好品」には、飲料物、菓子、タバコ等のほか、子供のおもちゃやカード、ストラップなどのグッズを含めて凡そポータブル嗜好品販売装置に載せて移動販売可能な商品を全て含めるものとする。さらに、「ポータブル嗜好品販売装置」は、基本的に給仕係によって例えば紐を介して首から吊り下げるなどにより遊技施設内を携行搬送されることが意図されたものであるが、後述するようにこれが定置式として利用されることを排除するものではない。
【0022】
図1は本実施の形態にかかるポータブル嗜好品販売装置(以下、単に「販売装置」という。)1の全体斜視図、図2は同じ販売装置1を上から見た平面図を示している。両図において、販売装置1は、外枠5の中に含まれる課金部10と、表示部20と、商品保持部30と、制御部50とから構成されている。図2には、これら各要素の境界を破線で示している。パチンコ遊技場などの遊技施設内で、遊技装置の列(「島」と呼ばれる)の間に設けられる限られた幅の通路を移動して販売を行う点を考慮し、両図からも明らかなように、当該販売装置1はコンパクトなサイズの中で多くの機能を巧みに配置したレイアウト構成としている。但し、本発明の構成が図示のものに限定されるものではない。
【0023】
両図において、課金部10には、図示の例では2つのカードリーダー・ライター11、12が設けられている。一方のカードリーダー・ライター11は、例えば「Suica」等の汎用性のあるプリペイドカードの読み書き装置としている。利用者が所定のカードをカードリーダー・ライター11上に置くことで、カードリーダー・ライター11はカード内に埋め込まれたチップの情報を読み取り、後述する手順により課金することが可能である。他方のカードリーダー・ライター12は、例えば当該遊技施設内で使用されるプリペイドカードの読み書き装置であり、利用者は一端(図2の上方)に開口する図示しないスリット内にカードを差し込むことでカードリーダー・ライター12は同様にして差し込まれたカードの読み書きを行う。
【0024】
図1、2に示すカードリーダー・ライター11、12の組合せは単なる例示であり、このいずれか一方のみを設けること、あるいはこれ以外にも、例えばクレジットカードを読み取るためのカードリーダーなどを含め、任意の形式の読み取り機能又は読み・書き機能の選択、組合せを設けることが可能である。プリペイドカード、クレジットカード、ICカードなど、チップや磁気処理によりチャージが可能となるこれら全てのカードを含めて、本明細書では「カード類」と総称するものとする。課金部10における読み取り機能、もしくは読み・書き機能は、これらカード類の読み取り、もしくは読み・書きが可能なものであるものとする。
【0025】
次に、表示部20は、注文された商品に応じた金額を表示する機能を有する。視認容易化のため表示は電光表示とすることが好ましいが、液晶表示などであってもよい。表示部20は、対向している遊技者と給仕係の双方向から視認できるよう、図示のように反対に向いた2つの表示部とすることが好ましい。表示部20の脇には、承認ボタン21が設けられ、依頼者が表示部20に表示された金額を確認して承認ボタン21を押すことによって課金が行われる。承認ボタン21の代わりに表示部20をタッチパネルとして、表示部20の表面に触れることで承認機能を果たすようにしてもよい。また、表示部20では、商品の金額を表示して承認を得た後に、当該金額を差し引いた後のプリペイドカードの残金を表示するよう構成することもできる。
【0026】
次に、商品保持部30は、図示の例では飲料物保持部31と、タバコ保持部32とに分かれている。飲料物保持部31は2つの円形開口で構成され、この中にジュース、コーヒーなどの飲料物カップが搭載可能である。この数は任意であり、スペースが許せば増加することもできる。オプションとして、販売装置1の外枠5の外部に図2の破線で示すような追加商品保持部33を設けて搭載数を増加してもよい。必要に応じてタバコ保持部32を飲料保持部31に改めて利用することもでき、これらの組み合わせは任意である。また、飲料物カップの脇にミルク、砂糖、マドラーなどを収納する溝部34などが設けられる。なお、飲料物の扱いにおいては、給仕係が別途飲料物の入った容器を携行し、注文を受けた際にこれをカップに注ぐようにすることも可能である。
【0027】
タバコ保持部32は、図示の例では6個のタバコを収納することが可能なスペースとしているが、必要に応じ、2段にして収納量を増加させることもできる。なお、名称は「タバコ保持部」としているが、タバコに限らず、キャラメル、菓子袋、グッズなどの他の嗜好品を収納できるようにしてもよい。飲料物保持部31とタバコ保持部32とからなる図示の商品保持部30の商品収納パターンは単なる一例であって、遊技者のニーズ、注文傾向に合わせて任意の組み合わせとすることができる。
【0028】
次に、制御部50は、販売装置1を利用した販売活動全体を制御、管理できるよう構成されている。図2の平面図において、表面には各種操作ボタン51〜55、日時表示56、プリンタ57が位置し、図面に垂直方向となる外枠5の背後部分にある収納スペース40(図1に表示)内部には、制御に必要な回路基板と動力源とが配置されている。制御部50の制御動作は、一例として以下のようである。まず、操作ボタンの内、ジュースボタン51、コーヒーボタン52、タバコボタン53は、これら商品の注文があった際に給仕係によって押し込まれる。このボタンの数は、販売する商品に応じてさらに増やしてもよい。制御部50では、この押し込まれたボタンの商品に応じ、金額を表示部20に表示する。注文者が承認ボタン21(もしくは上述したタッチパネル)に触れて承認することにより、表示ランプ58に緑色が点灯し、これが販売OKのシグナルとなって給仕係は注文された商品を遊技者に引き渡す。万一、プリペイドカードの残金が商品に応じた金額に満たない場合、制御部50は表示ランプ58に赤色を点滅させて給仕係に販売不可のシグナルを発するようにしてもよい。課金部10がクレジットカードを読み込むカードリーダーにより構成されている場合には、承認された金額を付した売上伝票がプリンタ57から打ち出され、注文者のサインを得て商品の引き換えが可能となる。
【0029】
次に制御部50は、売買の成立により販売された商品、売上金額、販売時刻を記憶装置に記憶する。加えて、既に販売されたものと合わせた累計を演算して同じく記憶装置に記憶する。必要であれば、別途用意される入力装置(後述するテンキー65など)を使用して給仕係の個人コードを入力しておき、上記販売結果と個人コードとをリンクさせて記憶することも可能である。さらに必要であれば、販売装置1に発信機(図示せず)を設け、販売実績を逐一ベースカウンタの方へ無線で情報提供することもできる。
【0030】
図2に示す例では、プリンタボタン54を押し込むことによって任意のタイミングで販売実績を逐一プリントアウトすることが可能である。また、トータルボタン55を押し込めば、これまでの累計金額のプリントアウトが可能である。このプリンタ57は、循環する管理者が、給仕係ごとの販売状況を把握し、管理する際などに利用可能である。プリンタ用紙を補充するため、制御部50の全体又は一部を開閉可能に構成することができる。また、プリンタ用紙のほかにも商品の補充用として、収納スペース40を活用することができる。
【0031】
図1、図2において、制御部50の右側半分は多目的スペース59として利用するよう構成されている。図1に示す例では、このスペースを利用してメモ用紙のバインダを取り付け、また伝票類のクリップ留めが可能となるよう構成されている。これにより、特に遊技者の注文品が品切れである場合などに給仕係がメモするのに有効である。図2に示す例では、このスペースを利用してテンキー入力部65を配置している。テンキー入力部65は、例えば注文した遊技者の遊技台番号、給仕係の個人コード、商品識別コード、商品価格、その他必要なデータを制御部50に入力する際などに利用可能である。
【0032】
また、制御部50には呼出しランプ66が設けられている。無線を利用して管理者が遊技施設内を移動中の給仕係を呼び出したい場合、あるいはどこかの遊技台で遊技者が商品の注文をしたい意思表示をした場合などにおいて、この呼出しランプ66があれば便利である。特定の遊技台を知らせたい場合には、表示部20の内の給仕係に向けられた表示盤のその遊技台番号が表示できるようにすればよい。遊技者が直接給仕係を呼べるようにするには呼出し機構を別途遊技台に設け、これと販売装置1との間を無線で結ぶなどの対応をすることができる。
【0033】
以上に説明した各要素が外枠5によって囲われて販売装置1が形成されている。外枠5のコーナには貫通孔6が設けられ、この貫通孔6に搬送紐7(図1に表示)を通して固定し、給仕係によって首に吊り掛けられ、移動販売するために使用される。図1に示す搬送紐7は2箇所から延びるように描かれているが、この2つは一本の紐としてつながったものである。
【0034】
但し、本発明にかかる販売装置1は移動販売用の利用に限定されず、販売装置1をベースカウンタなどにおいて定置式販売装置として利用することもできる。この場合、商品の補充は容易となることから、商品保持部30を取り除いて使用することができる。商品保持部30のみをユニット式に着脱可能に構成することは、移動販売においても有用である。すなわち、搬送する商品が売り切れた際に、ベースカウンタで予め商品がフル補充された他の商品保持部30と取り替えることが可能となる。
【0035】
本実施の形態にかかる他の態様として、販売装置1の外枠5自身に搬送紐7などを取り付けて首掛け式とする代替として、搬送紐付きのケースを別途設け、当該ケースの中に販売装置1をすっぽり納めて利用することもできる。この場合、販売を一巡してベースカウンタに戻った給仕係は、これまで使用していた販売装置1全体をケースから取り外し、予め外部で段取りが完了している別の販売装置1を前記ケース内にそっくり入れ替えて使用することができる。この場合の利点は、販売装置1の取替えが容易となることのほか、各種色のケースを準備しておくことでケースの色を日替わりとしたり、あるいは給仕係のコスチュームなどに合わせて色を選択したりすることが可能となることなどである。さらには、遊技施設内で給仕係が接近したことを遊技者が見つけ易いよう、当該ケースの回りに電飾を施すなどの対応をすることもできる。
【0036】
さらには、一般にパチンコ遊技場などの遊技施設内では騒音が激しく、遊技者と給仕係との間で、玉数の確認などのコミュニケーションをとるのは困難が伴う場合が多い。本実施の形態にかかる表示部20を利用することにより、デジタル表示での確認が可能となって、このようなコミュニケーションの必要性もなくなり、遊技者、給仕係双方の負担を軽減できるという大きなメリットも有する。但し、必要に応じて本発明の販売装置にコミュニケーションを改善する手段を設けることも可能である。例えば、遊技者に対向する販売装置の前面などに指向性の高いマイクとスピーカを取り付け、給仕係が顔に取り付けたイヤホン及びスピーカのセットから延びる配線を販売装置に差し込んで販売装置を介して両者間のコミュニケーションの円滑化を図ることができる。
【0037】
このような本実施の形態に係る販売装置1を利用することのメリットとして、当該販売装置を使用して販売活動を行うことにより、遊技施設の売上げ増大につなげることができることが挙げられる。従来のように遊技機から離れて販売機まで移動することが不要となり、また、移動、あるいは注文と交換の煩わしさから、咽の渇きがあっても遊技継続の方を望んでいた遊技者にとっても購入意欲が高められることになる。さらには、咽の渇きがありながらもそれに気付かずに遊技に熱中していた遊技者が、給仕係の積極販売に応じて注文する機会が増えることも容易に想像できる。
【0038】
さらに、従来の遊技媒体を利用した商品の販売においては、給仕係と遊技者との間でのやり取りのみとなるため、遊技媒体のカウントを巡って両者の間でのトラブルが発生したり、あるいは給仕係の不正行為が起き易かったりする弊害があった。本実施の形態にかかる販売装置1の利用により、金額は表示部20に明瞭に表示することができ、また必要に応じて注文者の承認を求めるステップも追加することができ、かつ販売実績が記録されるため、これらのトラブルは容易に回避することができるようになる。
【0039】
なお、上述した実施の形態においては、課金部としてカードリーダー、カードリーダー・ライターを備える販売装置にのみ言及してきたが、これらの読み取り、書き取り機能とともに、特許文献2に開示されたような遊技媒体(パチンコ玉)を利用する集金機能を併せて使用することも勿論可能である。
【0040】
以上、本実施の形態に係るポータブル嗜好品販売装置について遊技施設内での使用を例にして説明してきたが、当該販売装置は遊技施設内に限定されることなく、スポーツなどの競技場、演芸場などの劇場、集会場など、多くの人が集まる施設(これらを「集会施設」と呼ぶものとする。)において、広く実施することができる。例えば野球場などにおける移動販売においては、これまで現金のみの取引となっていたが、本発明にかかるポータブル嗜好品販売装置の使用によって取引の柔軟性が高まり、利用者の便宜を提供することになるほか、現金を扱うことによるトラブルも回避できるものとなる。また、この際には嗜好品として例えば子供用のグッズなどを含めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、遊技施設、競技施設、劇場、集会場などの産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1.販売装置、 7.搬送紐、 10.課金部、 11、12.カードリーダー・ライター、 20.表示部、 21.承認ボタン、 30.商品保持部、 31.飲料物保持部、 32.タバコ保持部、 40.収納スペース、 50.制御部、 54.プリンタボタン、 57.プリンタ、 58.表示ランプ、 65.テンキー、 66.呼出しランプ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技施設、競技施設、劇場を含む集会施設内を巡って嗜好品を移動販売するために使用されるポータブル嗜好品販売装置において、
販売される商品の金額をカード類に課金する課金部と、
販売される商品の金額を表示する表示部と、
販売される商品を保持する商品保持部と、
販売装置全体の動作を制御する制御部とから構成され、
前記制御部が、注文商品の金額を表示部に表示し、表示部に表示された金額を課金部にセットされたカード類に課金し、該販売実績を記憶するよう構成されていることを特徴とするポータブル嗜好品販売装置。
【請求項2】
前記課金部が、少なくとも1種類のカードの読み取り機能、もしくは読み・書き機能を備える、請求項1に記載のポータブル嗜好品販売装置。
【請求項3】
前記表示部が承認機能を備え、前記制御部が、注文者による承認動作を得た後に課金するよう構成されている、請求項1に記載のポータブル嗜好品販売装置。
【請求項4】
前記商品保持部のみが単独で着脱可能であることを特徴とする、請求項1に記載のポータブル嗜好品販売装置。
【請求項5】
前記ポータブル嗜好品販売装置が搬送用ケースをさらに備え、前記搬送用ケースを除くポータブル嗜好品販売装置本体部が前記搬送用ケースから着脱可能に構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項4に記載のポータブル嗜好品販売装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−188965(P2011−188965A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56876(P2010−56876)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(593087721)
【Fターム(参考)】