説明

ポーラスコンクリート用混和剤及びポーラスコンクリート

【課題】少ない添加量であっても混和したコンクリートの透水性能及び強度が優れるポーラスコンクリート用混和剤を提供すること。また、透水性能及び強度が優れるポーラスコンクリートを提供すること。
【手段】特定のセメント分散剤((A)成分)、特定の塩((B)成分)、及び特定の水溶性高分子((C)成分)を併用する。(A)成分の不揮発成分に対する(B)成分の無水塩換算の質量比(B/A)が0.1〜10であると好適である。(A)成分の不揮発成分に対する(C)成分の質量比(C/A)が0.1〜10であると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーラスコンクリート用混和剤に関する。詳しくは、添加したコンクリートが透水性インターロッキングブロックとして充分な強度及び透水性が得られるポーラスコンクリート用混和剤に関する。また、本発明はポーラスコンクリートに関する。詳しくは、透水性インターロッキングブロックとして充分な強度及び透水性が得られるポーラスコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市化が進むに従って、アスファルト舗装、コンクリート舗装または各種建築物によって起こる地表面の遮水による弊害が顕著になってきた。地表を覆うこれらの構築物は、従来土の中に自然に浸透していた雨水の透過を妨げる結果、地下水の急激な減少、それによる地盤沈下、土中生物の生態の変化、樹木の順調な発育の阻害、路面上の排水不良または集中豪雨による河川の氾濫等を引き起こして、これらの現象は社会的に大きな問題となっており、その解決は急務となっている。このようなことから、透水性を有する舗装の出現が従来から強く望まれている。
【0003】
また、近年、道路をインターロッキングブロック等のブロックで舗装することが多くなりつつある。従来のインターロッキングブロックは透水性能はなかったが、最近透水性能を有するインターロッキングブロックが開発されている。このインターロッキングブロックは、一般のインターロッキングブロックと同様に、振動加圧成形によるゼロスランプコンクリートを用いた即時脱型により製造されるが、しかし空隙が大きいため、強度が不足していた。また、高強度化するため、単位水量を増やすと脱型後のブロックの塑性変形が生じ、寸法精度が得られない問題もあった。
【0004】
これらの問題を解決するために、透水性コンクリート舗装や透水性能を有するインターロッキングブロックを製造する際には、特殊な混和材を混和した透水性コンクリート、即ちポーラスコンクリートを用いること場合が多い(特許文献1又は特許文献2参照。)。しかし、ポーラスコンクリート用の混和材は添加量が多いという問題がある。ポーラスコンクリート用の混和材の添加量を低減する場合には、細骨材を多く用いることが多い(例えば特許文献3参照。)。この場合、コンクリートが目詰まりを起こし、透水性能が低下する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−206399号公報
【特許文献2】特開2000−119074号公報
【特許文献3】特開2009−203145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題の解決、即ち、本発明は、少ない添加量であっても混和したコンクリートの透水性能及び強度が優れるポーラスコンクリート用混和剤を提供することを目的とする。また、本発明は、透水性能及び強度が優れるポーラスコンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、特定の成分を併用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)で表すポーラスコンクリート用混和剤、及び(4)〜(5)で表すポーラスコンクリートである。
(1)(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤、(B)硫酸リチウム及び(C)セルロースエーテルを含有することを特徴とするポーラスコンクリート用混和剤。
(2)(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分に対する(B)硫酸リチウムのLiSO換算の質量比(B/A)が0.1〜10である上記(1)のポーラスコンクリート用混和剤。
(3)(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分に対する(C)セルロースエーテルの質量比(C/A)が0.1〜10である上記(1)又は(2)のポーラスコンクリート用混和剤。
(4)セメント、上記(1)〜(3)何れかのポーラスコンクリート用混和剤、粗骨材及び水を含有するポーラスコンクリート。
(5)セルロースエーテルを0.2〜2kg/m及び硫酸リチウムを0.8〜9kg/m含有する上記(4)のポーラスコンクリート。
(6)振動加圧成形を行った上記(4)又は(5)のポーラスコンクリート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少ない添加量であっても混和したコンクリートの透水性能及び強度が優れるポーラスコンクリート用混和剤が得られる。また、本発明によれば、透水性能及び強度が優れるポーラスコンクリートが得られる。振動加圧成形を行った本発明のポーラスコンクリートは、振動加圧成形直後に脱型、即ち即時脱型を行っても、形状が維持でき且つ優れた強度が得られる。本発明によれば、JASS 7 M−101「インターロッキングブロックの品質規格」の透水性インターロッキングブロック(歩行系道路(乗用車))の透水性能及び強度を満足するので、透水性インターロッキングブロックに用いるポーラスコンクリートが得られる。本発明を用いた透水性インターロッキングブロックは、優れた透水性能及び優れた強度が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポーラスコンクリート用混和剤に用いる(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤は、ポリカルボン酸系水溶性高分子を含有しセメント粒子を水中に分散させる効果を有するものであればよく、例えば、ポリカルボン酸系減水剤,ポリカルボン酸系AE減水剤,ポリカルボン酸系高性能減水剤,ポリカルボン酸系高性能AE減水剤が挙げられるが、ポリカルボン酸系高性能減水剤又はポリカルボン酸系高性能AE減水剤が好ましい。これらは液体状のもの、粉末状のもの何れも使用可能である。用いるポリカルボン酸系セメント分散剤が粉末状のものであれば、水分が含まれないのでより添加量を少なくできることから好ましい。また、グラフト共重合体のポリカルボン酸系水溶性高分子を含有するセメント分散剤も、セメント分散剤の添加量を少なくできることから好ましい。更に、分子内に下式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系水溶性高分子を含有するものがより好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R、R及びRは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アミンを示し、Yは−CHO−又は−COO−を示し、nは20〜109の数を示す。)
式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリカルボン酸系水溶性高分子を含有するポリカルボン酸系セメント分散剤は、太平洋マテリアル社製ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名「コアフローNF−200L」)等の市販されているものを使用することができる。
【0012】
本発明に用いる(B)硫酸リチウムは、無水物でも水和物でもよく、他のイオンを含有していてもよい。また、水溶液でも粉末状でもよい。粉末状のものであれば、水分が含まれないのでより添加量を少なくできることから好ましい。より好ましくは、硫酸リチウムの無水物(LiSO)又は一水和物(LiSO・HO)である。本発明に硫酸リチウムを用いることで、コンクリート中のセメントペースト分又はモルタル分がチクソトロピックな性状となり、粗骨材により多く付着し垂れ難いため、ポーラスコンクリートの透水性及び強度が優れる。
【0013】
本発明に含まれる硫酸リチウムとポリカルボン酸系セメント分散剤との割合は、少ない添加量で本発明の効果を得る観点から、(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分(本発明において105℃における不揮発成分を意味する。)に対する(B)硫酸リチウムのLiSO換算の質量比(B/A)を0.1〜10とすることが好ましく、更に0.3〜8とすることが好ましく、特に0.5〜7とすることが好ましい。
【0014】
本発明に用いる(C)セルロースエーテルは、非イオン性のものが好ましく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)等のヒドロキシアルキルアルキルセルロースが挙げられ、これらを一種単独で用いても、二種以上を併用しても良い。特に、HEC及び/又はHPMCを用いることが好ましい。また、グリオキザール、タンニン酸、メチロールメラミン樹脂、尿素ホルマリン樹脂等の架橋剤を含むセルロースエーテルは、さらに用いたポーラスコンクリートの強度が優れるので好ましい。
【0015】
更に、B型粘度計を用いて測定した20℃における1質量%水溶液の粘度が、1,000〜50,000 mPa・sのセルロースエーテルが好ましく、2,000〜40,000 mPa・sのものが更に好ましい。1,000 mPa・s以下では多量に使用しなくては粘性不足し、硬化及び強度発現の遅延の影響が大き過ぎ、50,000 mPa・sを超えると配合量が少なくなり、コンクリート中で均一に分散し難いため、不均一に分散すると強度が不足し易い。
【0016】
本発明に含まれるセルロースエーテルとポリカルボン酸系セメント分散剤との割合は、少ない添加量で本発明の効果を得る観点から、(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分に対する(C)セルロースエーテルの質量比(C/A)を0.1〜10とすることが好ましく、更に0.3〜8とすることが好ましく、特に0.5〜7とすることが好ましい。
【0017】
本発明のポーラスコンクリート用混和剤には、上記(A)、(B)及び(C)以外の混和材料の一種又は二種以上を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。このような混和材料としては、例えばセメント用ポリマー、発泡剤、起泡剤、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、膨張材(剤)、急結剤(材)、急硬剤(材)、消泡剤、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石粉、シリカフューム、表面硬化剤、ナフタレン系セメント分散剤、メラミン系セメント分散剤、リグニン系セメント分散剤及びポリオール系セメント分散剤等が挙げられる。
【0018】
本発明のポーラスコンクリート用混和剤を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサ等の重力式ミキサ、ヘンシェル式ミキサ、リボンミキサ等のミキサにより、上記(A)、(B)、(C)及びその他の任意成分を混合することで製造することができる。このとき用いるミキサは、連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良い。各材料のミキサ内への投入順序は特に限定されず、一種ずつ投入してもよく、一部又は全部を同時に投入してもよい。また、袋やポリエチレン製容器等の容器に各材料を計り取り投入する方法により、本発明のポーラスコンクリート用混和剤を製造することもできる。
【0019】
本発明のポーラスコンクリートは、上記のポーラスコンクリート用混和剤、セメント、骨材及び水を含有するものである。
【0020】
本発明に用いるセメントは、水硬性セメントであればよく、例えば普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらのポルトランドセメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント、太平洋セメント社製「ジェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、アルミナセメント等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することができる。ワービリティを損ない難く可使時間が長く確保し易いことから、各種ポルトランドセメント、エコセメント及び各種混合セメントから選ばれる一種又は二種以上を使用することが好ましい。本発明においてコンクリート中のセメント含有量は、ポーラスコンクリートの使用用途により異なるが、170〜450kg/mが好ましく、200〜400 kg/mがより好ましい。170 kg/m未満では所要強度が得られ難い、450kg/m以上ではコンクリート中のセメントペースト分又はモルタル分の粘性が増加し目詰まりを起こす虞が高くなる。は、25〜60質量%とする。25質量%未満では材料分離を抑えながらグラウトとしての流動性を確保し難い。
【0021】
本発明に用いる粗骨材は、コンクリートに使用可能な粗骨材であれば良く、例えば川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、再生粗骨材等が好ましい例として挙げられる。粒径が40mm未満の粗骨材、即ち、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験方法」に従いふるい分け試験を行い、呼び寸法40mmのふるい(公称目開き37.5mmのふるい)を通過するものの質量百分率が95%未満であること、強度が得やすいことから好ましい。透水性及び強度がより高いコンクリートが得られることから、JIS A 1102に従いふるい分け試験を行ったときに、呼び寸法25mmのふるい(公称目開き26.5mmのふるい)を100質量%通過し、呼び寸法20mmのふるい(公称目開き19mmのふるい)を85〜100%通過し、呼び寸法5mmのふるい(公称目開き4.75mmのふるい)に85〜100質量%留まり且つ呼び寸法2.5mmのふるい(公称目開き2.36mmのふるい)に95質量%以上留まる骨材、即ち、粒径5〜20mmの粗骨材がより好ましい。
【0022】
本発明のポーラスコンクリートに含まれる(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤の量は、セメント及び固形の混和材料を合わせたものが結合材として、ポーラスコンクリート中の結合材の量に対し、不揮発成分換算で0.3〜2質量%となる量が好ましく、0.5〜1.5質量%となる量が更に好ましい。0.3質量%となる量未満ではコンシステンシーが得られ難く成形が困難で、2質量%となる量を超えると硬化遅延が起き易い。
【0023】
また、本発明のポーラスコンクリートに含まれる(B)硫酸リチウムの量は、0.8〜9kg/mが好ましく、2〜6kg/mがより好ましい。0.8kg/m未満では充分な強度に達するまでに時間が掛かり、9kg/mを超えるとポリカルボン酸系セメント分散剤が多量に必要となることから経済的に得策でない。
【0024】
また、本発明のポーラスコンクリートに含まれる(C)セルロースエーテルの量は、0.2〜2kg/mが好ましく、0.35〜1kg/mがより好ましい。0.2kg/m未満ではコンクリート中で均一に分散し難い低い高粘性のものを使用することになることから、不均一に分散すると強度が不足し易く、2kg/mを超えると硬化遅延が起き易い。
【0025】
本発明のポーラスコンクリートには、セメント、上記のポーラスコンクリート用混和剤及び粗骨材以外の混和材料及び細骨材の一種又は二種以上を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。この混和材料としては、例えばセメント用ポリマー、発泡剤、起泡剤、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、膨張材(剤)、急結剤(材)、硫酸リチウム以外の硬化促進剤、消泡剤、石膏、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石粉、シリカフューム、表面硬化剤等が挙げられる。また、細骨材としては、例えば川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、スラグ細骨材、珪砂等が挙げられる。
【0026】
本発明のポーラスコンクリートに、細骨材を用いる場合は、用いる骨材の全質量中に占める細骨材の割合が、5質量%未満が好ましく、より好ましくは2質量%以下、細骨材を含まないものが最も好ましい。5質量%未満では、コンクリート空隙が不足し易く、使用中に目詰りを起こし易い。また、細骨材用いる場合は、粒径が2.5mm以上、即ち、呼び寸法2.5mmのふるい(公称目開き2.65mmのふるい)に85〜100質量%留まり且つ呼び寸法1.2mmのふるい(公称目開き1.18mmのふるい)に95質量%以上留まる細骨材が、コンクリート空隙が充分あり使用中に目詰りを起こし難いことから好ましい。
【0027】
本発明のポーラスコンクリートに含有する水の量は、セメント及び固形の混和材料を合わせたものが結合材として、結合材100質量部に対して、15〜35質量部が好ましく、20〜30質量部がより好ましい。このときの水量は、ポーラスコンクリートの製造時に水性の液状混和材料(例えば水溶液の減水剤やゴムラテックス。)を添加する場合は、この添加する水性の液状混和材料に含まれる水の量も考慮する。15質量部未満ではコンシステンシーが得られ難く成形が困難で、35質量部を超えると強度が不足し易い。
【0028】
水と混練する方法は特に限定されず、例えば水に本発明のポーラスコンクリートの他の材料を全量加え混練する方法、水と液状混和材料を合わせた液に本発明のポーラスコンクリートの他の材料を混練しながら加え更に混練する方法、本発明のポーラスコンクリートの固形の材料を混合した後に水と液状混和材料を合わせた液を全量加え混練する方法、本発明のポーラスコンクリートの固形の材料を混合した後に水と液状混和材料を合わせた液を混練しながら加え更に混練する方法、本発明のポーラスコンクリート2以上に分けて混合し、これらの混合物を合わせて更に混練する方法等がある。また、混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、ミキサを用いることが量を多く混練できるので好ましい。用いることのできるミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ等が好ましいものとして挙げられる。
【0029】
混練した本発明のポーラスコンクリートは、型枠に投入した後に、加圧及び外部振動により加圧振動締め固めを行う、即ち振動加圧成形を行うと、即時脱型を行えることから好ましい。即時脱型を行えると、同一の型枠数による生産効率が大幅に向上できる。加圧は、油圧式加圧装置や油圧式加圧装置等を使用できる。また、外部振動は、型枠に取り付け可能な振動機やテーブルバイブレータ等を使用することができる。好ましい加圧振動締め固めの条件は、振動数が50〜90Hz、振動加速度が10〜210G、加圧力が0.05〜1.5kgf/cm、加圧時間が3〜10秒とする。
【0030】
型枠から脱型した本発明のポーラスコンクリートの養生方法は、特に限定されず、室温養生を行ってもよく、或いは蒸気養生又は噴霧養生を行っても良い。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
表1に示す配合割合で各水準40リットルのコンクリートを作製した。このときの使用材料を以下に示す。コンクリートの作製方法は、固形の材料(セメント、セルロースエーテル、硫酸リチウム及び粗骨材)を2軸強制練り(パグミル型)コンクリートミキサ(公称容量60リットル)に投入し、30秒間混合を行い、その後、水とポリカルボン酸系セメント分散剤を予め混合した水溶液をミキサ内に投入し3分間混練した。混練後のコンクリートを、所定の型枠に投入後、加圧振動締め固めを行い即時脱型することで、横100mm×縦200mm×高さ80mmのコンクリート製ブロックを作製した。加圧振動締め固めの条件は、振動数が75Hz、振動加速度が20G、加圧力が0.5kgf/cm、加圧時間が7秒とした。コンクリートの作製は、何れも20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で行った。
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
粗骨材A:茨城県桜川市産砕石2005(5号砕石、粒径5〜20mm)
粗骨材B:茨城県桜川市産砕石1305(6号砕石、粒径5〜13mm)
セルロースエーテル:ヒドロキシプロピルセルロース(1質量%水溶液のB型回転粘度計による粘度が4,000 mPa・s)
ポリカンルボン酸系セメント分散剤:ポリカンルボン酸系高性能減水剤(太平洋マテリアル社製、商品名「コアフローNF−200L」、水溶液)
ナフタレン系セメント分散剤:ナフタレン系高性能減水剤(花王社製、商品名「マイティ150」、水溶液)
硫酸リチウム:硫酸リチウム一水和物(関東化学社製 一級試薬)
硫酸ナトウム:硫酸ナトウム(無水和物)(関東化学社製 一級試薬)
水:佐倉市上水
【0032】
【表1】

【0033】
作製したコンクリートの品質試験として、以下に示す通り、空隙率、材齢1日及び7日の曲げ強度、並びに材齢7日の透水係数を求めた。試験結果を、即時脱型時の状態の評価と合わせて表2に示した。
<品質試験方法>
・空隙率
コンクリートブロック作製後、コンクリートブロックの質量、長さ、幅、高さを測定し、コンクリート配合から計算される単位容積質量を用いて、空隙率を算出した。
・曲げ強度試験
JASS7 M−101「インターロッキングブロックの品質規格」に従い、各材齢の曲げ強度を測定した。このとき供試体は、脱型後20±3℃、湿度80%以上の恒温室内で試験直前まで養生した。
・透水係数
JASS7 M−101「インターロッキングブロックの品質規格」に従い、材齢7日における透水係数を求めた。
<即時脱型時の状態の評価>
良好:即時脱型時において、コンクリートの形状を維持できたものを良好とした。
不良:即時脱型時において、コンクリートの形状を維持できなかったものを不良とした。
【0034】
【表2】

【0035】
本発明の実施例に当たるコンクリートは、何れも曲げ強度が材齢1日で1.5〜2N/mm程度、材齢7日で3N/mm以上、且つ透水係数が0.2cm/s以上、空隙率が20%以上且つ即時脱型後の状態が良好であった。一方、比較例に当るNo.5のコンクリート(ナフタレン系セメント分散剤を用いたもの)、No.6のコンクリート(硫酸リチウムを含有していないもの)、No.8のコンクリート(硫酸ナトリウムを使用したもの)は即時脱型時の状態が不良であり、曲げ強度が低いものであった。また比較例に当るNo.7のコンクリート(セルロースエーテルを含有していないもの)は即時脱型の状態は良好で、曲げ強度は高いものであったが、本発明の実施例に当たるコンクリート(No.1〜No.4)に比べて、透水係数は小さいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、曲げ強度が材齢1日で1.5〜2N/mm程度、材齢7日で3N/mm以上、且つ透水係数が0.2cm/s以上のポーラスコンクリートが得られるので、透水性インターロッキングブロックに好適に用いることができる。また、本発明によれば、優れた透水性で軽量でありながら、強度が充分なポーラスコンクリートが得られることから、透水性舗装に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤、(B)硫酸リチウム及び(C)セルロースエーテルを含有することを特徴とするポーラスコンクリート用混和剤。
【請求項2】
(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分に対する(B)硫酸リチウムのLiSO換算の質量比(B/A)が0.1〜10である請求項1に記載のポーラスコンクリート用混和剤。
【請求項3】
(A)ポリカルボン酸系セメント分散剤中の不揮発成分に対する(C)セルロースエーテルの質量比(C/A)が0.1〜10である請求項1又は請求項2に記載のポーラスコンクリート用混和剤。
【請求項4】
セメント、請求項1〜請求項3の何れかに記載のポーラスコンクリート用混和剤、粗骨材及び水を含有するポーラスコンクリート。
【請求項5】
セルロースエーテルを0.2〜2kg/m及び硫酸リチウムを0.8〜9kg/m含有する請求項4に記載のポーラスコンクリート。
【請求項6】
振動加圧成形を行った請求項4又は請求項5に記載のポーラスコンクリート。

【公開番号】特開2011−136864(P2011−136864A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297913(P2009−297913)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】