説明

ポーラスコンクリート

【課題】エフロレッセンス(白華)を原因とする色むらを安価に抑制できるポーラスコンクリートを提供することを課題としている。
【解決手段】リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物の混合物を粒径10μm以下になるまで微粉砕処理により高活性化させた粉体を含むことを特徴とするポーラスコンクリートを提供することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白華(エフロレッセンス)に起因する色むらを低減させたポーラスコンクリートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント組成物中の細骨材の配合量を極端に減らして、あるいは細骨材を全く配合しないで得られた多孔質のセメント硬化体であるポーラスコンクリートは、透水性舗装、排水性舗装、低騒音舗装、生物親和性護岸等のコンクリート、透水ブロック等の透水性コンクリート二次製品等に用いられている。
【0003】
しかし、このようなポーラスコンクリートにおいては、セメントを主成分とする結合材に対する練混ぜ水の量が、通常、コンクリート1m3あたり80〜120kg程度と極めて少なく、コンクリート中のセメント成分の割合が相対的に多くなるため、エフロレッセンス(白華)といわれる現象が起きる場合がある。
この白華はコンクリート表面の色むらを引き起こす原因となるため、白華が起きたコンクリートは、施工後あるいは供用開始後に、色むらが生じて問題となることがある。
色むらは、顔料等によって着色したカラーコンクリートにおいて特に目立つため、美観上、大きな問題となっている。
【0004】
このような白華による色むらを抑制する技術として、例えば、特許文献1に記載されているように、脂肪酸のアルカリ塩類であるステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の粉末をセメント組成物中に添加することが知られている。前記脂肪酸アルカリ塩類は、白華の原因となる陽イオンの水分への溶解を抑制するものである。
【0005】
さらに、白華による色むらを抑制するその他の技術としては、以下のようなものがある。
例えば、特許文献2に記載されているように、陽イオン交換能力を有する合成ゼオライトを硫酸水溶液でpH=5.0となるまで中和することによって得られる水素型ゼオライトの粉末をセメント組成物に混合することが知られている。
また、特許文献3に記載されているように、石炭灰(フライアッシュ)あるいは廃珪藻土等に代表されるシリカ及びアルミナが含まれる無機材料を原料とし、水酸化ナトリウム等の強アルカリを加えて水熱処理することによって得られる人工ゼオライトの粉末をセメント組成物中に混合することが知られている。
さらに、特許文献4に記載されているように、セメント組成物中に適量のゼオライトを混合することが知られている。
これらの技術は、ゼオライトをセメント組成物に添加することで、白華現象の析出の原因となる陽イオンをゼオライトで吸着するものである。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の脂肪酸アルカリ塩類は、一般的に水に対する溶解度が低いため、コンクリートやモルタル中での分散性に劣る。そのため十分な効果を得るためには添加量をかなり多くする必要があり、実用上十分な効果を得ることが難しい。
また、脂肪酸のアルカリ塩類は、一般に高価な材料であるため、材料コストを高騰させてしまうという問題もある。
さらに、脂肪酸アルカリ塩類を含む硬化体は、強度が低下するという大きな問題もある。
【0007】
また、特許文献2〜4に記載されているようなゼオライトを色むら抑制のために用いる場合には、陽イオン選択性あるいは陽イオン交換容量が高いセオライトを用いる必要があり、使用できるゼオライトが限定されて材料選択の汎用性がなく、結果的に材料コストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−60301号公報
【特許文献2】特開平4−114940号公報
【特許文献3】特開平8−208301号公報
【特許文献4】特開平7−232953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、白華による色むらを安価にかつ十分に抑制したポーラスコンクリートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポーラスコンクリートは、リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物の混合物を粒径10μm以下になるまで微粉砕処理することによって高活性化された粉体を含むことを特徴としている。
【0011】
本発明のポーラスコンクリートは、リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物の混合物を粒径10μm以下になるまで微粉砕処理することによって高活性化された粉体を配合することで、安価な鉱物を材料として用いてかつ十分に白華現象を抑制することができる。
【0012】
なお、本発明における微粉砕処理することによって高活性化する、とは、リチウム含有鉱物、またはリチウム含有鉱物とゼオライト含有鉱物との混合物を、微粒子になるように粉砕して、粉砕された各粒子表面の反応特性を変化させて、高活性を有するように処理することをいう。
【0013】
また、本発明でいう粒径10μm以下の混合物とは、例えば、アイシンナノテクノロジーズ社製、のKFSH−150型等の、超微粉精密分級機を用いて、分級点10μmにて分級操作を行ない、さらに、例えば、NIKKISO社製、Microtrac MT3300EX等の、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用することで、含有する粒子の95%以上が粒径10μm以下の粒度を有すると特定された粉体をいう。
【0014】
また、本発明における前記混合物は、前記リチウム含有鉱物に含まれるLi2Oと、前記ゼオライト含有鉱物中に含まれるAl23との質量比が4:5〜1:5になるように前記リチウム含有鉱物及び前記ゼオライト含有鉱物が混合されていることが好ましい。
【0015】
前記リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物中に含まれるLi2O及びAl23が前記比率の範囲になるように、前記リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物が混合されている混合物は、微粉砕処理することによって高活性化してポーラスコンクリートに配合することで、特に白華による色むらを低減したポーラスコンクリートが得られる。
【0016】
また、本発明における前記リチウム含有鉱物が、スポジュメン(Li2O・Al23・4SiO2)、及び/またはペタライト(Li2O・Al23・8SiO2)であることが好ましい。
【0017】
前記リチウム含有鉱物は、リシア(Li2O)及びシリカ(SiO2)の含有量の高いため、ゼオライト含有鉱物と混合した場合に、白華現象を抑制できると同時に、ポーラスコンクリートとして硬化させた場合の曲げ強度等の物理性状を向上させることができる。
【0018】
また、本発明における前記ゼオライト含有鉱物が、クリノプチロライト(斜プチロル沸石)及び/またはモルデナイト(モルデン沸石)を含有するゼオライト質凝灰岩ゼオライト質凝灰岩であることが好ましい。
【0019】
本発明においては、前記ゼオライト含有鉱物がクリノプチロライト(斜プチロル沸石)、及び/またはモルデナイト(モルデン沸石)を含有するゼオライト質凝灰岩である場合には、良質な原料が容易に調達でき、かつ微粉砕も容易であるため、安価に色むらを低減したポーラスコンクリートが得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安価にかつ確実に、ポーラスコンクリートの白華による色むらを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、多孔質のセメント硬化体であるポーラスコンクリートに関するものである。
【0022】
本実施形態のポーラスコンクリートは、リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物の混合物を粒径10μm以下になるまで微粉砕処理することによって高活性化された粉体を含む。
【0023】
前記混合物の材料として用いられるリチウム含有鉱物としては、スポジュメン(リシア輝石:Li2O・Al23・4SiO2)、ペタライト(葉長石:Li2O・Al23・8SiO2)、レピドライト(リシア雲母:LiF・HF・Al23・3SiO2)、ユークリプタイト(Li2O・Al23・2SiO2)、ビキタアイト(Li2O・Al23・4SiO2・H2O)、アンブリゴナイト(アンブリゴ石=2LiF・Al23・P25)、モンテブラサイト(2LiOH・Al23・P25)等が挙げられる。
【0024】
前記リチウム含有鉱物の中でも、スポジュメン及びペタライトは、リシア(Li2O)、シリカ(SiO2)の含有量が高いため特に好ましい。
なお、前記リチウム含有鉱物は、Li2O含有量が5質量%〜7質量%のものが好ましい。
【0025】
スポジュメンや、ペタライト等のリチウム含有鉱物をゼオライト含有鉱物と混合して、粒径10μm以下になるまで微粉砕処理することによって高活性化させた粉体は、ポーラスコンクリート用のセメント組成物に混合して、ポーラスコンクリートの硬化体を得た場合に、特に、色むらの低減効果や、硬化体の曲げ強度等の物理性状を向上させる効果がある。
【0026】
前記ゼオライト含有鉱物としては、ゼオライト(沸石:アルミノケイ酸塩)、クリノプチロライト(斜プチロル沸石)、モルデナイト(モルデン沸石)、または、クリノプチロライト及び/又はモルデナイトを含有するゼオライト質凝灰岩(含ゼオライト凝灰岩)等が挙げられる。
【0027】
これらのゼオライト含有鉱物の中でも、ゼオライト質凝灰岩は、ゼオライト及びシリカの含有率が高いため特に好ましい。
尚、前記ゼオライト含有鉱物のAl23含有量は、12質量%〜16質量%のものが、SiO2含有量が高いため好ましい。
【0028】
ゼオライトやシリカを多く含むゼオライト質凝灰岩は、前記リチウム含有鉱物と混合して微粉砕処理によって高活性化した粉体とした場合には、ポーラスコンクリート用のセメント組成物に混合して硬化体としてのポーラスコンクリートを得た場合に、色むらを低減させる効果や、ポーラスコンクリートの曲げ強度等の物理性状を向上させる効果がある。
【0029】
前記リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物は、日本国内外で産出される各種天然鉱物を使用することができる。
また、前記各鉱物は、単体で用いても良く、あるいは任意の組み合わせでかつ任意の混合割合で混合して用いても良い。
【0030】
前記混合物としては、前記リチウム含有鉱物に含まれるLi2Oと、前記ゼオライト含有鉱物中に含まれるAl23との質量比が4:5〜1:5となるように、各鉱物が混合されていることが好ましく、3:5〜2:5であることがさらに好ましい。
【0031】
前記質量比となるように各鉱物を混合した場合には、ポーラスコンクリートとした時の色むらを効果的に抑制できる。
【0032】
前記リチウム含有鉱物とゼオライト含有鉱物との混合物を微粉砕化して高活性化する処理としては、例えば、粉砕によるいわゆるメカノケミカル処理を行うことが挙げられる。
【0033】
粉砕によるメカノケミカル処理とは、粉砕することで機械的エネルギーを被粉砕物に与えて、被粉砕物の活性を高めるような処理をいう。
具体的には、遊星ミル、ビーズミル、ボールミル等の粉砕装置を用いて一定のエネルギーを与えながら粉砕することでメカノケミカル処理を行うことができる。
粉砕によってメカノケミカル処理された各鉱物粒子は、活性や反応性が高められた状態になる。
【0034】
前記各鉱物微粒子は、粉砕処理の際に、衝撃、せん断、ずり応力、摩擦等の機械的エネルギーが与えられて、前記機械的エネルギーの少なくとも一部が各鉱物微粒子内に蓄積され粒子の化学的または物理的な反応特性が変化することで、活性や反応性が高められた状態になる。
具体的には、微粉砕される各鉱物微粒子の結晶格子が歪む(結晶が非結晶に相転移する)ことによって、各粒子の反応活性が高まると考えられる。
【0035】
前記各鉱物微粒子に与えられる機械的エネルギーは、例えば、遊星ミルの場合、遊星ミル内のボールに作用する最大遠心加速度が150m/s2となるように運転した時、ミルのポット容量とミル運転時の消費電力の実測値から算出した値をエネルギー密度とすると、このエネルギー密度が、0.5〜1.0kW/h/リットル程度であることが好ましい。
【0036】
ここで遊星ミルのボールに作用する最大遠心加速度(メートル毎秒毎秒[m/s2])とは、
最大遠心加速度=ミルの公転角速度の2乗×{公転直径+ミルポット内径×(1+公転自転のギア比)}÷2
の式から算出される。
また、エネルギー密度(kW(キロワット)/h(時間)/リットル)とは、被粉砕物とボールとをミルポットに入れて、実際に粉砕した時の遊星ミルの負荷動力(電力)の実測値から、ミルポットに何も入れずに遊星ミルを運転した時の無負荷動力(電力)の実測値を引いた値を、遊星ミルのポット容積で除することで算出される。
【0037】
微粉砕されて活性や反応が高められた状態の各鉱物粒子の特性は、例えば、粉末X線回折法による結晶性鉱物の回折ピークの強度、半値幅、角度等の変化から確認することができる。
具体的には、微粉砕処理によって各鉱物の結晶格子が歪むため、活性や反応が高められた状態の各鉱物の回折ピークの強度は小さく、半値幅が大きくなる、すなわち回折ピークがブロード化する。
【0038】
前記リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物を、予め混合した混合物の状態で、前記微粉砕処理を施すことによって、高活性化された粉体を得ることができる。
両鉱物を共に微粉砕処理することで、相互に反応して、前記のような活性や反応性が高められた状態になるためである。
【0039】
前記微粉砕処理による高活性化の具体的な方法としては、前記リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物の混合物を、遊星ミル等の粉砕装置で1〜60分間、回転数100〜3000rpm程度で粉砕処理することなどが挙げられる。
遊星ミルを使用する場合には、直径3mm〜40mmのボールを8〜300個/容器容積(リットル)使用して粉砕することが好ましい。
前記条件において遊星ミル内のボールに作用する最大遠心加速度が150m/s2となるように、前記遊星ミルを運転した時、ミルのポット容量とミル運転時の消費電力の実測値から算出した値をエネルギー密度とすると、このエネルギー密度が、0.5〜1.0kW/h/リットル程度となる。
【0040】
前記粉砕装置の粉砕部材及びボール等の、粉砕物と接触する部材の材質は、鋼鉄、ステンレス鋼、タングステンカーバイド、安定化ジルコニア、アルミナ等を使用することが、微粉砕時の磨耗(損失)が少なく、かつ高活性化の効率を向上させる観点から好ましい。
【0041】
前記のようにして得られた活性化物をポーラスコンクリートに混合することによって、ポーラスコンクリート硬化体表面の白華等に起因する色むらが低減される。
前記活性化物をポーラスコンクリートとして用いた場合に、セメント硬化体の色むらが低減される原理の詳細は不明だが、おそらく下記のような理由によるものと考えられる。
前記微粉砕(メカノケミカル処理)による高活性化により、リチウム含有鉱物に含まれるリシアやシリカ、及びゼオライト含有鉱物に含まれるゼオライトやシリカの反応性が高まる。
この反応性が高まった成分を有する各鉱物の粒子に、セメント中のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、消石灰等の白華現象の原因となる水溶性物質が、イオン交換やポゾラン反応等によって物理的に固定(不溶化)されるため、あるいは反応によって硬化体が緻密化し、白華の原因となる塩類等の物質移動が起こり難くなるため、白華現象が抑制され、色むらが低減されると推定される。
【0042】
前記活性化物は、必要に応じてさらに分級装置等で分級してもよい。
上記活性化物の粒子を、分級装置で所定の粒径を設定して分級操作を行なうことで、所定粒径以下の粒子を得ることができる。
好ましい各粒子の粒子径としては、1μm以下、さらに好ましくは、0.5μm以下である。粒子径が前記範囲であれば、より高い反応性を有する粒子を得ることができる。
なお、得られた粒子の粒度分布及び粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(装置名:Microtrac MT3300EX、NIKKISO社製)を使用することで測定することができる。
【0043】
本実施形態のポーラスコンクリートは、前記のような微粉砕処理することによって高活性化された粉体を含むものである。
なお、本実施形態のポーラスコンクリートには、微粉砕処理することによって高活性化された粉体に加え、必要に応じてさらに、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ(石炭灰)、シリカフューム、非晶質シリカ質微粉末、膨張材等の一般的なセメント用混和材を添加してもよい。
【0044】
次に、前記ポーラスコンクリートについて説明する。
本実施形態のポーラスコンクリートは、セメントを含む結合材と、骨材とリチウム含有鉱物とゼオライト含有鉱物との混合物を粒径10μm以下になるまで微粉砕処理することによって高活性化された粉体が混合されている。
【0045】
ポーラスコンクリートは、細骨材含有量が少なく、かつセメント等の結合材に対する練混ぜ水の量がコンクリート1m3あたり80〜120kg程度と極めて少ない。
そのため、白華を原因とする色むらが発生しやすいが、本実施形態のポーラスコンクリートは、効果的に色むらの発生を抑制できる。
【0046】
前記ポーラスコンクリート用の結合材に用いるセメントとしては、例えば、普通、早強、超早強等の各種ポルトランドセメント、該ポルトランドセメントに高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ(石炭灰)、各種シリカ質微粉末、石灰石微粉末を混合してなる各種混合セメント、白色セメント、超速硬セメント、アルミナセメント等、一般的なセメントが挙げられる。
【0047】
前記結合材には前記セメントの他に、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ(石炭灰)、シリカフューム、非晶質シリカ質微粉末、膨張材等のような水和による硬化性状を示す材料を含んでいてもよい。
【0048】
前記ポーラスコンクリート用の骨材としては、細骨材及び/又は粗骨材を用いることができる。
【0049】
本実施形態のポーラスコンクリートの細骨材単位量は、0〜300kg/m3、さらには50〜200kg/m3の範囲であることが好ましい。
この範囲であれば、良好な性状を有するポーラスコンクリートが得られるため好ましい。
【0050】
本実施形態のポーラスコンクリートの粗骨材単位量は、1200〜1700kg/m3、さらには1300〜1600kg/m3の範囲であることが好ましい。
この範囲であれば、良好な性状を有するポーラスコンクリートが得られるため好ましい。
【0051】
本実施形態のリチウム含有鉱物とゼオライト含有鉱物との混合物を微粉砕処理することによって高活性化された粉体をポーラスコンクリートに混合する場合の混合量は、例えば、結合材100質量部に対して5質量部〜20質量部であることが好ましく、さらに、10質量部〜20質量部であることが好ましい。
高活性化された粉体の混合量が前記範囲であれば、ポーラスコンクリートのように水/結合材比率を低くする場合であっても、硬化体としたときの色むらを効果的に抑制できると同時に、ポーラスコンクリートの練混ぜ工程、及び、練上り性状に支障がなくかつ硬化体の曲げ強度等の物理特性も良好に維持できる。
【0052】
本実施形態の微粉末処理によって得られた粉体を結合材、骨材、混練水と混練して、硬化させることでポーラスコンクリート硬化体が得られる。ポーラスコンクリート硬化体を得るために用いる場合には、例えば、水/結合材比率が、0.20〜0.40になるように混練水を加えて混練することが好ましい。
【0053】
本実施形態のポーラスコンクリートは、硬化後には、白華による色むらが効果的に抑制できると同時に、硬化後の曲げ強度など機械的特性も良好に維持できる。
また、混和材の材料として安価で入手容易な各種天然鉱物等を用いることができるため、材料コストが安価である。
【実施例】
【0054】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
(材料)
まず、以下のようなリチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物をセメント用混和材の材料として準備した。
リチウム含有鉱物(オーストラリア産スポジュメン:リシア輝石、SiO2=75.4質量%、Al23=18.8質量%、Li2O=6.1質量%、Na2O=0.2質量%)を予備粉砕として鋼鉄製ジョークラッシャ及びブラウンミルを用いて粒径0.3mm以下に粉砕調整した。
ゼオライト含有鉱物(宮城県白石市産モルデナイト含有凝灰岩:SiO2=66.9質量%、Al23=15.3質量%、K2O=1.3質量%、Na2O=2.1質量%)を予備粉砕として鋼鉄製ジョークラッシャ及びブラウンミルを用いて粒径0.3mm以下に粉砕調整した。
【0056】
(粉砕装置)
下記粉砕装置を微粉砕処理に使用した。
遊星型ボールミル(フリッチェ社製、装置名:遊星型ボールミルP−5型)
遊星型ボールミル用粉砕容器:500ccポット(フリッチェ社製、材質:メノー)
遊星型ボールミル用粉砕媒体:φ30mmボール(フリッチェ社製、材質:メノー)
【0057】
(微粉砕処理)
前記予備粉砕したリチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物を、表1に示す混合比率で混合したもの60g、及び、リチウム含有鉱物またはゼオライト含有鉱物をそれぞれ単独のものを60gずつ準備し、前記粉砕容器に、30mmボール10個と共に入れ、遊星型ボールミルにセットして、それぞれ60分間連続粉砕(メカノケミカル処理)した。
【0058】
なお、上記微粉砕処理は、以下に述べる各種試験に必要な量を得るため、表1のNo.1及びNo.3〜5は各10バッチずつ、表1のNo.2は70バッチ、表1のNo.6及びNo.7は、各20バッチずつ、それぞれ粉砕処理を行った。
【0059】
【表1】

【0060】
(分級処理)
前記微粉砕処理を行った各粉体(試料No.1〜7)を、以下の分級装置を用いて分級し、さらに分級品の粒度を以下のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて特定した。
分級装置:超微粉精密分級機(アイシンナノテクノロジーズ社製、装置名:KFSH−150型)
レーザー回折式粒度分布測定装置(NIKKISO社製、装置名:Microtrac MT3300EX)
【0061】
分級方法は、各粉体をそれぞれ前記分級機に投入し、分級点10μmにて分級操作を行ない、粒径10μmの上下に分級された粉体をそれぞれ回収した。さらに、レーザー回折式粒度分布測定装置(NIKKISO社製、装置名:Microtrac MT3300EX)を使用して分級した粉体の粒度を測定(特定)した。その結果、分級点10μmで分級された粒径10μm上の粉体は、粒径10μm以下の粒子を1%未満しか含有しないことが特定された。一方、分級点10μmで分級された粒径10μm下の粉体は、99%以上の粒子が、粒径10μm以下であることが特定された。
回収した粉体を表2に示すようにそれぞれ色むら低減材A〜Iとした。
なお、混和材Iは、微粉砕処理を終えた試料No.6及びNo.7を質量比で1:1=リチウム含有鉱物中のLi2Oとゼオライト含有鉱物中のAl23の混合比率(質量比)が2:5になるように混合してから分級処理を行った。
【0062】
【表2】

【0063】
(セメント組成物)
表2に示す色むら低減材A〜Iを用いて、下記のポーラスコンクリート用のセメント組成物材料を準備し、表3に示す配合で練混ぜを行った。
【0064】
セメント:普通ポルドランドセメント(住友大阪セメント株式会社製、日本工業規格JIS R 5210「ポルトランドセメント」適合品、密度=3.15g/cm3、ブレーン比表面積=3300cm2/g)
細骨材:千葉県富津市産陸砂(表乾密度=2.56g/cm3、吸水率=2.2%)
粗骨材:栃木県佐野市産硬質砂岩砕石7号(表乾密度=2.64g/cm3、吸水率=1.1%、実績率=57%)
コンクリート着色材:セメント着色用べんがら(森下弁柄工業株式会社製、赤色顔料、主成分;酸化鉄=Fe23
減水剤:ポリカル系粉末減水剤(花王株式会社製、商品名:マイティ21P、メタクリル酸ナトリウム系)
水:上水道水
使用装置:コンクリートミキサ(大平洋機工株式会社製、二軸強制練りミキサ、装置名: SUPER DOUBLE MIXER SD−55、定格容量55リットル、200V電動機出力3.7kw)
【0065】
【表3】

【0066】
(供試体の作製)
表2の配合の色むら低減材A〜Iを用いて、表3の配合で水(混練水)加えて、水/結合材比(W/B)=35%、空隙率20%となるポーラスコンクリートを練り混ぜた。
なお、各配合においてフレッシュ状態のコンクリートのコンシステンシーが一定になるように減水剤の添加量で調整した。
【0067】
混練方法は、粗骨材、結合材(セメント及び色むら低減材)、コンクリート着色材、減水剤、細骨材の順で各材料をミキサに投入し、30秒間空練りを行った後、水を加えて、240秒間練混ぜを行った。
練上り後、直ちに、日本工業規格JIS A 1132「コンクリート強度試験用供試体の作り方」に準じて、内寸法10cm×10cm×40mの鋼鉄製型枠にポーラスコンクリートを締め固めて、ポーラスコンクリートの角柱供試体を3本ずつ作製した。
【0068】
(成形性の評価)
各供試体を作製する際の成形性は、内寸法φ100mm×高さ200mmのコンクリート円柱供試体用鋼製型枠と鋼製ランマを用いた独自の締め固め試験により評価した。
練上り直後のポーラスコンクリート1kgを鋼製型枠に投入し、ランマを40cmの高さから10回自由落下させて締め固めた後、即時脱型して円柱状に成形されたポーラスコンクリートの状態(目視による表面確認、円柱の強度)及び円柱の高さによって評価した。
【0069】
評価基準は、以下のように評価した。結果を表4に示す。
○=良好(円柱の高さが、設計空隙率のポーラスコンクリートの円柱高さに対して、100±5%の範囲内の場合)
△=やや劣る(円柱の高さが、設計空隙率のポーラスコンクリートの円柱高さに対して、100±5%の範囲を超える場合)
【0070】
(色むらの評価)
各供試体の白華による色むらの発生状態について評価した。
各供試体を、20℃恒温下で24時間封かん養生した後、材齢1日目に脱型し、縦500mm×幅400mm×深さ50mmのポリプロピレン製バット(平皿)に水平に並べ、温度20℃、相対湿度60%の恒温室内に静置した。
この際、バット側面と供試体側面の間及び各供試体間にそれぞれ20mm以上の隙間を空けた。
前記バット底面から40mmの高さまで上水道水を入れて供試体を水に浸けた状態とし、さらに材齢28日まで24時間間隔で供試体表面へ霧吹きで水を1本あたり50gずつ均一になるように塗布することによって、供試体表面を乾湿繰り返し状態として、白華による色むらの発生状況を目視観察した。
尚、評価基準は下記の4段階で評価した。結果を表4に示した。
◎=色むらが極めて少ない
○=色むらが少ない、
△=色むらがやや多い
×=色むらが極めて多い
【0071】
(曲げ強度の測定)
色むらの発生状態判定を行った後の各ポーラスコンクリート供試体を用いてJIS A 1106「コンクリートの曲げ強度試験方法」に準じて、材齢28日における曲げ強度を測定した。結果を表4に示した。
【0072】
【表4】

【0073】
表4より、試験例1〜8は、試験例9〜13に比べて、材齢28日において色むらは発生せず、曲げ強度も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム含有鉱物及びゼオライト含有鉱物の混合物を粒径10μm以下になるまで微粉砕処理することによって高活性化された粉体を含むことを特徴とするポーラスコンクリート。
【請求項2】
前記混合物は、前記リチウム含有鉱物に含まれるLi2Oと、前記ゼオライト含有鉱物中に含まれるAl23との質量比が4:5〜1:5になるように前記リチウム含有鉱物と前記ゼオライト含有鉱物とが混合されている請求項1に記載のポーラスコンクリート。
【請求項3】
前記リチウム含有鉱物が、スポジュメン(Li2O・Al23・4SiO2)、及び/またはペタライト(Li2O・Al23・8SiO2)である請求項1または請求項2に記載のポーラスコンクリート。
【請求項4】
前記ゼオライト含有鉱物が、ゼオライト質凝灰岩である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポーラスコンクリート。

【公開番号】特開2012−188316(P2012−188316A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53108(P2011−53108)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】