説明

ポーラスナノ材料ポリマーコンポジット

ポーラスナノ材料ポリマーコンポジットに関する。
本発明にかかるポーラスナノ材料ポリマーコンポジットは、ナノ材料のナノメートルオーダーの空孔に、超臨界二酸化炭素流体によりモノマーを含浸し、その場で重合することにより調製されたものであり、従って、ナノポア高分子貫入網目を形成したポリマーコンポジットであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーラスナノ材料ポリマーコンポジット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリマーと種々の無機材料とからなるハイブリッド材料が研究開発されてきた。しかしこれらの材料はベースとなるポリマーと無機材料を混合して製造するものであり、従って得られた材料は、ベースポリマーのマトリックス中に、無機材料が単に分散したものや海島構造などのマクロオーダー(又はセミミクロオーダー)で混合した構造を有するものであった。その材料の物性もベースポリマーの物性をごく僅か変化させだけのものであった。
【0003】
近年種々の応用分野の広がりに伴って、全く新しい物性を有する新規材料の出現が期待されているが、これら従来のハイブリッド材料はこれらの要求を満たすものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ポーラスな無機系ナノ材料と有機ポリマーを用いた全く新規なポリマー/ナノシリカハイブリッド材料であって、ナノ材料のナノポア構造に高分子が貫入し網目を形成した構造を有するポリマーコンポジットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以上の期待に鑑み、広範な技術分野に適当できる全く新しい機能を有する新規な構造を有するハイブリッド材料を開発すべく鋭意研究した結果、ナノポア高分子貫入網目を形成したポリマーコンポジットが製造可能であることを見出した。かかる知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明はポーラスな無機系ナノ材料と有機ポリマーを用いた全く新規なポリマー/ナノシリカハイブリッド材料であって、ナノ材料のナノポア構造に高分子が貫入し網目を形成した構造を有するポリマーコンポジットナノ材料である。
【0007】
また本発明は前記ポーラスな無機系ナノ材料がナノシリカであり、かつ前記ポリマーがポリメチルメタクリレート(PMMA)系である、透明性が十分高くかつ高い耐熱性と高い硬度を兼ね備えるハイブリッド材料である。
【0008】
また本発明はかかるハイブリッド材料を製造する方法に関するものであり、超臨界二酸化炭素流体中でナノメートルオーダーの空孔を有するナノ無機材料の空孔にモノマーを含浸させた後、その場で前記モノマーを重合させることを特徴とするものである。かかる製造方法により、種々の無機ナノ材料のナノポア構造に種々の高分子が貫入し網目を形成した構造を有する新規な構造を有するポリマーコンポジットナノ材料が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるポリマー/ナノシリカハイブリッド材料の製造方法は、ナノ材料のナノメートルオーダーの空孔に、超臨界二酸化炭素流体によりモノマーを含浸し、その場で重合することにより調製されたものであり、従って得られるハイブリッド材料は、無機ナノ材料のナノポア空孔に高分子が貫入して重合され網目を形成した構造を有する。
【0010】
それゆえに本発明のかかるハイブリッド材料はこれまで全く知られていなかった優れた性質(例えばポリマーがPMMAで、ナノシリカを使用した場合、透明性が高くかつ高い耐熱性・高硬度を奏する)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例1および3(1)で製造されたナノシリカ5wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線を示す。
【図2】図2は、実施例1で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例1および3(1)で製造されたナノシリカ5wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、DMA測定曲線を示す。
【図3】図3は、実施例1で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例2、3(2)及び実施例4で製造されたナノシリカ5wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線を示した。
【図4】図4は、実施例1で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例2、3(2)及び実施例4で製造されたナノシリカ5wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、DMA測定曲線を示した。
【図5】図5は、実施例1で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例2、3(2)及び実施例4で製造されたナノシリカ5wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、DMA測定曲線を示した。
【図6】図6は、実施例5で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例5および7(2)で製造されたナノシリカ50wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線を示した。
【図7】図7は、実施例5で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例5および7(2)で製造されたナノシリカ50wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、DMA測定曲線を示した。
【図8】図8は、実施例5で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例6、7(1)、8で製造されたナノシリカ10wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線を示した。
【図9】図9は、実施例5で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例6、7(1)、8で製造されたナノシリカ10wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、DMA測定曲線を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(ポーラスナノ材料ポリマーコンポジット)
本発明にかかるポーラスナノ材料ポリマーコンポジットは、重合したポリマー分子がナノ無機材料のナノメートルオーダーの空孔内部及び近傍で貫入して網目構造を形成していることを特徴とする。かかる構造(以下、「本ミクロ構造」とする。)は理論上は想像可能であっても実際従来の製造方法によっては全く得ることは不可能であり、全く知られていなかった構造である。この本ミクロ構造は、従来のポリマーとナノ材料との単なるブレンド物で得られるミクロ構造とは大きく異なるものである。このことは以下の実施例で明らかなように、同じポリマー成分(分子量及び分子量分布)及び含有量のナノシリカ材料との単なるブレンド物とは本質的に熱力学的挙動が相違することからも明らかである。
【0013】
ここで、本発明で使用可能な無機ポーラスナノ材料としては、ナノオーダーの空孔(ポア)を有するものであれば制限されない。このような材料は種々知られているが、ナノシリカ、ナノアルミナ、カーボンナノチューブ、フラーレンが挙げられる。マトリックスとして使用されるポリマーの種類との組み合わせ、要求される物性により適宜選択することができる。特にポリマーがPMMA系である場合ナノシリカの使用が好ましい。また含有される無機ポーラスナノ材料の含有量についても特に制限されない。マトリックスとして使用されるポリマーの種類との組み合わせ、要求される物性により適宜選択することができる。特にポリマーがPMMA系である場合、0〜90wt%(好ましくは5〜50wt%)含有することが可能である。
【0014】
ここで、本発明で使用可能なポリマーとしては、そのモノマーが、超臨界流体中で、上で説明した無機ポーラスナノ材料のナノオーダーの空孔(ポア)に含浸するものであれば特に制限はない。このようなモノマーは種々知られているが、メタクリレート系、ビニル系、アクリレート系が挙げられる。組み合わせて使用する無機ポーラスナノ材料、及び要求される物性により適宜選択することができる。特にポリマーがPMMA系である場合ナノシリカの使用が好ましい。複数のモノマーを適宜組み合わせて使用することも可能である。要求される物性により適宜選択することができる。特にポリマーがPMMA系である場合、0〜90wt%(好ましくは5〜50wt%)含有することが可能である。
【0015】
本発明のハイブリッド材料の物性値や構造については、通常公知の種々の測定方法(熱分析装置、力学的分析装置、電子顕微鏡等)により容易に評価することができる。また、これらの物性値に基づいて種々の加工法を採用して材料を成形加工することも可能である。
【0016】
(製造方法)
本発明にかかるポーラスナノ材料ポリマーコンポジットは、ポリマー分子がナノ材料のナノメートルオーダーの空孔内部及び近傍で貫入し網目を形成していることを特徴とする。かかるミクロ構造はいままでの製造方法によっては全く製造することは不可能であった。
【0017】
本発明にかかる製造方法は、適当な超臨界流体条件下で、まずナノ材料とモノマーを混合することによりモノマーをナノ材料のナノメートルオーダーの空孔内部に含浸させ、さらにこの超臨界条件下でそのまま該モノマーを重合させることにより、生成したポリマーがナノ材料のナノメートルオーダーの空孔内部に貫入し網目を形成することを可能とするものである。
【0018】
ここで本発明において使用する超臨界流体の種類、超臨界条件については特に制限されるものではなく、使用するナノ材料の特質、およびポリマー(モノマー)の特質、それらの組み合わせに基づいて適宜選択することが可能である。特に好ましくは超臨界流体として、二酸化炭素(scCO)、エタンが挙げられる。特に二酸化炭素が好ましい。超臨界条件の設定についても特に制限はなく、特定の流体についての資料が好ましく参照可能である。
【0019】
反応容器についても特に制限はなく、通常の高圧反応容器であれば使用可能である。必要量の二酸化炭素を導入し、かつ超臨界条件下でモノマーを導入し、適当な温度で適当な時間混合させることができる。これらの温度及び時間は使用するナノ材料の特質、およびポリマー(モノマー)の特質、それらの組み合わせに基づいて適宜選択することが可能である。
【0020】
含浸条件(圧力、温度、時間)についても特に制限はなく、選択した無機ナノ材料およびモノマーの組み合わせに基づいて適宜選択することができる。流体が二酸化炭素、ナノシリカ、メチルメタクリレート系の場合、含浸条件(圧力、温度、時間)は0.5〜20MPa、約80℃、約24時間が好ましい。
【0021】
さらに重合反応条件についても特に制限はなく、選択した超臨界流体中、及び超臨界条件下(温度、圧力)で使用可能な重合反応条件を適宜選択することができる。好ましくは適当な温度により開始可能なラジカル重合開始剤の存在下でラジカル重合させることである。流体が二酸化炭素、ナノシリカ、メチルメタクリレート系の場合、重合条件(温度、圧力、重合開始剤、反応時間)は80℃、7.5MPa、AIBN、24時間が好ましい。
【0022】
重合反応の後処理は流体を除いた後、生成したポリマーは濾過等で分離し、適当な溶媒でモノマー及び超臨界流体内で重合したポリマーを除き精製することができる。精製は例えばポリマーを溶解した溶液を不溶溶媒中に加えることで沈殿させることができる。
【0023】
以下実施例によりさらに詳細に説明する。
【0024】
(実施例1) 超臨界二酸化炭素(scCO)を用いたPMMA/ナノシリカ(5wt%)ハイブリッド、(PMMA/SiO(RX50) (scCO))の製造。
【0025】
ここでナノシリカとして、日本エアロジル(株)製のエアロジル市販品(疎水性AEROSIL (RX50)ヘキサメチルジシラザン処理、平均一次粒子径40nm)を用いた。
【0026】
超臨界反応セル(容量50ml)に、モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)3.0g、乾式ナノシリカ(RX50)を0.15g、およびラジカル開始剤α,α′-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.0492gを採取し、撹拌しながら40℃、CO4MPaで1時間含浸させた。反応セルの温度を80℃で所定圧力で24時間重合を行った。
反応後、得られた反応混合物をアセトン100mlに溶解し、ヘキサン300mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0027】
(実施例2) トルエン溶媒を用いたPMMA/ナノシリカ(5wt%)ハイブリッド、(PMMA/SiO(RX50) (Toluene))の製造。
【0028】
反応容器に、MMA3.0g、乾式ナノシリカを0.15g、AIBN0.0492gおよびトルエン10mlを採取し、窒素雰囲気下(常圧)で80℃、24時間反応した。
【0029】
反応後、反応混合物はヘキサン200mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0030】
(実施例3) トルエン溶媒を用いたPMMA/ナノシリカ(5wt%)ハイブリッド(PMMA/SiO)のブレンド、(PMMA/SiO(RX50)(Blend))の製造。
【0031】
(1)上記実施例1の実験操作(scCO中)で重合した数平均分分子量16.0×10のPMMA1.0g、及び乾式ナノシリカを0.05g採取し、溶媒トルエン3.3ml中、常温下、24時間攪拌した。
【0032】
反応後、反応混合物はヘキサン100mlに滴下し沈殿させた。生じた白色沈殿物はろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0033】
(2)実施例2の実験操作(トルエン溶媒中)で重合した数平均分子量5.57×10のPMMA1.0g、及び乾式ナノシリカを0.05g採取し、溶媒トルエン3.3ml中、常温下、24時間攪拌した。
【0034】
反応後、反応混合物はヘキサン100mlに滴下し沈殿させた。生じた白色沈殿物はろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0035】
(実施例4) scCO中に溶媒トルエンを加えた(ここで加えたトルエンは2.5ml、5ml、10ml)溶媒を利用したPMMA/ナノシリカ(5wt%)ハイブリッド(PMMA/SiO(RX50)(Toluene-scCO))の製造。
【0036】
超臨界反応セル(容量50ml)に、MMA3.0g、乾式ナノシリカを0.15g、トルエン10ml、及びAIBN0.0492gを採取し、撹拌しながら40℃、CO4MPaで1時間含浸後、80℃、所定圧力で24時間重合を行った。反応後、反応混合物をアセトン100mlに溶解し、ヘキサン300mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0037】
(結果1)
ここで表1及び図1、2には実施例1で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例1および3(1)で製造されたナノシリカ5wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線、及びDMA測定曲線を示した。
【0038】
【表1】

【0039】
これから、scCOの効果によりシリカ中にMMAが含浸重合し、PMMAが生成したことが分かる。
【0040】
表2、3及び図3、4、5には、実施例1で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例2、3(2)及び実施例4で製造されたナノシリカ5wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線、及びDMA測定曲線を示した。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
これから、Mn=5万程度のもので物性を比較すると、scCOでのハイブリッドのほうが、トルエン溶媒中でのハイブリッドに比べて物性が向上することから、scCOの効果によりシリカのメソポーラス内にMMAが含浸・重合しPMMAが生成したことが分かる。
【0044】
(実施例5) scCOを用いたPMMA/ナノシリカ(50wt%)ハイブリッド、(PMMA/SiO(RX50) (scCO))の製造。
【0045】
超臨界反応セル(容量50ml)に、モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)3.0g、乾式ナノシリカ(RX50)を1.5g、およびラジカル開始剤α,α′-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.0492gを採取し、撹拌しながら40℃、CO4MPaで1時間含浸後、80℃、所定圧力で24時間重合を行った。反応後、反応混合物をアセトン100mlに溶解し、ヘキサン300mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0046】
(実施例6) 溶媒トルエンを用いたPMMA/ナノシリカ(50wt%)ハイブリッド、
(PMMA/SiO(RX50) Toluene)の製造。
【0047】
反応容器に、MMA3.0g、乾式ナノシリカを1.5g、AIBN0.0492gおよびトルエン10mlを採取し、窒素雰囲気下(常圧)で80℃、24時間反応した。
【0048】
反応後、反応混合物はヘキサン200mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0049】
(実施例7) トルエン溶媒を用いたPMMA/ナノシリカ(50wt%)ハイブリッド(PMMA/SiO)のブレンド、(PMMA/SiO(RX50) Blend)の製造。
【0050】
(1)実施例2の実験操作(トルエン溶媒中)で重合した数平均分子量5.17×10のPMMA1.0g、及び乾式ナノシリカを0.5g採取し、溶媒トルエン3.3ml中、常温下、24時間攪拌した。
【0051】
反応後、反応混合物はヘキサン100mlに滴下し沈殿させた。生じた白色沈殿物はろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0052】
(2)実施例1の実験操作(scCO中)で重合した数平均分分子量15.8×10のPMMA1.0g、及び乾式ナノシリカを0.5g採取し、溶媒トルエン3.3ml中、常温下、24時間攪拌した。
【0053】
反応後、反応混合物はヘキサン100mlに滴下し沈殿させた。生じた白色沈殿物はろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0054】
(実施例8) scCO中に溶媒トルエンを加えた溶媒を利用したPMMA/ナノシリカ(50wt%)ハイブリッド、(PMMA/SiO(RX50) scCO-Toluene)の製造。
【0055】
超臨界反応セル(容量50ml)に、MMA3.0g、乾式ナノシリカを1.5g、トルエン10ml、及びAIBN0.0492gを採取し、撹拌しながら40℃、CO4MPaで1時間含浸後、80℃、scCO10MPaで24時間重合を行った。反応後、反応混合物をアセトン100mlに溶解し、ヘキサン300mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0056】
(結果2)
ここで表4及び図6、7には実施例5で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例5および7(2)で製造されたナノシリカ50wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線、及びDMA測定曲線を示した。
【0057】
【表4】

【0058】
これから、シリカ50wt%を添加すると物性は向上し、シリカ添加量が増加してもscCOの効果によりシリカのメソポーラス内にMMAが含浸純号しPMMAが生成したことが分かる。
【0059】
表5及び図8、9には、実施例5で用いた実験条件でナノシリカの存在なしで製造したPMMAと、実施例6、7(1)、8で製造されたナノシリカ10wt%含有のハイブリッドの分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)、収量(%)、ナノシリカ含有量(測定値と計算値wt%)、TG測定曲線、及びDMA測定曲線を示した。
【0060】
【表5】

【0061】
これから、シリカ50wt%を添加すると物性は向上し、Mn=5万程度のもので物性を比較すると、scCOでのハイブリッドのほうが、トルエン溶媒中でのハイブリッドに比べて物性が向上することから、scCOの効果によりシリカのメソポーラス内にMMAが含浸・重合しPMMAが生成したことが分かる。
【0062】
(実施例9) scCOを用いたPMMA/アルミナ(5wt%)ハイブリッド(PMMA/Al(33nm) (scCO))
超臨界反応セル(容量50ml)に、モノマーとしてメタクリル酸メチル(MMA)3.0g、アルミナを0.15g、およびラジカル開始剤α,α′-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.0492gを採取し、撹拌しながら40℃、CO4MPaで 1時間含浸後、80℃、所定圧力で24時間重合を行った。
【0063】
反応後、反応混合物をアセトン100mlに溶解し、ヘキサン300mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0064】
(実施例10) 溶媒トルエンを用いたPMMA/アルミナ(5wt%)ハイブリッド(PMMA/Al(33nm) (Toluene))
反応容器に、MMA3.0g、アルミナを0.15g、AIBN0.0492gおよびトルエン10mlを採取し、窒素雰囲気下(常圧)で80℃、24時間反応した。
【0065】
反応後、反応混合物はヘキサン200mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0066】
(実施例11) トルエンを用いたPMMA/アルミナ(5wt%)ハイブリッド(PMMA/Al)のブレンド(PMMA/Al(33nm) (Blend))
実施例9と同様にscCO中で重合した数平均分分子量16.0×10のPMMA1.0g、及び乾式ナノアルミナを0.05g採取し、溶媒トルエン3.3ml中、常温下、24時間攪拌した。
【0067】
反応後、反応混合物はヘキサン100mlに滴下し沈殿させた。生じた白色沈殿物はろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0068】
実施例11と同様にトルエン溶媒中で重合した数平均分子量5.57×10のPMMA1.0g、及び乾式アルミナを0.05g採取し、溶媒トルエン3.3ml中、常温下、24時間攪拌した。
【0069】
反応後、反応混合物はヘキサン100mlに滴下し沈殿させた。生じた白色沈殿物はろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0070】
(実施例12) scCO中に溶媒トルエンを加えた溶媒を利用したPMMA/アルミナ(5wt%)ハイブリッド(PMMA/Al(33nm)(Toluene-scCO))
超臨界反応セル(容量50ml)に、MMA3.0g、アルミナを0.15g、トルエン10ml、及びAIBN0.0492gを採取し、撹拌しながら40℃、CO4MPaで1時間含浸後、80℃、所定圧力で24時間重合を行った。
【0071】
反応後、反応混合物をアセトン100mlに溶解し、ヘキサン300mlに滴下し、生じた白色沈殿物をろ別回収し、恒量となるまで減圧乾燥(40℃)した。
【0072】
得られたPMMA/アルミナハイブリッドの結果を表6、7にまとめた。
【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0075】
上で説明した通り、当該発明にかかるポリマー/ナノシリカ(アルミナ)ハイブリッド材料は、ナノ材料のナノメートルオーダーの空孔に、超臨界二酸化炭素流体によりモノマーを含浸し、その場で重合することにより調製されたものであり、従って、ナノポア高分子貫入網目を形成したポリマーコンポジットである。
【0076】
それゆえにかかる材料はこれまで全く知られていなかった性質である、透明性が高くかつ高い耐熱性・高硬度を奏するものである。
【0077】
かかる新規な材料によりもたらされる効果は従来知られてきた材料の有する物性からは全く予想できない非常に優れた性質であり、従来のポリマーコンポジット(高分子材料一般)において強く希望されてきた未解決課題の多くを一掃するものである。
【0078】
種々の技術分野、例えば家電、電子機器、自動車、建築、光学機器、航空宇宙関連機器その他あらゆる分野の市場において、新規な物性を有する本発明にかかる材料は極めて大きな要求が認められその市場性は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノシリカのナノポアにポリマーが貫入して網目を形成したことを特徴とするポーラスナノ材料ポリマーコンポジット。
【請求項2】
前記ポリマーがポリメチルメタクリレート(PMMA)である請求項1に記載のポーラスナノ材料ポリマーコンポジット。
【請求項3】
超臨界二酸化炭素流体中でポーラスナノ材料のナノメートルオーダーの空孔にモノマーを含浸させ、さらに当該モノマーを重合させることを特徴とする、ポーラスナノ材料ポリマーコンポジットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/085302
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510739(P2006−510739)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003748
【国際出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】