説明

ポーラス耐火物の製造方法およびポーラス耐火物

【課題】耐食性が高く、通気性や耐メタル浸透性にも優れた、ポーラスプラグに用いるのに適したポーラス耐火物、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】
(a)粒子径0.5〜0.1mmの球状アルミナを40〜95重量%、(b)ジルコニア含有原料を3〜20重量%、(c)フリットを外掛けで0.5〜3重量%、(d)バインダーを外掛けで1〜10重量%、(e)焼成することにより焼失する平均粒子径10〜30μmの焼失原料を外掛けで1〜10重量%、の割合で配合し、1700℃以上で焼成する製造方法で、気孔を介して通気させることにより溶鋼にガスを吹き込むポーラスプラグを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、取鍋などにおいて溶鋼にガスを吹き込むために使用されるポーラスプラグなどの用途に適したポーラス耐火物の製造方法および該製造方法により製造されるポーラス耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼における精錬プロセスにおいて、転炉や電気炉などで精錬された溶鋼をさらに取鍋内で精錬(2次精錬)する場合に、溶鋼温度や成分の均一化を目的として、取鍋底部に装着されたガス吹きプラグからアルゴンガスなどの不活性ガスを吹き込み、溶鋼や精錬剤を攪拌することが行われている。
【0003】
代表的なガス吹き込み用プラグとしては、れんが内の気孔を介して通気させるポーラスプラグ、緻密質なれんがに貫通孔を設けた貫通孔プラグ、同じく緻密質なれんがにガス吹き込み方向に貫通するスリットを介して通気させるスリットプラグなどが知られているが、ガス流量制御の容易さ、バブリング信頼性の面から、従来よりポーラスプラグが広く使用されている。
【0004】
ポーラスプラグは、気孔の分布や大きさ、形状などを制御して通気性を持たせた多孔質れんがと、側面を囲むメタルケース、緻密質キャスタブルなどにより構成されている。
【0005】
取鍋においては、転炉または電気炉から溶鋼を受鋼した後、ポーラスプラグを介してガス吹きが行われる。精錬完了後、取鍋は連続鋳造機へ運搬され、鋳造が行われる。この間、ガス吹きは停止されているため、ポーラスれんが組織へは溶鋼が浸透し、鋳造完了後の取鍋が冷却された際に凝固層が形成され、ポーラスプラグのガス流量が低下する。
【0006】
そこで、次の受鋼に備えて、使用後のポーラスプラグの通気性を回復させるため、ポーラスれんが稼働面の凝固層に酸素を吹き付けて溶融する作業、すなわち酸素洗浄を行うが、同時に健全なポーラスれんがも少なからず損耗する。この酸素洗浄時のポーラスれんがの損耗を最小にとどめてポーラスプラグの寿命を長くするために、ポーラスプラグに用いられるポーラス耐火物には耐メタル浸透性、耐食性が求められている。
【0007】
このようなポーラスプラグとしては、例えば特許文献1〜8に記載されているようなものが知られている。
【0008】
特許文献1には、アルミナを骨材とする多孔質耐火物において、従来の粘土、酸化クロムなどに代えてジルコンを添加し、1600℃以上で焼成することにより熱間強度、耐スポール性にすぐれた材質となることが開示されている。特許文献1の第2ページ、左下欄から右下欄によると、ジルコンから解離したSiO2が溶融状態でその表面張力により、表面エネルギー最小の部分、すなわち骨材接触点近傍に集積し、アルミナ骨材と反応してムライトを生成し、さらにこのムライトがアルミナ骨材間の直接結合と合体することによる強固な複合結合組織を形成し、多孔質であるにもかかわらず、組織強度にすぐれたものになるとされている。
【0009】
また、特許文献2には、特定の連続粒度分布を満たすアルミナ質球状粒子を骨材とすることにより製造面の有利さ並びに物性および特性に優れるとともに、所要の通気性を具備したガス吹込み用ポーラス耐火物の製造法が開示されている。
特許文献2の第3ページ、左上欄から右上欄には球状粒子を用いたポーラス耐火物が高耐食性を示すこと、均一構造体を得るために球状粒子の粒度分布巾を狭くしたり、強度向上を目的としてマトリックス微粉を多くしたり、不連続粒度分布としたりする技術が開示されている。
【0010】
また、特許文献3には、アルミナ質、アルミナ・シリカ質、マグネシア質、スピネル質、フォルステライト質、マグクロ質、ジルコニア質、ジルコン質の耐火材料から選ばれた1種または2種以上の100重量部に対し、可燃性の繊維材料を5〜20重量部、マルトトリオースあるいはその誘導体の重合体を0.1〜3重量部添加した配合物を混合、成形した後、含酸素雰囲気中、200℃以上の温度で焼成するようにした、直径50μm以下の通気孔を有する多孔質焼結体の製造方法が開示されている。そして、段落0005には、耐火材料と可燃性繊維材料とを混合する際に、多糖類の1種であるマルトトリオースあるいはその誘導体の重合体を添加すれば繊維材料の分散も均一にでき、さらに、成形脱型時のスプリングバックも防止できることが、また、段落0007には、可燃性繊維材料は、50μm以下の繊維径で、平均糸長が5mm以下、好ましくは3mm以下で、加熱によって燃焼焼失するものであればよいことが開示されている。
【0011】
また、特許文献4には、アルミナ75〜98wt%、ジルコン1〜15wt%、粒径75μm以下が95wt%以上占めるAl23・MgO系スピネル超微粉1〜10wt%を含む配合物を混練、成形後、焼成するようにした、ガス吹き込みポーラスプラグ用多孔質耐火物の製造方法が開示されている。そして、段落0008には、スピネル超微粉を特定量添加したことで、アルミナ−ジルコン質がもつ耐食性を低下させることなく、高ガス透過性材質においても、耐溶鋼浸透性に優れたガス吹き込みポーラスプラグ用多孔質耐火物が得られることが開示され、段落0017には多孔質組織を得るために中間粒の割合を少なくし、粗粒が主体の粒度構成にすることが開示されている。
【0012】
また、特許文献5には、40〜76部顆粒状のアルミナ質原料、5〜30部の電融ムライト原料、5〜20部のアルミナ質微粉原料、1〜6部の可塑性粘土原料、0.1〜5部の酸化クロム微粉原料、外掛け0.5〜3部のフリット原料および外掛け1〜4部ののり材からなり、上記顆粒状のアルミナ質原料が破壊しない程度の圧力で混練され、成形されたことを特徴とする成形ポーラス耐火物が開示されている。そして、段落0012には、顆粒状アルミナの粒子径が1〜0.3mm程度のものを用いることが、また、段落0019には、フリット原料は、顆粒状のアルミナ質原料の粒表面をコーティングし、顆粒状のアルミナ質原料の粒間結合を容易にするために用いられることが、さらに、段落0023には、耐溶鋼流に対する強度の向上と、酸素洗浄時の高温対応および機械的損耗の軽減のためには1750℃以上の高温焼成が必要であることが開示されている。
【0013】
また、特許文献6には、シリカ質原料1〜20wt%、アルミナ80〜99wt%を含む耐火骨材を混練、成形、焼成して得た多孔質耐火物の側面外周に、耐火骨材にマグネシア1〜15wt%、アルミナ85〜99wt%を含む緻密質キャスタブル耐火物を鋳込み成形して製造されるガス吹込み用ポーラスプラグが開示されている。そして、段落0015には、アルミナの粒径は、ガス透過経路となる粒子間の空隙を形成しやすくするために、例えば0.15〜2mmのものが70wt%以上になるように調整することが開示されている。
【0014】
また、特許文献7には、粒径0.1〜0.5mmのアルミナ球状原料を60〜90重量%と、粒径0.1〜0.5mmのムライト質原料を10〜40重量%を粗粒原料として含み、配合物全体で0.5mmを超える原料粒子の含有量が10重量%以下である通気性耐火物が開示され、さらに、1400℃での熱間曲げ強度が0.5〜6MPa、通気率が0.5〜2.0CGSの通気性耐火物が開示されている。また、この粒度構成とすることによって、耐用性と熱間強度とのバランスがとれ、ガス吐出に際して溶鋼浸潤層が吹き飛びやすいため、ガス吐出の信頼性に優れたポーラスプラグとなることが開示されている(段落0016)。
【0015】
さらに、特許文献8には、アルミナ質原料65〜90重量%とムライト質原料3〜25重量%を含有し、全体のSiO2の含有量が3〜10重量%である配合物からなり、焼成後の圧縮強度が1〜20MPaであり、1400℃での熱間曲げ強度が0.2〜2MPaであり、且つ、通気率が2〜5CGSである通気性耐火物を使用したポーラスプラグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭59−203756号公報
【特許文献2】特開昭61−097161号公報
【特許文献3】特開平07−330465号公報
【特許文献4】特開平08−309515号公報
【特許文献5】特開平09−169558号公報
【特許文献6】特開平10−251739号公報
【特許文献7】特開2001−059113号公報
【特許文献8】特開2001−059114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述のように、従来からポーラスプラグの通気性、耐メタル浸透性、耐食性などを改善するために多くの試みがなされてきたが、要求される性能を実現することができていないのが現状である。
【0018】
耐メタル浸透性に関しては、アルミナ球状粒を小粒径品に変更することにより、細孔径を微細化し、耐メタル浸透性が向上することが分かっている。しかし、細孔径を微細化すると、鍋用ポーラスプラグとして必要な通気率の確保が困難になる。
【0019】
通気率確保のためには気孔率を増加させる必要があるが、一般的な円錐台形状を長手方向で成形する場合に、プレス出力を低下させたり配合の充填量を下げたりする通常の手法では、円錐台形のポーラスプラグの上部、中央、下部で気孔率が不均一になるという問題がある。そして、その場合には、酸素洗浄後に新たなガス吹き面となる部分の強度が弱くなり耐食性に劣るなどの様々な問題点が生じる。
【0020】
また、例えば、上述の特許文献3の技術は、可燃性繊維材料を焼失させることによって、微細な気孔を多く均一に有する多孔質焼結体を得るための技術であるが、可燃性繊維材料は材料に混ざりにくく、焼失後の気孔が均一に分布しないという問題点がある。
【0021】
本発明は、上記課題を解決するものであり、耐食性が高く、通気性や耐メタル浸透性にも優れた、ポーラスプラグに用いるのに適したポーラス耐火物、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明のポーラス耐火物の製造方法は、
(a)粒子径0.5〜0.1mmの球状アルミナを40〜95重量%、
(b)ジルコニア含有原料を3〜20重量%、
(c)フリットを外掛けで0.5〜3重量%、
(d)バインダーを外掛けで1〜10重量%、
(e)焼成することにより焼失する平均粒子径10〜30μmの焼失原料を外掛けで1〜10重量%
の割合で配合し、
1700℃以上の温度で焼成すること
を特徴としている。
【0023】
本発明のポーラス耐火物の製造方法は、上述のように構成されているので、組織の均質性、気孔の分散性が良好で、通気性、耐メタル浸透性、耐食性に優れたポーラス耐火物を確実に製造することができる。
【0024】
また、本発明のポーラス耐火物の製造方法は、気孔を介して通気させることにより、溶鋼にガスを吹き込むために用いられるポーラスプラグを製造するのに適用することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、通気性、耐メタル浸透性、耐食性のいずれにも優れたポーラスプラグを製造することができる。
【0026】
また、本発明のポーラス耐火物は、本発明(請求項1または2の発明)の方法で製造されたものであることを特徴としている。
【0027】
また、本発明のポーラス耐火物の製造方法を、気孔を介して通気させることにより、溶鋼にガスを吹き込むために用いられるポーラスプラグの製造に適用することにより、通気性、耐メタル浸透性、および耐食性に優れたポーラスプラグを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のポーラス耐火物は、
(a)粒子径0.5〜0.1mmの球状アルミナを40〜95重量%、
(b)ジルコニア含有原料を3〜20重量%、
(c)フリットを外掛けで0.5〜3重量%、
(d)バインダーを外掛けで1〜10重量%、
(e)焼成することにより焼失する平均粒子径10〜30μmの焼失原料を外掛けで1〜10重量%
を配合し、この配合原料を1700℃以上の温度で焼成することにより得られる。
【0029】
本発明においては、0.5〜0.1mmの球状アルミナ粒子が使用されていることから、気孔径が小さく、耐メタル浸潤性に優れたポーラス耐火物が得られる。
なお、アルミナとして、球状アルミナ粒子を用いることが望ましいのは、気孔径や気孔率を大きくすることなく一定の通気性(通気率)が得られ、また充てん性が向上することにより耐食性が向上することによる。
本発明の骨材となる球状アルミナの粒子径は0.5〜0.1mm、好ましくは0.5〜0.3mmである。0.5mmよりも大きいと、気孔径が大きくなりすぎて耐メタル浸潤性に劣る。一方、0.1mmより小さいと気孔径が低下し充分な通気性を確保することができない。
【0030】
上記配合原料における球状アルミナの含有量は、40〜95重量%とし、好ましくは65〜85重量%とする。含有量が40重量%よりも少ないと、均一にガス通路を形成できなくなるので好ましくない。95重量%よりも多いと、粒子間結合が不十分になるので好ましくない。
【0031】
また、本発明においては、粒子間の結合力を高めるために添加する微粉として、ジルコニア含有原料を使用する。これによって、高温で焼成しても平均気孔径が小さいまま骨材のネック成長を促進することが可能になり、強度の低下を防ぐことができる。
【0032】
上記配合原料におけるジルコニア含有原料の含有量は、3〜20重量%とし、好ましくは3〜10重量%とする。含有量が3重量%未満であると粒子間の結合力を高めることができず、20重量%を超えると粒子間の結合力が高くなりすぎて気孔率が低下し、充分な通気性を確保することができない。
【0033】
また、本発明において、ジルコニア含有原料は、粒状で、粒子径が100μm以下のものを用いることが好ましい。粒径が100μm以下のものを用いることにより、粒子間の結合力を高める効果を確実に得ることが可能になる一方で、100μmを超えると粒子間の結合力を高める機能が低下する傾向があることによる。
【0034】
ジルコニア含有原料としては、例えばジルコニア、ジルコン、バデライト、ジルコニアムライト、アルミナジルコニアなどを好適に使用することができる。
【0035】
また、本発明においては、フリットを外掛けで0.5〜3重量%添加して高温で焼成することによって、骨材である球状アルミナのネック成長を促進し、高強度の成形体(ポーラス耐火物)を得ることができる。フリットの添加量が0.5%未満では球状アルミナのネック成長が不十分なため強度不足となり、逆に3%を超えると球状アルミナのネック成長が過剰となるため気孔径が低下し充分な通気性を確保することができない。
【0036】
フリット原料は、球状アルミナの粒表面をコーティングし、球状アルミナの粒子間結合を強固にするために用いる。
このフリット原料としては、一般にフリットとして使用されるものを用いればよく、例えばケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、ジルコン系ガラス、リン酸ガラスなどを使用することができる。ホウケイ酸ガラスであればSiO2=40〜90重量%、Al23=10重量%以下、Na2O=20重量%以下、B23=5〜30重量%の成分を有するものを使用することができる。
【0037】
また、本発明の方法によってポーラス耐火物を製造方法においては、バインダーを介して焼失原料を、他の材料に均一に混合することにより、高圧でプレス成形した場合にも、充分な気孔を有する成形体を得ることができる。
【0038】
また、本発明においては、バインダーとして、例えば、焼成後は炭化するか残存しないフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂などを使用することが可能である。これらの中でも、(1)材料を均一に混合することができる、(2)安価であり耐火物用として汎用的に製造されている、(3)加熱時に発生する臭気が比較的少なく取り扱いが容易である、などの点でフェノール樹脂が好ましく用いられる。
【0039】
また、バインダーの添加量は、バインダー、フリット、および、消失原料を除いた材料に対して、外掛けで1〜10重量%とする。これは、1重量%未満になると、材料を均一に混合することができず、10重量%を超えると混練効率が下がる、不純物が多く残る、などの問題が生じることによる。
【0040】
また、バインダーは25℃における粘度が20〜2000mPa・sの範囲にあるものであることが好ましい。25℃における粘度が20mPa・sよりも小さくなると焼失原料に対して濡れ難く、2000mPa・sよりも大きくなるとバインダーが均一に分散し難いため好ましくない。
【0041】
本発明において、焼失原料は、可燃性の粉末材料であって、ある程度以上の温度で焼失し、気孔を形成するものである。
この焼失原料としては、粒状で、平均粒子径が10〜30μm、好ましくは20〜30μmのものを用いることが望ましい。平均粒子径が10μm未満の場合、形成される気孔が小さくなり、ガスが通気しにくくなるという問題があり、30μmよりも大きい場合、焼失後に生成する気孔が大きくなりすぎ、耐メタル浸透性の改善効果が期待できなくなるという問題があり、好ましくない。
【0042】
ただし、本発明において、繊維状の材料を焼失原料として用いることは好ましくない。これは、繊維状の材料を焼失原料として用いた場合、他の材料と均一に混ざりにくく、しかも、焼失後の気孔が均一に分布しないためである。
【0043】
また、焼失原料の添加量は、バインダー、フリット、および、消失原料を除いた材料(骨材)に対して、外掛けで1〜10重量%とし、好ましくは3〜5重量%とする。添加量が1重量%未満になると、気孔が少なく十分な通気量を確保できず、10重量%を超えると、気孔が多くなりすぎてポーラス耐火物の強度が低下するため好ましくない。
【0044】
また、本発明においては、焼失原料として、耐火材料やバインダーなどと均一に混ざり易く、焼失後に均一に気孔が分散したポーラス耐火物が得られることから、可燃性の粉末材料である木屑、プラスチック粉などの有機物粉末や、木炭粉、カーボンブラック、黒鉛、コークス粉などの炭素質粉末などが好ましい例として挙げられる。
【0045】
また、本発明のポーラス耐火物の製造方法において、焼成温度は1700℃以上とすることが必要である。これは、焼成温度が1700℃未満の場合、十分な強度を得ることができないことによる。
【0046】
また、本発明においては、その効果を阻害しない範囲で、骨材としてムライト、シリカ、アルミナ、ジルコニアムライト、アルミナジルコニアなどを、微粉部として粘土、アルミナ、酸化クロム、酸化チタンなどを使用することが可能である。
【0047】
また、上記焼成工程以外にも、一般的な乾燥工程を設けることも可能である。 また、焼失原料は、上記焼成工程における昇温過程や、焼成過程において焼失させることが可能であるが、焼失させるための加熱工程を別途設けることも可能である。
【0048】
本発明のポーラス耐火物の製造方法は、
(a)製造工程において高圧でプレスした場合にも、得られるポーラス耐火物において十分な気孔率を確保することができる、
(b)かさ密度、気孔分布が均一で、しかも、気孔以外の組織部が緻密なポーラス耐火物を得ることができる
などの特長を有している。
【0049】
したがって、本発明によれば、気孔の分散性、組織の緻密性が良好で、通気性、耐メタル浸透性、耐食性に優れたポーラス耐火物を確実に製造することができる。
さらに、本発明のポーラス耐火物をポーラスプラグに適用することにより、通気性、耐メタル浸透性、耐食性に優れ、かつ、酸素洗浄後に新たなガス吹き面となる部分も充分な強度を有し、酸素洗浄後の使用においても通気性、耐食性に優れたポーラスプラグを得ることが可能になる。そして、そのようなポーラスプラグを用いることにより、安定した操業を実現することができる。
【実施例】
【0050】
(1)まず、表1、表2に示す配合比で、各材料を配合した。
なお、表1に示す配合比で配合された材料(配合材料)は、いずれも本発明の要件を備えた配合材料(実施例)であり、表2に示す配合比で配合された材料(配合材料)は、いずれも本発明の要件を備えていない配合材料(比較例)である。
【0051】
表1および表2に示すように、球状アルミナは、実施例7には粒子径0.1〜0.5mmのもの、比較例1には粒子径0.3〜1.0mmのもの、比較例10には粒子径0.1〜0.5mmのものに加え粒子径0.1mm未満のものを使用し、それ以外の実施例と比較例には粒子径0.3〜0.5mmのものを使用した。
【0052】
また、ジルコニア含有原料としては、粒子径が70μm以下のバデライト微粉を使用した。
【0053】
さらに、その他の骨材として、粒子径が45μm以下の焼結アルミナを使用し、その他微粉部として、粒子径が75μm以下の粘土を使用した。
【0054】
フリットとしては、SiO2=45重量%、Al23=2重量%、Na2O=15重量%、B23=20重量%の成分を有する、粒径が45μm以下のホウケイ酸ガラスを使用した。
【0055】
バインダーとしては、25℃における粘度が45mPa・sのフェノール樹脂を使用した。
【0056】
そして、焼失原料としては、平均粒子径が21μmの木炭粉を使用した。
ただし、比較例8においては、繊維質焼失原料は平均繊維径が10μmで平均糸長が1mmの炭素繊維を使用した。
【0057】
(2)次に、表1および表2の各配合材料をロールパンによって混練した。それから、混練した配合材料を型に入れて0.8t/cm2の圧力でプレス成形し、成分が異なる成形ポーラス耐火物を得た。
【0058】
(3)それから、この成形ポーラス耐火物を、表1および表2に示す温度で焼成して焼成ポーラス耐火物を得た。焼成ポーラス耐火物は形状が円錐台形状で、上面の直径が65mm、下面の直径が130mm、高さが200mmの寸法を有するものである。
【0059】
このようにして得た焼成ポーラス耐火物について、特性値として平均気孔径、気孔率、かさ比重、圧縮強さ、熱間曲げ強さ、ガス流量を測定した。
【0060】
なお、気孔率、かさ比重の測定はJIS R 2205に従って行った。また、圧縮強さの測定はJIS R 2206に従って行った。さらに、熱間曲げ強さの測定はJIS R 2656に従って行った。
また、平均気孔径は、水銀ポロシメーターにて測定したメディアン径を平均気孔径とした。
さらに、ガス流量は、作製した焼成ポーラス耐火物にメタルケースを装着し、流量計で測定した。なお、流通ガスとしては空気を用い、圧力は0.1MPaとした。
その結果を表1および表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表1に示すように、本発明の要件を備えた実施例1〜9のポーラス耐火物は、平均気孔径、気孔率、かさ比重、圧縮強さ、熱間曲げ強さ、ガス流量のいずれの特性についても良好であることが確認された。
【0064】
これに対し、粒子径の大きい球状アルミナを使用した比較例1(表2)の場合、平均気孔径が150μmと大きいことが確認された。これは、耐メタル浸透性が悪くなることが推測されるものであり、好ましくないものである。
【0065】
また、ジルコニア含有材料を含まない比較例2の場合、熱間曲げ強さが不十分であることが確認された。これは、ジルコニア含有材料を含まないため、粒子間の結合力が低下したことによるものと考えられる。
【0066】
さらに、ジルコニア含有材料を本発明の範囲よりも多く含む比較例3の場合、気孔率が低く、ガス流量が少なくなることが確認された。
【0067】
また、フリットを使用しなかった比較例4の場合、熱間曲げ強さが不十分になり、一方で、フリットを本発明の範囲より多く配合した比較例5の場合、平均気孔径および気孔率が小さく、ガス流量が少なくなることが確認された。
【0068】
さらに、焼失原料を使用しなかった比較例6の場合、気孔率が低く、ガス流量が少なくなることが確認された。
【0069】
また、焼失原料を本発明の範囲よりも多く配合した比較例7の場合、気孔率が高くなりすぎ、その結果として、圧縮強さと熱間曲げ強さが低下することが確認された。
【0070】
さらに、焼失原料に繊維状焼失原料を使用した比較例8の場合、ガス流量が少なくなることが確認された。これは、繊維状の材料を焼失原料として用いた場合、他の材料と混ざりにくく、しかも、焼失後の気孔が均一に分布しないことによるものである。
【0071】
また、表1の実施例1の場合と同じ配合材料(最適配合の材料)を用いて、焼成温度を、本発明の1700℃以上の要件を満たさない1600℃とした比較例9の場合、熱間曲げ強さが不十分で、ガス流量も少なくなることが確認された。
粒子径0.1mm未満の球状アルミナを使用した比較例10は、平均気孔径、気孔率が小さく、ガス流量が少ないことが確認された。
また、球状アルミナが40%未満の比較例11は、平均気孔径、気孔率とも問題ないにもかかわらずガス流量が低いことが確認された。これは、耐火物内に均一にガス通路を形成できず、密閉状態や袋小路状の気孔が多く存在していることによるものと考えられる。
【0072】
以上の結果から、本発明の要件を満たすことにより、組織の均質性、気孔の分散性が良好で、通気性、耐メタル浸透性、耐食性に優れたポーラス耐火物が得られることが確認された。
【0073】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粒子径0.5〜0.1mmの球状アルミナを40〜95重量%、
(b)ジルコニア含有原料を3〜20重量%、
(c)フリットを外掛けで0.5〜3重量%、
(d)バインダーを外掛けで1〜10重量%、
(e)焼成することにより焼失する平均粒子径10〜30μmの焼失原料を外掛けで1〜10重量%
の割合で配合し、
1700℃以上の温度で焼成すること
を特徴とするポーラス耐火物の製造方法。
【請求項2】
前記ポーラス耐火物が、気孔を介して通気させることにより、溶鋼にガスを吹き込むために用いられるポーラスプラグであることを特徴とする請求項1記載のポーラス耐火物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の方法で製造されたものであることを特徴とするポーラス耐火物。
【請求項4】
気孔を介して通気させることにより、溶鋼にガスを吹き込むために用いられるポーラスプラグであることを特徴とする請求項3記載のポーラス耐火物。

【公開番号】特開2013−1584(P2013−1584A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131819(P2011−131819)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】