説明

ポール付ケーブル中継台車及び電動式作業機械への電力供給システム

【課題】車両の走行路とケーブルとの干渉を防ぎ、ケーブルの損傷を防止することのできるポール付ケーブル中継台車及び電動式作業機械への電力供給システムを提供すること。
【解決手段】中継台車30に、送電を行うケーブル70を保持するケーブルドラム34と、ケーブルドラム34で保持するケーブル70をケーブル70が配設される位置に交差する走行路を走行する車両の高さよりも高い位置でケーブル70を支持するケーブル支持ポール40と、ケーブルドラム34とケーブル支持ポール40とに連結され、且つ、ケーブルドラム34とケーブル支持ポール40とを移動させることができるように走行動作を行う走行装置50と、を備える。また、電動式作業機械であるショベル1への電力供給システム20に、上記中継台車30と、中継台車30で中継されるケーブル70によって供給される電力によって駆動する電動式作業機械であるショベル1と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポール付ケーブル中継台車及び電動式作業機械への電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の削減や環境保護の観点から、油圧ショベル等の作業機械の中には、電気で駆動する電気駆動式のものがある。例えば、特許文献1に記載された電動式作業機械は、ケーブルによって外部から電力が供給可能になっており、このように外部から供給された電力によって駆動することにより、鉱山や採石現場で、掘削等の作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−65445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、採石現場等の作業場は、すり鉢状になっていることが多く、作業エリアが比較的狭い場合が多くなっている。このため、ショベルに接続されるケーブルが配置された作業場で、ダンプ等の車両が作業エリア内で作業を行いながら移動する場合、前記車両はケーブルを踏まないように狭いエリア内で向きを変えることになる。この場合、切り返し動作の回数が多くなるため、タイヤの寿命の低下につながる。このような切り返し動作の回数が多くなることに起因するタイヤの寿命低下を抑えることは、作業場を広くすることにより実現できるが、作業場を広くする場合、多大な時間やコストがかかり易くなる。
【0005】
また、採石現場等における生産性を上げる工法として、ショベルの両側にダンプが進入し、この両側のダンプに対してショベルで積み込み作業を行う工法があるが、ショベルにケーブルが接続されている場合、このような工法を行うことが困難になる。つまり、電気駆動式のショベルにケーブルが接続される場合、ケーブルは、ショベルの両側に進入するダンプの走行路の間に配置されることになる。また、ショベルの両側に進入し、積み込み作業を終えたダンプが作業エリアの外に出る場合には、作業エリア内で切り返した後に移動することになるが、積み込み作業後のダンプが切り返しを行う場合、ダンプの走行路の間に配置されるケーブルを踏むおそれがある。このため、ダンプは、切り返しを行うことが困難になり、ショベルの両側にダンプが進入する工法は困難になる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両の走行路とケーブルとの干渉を防ぎ、ケーブルの損傷を防止することのできるポール付ケーブル中継台車及び電動式作業機械への電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るポール付ケーブル中継台車は、送電を行うケーブルを保持するケーブル保持部と、前記ケーブル保持部で保持する前記ケーブルを、前記ケーブルが配設される位置に交差する走行路を走行する車両の高さよりも高い位置で支持するケーブル支持ポールと、前記ケーブル保持部と前記ケーブル支持ポールとに連結され、且つ、前記ケーブル保持部と前記ケーブル支持ポールとを移動させることができるように走行動作を行う走行装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記ポール付ケーブル中継台車において、前記ケーブル支持ポールを複数備えることが好ましい。
【0009】
また、上記ポール付ケーブル中継台車において、前記ケーブル支持ポールは、地面からの前記ケーブルの高さを変化させて支持することが可能であることが好ましい。
【0010】
また、上記ポール付ケーブル中継台車において、前記ケーブル保持部は、前記ケーブルの巻き取りと送り出しとが可能であり、前記ケーブルの巻き取り量を調節することにより、地面からの前記ケーブルの高さの調節が可能であることが好ましい。
【0011】
また、上記ポール付ケーブル中継台車において、前記走行装置は、前記ケーブルによって供給された電気により前記走行動作を行うことが好ましい。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電動式作業機械への電力供給システムは、上記のいずれかのポール付ケーブル中継台車と、前記ポール付ケーブル中継台車で中継される前記ケーブルによって供給される電力によって駆動する電動式作業機械と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るポール付ケーブル中継台車は、車両の走行路とケーブルとの干渉を防ぎ、ケーブルの損傷を防止することができる、という効果を奏する。また、本発明に係る電動式作業機械への電力供給システムは、車両の走行路とケーブルとの干渉を防ぎ、ケーブルの損傷を防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施形態1に係る中継台車を介して電気が供給される積込機械の一例であるショベルの概略図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る中継台車の概略図である。
【図3】図3は、図2に示す中継台車の要部構成図である。
【図4】図4は、中継台車とショベルとをケーブルで接続した状態を示す説明図である。
【図5】図5は、図4のA部詳細図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る中継台車の概略図である。
【図7】図7は、図6に示すケーブル支持部材が縮んだ状態を示す説明図である。
【図8】図8は、図6に示す中継台車の要部構成図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る中継台車の変形例を示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態1に係る中継台車の変形例を示す説明図である。
【図11】図11は、実施形態1に係る中継台車の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るポール付ケーブル中継台車及び電動式作業機械への電力供給システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
〔実施形態1〕
<ショベルの構成>
図1は、実施形態1に係る中継台車を介して電気が供給される積込機械の一例であるショベルの概略図である。同図に示すショベル1は、外部から供給される電力により各部を駆動する電動式作業機械になっている。このショベル1は、上部旋回体2と下部走行体10とを有しており、この上部旋回体2と下部走行体10とは、双方を相対的に回動可能に連結するスイングサークル16により連結されている。このうち、上部旋回体2には、ブーム4、アーム5及びバケット6を含む作業装置である作業機3が取り付けられている。また、下部走行体10には、左右一対の履帯11と、電力によって駆動することにより履帯11を駆動させる左右一対の走行モータ12とを有している。ショベル1は、このように走行モータ12によって履帯11を駆動させることにより、走行可能になっている。
【0017】
また、スイングサークル16には、電動旋回モータ17が備えられており、スイングサークル16は、電力によって電動旋回モータ17が駆動することにより、下部走行体10に対して上部旋回体2を相対的に回動させる。
【0018】
また、上部旋回体2には、油圧を生成する油圧ポンプ(図示省略)と、電力によって駆動することにより油圧ポンプを駆動する油圧生成用電動機(図示省略)と、を備えるポンプユニット8が設けられている。上部旋回体2に設けられる作業機3は、電力で油圧生成用電動機を駆動することによりポンプユニット8で発生する油圧が、コントロールバルブを介して各々ブーム4用、アーム5用、バケット6用の油圧シリンダに付与され、油圧シリンダが伸縮することにより、各動作を行う。
【0019】
なお、電動式作業機械の電動の部分は、これらのように上部旋回体2を旋回させる場合や作業機3を駆動させる場合のように、走行に関わる部分以外を電力によって駆動させてもよく、または、上部旋回体2の旋回のみを電動にするなど、電力によって作動させる部分の部位は問わない。
【0020】
このショベル1の運転席7は、上部旋回体に設けられている。ショベル1を運転する場合は、運転者が運転席7に搭乗し、運転に用いるレバー類等の装置に対して運転操作を行うことにより、運転を行う。
【0021】
<中継台車の構成>
図2は、実施形態1に係る中継台車の概略図である。同図に示す中継台車30は、ショベル1に接続するケーブルの中継用に用いると共に、自走が可能なポール付ケーブル中継台車になっている。この中継台車30は、送電を行うケーブル70を巻き取ることによりケーブル70を保持するケーブル保持部であるケーブルドラム34を有しており、ケーブルドラム34が搭載される台車本体31に走行装置50が連結されることにより、自走可能に構成されている。
【0022】
このケーブルドラム34は、内側が中空となる、いわゆる略円筒形の形状で形成された軸部35を有しており、この軸部35の一部には、当該軸部35の内側部分と外側とを連通する開口穴36が形成されている。また、ケーブルドラム34は、ケーブル70を巻き取る場合において、軸部35の軸方向における巻き取り範囲を規制するガイド部37を有している。このガイド部37は、略円板状の形状で形成されており、円板の中心軸(円板の図心または重心を通る軸)が軸部35の中心軸と一致する向きで、軸部35の両端付近に設けられている。このように設けられるケーブルドラム34は、軸部35の中心軸が、中継台車30の走行時における進行方向に直交する向きで配設されている。
【0023】
ケーブル70の一端は、軸部35の開口穴36から軸部35の内部に入り込んでいる。ケーブルドラム34は、軸部35の外周面にケーブル70を巻き付けることによってケーブル70を巻き取ることができる。ケーブルドラム34に巻き取られるケーブル70は、ケーブルドラム34の軸部35の内部に入り込んでいる側の端部が当該軸部35の端部から軸部35の外に出される。これらのため、ケーブル70は、一端側が、軸部35の外周面に巻き取られている部分からケーブルドラム34の外に延び、他端側が、軸部35の端部からケーブルドラム34の外に延びている。
【0024】
また、ケーブルドラム34は、外部からの力によって円筒形の回転軸を中心として回転可能に台車本体31に搭載されており、この回転により、ケーブルドラム34は、ケーブル70の巻き取り量を調節することができる。
【0025】
中継台車30は、ケーブルドラム34で保持するケーブル70を支持するケーブル支持ポール40を有している。ケーブル支持ポール40は、台車本体31に設けられている。具体的には、ケーブル支持ポール40は、棒状の形状で形成されており、一端側が台車本体31に接続され、台車本体31から上方に向かって延在している。即ち、ケーブル支持ポール40は、下端側が台車本体31に接続されている。また、台車本体31から上方に向かって延在しているケーブル支持ポール40は、上端部が、ケーブル70を支持するケーブル支持部45になっている。
【0026】
このケーブル支持ポール40は、ケーブルドラム34に保持されるケーブル70において、ケーブルドラム34の外に延びる一端側を支持する。例えば、ケーブル支持ポール40は、ケーブル70において、軸部35の外周面に巻き取られている部分からケーブルドラム34の外に延びている部分を、ポール側部71として支持する。反対に、ケーブル70において、軸部35の端部からケーブルドラム34の外に延びている部分は、ケーブル支持ポール40では支持せず、この部分は非支持側部72として、中継台車30の外に延びる。
【0027】
なお、このポール側部71と非支持側部72とは、反対でもよく、軸部35の端部からケーブルドラム34の外に延びている部分がポール側部71になり、軸部35の外周面に巻き取られている部分からケーブルドラム34の外に延びている部分が非支持側部72になっていてもよい。
【0028】
ケーブル70を支持するケーブル支持部45は、所定の幅を有する略U字状の部材からなり、U字の開口部分が上方に開口する向きでケーブル支持ポール40の上端部に配設されている。このケーブル支持部45は、U字の開口側からU字の内側にケーブル70を入り込ませることにより、ケーブル70を固定しない状態で、ケーブル70を支持する。また、ケーブル支持ポール40は、中継台車30が使用される作業場を走行する車両のうち、ケーブル70が配設される位置に対して走行路が交差する車両の高さよりも高い位置で、ケーブル70を支持する。
【0029】
走行装置50は、左右一対の履帯51と、電力によって駆動することにより履帯51を駆動させる左右一対の走行モータ52とを有しており、走行モータ52によって履帯51を駆動させることにより、走行動作を行う。中継台車30は、当該中継台車30の電力源であるバッテリ(図示省略)を搭載しており、走行モータ52は、このバッテリから供給される電力によって駆動する。また、走行装置50は、ケーブルドラム34とケーブル支持ポール40とが搭載される台車本体31に連結されているため、走行装置50は、台車本体31を介してケーブルドラム34とケーブル支持ポール40とに連結されている。このため、走行装置50は、走行モータ52を駆動させることにより、ケーブルドラム34とケーブル支持ポール40を移動させることができるように走行動作を行い、中継台車30は、この走行動作によって走行可能になっている。なお、走行装置50は、このように履帯51を用いる履帯式が好ましいが、タイヤを用いるなど、履帯式以外の形態によって構成してもよい。
【0030】
中継台車30は、この走行装置50の走行動作によって走行することができるが、ケーブル70のポール側部71と非支持側部72とは、中継台車30から見た場合に、中継台車30の走行方向における互いに反対方向に向かって延びている。
【0031】
また、ケーブル支持ポール40は、中継台車30の走行方向において、ケーブル70のポール側部71が延びる側の台車本体31の端部付近に配設されている。換言すると、ケーブル70のポール側部71は、中継台車30の走行方向において、ケーブル支持ポール40側に延在するように配設されている。
【0032】
また、中継台車30は、外部からの制御信号を受信する制御受信装置65を有している。この制御受信装置65は、ショベル1の運転者や、中継台車30を視認することができる作業場の作業者等が操作をする遠隔操作装置(図示省略)から送信された制御信号を受信することが可能になっている。このように設けられる制御受信装置65は、中継台車30に搭載され、中継台車30の各部を制御する電子制御装置60に接続されている。この電子制御装置60には、走行装置50が有する走行モータ52も接続されている。
【0033】
図3は、図2に示す中継台車の要部構成図である。電子制御装置60には、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、さらに入出力部が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。このように設けられる電子制御装置60の処理部は、走行装置50に対して移動制御を行う移動制御手段である移動制御部61を備えている。電子制御装置60は、走行モータ52や制御受信装置65等との間で、信号の受け渡しを行うことにより、各部の制御が可能になっている。
【0034】
<中継台車を用いたケーブルの接続>
この実施形態1に係る中継台車30は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。図4は、中継台車とショベルとをケーブルで接続した状態を示す説明図であり、ショベルへの電力供給システムの概略図である。図5は、図4のA部詳細図である。ショベル1への電力供給システム20では、中継台車30を使用してショベル1に電力供給を行うが、中継台車30を使用する際には、ショベル1の運転時における電力源である外部電源80とショベル1との間に複数の中継台車30を介在させ、これらを電気的に接続した状態にする。例えば、中継台車30を2台用いる場合について説明すると、外部電源80寄りに配置する中継台車30である電源側中継台車30aのケーブルドラム34で保持するケーブル70の非支持側部72を、外部電源80に接続する。
【0035】
この電源側中継台車30aと、ショベル1寄りに配置する中継台車30であるショベル側中継台車30bとは、共にケーブル70のポール側部71の部分を、他方の中継台車30の方向に延在させる。つまり、電源側中継台車30aとショベル側中継台車30bとは、双方のケーブルドラム34で保持するケーブル70を介して接続されるが、双方の中継台車30同士の間に位置するケーブル70は、双方の中継台車30が有するケーブル支持ポール40で支持されている部分になっている。このため、電源側中継台車30aとショベル側中継台車30bとの間に位置するケーブル70は、双方のケーブル支持ポール40のケーブル支持部45間に掛け渡された状態になる。
【0036】
また、ショベル側中継台車30bのケーブルドラム34が保持するケーブル70の非支持側部72は、ショベル1に接続される。この非支持側部72は、例えば、ショベル1の下部走行体10に接続される。これにより、外部電源80とショベル1とは、双方の間に介在する電源側中継台車30aとショベル側中継台車30bとによって保持されるケーブル70で、電気的に接続された状態になる。
【0037】
<ショベルの運転>
電動式作業機械であるショベル1は、このように2台の中継台車30を介してショベル1に供給される電力によって運転をする。つまり、外部電源80からの電力は、電源側中継台車30aで保持されるケーブル70における非支持側部72から、ケーブルドラム34で保持されている部分を介して、ポール側部71に送電される。また、電源側中継台車30aでポール側部71として扱われる部分は、ショベル側中継台車30bにおいてもポール側部71として扱われ、ショベル側中継台車30bのケーブルドラム34で保持されている。このため、電源側中継台車30a側から非支持側部72によって送電された電力は、ショベル側中継台車30bのケーブルドラム34で保持されている部分のケーブル70に送電され、さらに、この電気は、ケーブル70の非支持側部72にも送電される。
【0038】
ショベル側中継台車30bのケーブルドラム34で保持されるケーブル70の非支持側部72は、ショベル1に接続されているため、ケーブル70を流れる電力は、ショベル1に供給される。ショベル1は、このように2台の中継台車30を介して供給された外部電源80からの電力によって運転される。
【0039】
例えば、このショベル1は、運転席7に搭乗する運転者の運転操作によって運転可能になっているため、運転操作によってブーム4やバケット6等を作動させる場合には、2台の中継台車30を介して供給された電力によってポンプユニット8を作動させ、油圧シリンダ等を作動させる。これにより、ショベル1に対して任意の動作を行わせ、掘削等の作業を実行する。
【0040】
また、ショベル1の上部旋回体2を旋回させる場合には、旋回をさせる運転操作を運転者が行うことにより、中継台車30を介して供給された電力によって電動旋回モータ17を駆動させる。これにより、下部走行体10に対して相対的に上部旋回体2を旋回させる。
【0041】
また、このショベル1は、下部走行体10を駆動させることにより走行可能になっているため、作業場での作業時には、ショベル1全体を任意の位置に移動させる。この場合も、バケット6等を作動させる場合と同様に、ショベル1を移動させる運転操作を運転者が行うことにより、2台の中継台車30を介して供給された電力によって走行モータ12を作動させる。その際に、走行モータ12は左右一対で設けられているため、左右の走行モータ12を独立して作動させることにより、進行方向を含めて任意の走行制御を行うことができる。
【0042】
<中継台車によるケーブルの支持>
2台の中継台車30は、外部電源80とショベル1とを接続するケーブル70を保持しているが、このケーブル70は、各中継台車30のケーブル支持ポール40間に掛け渡されている。その際に、ケーブル支持ポール40は、当該ケーブル支持ポール40の上端に位置するケーブル支持部45によってケーブル70を支持しているため、中継台車30が位置する地面Gから上方に離れた高い位置で、ケーブル70を支持している。このため、ケーブル70における、ケーブル支持ポール40間に掛け渡されている部分は、地面Gから上方に離れた位置で、電源側中継台車30aとショベル側中継台車30bとの間にかけて配設されている。
【0043】
ショベル1が掘削等の作業を行う作業場は、ショベル1以外にダンプトラックやサービスカー、作業場の整地等を行うホイルローダ等の他の車両(図示省略)も走行をするが、これらの車両が中継台車30同士の間を通過する場合には、地面Gから上方に離れたケーブル70の下方を通過する。つまり、ケーブル70は、中継台車30が位置する地面Gから上方に離れているため、ケーブル70と地面Gとの間には空間部分が形成されている。中継台車30以外の車両は、ケーブル70の下方の地面Gを走行路として、ケーブル70と地面Gとの間の空間部分を通過する。
【0044】
例えば、ショベル1が作業を行う作業場を走行する車両としてダンプトラック85を用いて説明すると、中継台車30間に掛け渡されるケーブル70が配設されている位置をダンプトラック85が通過する場合には、ダンプトラック85は、ケーブル70の下方を通過する。このため、ケーブル支持ポール40は、ケーブル70が配設される位置と走行路とが交差する車両であるダンプトラック85の高さよりも高い位置で、ケーブル70を支持している。これにより、ダンプトラック85は、ケーブル70の下方を通過できる。従って、ダンプトラック85は、ショベル1で掘削した石等をショベル1でダンプトラック85に積み込んだ後、方向転換する場合に、ケーブル支持ポール40で支持されるケーブル70の下を通過して方向転換を行い、所望の方向に向かって進行することができる。
【0045】
<中継台車の走行>
ショベル1は、走行モータ12を作動させることにより走行させることができるが、ショベル1と2台の中継台車30とはケーブル70により接続されている。このため、ショベル1の走行時には、ショベル側中継台車30bまたは2台の中継台車30の双方を、ショベル1と共に移動させる必要がある。中継台車30は自走可能になっているため、ショベル1の走行時には、必要に応じて中継台車30も走行させる。この場合、ショベル1の運転者等が遠隔操作装置を操作し、遠隔操作によって中継台車30を走行させる。
【0046】
つまり、電子制御装置60の移動制御部61は中継台車30が有する制御受信装置65で受信した移動制御の信号に基づいて移動制御を行う。例えば、ショベル側中継台車30bを走行させる場合には、ショベル側中継台車30bの制御受信装置65が受信した制御信号に基づいて、ショベル側中継台車30bの移動制御部61にショベル側中継台車30bの走行装置50の走行モータ52を制御させることにより、ショベル側中継台車30bを走行させる。この場合、走行モータ52を作動させる電力は、ショベル側中継台車30bに搭載されるバッテリから供給される電力を使用し、走行装置50は、バッテリからの電気によって走行動作を行う。具体的には、移動制御部61は、左右の走行モータ52で発生する駆動力を調節することにより、ショベル側中継台車30bとショベル1との相対距離を維持しつつ、ショベル側中継台車30bを任意の方向に移動させる。
【0047】
また、このようにショベル側中継台車30bが移動した場合には、同様の手法で電源側中継台車30aも移動させる。つまり、ショベル1の運転者等は、電源側中継台車30aを移動させるように遠隔操作装置を操作し、遠隔操作装置から移動制御の信号を送信する。電源側中継台車30aは、この移動制御の信号を制御受信装置65で受信し、受信した移動制御の信号に基づいて、移動制御部61で走行装置50の走行モータ52を制御する。これにより、遠隔操作装置による遠隔操作によって、電源側中継台車30aを走行させる。この場合、走行モータ52を作動させる電力は、電源側中継台車30aに搭載されるバッテリの電力を使用する。これらにより、電源側中継台車30aとショベル側中継台車30bとの相対距離を維持しつつ、電源側中継台車30aを任意の方向に移動させる。
【0048】
<実施形態1の効果>
以上の本実施形態1に係る中継台車30は、ケーブル支持ポール40は、ケーブル70が配設される位置に対して走行路が交差するダンプトラック85等の車両の高さよりも高い位置でケーブル70を支持するため、このような車両を、ケーブル70の下方側を通すことができる。また、中継台車30は、送電を行うケーブル70を保持するケーブルドラム34を、走行装置50の走行動作によって移動させることができるようになっている。このため、ショベル1の移動時には、走行装置50に走行動作を行わせることにより、ケーブルドラム34を有する中継台車30をショベル1の移動に応じて移動させることができ、ケーブル70の張力が大きくなり過ぎることを防ぐことができる。この結果、車両の走行路とケーブル70との干渉を防ぎ、ケーブル70の損傷を防止することができる。
【0049】
また、以上の本実施形態1に係るショベル1への電力供給システム20は、中継台車30のケーブル支持ポール40によってケーブル70を支持し、この中継台車30で中継されるケーブル70により供給される電力によって、ショベル1を駆動させている。このため、ショベル1に電力を供給するケーブル70は、ダンプトラック85の高さよりも高い位置で支持されるため、ダンプトラック85を、ケーブル70の下方側を通過させることができる。この結果、ダンプトラック85等の車両の走行路とケーブル70との干渉を防ぎ、ケーブル70の損傷を防止することができる。
【0050】
また、ケーブル70を用いてショベル1の電力を供給する場合でも、ダンプトラック85は、ケーブル70の下方側を走行することができるため、ダンプトラック85の向きを変える際に、ケーブル70の下方側を通って切り返し動作を行うことができる。これにより、切り返し動作の回数を低減できるため、作業場を広くする必要がなく、作業時間やコストの増大を防ぐことができる。また、ダンプトラック85は、ケーブル70の下方側を通って容易に向きを変えることができるので、ショベル1の両側にダンプトラック85を配置して作業を行う場合でも、作業場へのダンプトラック85の出入りを容易に行うことができる。このため、ショベル1からダンプトラック85に積み込み作業を行う場合に、ショベル1の両側のダンプトラック85に対して連続的に積み込み作業を行うことができるため、生産性を向上させることができる。また、作業場に落石等が発生した場合でも、ホイルローダはケーブル70の下方を走行することができるため、ショベル1を移動させることなく、ホイルローダで石を除去することができる。これらの結果、ケーブル70の損傷を防止しつつ、作業時間やコストの増大を抑えることができ、生産性を向上させることができる。
【0051】
[実施形態2]
実施形態2に係る中継台車90は、実施形態1に係る中継台車30と略同様の構成であるが、ケーブル支持ポール95が伸縮可能に設けられている点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0052】
<中継台車の構成>
図6は、実施形態2に係る中継台車の概略図である。図7は、図6に示すケーブル支持ポールが縮んだ状態を示す説明図である。本実施形態2に係る中継台車90は、実施形態1に係る中継台車30と同様に、ケーブル70を保持するケーブルドラム34が搭載され、走行装置50が連結される台車本体31を有している。また、台車本体31には、ケーブル70を支持するケーブル支持ポール95が設けられているが、このケーブル支持ポール95は、実施形態1に係る中継台車30に設けられるケーブル支持ポール40とは異なり、電気、油圧または空気圧によって作動するアクチュエータ(図示省略)によって全長が伸縮自在に設けられている。例えば、ケーブル支持ポール95は、テレスコピック機構により、伸縮自在になっている。即ち、ケーブル支持ポール95は、それぞれ径が異なる円筒形の複数の部材によって構成され、相対的に径が小さい部材が、径が大きい部材の内側に入ることにより、部材同士が径方向において重なりつつ、円筒形の長さ方向に相対的に移動可能に連結される。これにより、ケーブル支持ポール95は、全長を伸縮させることが可能になっている。
【0053】
このケーブル支持ポール95は、下端部が台車本体31に接続されて上方に向かって延在しているため、伸縮させることにより、台車本体31から、或いは、地面Gからの上端部の高さを変化させることが可能に設けられている。このように伸縮可能なケーブル支持ポール95は、上端部がケーブル支持部98になっており、伸縮させることにより、ケーブル支持部98の高さを変化させることができる。このため、ケーブル支持ポール95を伸ばした場合は、地面Gからのケーブル支持部98の高さを高くすることができ(図6)、ケーブル支持ポール95を縮めた場合は、地面Gからのケーブル支持部98の高さを低くすることができる(図7)。即ち、ケーブル支持ポール95は、当該ケーブル支持ポール95を伸縮させることにより、地面Gからのケーブル70の高さを変化させて、ケーブル70を支持することが可能になっている。
【0054】
図8は、図6に示す中継台車の要部構成図である。本実施形態2に係る中継台車90の電子制御装置60には、遠隔操作装置からの制御信号を受信することができる制御受信装置65が接続されている。また、電子制御装置60は、処理部が、移動制御部61を有しており、さらに、ケーブル支持ポール95の伸縮の制御を行う支持部材制御部100を有している。また、ケーブル支持ポール95を伸縮させるアクチュエータは、この電子制御装置60に接続され、電子制御装置60によってケーブル支持ポール95の伸縮の制御が可能になっている。
【0055】
この実施形態2に係る中継台車90は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態2に係る中継台車90を使用する場合は、実施形態1に係る中継台車30と同様に、外部電源80とショベル1との間の電気的な接続を行うケーブル70を、複数の中継台車90で保持する。これにより、外部電源80からの電力を、複数の中継台車90で保持されるケーブル70によってショベル1に供給し、ショベル1は、この電力によって各作業を行う。
【0056】
<ケーブル支持ポールの伸縮>
また、本実施形態2に係る中継台車90の電子制御装置60が有する支持部材制御部100は、遠隔操作装置からの制御信号に基づいて、ケーブル支持ポール95の伸縮制御を行う。例えば、ショベル1が走行せず、中継台車90が停止している場合には、遠隔操作装置を操作する作業者は、ケーブル支持ポール95を伸ばすように遠隔操作装置に対して入力操作を行う。ケーブル支持ポール95を伸ばすための入力操作が行われた遠隔操作装置は、制御信号を送信し、支持部材制御部100は、制御受信装置65で受信した伸縮制御の信号に基づいてケーブル支持ポール95を制御することにより、ケーブル支持ポール95を伸ばした状態にする(図6参照)。これにより、ケーブル支持ポール95は、ケーブル支持部98の位置が高くなり、ケーブル支持部98で支持するケーブル70の位置も、地面Gから上方に大きく離れる。このため、ケーブル支持ポール95で支持するケーブル70の下方に、他の車両が通過する空間を確保することができる。
【0057】
これに対し、ショベル1と外部電源80とを接続するケーブル70を複数の中継台車90で保持している状態で、ショベル1が移動を開始し、これに伴って中継台車90も移動させる場合には、遠隔操作装置を操作する作業者は、ケーブル支持ポール95を縮める入力操作を行う。この場合、支持部材制御部100は、制御受信装置65で受信した伸縮制御の信号に基づいてケーブル支持ポール95を制御することにより、ケーブル支持ポール95を縮めた状態にする(図7参照)。これにより、ケーブル支持ポール95は、ケーブル支持部98の位置が低くなり、ケーブル支持部98の位置は、地面Gに接近する。このように、ケーブル支持ポール95を縮めた場合には、ケーブル支持ポール95は、地面Gからの重心の高さが低くなるため、中継台車90全体の重心の高さも低くなる。
【0058】
中継台車90の移動時は、ケーブル支持ポール95を縮めて中継台車90の重心の高さを低くした状態で、走行装置50に走行動作を行わせることにより移動させる。また、ケーブル支持ポール95を縮めた状態で中継台車90を所望の位置に移動させ、中継台車90の移動を停止させた場合には、遠隔操作によって再びケーブル支持ポール95を伸ばす。これにより、中継台車90の停止時には、ケーブル支持ポール95で支持するケーブル70の下方に、他の車両が通過する空間を確保する。
【0059】
<実施形態2の要部の効果>
以上の本実施形態2に係る中継台車90は、ケーブル支持ポール95を伸縮させることにより、ケーブル70の高さを変化させて支持することが可能に設けられているため、中継台車90が停止している場合には、ケーブル支持ポール95を伸ばすことにより、ケーブル70を高い位置で支持することができる。これにより、より確実に、ケーブル70の下方を他の車両が通過することができるようにすることができる。また、ショベル1の移動に伴って中継台車90を移動させる場合には、ケーブル支持ポール95を縮めることにより、中継台車90の重心の高さを低くすることができる。これにより、中継台車90の移動時における安定性を向上させることができ、ケーブル支持ポール95を伸ばした状態における移動と比較して、高速で移動することを可能にすることができる。この結果、より確実にケーブル70の損傷を防止すると共に、中継台車90の移動時における安定性を向上させることができる。また、このように中継台車90の移動時における安定性を向上させることにより、中継台車90を、より高速で移動させることができ、中継台車90を、より適切な位置に移動させたり、移動時間を短くすることに伴って作業時間全体の短縮化を図ったりすることができる。
【0060】
<変形例>
上述した中継台車30、90では、ケーブルドラム34は、外部からの力によって回転可能に設けられているが、ケーブルドラム34は、自ら回転可能に設けられていてもよい。例えば、ケーブルドラム34には、電力によって駆動する電気モータ(図示省略)が連結され、この電気モータを駆動させることにより、ケーブルドラム34は、円筒形の回転軸を中心として回転可能に設けられていてもよい。ケーブルドラム34は、電気モータの駆動力によって回転することにより、ケーブル70の巻き取りや送り出しを行うことができる。
【0061】
また、ケーブルドラム34が電動で回転可能な場合は、ケーブルドラム34は、走行モータ52等と同様に電子制御装置60に接続され、遠隔操作装置による遠隔操作が可能に設けられているのが好ましい。このように、ケーブルドラム34を遠隔操作によって回転可能にすることにより、より確実に、地面Gからのケーブル70との高さを確保することができる。
【0062】
例えば、ショベル1の移動に伴って中継台車30、90を移動させる際に、中継台車30、90同士の距離が、現在双方の間に位置するケーブル70の長さよりも長くなる場合には、ケーブルドラム34からケーブル70を送り出す。反対に、中継台車30、90同士の距離が、現在双方の間に位置するケーブル70の長さよりも短くなる場合には、ケーブルドラム34によるケーブル70の巻き取り量を増加ささせる。これらにより、中継台車30、90同士の間に位置するケーブル70の長さは、中継台車30、90同士の距離に適した長さになる。
【0063】
このように、ショベル1の移動時には、遠隔操作によって各中継台車30、90を移動させてショベル1と中継台車30との間や中継台車30間の距離等を調節する他に、必要に応じて各中継台車30、90のケーブルドラム34を遠隔制御し、ケーブル70の巻き取り量を調節する。これにより、各中継台車30、90のケーブル支持ポール40、95間に掛け渡されるケーブル70の高さを調節することができるため、ケーブル70と地面Gとの間の距離を、中継台車30、90以外の車両が通過可能な距離に確保することができ、他の車両の走行路を確保することができる。従って、より確実にケーブル70の損傷を防止し、車両の走行路とケーブル70との干渉を防ぐことができる。
【0064】
図9は、実施形態1に係る中継台車の変形例を示す説明図である。上述した中継台車30、90では、ケーブル支持ポール40、95は、1つの中継台車30、90に1本が設けられているのみであるが、ケーブル支持ポール40、95は、中継台車30、90に複数設けられていてもよい。例えば、図9に示すように、実施形態1に係る中継台車30にケーブル支持ポール40を2本設けてもよい。この場合、ケーブルドラム34に巻かれているケーブル70において、ケーブルドラム34の軸部35の端部からケーブルドラム34の外に延びている部分と、軸部35の外周面に巻き取られている部分からケーブルドラム34の外に延びている部分との双方が、それぞれケーブル支持ポール40に支持される。これにより、中継台車30が有するケーブルドラム34で保持されるケーブル70は、中継台車30から2方向へ延びる部分が、共に地面Gから離れた位置で支持されることになる。
【0065】
このため、ショベル1が使用される作業場内でケーブル70が配設される部分において、車両を通過させることができる部分を増やすことができる。即ち、ケーブル70が配設される部分において、ケーブル70が地面Gから離れた部分を増加させることができ、ダンプトラック85等の他の車両が通過することができる部分を増やすことができる。従って、車両の走行路とケーブル70との干渉を防ぎ、ケーブル70の損傷を防止することができると共に、生産性の向上を図ることができる。
【0066】
また、中継台車30にケーブル支持ポール40を2本設けた場合、3台以上の中継台車30を用いてケーブル70を保持する場合でも、それぞれの中継台車30間に位置するケーブル70は、ケーブル支持ポール40によって支持されることになる。このため、ケーブル70を、長い距離に渡って地面Gから上方に離して配設することができるので、ダンプトラック85等の他の車両が通過することができる部分を、より確実に増やすことができ、生産性をより向上させることができる。
【0067】
図10は、実施形態1に係る中継台車の変形例を示す説明図である。上述した中継台車30、90では、走行装置50は、中継台車30、90に搭載されるバッテリの電力によって走行するが、ケーブル70によって供給された電気により走行動作を行ってもよい。例えば、図10に示すように、実施形態1に係る中継台車30に、ケーブル70が接続される送電中継部110を設け、さらに、走行装置50の走行モータ12も、この送電中継部110に接続することにより、ケーブル70により供給される電力で走行モータ12を駆動させてもよい。
【0068】
詳しくは、実施形態1に係る中継台車30では、1本のケーブル70をケーブルドラム34で保持することにより中継を行っているが、この場合における中継台車30は、電源側から供給される電気を受けるケーブル70である受電側ケーブル111と、受電側ケーブル111によって供給された電気を送出する送電側ケーブル112との中継を行う。送電中継部110には、この受電側ケーブル111と送電側ケーブル112との双方を接続することにより、送電する電力の中継を送電中継部110で行うと共に、走行モータ12を接続することにより、受電側ケーブル111によって電源側から供給された電力を走行モータ12に供給する。なお、この送電中継部110は、単に受電側ケーブル111と送電側ケーブル112との間において電気的な中継のみを行う装置であってもよく、または、中継台車30の各制御を行う制御部が、送電中継部110を兼ねていてもよい。
【0069】
また、中継台車30が、受電側ケーブル111と送電側ケーブル112との中継を行う場合には、ケーブルドラム34は、このうちの一方のケーブル70を保持する。例えば、ケーブルドラム34は、図10に示すように、送電側ケーブル112のみを保持し、送電側ケーブル112を巻き取る。この場合、受電側ケーブル111は、ケーブルドラム34には巻き取られず、直接送電中継部110に接続される。このように送電中継部110で送電の中継を行う場合において、ケーブルドラム34で巻き取るケーブル70は、受電側ケーブル111でもよい。この場合、送電側ケーブル112は、直接送電中継部110に接続される。
【0070】
中継台車30の移動時には、走行装置50の走行モータ52は、送電中継部110に接続されている受電側ケーブル111から供給された電力によって駆動し、中継台車30は、この電力によって走行する。このように、走行装置50は、受電側ケーブル111によって供給された電気によって走行動作を行うため、ケーブル70が接続された送電中継部110を経由して、走行モータ52に電力を供給することが容易に行える。これによって、中継台車30は、バッテリを搭載する必要がないため、中継台車30の大型化や重量増加を抑制できる。
【0071】
また、このように、中継台車30、90に送電中継部110を設け、受電側ケーブル111と送電側ケーブル112との間での送電の中継を送電中継部110で行う場合には、走行モータ52以外の電気装置を接続してもよい。例えば、ケーブルドラム34を電気モータの駆動力で回転可能にする場合には、この電気モータも送電中継部110に接続し、受電側ケーブル111から供給された電力によってケーブルドラム34を回転させてもよい。
【0072】
また、中継台車30、90で受電側ケーブル111と送電側ケーブル112との間での送電の中継を行う場合には、それぞれのケーブル70用のケーブルドラム34を設けてもよい。図11は、実施形態1に係る中継台車の変形例を示す説明図である。ケーブルドラム34は、図11に示すように、受電側ケーブル111と送電側ケーブル112を、それぞれ独立して巻き取るように2つが設けられる。この場合、2つのケーブルドラム34は、共に受電側ケーブル111によって供給された電力で駆動するように設けられるのが好ましい。
【0073】
つまり、2つのケーブルドラム34のうち、一方のケーブルドラム34は、受電側ケーブル111が巻かれる受電側ドラム116として設けられ、受電側ケーブル111の巻き取りや送り出しが可能に設けられる。また、他方のケーブルドラム34は、送電側ケーブル112が巻かれる送電側ドラム117として設けられ、送電側ケーブル112の巻き取りや送り出しが可能に設けられる。これらのようにケーブル70の巻き取りや送り出しが可能な受電側ドラム116と送電側ドラム117とは、共に中継台車30の走行時における進行方向に回転軸が直交する向きで、且つ、回転軸同士が進行方向に平行に並ぶ状態で配設されている。
【0074】
この受電側ドラム116と送電側ドラム117とは、電子制御装置60によって独立して駆動させることが可能に設けられており、受電側ケーブル111と送電側ケーブル112との巻き取りや送り出しを、独立して行うことが可能になっている。このため、装置間のケーブル70の長さの調整量を大きくすることができる。例えば、送電側ケーブル112のみがケーブルドラム34に巻かれ、受電側ケーブル111は直接送電中継部110に接続されている場合において、中継台車30同士の距離など装置間の距離を調節する場合は、送電側ケーブル112の長さのみを調節することになる。この場合、装置間のケーブル70の長さの調節量が限られるため、装置間の距離を大きくしたり、ケーブル70がたるまないようにしつつ装置間の距離を小さくしたりする場合に、この距離の調節範囲が限られることになる。
【0075】
これに対し、受電側ドラム116と送電側ドラム117とを設けた場合には、受電側ケーブル111や送電側ケーブル112の巻き取り量や送り出し量をそれぞれのケーブルドラム34で調節することができるため、装置間のケーブル70の長さの調節量を、より大きくすることができる。従って、ショベル1の移動に伴って中継台車30を移動させる場合における各装置の移動範囲を、より大きくすることができ、ショベル1によって掘削等の作業を行う際における自由度を向上させることができる。
【0076】
また、上述した中継台車30、90では、ケーブル支持ポール40、95は、上端部にケーブル支持部45、98が設けられ、このケーブル支持部45、98によってケーブル70を支持しているが、ケーブル支持ポール40、95は、これ以外の形態によってケーブル70の支持を行ってもよい。例えば、ケーブル支持ポール40、95は、中空の部材によって形成されると共に、ケーブル70は中空となったケーブル支持ポール40、95の内側部分を通され、さらにケーブル支持ポール40、95の上端部から外に出されることによりケーブル70を支持してもよい。このようにケーブル70を支持した場合でも、ケーブル70はケーブル支持ポール40、95の上端部から他の機械や装置にかけて接続されるため、ケーブル支持ポール40、95は、ケーブル70を地面Gから離した状態で支持することができる。
【0077】
また、上述した中継台車30、90では、ショベル1の運転者等、中継台車30を直接視認することができる作業者が遠隔操作装置によって遠隔操作を行うことにより、作動可能になっているが、遠隔操作は、これ以外の者が行ってもよい。例えば、作業場の状態を遠方から監視することができ、複数の作業機械の状態を管理することができる基地局がある場合には、この基地局から遠隔操作を行うことにより、中継台車30、90を作動させてもよい。この場合は、作業場の映像を基地局に送り、その映像を見ている基地局の人が、中継台車30、90を遠隔操作によって作動させる。このように、中継台車30、90を遠隔操作する人は、作業現場の状況を認識できる者であれば、遠隔操作をする場所や認識の形態は問わない。
【0078】
また、中継台車30、90の操作は、遠隔操作以外で行ってもよく、中継台車30、90を直接操作することによって作動させてもよい。この場合、中継台車30、90上には、中継台車30、90の移動や、ケーブルドラム34の回転、ケーブル支持ポール95の伸縮等を行わせることができるジョイスティック等の操作部を設け、操作部を操作することにより、中継台車30、90を作動させてもよい。
【0079】
また、実施形態2に係る中継台車90では、中継台車90の移動の停止時は、ケーブル支持ポール95を伸ばしているが、中継台車90が停止した場合でも、必ずしもケーブル支持ポール95を伸ばさなくてもよい。例えば、複数の中継台車90によってケーブル70を保持する場合において、他の車両の走行路が決まっている場合には、その走行路上に位置するケーブル70を支持するケーブル支持ポール95のみを伸ばしてもよい。これにより、伸ばす必要のないケーブル支持ポール95は、中継台車90が停止した場合でも縮めた状態を維持するため、中継台車90の停止時における安定性を確保しつつ、他の車両が通過する走行路とケーブル70とが干渉することを防ぐことができる。従って、ケーブル70の損傷を防止しつつ、ショベル1での作業時の安全性を確保することができる。
【0080】
また、上述した中継台車30、90では、移動状態に関わらず走行装置50のみが接地しているが、他の部位を接地させてもよい。例えば、台車本体31に、走行装置50の接地範囲よりも広い接地範囲で地面Gに接地することにより、中継台車30、90の安定性を確保することができ、且つ、格納自在に設けられるアウトリガーを設けてもよい。台車本体31から上方に向かって延びるケーブル支持ポール40、95は、重心位置が高く、また、このケーブル支持ポール40、95で支持するケーブル70も高い位置に配設されるため、ケーブル70を支持する状態の中継台車30、90は、重心位置が高くなり易くなる。特に、鉱山機械で使用するケーブル70は、太く重たいため、このようなケーブル70を中継台車30、90で支持する場合、より重心位置が高くなり易くなる。このため、格納自在のアウトリガーを設け、中継台車30、90の停止時には、アウトリガーを接地させて、中継台車30、90を、より安定させた状態で停止させてもよい。これにより、中継台車30、90の転倒を防止することができ、より確実に、ショベル1での作業時における安全性を向上させることができる。
【0081】
また、上述した中継台車30、90を介して電気を供給する電動式作業機械としては、一例として遠隔操作型のショベル1を用いて説明しているが、電動式作業機械は、これ以外のものでもよい。電動式作業機械は、外部電源80から供給される電気によって作動すると共に、ケーブル70が接続された状態で移動するものであれば、ショベル1以外の作業機械であってもよく、その形態は問わない。
【符号の説明】
【0082】
1 ショベル
2 上部旋回体
8 ポンプユニット
10 下部走行体
11、51 履帯
12、52 走行モータ
16 スイングサークル
20 電力供給システム
30、90 中継台車
31 台車本体
34 ケーブルドラム
40、95 ケーブル支持ポール
45、98 ケーブル支持部
50 走行装置
60 電子制御装置
61 移動制御部
70 ケーブル
71 ポール側部
72 非支持側部
80 外部電源
85 ダンプトラック
100 支持部材制御部
110 送電中継部
111 受電側ケーブル
112 送電側ケーブル
116 受電側ドラム
117 送電側ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電を行うケーブルを保持するケーブル保持部と、
前記ケーブル保持部で保持する前記ケーブルを、前記ケーブルが配設される位置に交差する走行路を走行する車両の高さよりも高い位置で支持するケーブル支持ポールと、
前記ケーブル保持部と前記ケーブル支持ポールとに連結され、且つ、前記ケーブル保持部と前記ケーブル支持ポールとを移動させることができるように走行動作を行う走行装置と、
を備えることを特徴とするポール付ケーブル中継台車。
【請求項2】
前記ケーブル支持ポールを複数備えることを特徴とする請求項1に記載のポール付ケーブル中継台車。
【請求項3】
前記ケーブル支持ポールは、地面からの前記ケーブルの高さを変化させて支持することが可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のポール付ケーブル中継台車。
【請求項4】
前記ケーブル保持部は、前記ケーブルの巻き取りと送り出しとが可能であり、前記ケーブルの巻き取り量を調節することにより、地面からの前記ケーブルの高さの調節が可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポール付ケーブル中継台車。
【請求項5】
前記走行装置は、前記ケーブルによって供給された電気により前記走行動作を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポール付ケーブル中継台車。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の記載のポール付ケーブル中継台車と、
前記ポール付ケーブル中継台車で中継される前記ケーブルによって供給される電力によって駆動する電動式作業機械と、
を備えることを特徴とする電動式作業機械への電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−5607(P2013−5607A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134830(P2011−134830)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)