説明

ポール用根巻き装置

【課題】掘削土量を抑制できるとともに全方位の力に対する傾斜予防効果を確保でき、かつポール径の変化に対応できるポール用根巻き装置を提供する。
【解決手段】ポールPを建柱する際の地中部となる箇所にてポールPの周囲に配置する複数に分割した根巻きブロック11と、これらの根巻きブロック11を相互に緊結してポールPの周囲に固定する緊結手段12とを備えている。緊結手段12は、複数のブロック本体13,13間に挿通した複数のボルト12bと、これらのボルト12bに螺合したナット12nとで構成する。根巻きブロック11は、ブロック本体13の横断面の内面側に、中央がくの字状に凹んだ2平面により、ポールPを包持する包持面14を形成し、ブロック本体13の横断面の外面側に、抵抗面15を円弧状に膨出形成し、ポールPとほぼ同心状に設置する。この円弧状の抵抗面15に、ボルト12bの頭部およびナット12nを着座させる凹部16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポールを建柱する際の地中部となる箇所に装着されるポール用根巻き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート電柱を建柱する際、電柱の沈下および傾斜を予防する目的で、電柱の地中に埋設される部分に取り付けて用いるコンクリート根枷および根巻き(「根固め」とも呼ばれる)がある。
【0003】
コンクリート根枷は、電柱の一側面に取り付ける平板状のもの(例えば特許文献1参照)、電柱の一側面に取り付ける角翼状のもの(例えば特許文献2参照)、および電柱などのポールを包持して取り付ける角ブロック状のもの(例えば特許文献3参照)が知られている。
【0004】
ポール用根巻き装置(根固め)は、工事基準にしたがって現場で施工する鉄筋コンクリート工事により行われており、ポールを挿入する穴を設けた角ブロック状のもの(例えば特許文献4参照)、ポールを包持して取り付ける角ブロック状のもの(例えば特許文献5参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭10−14195号公報(第1頁、第4図)
【特許文献2】実開平5−16841号公報(第1頁、図10)
【特許文献3】特開平2−147724号公報(第2頁、第1図)
【特許文献4】特開2001−20303号公報(第3頁、図1)
【特許文献5】特開2008−13951号公報(第6頁、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2のように、電柱側面に取り付ける根枷は、充分な沈下および傾斜予防効果を持たせようとすれば、横方向に大きくしなければならず、取り付けのためには掘削土量が多くなる。
【0007】
また、根枷の平面に対して直角方向に作用する力への傾斜予防効果は期待できても、電柱を傾斜させようとする力の作用する方向が根枷の平面と直角ではない場合、抵抗する面積は、力の作用する方向と根枷の平面とが成す角度の正弦関数を乗じたものとなるため、傾斜予防効果は低くならざるを得ない。
【0008】
特許文献4のように、ポールを挿入するための穴を設けた一体型の根巻きコンクリートは、建柱するポールの周囲を大きく掘削する必要があり、掘削土量が多くなる。
【0009】
特許文献3および特許文献5のように、ポールを包持して取り付ける角ブロック状の根枷および根巻きも、同様に建柱するポールの周囲を大きく掘削する必要があり、掘削土量が多くなる。
【0010】
また、ポールを包持するために凹ませた部分は、半円弧状であるため、ポールの直径の変化に応じて、異なる円弧状の凹みを有する根枷または根巻きを用意するか、半円弧状の凹みをポールの直径より大きく造作しておき、詰め物を充填する必要がある。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、掘削土量を抑制できるとともに全方位の力に対する傾斜予防効果を確保でき、かつポール径の変化に対応できるポール用根巻き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された発明は、ポールを建柱する際の地中部となる箇所にて上記ポールの周囲に配置される複数に分割された根巻きブロックと、これらの複数の根巻きブロックを相互に緊結して上記ポールの周囲に固定する緊結手段とを備え、上記根巻きブロックは、ブロック本体と、上記ブロック本体の横断面の内面側に中央がくの字状に凹んだ2平面により形成され上記ポールを包持する包持面と、上記ブロック本体の横断面の外面側に湾曲状に膨出形成された抵抗面とを具備したポール用根巻き装置である。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のポール用根巻き装置における緊結手段が、複数のブロック本体間に挿通されたボルトと、上記ボルトに螺合されたナットとを備え、上記ブロック本体の円弧状の抵抗面は、上記ボルトの頭部およびナットを着座させる凹部を備えたものである。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のポール用根巻き装置における根巻きブロックのブロック本体が、コンクリートによりプレキャスト成形されたものである。
【0015】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3いずれか記載のポール用根巻き装置における根巻きブロックの包持面が、ブロック本体の上半部に設けられ、上記包持面の下端に形成されてポールの下端面を係止するポール下端係止面を備えたものである。
【0016】
請求項5に記載された発明は、請求項4記載のポール用根巻き装置において、ブロック本体の上部より下部の抵抗面が拡大形成されたものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、ポールを建柱する際の地中部となる箇所にて上記ポールの周囲に配置される複数に分割された根巻きブロックを緊結手段により相互に緊結して上記ポールの周囲に固定し、上記根巻きブロックのブロック本体の横断面の外面側に湾曲状に膨出形成された抵抗面を設置するので、費用がかさむ場所打ち鉄筋コンクリート工事によるポールの根固めに対して、本ポール用根巻き装置は、スクリューオーガを用いた建柱工事に対応でき、掘削土量を抑制できる。さらに、複数の根巻きブロックの外面側に湾曲状に膨出形成された抵抗面を設置するので、投影面がどの方向からも均一となる外形断面を有したポール用根巻き装置にすることができ、傾斜予防効果に対する方向性を排除でき、ポールに作用する全方位の力に対する傾斜予防効果を確保できる。かつ、複数に分割した根巻きブロックのブロック本体の横断面の内面側に中央がくの字状に凹んだ2平面により形成された包持面で上記ポールを包持するようにしたので、ポールの直径の変化に応じて包持面でのポール接触部を移動させることで、ポール径の変化に対応できるとともに、複数の根巻きブロックの包持面は、4箇所以上のポール軸方向の線接触部によりポールを確実に包持できる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、上記ブロック本体の円弧状の抵抗面は、緊結手段として複数のブロック本体間に挿通されたボルトの頭部および上記ボルトに螺合されたナットを着座させる凹部を備えたので、上記凹部に着座したボルトおよびナットの螺合により強力な締着力が得られるとともに、ボルトおよびナットを凹部内に嵌入して抵抗面から突出することを防止または抑制できるので、スクリューオーガを用いた建柱工事ではポールの下部にボルトおよびナットにより緊結された複数の根巻きブロックを、それらの抵抗面とほぼ同径の掘削孔に円滑に挿入することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、複数に分割された根巻きブロックのブロック本体をコンクリートによりプレキャスト成形することで、ポール用根巻き装置として必要な重量を確保できるとともに、ポール用根巻き装置を分割したプレキャスト製品とすることで、1ピースの製品を小型軽量化でき、製品の共通化が可能であるとともに、小型軽量化によって、運搬時などの人力作業の軽減、掘削作業の低減を図れる。また、プレキャスト製品によって、工期の短縮、適切な位置への設置が図れるとともに、製品の共通化によって、量産でき経済的となる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、根巻きブロックの包持面はブロック本体の上半部に設けられ、上記包持面の下端に形成されたポール下端係止面によりポールの下端面を係止するので、ポール用根巻き装置をポールの下端面を受けて延長するように取り付けることができ、転倒土圧作用に対して有効に抵抗力を発揮できる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、ブロック本体の上部より下部の抵抗面が拡大形成されたので、抵抗面が上下方向全長にわたってストレートの場合より、転倒土圧作用に対してより有効に抵抗力を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る第1実施の形態のポール用根巻き装置A1の取付状態を示す平断面である。
【図2】同上根巻き装置A1の取付状態を示す縦断図である。
【図3】(a)は同上根巻き装置A1の根巻きブロック1ピースの正面図、(b)はその右側面図、(c)はその平面図、(d)はその背面図、(e)は(a)のe−e線断面図、(f)は(a)のf−f線断面図である。
【図4】(A)は同上根巻き装置A1により小径ポールP1を包持する場合の平面図、(a)はその場合の正面図、(B)は同上根巻き装置A1により中間径ポールP2を包持する場合の平面図、(b)はその場合の正面図、(C)は同上根巻き装置A1により大径ポールP3を包持する場合の平面図、(c)はその場合の正面図である。
【図5】本発明に係る第2実施の形態のポール用根巻き装置A2の取付状態を示す平断面である。
【図6】同上根巻き装置A2の取付状態を示す正面図である。
【図7】(a)は同上根巻き装置A2の根巻きブロック1ピースの正面図、(b)はその右側面図、(c)はその平面図、(d)はその背面図、(e)は(a)のe−e線断面図、(f)は(a)のf−f線断面図である。
【図8】(A)は同上根巻き装置A2により小径ポールP1を包持する場合の平面図、(a)はその場合の正面図、(B)は同上根巻き装置A2により中間径ポールP2を包持する場合の平面図、(b)はその場合の正面図、(C)は同上根巻き装置A2により大径ポールP3を包持する場合の平面図、(c)はその場合の正面図である。
【図9】本発明に係る第3実施の形態のポール用根巻き装置B1の取付状態を示す平断面である。
【図10】同上根巻き装置B1の取付状態を示す正面図である。
【図11】(a)は同上根巻き装置B1の根巻きブロック1ピースの正面図、(b)はその右側面図、(c)はその平面図、(d)はその背面図、(e)は(a)のe−e線断面図、(f)は(a)のf−f線断面図である。
【図12】(A)は同上根巻き装置B1により小径ポールP1を包持する場合の平面図、(a)はその場合の正面図、(B)は同上根巻き装置B1により中間径ポールP2を包持する場合の平面図、(b)はその場合の正面図、(C)は同上根巻き装置B1により大径ポールP3を包持する場合の平面図、(c)はその場合の正面図である。
【図13】本発明に係る第4実施の形態のポール用根巻き装置B2の取付状態を示す正面図である。
【図14】本発明に係る第5実施の形態のポール用根巻き装置B3の取付状態を示す正面図である。
【図15】地面に立てたポールに作用する力の釣り合い条件を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された第1実施の形態、図5乃至図8に示された第2実施の形態、図9乃至図12に示された第3実施の形態、図13に示された第4実施の形態、図14に示された第5実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0024】
図15は、電柱、アンテナ取付用柱、ネット張設用柱、照明器具取付用柱、ガード取付用柱などのポールPの頂部に作用する水平荷重Foと釣り合う土壌側の抵抗力F1,F2および抵抗モーメントM1,M2を示し、これらの抵抗力F1,F2および抵抗モーメントM1,M2の増大を図るために、ポールPを建柱する際の地中部となる箇所またはポールの下面を受ける位置にてポールPの周囲にポール用根巻き装置A,Bが取付けられる。
【0025】
図1乃至図4に示された第1実施の形態、図5乃至図8に示された第2実施の形態は、ポール用根巻き装置Aに関するものであり、また、図9乃至図12に示された第3実施の形態、図13に示された第4実施の形態、図14に示された第5実施の形態は、ポール用根巻き装置Bに関するものである。
【0026】
先ず、図1乃至図4に示された第1実施の形態の構成を説明する。
【0027】
図1および図2に示されるように、この第1実施の形態は、2分割型3セットのポール用根巻き装置A1であり、各セットのポール用根巻き装置A1は、ポールPを建柱する際の地中部となる箇所にて上記ポールPの周囲に配置される複数に分割された根巻きブロック11と、これらの複数の根巻きブロック11を相互に緊結して上記ポールPの周囲に固定する緊結手段12とを備えている。なお、セット数は、1セットから必要に応じて増加させると良い。
【0028】
上記分割式の根巻きブロック11は、樹脂成型品または金属成型品でもよいが、コンクリートによりプレキャスト成形されたプレキャストコンクリート部材が望ましい。
【0029】
上記緊結手段12は、ワイヤロープでもよいが、複数のブロック本体13,13間に挿通された複数のボルト12bと、これらのボルト12bに螺合されたナット12nとで構成することが望ましく、これらにより分割式の根巻きブロック11を緊結してポールPに取り付けるようにする。
【0030】
上記根巻きブロック11は、上記ブロック本体13の横断面の内面側に、中央がくの字状に凹んだ2平面により、上記ポールPを包持する包持面14が形成され、上記ブロック本体13の横断面の外面側に、抵抗面15が湾曲状すなわち円弧状に膨出形成され、上記ポールPとほぼ同心状に設置されている。この円弧状の抵抗面15には、上記ボルト12bの頭部およびナット12nを着座させる凹部16が形成されている。
【0031】
上記ブロック本体13の2箇所には、上記包持面14から上記凹部16の底面にわたって、緊結手段12のボルト12bを挿入するための挿入穴17が穿設されているが、これらの挿入穴17は、水平方向へ拡幅したスリット状に穿設されているので、上記ポールPの径変化に容易に対応でき、上記ポールPの外径が変化しても、そのポールPの外周面に近接させてボルト12bを規制枠として配置できる。
【0032】
図3に、根巻きブロック11の1ピースの4面図と、2箇所の断面図とを示す。この根巻きブロック11は、左右対称形および上下対称形であるため、正面図(a)、右側面図(b)、平面図(c)および背面図(d)を示し、左側面図および底面図は省略する。
【0033】
図4は、2分割型3セットのポール用根巻き装置A1によって、最小の小径ポールP1を包持する場合(A)および(a)、中間径ポールP2を包持する場合(B)および(b)、最大の大径ポールP3を包持する場合(C)および(c)を、それぞれ示す。なお、この図4では、緊結手段12の図示を省略する。
【0034】
次に、図1乃至図4に示された第1実施の形態の作用効果を説明する。
【0035】
図1および図2に示されるように、2分割型3セットの根巻きブロック11をポールPの周囲に配置し、これらのブロック本体13,13の挿入穴17,17にポールPを挟んでそれぞれボルト12bを挿入し、これらのボルト12bと、各ボルト12bに螺合されたナット12nとをボックスレンチなどの工具で締め付けることで、複数の根巻きブロック11を緊結してポールPの外周面に取り付ける。このとき、2分割型のブロック本体13の横断面の内面側に、くの字状の2平面で形成された包持面14により、4箇所のポール軸方向の線接触部を介して、ポールPの外周面を包持するとともに、ポールPの両側に位置するボルト12bによりポールPを挟持する。
【0036】
このようにしてポールPに取り付けられた複数の根巻きブロック11の抵抗面15は、ほぼ円形断面となるので、建柱工事にスクリューオーガを用いて円形断面の孔を掘削するのみで対応でき、掘削土量を最少にできるとともに、円形の断面を有する複数の根巻きブロック11は、投影面がどの方向からも均一となり、傾斜予防効果に対する方向性を排除して、全方位の力に対する傾斜予防効果を確保できる。
【0037】
図4に示されるように、複数に分割した根巻きブロック11のポールP1,P2,P3を包持する包持面14を中央が凹んだ略くの字状とすることにより、ポールP1,P2,P3の直径の変化に応じて接触部が移動することで、同一形状の根巻きブロック11を用いてポール径の変化に対応できる。すなわち、ポールP1,P2,P3の直径にかかわらず、同一形状の根巻きブロック11を用いても、詰め物を充填しなければならないような隙間が生じることもなく、安定した固定が可能となる。
【0038】
複数の根巻きブロック11に分割することにより、1ピースの根巻きブロック11を軽量化できるとともに、工場で製造して建柱現場で容易に組み立てる方式のプレキャスト製品としたので、コンクリート養生のため、長時間にわたり建柱現場の周囲を規制する必要がない。
【0039】
次に、図5乃至図8に示された第2実施の形態の構成を説明する。
【0040】
図5および図6に示されるように、この第2実施の形態は、3分割型2セットのポール用根巻き装置A2であり、各セットのポール用根巻き装置A2は、ポールPを建柱する際の地中部となる箇所にて上記ポールPの周囲に配置される複数に分割された根巻きブロック21と、これらの複数の根巻きブロック21を相互に緊結して上記ポールPの周囲に固定する緊結手段22とを備えている。なお、セット数は、1セットから必要に応じて増加させると良い。
【0041】
分割式の根巻きブロック21は、樹脂成型品または金属成型品でもよいが、コンクリートによりプレキャスト成形されたプレキャストコンクリート部材が望ましい。
【0042】
上記緊結手段22は、ワイヤロープでもよいが、複数のブロック本体23,23間に挿通された複数のボルト22bと、これらのボルト22bに螺合されたナット22nとで構成することが望ましく、これらにより分割式の根巻きブロック21を緊結してポールPに取り付けるようにする。
【0043】
上記根巻きブロック21は、扇形断面に形成されたブロック本体23の横断面の内面側に、中央がくの字状に凹んだ2平面により、上記ポールPを包持する包持面24が形成され、上記ブロック本体23の横断面の外面側に、抵抗面25が湾曲状すなわち円弧状に膨出形成され、上記ポールPとほぼ同心状に設置されている。この円弧状の抵抗面25には、上記ボルト22bの頭部およびナット22nを着座させる凹部26が形成されている。
【0044】
上記ブロック本体23の2箇所には緊結手段22のボルト22bを挿入するための挿入穴27が穿設されているが、これらの挿入穴27は、抵抗面25側より内面側が漸次大径となるテーパ状に穿設されているので、一方の挿入穴27から対向する他方の挿入穴27にボルト22bを挿入する際に、その他方の挿入穴27の入口が大きく、容易に挿入できる。
【0045】
図7に、根巻きブロック21の1ピースの4面図と、2箇所の断面図とを示す。この根巻きブロック21は、左右対称形および上下対称形であるため、正面図(a)、右側面図(b)、平面図(c)および背面図(d)を示し、左側面図および底面図は省略する。
【0046】
図8は、3分割型2セットのポール用根巻き装置A2によって、最小の小径ポールP1を包持する場合(A)および(a)、中間径ポールP2を包持する場合(B)および(b)、最大の大径ポールP3を包持する場合(C)および(c)を、それぞれ示す。なお、この図8では、緊結手段22の図示を省略する。
【0047】
次に、図5乃至図8に示された第2実施の形態の作用効果を説明する。
【0048】
図5および図6に示されるように、3分割型2セットの根巻きブロック21をポールPの周囲に120°ごとに配置し、これらのブロック本体23,23の直線的に対向する挿入穴27,27にそれぞれボルト22bを挿入し、これらのボルト22bと、各ボルト22bに螺合されたナット22nとをボックスレンチなどの工具で締め付けることで、複数の根巻きブロック21を緊結してポールPの外周面に取り付ける。このとき、3分割型のブロック本体23の横断面の内面側に、くの字状の2平面で形成された包持面24は、6箇所のポール軸方向の線接触部を介して、ポールPの外周面を包持する。
【0049】
このようにしてポールPに取り付けられた複数の根巻きブロック21の断面外形の抵抗面25は、ほぼ円形断面となるので、建柱工事にスクリューオーガを用いて円形断面の孔を掘削するのみで対応でき、掘削土量を最少にできるとともに、円形の断面を有する複数の根巻きブロック21は、投影面がどの方向からも均一となり、傾斜予防効果に対する方向性を排除して、全方位の力に対する傾斜予防効果を確保できる。
【0050】
図8に示されるように、複数に分割した根巻きブロック21のポールP1,P2,P3を包持する包持面24を中央が凹んだ略くの字状とすることにより、ポールP1,P2,P3の直径の変化に応じて接触部が移動することで、同一形状の根巻きブロック21を用いてポール径の変化に対応できる。すなわち、ポールP1,P2,P3の直径にかかわらず、同一形状の根巻きブロック21を用いても、詰め物を充填しなければならないような隙間が生じることもなく、安定した固定が可能となる。
【0051】
複数の根巻きブロック21に分割することにより、1ピースの根巻きブロック21を軽量化できるとともに、工場で製造して建柱現場で容易に組み立てる方式のプレキャスト製品としたので、コンクリート養生のため、長時間にわたり建柱現場の周囲を規制する必要がない。
【0052】
次に、図9乃至図12に示された第3実施の形態の構成を説明する。
【0053】
図9および図10に示されるように、この第3実施の形態は、深根入れ3分割型のポール用根巻き装置B1であり、ポールPを建柱する際の地中部となる箇所にて上記ポールPの下端部周囲に配置される複数に分割された根巻きブロック31と、これらの複数の根巻きブロック31を相互に緊結して上記ポールPの周囲に固定する緊結手段32とを備えている。
【0054】
分割式の根巻きブロック31は、樹脂成型品または金属成型品でもよいが、コンクリートによりプレキャスト成形されたプレキャストコンクリート部材が望ましい。
【0055】
上記緊結手段32は、ワイヤロープでもよいが、複数のブロック本体33,33間に挿通された複数のボルト32bと、これらのボルト32bに螺合されたナット32nとで構成することが望ましく、これらにより分割式の根巻きブロック31を緊結してポールPに取り付けるようにする。
【0056】
上記根巻きブロック31は、上記ブロック本体33の横断面の内面側に、中央がくの字状に凹んだ2平面により、上記ポールPを包持する包持面34が形成され、上記ブロック本体33の横断面の外面側に、抵抗面35が湾曲状すなわち円弧状に膨出形成され、上記ポールPとほぼ同心状に設置されている。この円弧状の抵抗面35には、上記ボルト32bの頭部およびナット32nを着座させる凹部36が形成されている。
【0057】
上記ブロック本体33の8箇所には緊結手段32のボルト32bを挿入するための挿入穴37が穿設されているが、これらの挿入穴37は、抵抗面35側より内面側が漸次大径となるテーパ状に穿設されているので、一方の挿入穴37から対向する他方の挿入穴37にボルト32bを挿入する際に、その他方の挿入穴37の入口が大きく、容易に挿入できる。
【0058】
上記根巻きブロック31の包持面34は、ブロック本体33の上半部に設けられ、上記包持面34の下端には、ポールPの下端面を係止するポール下端係止面38が形成されている。ブロック本体33の下半部は、扇形断面に形成されている。
【0059】
図11に、根巻きブロック31の1ピースの4面図と、2箇所の断面図とを示す。この根巻きブロック31は、左右対称形および上下対称形であるため、正面図(a)、右側面図(b)、平面図(c)および背面図(d)を示し、左側面図および底面図は省略する。
【0060】
図12は、深根入れ3分割型のポール用根巻き装置B1によって、最小の小径ポールP1を包持する場合(A)および(a)、中間径ポールP2を包持する場合(B)および(b)、最大の大径ポールP3を包持する場合(C)および(c)を、それぞれ示す。なお、この図12では、緊結手段32の図示を省略する。
【0061】
次に、図9乃至図12に示された第3実施の形態の作用効果を説明する。
【0062】
図9および図10に示されるように、3分割型の根巻きブロック31をポールPの下端部周囲に120°ごとに配置し、これらのブロック本体33,33の直線的に対向する挿入穴37,37にそれぞれボルト32bを挿入し、これらのボルト32bと、各ボルト32bに螺合されたナット32nとをボックスレンチなどの工具で締め付けることで、3組の根巻きブロック31を緊結してポールPの下端部外周面に取り付ける。このとき、3分割型のブロック本体33の横断面の内面側に、くの字状の2平面で形成された包持面34は、6箇所のポール軸方向の線接触部を介して、ポールPの外周面を包持する。
【0063】
このようにしてポールPの下端部に取り付けられた複数の根巻きブロック31の抵抗面35は、ほぼ円形断面となるので、建柱工事にスクリューオーガを用いて円形断面の孔を掘削するのみで対応でき、掘削土量を最少にできるとともに、円形の断面を有する複数の根巻きブロック31は、投影面がどの方向からも均一となり、傾斜予防効果に対する方向性を排除して、全方位の力に対する傾斜予防効果を確保できる。
【0064】
特に、根巻きブロック31の包持面34はブロック本体33の上半部に設けられ、上記包持面34の下端に形成されたポール下端係止面38によりポールPの下端面を係止するので、コンクリート製のポール用根巻き装置B1をコンクリート製のポールPの下面を受けて延長するように取り付けることができ、図15に示すような転倒土圧作用に対して有効に抵抗力を発揮できる。
【0065】
図12に示されるように、複数に分割した根巻きブロック31のポールP1,P2,P3を包持する包持面34を中央が凹んだ略くの字状とすることにより、ポールP1,P2,P3の直径の変化に応じて接触部が移動することで、同一形状の根巻きブロック31を用いてポール径の変化に対応できる。すなわち、ポールP1,P2,P3の直径にかかわらず、同一形状の根巻きブロック31を用いても、詰め物を充填しなければならないような隙間が生じることもなく、安定した固定が可能となる。
【0066】
複数の根巻きブロック31に分割することにより、1ピースの根巻きブロック31を軽量化できるとともに、工場で製造して建柱現場で容易に組み立てる方式のプレキャスト製品としたので、コンクリート養生のため、長時間にわたり建柱現場の周囲を規制する必要がない。
【0067】
次に、図13に示された第4実施の形態および図14に示された第5実施の形態は、図9乃至図12に示された第3実施の形態における深根入れ3分割型の外形の変形例(拡大根巻き)であり、図13は、複数の根巻きブロック31aの抵抗面35aがブロック本体33aの上端部より下端部にわたって漸次拡大形成されたコンクリート製のポール用根巻き装置B2を示し、図14は、複数の根巻きブロック31bのブロック本体33bの上半部の抵抗面35b1より下半部の抵抗面35b2が段差部39を介して拡大形成されたコンクリート製のポール用根巻き装置B3を示す。
【0068】
そして、これらの図13および図14に示された各実施の形態によれば、図9乃至図12に示された第3実施の形態と同様の作用効果が得られるとともに、ブロック本体33aの抵抗面35aの上部より下部が拡大形成され、またはブロック本体33bの上部の抵抗面35b1より下部の抵抗面35b2が拡大形成されたので、抵抗面が上下方向全長にわたってストレートの場合より、ポールPの転倒土圧作用に対してより有効に抵抗力を発揮できる。
【0069】
以上の各実施の形態に共通の作用効果は、次のとおりである。
【0070】
ポールPを建柱する際の地中部となる箇所にて上記ポールPの周囲に配置される複数に分割された根巻きブロック11,21,31を緊結手段12,22,32により相互に緊結して上記ポールPの周囲に固定し、上記根巻きブロック11,21,31のブロック本体13,23,33の横断面の外面側に円弧状に形成された抵抗面15,25,35を上記ポールPとほぼ同心状に設置するので、費用がかさむ場所打ち鉄筋コンクリート工事によるポールPの根固めに対して、本ポール用根巻き装置A1,A2,B1,B2,B3は、スクリューオーガを用いた建柱工事に対応でき、掘削土量を抑制できる。
【0071】
さらに、複数の根巻きブロック11,21,31の外面側に円弧状に形成された抵抗面15,25,35を上記ポールPとほぼ同心状に設置するので、投影面がどの方向からも均一となる円形の外形断面を有したポール用根巻き装置A1,A2,B1,B2,B3にすることができ、傾斜予防効果に対する方向性を排除でき、ポールPに作用する全方位の力に対する傾斜予防効果を確保できる。
【0072】
かつ、複数に分割した根巻きブロック11,21,31のブロック本体13,23,33の横断面の内面側に中央がくの字状に凹んだ2平面により形成された包持面14,24,34で上記ポールP1,P2,P3を包持するようにしたので、ポールP1,P2,P3の直径の変化に応じて包持面14,24,34でのポール接触部を移動させることで、ポール径の変化に対応できるとともに、複数の根巻きブロック11,21,31の包持面14,24,34は、4箇所以上のポール軸方向の線接触部によりポールP1,P2,P3を確実に包持できる。
【0073】
上記ブロック本体13,23,33の円弧状の抵抗面15,25,35は、緊結手段として複数のブロック本体13,13間、23,23間、33,33間に挿通されたボルト12b,22b,32bの頭部および上記ボルト12b,22b,32bに螺合されたナット12n,22n,32nを着座させる凹部16,26,36を備えたので、上記凹部16,26,36に着座したボルト12b,22b,32bおよびナット12n,22n,32nの螺合により強力な締着力が得られるとともに、これらのボルト12b,22b,32bおよびナット12n,22n,32nを凹部16,26,36内に嵌入して抵抗面15,25,35から突出することを防止または抑制できるので、スクリューオーガを用いた建柱工事ではポールPの下部にボルト12b,22b,32bおよびナット12n,22n,32nにより緊結された複数の根巻きブロック11,21,31を、それらの抵抗面15,25,35とほぼ同径の掘削孔に円滑に挿入することができる。
【0074】
複数に分割された根巻きブロック11,21,31のブロック本体13,23,33をコンクリートによりプレキャスト成形することで、ポール用根巻き装置として必要な重量を確保できるとともに、ポール用根巻き装置を分割したプレキャスト製品とすることで、1ピースの製品を小型軽量化でき、製品の共通化が可能であるとともに、小型軽量化によって、運搬時などの人力作業の軽減、掘削作業の低減を図れる。また、プレキャスト製品によって、工期の短縮、適切な位置への設置が図れるとともに、製品の共通化によって、量産でき経済的となる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、ポール用根巻き装置を製造、販売などする産業において利用可能性を備えている。
【符号の説明】
【0076】
P ポール
A1,A2,B1,B2,B3 ポール用根巻き装置
11,21,31 根巻きブロック
12,22,32 緊結手段
12b,22b,32b ボルト
12n,22n,32n ナット
13,23,33 ブロック本体
14,24,34 包持面
15,25,35 抵抗面
16,26,36 凹部
38 ポール下端係止面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポールを建柱する際の地中部となる箇所にて上記ポールの周囲に配置される複数に分割された根巻きブロックと、
これらの複数の根巻きブロックを相互に緊結して上記ポールの周囲に固定する緊結手段とを備え、
上記根巻きブロックは、
ブロック本体と、
上記ブロック本体の横断面の内面側に中央がくの字状に凹んだ2平面により形成され上記ポールを包持する包持面と、
上記ブロック本体の横断面の外面側に湾曲状に膨出形成された抵抗面と
を具備したことを特徴とするポール用根巻き装置。
【請求項2】
緊結手段は、複数のブロック本体間に挿通されたボルトと、上記ボルトに螺合されたナットとを備え、
上記ブロック本体の円弧状の抵抗面は、上記ボルトの頭部およびナットを着座させる凹部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のポール用根巻き装置。
【請求項3】
根巻きブロックのブロック本体は、コンクリートによりプレキャスト成形された
ことを特徴とする請求項1または2記載のポール用根巻き装置。
【請求項4】
根巻きブロックの包持面は、ブロック本体の上半部に設けられ、
上記包持面の下端に形成されてポールの下端面を係止するポール下端係止面を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のポール用根巻き装置。
【請求項5】
ブロック本体の上部より下部の抵抗面が拡大形成された
ことを特徴とする請求項4記載のポール用根巻き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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