マイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置
【課題】マイクロアクチュエータのヒステリシス特性に適合したシーク動作を実現する。
【解決手段】磁気ディスク装置のサーボコントローラは、マイクロアクチュエータ(MA)推定器とVCMアクチュエータ(VCMA)コントローラとフィルタと加算器とを具備する。MA推定器は、マイクロアクチュエータ(MA)に与えられるべき操作量からMAの第1の変位を推定する。VCMAコントローラは、目標トラックとヘッドの位置及び推定された第1の変位から推定されるVCMアクチュエータ(VCMA)の位置との間の位置誤差に基づいて、VCMAを制御する。フィルタは、所定のシーク動作におけるVCMAの状態から、MAのヒステリシスによるMAの変位の遅れに対応するVCMAの位置を推定し、推定された位置からMAの前記遅れの変位である第2の変位を推定する。加算器は、推定された第2の変位をMAの入力に加算する
【解決手段】磁気ディスク装置のサーボコントローラは、マイクロアクチュエータ(MA)推定器とVCMアクチュエータ(VCMA)コントローラとフィルタと加算器とを具備する。MA推定器は、マイクロアクチュエータ(MA)に与えられるべき操作量からMAの第1の変位を推定する。VCMAコントローラは、目標トラックとヘッドの位置及び推定された第1の変位から推定されるVCMアクチュエータ(VCMA)の位置との間の位置誤差に基づいて、VCMAを制御する。フィルタは、所定のシーク動作におけるVCMAの状態から、MAのヒステリシスによるMAの変位の遅れに対応するVCMAの位置を推定し、推定された位置からMAの前記遅れの変位である第2の変位を推定する。加算器は、推定された第2の変位をMAの入力に加算する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置の高容量化に伴い、高トラック密度化が進んでいる。高トラック密度化により、高精度なヘッド位置決めがますます要求されている。この高精度なヘッド位置決めのためには、ヘッド位置決め制御における高速応答性を向上すること、つまり制御周波数帯域を高くすることが必要となる。そこで、最近は、ボイスコイルモータアクチュエータ(VCMアクチュエータ)に加えて、高周波数の追従性に優れたマイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置、つまり2段アクチュエータ(Dual Stage Actuator: DSA)構造を適用した磁気ディスク装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3679956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロアクチュエータは、当該マイクロアクチュエータを構成する素子(例えば圧電素子)に電圧が印加されることにより駆動される。マイクロアクチュエータの変位は、電圧が増加する方向に当該マイクロアクチュエータに電圧が印加される場合と、電圧が減少する方向に当該マイクロアクチュエータに電圧が印加される場合とで異なる。つまり、マイクロアクチュエータは、印加される電圧に対してヒステリシス特性を有している。
【0005】
マイクロアクチュエータのヒステリシス特性は、VCMアクチュエータ及びマイクロアクチュエータを併用して目標トラックにヘッドを移動するためのシーク動作に影響を及ぼす。
【0006】
本発明の目的は、マイクロアクチュエータのヒステリシス特性に適合したシーク動作を実現できるマイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、磁気ディスク装置は、VCMアクチュエータと、マイクロアクチュエータと、サーボコントローラとを具備する。前記VCMアクチュエータは、ヘッドを粗動させる。前記マイクロアクチュエータは、前記ヘッドを微動させる。前記サーボコントローラは、前記VCMアクチュエータ及び前記マイクロアクチュエータを併用して前記ヘッドを目標トラックに移動させるための所定のシーク動作を制御する。前記サーボコントローラは、マイクロアクチュエータコントローラと、マイクロアクチュエータ推定器と、VCMアクチュエータコントローラと、フィルタと、加算器とを具備する。前記マイクロアクチュエータコントローラは、前記目標トラックまたは前記マイクロアクチュエータに対応する第1の目標軌道と前記ヘッドの位置との間の位置誤差に基づいて、前記マイクロアクチュエータを制御する。前記マイクロアクチュエータ推定器は、前記マイクロアクチュエータに与えられるべき第1の操作量から線形モデルにより前記マイクロアクチュエータの第1の変位を推定する。前記VCMアクチュエータコントローラは、前記目標トラックまたは前記VCMアクチュエータに対応する第2の目標軌道と前記ヘッドの位置及び前記推定された第1の変位から推定される前記VCMアクチュエータの位置との間の位置誤差に基づいて、前記VCMアクチュエータを制御する。前記フィルタは、前記所定のシーク動作における前記VCMアクチュエータの状態から、前記マイクロアクチュエータのヒステリシスによる前記マイクロアクチュエータの変位の遅れに対応する前記VCMアクチュエータの位置を推定し、前記推定された位置から前記マイクロアクチュエータの前記遅れの変位である第2の変位を推定する。前記加算器は、前記推定された第2の変位または前記推定された第2の変位に対応する第2の操作量を、前記マイクロアクチュエータコントローラの入力または前記マイクロアクチュエータの入力に加算する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置の典型的な構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態で適用されるサーボコントローラの典型的な構成を示すブロック図。
【図3】図2に示すサーボコントローラにおいて、マイクロアクチュエータのヒステリシス特性を考慮せずに、当該マイクロアクチュエータを利用して1トラックシーク動作が実行される場合における、時間に対する、VCMアクチュエータ、マイクロアクチュエータ及びヘッドのそれぞれの位置を示す図。
【図4】マイクロアクチュエータのヒステリシス特性の例を示す図。
【図5】1トラックシーク動作における時間に対するマイクロアクチュエータの変位を、推定された変位及び実際の変位のそれぞれについて示す図。
【図6】ヒステリシスがある場合のマイクロアクチュエータ電圧に対するマイクロアクチュエータの変位をヒステリシスがない場合のマイクロアクチュエータ電圧に対するマイクロアクチュエータの変位と対比して示す図。
【図7】ヒステリシスがない場合とヒステリシスがある場合のそれぞれにおける、時間に対するマイクロアクチュエータの変位を示す図。
【図8】第1の実施形態の第1の変形例で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図9】第1の実施形態の第2の変形例で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図10】第1の実施形態で適用されるシーク動作の手順を示すフローチャート。
【図11】第1の実施形態においてマイクロアクチュエータのヒステリシスの影響を補償する1トラックシーク動作の特性を、補償しない場合と対比して示す図。
【図12】第2の実施形態で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図13】第3の実施形態で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図14】第4の実施形態で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態につき図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態に係る磁気ディスク装置の典型的な構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示す磁気ディスク装置(HDD)は、ディスク(磁気ディスク)11と、ヘッド(磁気ヘッド)12と、スピンドルモータ(SPM)13と、VCMアクチュエータ(VCMA)14と、マイクロアクチュエータ(MA)15と、ボイスコイルモータ(VCM)16と、ドライバIC17と、ヘッドIC18と、リードチャネル(RDC)19と、コントローラ20とを備えている。
【0011】
ディスク11は磁気記録媒体である。ディスク11の例えば一方の面は、データが磁気記録される記録面をなしている。ディスク11はSPM13によって高速に回転させられる。SPM13は、ドライバIC17から供給される例えば駆動電流により駆動される。
【0012】
ヘッド12はディスク11の記録面に対応して配置される。ヘッド12は、図示せぬリード素子及びライト素子を備えている。ヘッド12は、ディスク11へのデータの書き込み及びディスク11からのデータの読み出しに用いられる。図1の構成では、単一枚のディスク11を備えたHDDを想定している。しかし、ディスク11が複数枚積層配置されたHDDであっても構わない。また、図1の構成では、ディスク11の一方の面が記録面をなしている。しかし、ディスク11の両面がいずれも記録面をなし、両記録面にそれぞれ対応してヘッドが配置されても構わない。
【0013】
VCMA14はアーム140を備えている。ヘッド12は、VCMA14のアーム140から延出したサスペンション141の先端(より詳細には、サスペンション141の先端に備えられたヘッドスライダ)に取り付けられている。
【0014】
サスペンション141(より詳細には、サスペンション141とヘッドスライダとの間)には更に、MA15が取り付けられている。このように、図1に示すHDDは、VCMA14及びMA15を備えた2段アクチュエータ構造(以下、DSA構造と称する)を適用している。
【0015】
MA15は、後述するサーボコントローラ22からドライバIC17を介して与えられる操作量uM(より詳細には、操作量uMによって指定される駆動電圧)に応じて駆動する。これによりMA15は、対応するヘッド12を微動させる。以下の説明では、煩雑さを避けるために、操作量uMが、MA15に印加される駆動電圧(MA電圧)であるものとする。
【0016】
VCMA14は枢軸142の回りで回動自在に支持されている。VCMA14はVCM16を備えている。VCM16は、VCMA14の駆動源である。VCM16は、サーボコントローラ22からドライバIC17を介して与えられる操作量uV(より詳細には、操作量uVによって指定される駆動電流)に応じて駆動して、VCMA14を枢軸142の回りに回動させる。つまりVCM16は、VCMA14のアーム140を、ディスク11の半径方向に移動させる。これによりヘッド12も、ディスク11の半径方向に移動させられる。以下の説明では、煩雑さを避けるために、操作量uVが、VCM16(VCMA14)に供給される駆動電流であるものとする。
【0017】
ドライバIC17は、サーボコントローラ22の制御に従い、SPM13と、VCM16(VCMA14)と、MA15とを駆動する。ヘッドIC18はヘッドアンプとも呼ばれており、ヘッド12により読み出された信号(つまりリード信号)を増幅する。ヘッドIC18はまた、RDC19から出力されるライトデータをライト電流に変換してヘッド12に出力する。
【0018】
RDC19はリード/ライトに関連する信号を処理する。即ちRDC19は、ヘッドIC18によって増幅されたリード信号をデジタルデータに変換し、このデジタルデータからリードデータを復号する。RDC19はまた、上記デジタルデータからサーボデータ(サーボパターン)を抽出する。RDC19はまた、コントローラ20から転送されるライトデータを符号化し、この符号化されたライトデータをヘッドIC18に転送する。
【0019】
コントローラ20は、ホストコントローラ21、サーボコントローラ22及びメモリ部23を備えている。
ホストコントローラ21は、ホストと当該ホストコントローラ21との間で外部インターフェース(ストレージインタフェース)を介して信号を授受する。具体的には、ホストコントローラ21は、ホストから外部インターフェースを介して転送されるコマンド(ライトコマンド、リードコマンド等)を受信する。ホストコントローラ21はまた、ホストと当該ホストコントローラ21との間のデータ転送を制御する。
【0020】
サーボコントローラ22は、ヘッド12を、ディスク11上の目標位置に位置付ける際の粗調整のために、ドライバIC17を介してVCM16を制御する。ここで、VCM16を制御することは、当該VCM16を備えたVCMA14を制御することと等価である。サーボコントローラ22は更に、ヘッド12の位置を微調整するために、ドライバIC17を介してMA15を制御する。またサーボコントローラ22は、VCMA14及びMA15を併用してヘッド12を目標トラックに移動させるための所定のシーク動作を制御する。所定のシーク動作については後述する。
【0021】
第1の実施形態において、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22は、それぞれCPU(図示せず)を備えている。CPUは、後述するFROM23aに格納されている、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22のためのそれぞれの制御プログラムを実行することにより、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22としての機能を実現している。なお、単一のCPUが、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22のためのそれぞれの制御プログラムを時分割で実行しても構わない。
【0022】
メモリ部23は、フラッシュROM(以下、FROMと称する)23a及びRAM23bを備えている。FROM23aは書き換え可能な不揮発性メモリである。FROM23aには、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22を含むコントローラ20の機能を実現するための制御プログラム(ファームウェア)が予め格納されている。RAM23bの記憶領域の少なくとも一部は、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22のための作業領域として用いられる。なお、図1では簡略化のために、コントローラ20が一般に備えているディスクコントローラが省略されている。ディスクコントローラは、ディスク11へのデータの書き込み及び及びディスク11からのデータの読み出しを制御する。
【0023】
図2は、第1の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の典型的な構成を示すブロック図である。
サーボコントローラ22は、ヘッド12を目標トラックの目標位置に位置付けるために、ディスク11に記録されているサーボデータに基づいて、VCM16(間接的には、VCM16によって駆動されるVCMA14)とMA15とを制御する。つまりサーボコントローラ22は、フィードバック制御によってVCMA14を制御することにより、ヘッド12の位置を粗調整する。サーボコントローラ22はまた、フィードバック制御によってMA15を制御することにより、ヘッド12の位置を微調整する。このように、MA15及びVCMA14は、フィードバック制御系における制御対象である。そこで図2では、VCMA14がPV(s)のように表記され、MA15がPM(s)のように表記されている。
【0024】
サーボコントローラ22は、減算器221、MAコントローラ(CM(s))222、MAモデル(E)223、加算器224、及びVCMAコントローラ(CV(s))225、フィルタ(Q(s))226、加算器227及びスイッチ228を備えている。
【0025】
図2において、加算点220における記号yは、ヘッド12のディスク11上の位置(ヘッド位置)を示す。ここで、VCMA(PV(s))14の位置をyVとし、MA(PM(s))15の変位をyMとする。この場合、位置yVと変位yMとの和(yV+yM)が、加算点220においてヘッド位置yとして観測される。ヘッド位置yは、RDC19によって所定のサンプリング周期で抽出されるサーボデータに基づいて検出される。
【0026】
減算器221は、ヘッド位置yの目標位置rとの差分を位置誤差e(=r−y)として算出する。MAコントローラ(CM(s))222は、位置誤差eに基づいて、MA(PM(s))15に与えられるべき操作量を生成する。
【0027】
MAモデル(E)223は線形モデルであり、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量に基づいてMA15の変位(より詳細には、VCMA14に対する相対的な変位)を推定するのに用いられる。つまりMAモデル(E)223は、線形モデルによりMA15の変位を推定するMA推定器として用いられる。
【0028】
加算器224は、減算器221によって算出された位置誤差e(=r−y=r−yV−yM)にMAモデル223によって推定されたMA15の変位を加算する。もし、推定されたMA15の変位が実際の変位yMに一致するならば、加算器224は位置誤差eに推定されたMA15の変位を加算することにより、VCMA14の位置yVの目標値rとの差分(r−yV)を算出することになる。つまり、ヘッド12の位置yと推定されたMA15の変位とから、VCMA14の位置yVが推定されることになる。加算器224の加算結果は、VCMAコントローラ(CV(s))225の入力に与えられる。これにより、VCMA14とMA15とは、非干渉化される。つまりサーボコントローラ22は、VCMA(PV(s))14及びMA(PM(s))15に関し、非干渉系を構成する。VCMAコントローラ(CV(s))225は、VCMA14に与える操作量uVを、加算器224の加算結果に基づいて生成する。
【0029】
ところで、MA15の変位は、例えば相対位置センサにより検出することも可能である。しかし、相対位置センサは高価格である。このため、上述のようMAモデル(E)223によってMA15の変位を推定するのが一般的である。また、MAモデル223には、MA15に印加される電圧(以下、MA電圧と称する)Vinの増加及び減少に対するMA15の変位の関係が直線となる線形モデルが用いられるのも一般的である。
【0030】
周知のように、MA15はVCMA14よりも応答速度が速い。そこで、MA15を用いてヘッド12を目標トラックに移動させるならば、シーク時間を短縮することができる。但し、MA15を用いてヘッド12をディスク11の半径方向に移動させることが可能な距離、いわゆるシーク距離は、MA15が駆動可能な範囲に限られる。MA15が駆動可能な範囲は、VCMA14と異なって極めて狭い。
【0031】
そこで第1の実施形態では、ディスク11の半径方向に1トラック(より詳細には、1トラック幅)だけヘッド12を移動させるシーク動作(つまり1トラックシーク動作)に、MA15が利用される。MA15(MA15及びVCMA14)を用いてシーク動作を行う場合、MA15よりも応答速度の遅いVCMA14は、当該MA15から遅れて目標トラックに到達することになる。
【0032】
図3は、MA15のヒステリシス特性を考慮せずに、VCMA14よりも先にMA15を目標トラックへ1トラックだけ移動させるシーク動作(1トラックシーク動作)が実行される場合における、時間(より詳細にはシーク動作開始時からの経過時間)に対する、VCMA14、MA15及びヘッド12のそれぞれの位置を示す。ここでは、ヘッド12がトラックTに位置付けられている状態で、当該ヘッド12を目標トラックであるトラックT+1に移動させるものとする。
【0033】
図3において、曲線31及び32は、それぞれ、時間に対するVCMA14の位置及びMA15の位置を示す。曲線33は、時間に対するヘッド12の位置を示す。図3では、VCMA14、MA15及びヘッド12のそれぞれの位置は、1トラックシーク動作開始時における当該VCMA14、MA15及びヘッド12のそれぞれの位置を基準(0)とする相対位置で示されている。図3において位置の単位はトラックである。例えば、位置1、位置0.5は、それぞれ、基準位置0から1トラック(1トラック幅)だけずれた位置、1/2トラックだけずれた位置を示す。したがって、図3において、例えば基準位置0は、1トラックシーク動作開始前にヘッド12が位置しているトラックTの位置に対応し、位置1は目標トラックT+1の位置に対応する。
【0034】
図3から明らかなように、曲線32によって示されるMA15の位置は、当該MA15の高速応答性により、VCMA14に比べて極めて短時間で「1」に近付く。つまりMA15は高速で目標トラックに近付く。このようにMA15を高速で目標トラックに近付けるために、MA15にはシーク動作開始時から大きなMA電圧が印加される。このMA電圧は、MA15が目標トラックに近付くにつれて小さくなる。
【0035】
一般にMA15は、MA電圧に対してヒステリシス特性を有している。図4は、MA15のヒステリシス特性の例を示す。図4において曲線41は、MA電圧Vinが−20Vから+20Vまで徐々に増加される場合の、MA電圧Vinに対するMA15の変位を示す。図4において曲線42は、曲線41とは逆に、MA電圧Vinが+20Vから−20Vまで徐々に減少される場合の、MA電圧Vinに対するMA15の変位を示す。曲線41及び42から明らかなように、MA15はMA電圧に対してヒステリシス特性を有している。MA15のヒステリシスは、電圧の増加または減少が大きいほど大きくなる。このため、シーク動作開始時に大きなMA電圧がMA15に印加された後、当該MA15が目標トラックに近付いたためにMA電圧が低くなると、MA15はヒステリシスの影響を大きく受ける。
【0036】
ところが、MAモデル223は線形モデルである。このため、MA15がヒステリシスの影響を受けた場合、MA15の実際のMA変位とMAモデル223によって推定された変位との間に誤差が生じる。図5は、1トラックシーク動作における時間に対するMA15の変位(位置)を、推定された変位及び実際の変位のそれぞれについて示す。
【0037】
図5において、曲線51は、時間に対するMA15の推定された変位の関係、つまりMA15がヒステリシス特性を有していないことを前提としてMAモデル223を適用する場合の当該MA15の変位の時間に対する関係を示す。以下の説明では、MA15がヒステリシス特性を有していないことを前提とする場合を、単にヒステリシスがない場合と称する。曲線52は、時間に対するMA15の実際の変位の関係、つまりMA15がヒステリシス特性を有している場合の当該MA15の変位の時間に対する関係を示す。以下の説明では、MA15がヒステリシス特性を有している場合を、単にヒステリシスがある場合と称する。
【0038】
図5から明らかなように、MA15の推定された変位と実際の変位との間に、ヒステリシスの影響で差(位置誤差)が生じる。つまり、MA15を用いたシーク動作(1トラックシーク動作)では、当該シーク動作の開始時にMA15に大電圧がかかるため、ヘッド12が目標トラックに位置付けられる定常状態へ移行する際に、ヒステリシスの影響による位置誤差が生じる。このために、1トラックシーク動作において、図3において曲線33で示すように、ヘッド12が目標トラックからずれるオフトラック状態が発生する。このため、ヘッド12を高速で目標トラックに位置付けることが難しい。
【0039】
そこで第1の実施形態では、MA15を利用して1トラックシーク動作(つまり短距離シーク動作)を実行する場合に、ヒステリシスの影響による位置誤差を減らすための構成を適用する。この構成について説明する。
【0040】
第1の実施形態では、1トラックシーク動作において、MA15がVCMA14よりも先に目標トラックに到達した後MA電圧(つまりMA15の変位)が単調に減少する期間、VCMA14の位置(変位)が単調に変化(ここでは増加)することが利用される。具体的には、ヒステリシスの影響が、MA15が線形モデルに従って駆動すると仮定した状態からのMA電圧の遅れとして捉えられる。MA電圧の遅れは、当該MA電圧とMA15の変位との関係から、MA15の変位の遅れとして現れる。したがって、ヒステリシスの影響を、MA電圧をMA15の変位に換算した場合における、当該MA15の変位の遅れと捉えることも可能である。
【0041】
以下、ヒステリシスの影響を、MA電圧(MA15の変位)の遅れと捉えることの意義について、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、ヒステリシスがある場合のMA電圧Vinに対するMA15の変位をヒステリシスがない場合のMA電圧Vinに対するMA15の変位と対比して示す。図6において、曲線61及び62は、それぞれ図4における曲線41及び42に相当する。但し、図6では、MA電圧Vinが負電圧の範囲は省略されている。直線60は、ヒステリシスがない場合のMA電圧Vinに対するMA15の変位を示す。
【0042】
図7は、ヒステリシスがない場合(前者)とヒステリシスがある場合(後者)のそれぞれにおける、時間に対するMA15の変位(MA15の相対位置)を示す。図7において、直線71は前者における時間に対するMA15の変位(つまり、MA15の推定された変位)を示す。曲線72は後者における時間に対するMA15の変位(つまり、MA15の実際の変位)を示す。
【0043】
ここで、MA15が先に目標トラックに到達し、その際にVCMA14は目標トラックへ向かって移動している最中であるものとする。MA15の変位が「1」となって、当該MA15が目標トラックに到達した際の、直線60、曲線62、直線71及び曲線72上の点をP1とし、その時点tを0とする。この時点t=0におけるMA電圧は前述したように大電圧であり、以後MA電圧は時間tの経過と共に徐々に小さくなる。その理由は、VCMA14が目標トラックへ近付くためである(図3参照)。MA電圧が徐々に小さくなると、MA15の変位は点P1(時点t=0)での変位から時間tの経過と共に単調に減少する。
【0044】
やがて、MA電圧Vinがδとなった時点t1で、ヒステリシスがない場合におけるMA15の変位(つまり、図6の直線60上及び図7の直線71上の点P2における推定された変位)がαとなったものとする。しかし、ヒステリシスがある場合、MA電圧がδであっても、MA15の変位(つまり実際の変位)は、図6の曲線62上及び図7の曲線72上の点P2’における変位βとして現れる。このように、ヒステリシスがある場合とヒステリシスがない場合とで、MA15の変位がβ−αだけ異なる。このβ−αが、ヒステリシスの影響による位置誤差となる。
【0045】
時点t1以後も1トラックシーク動作が続き、VCMA14が目標トラックにより近付くと、MA電圧は更に減少する。前述したように、1トラックシーク動作においてMA15が目標トラックに到達した後MA電圧(MA15の変位)が単調に減少する期間、VCMA14の位置は単調に増加する。このため、時点t1より後の時点でMA15の実際の変位がαとなる。ここでは、MA電圧Vinがε(ε<δ)まで低下した時点t2(t2>t1)で、図6の曲線62上及び図7の曲線72上の点P3におけるMA15の実際の変位がαとなったものとする。つまり、時点t1で必要なMA15の実際の変位α及び当該変位αのために必要なMA電圧ε(Vin=ε)は、時点t1よりも時間t2−t1だけ遅れた時点t2で取得される。
【0046】
このようにヒステリシスがある場合、時点t1で必要なMA15の変位αが時点t1よりも時間t2−t1だけ遅れて取得される。よってヒステリシスの影響を、図7に示すように、MA15の変位の遅れと捉えることができる。また、変位αのために必要なMA電圧εも、時点t1よりも時間t2−t1だけ遅れた時点t2で取得される。したがって、ヒステリシスの影響を、MA電圧Vinの遅れと捉えることもできる。つまり、ヒステリシスがあると、MA15の変位及びMA電圧に遅れが生じると見なすことができる。
【0047】
さて、MA15の実際の変位αを時点t1で取得するには、図6から明らかなように、MA15にMA電圧(操作量uM)としてεが与えられる必要がある。MA電圧εは、ヒステリシスがない場合におけるMA15の変位γに対応する。しかし、ヒステリシスがない場合、時点t1では、上述のようにMA15にMA電圧(操作量uM)δが与えられ、その結果MA15の実際の変位はβとなる。
【0048】
時点t1でMA15に与えられるδがεに補正されるためには、MA電圧ε−δが取得されればよい。また、時点t1で必要とするMA15の変位がαからγに補正されるためには、変位γ−αが取得されればよい。ヒステリシスがない場合、変位γを取得するためにMA15にMA電圧εが与えられるのは、上述したように時点t2である。このとき、実際の変位はαとなる。よって、MA電圧ε−δ及びMA15の変位γ−αを、ヒステリシスによる時点t1からの時間t2−t1の遅れと捉えることができる。
【0049】
そこで第1の実施形態では、このヒステリシスの影響を減らすため、ヒステリシスによる遅れに相当する未来のMA電圧(MA15の変位)、つまり未来の相対位置誤差が推定される。上述の例では、未来のMA電圧はεであり、未来のMA15の変位はγであり、ヒステリシスによる遅れに相当するMA電圧はε−δであり、ヒステリシスによる遅れに相当するMA15の変位はγ−αである。また、第1の実施形態では、推定された未来のMA電圧(MA15の変位)に相当する操作量uM(MA電圧)がMA15に加わるよう、ヒステリシスによる遅れに相当する操作量がMAコントローラ(CM(s))222によって生成される操作量に加算される。この加算された操作量が、操作量uM(MA電圧)としてMA15に与えられる。
【0050】
次に、ヒステリシスによる遅れに相当する未来のMA電圧(MA15の変位)の推定について、図2及び図7を再び参照して説明する。
MA電圧、つまり操作量uMは、ヘッド12の移動先のトラック(つまり目標トラック)での位置誤差eとVCMA14の位置yVとで決まる。VCMA14の位置yVとMA15の変位yMとを加えたヘッド位置yは、ヘッド12を目標トラックの目標位置に保つには一定である必要がある。このことは、VCMA14の未来の位置を推定すれば、MA15の未来の変位(またはMA電圧)が推定可能なことを示す。
【0051】
そこで第1の実施形態では、ヒステリシスによる遅れに相当するMA15の未来の変位(またはMA電圧)を推定するために、VCMA14の未来の位置が推定される。そのため、図2に示されるように、コントローラ20内に、フィルタ(Q(s))226、加算器227及びスイッチ228が追加される。
【0052】
フィルタ226は、VCMA(PV(s))14の出力を当該フィルタ226に通すことで、VCMA14の未来の位置を推定する。フィルタ226はまた、VCMA14の推定された未来の位置から、MA15の未来の変位(またはMA電圧)に相当する操作量を推定する。
【0053】
加算器227は、MA15の制御ループに備えられている。加算器227は、フィルタ226の出力(つまりMA15の未来の変位またはMA電圧に相当する操作量)を、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量に加算する。スイッチ228は、所定のシーク動作の開始時にオン状態(第1の状態)設定される。スイッチ228は、オン状態に設定されている期間、フィルタ226から加算器227に有効な出力が伝達されるのを許可する。第1の実施形態において、所定のシーク動作は1トラックシーク動作である。
【0054】
VCMA14の未来の位置の推定には、例えば、現在のVCMA14の位置yVとVCM速度とが用いられる。VCM速度は、VCMA14の位置の変化量を表す。フィルタ(Q(s))226は、このVCM速度に所定の係数pを乗じた値に現在のVCMA14の位置yVを加算することで、VCMA14の未来の位置を推定し、ヒステリシスによる遅れに相当するMAの変位またはMA電圧に相当する操作量を計算する。係数pは、どの程度未来の位置を推定するかの指標である。VCM速度(つまりVCMA14の速度)は、例えば、VCMA14の位置を微分することによって取得できる。このためフィルタ(Q(s))226に微分器を持たせることで、VCMA14の位置からVCM速度が得られる。
【0055】
係数pはヒステリシスによるMA15の変位の遅れとVCMA14の速度に依存するため一定ではない。そこで第1の実施形態では、事前に平均的な遅れ時間に相当する値が係数pとして設定される。平均的な遅れ時間は、例えば、ヒステリシスによるMA15の変位の遅れをVCM速度で除することにより算出される。なお、MA15のヒステリシス特性とシーク動作(1トラックシーク動作)時のVCMA14の速度を測定して、その測定結果が設定されたテーブルがFROM23aに格納される構成としてもよい。また、このテーブルが、FROM23aに格納されているファームウェアに設定されていても構わない。
【0056】
ここで、上記第1の実施形態の第1の変形例について説明する。
図8は、上記第1の実施形態の第1の変形例で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図8において、図2と等価な要素には同一参照符号を付してある。
【0057】
図8に示すサーボコントローラ22は、状態オブザーバ(B)229を備えている。状態オブザーバ(B)229は、VCMAモデルを有しており、当該VCMAモデルと、VCMAコントローラ225の出力uV(つまりVCMA14の入力)、MAモデル(E)223によって推定されたMA15の変位及びヘッド12の位置(ヘッド位置)とに基づいて、VCMA14の位置、速度及び加速度を推定する。上記ヘッド12の位置には、ヘッド位置y、つまりRDC19によって検出されたヘッド位置yが用いられる。
【0058】
第1の変形例では、上述したVCMA14の未来の位置の推定に用いられるVCMA14の速度として、状態オブザーバ229によって推定された当該VCMA14の速度が用いられる。つまり状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の速度が、フィルタ226に入力される。しかし、VCMA14の速度は前述したように、VCMA14の位置を微分することによって取得できる。そこで、フィルタ226が、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の位置を微分する微分器を備えていてもよい。この場合、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の速度は、必ずしもフィルタ226に入力される必要はない。
【0059】
次に、上記第1の実施形態の第2の変形例について説明する。
図9は、上記第1の実施形態の第2の変形例で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図9において、図2及び図8と等価な要素には同一参照符号を付してある。
【0060】
図9に示すサーボコントローラ22の特徴は、減算器221による位置誤差eの算出に用いられるヘッド位置として、RDC19により検出されたヘッド位置yに代えて、状態オブザーバ(B)229によって推定されたヘッド位置が用いられる点にある。
【0061】
第2の変形例において、状態オブザーバ229は、VCMAモデルと、VCMAコントローラ225の出力、MAモデル(E)223によって推定されたMA15の変位及びヘッド位置yとに基づいて、VCMA14の位置、速度及び加速度(つまりVCMA14の推定された状態)を推定する。状態オブザーバ229は更に、上記推定されたVCMA14の位置と上記上記推定されたMA15の変位とを加算することで、ヘッド12の位置を推定する。
【0062】
第2の変形例では、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の位置または速度の少なくとも一方を含む、VCMA14の推定された状態が、フィルタ(Q(s))226に入力される。状態オブザーバ229によって推定されたヘッド位置は、RDC19によって検出されたヘッド位置yに代えて、減算器221に入力される。
【0063】
前述したように、VCMA14の速度は、VCMA14の位置を微分することによって取得できる。そこで、フィルタ226が、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の位置を微分する微分器を備えていてもよい。この場合、フィルタ226に入力されるVCMA14の推定された状態に、VCMA14の推定された速度が含まれている必要はない。
【0064】
また、VCMA14の未来の位置は、VCMA14の速度と加速度からも推定可能である。そこで、フィルタ226が、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の速度に例えば乗算器によって係数qを乗じたものと、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の加速度に例えば乗算器によって係数mを乗じたものとの和をとることにより、VCMA14の未来の位置を推定してもよい。係数qは上記係数pと同様に、どの程度未来の位置を推定するかの指標であり、例えば上述の平均的な遅れ時間である。係数mは、推定する未来の時間までの加速度の寄与を示す指標である。
【0065】
次に、第1の実施形態で適用される、サーボコントローラ22の制御によるシーク動作の手順について、図10のフローチャートを参照して説明する。なお、この手順は、第1の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例においても同様に適用される。
【0066】
今、ヘッド12がトラックTに位置付けられているオントラック状態にあるものとする。この状態で、例えばホストコンピュータ21からサーボコントローラ22にシーク命令が発行されたものとする。するとサーボコントローラ22は、ヘッド12をシーク命令で指定された目標トラックに移動するためのシーク動作を開始する。
【0067】
まずサーボコントローラ22は、現在ヘッド12が位置しているトラックTから目標トラックにヘッド12を移動するのに必要なシーク距離が1トラック(1トラック幅)であるかを判定する(ステップ801)。ここでは、目標トラックが、トラックTに隣接するトラックT+1であり、したがってシーク距離は1トラックであるものとする。
【0068】
このように、シーク距離が1トラックであるならば(ステップ801のYES)、つまり1トラックシーク動作であるならば、サーボコントローラ22は切り替え制御手段として機能して、スイッチ228をオンする(ステップ802)。するとサーボコントローラ22では、フィルタ(Q(s))226によって推定されたヒステリシスによる遅れに相当するMA15の変位またはMA電圧に相当する操作量が、スイッチ228を介して加算器227に入力される。
【0069】
加算器227には、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量も入力される。加算器227は、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量に、フィルタ(Q(s))226によって推定されたMA15のヒステリシスによる遅れに相当する変位またはMA電圧に相当する操作量が加算される。この加算器227の加算結果が操作量uVとしてMA15に与えられる。これにより、MA15の実際の変位とMAモデル223によって推定されたMA15の変位との誤差を低減することができる。つまり、MA15のヒステリシスの影響によってヘッド12を目標トラックに位置付ける際の誤差を低減することができる。
【0070】
サーボコントローラ22はスイッチ228をオンすると(ステップ802)、検出手段として機能して、カウントNを初期値0に設定する(ステップ803)。そしてサーボコントローラ22は、カウントNを1インクリメントする(ステップ804)。カウントNは、VCMA14の速度(VCMA速度)が閾値(つまり所定の速度)fより低い状態が連続するサンプルの数を示すのに用いられる。
【0071】
次にサーボコントローラ22(検出手段)は、VCMA14の速度が閾値fより低いかを判定する(ステップ805)。もし、VCMA14の速度が閾値fより低くないならば(ステップ805のNO)、サーボコントローラ22はカウントNを0にリセットして(ステップ806)、ステップ804に戻る。
【0072】
これに対し、VCMA14の速度が閾値fより低いならば(ステップ805のYES)、サーボコントローラ22は、カウントNが閾値gより大きいかを判定する(ステップ807)。もし、カウントNが閾値gより大きくないならば(ステップ807のNO)、サーボコントローラ22は、VCMA14の速度が閾値fより低い状態が連続するサンプル数は、gを超えていないと判定する。この場合、サーボコントローラ22はステップ804に戻る。
【0073】
これに対し、カウントNが閾値gより大きいならば(ステップ807のYES)、サーボコントローラ22(検出手段)は、VCMA14の速度が閾値fより低い状態が連続するサンプル数は、gを超えたと判定する。つまりサーボコントローラ22(検出手段)は、VCMA14の速度がgサンプル連続して閾値fより低くなる特定状態を検出する。この場合、サーボコントローラ22は、MA15よりも遅れて移動するVCMA14が目標トラックに安定して到達しているものと判定する。すると、サーボコントローラ22は切り替え制御手段として機能して、スイッチ228をオフする(ステップ808)。これによりフィルタ226から加算器227に有効な出力が伝達されるのが抑止され、シーク動作(1トラックシーク動作)は終了する。
【0074】
一方、シーク距離が1トラックでないならば(ステップ801のNO)、つまり1トラックシーク動作でないならば、サーボコントローラ22は、通常のシーク動作の制御を実行する(ステップ809)。通常のシーク動作では、スイッチ228はオフ状態にある。この場合、サーボコントローラ22は、先行技術と同様に、VCMA14及びMA15に関し、非干渉系として機能する。
【0075】
図11は、1トラックシーク動作が、上述のようにスイッチ228のオン状態で行われた場合の特性を、スイッチ228がオフ状態で行われた場合と対比して示す。つまり図11は、MA15のヒステリシスの影響を補償した場合の1トラックシーク動作の特性を、先行技術のように補償しない場合と対比して示す。図11において、曲線911,912及び913は、補償なしの場合における、それぞれ、時間に対するVCMA14の位置、MA15の位置及びヘッド12の位置を示す。また、曲線921,922及び923は、補償ありの場合における、それぞれ、時間に対するVCMA14の位置、MA15の位置及びヘッド12の位置を示す。また、曲線930は時間に対するVCMA14の速度を示す。図11では、図3と同様に、位置0が1トラックシーク動作開始前にヘッド12が位置しているトラックTの位置に対応し、位置1が目標トラックT+1の位置に対応する。なお、図11では、VCMA14の速度を示す目盛りは省略されている。
【0076】
図11の特に曲線913及び923から明らかなように、第1の実施形態によれば、ヘッド12が目標トラックに高速で移動され、しかも少ない位置誤差で目標トラックに安定して位置付けられる。
【0077】
上記第1の実施形態では、1トラックシーク動作の場合に、スイッチ228がオンされて、フィルタ226の出力がMAコントローラ222の入力に加算される。つまり1トラックシーク動作の場合に、ヒステリシスの影響が補償される。しかし、ヘッド12の移動距離(シーク距離)がMA15の駆動可能な範囲に収まるならば、シーク距離が1トラックを超えるシーク動作にも適用可能である。また、図2において、フィルタ226及びスイッチ228の位置が逆で合っても構わない。つまりスイッチ228が、フィルタ226の入力側に配置されていても構わない。
【0078】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態に係る磁気ディスク装置におけるサーボコントローラついて説明する。
第2の実施形態に係る磁気ディスク装置は、第1の実施形態と同様に、サーボコントローラ22を含む図1に示す構成を適用するものとする。第2の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、サーボコントローラ22の構成である。
【0079】
図12は、第2の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図12において、図2と等価な要素には同一参照符号を付してある。図12に示すサーボコントローラ22の特徴は、加算器227(図2参照)に相当する加算器241がMAコントローラ(CM(s))222の入力側に備えられていることである。また、フィルタ226及びスイッチ228の位置は、図2と逆である。しかし、フィルタ226及びスイッチ228の位置が図2と同一であっても構わない。
【0080】
第2の実施形態では、フィルタ(Q(s))226は、MA15のヒステリシスによる遅れに相当する変位を推定する。この推定された変位が、MAコントローラ(CM(s))222に入力される位置誤差eに、加算器241によって加えられる。
【0081】
[第3の実施形態]
次に第3の実施形態に係る磁気ディスク装置におけるサーボコントローラついて説明する。
第3の実施形態に係る磁気ディスク装置は、第1の実施形態と同様に、サーボコントローラ22を含む図1に示す構成を適用するものとする。第3の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、サーボコントローラ22の構成である。
【0082】
図13は、第3の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図12において、図2と等価な要素には同一参照符号を付してある。図13に示すサーボコントローラ22の特徴は、VCMA14及びMA15の制御に、周知のフィードフォワード(FF)制御が適用されることである。
【0083】
図13に示すサーボコントローラ22は、図2に示す構成に加えて、VCMAフィードフォワードコントローラ(CFV(s))251、加算器252、減算器253、MAフィードフォワードコントローラ(CFM(s))254、MAフィードフォワードコントローラ(−CFM(s))255、及び加算器256を備えている。
【0084】
図13では、VCMA14及びMA15のための目標軌道rV及びrMが用いられる。目標軌道rV及びrMは、ヘッド12を目標トラックに移動させる距離(シーク距離)に対応して設定される。減算器221は、第1の実施形態と異なり、目標軌道(第2の目標軌道)rVに対するヘッド位置yの差分を算出する。減算器221の出力は、第1の実施形態と同様に、加算器224に与えられる。
【0085】
VCMフィードフォワードコントローラ(CFV(s))251は、目標軌道rVに対応するフィードフォワード操作量を生成する。加算器252は、この目標軌道rVに対応するフィードフォワード操作量をVCMAコントローラ225により生成される操作量(フィードバック操作量)に加算する。加算器252の加算結果は、操作量uVとしてVCMA14に与えられる。
【0086】
減算器253は、目標軌道(第1の目標軌道)rMに対するヘッド位置yの差分を算出する。減算器253の出力は、MAコントローラ(CM(s))222に与えられる。
MAフィードフォワードコントローラ(CFM(s))254は、目標軌道rMに対応するフィードフォワード操作量を生成する。MAフィードフォワードコントローラ(−CFM(s))255は、目標軌道rVに対応する、VCMA14の動きに相当するフィードフォワード操作量を生成する。
【0087】
加算器256は、MAコントローラ(CM(s))222によって生成される操作量(フィードバック操作量)に、MAフィードフォワードコントローラ254及び255によってそれぞれ生成されるフィードフォワード操作量を加算する。MAモデル223は、第1の実施形態と異なり、加算器256の加算結果に基づいてMA15の変位を推定する。
【0088】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なって、加算器256の加算結果が加算器227に与えられる。この加算器227には、第1の実施形態と同様に、フィルタ(Q(s))226によって推定されたMA15の未来の変位またはMA電圧に相当する操作量も与えられる。加算器227の加算結果は、第1の実施形態と同様に操作量uMとしてMA15に与えられる。
【0089】
[第4の実施形態]
次に第4の実施形態に係る磁気ディスク装置におけるサーボコントローラついて説明する。
第4の実施形態に係る磁気ディスク装置は、第1の実施形態と同様に、サーボコントローラ22を含む図1に示す構成を適用するものとする。第4の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、サーボコントローラ22の構成である。
【0090】
図14は、第4の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図14において、図12及び図13と等価な要素には同一参照符号を付してある。図14に示すサーボコントローラ22の特徴は、加算器227(図2参照)に相当する加算器241がMAコントローラ(CM(s))222の入力側に備えられていることである。
【0091】
第4の実施形態では、フィルタ(Q(s))226は、MA15のヒステリシスによる遅れに相当する変位を推定する。この推定された変位が、MAコントローラ(CM(s))222に入力される減算器253の出力に、加算器241によって加算される。
【0092】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、マイクロアクチュエータのヒステリシス特性に適合したシーク動作を実現できるマイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置を提供することができる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
11…ディスク、12…ヘッド、14…VCMアクチュエータ(VCMA、PV(S))、15…マイクロアクチュエータ(MA、PM(S))、16…VCM(ボイスコイルモータ)、17…ドライバIC、20…コントローラ、21…ホストコントローラ、22…サーボコントローラ、23a…フラッシュROM(FROM)、222…マイクロアクチュエータコントローラ(MAコントローラ、CM(s))、223…マイクロアクチュエータモデル(MAモデル、E、マイクロアクチュエータ推定器)、225…VCMアクチュエータコントローラ(VCMAコントローラ、CV(s))、226…フィルタ(Q(s))、227…加算器、228…スイッチ、229…状態オブザーバ(B)、241…加算器。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置の高容量化に伴い、高トラック密度化が進んでいる。高トラック密度化により、高精度なヘッド位置決めがますます要求されている。この高精度なヘッド位置決めのためには、ヘッド位置決め制御における高速応答性を向上すること、つまり制御周波数帯域を高くすることが必要となる。そこで、最近は、ボイスコイルモータアクチュエータ(VCMアクチュエータ)に加えて、高周波数の追従性に優れたマイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置、つまり2段アクチュエータ(Dual Stage Actuator: DSA)構造を適用した磁気ディスク装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3679956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロアクチュエータは、当該マイクロアクチュエータを構成する素子(例えば圧電素子)に電圧が印加されることにより駆動される。マイクロアクチュエータの変位は、電圧が増加する方向に当該マイクロアクチュエータに電圧が印加される場合と、電圧が減少する方向に当該マイクロアクチュエータに電圧が印加される場合とで異なる。つまり、マイクロアクチュエータは、印加される電圧に対してヒステリシス特性を有している。
【0005】
マイクロアクチュエータのヒステリシス特性は、VCMアクチュエータ及びマイクロアクチュエータを併用して目標トラックにヘッドを移動するためのシーク動作に影響を及ぼす。
【0006】
本発明の目的は、マイクロアクチュエータのヒステリシス特性に適合したシーク動作を実現できるマイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、磁気ディスク装置は、VCMアクチュエータと、マイクロアクチュエータと、サーボコントローラとを具備する。前記VCMアクチュエータは、ヘッドを粗動させる。前記マイクロアクチュエータは、前記ヘッドを微動させる。前記サーボコントローラは、前記VCMアクチュエータ及び前記マイクロアクチュエータを併用して前記ヘッドを目標トラックに移動させるための所定のシーク動作を制御する。前記サーボコントローラは、マイクロアクチュエータコントローラと、マイクロアクチュエータ推定器と、VCMアクチュエータコントローラと、フィルタと、加算器とを具備する。前記マイクロアクチュエータコントローラは、前記目標トラックまたは前記マイクロアクチュエータに対応する第1の目標軌道と前記ヘッドの位置との間の位置誤差に基づいて、前記マイクロアクチュエータを制御する。前記マイクロアクチュエータ推定器は、前記マイクロアクチュエータに与えられるべき第1の操作量から線形モデルにより前記マイクロアクチュエータの第1の変位を推定する。前記VCMアクチュエータコントローラは、前記目標トラックまたは前記VCMアクチュエータに対応する第2の目標軌道と前記ヘッドの位置及び前記推定された第1の変位から推定される前記VCMアクチュエータの位置との間の位置誤差に基づいて、前記VCMアクチュエータを制御する。前記フィルタは、前記所定のシーク動作における前記VCMアクチュエータの状態から、前記マイクロアクチュエータのヒステリシスによる前記マイクロアクチュエータの変位の遅れに対応する前記VCMアクチュエータの位置を推定し、前記推定された位置から前記マイクロアクチュエータの前記遅れの変位である第2の変位を推定する。前記加算器は、前記推定された第2の変位または前記推定された第2の変位に対応する第2の操作量を、前記マイクロアクチュエータコントローラの入力または前記マイクロアクチュエータの入力に加算する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る磁気ディスク装置の典型的な構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態で適用されるサーボコントローラの典型的な構成を示すブロック図。
【図3】図2に示すサーボコントローラにおいて、マイクロアクチュエータのヒステリシス特性を考慮せずに、当該マイクロアクチュエータを利用して1トラックシーク動作が実行される場合における、時間に対する、VCMアクチュエータ、マイクロアクチュエータ及びヘッドのそれぞれの位置を示す図。
【図4】マイクロアクチュエータのヒステリシス特性の例を示す図。
【図5】1トラックシーク動作における時間に対するマイクロアクチュエータの変位を、推定された変位及び実際の変位のそれぞれについて示す図。
【図6】ヒステリシスがある場合のマイクロアクチュエータ電圧に対するマイクロアクチュエータの変位をヒステリシスがない場合のマイクロアクチュエータ電圧に対するマイクロアクチュエータの変位と対比して示す図。
【図7】ヒステリシスがない場合とヒステリシスがある場合のそれぞれにおける、時間に対するマイクロアクチュエータの変位を示す図。
【図8】第1の実施形態の第1の変形例で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図9】第1の実施形態の第2の変形例で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図10】第1の実施形態で適用されるシーク動作の手順を示すフローチャート。
【図11】第1の実施形態においてマイクロアクチュエータのヒステリシスの影響を補償する1トラックシーク動作の特性を、補償しない場合と対比して示す図。
【図12】第2の実施形態で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図13】第3の実施形態で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【図14】第4の実施形態で適用されるサーボコントローラの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態につき図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態に係る磁気ディスク装置の典型的な構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示す磁気ディスク装置(HDD)は、ディスク(磁気ディスク)11と、ヘッド(磁気ヘッド)12と、スピンドルモータ(SPM)13と、VCMアクチュエータ(VCMA)14と、マイクロアクチュエータ(MA)15と、ボイスコイルモータ(VCM)16と、ドライバIC17と、ヘッドIC18と、リードチャネル(RDC)19と、コントローラ20とを備えている。
【0011】
ディスク11は磁気記録媒体である。ディスク11の例えば一方の面は、データが磁気記録される記録面をなしている。ディスク11はSPM13によって高速に回転させられる。SPM13は、ドライバIC17から供給される例えば駆動電流により駆動される。
【0012】
ヘッド12はディスク11の記録面に対応して配置される。ヘッド12は、図示せぬリード素子及びライト素子を備えている。ヘッド12は、ディスク11へのデータの書き込み及びディスク11からのデータの読み出しに用いられる。図1の構成では、単一枚のディスク11を備えたHDDを想定している。しかし、ディスク11が複数枚積層配置されたHDDであっても構わない。また、図1の構成では、ディスク11の一方の面が記録面をなしている。しかし、ディスク11の両面がいずれも記録面をなし、両記録面にそれぞれ対応してヘッドが配置されても構わない。
【0013】
VCMA14はアーム140を備えている。ヘッド12は、VCMA14のアーム140から延出したサスペンション141の先端(より詳細には、サスペンション141の先端に備えられたヘッドスライダ)に取り付けられている。
【0014】
サスペンション141(より詳細には、サスペンション141とヘッドスライダとの間)には更に、MA15が取り付けられている。このように、図1に示すHDDは、VCMA14及びMA15を備えた2段アクチュエータ構造(以下、DSA構造と称する)を適用している。
【0015】
MA15は、後述するサーボコントローラ22からドライバIC17を介して与えられる操作量uM(より詳細には、操作量uMによって指定される駆動電圧)に応じて駆動する。これによりMA15は、対応するヘッド12を微動させる。以下の説明では、煩雑さを避けるために、操作量uMが、MA15に印加される駆動電圧(MA電圧)であるものとする。
【0016】
VCMA14は枢軸142の回りで回動自在に支持されている。VCMA14はVCM16を備えている。VCM16は、VCMA14の駆動源である。VCM16は、サーボコントローラ22からドライバIC17を介して与えられる操作量uV(より詳細には、操作量uVによって指定される駆動電流)に応じて駆動して、VCMA14を枢軸142の回りに回動させる。つまりVCM16は、VCMA14のアーム140を、ディスク11の半径方向に移動させる。これによりヘッド12も、ディスク11の半径方向に移動させられる。以下の説明では、煩雑さを避けるために、操作量uVが、VCM16(VCMA14)に供給される駆動電流であるものとする。
【0017】
ドライバIC17は、サーボコントローラ22の制御に従い、SPM13と、VCM16(VCMA14)と、MA15とを駆動する。ヘッドIC18はヘッドアンプとも呼ばれており、ヘッド12により読み出された信号(つまりリード信号)を増幅する。ヘッドIC18はまた、RDC19から出力されるライトデータをライト電流に変換してヘッド12に出力する。
【0018】
RDC19はリード/ライトに関連する信号を処理する。即ちRDC19は、ヘッドIC18によって増幅されたリード信号をデジタルデータに変換し、このデジタルデータからリードデータを復号する。RDC19はまた、上記デジタルデータからサーボデータ(サーボパターン)を抽出する。RDC19はまた、コントローラ20から転送されるライトデータを符号化し、この符号化されたライトデータをヘッドIC18に転送する。
【0019】
コントローラ20は、ホストコントローラ21、サーボコントローラ22及びメモリ部23を備えている。
ホストコントローラ21は、ホストと当該ホストコントローラ21との間で外部インターフェース(ストレージインタフェース)を介して信号を授受する。具体的には、ホストコントローラ21は、ホストから外部インターフェースを介して転送されるコマンド(ライトコマンド、リードコマンド等)を受信する。ホストコントローラ21はまた、ホストと当該ホストコントローラ21との間のデータ転送を制御する。
【0020】
サーボコントローラ22は、ヘッド12を、ディスク11上の目標位置に位置付ける際の粗調整のために、ドライバIC17を介してVCM16を制御する。ここで、VCM16を制御することは、当該VCM16を備えたVCMA14を制御することと等価である。サーボコントローラ22は更に、ヘッド12の位置を微調整するために、ドライバIC17を介してMA15を制御する。またサーボコントローラ22は、VCMA14及びMA15を併用してヘッド12を目標トラックに移動させるための所定のシーク動作を制御する。所定のシーク動作については後述する。
【0021】
第1の実施形態において、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22は、それぞれCPU(図示せず)を備えている。CPUは、後述するFROM23aに格納されている、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22のためのそれぞれの制御プログラムを実行することにより、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22としての機能を実現している。なお、単一のCPUが、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22のためのそれぞれの制御プログラムを時分割で実行しても構わない。
【0022】
メモリ部23は、フラッシュROM(以下、FROMと称する)23a及びRAM23bを備えている。FROM23aは書き換え可能な不揮発性メモリである。FROM23aには、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22を含むコントローラ20の機能を実現するための制御プログラム(ファームウェア)が予め格納されている。RAM23bの記憶領域の少なくとも一部は、ホストコントローラ21及びサーボコントローラ22のための作業領域として用いられる。なお、図1では簡略化のために、コントローラ20が一般に備えているディスクコントローラが省略されている。ディスクコントローラは、ディスク11へのデータの書き込み及び及びディスク11からのデータの読み出しを制御する。
【0023】
図2は、第1の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の典型的な構成を示すブロック図である。
サーボコントローラ22は、ヘッド12を目標トラックの目標位置に位置付けるために、ディスク11に記録されているサーボデータに基づいて、VCM16(間接的には、VCM16によって駆動されるVCMA14)とMA15とを制御する。つまりサーボコントローラ22は、フィードバック制御によってVCMA14を制御することにより、ヘッド12の位置を粗調整する。サーボコントローラ22はまた、フィードバック制御によってMA15を制御することにより、ヘッド12の位置を微調整する。このように、MA15及びVCMA14は、フィードバック制御系における制御対象である。そこで図2では、VCMA14がPV(s)のように表記され、MA15がPM(s)のように表記されている。
【0024】
サーボコントローラ22は、減算器221、MAコントローラ(CM(s))222、MAモデル(E)223、加算器224、及びVCMAコントローラ(CV(s))225、フィルタ(Q(s))226、加算器227及びスイッチ228を備えている。
【0025】
図2において、加算点220における記号yは、ヘッド12のディスク11上の位置(ヘッド位置)を示す。ここで、VCMA(PV(s))14の位置をyVとし、MA(PM(s))15の変位をyMとする。この場合、位置yVと変位yMとの和(yV+yM)が、加算点220においてヘッド位置yとして観測される。ヘッド位置yは、RDC19によって所定のサンプリング周期で抽出されるサーボデータに基づいて検出される。
【0026】
減算器221は、ヘッド位置yの目標位置rとの差分を位置誤差e(=r−y)として算出する。MAコントローラ(CM(s))222は、位置誤差eに基づいて、MA(PM(s))15に与えられるべき操作量を生成する。
【0027】
MAモデル(E)223は線形モデルであり、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量に基づいてMA15の変位(より詳細には、VCMA14に対する相対的な変位)を推定するのに用いられる。つまりMAモデル(E)223は、線形モデルによりMA15の変位を推定するMA推定器として用いられる。
【0028】
加算器224は、減算器221によって算出された位置誤差e(=r−y=r−yV−yM)にMAモデル223によって推定されたMA15の変位を加算する。もし、推定されたMA15の変位が実際の変位yMに一致するならば、加算器224は位置誤差eに推定されたMA15の変位を加算することにより、VCMA14の位置yVの目標値rとの差分(r−yV)を算出することになる。つまり、ヘッド12の位置yと推定されたMA15の変位とから、VCMA14の位置yVが推定されることになる。加算器224の加算結果は、VCMAコントローラ(CV(s))225の入力に与えられる。これにより、VCMA14とMA15とは、非干渉化される。つまりサーボコントローラ22は、VCMA(PV(s))14及びMA(PM(s))15に関し、非干渉系を構成する。VCMAコントローラ(CV(s))225は、VCMA14に与える操作量uVを、加算器224の加算結果に基づいて生成する。
【0029】
ところで、MA15の変位は、例えば相対位置センサにより検出することも可能である。しかし、相対位置センサは高価格である。このため、上述のようMAモデル(E)223によってMA15の変位を推定するのが一般的である。また、MAモデル223には、MA15に印加される電圧(以下、MA電圧と称する)Vinの増加及び減少に対するMA15の変位の関係が直線となる線形モデルが用いられるのも一般的である。
【0030】
周知のように、MA15はVCMA14よりも応答速度が速い。そこで、MA15を用いてヘッド12を目標トラックに移動させるならば、シーク時間を短縮することができる。但し、MA15を用いてヘッド12をディスク11の半径方向に移動させることが可能な距離、いわゆるシーク距離は、MA15が駆動可能な範囲に限られる。MA15が駆動可能な範囲は、VCMA14と異なって極めて狭い。
【0031】
そこで第1の実施形態では、ディスク11の半径方向に1トラック(より詳細には、1トラック幅)だけヘッド12を移動させるシーク動作(つまり1トラックシーク動作)に、MA15が利用される。MA15(MA15及びVCMA14)を用いてシーク動作を行う場合、MA15よりも応答速度の遅いVCMA14は、当該MA15から遅れて目標トラックに到達することになる。
【0032】
図3は、MA15のヒステリシス特性を考慮せずに、VCMA14よりも先にMA15を目標トラックへ1トラックだけ移動させるシーク動作(1トラックシーク動作)が実行される場合における、時間(より詳細にはシーク動作開始時からの経過時間)に対する、VCMA14、MA15及びヘッド12のそれぞれの位置を示す。ここでは、ヘッド12がトラックTに位置付けられている状態で、当該ヘッド12を目標トラックであるトラックT+1に移動させるものとする。
【0033】
図3において、曲線31及び32は、それぞれ、時間に対するVCMA14の位置及びMA15の位置を示す。曲線33は、時間に対するヘッド12の位置を示す。図3では、VCMA14、MA15及びヘッド12のそれぞれの位置は、1トラックシーク動作開始時における当該VCMA14、MA15及びヘッド12のそれぞれの位置を基準(0)とする相対位置で示されている。図3において位置の単位はトラックである。例えば、位置1、位置0.5は、それぞれ、基準位置0から1トラック(1トラック幅)だけずれた位置、1/2トラックだけずれた位置を示す。したがって、図3において、例えば基準位置0は、1トラックシーク動作開始前にヘッド12が位置しているトラックTの位置に対応し、位置1は目標トラックT+1の位置に対応する。
【0034】
図3から明らかなように、曲線32によって示されるMA15の位置は、当該MA15の高速応答性により、VCMA14に比べて極めて短時間で「1」に近付く。つまりMA15は高速で目標トラックに近付く。このようにMA15を高速で目標トラックに近付けるために、MA15にはシーク動作開始時から大きなMA電圧が印加される。このMA電圧は、MA15が目標トラックに近付くにつれて小さくなる。
【0035】
一般にMA15は、MA電圧に対してヒステリシス特性を有している。図4は、MA15のヒステリシス特性の例を示す。図4において曲線41は、MA電圧Vinが−20Vから+20Vまで徐々に増加される場合の、MA電圧Vinに対するMA15の変位を示す。図4において曲線42は、曲線41とは逆に、MA電圧Vinが+20Vから−20Vまで徐々に減少される場合の、MA電圧Vinに対するMA15の変位を示す。曲線41及び42から明らかなように、MA15はMA電圧に対してヒステリシス特性を有している。MA15のヒステリシスは、電圧の増加または減少が大きいほど大きくなる。このため、シーク動作開始時に大きなMA電圧がMA15に印加された後、当該MA15が目標トラックに近付いたためにMA電圧が低くなると、MA15はヒステリシスの影響を大きく受ける。
【0036】
ところが、MAモデル223は線形モデルである。このため、MA15がヒステリシスの影響を受けた場合、MA15の実際のMA変位とMAモデル223によって推定された変位との間に誤差が生じる。図5は、1トラックシーク動作における時間に対するMA15の変位(位置)を、推定された変位及び実際の変位のそれぞれについて示す。
【0037】
図5において、曲線51は、時間に対するMA15の推定された変位の関係、つまりMA15がヒステリシス特性を有していないことを前提としてMAモデル223を適用する場合の当該MA15の変位の時間に対する関係を示す。以下の説明では、MA15がヒステリシス特性を有していないことを前提とする場合を、単にヒステリシスがない場合と称する。曲線52は、時間に対するMA15の実際の変位の関係、つまりMA15がヒステリシス特性を有している場合の当該MA15の変位の時間に対する関係を示す。以下の説明では、MA15がヒステリシス特性を有している場合を、単にヒステリシスがある場合と称する。
【0038】
図5から明らかなように、MA15の推定された変位と実際の変位との間に、ヒステリシスの影響で差(位置誤差)が生じる。つまり、MA15を用いたシーク動作(1トラックシーク動作)では、当該シーク動作の開始時にMA15に大電圧がかかるため、ヘッド12が目標トラックに位置付けられる定常状態へ移行する際に、ヒステリシスの影響による位置誤差が生じる。このために、1トラックシーク動作において、図3において曲線33で示すように、ヘッド12が目標トラックからずれるオフトラック状態が発生する。このため、ヘッド12を高速で目標トラックに位置付けることが難しい。
【0039】
そこで第1の実施形態では、MA15を利用して1トラックシーク動作(つまり短距離シーク動作)を実行する場合に、ヒステリシスの影響による位置誤差を減らすための構成を適用する。この構成について説明する。
【0040】
第1の実施形態では、1トラックシーク動作において、MA15がVCMA14よりも先に目標トラックに到達した後MA電圧(つまりMA15の変位)が単調に減少する期間、VCMA14の位置(変位)が単調に変化(ここでは増加)することが利用される。具体的には、ヒステリシスの影響が、MA15が線形モデルに従って駆動すると仮定した状態からのMA電圧の遅れとして捉えられる。MA電圧の遅れは、当該MA電圧とMA15の変位との関係から、MA15の変位の遅れとして現れる。したがって、ヒステリシスの影響を、MA電圧をMA15の変位に換算した場合における、当該MA15の変位の遅れと捉えることも可能である。
【0041】
以下、ヒステリシスの影響を、MA電圧(MA15の変位)の遅れと捉えることの意義について、図6及び図7を参照して説明する。
図6は、ヒステリシスがある場合のMA電圧Vinに対するMA15の変位をヒステリシスがない場合のMA電圧Vinに対するMA15の変位と対比して示す。図6において、曲線61及び62は、それぞれ図4における曲線41及び42に相当する。但し、図6では、MA電圧Vinが負電圧の範囲は省略されている。直線60は、ヒステリシスがない場合のMA電圧Vinに対するMA15の変位を示す。
【0042】
図7は、ヒステリシスがない場合(前者)とヒステリシスがある場合(後者)のそれぞれにおける、時間に対するMA15の変位(MA15の相対位置)を示す。図7において、直線71は前者における時間に対するMA15の変位(つまり、MA15の推定された変位)を示す。曲線72は後者における時間に対するMA15の変位(つまり、MA15の実際の変位)を示す。
【0043】
ここで、MA15が先に目標トラックに到達し、その際にVCMA14は目標トラックへ向かって移動している最中であるものとする。MA15の変位が「1」となって、当該MA15が目標トラックに到達した際の、直線60、曲線62、直線71及び曲線72上の点をP1とし、その時点tを0とする。この時点t=0におけるMA電圧は前述したように大電圧であり、以後MA電圧は時間tの経過と共に徐々に小さくなる。その理由は、VCMA14が目標トラックへ近付くためである(図3参照)。MA電圧が徐々に小さくなると、MA15の変位は点P1(時点t=0)での変位から時間tの経過と共に単調に減少する。
【0044】
やがて、MA電圧Vinがδとなった時点t1で、ヒステリシスがない場合におけるMA15の変位(つまり、図6の直線60上及び図7の直線71上の点P2における推定された変位)がαとなったものとする。しかし、ヒステリシスがある場合、MA電圧がδであっても、MA15の変位(つまり実際の変位)は、図6の曲線62上及び図7の曲線72上の点P2’における変位βとして現れる。このように、ヒステリシスがある場合とヒステリシスがない場合とで、MA15の変位がβ−αだけ異なる。このβ−αが、ヒステリシスの影響による位置誤差となる。
【0045】
時点t1以後も1トラックシーク動作が続き、VCMA14が目標トラックにより近付くと、MA電圧は更に減少する。前述したように、1トラックシーク動作においてMA15が目標トラックに到達した後MA電圧(MA15の変位)が単調に減少する期間、VCMA14の位置は単調に増加する。このため、時点t1より後の時点でMA15の実際の変位がαとなる。ここでは、MA電圧Vinがε(ε<δ)まで低下した時点t2(t2>t1)で、図6の曲線62上及び図7の曲線72上の点P3におけるMA15の実際の変位がαとなったものとする。つまり、時点t1で必要なMA15の実際の変位α及び当該変位αのために必要なMA電圧ε(Vin=ε)は、時点t1よりも時間t2−t1だけ遅れた時点t2で取得される。
【0046】
このようにヒステリシスがある場合、時点t1で必要なMA15の変位αが時点t1よりも時間t2−t1だけ遅れて取得される。よってヒステリシスの影響を、図7に示すように、MA15の変位の遅れと捉えることができる。また、変位αのために必要なMA電圧εも、時点t1よりも時間t2−t1だけ遅れた時点t2で取得される。したがって、ヒステリシスの影響を、MA電圧Vinの遅れと捉えることもできる。つまり、ヒステリシスがあると、MA15の変位及びMA電圧に遅れが生じると見なすことができる。
【0047】
さて、MA15の実際の変位αを時点t1で取得するには、図6から明らかなように、MA15にMA電圧(操作量uM)としてεが与えられる必要がある。MA電圧εは、ヒステリシスがない場合におけるMA15の変位γに対応する。しかし、ヒステリシスがない場合、時点t1では、上述のようにMA15にMA電圧(操作量uM)δが与えられ、その結果MA15の実際の変位はβとなる。
【0048】
時点t1でMA15に与えられるδがεに補正されるためには、MA電圧ε−δが取得されればよい。また、時点t1で必要とするMA15の変位がαからγに補正されるためには、変位γ−αが取得されればよい。ヒステリシスがない場合、変位γを取得するためにMA15にMA電圧εが与えられるのは、上述したように時点t2である。このとき、実際の変位はαとなる。よって、MA電圧ε−δ及びMA15の変位γ−αを、ヒステリシスによる時点t1からの時間t2−t1の遅れと捉えることができる。
【0049】
そこで第1の実施形態では、このヒステリシスの影響を減らすため、ヒステリシスによる遅れに相当する未来のMA電圧(MA15の変位)、つまり未来の相対位置誤差が推定される。上述の例では、未来のMA電圧はεであり、未来のMA15の変位はγであり、ヒステリシスによる遅れに相当するMA電圧はε−δであり、ヒステリシスによる遅れに相当するMA15の変位はγ−αである。また、第1の実施形態では、推定された未来のMA電圧(MA15の変位)に相当する操作量uM(MA電圧)がMA15に加わるよう、ヒステリシスによる遅れに相当する操作量がMAコントローラ(CM(s))222によって生成される操作量に加算される。この加算された操作量が、操作量uM(MA電圧)としてMA15に与えられる。
【0050】
次に、ヒステリシスによる遅れに相当する未来のMA電圧(MA15の変位)の推定について、図2及び図7を再び参照して説明する。
MA電圧、つまり操作量uMは、ヘッド12の移動先のトラック(つまり目標トラック)での位置誤差eとVCMA14の位置yVとで決まる。VCMA14の位置yVとMA15の変位yMとを加えたヘッド位置yは、ヘッド12を目標トラックの目標位置に保つには一定である必要がある。このことは、VCMA14の未来の位置を推定すれば、MA15の未来の変位(またはMA電圧)が推定可能なことを示す。
【0051】
そこで第1の実施形態では、ヒステリシスによる遅れに相当するMA15の未来の変位(またはMA電圧)を推定するために、VCMA14の未来の位置が推定される。そのため、図2に示されるように、コントローラ20内に、フィルタ(Q(s))226、加算器227及びスイッチ228が追加される。
【0052】
フィルタ226は、VCMA(PV(s))14の出力を当該フィルタ226に通すことで、VCMA14の未来の位置を推定する。フィルタ226はまた、VCMA14の推定された未来の位置から、MA15の未来の変位(またはMA電圧)に相当する操作量を推定する。
【0053】
加算器227は、MA15の制御ループに備えられている。加算器227は、フィルタ226の出力(つまりMA15の未来の変位またはMA電圧に相当する操作量)を、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量に加算する。スイッチ228は、所定のシーク動作の開始時にオン状態(第1の状態)設定される。スイッチ228は、オン状態に設定されている期間、フィルタ226から加算器227に有効な出力が伝達されるのを許可する。第1の実施形態において、所定のシーク動作は1トラックシーク動作である。
【0054】
VCMA14の未来の位置の推定には、例えば、現在のVCMA14の位置yVとVCM速度とが用いられる。VCM速度は、VCMA14の位置の変化量を表す。フィルタ(Q(s))226は、このVCM速度に所定の係数pを乗じた値に現在のVCMA14の位置yVを加算することで、VCMA14の未来の位置を推定し、ヒステリシスによる遅れに相当するMAの変位またはMA電圧に相当する操作量を計算する。係数pは、どの程度未来の位置を推定するかの指標である。VCM速度(つまりVCMA14の速度)は、例えば、VCMA14の位置を微分することによって取得できる。このためフィルタ(Q(s))226に微分器を持たせることで、VCMA14の位置からVCM速度が得られる。
【0055】
係数pはヒステリシスによるMA15の変位の遅れとVCMA14の速度に依存するため一定ではない。そこで第1の実施形態では、事前に平均的な遅れ時間に相当する値が係数pとして設定される。平均的な遅れ時間は、例えば、ヒステリシスによるMA15の変位の遅れをVCM速度で除することにより算出される。なお、MA15のヒステリシス特性とシーク動作(1トラックシーク動作)時のVCMA14の速度を測定して、その測定結果が設定されたテーブルがFROM23aに格納される構成としてもよい。また、このテーブルが、FROM23aに格納されているファームウェアに設定されていても構わない。
【0056】
ここで、上記第1の実施形態の第1の変形例について説明する。
図8は、上記第1の実施形態の第1の変形例で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図8において、図2と等価な要素には同一参照符号を付してある。
【0057】
図8に示すサーボコントローラ22は、状態オブザーバ(B)229を備えている。状態オブザーバ(B)229は、VCMAモデルを有しており、当該VCMAモデルと、VCMAコントローラ225の出力uV(つまりVCMA14の入力)、MAモデル(E)223によって推定されたMA15の変位及びヘッド12の位置(ヘッド位置)とに基づいて、VCMA14の位置、速度及び加速度を推定する。上記ヘッド12の位置には、ヘッド位置y、つまりRDC19によって検出されたヘッド位置yが用いられる。
【0058】
第1の変形例では、上述したVCMA14の未来の位置の推定に用いられるVCMA14の速度として、状態オブザーバ229によって推定された当該VCMA14の速度が用いられる。つまり状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の速度が、フィルタ226に入力される。しかし、VCMA14の速度は前述したように、VCMA14の位置を微分することによって取得できる。そこで、フィルタ226が、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の位置を微分する微分器を備えていてもよい。この場合、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の速度は、必ずしもフィルタ226に入力される必要はない。
【0059】
次に、上記第1の実施形態の第2の変形例について説明する。
図9は、上記第1の実施形態の第2の変形例で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図9において、図2及び図8と等価な要素には同一参照符号を付してある。
【0060】
図9に示すサーボコントローラ22の特徴は、減算器221による位置誤差eの算出に用いられるヘッド位置として、RDC19により検出されたヘッド位置yに代えて、状態オブザーバ(B)229によって推定されたヘッド位置が用いられる点にある。
【0061】
第2の変形例において、状態オブザーバ229は、VCMAモデルと、VCMAコントローラ225の出力、MAモデル(E)223によって推定されたMA15の変位及びヘッド位置yとに基づいて、VCMA14の位置、速度及び加速度(つまりVCMA14の推定された状態)を推定する。状態オブザーバ229は更に、上記推定されたVCMA14の位置と上記上記推定されたMA15の変位とを加算することで、ヘッド12の位置を推定する。
【0062】
第2の変形例では、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の位置または速度の少なくとも一方を含む、VCMA14の推定された状態が、フィルタ(Q(s))226に入力される。状態オブザーバ229によって推定されたヘッド位置は、RDC19によって検出されたヘッド位置yに代えて、減算器221に入力される。
【0063】
前述したように、VCMA14の速度は、VCMA14の位置を微分することによって取得できる。そこで、フィルタ226が、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の位置を微分する微分器を備えていてもよい。この場合、フィルタ226に入力されるVCMA14の推定された状態に、VCMA14の推定された速度が含まれている必要はない。
【0064】
また、VCMA14の未来の位置は、VCMA14の速度と加速度からも推定可能である。そこで、フィルタ226が、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の速度に例えば乗算器によって係数qを乗じたものと、状態オブザーバ229によって推定されたVCMA14の加速度に例えば乗算器によって係数mを乗じたものとの和をとることにより、VCMA14の未来の位置を推定してもよい。係数qは上記係数pと同様に、どの程度未来の位置を推定するかの指標であり、例えば上述の平均的な遅れ時間である。係数mは、推定する未来の時間までの加速度の寄与を示す指標である。
【0065】
次に、第1の実施形態で適用される、サーボコントローラ22の制御によるシーク動作の手順について、図10のフローチャートを参照して説明する。なお、この手順は、第1の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例においても同様に適用される。
【0066】
今、ヘッド12がトラックTに位置付けられているオントラック状態にあるものとする。この状態で、例えばホストコンピュータ21からサーボコントローラ22にシーク命令が発行されたものとする。するとサーボコントローラ22は、ヘッド12をシーク命令で指定された目標トラックに移動するためのシーク動作を開始する。
【0067】
まずサーボコントローラ22は、現在ヘッド12が位置しているトラックTから目標トラックにヘッド12を移動するのに必要なシーク距離が1トラック(1トラック幅)であるかを判定する(ステップ801)。ここでは、目標トラックが、トラックTに隣接するトラックT+1であり、したがってシーク距離は1トラックであるものとする。
【0068】
このように、シーク距離が1トラックであるならば(ステップ801のYES)、つまり1トラックシーク動作であるならば、サーボコントローラ22は切り替え制御手段として機能して、スイッチ228をオンする(ステップ802)。するとサーボコントローラ22では、フィルタ(Q(s))226によって推定されたヒステリシスによる遅れに相当するMA15の変位またはMA電圧に相当する操作量が、スイッチ228を介して加算器227に入力される。
【0069】
加算器227には、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量も入力される。加算器227は、MAコントローラ(CM(s))222によって生成された操作量に、フィルタ(Q(s))226によって推定されたMA15のヒステリシスによる遅れに相当する変位またはMA電圧に相当する操作量が加算される。この加算器227の加算結果が操作量uVとしてMA15に与えられる。これにより、MA15の実際の変位とMAモデル223によって推定されたMA15の変位との誤差を低減することができる。つまり、MA15のヒステリシスの影響によってヘッド12を目標トラックに位置付ける際の誤差を低減することができる。
【0070】
サーボコントローラ22はスイッチ228をオンすると(ステップ802)、検出手段として機能して、カウントNを初期値0に設定する(ステップ803)。そしてサーボコントローラ22は、カウントNを1インクリメントする(ステップ804)。カウントNは、VCMA14の速度(VCMA速度)が閾値(つまり所定の速度)fより低い状態が連続するサンプルの数を示すのに用いられる。
【0071】
次にサーボコントローラ22(検出手段)は、VCMA14の速度が閾値fより低いかを判定する(ステップ805)。もし、VCMA14の速度が閾値fより低くないならば(ステップ805のNO)、サーボコントローラ22はカウントNを0にリセットして(ステップ806)、ステップ804に戻る。
【0072】
これに対し、VCMA14の速度が閾値fより低いならば(ステップ805のYES)、サーボコントローラ22は、カウントNが閾値gより大きいかを判定する(ステップ807)。もし、カウントNが閾値gより大きくないならば(ステップ807のNO)、サーボコントローラ22は、VCMA14の速度が閾値fより低い状態が連続するサンプル数は、gを超えていないと判定する。この場合、サーボコントローラ22はステップ804に戻る。
【0073】
これに対し、カウントNが閾値gより大きいならば(ステップ807のYES)、サーボコントローラ22(検出手段)は、VCMA14の速度が閾値fより低い状態が連続するサンプル数は、gを超えたと判定する。つまりサーボコントローラ22(検出手段)は、VCMA14の速度がgサンプル連続して閾値fより低くなる特定状態を検出する。この場合、サーボコントローラ22は、MA15よりも遅れて移動するVCMA14が目標トラックに安定して到達しているものと判定する。すると、サーボコントローラ22は切り替え制御手段として機能して、スイッチ228をオフする(ステップ808)。これによりフィルタ226から加算器227に有効な出力が伝達されるのが抑止され、シーク動作(1トラックシーク動作)は終了する。
【0074】
一方、シーク距離が1トラックでないならば(ステップ801のNO)、つまり1トラックシーク動作でないならば、サーボコントローラ22は、通常のシーク動作の制御を実行する(ステップ809)。通常のシーク動作では、スイッチ228はオフ状態にある。この場合、サーボコントローラ22は、先行技術と同様に、VCMA14及びMA15に関し、非干渉系として機能する。
【0075】
図11は、1トラックシーク動作が、上述のようにスイッチ228のオン状態で行われた場合の特性を、スイッチ228がオフ状態で行われた場合と対比して示す。つまり図11は、MA15のヒステリシスの影響を補償した場合の1トラックシーク動作の特性を、先行技術のように補償しない場合と対比して示す。図11において、曲線911,912及び913は、補償なしの場合における、それぞれ、時間に対するVCMA14の位置、MA15の位置及びヘッド12の位置を示す。また、曲線921,922及び923は、補償ありの場合における、それぞれ、時間に対するVCMA14の位置、MA15の位置及びヘッド12の位置を示す。また、曲線930は時間に対するVCMA14の速度を示す。図11では、図3と同様に、位置0が1トラックシーク動作開始前にヘッド12が位置しているトラックTの位置に対応し、位置1が目標トラックT+1の位置に対応する。なお、図11では、VCMA14の速度を示す目盛りは省略されている。
【0076】
図11の特に曲線913及び923から明らかなように、第1の実施形態によれば、ヘッド12が目標トラックに高速で移動され、しかも少ない位置誤差で目標トラックに安定して位置付けられる。
【0077】
上記第1の実施形態では、1トラックシーク動作の場合に、スイッチ228がオンされて、フィルタ226の出力がMAコントローラ222の入力に加算される。つまり1トラックシーク動作の場合に、ヒステリシスの影響が補償される。しかし、ヘッド12の移動距離(シーク距離)がMA15の駆動可能な範囲に収まるならば、シーク距離が1トラックを超えるシーク動作にも適用可能である。また、図2において、フィルタ226及びスイッチ228の位置が逆で合っても構わない。つまりスイッチ228が、フィルタ226の入力側に配置されていても構わない。
【0078】
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態に係る磁気ディスク装置におけるサーボコントローラついて説明する。
第2の実施形態に係る磁気ディスク装置は、第1の実施形態と同様に、サーボコントローラ22を含む図1に示す構成を適用するものとする。第2の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、サーボコントローラ22の構成である。
【0079】
図12は、第2の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図12において、図2と等価な要素には同一参照符号を付してある。図12に示すサーボコントローラ22の特徴は、加算器227(図2参照)に相当する加算器241がMAコントローラ(CM(s))222の入力側に備えられていることである。また、フィルタ226及びスイッチ228の位置は、図2と逆である。しかし、フィルタ226及びスイッチ228の位置が図2と同一であっても構わない。
【0080】
第2の実施形態では、フィルタ(Q(s))226は、MA15のヒステリシスによる遅れに相当する変位を推定する。この推定された変位が、MAコントローラ(CM(s))222に入力される位置誤差eに、加算器241によって加えられる。
【0081】
[第3の実施形態]
次に第3の実施形態に係る磁気ディスク装置におけるサーボコントローラついて説明する。
第3の実施形態に係る磁気ディスク装置は、第1の実施形態と同様に、サーボコントローラ22を含む図1に示す構成を適用するものとする。第3の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、サーボコントローラ22の構成である。
【0082】
図13は、第3の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図12において、図2と等価な要素には同一参照符号を付してある。図13に示すサーボコントローラ22の特徴は、VCMA14及びMA15の制御に、周知のフィードフォワード(FF)制御が適用されることである。
【0083】
図13に示すサーボコントローラ22は、図2に示す構成に加えて、VCMAフィードフォワードコントローラ(CFV(s))251、加算器252、減算器253、MAフィードフォワードコントローラ(CFM(s))254、MAフィードフォワードコントローラ(−CFM(s))255、及び加算器256を備えている。
【0084】
図13では、VCMA14及びMA15のための目標軌道rV及びrMが用いられる。目標軌道rV及びrMは、ヘッド12を目標トラックに移動させる距離(シーク距離)に対応して設定される。減算器221は、第1の実施形態と異なり、目標軌道(第2の目標軌道)rVに対するヘッド位置yの差分を算出する。減算器221の出力は、第1の実施形態と同様に、加算器224に与えられる。
【0085】
VCMフィードフォワードコントローラ(CFV(s))251は、目標軌道rVに対応するフィードフォワード操作量を生成する。加算器252は、この目標軌道rVに対応するフィードフォワード操作量をVCMAコントローラ225により生成される操作量(フィードバック操作量)に加算する。加算器252の加算結果は、操作量uVとしてVCMA14に与えられる。
【0086】
減算器253は、目標軌道(第1の目標軌道)rMに対するヘッド位置yの差分を算出する。減算器253の出力は、MAコントローラ(CM(s))222に与えられる。
MAフィードフォワードコントローラ(CFM(s))254は、目標軌道rMに対応するフィードフォワード操作量を生成する。MAフィードフォワードコントローラ(−CFM(s))255は、目標軌道rVに対応する、VCMA14の動きに相当するフィードフォワード操作量を生成する。
【0087】
加算器256は、MAコントローラ(CM(s))222によって生成される操作量(フィードバック操作量)に、MAフィードフォワードコントローラ254及び255によってそれぞれ生成されるフィードフォワード操作量を加算する。MAモデル223は、第1の実施形態と異なり、加算器256の加算結果に基づいてMA15の変位を推定する。
【0088】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なって、加算器256の加算結果が加算器227に与えられる。この加算器227には、第1の実施形態と同様に、フィルタ(Q(s))226によって推定されたMA15の未来の変位またはMA電圧に相当する操作量も与えられる。加算器227の加算結果は、第1の実施形態と同様に操作量uMとしてMA15に与えられる。
【0089】
[第4の実施形態]
次に第4の実施形態に係る磁気ディスク装置におけるサーボコントローラついて説明する。
第4の実施形態に係る磁気ディスク装置は、第1の実施形態と同様に、サーボコントローラ22を含む図1に示す構成を適用するものとする。第4の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、サーボコントローラ22の構成である。
【0090】
図14は、第4の実施形態で適用されるサーボコントローラ22の構成を示すブロック図である。図14において、図12及び図13と等価な要素には同一参照符号を付してある。図14に示すサーボコントローラ22の特徴は、加算器227(図2参照)に相当する加算器241がMAコントローラ(CM(s))222の入力側に備えられていることである。
【0091】
第4の実施形態では、フィルタ(Q(s))226は、MA15のヒステリシスによる遅れに相当する変位を推定する。この推定された変位が、MAコントローラ(CM(s))222に入力される減算器253の出力に、加算器241によって加算される。
【0092】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、マイクロアクチュエータのヒステリシス特性に適合したシーク動作を実現できるマイクロアクチュエータを備えた磁気ディスク装置を提供することができる。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
11…ディスク、12…ヘッド、14…VCMアクチュエータ(VCMA、PV(S))、15…マイクロアクチュエータ(MA、PM(S))、16…VCM(ボイスコイルモータ)、17…ドライバIC、20…コントローラ、21…ホストコントローラ、22…サーボコントローラ、23a…フラッシュROM(FROM)、222…マイクロアクチュエータコントローラ(MAコントローラ、CM(s))、223…マイクロアクチュエータモデル(MAモデル、E、マイクロアクチュエータ推定器)、225…VCMアクチュエータコントローラ(VCMAコントローラ、CV(s))、226…フィルタ(Q(s))、227…加算器、228…スイッチ、229…状態オブザーバ(B)、241…加算器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドを粗動させるVCMアクチュエータと、
前記ヘッドを微動させるマイクロアクチュエータと、
前記VCMアクチュエータ及び前記マイクロアクチュエータを併用して前記ヘッドを目標トラックに移動させるための所定のシーク動作を制御するサーボコントローラとを具備し、
前記サーボコントローラは、
前記目標トラックまたは前記マイクロアクチュエータに対応する第1の目標軌道と前記ヘッドの位置との間の位置誤差に基づいて、前記マイクロアクチュエータを制御するマイクロアクチュエータコントローラと、
前記マイクロアクチュエータに与えられるべき第1の操作量から線形モデルにより前記マイクロアクチュエータの第1の変位を推定するマイクロアクチュエータ推定器と、
前記目標トラックまたは前記VCMアクチュエータに対応する第2の目標軌道と前記ヘッドの位置及び前記推定された第1の変位から推定される前記VCMアクチュエータの位置との間の位置誤差に基づいて、前記VCMアクチュエータを制御するVCMアクチュエータコントローラと、
前記所定のシーク動作における前記VCMアクチュエータの状態から、前記マイクロアクチュエータのヒステリシスによる前記マイクロアクチュエータの変位の遅れに対応する前記VCMアクチュエータの位置を推定し、前記推定された位置から前記マイクロアクチュエータの前記遅れの変位である第2の変位を推定するフィルタと、
前記推定された第2の変位または前記推定された第2の変位に対応する第2の操作量を、前記マイクロアクチュエータコントローラの入力または前記マイクロアクチュエータの入力に加算する加算器と
を具備する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記所定のシーク動作の開始時に第1の状態に設定され、前記第1の状態に設定されている期間、前記フィルタから前記加算器に有効な出力が伝達されるのを許可するスイッチを更に具備する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記所定のシーク動作の終了が検出された場合、前記スイッチを、前記フィルタから前記加算器に有効な出力が伝達されるのを抑止する第2の状態に切り替える切り替え制御手段と
を更に具備する請求項2記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記所定のシーク動作で前記ヘッドを前記目標トラックに移動するのに必要な距離が、前記マイクロアクチュエータが駆動可能な範囲内である請求項3記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記VCMアクチュエータの状態は、前記VCMアクチュエータの速度であり、
前記フィルタは、前記VCMアクチュエータの速度に所定の係数を乗じることにより、前記VCMアクチュエータの未来の位置を推定する
請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記VCMアクチュエータコントローラの出力、前記第1の変位及び前記ヘッドの位置とVCMアクチュエータモデルとに基づき前記VCMアクチュエータの速度を含む前記VCMアクチュエータの状態を推定する状態オブザーバを更に具備する請求項5記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記VCMアクチュエータの状態は、前記VCMアクチュエータの位置であり、
前記フィルタは、
前記VCMアクチュエータの位置を微分することにより前記VCMアクチュエータの位置を前記VCMアクチュエータの速度に変換する微分器と、
前記変換された前記VCMアクチュエータの速度に所定の係数を乗じることにより、前記VCMアクチュエータの前記推定された位置を算出する乗算器とを具備する
請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記VCMアクチュエータコントローラの出力、前記第1の変位及び前記ヘッドの位置とVCMアクチュエータモデルとに基づいて前記VCMアクチュエータの位置を含む前記VCMアクチュエータの状態を推定する状態オブザーバを更に具備する請求項7記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記サーボコントローラが、前記VCMアクチュエータ及び前記マイクロアクチュエータに関し、非干渉系を構成する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
前記サーボコントローラは、前記第1の目標軌道及び前記VCMアクチュエータの動きに従って前記マイクロアクチュエータを制御し、前記第2の目標軌道に従って前記VCMアクチュエータを制御する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項1】
ヘッドを粗動させるVCMアクチュエータと、
前記ヘッドを微動させるマイクロアクチュエータと、
前記VCMアクチュエータ及び前記マイクロアクチュエータを併用して前記ヘッドを目標トラックに移動させるための所定のシーク動作を制御するサーボコントローラとを具備し、
前記サーボコントローラは、
前記目標トラックまたは前記マイクロアクチュエータに対応する第1の目標軌道と前記ヘッドの位置との間の位置誤差に基づいて、前記マイクロアクチュエータを制御するマイクロアクチュエータコントローラと、
前記マイクロアクチュエータに与えられるべき第1の操作量から線形モデルにより前記マイクロアクチュエータの第1の変位を推定するマイクロアクチュエータ推定器と、
前記目標トラックまたは前記VCMアクチュエータに対応する第2の目標軌道と前記ヘッドの位置及び前記推定された第1の変位から推定される前記VCMアクチュエータの位置との間の位置誤差に基づいて、前記VCMアクチュエータを制御するVCMアクチュエータコントローラと、
前記所定のシーク動作における前記VCMアクチュエータの状態から、前記マイクロアクチュエータのヒステリシスによる前記マイクロアクチュエータの変位の遅れに対応する前記VCMアクチュエータの位置を推定し、前記推定された位置から前記マイクロアクチュエータの前記遅れの変位である第2の変位を推定するフィルタと、
前記推定された第2の変位または前記推定された第2の変位に対応する第2の操作量を、前記マイクロアクチュエータコントローラの入力または前記マイクロアクチュエータの入力に加算する加算器と
を具備する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記所定のシーク動作の開始時に第1の状態に設定され、前記第1の状態に設定されている期間、前記フィルタから前記加算器に有効な出力が伝達されるのを許可するスイッチを更に具備する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記所定のシーク動作の終了が検出された場合、前記スイッチを、前記フィルタから前記加算器に有効な出力が伝達されるのを抑止する第2の状態に切り替える切り替え制御手段と
を更に具備する請求項2記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記所定のシーク動作で前記ヘッドを前記目標トラックに移動するのに必要な距離が、前記マイクロアクチュエータが駆動可能な範囲内である請求項3記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記VCMアクチュエータの状態は、前記VCMアクチュエータの速度であり、
前記フィルタは、前記VCMアクチュエータの速度に所定の係数を乗じることにより、前記VCMアクチュエータの未来の位置を推定する
請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記VCMアクチュエータコントローラの出力、前記第1の変位及び前記ヘッドの位置とVCMアクチュエータモデルとに基づき前記VCMアクチュエータの速度を含む前記VCMアクチュエータの状態を推定する状態オブザーバを更に具備する請求項5記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記VCMアクチュエータの状態は、前記VCMアクチュエータの位置であり、
前記フィルタは、
前記VCMアクチュエータの位置を微分することにより前記VCMアクチュエータの位置を前記VCMアクチュエータの速度に変換する微分器と、
前記変換された前記VCMアクチュエータの速度に所定の係数を乗じることにより、前記VCMアクチュエータの前記推定された位置を算出する乗算器とを具備する
請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
前記VCMアクチュエータコントローラの出力、前記第1の変位及び前記ヘッドの位置とVCMアクチュエータモデルとに基づいて前記VCMアクチュエータの位置を含む前記VCMアクチュエータの状態を推定する状態オブザーバを更に具備する請求項7記載の磁気ディスク装置。
【請求項9】
前記サーボコントローラが、前記VCMアクチュエータ及び前記マイクロアクチュエータに関し、非干渉系を構成する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【請求項10】
前記サーボコントローラは、前記第1の目標軌道及び前記VCMアクチュエータの動きに従って前記マイクロアクチュエータを制御し、前記第2の目標軌道に従って前記VCMアクチュエータを制御する請求項1記載の磁気ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−198967(P2012−198967A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63337(P2011−63337)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【特許番号】特許第4991947号(P4991947)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【特許番号】特許第4991947号(P4991947)
【特許公報発行日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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