説明

マイクロアレイをケミカルイメージングするためのシステムおよび方法

本開示は、マイクロアレイをケミカルイメージングするためのシステムおよび方法に関する。1つの実施形態において、本開示は、アレイ(300)に配列された複数の試料を同時スペクトルイメージングするためのシステムに関する。システムは、上記複数の試料へ照明フォトンを提供するための照明光源(310)であって、照明フォトンは、複数の試料の各々と相互作用し、相互作用したフォトンを放出する照明光源と、上記複数の試料を受け取るためのアレイ(300)であって、試料が光学装置(320)の同時視野内にあるような外寸を有するアレイ(300)と、相互作用したフォトンを収集し、フォトンをイメージング装置(350)へ方向づけるための光学装置(320)であって、イメージング装置(350)は複数の試料の各々に対応する複数の画像を同時に形成する光学装置(350)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分光イメージングは、デジタル画像技術と分子分光学技術とを組み合わせ、これは、ラマン散乱、蛍光、フォトルミネッセンス、紫外線、可視、赤外吸収分光法を含むことができる。材料の化学分析に適用されるときには、分光イメージングは一般に、ケミカルイメージングと称される。分光(すなわち、ケミカル)イメージングを実行するための器具は典型的に、画像ギャザリングオプティクス、焦点面アレイイメージング検出器およびイメージングスペクトロメータを備える。
【背景技術】
【0002】
一般に、試料のサイズが画像ギャザリングオプティクスの選択を決定する。例えば、顕微鏡は、典型的に、1ミクロン未満からミリメートルの空間寸法の試料を分析するために使用される。より大きな物体には、ミリメートルからメートルの寸法の範囲では、マクロレンズオプティクスが適切である。比較的近づきにくい環境内に位置する試料用には、柔軟なファイバースコープまたは剛性ボアスコープを使用することができる。非常に大型の物体、例えば惑星物体用には、望遠鏡が適切な画像ギャザリングオプティクスである。
【0003】
検討中のアレイは、アレイカードに配列された複数の試料を含むことが多い。従来のアレイは、試料を受け取るために典型的に96のウェルを有する4インチ×6インチのウェルプレートを含む。各ウェルの試料は、類似のまたは異なる物質を含むことができる。したがって、例えば、従来のアレイは、96までの異なる試料を含むことができる。従来のマイクロラマン器具で各試料用のスペクトルイメージまたはスペクトルを得るために、所望の波長(λillum)のスポットレーザビームの形態の励起が、96試料の1つへ方向づけられる。第1の試料の適切な画像またはスペクトルが獲得された後に、照明光源はその次のウェルへ方向づけられ、プロセスが繰り返される。各試料を順次画像形成する従来の方法は、時間がかかり、労働集約的である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態において、本開示は、アレイの複数の試料のスペクトルイメージを同時に得るための方法に関する。各画像は、空間的に分解される。1つの実施形態において、方法は、(a)複数の試料の各々を照明フォトンで同時照明することであって、上記照明フォトンは各試料と相互作用し、各試料から相互作用したフォトンを生成することと、(b)相互作用したフォトンを各試料から同時に収集することと、(c)収集したフォトンから複数の試料の各々用にスペクトルイメージを同時に形成することを含んでもよい。
【0005】
別の実施形態において、本開示は、試料を同時分光イメージングするための方法に関する。本方法は、少なくとも2つの試料によって規定されたアレイを提供することと、2つの試料の各々を照明フォトンで照明することであって、上記照明フォトンは各試料と相互作用し、各試料から相互作用したフォトンを生成することと、相互作用したフォトンを各試料から光学装置で同時に収集することと、収集されたフォトンから各試料用に処理機器で同時にスペクトルイメージを形成することを含む。1つの実施形態において、アレイは、試料が光学装置の同時視野内にあるような外寸を有する。
【0006】
さらに別の実施形態において、本開示は、アレイに配列された複数の試料を同時スペクトルイメージングするためのシステムに関する。システムは、上記複数の試料へ照明フォトンを提供するための照明光源であって、照明フォトンは、複数の試料の各々と相互作用し、相互作用したフォトンを放出する照明光源と、上記複数の試料を受け取るためのアレイであって、試料が光学装置の同時視野内にあるような外寸を有するアレイと、相互作用したフォトンを収集し、フォトンをイメージング装置へ方向づけるための光学装置であって、イメージング装置は複数の試料の各々に対応する複数の画像を同時に形成する光学装置を含む。各画像は、空間的に分解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、複数の試料ウェルを有する従来のアレイの概略図である。具体的には、図1は、ウェル110を有するアレイカード100を示す。ウェル110は、各々が試料(図示せず)を受け取るように適合されている。試料は、生体試料、有機試料または無機試料であり得る。アレイ100は、a×bの寸法を有するとして見ることができる。典型的なアレイカードは、3インチ×4インチの寸法を有し、合計で96のウェルを備える。アレイカードのサイズは、各ウェルの試料のすべて(例えば、96試料)をイメージング装置の視野内に収めることを不可能にするのでなければ、あり得なくする。言い換えると、イメージング装置の視野は、1回に2つ以上の試料を同時スペクトルイメージングするのを可能にするには小さすぎる。結果として、各試料は、個別にイメージングされなければならない。
【0008】
図2は、図1のアレイの試料をスペクトルイメージングするためのシステムの概略図である。システム200は、ウェル110を有するアレイカード100を含み、各ウェルは試料を含んでいる。照明光源210は、照明波長(λillum.)を有する照明フォトン215を、ウェル110に含まれたターゲット試料へ方向づける。照明フォトンは、試料と相互作用し、相互作用したフォトン217をターゲットウェルから放出する。放出されたフォトン217から画像を形成するために、ターゲットウェルは、光学装置220の視野内になければならない。光学装置220は、相互作用したフォトンを集め、これをターゲットウェル110に含まれた試料の画像を形成するイメージングシステム203へ方向づける。
【0009】
光学装置220の回折限界およびアレイ100のサイズのため、システム全体の視野は1つの試料に限定され、複数の試料の画像は空間的に分解されない。光学装置220がそのすぐ前のウェルの視野に限定されることは、図2の概略図から容易に見ることができる。結果として、ウェルは、1回に1つずつ順番にサンプリングされなければならない。この目的のために、1回に1つの試料のスペクトルイメージを得るために、オペレータはアレイ100をXおよび/またはY方向に順次動かさければならない。
【0010】
本開示の1つの実施形態にしたがって、アレイ100の形状、サイズまたは形態は、試料のすべてが光学ギャザリング装置の視野内に入るように構成される。例えば、本開示の1つの実施形態にしたがったシステムは、上記複数の試料へ照明フォトンを提供するための照明光源を含む。照明は、アレイに対して上、下、または、傾斜角に位置決めされることができる。照明フォトンは、複数の試料の各々と相互作用し、実質的に同時に、相互作用したフォトンを放出する。光学装置は、次いで、相互作用したフォトンを収集し、複数の試料の各々に対応する複数の画像を同時に形成するためにイメージング装置へフォトンを方向づける。
【0011】
本開示の1つの実施形態にしたがったアレイは、すべての試料がまたは多数の試料が、光学装置またはギャザリングオプティクスの視野内に入るような外寸を有することができる。ギャザリングオプティクスの視野が、オプティクスの回析能力および試料からの距離の関数であるため、アレイの寸法は、実質的にすべての試料がギャザリングオプティクスの視野内にあることを可能にするように、適合されることができる。このようにして、1つの実施形態にしたがって、アレイの寸法は、アレイとオプティクスの焦点との間の距離の関数として規定される。別の実施形態にしたがって、アレイの寸法は、試料の一部またはすべてがギャザリングオプティクスの視野内に入るように、規定される。このようにして、試料のすべてのスペクトルイメージは、アレイを動かす必要なく、同時に形成されることができる。
【0012】
図3は、本開示の1つの実施形態にしたがったアレイの概略図である。具体的には、アレイ300は、試料の複数の画像を同時に得るためのイメージングシステムに関して示されている。試料は、アレイカード300に配列され、アレイカード300は、試料のすべてがギャザリングオプティクス320の視野内に入るような大きさにされる。ギャザリングオプティクス320は、例えば、1つまたはそれ以上の対物レンズおよび光学フィルタを含むことができる。
【0013】
照明光源310は、所望の励起波長を有するフォトンを生成するように適合されたいずれの適切な放出源であってもよい。照明光源310がアレイ300に対して傾斜角で位置決めされる間は、本開示はそれに限定されない。例えば、照明光源310は、励起フォトン315がウェル300に到達することができるように、ギャザリングオプティクス320と同心で、アレイ300の下に、または、アレイ300の上に、位置決めされることができる。
【0014】
ギャザリングオプティクス320は、試料によって放出された相互作用したフォトンのすべてまたはほぼすべてを同時に収集する。相互作用したフォトンは、ラマン、蛍光、吸収、反射、および伝達されたフォトンを含んでもよい。相互作用したフォトンは、照明フォトンと各試料との相互作用によって、形成されることができる。ギャザリングオプティクス320は、収集されたフォトン(図示せず)に焦点を当て、それから形成された画像をチューナブルフィルタ340へ方向づける。チューナブルフィルタ340は、液晶チューナブルフィルタ(「LCTF」)、フィルタホイールまたは音響光学的可変フィルタを含んでもよい。チューナブルフィルタ340は、アレイ300の試料の各々に対応する複数のスペクトル(フィルタ処理波長)を生成することができる。電荷結合素子(「CCD」)等の画像形成装置またはCMOS画像センサは、チューナブルフィルタ340からフィルタ処理波長を受け取ることができ、同時に、複数のウェルから画像を形成する。試料のすべてでなければ数個の試料が、ギャザリングオプティクス320の視野内にあるため、装置350によって形成された画像は、アレイ内の対応試料の各々用の画像を含む。
【0015】
本開示の1つの実施形態にしたがって、アレイの複数の試料のスペクトルイメージを同時に得るための方法は、(a)複数の試料の各々を照明フォトンで同時照明して、試料の各々から相互作用したフォトンを生成することと、(b)相互作用したフォトンを各試料から同時に収集することと、(c)収集したフォトンからすべての試料用にスペクトルイメージを同時に形成することとを含む。相互作用したフォトンは、ラマン、吸収、蛍光、および反射のフォトンを含むことができる。
【0016】
さらに別の実施形態において、アレイは、約1〜100mm2の外寸、例えば、3mm2、4mm2、6mm2、10mm2を有するように設計されている。他の例示的な寸法は、2×4mm2、4×4mm2、6×4mm2および6×8mm2である。ウェルの寸法および位置は、アレイの外寸に適応するように適合されることができる。さらに、ウェルの数は、所望の用途に依存して、増加するかまたは減少することができる。本明細書に提供されたアレイの寸法は、性質上例示的なものである。具体的に開示されていない他のアレイ寸法は、本明細書に開示された原則の範囲内であるとみなされる。
【0017】
別の実施形態において、拡大レンズまたは他の光学装置が、アレイ300と光学装置320との間に差し挟まれることができ、複数の試料が光学装置320の視野に収まることができるように、アレイカードのサイズを光学的に減少する。拡大レンズは、独立型の周辺装置であってもよく、または、ギャザリングオプティクス320と組み合わされてもよい。
【0018】
本開示の原則は、特定の例示的な実施形態に対して開示されているが、本発明の原則はそれに限定されず、本明細書に開示された特定の実施形態に対するすべての修正例および変形例を含むことに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】複数の試料ウェルを有する従来のアレイの概略図である。
【図2】図1のアレイの試料をスペクトルイメージングするためのシステムの概略図である。
【図3】本開示の1つの実施形態にしたがったアレイの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられた試料のアレイのスペクトルイメージを、各試料を他の試料とは無関係に照明することによって提供するための方法において、
(i)すべての試料をフォトンで同時に照明し、各試料から放出されたフォトンを生成するステップと、
(ii)チューナブルフィルタですべての試料から、放出されたフォトンを受け取るステップと、
(iii)前記放出されたフォトンからスペクトルイメージを形成するステップであって、前記スペクトルイメージは複数のサブ画像を含み、各サブ画像は試料のアレイの試料に対応するステップと、
を含む改良。
【請求項2】
前記放出されたフォトンは、ラマン、吸収、蛍光、反射、および伝達されたフォトンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記チューナブルフィルタは、LCTFおよびAOTFからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
(iv)前記複数のサブ画像から1つのサブ画像を選択するステップと、
(v)前記試料の独立した画像を形成するステップと、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
アレイの複数の試料のスペクトルイメージを同時に得るための方法であって、
(a)前記複数の試料の各々を照明フォトンで同時照明することであって、前記照明フォトンは各試料と相互作用し、各試料から相互作用したフォトンを生成することと、
(b)相互作用したフォトンを各試料から同時に収集することと、
(c)前記収集したフォトンから前記複数の試料の各々用にスペクトルイメージを同時に形成することと、
を含む方法。
【請求項6】
検出されたフォトンをチューナブルフィルタによって濾過する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
相互作用したフォトンは、ラマン、吸収、蛍光、および反射を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
複数のウェルを有するアレイを提供することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項9】
複数の試料を有する基板によって規定されたアレイを提供することをさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項10】
複数の試料を有する基板によって規定されたアレイを提供することをさらに含み、前記アレイは、6mm2以下の寸法を有する、請求項5記載の方法。
【請求項11】
複数の試料を有する基板によって規定されたアレイを提供することをさらに含み、前記アレイは、3mm2以下の寸法を有する、請求項5記載の方法。
【請求項12】
前記複数の試料の前記スペクトルイメージは、空間的に分解される、請求項5記載の方法。
【請求項13】
試料を同時分光イメージングするための方法であって、
少なくとも2つの試料によって規定されたアレイを提供することと、
前記2つの試料の各々を照明フォトンで照明し、前記照明フォトンは各試料と相互作用し、各試料から相互作用したフォトンを生成することと、
前記相互作用したフォトンを各試料から光学装置で同時に収集することと、
前記収集されたフォトンから各試料用に処理機器で同時にスペクトルイメージを形成することと、
を含み、
前記アレイは、前記試料が前記光学装置の同時視野内にあるような外寸を有する方法。
【請求項14】
前記2つの試料の各々を照明することが同時である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記処理機器は、チューナブルフィルタである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記光学装置は、光学レンズをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
検出されたフォトンをチューナブルフィルタによって濾過する、請求項13記載の方法。
【請求項18】
相互作用したフォトンは、ラマン、吸収、蛍光、および反射を含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
複数のウェルを有するアレイを提供することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記アレイは、6mm2以下である、請求項13記載の方法。
【請求項21】
前記アレイは、3mm2以下である、請求項13記載の方法。
【請求項22】
アレイに配列された複数の試料を同時スペクトルイメージングするためのシステムであって、
前記複数の試料へ照明フォトンを提供するための照明光源であって、前記照明フォトンは、前記複数の試料の各々と相互作用し、相互作用したフォトンを放出する照明光源と、
前記複数の試料を受け取るためのアレイであって、前記試料が光学装置の同時視野内にあるような外寸を有するアレイと、
前記相互作用したフォトンを収集し、前記フォトンをイメージング装置へ方向づけるための光学装置であって、前記イメージング装置は前記複数の試料の各々に対応する複数の画像を同時に形成する光学装置と、
を含み、
前記複数の試料の各々は、空間的に分解されるシステム。
【請求項23】
前記スペクトルイメージングは、ラマンイメージングおよび蛍光イメージングをさらに含む、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記相互作用したフォトンは、ラマン、蛍光、照明、放出反射、吸収、および、伝達されたフォトンを含む、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
前記照明光源は、レーザ光源である、請求項22記載のシステム。
【請求項26】
前記照明光源は、スポットレーザである、請求項22記載のシステム。
【請求項27】
前記光学装置は、レンズをさらに含む、請求項22記載のシステム。
【請求項28】
前記光学装置は、光学フィルタをさらに含む、請求項22記載のシステム。
【請求項29】
前記イメージング装置は、チューナブルフィルタおよび電荷結合素子をさらに備える請求項22記載のシステム。
【請求項30】
前記アレイは、1cm2未満の寸法を有する基板をさらに含む、請求項22記載のシステム。
【請求項31】
前記アレイは、3mm×4mm未満の寸法を有する基板をさらに含む、請求項22記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−536116(P2008−536116A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505278(P2008−505278)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/011922
【国際公開番号】WO2006/110135
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(506020399)ケミマジ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】