説明

マイクロアレイ製造用3’ベースシークエンシング手法

核酸マイクロアレイの作製用設計配列を作る方法が記載される。本方法は、組織試料又は罹患状態の転写産物のハイスループット3’シークエンシングを使用して核酸マイクロアレイ用のプローブを設計する。また、組織中の転写産物の最3’側末端を標的とするプローブを有する核酸マイクロアレイも記載される。こうしたマイクロアレイは、好ましくは、転写産物が由来する組織に特異的な選択的ポリアデニル化配列を表す。また、組織における遺伝子発現について、偽陽性及び偽陰性結果を低減して評価するための、転写産物の最3’側末端を標的とするマイクロアレイの使用方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張及び関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に援用される2007年8月13日出願の米国仮特許出願第60/964470号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ヌクレオチドの3’シークエンシングを用いて核酸マイクロアレイを設計する方法に関する。本発明はまた、3’シークエンシングを用いて組織のトランスクリプトームを同定する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
従来から用いられているAffymetrix及び他のマイクロアレイメーカー製のDNAマイクロアレイは、公的に利用可能なデータから作成されている。ほとんどのアレイは3’バイアスを伴い設計されているが、プローブ設計に用いられる配列データは、主に5’シークエンシングによって作られた公開データベースからとられている。これらの配列はほぼ完全であるが、配列の3’末端における選択的ポリアデニル化は、3’末端が異なる組織及び疾患状況において発現するため、考慮されていない。
【0004】
例えば、ヒト遺伝子のうち29%超が、選択的ポリアデニル化[ポリ(A)]部位を有すると推定されている。(Beaudoing,E(2001)Genome Res.,11,1520−1526)。選択的ポリ(A)部位の選択は、細胞型及び疾患状態などの生物学的条件に関連すると考えられている(Edwalds−Gilbert,G et al.(1997)Nucleic Acids Res.,25,2547−2561)。3’末端のエクソンが選択的スプライシングを受ける場合、選択的ポリアデニル化が関与する。選択的ポリアデニル化の結果、組織又は疾患状態に応じて様々な3’末端を有するmRNA、すなわち種々のC末端を有するタンパク質が生じ得る。ますます多くの遺伝子がこの機序によって調節されることが分かっている。選択的ポリアデニル化部位のデータベースを作成しようとする取り組みはなされているが、現時点でかかる部位が全て知られているわけではない。(Zhang et al.Nucleic Acids Research,2005,Vol.33,Database issue D116−D120)。さらに、組織特異的又は疾患特異的マイクロアレイを設計する場合、選択的ポリアデニル化に注意を払わなければ、結果として遺伝子発現プロファイリングが最適以下となり、最終使用時に偽陰性及び偽陽性結果が生じ得る。公開データベースからマイクロアレイを作ると、選択的ポリアデニル化が考慮されない。それほど高度な3’シークエンシングはなく、公開データベースには選択的3’ポリアデニル化は十分に反映されていないことがほとんどである。
【0005】
また、文献には組織特異的ポリアデニル化が多くみられることも報告されており、そうしたことからも、目的の疾患又は組織において発現するとおりの、真正の3’末端を確立することの重要性がさらに明確となる。ヒトmRNA前駆体のうち3分の1超が選択的RNAプロセシング修飾を受けるため、これは普遍的な生物学的過程となっている。産生されるタンパク質アイソフォームは異なる機能、時に正反対の機能を有し、この過程の重要性を強調するものである。哺乳動物種における数多くの遺伝子が選択的ポリアデニル化を受けることができ、これが様々な3’末端を有するmRNAにつながっている。mRNAの3’末端は、多くの場合、mRNAの安定性、mRNAの局在化及び翻訳に重要なシスエレメントを含み、そのためポリアデニル化の調節のもつ意味合いは何倍にも倍増し得る。選択的ポリアデニル化はシスエレメント及びトランス因子によって制御され、組織特異的又は疾患特異的な形で起こると考えられている。mRNA代謝の他の側面、例えば転写開始及びスプライシングに特化したデータベースが多く利用可能であることを考えると、選択的ポリアデニル化及びその調節を含め、ポリアデニル化に関する系統的情報は著しく欠如している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、マイクロアレイによる検出を改善するためには、特定の組織及び罹患状態に対応する配列の真正の3’末端を得ることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書には、3’シークエンシングによって配列決定されたRNA転写産物から得られる設計配列を使用してマイクロアレイを作製する方法が提供される。これらの方法により、それ以外では従来のアレイには存在しない、選択的ポリアデニル化転写産物形態に対するプローブを含む組織特異的及び疾患特異的マイクロアレイの作成が可能となる。これらの方法により、最終的に発現プロファイリング又は診断法若しくは予後判定法に使用される場合に、偽陽性及び偽陰性結果を低減するアレイが提供される。
【0008】
さらに当業者は、組織タイプ及び疾患状態に応じて様々な選択的3’ポリアデニル化転写産物形態があることを理解するであろう。この多様性に対処するべく、被験対象の組織又は疾患由来の転写産物の真正の3’末端を同定するための、転写産物のハイスループット3’シークエンシング方法が提供される。
【0009】
一実施形態において、転写産物は最3’側末端(extreme 3’end)から配列決定され、それにより選択的ポリアデニル化部位を考慮に入れた、当該の組織又は疾患状態に特異的な3’末端配列が得られる。結果としてもたらされる最3’側配列(extreme 3’sequence)が、次にプローブ設計及びアレイ作成用の設計配列として使用される。
【0010】
別の実施形態において、単離されたRNA試料の試料中の転写産物は、RNA試料中の実質的に全ての転写産物が配列決定されるまで、ハイスループット3’シークエンシングに供される。これらの最3’側配列が、次にプローブ設計及びアレイ作成用の設計配列として使用される。本発明に記載される方法により、結果として標準的な市販アレイと比べて極度に3’側である最3’側バイアス(extreme 3’bias)がアレイにもたらされる。マイクロアレイ用のプローブ設計における3’バイアスは、最後の300塩基が対象となる。しかしながら、重要な違いは設計配列の作成にある。3’シークエンシングでは、関心対象の組織又は疾患状態において発現するとおりの、転写産物の真正かつ正確な3’末端であることが確定した実際の配列に基づいて転写産物の実際の3’末端が得られ、アレイが設計される。
【0011】
こうした方法を用いる利点としては、組織特異的又は疾患特異的3’変異体の同定;疾患/組織タイプ内における複数の3’変異体の同定、並びに新鮮凍結組織及びホルマリン固定パラフィン包埋組織のいずれによっても、使用される配列がより正確に得られることが挙げられる。
【0012】
従って本発明の目的は、マイクロアレイ用のプローブ設計に使用される入力配列セットを作る方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、プローブ設計用の組織及び疾患特異的配列を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、組織及び疾患特異的プローブを伴い設計されたマイクロアレイを使用することにより、特定のトランスクリプトームの検出精度を高めることである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
I.アレイの作製方法
本明細書に提供される方法は、その3’末端から配列決定された転写産物のプールから作られるマイクロアレイを作製することによって、組織又は組織を回収した箇所の疾患状態の、ポリアデニル化部位の正確な表現を提供することに関する。これらの方法は、結果として標準的な市販のマイクロアレイに存在する3’バイアスと比べて極度の最3’側バイアスを、マイクロアレイ設計にもたらす。これらの方法はまた、種々の方法で回収及び保存された患者組織試料の処理、並びに特定の組織タイプ又は疾患状態に特異的なプローブを設計するための転写産物プールの同定に有用である。この既存のマイクロアレイ技術の改良により、患者組織試料をより正確に、目的を絞って分析することが可能となる。
【0016】
本明細書で使用される場合、マイクロアレイの「3’バイアス」とは、アレイの設計において、代表的な転写産物又は設計配列の3’領域からプローブが選択されることを意味する。概して、核酸マイクロアレイは3’バイアスを有し、主要なマイクロアレイ製造者の間では、3’バイアスを有するプローブを使用することが一般的である。例えば、ほとんどのAffymetrix発現アレイの場合、プローブは最後の600塩基から選択される。
【0017】
プローブ設計に使用される転写産物の「最3’側末端」という用語は、本明細書で使用されるとき、概して転写産物の3’側に最も近い約300bpを指す。プローブ設計は、ポリアデニル化部位から測った配列の最も3’側の部分を使用する。他の実施形態において、最後の500bp、400bp、250bp又は最後の200bpが、プローブ設計用の最3’側末端として使用される。
【0018】
FFPE試料は、RNA分子の断片化及び化学修飾の可能性を含め、マイクロアレイ分析に特有の問題を提起する。典型的には新鮮凍結組織のみが調べられ得るが、これは、そのRNAがより良好に保存され、それほど著しい分解がないためである。多くのFFPE組織試料は、こうしたマイクロアレイを使用して遡及的に調べられることはないであろうから、これは残念なことである。3’バイアスを有する設計を使用すると、RNAの5’−3’分解の結果として(例えば、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を介して)起こるこの問題が解消される。最3’側バイアスはまた、結果としてマイクロアレイ実験における検出率の大幅な上昇及びより強力なシグナルをもたらすことも実証されている。転写産物の最3’側末端で設計されたプローブは転写産物の検出効率がより高く、従って、FFPE組織から抽出されたRNAなどの、部分的に分解されたRNAのプロファイリングが可能なため、転写産物の最3’側末端からマイクロアレイプローブを設計することによる本方法によれば、FFPE組織及び新鮮凍結組織のいずれから抽出されたRNAも試験することが可能なマイクロアレイが作製される。さらに、単に公開データベースにある公知の配列の最3’側末端を使用するのとは対照的に、3’シークエンシングを使用すると、プローブ設計用の組織特異的又は疾患特異的転写産物の真正の最3’側配列が提供される。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「3’シークエンシング」は、3’末端がポリ(A)テールを含む場合における3’末端からの転写産物の配列決定を意味する。転写産物の3’末端の真正の配列を決定するためには、従来のシークエンシング方法が用いられ得る。
【0020】
用語「断片」、「セグメント」、又は「DNAセグメント」は、より大きいDNAポリヌクレオチド又はDNAの一部分を指す。例えば、ポリヌクレオチドは、複数のセグメントに分割されるか、又は断片化され得る。様々な核酸の断片化方法が当該技術分野において周知である。これらの方法は、例えば、化学的な性質のものであっても、或いは物理的な性質のものであってもよい。化学的断片化としては、DNAseによる部分的分解;酸による部分的脱プリン反応;制限酵素の使用;イントロンがコードするエンドヌクレアーゼ;三重鎖形成及びハイブリッド形成方法などの、切断作用物質を核酸分子の特定の位置に局在化させるための核酸セグメントの特異的ハイブリダイゼーションに依存するDNAベースの切断方法;又は、既知若しくは未知の位置でDNAを切断する他の酵素若しくは化合物を挙げることができる。物理的断片化方法には、DNAを高剪断速度に供することが関わり得る。高剪断速度は、例えば、ピット若しくはスパイクを有するチャンバ若しくはチャンネルにDNAを通すか、又は制限されたサイズの流路、例えば、ミクロン若しくはサブミクロンスケールの断面寸法を有する開孔にDNA試料を押し通すことによって生じ得る。他の物理的方法としては、超音波処理及び噴霧化が挙げられる。同様に、熱及びイオンの介在する加水分解による断片化など、物理的断片化と化学的断片化とを組み合わせた方法も用いられ得る。例えば、あらゆる目的のため全体として参照により本明細書に援用されるSambrook et al.、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,N.Y.(2001年)(「Sambrook et al.」)を参照のこと。これらの方法は、核酸が特定のサイズ範囲の断片に消化されるよう最適化され得る。有用なサイズ範囲は、20、50、100、200、又は400塩基対のなかにあり得る。
【0021】
遺伝子発現について分析される患者組織が、パラフィン包埋組織から抽出されたRNAである場合、転写産物の3’領域と特異的に結合するプローブを使用することが有利である。各プローブは、転写産物の3’末端の500bp、400bp、300bp、又は200bp、又は100bp以内に出現するそれぞれの転写産物の相補配列とハイブリダイズすることが可能である。
【0022】
従来の方法とは異なり、本方法を使用すれば、60000個の転写産物をその上に有するアレイを設計するために、当業者は60000個のアクセッション番号又は遺伝子ID及びそれらの配列からの設計プローブを入手するのではなく、60000個の転写産物を組織試料から実際に取り出すことになる。これらの配列、すなわち「入力配列セット」又は設計配列の作成に3’シークエンシングを用いることは、特に関連性を有する。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「入力配列セット」又は「設計配列」は、マイクロアレイの設計に使用される配列として定義される。
【0024】
第1の実施形態において、本発明は、組織試料からRNAを単離するステップと、単離されたRNAの転写産物を配列決定するステップと、及び配列決定された転写産物の最3’側末端を標的とする核酸プローブをマイクロアレイ上に設計するステップとによって、核酸マイクロアレイを設計する方法を提供する。プローブは好ましくは転写産物の最3’側末端と結合し、それにより、RNAを単離した組織又は疾患状態に特異的な任意の選択的ポリアデニル化部位が考慮される。プローブは、好ましくは転写産物の最3’側末端と相補的であり、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特異的に結合する。
【0025】
RNA抽出方法は当該技術分野において公知であり、また、市販のRNA抽出キット、例えば、RNeasy(Qiagen Corporation,Valencia,CA)、ArrayIt(登録商標)マイクロトータルRNA抽出キット(Telechem International,Sunnyvale,CA)及びToTALLY RNA(商標)(Ambion,Foster City,CA)などを使用して組織試料からRNAを単離してもよい。(Sambrook等)。cDNAライブラリを調製する方法もまた当該技術分野において公知であり、逆転写、クローニング及び植菌方法を含む。(Sambrook 等)。配列の最3’側末端が、単離されたRNAから正確に逆転写されることを保証するためには、転写産物の最3’側末端を標的とするプライマーが特に有用である。例えば、アンカーオリゴdTプライマー、又はオリゴdTプライマーが、ライブラリ作成について転写産物の最3’側末端の正確な転写を保証するために特に有用である。
【0026】
シークエンシング反応においてプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドはまた、標識も含み得る。これらの標識としてはラジオヌクレオチド(radionucleotide)、蛍光標識、ビオチン、化学発光標識が含まれるが、これらに限定されない。当該技術分野において公知の種々のシークエンシング技術、例えば、ジデオキシシークエンシング、サイクルシークエンシング、ミニシークエンシング、ハイブリダイゼーションによるシークエンシング、MSベースのシークエンシング、パイロシークエンシングなどの合成(SBS)手法によるDNAシークエンシング、単一DNA分子、ポリメラーゼコロニー及びその任意の変異体のシークエンシングが、転写産物の最3’側末端のシークエンシングに有用であり得る。
【0027】
一実施形態において、ハイスループット3’シークエンシングを使用してアレイ用の設計配列が作成され得る。入力配列セットは、特定の組織又は疾患状態における全ての、又は実質的に全ての転写産物のハイスループットシークエンシングによって作られる。ハイスループットシークエンシング手法を使用すると、他の一般的なマイクロアレイに含まれるものと比べ、転写産物の3’末端により近いプローブの作成が可能となる。
【0028】
設計配列が作られた後、標的試料における転写産物の最3’側末端に特異的に結合するようにプローブ又はプローブセットが設計される。所与の配列からプローブ及びプローブセットを設計するための市販のソフトウェアが存在し、これはオリゴヌクレオチドと標的との間のクロスハイブリダイゼーションを低減するように最適化されている。かかるソフトウェアプログラムの例としては、限定はされないが、Visual OMP、OligoWiz 2.0及びArrayDesignerが挙げられる。
【0029】
本明細書に記載される3’シークエンシング方法を用いて得られるポリヌクレオチド配列は、ヌクレオチドアレイの設計及び構築に使用され得る。配列が得られた後、転写産物の最3’側末端に対応するプローブのセットが選択され得る。プローブ設計において考慮される最も重要な因子の1つとしては、プローブ長、融解温度(Tm)、及びGC含量、特異性、相補的プローブ配列、及び3’末端配列が挙げられる。一実施形態において、最適なプローブは、概して17〜30塩基長であり、約20〜80%、例えば、約50〜60%のG+C塩基を含む。典型的には、50℃〜80℃、例えば約50℃〜70℃のTmが好ましい。
【0030】
プローブ及びプローブセットが設計された後、こうしたプローブを含むマイクロアレイが製造され、これはある組織又は疾患状態のRNAと結合するように特別に設計されたものである。マイクロアレイは、先細ピンによるガラススライドへのプリント、予め作製されたマスクを用いるフォトリソグラフィ、動的マイクロミラー装置を用いるフォトリソグラフィ、インクジェットプリント、又は微小電極アレイへの電気化学処理を含め、様々な技術を用いて製造され得る。ロングオリゴヌクレオチドアレイは60塩基長又は50塩基長から構成され、シリカ基板(Agilent)に対するインクジェットプリントによって作製される。ショートオリゴヌクレオチドアレイは25塩基長又は30塩基長から構成され、シリカ基板に対するフォトリソグラフィ合成(Affymetrix)又はアクリルアミドマトリクスに対する圧電成膜(Applied Microarrays)によって作製される。別の方法であるNimbleGen SystemsからのMaskless Array Synthesis(マイクロミラーを使用)は、一体となった多数のプローブに対する自在性を有する。
【0031】
特に、関連する疾患特異的な内容と3’ベースのプローブ設計との組み合わせは、新鮮凍結組織及びFFPE組織のいずれからもRNAの強い(rubust)プロファイリングが可能な独自の方法及び製品を提供する。
【0032】
これらの方法はまた、ある組織からの実質的に全てのトランスクリプトームを代表するアレイの作成にも用いられ得る。例えば、一実施形態において、肺癌トランスクリプトームを定義する場合、3’ベースのシークエンシング手法が用いられることで各転写産物の3’側最末端に対するプローブセットの設計が促進される。この手法によると一層高い検出率が確保され、ひいては新鮮凍結組織及びFFPE組織のいずれの試料からもRNA転写産物を検出するよう最適な設計となる。Almac Diagnostics Lung Cancer DSA(商標)は、FFPE組織から抽出されたRNAから生物学的に有意義で再現可能なデータを生成することが可能な研究ツールの一例である。
【0033】
II マイクロアレイ
改良されたマイクロアレイを作るため、転写産物の最3’側末端とハイブリダイズするように設計された核酸プローブを固体支持体上に配列してアレイを作製する。このアレイは、1つ若しくは複数の組織又は1つ若しくは複数の疾患に対応する複数の組織転写産物を表し得る。疾患特異的アレイは、ある一定の疾患状況において発現する転写産物を含む。本明細書に提供される診断、予後判定及び予測アッセイ用のアレイは、当該技術分野において公知の好適な技術を用いて構築される。例えば、米国特許第5486452号明細書;同第5830645号明細書;同第5807552号明細書;同第5800992号明細書及び同第5445934号明細書を参照のこと。各アレイにおいて、個々の核酸プローブは1回のみ現れてもよく、又は複数回現れてもよい。アレイはまた、場合により対照核酸プローブを含んでもよく、これは、例えば陽性対照の場合にはハウスキーピング遺伝子を標的としたり、又は陰性対照として、その組織で発現しないことが分かっている遺伝子を標的としたりする。
【0034】
一実施形態において、転写産物及び/又は転写産物断片を代表する組織特異的核酸プローブは、当該技術分野において周知の核酸の固定化又は結合技術を用いて、アレイ上の複数の物理的に異なる位置に固定化される。いくつかの物理的に異なる位置にある断片は、一体となって転写産物全体又は転写産物全体のなかの別個の部分を構成し得る。断片は、転写産物のなかの連続した部分又は転写産物のなかの不連続な部分と相補的であり得る。標的試料の核酸分子がアレイ上の断片とハイブリダイズすると、それは、試料中に標的の転写産物が存在することを示している。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの検出は、当業者に周知のルーチンの検出方法によって実施され、及び以下でさらに詳細に説明される。
【0035】
一実施形態において、罹患組織試料中の標的配列を他の核酸配列と区別する複数のプローブ配列が使用される。いくつかの実施形態において、設計配列の少なくとも2%がアレイ上のプローブの組み合わせによって表される。さらなる実施形態において、標的配列の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が、アレイ上のプローブによって表される。
【0036】
一実施形態において、転写産物は、プローブ配列の少なくとも50%と相補的である。他の実施形態において、転写産物は、プローブ配列の少なくとも60%、70%、80%、90%又は100%と相補的である。
【0037】
別の実施形態において、転写産物の最3’側末端全体に対応する核酸プローブ又は転写産物の最3’側末端全体の断片が、アレイ上の唯1つの物理的に異なる位置に「スポット状アレイ」方式で固定化される。特定の核酸プローブの複数のコピーが、アレイ基板に別々の位置で結合し得る。好ましくは、このタイプの「スポット状アレイ」は、本明細書で新規に同定された核酸分子の1つ又は複数を含む。
【0038】
所与のアレイについて、各核酸プローブは、配列全体又は種々の長さに断片化された配列であり得る。転写産物全体を構成する全ての断片がアレイ上に存在する必要はない。全転写産物のうちの一部分に相当するアレイ上のプローブと転写産物がハイブリダイズすると、それは、転写産物を単離した組織におけるその転写産物の存在又は発現レベルを示したものであり得る。
【0039】
当業者は、所与のアレイ上の核酸プローブが、所与の組織試料中の転写産物特異的標的と相補的であることを理解するであろう。天然配列を含むアレイが設計されてもまたよく、それにより標的試料中のアンチセンス分子の存在が同定される。最近の文献では、癌及び他の疾患において内在性アンチセンスが関与しているとされ、その点で内在性アンチセンスRNA転写産物は興味深い。
【0040】
上述されるとおり、特定の疾患、例えば特定の癌に特異的なアレイは、特定のポリアデニル化部位を標的とするプローブを含むように設計され得る。
【0041】
核酸プローブを固定化し、又は結合させる固相としては、任意の好適な基板が使用され得る。例えば、基板は、ガラス、プラスチック、金属、金属被覆基板又は任意の材料のフィルタであってよい。基板表面は、任意の好適な形状であってよい。例えば、表面は平面状であってもよく、又は基板上に固定化された核酸プローブを分離するための隆起若しくは溝を有してもよい。他の実施形態では、核酸がビーズに付着され、これらのビーズは別々に同定可能である。核酸プローブは、共有結合又は非共有結合を含め、そのハイブリダイゼーションを可能とする任意の好適な方法で基板に付着される。
【0042】
III.アレイの使用方法
本明細書に記載されるアレイは、発現プロファイリング、診断、予後判定、薬物療法、及び薬物スクリーニングなど、任意の好適な目的に使用され得るが、これらに限定されない。
【0043】
概して、RNAを組織試料から単離してアレイと接触させ、組織試料由来の標的配列とマイクロアレイ上の相補的プローブとの間の特異的結合を可能とするのに十分なストリンジェンシーのもとでハイブリダイズさせる。基板に固定化されたプローブは、ストリンジェントな条件下で核酸試料由来の転写産物とハイブリダイズするのに好適である。蛍光標識されたヌクレオチドプローブが、対象となる組織から抽出したRNAを逆転写することによる蛍光ヌクレオチドの取り込みを介して作成され得る。アレイに付着させた標識プローブは、アレイ上の各ヌクレオチドと特異性を伴いハイブリダイズする。ストリンジェントな洗浄により、特異的に結合しなかったプローブを除去した後、共焦点レーザー顕微鏡法か、又は別の検出方法、例えばCCDカメラなどによってアレイをスキャンする。配列化された各要素のハイブリダイゼーションを定量化することにより、対応する転写産物の存在量を評価することができる。
【0044】
用語「実質的に」同一である、又は相同である、又は類似しているとは、当業者が理解するとおり文脈によって変わり、概して、少なくとも70%の同一性を意味し、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%の同一性を意味する。
【0045】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者が容易に決定可能であり、概して、プローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に応じた経験的計算である。一般に、プローブが長いほど、適切なアニーリングのためにより高い温度が求められ、一方、プローブが短いほど必要な温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、概して、融解温度未満の環境において相補鎖が存在するときの変性DNAの再アニーリング能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間に所望される相同性の程度が高いほど、用いられる相対温度はより高くなり得る。結果として、相対温度が高いほど反応条件はよりストリンジェントとなり、一方、温度が低いほどそうではなくなる傾向があることになる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーについてのさらなる詳細及び説明については、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,(1995年)を参照のこと。
【0046】
「ストリンジェント条件」又は「高ストリンジェンシー条件」は、本明細書に定義されるとおり、典型的には:(1)洗浄に低いイオン強度及び高い温度、例えば0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを50℃で用いるか;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム含有、を含む50%(v/v)ホルムアミドを42℃で用いるか;又は(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5倍デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランを42℃で用いて、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃で洗浄し、及び50%ホルムアミドを55℃で用い、これに続いてEDTA含有0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を55℃で行う。
【0047】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1989年によって記載されるものと特定することができ、上述されたものより低いストリンジェンシーの洗浄溶液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度にストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン、及び20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で一晩37℃でインキュベートし、続いて1×SSC中約37〜50℃でフィルタを洗浄することである。当業者は、温度、イオン強度等を、必要に応じてプローブ長などの因子に適合するよういかに調節すればよいか、認識しているであろう。
【0048】
本マイクロアレイは、種々の疾患状態の研究に有用である。用語「疾患」又は「疾患状態」は、その疾患に罹患した生物体における細胞、細胞コンパートメント、又は細胞小器官の小分子プロファイルの変化を結果的にもたらすか、又は潜在的に引き起こし得るあらゆる疾患を含む。かかる疾患は、主に3つの種類、すなわち、新生物疾患、炎症性疾患、及び変性疾患に分類することができる。
【0049】
疾患の例としては、代謝疾患(例えば、肥満症、悪液質、糖尿病、食欲不振症等)、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、虚血/再灌流、高血圧症、心筋梗塞、再狭窄、心筋症、動脈炎等)、免疫不全(例えば、慢性炎症性疾患及び障害、例えばクローン病、炎症性腸疾患、反応性関節炎、関節リウマチ、ライム病を含む変形性関節症、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症と、橋本甲状腺炎と、グレーブス病とを含む臓器特異的自己免疫病、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アレルギー性鼻炎を含む喘息及びアレルギーなどのアトピー性病態、食物アレルギーを含む消化管アレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、蠕虫などの特定の病原体への易罹患性(例えば、リーシュマニア症)及びHIVを含む特定のウイルス感染症、並びに結核及びらい腫らいを含む細菌感染症等)、ミオパチー(例えば、多発筋炎、筋ジストロフィー、特定のコア病、中心核(筋細管)ミオパチー、先天性筋強直症、ネマリンミオパチー、先天性パラミオトニア、周期性四肢麻痺、ミトコンドリアミオパチー等)、神経系障害(例えば、ニューロパチー、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、運動ニューロン疾患、外傷性神経損傷、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、急性壊死性出血性白質脳炎、髄鞘形成不全疾患、ミトコンドリア病、片頭痛障害、細菌感染症、真菌感染症、脳卒中、加齢、認知症、末梢神経系疾患、並びにうつ病及び統合失調症などの精神障害等)、腫瘍障害(例えば、白血病、脳癌、前立腺癌、肝癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、咽喉癌、乳癌、皮膚癌、メラノーマ、肺癌、肉腫、子宮頸癌、精巣癌、膀胱癌、内分泌癌、子宮内膜癌、食道癌、神経膠腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、膵癌、下垂体癌、及び腎癌など)並びに眼疾患(例えば色素性網膜炎及び黄斑変性症)が挙げられるが、これらに限定されない。この用語はまた、公知の、及び未知の、酸化的ストレス、遺伝性癌症候群、及び代謝疾患によって引き起こされる障害も含む。
【0050】
本発明のさらなる詳細が、以下の非限定的な実施例に記載される。
【実施例】
【0051】
実施例1:ハイスループット3’シークエンシングを用いたマイクロアレイ設計配列の同定
ライブラリ作成及びcDNAシークエンシング
組織からのRNA抽出
RNA STAT−60を使用して、製造者の指示に従い凍結肺組織塊からRNAを単離した。使用説明書に対し、抽出開始前にTissue Lyser(Qiagen)を使用してRNA−STAT−60中、20Hzで6分間にわたり各組織塊を均質化する修正を含めた。Biophotometer(Eppendorf)を使用してRNA収率を決定し、Agilent 2100 BioanalyzerをRNA Nano LabChipキット(Agilent Technologies;Palo Alto,CA)と共に使用してRNA品質を確認した。等量の高品質のRNA(明確に定義されている28S及び18Sリボソームピークを有するRNA)をmRNA単離用にプールした。
【0052】
全RNAからのmRNAの単離
μMACS mRNA単離キット(Miltenyi Biotec)を使用して、製造者の指示に従いプールした肺の全RNAからmRNAを単離した。mRNAは、538μgのプールした肺の全RNAから単離し、12μlのヌクレアーゼフリー水に溶出した。Biophotometer(Eppendorf)を使用してmRNA収率を決定した。Agilent 2100 BioanalyzerをRNA Nano LabChipキット(Agilent Technologies;Palo Alto,CA)と共に使用してmRNA品質を確認した。mRNA Nanoアッセイを使用してリボソーム混入率を決定した。
【0053】
肺cDNAライブラリの構築
CloneMiner(商標)cDNAライブラリ構築キット(Invitrogen)を使用して肺cDNAライブラリの構築を実施した。使用説明書に従い、放射性標識していないcDNAライブラリの構築を実施した。先に単離した3μgの肺mRNAを使用してライブラリを作成した。cDNAインサートをpDONR(商標)222ベクターに組み換え、DH10B(商標)T1ファージ耐性細胞(Invitrogen)に電気穿孔した。1μlの組換えpDONR(商標)222ベクターを40μlのエレクトロコンピテント細胞に加えた。管の内容物全てを、予冷した1mm間隔幅のキュベットに移し替え、Electroporator 2510(Eppendorf)に挿入して、以下の設定、すなわち1660Vで時定数(τ)5msを使用した。電気穿孔後、細胞に1mlのSOC培地(Invitrogen)を添加して15ml管に移し替え、37℃で1時間、Innova 4300インキュベーターシェイカー(New Brunswick Scientific)において225rpmで振盪した。次に、等容量の無菌凍結培地(60%SOC培地(Invitrogen)、40%グリセロール(Sigma))を試料に添加した後、複数の管にアリコートを分取し、−80℃で保存した。50μg/mlのカナマイシン(Sigma)を含む3つの予熱したLBプレート上で力価測定を実施した。各プレートに、1μl、5μl又は10μlの形質転換細胞を播種し、BD115インキュベーター(Binder)の中で一晩37℃でインキュベートした。各プレート上のコロニーの数を計数してライブラリの平均力価を決定した。平均力価を総容量で乗じることにより総コロニー形成単位(cfu)を決定した。
【0054】
cDNAライブラリの検定
24個の陽性形質転換体をBsrG 1で消化することによりcDNAライブラリの検定を実施した。12μlのプラスミドDNAを37℃で16時間、3.0μlのNE 2、0.3μlのBSA、0.1μlのBsrG 1及び14μlの無ヌクレアーゼ水と共にインキュベートした。次に、消化した試料をAgilent 2100 Bioanalyzerにおいて、DNA 7500アッセイプロトコルを使用して分析した。インサートを含まないpDONR(商標)222ベクターは、以下の長さ、すなわち2.5kb、1.4kb及び790bpの消化パターンを示すはずであり、かつ各cDNAエントリークローンは2.5kbのベクター骨格バンドと追加的なインサートバンドとを有するはずである。各クローンの個々の消化されたバンドサイズを足し合わせて総インサート長を求めた。次に、24個の形質転換体についての平均インサートサイズ長及び形質転換率を計算した。
【0055】
個々のcDNAライブラリの菌叢をプレートから取り出し、トレイ当たり約2000cfuの密度でバイオアッセイトレイQTrays(Genetix)に置いた。QPix 2XTコロニーピッカーを使用して個々のコロニーをピッキングし、CircleGrow培地(MP Biomedicals LLC)において一晩37℃で振盪を伴い生育した。
【0056】
修正版Montage(登録商標)アルカリ溶菌法(Millipore)を使用してプラスミドの調製を実施した。この方法は、真空ろ過ではなく、遠心ライセート清澄化用のMultiScreen(登録商標)Plasmid384 Miniprepクリアリングプレートを用いるものであった。液体を取り扱う工程は全て、Biomek NXワーキングステーション(Beckman Coulter)で行った。
【0057】
約100ngの鋳型DNA、5μMのプライマー(ユニバーサルM13_リバース、アンカーオリゴdT又はオリゴdTのいずれか)、Big Dye Terminator v.3.1(Applied Biosystems Inc.)及びSequencing Buffer(Applied Biosystems Inc.)を含む384ウェルシークエンス反応プレートを準備した。サイクルシークエンシング条件は、95℃で10秒間、50℃で5秒間、60℃で2分30秒間のサイクルを40サイクルとした。シークエンス反応液は、Biomek NX液体処理装置上のCleanSEQ(Agencourt Biosciences)を使用して清澄化した。Appled Biosystems 3730/3730xl DNA Analyserにおいて、Applied Biosystems Sequence Analysisソフトウェアを使用してシークエンスプレートを分析した。
【0058】
実施例2:肺癌の疾患特異的トランスクリプトームの同定
Lung Cancer疾患特異的アレイ(DSA(商標))研究ツールを設計するために使用される転写産物情報を、ハイスループット3’ベースシークエンシング手法により作成し、肺癌トランスクリプトームを定義した。同定された各転写産物の3’末端でプローブを作成し、Lung cancer DSA研究ツールをAffymetrix(Affymterix Corporation,Santa Clara,CA)によりカスタム設計した。この、関連する疾患特異的な内容と3’ベースのプローブ設計との組み合わせにより、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片由来のRNAからのロバストなプロファイリングが可能となる。
【0059】
本発明は、具体的な実施形態と考えられるものを参照して記載されているが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは理解されるべきである。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正例及び等価物を網羅することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料からRNAを単離するステップと、
前記組織試料中の転写産物を、前記転写産物が実質的に全て配列決定されて前記転写産物の最3’側配列が得られるまで、前記転写産物の3’末端から配列決定するステップと、
前記配列を使用して前記マイクロアレイ用のプローブを設計するステップと、
組織試料における転写産物の最3’側末端を標的とする前記プローブを有するマイクロアレイを作製するステップ
とを含む、核酸マイクロアレイを設計する方法。
【請求項2】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の300塩基対を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の400塩基対を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の500塩基対を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の200塩基対を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の100塩基対を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
転写産物の最3’側末端を標的とするプローブを含む、組織特異的又は疾患特異的マイクロアレイ。
【請求項8】
前記プローブが、特定の組織又は疾患状態に特異的なポリアデニル化部位を標的とする、請求項7に記載のマイクロアレイ。
【請求項9】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の300塩基対を含む、請求項7に記載のマイクロアレイ。
【請求項10】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の400塩基対を含む、請求項7に記載のマイクロアレイ。
【請求項11】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の500塩基対を含む、請求項7に記載のマイクロアレイ。
【請求項12】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の200塩基対を含む、請求項7に記載のマイクロアレイ。
【請求項13】
前記転写産物の最3’側末端が、前記転写産物の最も3’側の100塩基対を含む、請求項7に記載のマイクロアレイ。
【請求項14】
組織における発現をプロファイリングするための請求項7〜13のいずれか一項に記載のマイクロアレイの使用方法であって、
組織から得られた核酸試料を、前記試料中の核酸標的が前記アレイ上のプローブと特異的にハイブリダイズする条件下で前記アレイと接触させるステップと、
結合しなかった核酸標的を前記マイクロアレイから洗浄して取り除くステップと、
前記マイクロアレイと結合した標的を検出するステップと、
を含み、前記マイクロアレイと結合した標的の存在が、前記組織における遺伝子発現を示す、方法。
【請求項15】
前記組織が罹患組織を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記罹患組織が癌組織である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記癌が、白血病、脳癌、前立腺癌、肝癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、咽喉癌、乳癌、皮膚癌、メラノーマ、肺癌、肉腫、子宮頸癌、精巣癌、膀胱癌、内分泌癌、子宮内膜癌、食道癌、神経膠腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、膵癌、下垂体癌、又は腎癌から選択される、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2010−535529(P2010−535529A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520621(P2010−520621)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002735
【国際公開番号】WO2009/022129
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(507145710)アルマック ダイアグノスティックス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】