説明

マイクロカプセル、それらの使用及びそれらの製造方法

疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着しているマイクロカプセル。マイクロカプセル及び液体中のマイクロカプセルの分散体を得る方法が特許請求されている。マイクロカプセルは、多様な用途、特に熱エネルギー貯蔵の分野に使用することができる。適切には、マイクロカプセルは、特定の密度を有するように設計することができ、マイクロカプセルの密度が担体流体と同じである伝達流体に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーシェルにより囲まれているコアを有し、コアが疎水性液体又は疎水性ロウ(wax)を含有する、マイクロカプセルに関する。シェルは、疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマー、多官能エチレン性不飽和モノマー及び場合により他のモノマーから形成される。本発明において、コアは、紫外線(UV)吸収剤、難燃剤又は相変化物質のような活性成分を含むことができる。望ましくは、マイクロカプセルは、再循環式流体冷却システムのような多様な製品に容易に組み込むことができる。
【0002】
コア材料を取り囲むシェルを含むカプセルを提供することが望ましい場合が多く存在する。例えば、コアは、ゆっくりと放出される、芳香剤、殺虫剤、薬剤などのような活性成分を含むことができる。他の場合では、シェル内に封入されているコア材料が、恒久的に又は少なくとも適切な誘因がコアの放出を誘発するまで実質的に原型を保っていることが望ましいことがある。コア材料が、カプセルから放出されないことが重要な場合がある。これには、例えば日焼け止め及び衣料品に使用される、封入された紫外線吸収剤が含まれる。
【0003】
別の重要な用途には、熱エネルギー貯蔵製品として使用することができる、封入された相変化材料が含まれる。そのような製品には布地、特に衣類が含まれる。
【0004】
カプセルを作製する多様な方法が文献で提案されてきた。例えば、疎水性液体を、メラミンホルムアルデヒド初期縮合物を含有する水性媒質に分散し、次にpHを低下して、疎水性液体を取り囲む、不浸透性のアミノプラスト樹脂シェル壁をもたらすことによって、疎水性液体を封入することが知られている。
【0005】
この種類のプロセスの変形が、英国特許公報第2073132号、オーストラリア特許公報第27028/88号及び英国特許公報第1507739号に記載されており、ここで、カプセルは、好ましくは感圧無カーボン複写紙に用いられる封入インクを提供するために使用される。
【0006】
国際公開公報第99/24525号は、−20〜120℃で相転移する親油性潜熱貯蔵材料をコアとして含有するマイクロカプセルを記載する。カプセルは、30〜100重量%の(メタ)アクリル酸のC1−24アルキルエステル、80重量%までの二官能又は多官能モノマー及び40重量%までの他のモノマーを重合することによって、形成される。マイクロカプセルは、無機物成形品において使用されると言われている。
【0007】
国際公開公報第01/54809号は、紡糸プロセスの際に活性コア材料を失うという被害を被ることなく、繊維に容易に組み込むことができるカプセルを提供する。カプセルは、A)30〜90重量%のメタクリル酸、B)10〜70重量%の、60℃を超えるガラス転移温度のホモポリマーを形成することができる(メタ)アクリル酸のアルキルエステル及びC)0〜40重量%の他のエチレン性不飽和モノマーを含むモノマーブレンドから形成される、ポリマーシェルを含有する。
【0008】
米国特許出願公開第2003/118822号は、コア材料として1つ以上の親油性物質とポリマーカプセルシェルを含むマイクロカプセルを記載する。親油性物質は、45〜1000nmの平均直径を有する固体無機粒子を含む。マイクロカプセルは、30〜100重量%の、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C24アルキルエステルと、80重量%までの、水での可溶性が限られている二官能又は多官能モノマー及び40重量%までの他のモノマーとを水中油型乳化重合することによって得られる。無機粒子は、水相と油相の間に移動して、反応の際の安定化のための保護コロイドとして作用すると言われている。
【0009】
米国特許第6,200,681号も、前記マイクロカプセルの製造における保護コロイドとして金属塩又は酸化物のような微粉化固体粒子を使用する、マイクロカプセルの調製を記載する。
【0010】
国際公開公報第2005/105291号は、ポリマーシェルの中にコア材料を含む粒子を含み、コア材料が疎水性物質を含む組成物を記載する。ポリマーシェルが、粒子の総重量の少なくとも8%を形成しなければならないこと、ポリマーシェルが、5〜90重量%のエチレン性不飽和水溶性モノマー、5〜90重量%の多官能モノマー及び0〜55重量%の他のモノマーを含むモノマーブレンドから形成されること、並びにこれらのモノマーの比率が、粒子が少なくとも350℃で半分の高さを示すように選択されること、という特徴の特別の組み合わせである。マイクロカプセルは、多様な活性材料を含有できることも示唆されている。UV吸収剤、難燃剤、顔料、染料、酵素及び洗剤ビルダーを含む可能な活性物質の広範囲な例が提示されている。確認されている顔料には、酸化鉄顔料のような多様な有機及び無機材料が含まれる。
【0011】
相変化材料の更なる重要な適用領域は、再循環流体を用いる能動的温度調節システムである。伝熱流体の効率をマイクロカプセル化相変化材料の導入により増加できることは、良く知られている。米国特許第3,596,713号は、相変化材料と不浸透性ハウジングから作製される粒子を含有する伝熱流体に相変化材料を使用することを記載する。粒子は熱を吸収して膨張し、浮力の増加をもたらし、自然な対流をもたらす。しかし、粒子内の相変化材料においては、従来の伝達水性流体よりも低い密度を有する。したがってそのような系は、水性担体流体又は他の高密度な流体への適用に限定される。
【0012】
米国特許第5,723,059号は、ハロカーボンが担体流体に含まれる粒子を含有する伝熱流体を記載する。粒子は、担体流体の組成を粒子の密度に適合するように変えることによって、分散液の中に分散したままになるように設計される。しかし、例えば構成成分の1つを優先的に蒸発させることによる組成の変化は、密度の変化をもたらし、したがって、粒子の浮力に変化をもたらす。
【0013】
米国特許出願公開第2004/001923号は、粒子含有相変化材料が担体流体の中に分散されている伝熱流体を記載する。分散体は、粒子の密度を担体流体の密度と等しくするように調整することによって安定になる。これは、金属粒子又は他の高密度材料を粒子の中に含めることによって達成されると言われている。しかし、どのようにして粒子を作製することができるかという示唆はない。そのような粒子を調製する従来の方法は、金属粒子又は他の高密度材料の不均一な分布をもたらし、その結果、一貫した所望の密度を達成することが妨げられる。
【0014】
本発明の目的は、所望の密度を持つマイクロカプセルを提供することである。特に、このことを一貫して達成することが望ましい。
【0015】
したがって、本発明によると、疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着しているマイクロカプセルが提供される。
【0016】
本発明のマイクロカプセルは、アミノプラスト材料を含む多数の異なる種類の材料から、特にメラミンアルデヒド縮合物及び場合により尿素、例えばメラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド及び尿素−メラミン−ホルムアルデヒド、ゼラチン、エポキシ材料、フェノール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル、ビニル及びアリルポリマーなどを使用して形成することができる。アクリルモノマーから形成されるアクリルコポリマーシェル材料を有するマイクロカプセルは、特に適していることが見出されている。マイクロカプセルを作製する他の方法には、界面重合、ポリウレタンカプセルをもたらす他の技術が含まれる。マイクロカプセルを製造するその他の任意の一般的な技術も本発明に適していることが考慮される。本明細書に詳細に記載されている方法に参照として適合されることが必要である。
【0017】
本発明に含まれるものは、疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの内側に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着しているマイクロカプセルの製造方法であって、
1)下記:
i)疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマー、
ii)多官能エチレン性不飽和モノマー、及び
iii)場合により他の単官能モノマー
を含むモノマーブレンドを準備する工程、
2)モノマー混合物、不溶性固体粒子及び油溶性分散剤ポリマーを疎水性液体又は溶融疎水性ロウと合わせて、モノマー溶液を形成する工程、
3)場合によりポリマー安定剤又は乳化剤を含有する、水相を準備する工程、
4)モノマー溶液を水相中に均質化して、エマルションを形成する工程、
5)エマルションを重合性条件に付す工程及び
6)モノマーブレンドを重合して、水相中にマイクロカプセルの分散体を形成する工程
を含む方法である。
【0018】
好ましくは、シェルは、マイクロカプセルの8〜20重量%、特に10〜15重量%を形成する。
【0019】
マイクロカプセルのシェルは、構造化されていてもよく、例えば、分岐又は架橋されていることができる。少なくとも1つの多官能エチレン性不飽和モノマーの記述された量での存在を考慮すると、マイクロカプセルのシェルは、好ましくは架橋される傾向がある。一般にそのような架橋は、ポリマーシェルを不溶性にするが、ポリマーシェルは、ポリマーシェルが溶解しないのであれば、特定の溶媒液体を吸収することができる場合もある。
【0020】
好ましくは、ポリマーシェルを形成するモノマーブレンドは、
1〜95重量%の疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマー、
5〜99%重量%の多官能エチレン性不飽和モノマー、及び
0〜60重量%の他の単官能モノマー
から形成され、
これはポリマーシェルの重量に基づき、成分は合計で100%になるべきである。
【0021】
より好ましくは、モノマーブレンドの重量に基づいて、疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマーの量は、5〜30重量%であり、多官能エチレン性不飽和モノマーの量は、70〜95重量%である。他のモノマーの量は、55重量%ほど、より好ましくは5〜55重量%であることができる。特に好ましいモノマーブレンドは、5〜25重量%の疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマー、35〜45重量%の多官能エチレン性不飽和モノマー及び40〜50重量%の他の単官能モノマーを含む。
【0022】
幾つかの場合において、それぞれの構成成分が2つ以上のモノマーを含むことが望ましい場合がある。例えば、2つ以上の疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマー及び/又は2つ以上の多官能エチレン性不飽和モノマー及び/又は2つ以上の他の単官能モノマーを含むことが望ましい場合がある。
【0023】
疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマーは、1つのエチレン性基を有し、25℃で水100mlあたり5g未満であるが、通常は2又は1g/100cc未満の水中での溶解度を有する任意の適切なモノマーであることができる。水中での溶解度は、ゼロであるか又は少なくとも検出レベル未満であることができる。望ましくは、疎水性モノマーには、1つ以上のスチレン又はスチレンの誘導体、モノエチレン性不飽和カルボン酸のエステルが含まれる。好ましくは、疎水性モノマーには、メタクリル酸又はアクリル酸のアルキルエステルが含まれる。より好ましくは、疎水性モノマーは、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C12アルキルエステルである。そのような疎水性モノマーには、例えば、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃のガラス移転温度(Tg)を有するホモポリマーを形成することができる、アクリル酸又はメタクリル酸エステルが含まれる。これらのモノマーの特定の例には、スチレン、メチルメタクリレート、第三級ブチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート及びイソボルニルメタクリレートが挙げられる。
【0024】
ポリマーのガラス移転温度(Tg)は、Encyclopaedia of Chemical Technology, Volume 19, fourth edition, page 891において、その温度以下では、(1)分子全体の転移運動と(2)鎖の40〜50個の炭素原子セグメントの巻き込み及び巻き戻しの両方が凍結する温度として定義される。したがって、ポリマーは、そのTgよりも低いと流動性又はゴム弾性を示さない。ポリマーのTgは、示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定することができる。
【0025】
多官能エチレン性不飽和モノマーは、任意のモノマーであることができ、重合の際に架橋を誘導する。好ましくは、ジエチレン性不飽和又はポリエチレン性不飽和モノマー、すなわち、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するものである。あるいは、多官能エチレン性不飽和モノマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及びモノマー構成成分のいずれかにおいて他の官能基と反応することができる少なくとも1つの反応性基を含有することができる。好ましくは、多官能モノマーは、水に不溶性であるか、又は少なくとも低い水溶性を有し、例えば25℃で5g/100cc未満であるが、通常は2又は1g/100cc未満である。水中での溶解度は、25℃でゼロであるか又は少なくとも検出レベル未満であることができる。加えて、多官能モノマーは、コア材料の炭化水素物質に可溶性であるか、又は少なくともそれと混和性であるべきである。適切な多官能モノマーには、ジビニルベンゼン、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びアルカンジオールジアクリレート、例えば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、しかし好ましくは1,4−ブタンジオールジアクリレート、が含まれる。
【0026】
他の単官能モノマーは、単一の重合性基を有する任意のモノマーであることができる。好ましくは、任意のエチレン性不飽和モノマーである。代表的には、これらの他のモノマーには、エチレン性不飽和カルボン酸及びその塩、エチレン性不飽和カルボン酸及びその塩のアミノアルキルエステル、アクリルアミド又はメタクリルアミド又はその塩のN−(アミノアルキル)誘導体、アクリルアミドを含む他の水溶性アクリルモノマー、エチレン性不飽和カルボン酸のエステル、水溶性スチレン誘導体、メタクリル酸又は塩、アクリル酸又は塩、ビニルスルホン酸又は塩、アリルスルホン酸又は塩、イタコン酸又は塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又は塩、アクリルアミド及び酢酸ビニルからなる群より選択されるエステルが含まれる。
【0027】
準備された水相は、望ましくは安定剤又は界面活性剤のいずれか、代表的には乳化剤でありうる乳化系を適切に含有することができる。これは、例えば安定剤又は界面活性剤の有効量を含有する適切な乳化系を、水に溶解することによって形成することができる。適切には、安定剤又は界面活性剤(好ましくは乳化剤)の有効量は、ポリマーシェルを形成するモノマーブレンドの重量に基づいて50重量%まで又はそれ以上であることができる。好ましくは、安定剤又は界面活性剤の量は、ポリマーシェルを形成するモノマーブレンドの重量に基づいて、1重量%〜40重量%、好ましくはおよそ10重量%〜30重量%の範囲である。
【0028】
適切には、安定剤又は乳化剤は、25℃で水に可溶性又は分散性であり、したがって、安定剤又は乳化剤を、水相に分散又は好ましくは溶解することが可能である。一般に、安定剤又は乳化剤は、モノマー溶液の乳化の前に水に溶解することができるように、好ましくは、高いHLB(親水性油性バランス)を有する。HLBは、少なくとも4、例えば12まで又はそれ以上、より好ましくは少なくとも6、さらにより好ましくは8〜12であることが好ましい。好ましくは、モノマー溶液は、溶解している重合安定剤により水中で乳化される。
【0029】
この方法において、乳化、またマイクロカプセルの形成を助けるために、安定剤を水相に添加することが好ましい。安定剤は、水溶性であるか又は少なくとも水分散性である適切な物質であることができる。好ましくは、両親媒性ポリマー安定剤である。より好ましくは、安定剤は、ヒドロキシ含有ポリマーであり、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボニルメチルセルロース及びメチルヒドロキシエチルセルロースであることができる。一般に、85〜95%、好ましくはおよそ90%の酢酸ビニル基がビニルアルコール単位に加水分解されている、ポリ酢酸ビニルから誘導されたポリビニルアルコールを使用することが好ましい。他の安定化ポリマーを追加的に使用することができる。
【0030】
方法は、追加的な材料、例えば、乳化剤、他の界面活性剤及び/又は他の重合安定剤を乳化系の一部として用いて安定性を促進することができる。
【0031】
好ましくは安定化ポリマーに加えて方法に使用することができる他の安定化物質には、イオン性モノマーが含まれる。代表的なカチオン性モノマーには、第四級アンモニウム又は酸付加塩を含むジアルキルアミノアルキルアクリレート又はメタクリレート、及び第四級アンモニウム又は酸付加塩を含むジアルキルアミノアルキルアクリルアミド又はメタクリルアミドが含まれる。代表的なアニオン性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、特にアルカリ金属又はアンモニウム塩のような、エチレン性不飽和カルボン酸又はスルホン酸モノマーが含まれる。特に好ましいアニオン性モノマーは、エチレン性不飽和スルホン酸及びその塩、特に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩である。他の安定化物質は、任意の有効量、通常は、ポリマーシェルを形成するモノマーブレンドの少なくとも0.01重量%、好ましくは10重量%まで、より好ましくは0.5重量%〜5重量%で使用することができる。
【0032】
重合工程は、モノマー水溶液をあらゆる従来の重合条件に付すことによって、実施することができる。一般に重合は適切な開始剤化合物の使用によって実施される。望ましくは、これはレドックス開始剤及び/又は熱開始剤の使用によって達成することができる。代表的には、レドックス開始剤には、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄のような還元剤、及び過硫酸アンモニウムのような酸化化合物、又は第三級ブチルヒドロペルオキシドのような適切なペルオキシ化合物などが含まれる。レドックス開始剤は、1000ppmまで、代表的には1〜100ppmの範囲、通常は4〜50ppmの範囲で用いることができる。
【0033】
好ましくは、重合工程は、熱開始剤を単独で、又は他の開始剤系、例えばレドックス開始剤と組み合わせて用いることによって、実施される。熱開始剤には、高温でラジカルを放出するあらゆる適切な開始剤化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AZDN)、4,4′−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)(ACVA)若しくはt−ブチルペルピバレートのようなアゾ化合物、又は過酸化ラウリルのような過酸化物が含まれる。代表的には、熱開始剤は、モノマーの重量に基づいて50,000ppmまでの量で使用される。しかし、ほとんどの場合、熱開始剤は、5,000〜15,000ppmの範囲、好ましくはおよそ10,000ppmで使用される。好ましくは、適切な熱開始剤を、乳化の前にモノマーと合わせ、重合は、エマルションを適切な温度、例えば50又は60℃又はそれ以上に加熱することによって実施される。
【0034】
また本発明に含まれるものは、疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着しているマイクロカプセルの製造方法であって、
1)不溶性固体粒子、油溶性分散剤ポリマー及び疎水性液体又は溶融疎水性ロウを含む疎水性相を形成する工程、
2)水溶性アミンホルムアルデヒド樹脂、好ましくはギ酸である水溶性カルボン酸、水溶性のアニオン性ポリマー及び場合によりポリマー安定剤又は乳化剤を含むモノマー水溶液を形成する工程、
3)場合により水溶液の温度を上昇させて、モノマー水溶液の構成成分を部分的に反応させることにより水相を形成する工程、
4)モノマー溶液を水相中に均質化して、エマルションを形成する工程、
5)エマルションを重合性条件に付す工程、及び
6)モノマーを重合して、水相中にマイクロカプセルの分散体を形成する工程
を含む方法である。
【0035】
好ましくは、エマルション中の反応体は、場合により温度を上昇させた熟成期間に部分的に反応する。好ましくは、エマルションは最初に20〜40℃の温度で維持される。より好ましくは、これは90〜150分間である。
【0036】
望ましくは、エマルションは、重合を実施するために、40℃超、好ましくは少なくとも50℃の温度、より好ましくは60〜80℃の温度に付される。より高い温度を用いることができるが、一般に90℃を超えることはなく、通常はそれよりも有意に低い。この重合工程は、マイクロカプセルの形成をもたらす。一般にこの工程は、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間を必要とする。著しく長い時間、例えば150分間までを用いることができるが、幾つかの場合ではそれよりも長い時間が必要とされることもある。一般に、この工程は、通常、2時間以内に完了することが分かっている。
【0037】
水溶性のアニオン性ポリマーは、好ましくは、少なくとも1つがアニオン性であるか、潜在的にアニオン性であるエチレン性不飽和モノマーのポリマーである。より好ましくは、ポリマーはアクリル性であり、特にアクリルアミドナトリウムアクリレート又は加水分解ポリアクリルアミドのコポリマーである。一般にこれらのポリマーは、少なくとも10,000g/mol、好ましくは少なくとも50,000g/molの分子量を有する。多くの場合に、分子量は、1,000,000g/molの高さであることができるが、好ましくは500,000g/molよりも低い。
【0038】
このポリマーは、当該技術において既知である従来の技術によって調製することができる。
【0039】
好ましくは、安定化ポリマー又は乳化剤が水相に含まれ、好ましくは、これはポリエチレングリコールである。望ましくは、ポリエチレングリコールは、200g/mol〜800g/mol、好ましくは300g/mol〜600g/molの分子量を有する。
【0040】
アミノプラスチック樹脂のマイクロカプセルを調製する他の一般的な事項は、英国特許公報第2073132号、オーストラリア特許公報第27028/88号及び英国特許公報第1507739号の特に対応する実施例において記載されている。これらを、上記の詳細な記載に従って適合させるならば、本発明において使用することができる。
【0041】
本発明のマイクロカプセルは、望ましくは、10ミクロン未満の平均粒径を有することができる。一般に平均粒径は、より小さくなる傾向があり、多くの場合には2ミクロン未満であり、代表的には平均粒径は200nm〜2ミクロンである。好ましくは平均粒径は、500nm〜1.5ミクロンの範囲、通常はおよそ1ミクロンである。平均粒径は、文献において充分に説明されている標準的手順に従ってSympatec粒度分析機により決定される。
【0042】
一般に、シェルは、マイクロカプセルの総重量に基づいて少なくとも5重量%を形成するべきである。好ましくは、マイクロカプセルは、疎水性油又はロウ形態を45〜95重量%の量で含み、シェルを5〜55重量%の量で含み、ここで全ての率はマイクロカプセルの総重量に基づいている。
【0043】
より好ましくは、疎水性の液体又はロウの量は、マイクロカプセルの60〜92重量%、特に好ましくは、70〜92重量%、とりわけ、80〜90重量%の量で存在する。
【0044】
好ましくは、マイクロカプセル中のコアは、マイクロカプセルの総重量に基づいて、65〜99重量%の疎水性の液体又はロウ、0.95〜25重量%の不溶性固体粒子及び0.05〜10重量%の油溶性分散剤ポリマーを含む。より好ましくは、油溶性分散剤ポリマーの量は、コアの0.1〜7.5重量%、特に0.5〜5重量%である。より好ましくは、不溶性固体粒子は、コアの1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%の量で存在する。疎水性の液体又はロウがコアの重量の差を埋め合わせる。
【0045】
マイクロカプセルが、伝熱流体を使用する能動的温度制御系に使用される場合、一般に担体流体は粒子の不在下においてマイクロカプセルよりも高い密度を有する。したがって、マイクロカプセルが表面に浮上することなく担体流体の全体にわたって分布したままでいるためには、担体流体と同じ密度を有する必要がある。したがって不溶性粒子は、通常、疎水性の液体又はロウよりも大きい密度を有する。
【0046】
固体粒子は、疎水性の液体又はロウに不溶性である任意の粒状物質であることができる。 疎水性の液体又はロウに不溶性であるとは、固体粒子が、25℃で疎水性の液体又はロウの5g/cm未満、好ましくは2g又は1g/cm未満の溶解度、より好ましくはゼロ、少なくとも検出不能な溶解度を有することを意味する。好ましくは、粒子は、金属、金属酸化物又は他の不活性金属化合物を含む。より好ましくは、固体粒子は、水に対して実質的に可溶性ではなく、本質的に水に対して反応性がない。望ましくは、固体粒子は、遷移金属、Ib、IIb、IIIb、IVb族のいずれかの金属、これらの金属の酸化物、及びこれらの金属の他の不活性化合物から選択される。不溶性粒子の好ましい構成成分には、チタン、鉄、鉛、銅、ニッケル、バリウム及びこれらの酸化物、特にチタン、鉄、二酸化チタン及び/又は酸化鉄(III)が含まれる。
【0047】
好ましくは、不溶性固体粒子は、>1g/cmを超える、より好ましくは>2g/cmを超える密度を有する。密度は、6g/cmの高さ又はそれ以上であることができるか、又は多くの場合では2〜5g/cmの範囲内であることができる。
【0048】
固体粒子は、マイクロカプセルのコアの中に容易に適合するほど充分に小さいサイズを有するべきである。通常、不溶性固体粒子は、1nm〜100nmの範囲内である。一般に、粒子は、750nm未満、好ましくは50〜70nm、例えば90〜600nmの重量平均粒径を有する。好ましくは、不溶性固体粒子は、マイクロカプセルのコアの全体にわたって均一に分布している。
【0049】
使用される不溶性固体粒子の量は、代表的には上記に記述された通りである。
【0050】
マイクロカプセルの中に保持されている固形粒子の表面に付着している油溶性分散剤ポリマーの存在は必須であると考えられる。この分散剤ポリマーの存在は、別の方法で達成できるものよりも、固体粒子の、マイクロカプセルのコアの全体にわたるより均一な分布をもたらす。理論に束縛されることなく、このことは、狭い密度分布及び全体的に均等な密度を有するマイクロカプセルを製造することを可能にすると考えられる。好ましくは、本発明のマイクロカプセルの分布の少なくとも90重量%が、重量平均密度の5%以内の密度を有する。より好ましくは、これは2%以内である。
【0051】
油溶性分散剤ポリマーは、望ましくは、疎水性の液体又はロウに可溶性又は分散性のポリマーである。好ましくは、両親媒性ポリマーである。より好ましくは、分散剤ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーから、好ましくは1つ以上の親油性であり場合により追加的な他の疎水性モノマーと1つ以上の親水性モノマーのブレンドから形成される両親媒性ポリマーである。特に価値のある親油性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸のC8〜C30アルキルエステルが含まれる。親油性モノマー及び親水性モノマーに加えて使用することができる他の疎水性モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸のC1〜C7アルキルエステルを含む、エチレン性不飽和カルボン酸の他のエステルが含まれる。他の疎水性モノマーには、スチレン、酢酸ビニル及び塩化ビニルが含まれる。特に価値のある親水性モノマーには、エチレン性不飽和カルボン酸又はその塩、アクリルアミド、エチレン性不飽和カルボン酸(酸付加塩及び第四級アンモニウム塩を含む)のアミノアルキルエステル、及びエチレン性不飽和スルホン酸又はその塩が含まれる。特に好ましい油溶性分散剤ポリマーは、エチレン性不飽和カルボン酸及びエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステルを含むモノマーから形成される。特に利益があるものは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸とメタクリル酸及び/又はアクリル酸のC16〜20アルキルエステルを含むモノマーブレンドから、特にステアロイルメタクリレートとメタクリル酸のコポリマーから形成されるポリマーである。
【0052】
油溶性分散剤ポリマーは、通常、親水性のモノマーよりも親油性のモノマーを含有するモノマーブレンドから形成される。代表的には、親油性モノマーは、モノマーブレンドの総重量の少なくとも60重量%までを占め、これは99重量%までであることができる。通常、親水性モノマーは、少なくとも1重量%の量、多くの場合40重量%までの量で存在する。好ましくは、親油性モノマーと親水性モノマーの比率は、モノマーブレンドの総重量に基づいて、65:35〜99:1の重量比であり、より好ましくは70:30〜90:10の重量比、特に75:25〜85:15の重量比である。
【0053】
好ましくは、分散剤ポリマーは、50,000g/mol未満の重量平均分子量を有する。通常、分散剤ポリマーは、少なくとも2000g/mol、一般に3000g/molを超える分子量を有する。より好ましくは、ポリマーは、10,000g/mol〜30,000g/molの範囲内の重量平均分子量を有する。
【0054】
疎水性ロウは、周囲温度(例えば、大気圧で15〜30℃)で固体又は液体であることができる。好ましくは、疎水性液体には、周囲温度(例えば、大気圧で15〜30℃)で液体であるあらゆる疎水性物質が含まれる。
【0055】
一般に、コアに含まれる疎水性の液体又はロウは有機材料であることができる。例えば、疎水性液体は、油又は溶融ロウであることができる。好ましくは、疎水性物質は非高分子材料である。より好ましくは、疎水性の液体又はロウは炭化水素である。油又はロウは、その中に分散又は溶解されている、UV吸収剤、UV反射剤又は難燃剤のような活性材料を含有することができる。したがって、コア材料は、均質であることができるか、あるいは疎水性物質の連続コア媒質の全体にわたって分散されている追加的な固体活性材料の分散体を含むことができる。
【0056】
コア材料が相変化材料を含む場合、一般に、相変化材料は−30℃〜150℃の温度で液体である油又はロウである。
【0057】
本発明に適している難燃剤の代表的な例には、米国特許第5,728,760号に記載されているブロモベンゾエート及び米国特許第3,912,792号に提示されているハロゲン化ホスフェート、チオホスフェート又は塩化チオホスホリルが挙げられる。
【0058】
本発明の適切な紫外線吸収剤には、例えば、米国特許第5,508,025号に記述されているナフタレン−メチレンマロン酸ジエステル、又は米国特許第5,498,345号において特許請求されているベンゾトリアゾールと2−ヒドロキシベンゾフェノンの混合物を含む組成物が含まれる。
【0059】
コア材料が相変化物質である場合、これは、例えば、−30℃〜150℃の温度で溶融するあらゆる既知の炭化水素であることができる。一般に、物質はロウ又は油であり、好ましくは20〜80℃、多くの場合はおよそ40℃の融点を有する。望ましくは、相変化物質は、C8−40アルカンであることができるか又はシクロアルカンであることができる。適切な相変化材料には、アルカン又はシクロアルカンの全ての異性体が含まれる。加えて、これらのアルカン又はシクロアルカンの混合物を使用することが望ましい場合もある。相変化材料は、例えば、n−オクタデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−ドソサン、n−トリコサン、n−ペンタコサン、n−ヘキサコサン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、また、これらの異性体及び/又は混合物から選択されるいずれかの化合物であることができる。
【0060】
本発明の好ましい形態において、コアは、例えば少なくとも90%の疎水性物質から実質的に構成され、これは、非高分子材料、例えば油又はロウ、特に相変化材料である。好ましい疎水性物質は、実質的に非高分子である相変化材料であるが、少量の高分子添加剤が相変化非高分子材料内に含まれることも本発明の範囲内である。通常、これはコアの総重量の10重量%未満の量であり、多くの場合5重量%未満、例えば0.5〜1.5又は2重量%である。特に望ましい高分子添加剤は、相変化材料の性質を変える物質である。例えば、相変化材料が熱を吸収して溶融する温度は、熱を失って凝固する温度と有意に異なりうることが知られている。したがって、特に望ましい高分子添加剤は、溶融温度と凝固温度を近づける物質である。この、相変化材料の融点/凝固点のシフトを最小限にすることは、多様な家庭用の用途又は衣類において重要である場合がある。
【0061】
あるいは、コアに含まれる相変化材料は、炭化水素以外の物質であることができる。
【0062】
相変化材料は、液化及び凝固相転移の際に潜熱を吸収及び脱着する無機物質であることができる。無機物質は、溶解/結晶転移の際に熱を放出又は吸収する化合物であることができる。そのような無機化合物には、例えば、硫酸ナトリウム十水和物又は塩化カルシウム六水和物が含まれる。したがって、無機相変化材料は、特定の温度での転移の際に熱エネルギーを吸収又は脱着できる任意の無機物質であることができる。無機相変化材料は、疎水性物質を含むコアマトリックスの全体にわたって分散されている、微細分散結晶の形態であることができる。一つの形態において、無機相変化材料は、ロウのような疎水性固体物質の全体にわたって分散されている。
【0063】
あるいは、コアに含まれる疎水性物質は、実質的に液体のままであり、液体の全体にわたって分散されている無機相変化材料の結晶を含有する。好ましくは、疎水性液体は炭化水素である。相変化の際に、結晶は、液体の全体にわたって分散される液滴になる。分散された液滴の融合を防ぐため、油中水型乳化剤のような適切な界面活性剤を疎水性液体に含めることが有益である場合がある。好ましくは、無機相変化材料は、ロウ又は油である炭化水素相変化材料のマトリックスの全体にわたって分散している。この好ましい実施態様において、炭化水素及び無機材料は、両方とも熱を吸収又は脱着することができる。あるいは、炭化水素相は、必ずしも相変化材料である必要がない担体油であることができる。この場合、担体油は加工助剤であることができる。
【0064】
疎水性の液体又はロウが熱貯蔵に使用される相変化材料である場合、例えば米国特許第5,456,852号又は例えば本出願の出願時には未公開であった国際特許出願PCT/EP2006/066934(内部代理人整理番号22375)に記載されているように、適切な核剤と一緒に使用して、過冷却を防止することができる。
【0065】
本発明のマイクロカプセルは、織物(例えば、繊維の本体の内部、あるいは繊維又は織物を被覆する)、自動車用途(内部設計における循環冷却液又冷却剤での使用を含む)、建築産業(例えば、間接換気又は強制換気系)又は伝熱流体(改質伝熱流体中のカプセルとして)を含む多様な用途に使用することができる。本発明のマイクロカプセルを任意の適切な物品、例えば、繊維、織物製品、セラミック、被覆などに組み込むことが可能である。したがって、本発明の更なる態様において、マイクロカプセルを含む物品が提供される。したがって、本発明によると、封入された難燃剤、UV吸収剤、活性染料トレーサー材料又は相変化材料を含む物品を提供することが可能である。封入された難燃剤の場合では、難燃剤が、繊維形成のような任意の加工工程の際に保持されることが望ましい。
【0066】
本発明のマイクロカプセルの特に有益なことは、これらを、所望の密度を有するように調製できることである。
【0067】
したがって、マイクロカプセルが選択された密度を有する方法であって、
1)選択された密度を確認する工程、
2)疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含むマイクロカプセルの密度を決定する工程、
3)マイクロカプセルに選択した密度をもたらすため、不溶性固体粒子の必要量を決定する工程、及び
4)それぞれの方法において、不溶性固体粒子の必要量を合わせる工程
の追加の工程を含む方法が提供される。
【0068】
マイクロカプセルは、液体、例えば伝熱流体の一部としての担体流体に分散することができる。したがって、マイクロカプセルが、疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが粒子表面に付着している、液体中のマイクロカプセルの分散体が提供される。
【0069】
本発明のマイクロカプセルの利点は、これらの密度が、これらが分散される液体の密度に適合するように製造できることである。したがって、液体中のマイクロカプセルの分散体は、実質的に同じ密度を有することが好ましい。
【0070】
更に、マイクロカプセルが、疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布している、液体中のマイクロカプセルの分散体を調製する方法であって、液体を準備する工程、マイクロカプセルを準備する工程、次にマイクロカプセルを液体と合わせて、分散体を形成する工程を含む方法が提供される。
【0071】
そのようなマイクロカプセルの分散体の調製は、望ましくは、マイクロカプセルの密度が、これらが分散される液体の密度と実質的に同じであるように調製されうる。
【0072】
このことは、
1)前記液体の密度を確認する工程、
2)疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含むマイクロカプセルの密度を決定する工程、
3)マイクロカプセルに選択した密度をもたらすため、不溶性固体粒子の必要量を決定する工程、
4)前記マイクロカプセルを上記で定義したとおりに調製する工程、及び
5)分散体を形成するために、前記マイクロカプセルを前記液体と合わせる工程
により、都合良く達成することができる。
【0073】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0074】
実施例
分析方法:
電子顕微鏡法:
微細球を、両面接着テープを使用してアルミニウムスタブに取り付けた。Bio-Rad SC500を使用した金被覆の後、微細球を、走査型電子顕微鏡法(Carl Zeiss SMT Electron Microscope 260)により観察した。
粒径分析
粒径分析は、R1又はR4レンズ構成を用いるQUIXCELLユニットを取り付けたSympatec HELOS Analyzer(例えば、Sympatec (GmBH))を使用して実施した。
熱分析
熱分析は、加熱速度20℃/分で110℃〜500℃の範囲の温度を使用するPerkin-Elmer Thermo gravimetric Analyzerを使用して実施した。
2つの主な測度を用いた:
・300℃での質量損失:これは、出発条件の110℃と300℃での試料からの材料の損失(百分率で表す)の量である。
・半分の高さ:これは減衰曲線の半分の高さである。
沈降分析
沈降分析は、Turbiscan Lab Expert(例えば、Formulation France)を使用して実施した。試料は、マイクロカプセルのスラリーを水で30重量%の活性物質含有量に希釈して調製した。測定は、4日間かけて行い、データは後方散乱及び透過度について収集した。
【0075】
実施例1:二酸化チタンを含有するオクタデカンのアクリルに基づくマイクロカプセル化
最初の油相は、オクタデカン(152g)、油溶性分散剤の30%炭化水素溶液(5g、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な分子量20,000の80/20ステアリルメタクリレート/メタクリル酸のコポリマー)及び二酸化チタン(5g、例えばCiba Specialty Chemicals)を混合することよって調製した。この混合物を、ロウの融点よりも高い温度で超音波混合に10分間付した。この二酸化チタンの炭化水素分散体に、メチルメタクリレート(3.28g)、ブタンジオールジアクリレート(8.68g)及びメタクリル酸(9.70g)を加え、続いてAlperox LP(0.22g、例えばElf Atochem, France)を加えた。この相を、Alperoxが完全に溶解するまで混合した。
【0076】
水相は、ポリ(ビニルアルコール)(5.4g、Gohsenol GH20R、例えばNippon Gohseii)、水(122g)及びナトリウム2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(0.64g、50%活性、例えばLubrizol, France)を混合することによって調製した。
【0077】
水相及び油相を別々に40℃に温め、Silverson L4R実験室用ホモジナイザーを使用して一緒に乳化した。10分後、安定したエマルションを得た。
【0078】
得られたエマルションを、重合の装備を備え、75℃の水浴中に設置されている反応容器に注いだ。この温度で3時間後、過硫酸アンモニウム溶液(水10ml中0.22g)を加え、温度を80℃に上昇させた。この高温で更に2時間後、混合物を室温に冷却して、ロウに覆われたポリマーシェルを有する平均粒径約2μmのマイクロカプセルの分散体を得た。
【0079】
上記に概説された方法を使用した材料の熱分析は、300℃で19%の質量損失及び379℃での半分の高さを示した。
【0080】
比較例1:オクタデカンのアクリルに基づくマイクロカプセル化
最初の油相は、オクタデカン(152g)、メチルメタクリレート(3.28g)、ブタンジオールジアクリレート(8.68g)及びメタクリル酸(9.70g)を混合し、続いてAlperox LP(0.22g、例えばElf Atochem, France)を混合することによって調製した。この相を、Alperoxが完全に溶解するまで混合した。
【0081】
水相は、ポリ(ビニルアルコール)(5.4g、Gohsenol GH20R、例えばNippon Gohseii)、水(122g)及びナトリウム2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(0.64g、50%活性、例えばLubrizol, France)を混合することによって調製した。
【0082】
水相及び油相を別々に40℃に温め、Silverson L4R実験室用ホモジナイザーを使用して一緒に乳化した。10分後、安定したエマルションを得た。
【0083】
得られたエマルションを、重合の装備を備え、75℃の水浴中に設置されている反応容器に注いだ。この温度で3時間後、過硫酸アンモニウム溶液(水10ml中0.22g)を加え、温度を80℃に上昇させた。この高温で更に2時間後、混合物を室温に冷却して、ロウに覆われたポリマーシェルを有する平均粒径約2μmのマイクロカプセルの分散体を得た。
【0084】
上記に概説された方法を使用した材料の熱分析は、300℃で5%の質量損失及び380℃での半分の高さを示した。
【0085】
実施例2:
二酸化チタンを含有する油のアミノプラストに基づくマイクロカプセル化
油相は、エイコサンロウ(135g)、油溶性ポリマー分散剤(0.75g、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な分子量20,000の80/20ステアリルメタクリレート/メタクリル酸のコポリマー)及び二酸化チタン(15g、例えばCiba Specialty Chemicals)を60℃で混合することによって調製した。混合物を、ロウの融点よりも高い温度で水浴において均質に撹拌し、約30分間超音波処理した。
【0086】
水相は、ポリ(アクリル酸−コ−アクリルアミド)(20.8g、Alcapsol P604、Ciba Specialty Chemicals、固形分約18%)及び脱イオン水(267.7g)を混合することによって調製した。溶液を45℃に温め、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(36.4g、Beetle Resin PT336、例えばBIP、固形分約70%)及びギ酸(0.84g、95〜97%)を加えた。
【0087】
得られた溶液を45℃で約7分間撹拌し、僅かに乳白色の水相を得た。
【0088】
油相及び水相を、Silverson L4RTホモジナイザーを約4500rpmで約5分間使用して一緒に乳化し、安定したエマルションを得て、それを、水浴に設置した適切に装備されている反応フラスコの中に注いだ。反応塊を35℃で2時間、続いて60℃で3時間撹拌し、場合により、尿素(3.75g)を反応塊に1時間後に60℃で加えた。
【0089】
最後に、反応塊を室温に冷却し、NaOH溶液(1.05g、約46%wt/wt水溶液)を使用して中和し、平均粒径(D50)35μmの流体分散体を得た。カプセル化製品の熱安定性は、前記に概説された分析方法を使用した。300℃で16.3%の質量損失が見出され、半分の高さの温度は415℃であった。
【0090】
実施例3〜7:
実施例2の手順を、下記に概説した組成の変化に従って繰り返した。
【0091】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着しているマイクロカプセル。
【請求項2】
マイクロカプセルの総重量に基づいて、
45〜95重量%のコアと、
5〜55重量%のシェルと
を含む、請求項1記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
コアが、
コアの重量に基づいて、
65〜99重量%の疎水性の液体又はロウと、
0.95〜25重量%の不溶性固体粒子と、
0.05〜10重量%の油溶性分散剤ポリマーと
を含み、ここで構成成分の合計が100%になる、請求項1又は請求項2記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
不溶性粒子が疎水性の液体又はロウよりも大きい密度を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
不溶性固体粒子が、金属又は金属酸化物、好ましくは遷移金属の酸化物を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項6】
不溶性固体粒子が、二酸化チタン又は酸化鉄(III)を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項7】
油溶性分散剤ポリマーが、好ましくは50,000g/mol未満の重量平均分子量の両親媒性ポリマーである、請求項1〜6のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項8】
油溶性分散剤ポリマーが、エチレン性不飽和カルボン酸及びエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステルを含むモノマーブレンドから形成される、請求項1〜7のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項9】
疎水性の液体又はロウが、好ましくは炭化水素である、請求項1又は請求項2記載のマイクロカプセル。
【請求項10】
疎水性の液体又はロウが、−30℃〜150℃の温度の融点を有する、請求項1〜9のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項11】
ポリマーシェルが、アクリル樹脂又はアミノプラスト樹脂から形成される、請求項1〜10のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項12】
ポリマーシェルが、
ポリマーシェルの重量に基づいて、
1〜95重量%の疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマー、
5〜99%重量%の多官能エチレン性不飽和モノマー、
0〜60重量%の他の単官能モノマー
から形成され、ここで全ての構成成分の合成が100%になる、請求項1〜11のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項13】
ポリマーシェルが、好ましくはメラミン、ホルムアルデヒド及び場合により尿素から形成される、アミンホルムアルデヒド樹脂であるアミノプラスト樹脂である、請求項1〜11のいずれか1項記載のマイクロカプセル。
【請求項14】
疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着しているマイクロカプセルを製造する方法であって、
1)下記:
i)疎水性の単官能エチレン性不飽和モノマー、
ii)多官能エチレン性不飽和モノマー、及び
iii)他の単官能モノマー
を含むモノマーブレンドを準備する工程、
2)モノマー混合物、不溶性固体粒子及び油溶性分散剤ポリマーを疎水性液体又は溶融疎水性ロウと合わせて、モノマー溶液を形成する工程、
3)場合によりポリマー安定剤又は乳化剤を含有する、水相を準備する工程、
4)モノマー溶液を水相中に均質化して、エマルションを形成する工程、
5)エマルションを重合性条件に付す工程及び
6)モノマーブレンドを重合して、水相中にマイクロカプセルの分散体を形成する工程
を含む方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項で定義されたいずれかの特徴を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
モノマーがフリーラジカル重合に付される、請求項14又は請求項15記載の方法。
【請求項17】
熱開始剤がモノマーと合わされ、エマルションが重合を実施するのに充分な時間の間、少なくとも50℃の温度まで加熱される、請求項14〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
安定化ポリマーが水相に含まれ、安定化ポリマーが水溶性ヒドロキシ含有ポリマー、好ましくはポリビニルアルコールである、請求項14〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
エマルションが、50〜80℃の温度で90〜150分間維持され、次に少なくとも80℃の温度で少なくとも30分間付される、請求項14〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着しているマイクロカプセルを製造する方法であって、
1)不溶性固体粒子、油溶性分散剤ポリマー及び疎水性液体又は溶融疎水性ロウを含む疎水性相を形成する工程、
2)水溶性アミンホルムアルデヒド樹脂、好ましくはギ酸である水溶性カルボン酸、水溶性のアニオン性ポリマー及び場合によりポリマー安定剤又は乳化剤を含むモノマー水溶液を形成する工程、
3)場合により水溶液の温度を上昇させて、モノマー水溶液の構成成分を部分的に反応させることにより水相を形成する工程、
4)モノマー溶液を水相中に均質化して、エマルションを形成する工程、
5)エマルションを重合性条件に付す工程、及び
6)モノマーを重合して、水相中にマイクロカプセルの分散体を形成する工程
を含む方法。
【請求項21】
請求項1〜13のいずれか1項で定義されたいずれかの特徴を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
エマルションが、重合を実施するために、少なくとも50℃の温度に付される、請求項20又は請求項21記載の方法。
【請求項23】
水溶性のアニオン性ポリマーが、アクリルアミドとナトリウムアクリレートのコポリマーである、請求項20〜22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
安定化ポリマー又は乳化剤が、水相に含まれ、好ましくはポリエチレングリコールである、請求項20〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
エマルションが、20〜40℃の温度で90〜150分間維持され、次に少なくとも50℃の温度で少なくとも1時間付される、請求項20〜24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
マイクロカプセルが選択された密度を有する、請求項14〜25のいずれか1項記載の方法であって、
1)選択された密度を確認する工程、
2)疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含むマイクロカプセルの密度を決定する工程、
3)マイクロカプセルに選択した密度をもたらすため、不溶性固体粒子の必要量を決定する工程、及び
4)それぞれの方法において、不溶性固体粒子の必要量を合わせる工程
の追加の工程を含む方法。
【請求項27】
マイクロカプセルが、疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着している、液体中のマイクロカプセルの分散体。
【請求項28】
マイクロカプセルが、液体と実質的に同じ密度を有する、請求項27記載の分散体。
【請求項29】
マイクロカプセルが、疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含み、疎水性の液体又はロウに不溶性の固体粒子がコアの全体にわたって分布しており、油溶性分散剤ポリマーが不溶性固体粒子の表面に付着している、液体中のマイクロカプセルの分散体を調製する方法であって、液体を準備する工程、マイクロカプセルを準備する工程、次にマイクロカプセルを液体と合わせて、分散体を形成する工程を含む方法。
【請求項30】
マイクロカプセルが、液体と実質的に同じ密度を有する、請求項29記載の方法であって、
1)前記液体の密度を確認する工程、
2)疎水性の液体又はロウを含有するコアをポリマーシェルの中に含むマイクロカプセルの密度を決定する工程、
3)マイクロカプセルに選択した密度をもたらすため、不溶性固体粒子の必要量を決定する工程、
4)不溶性固体粒子の必要量が用いられる、請求項14〜25のいずれか1項で定義された方法により前記マイクロカプセルを調製する工程、及び
5)分散体を形成するために、前記マイクロカプセルを前記液体と合わせる工程
を含む方法。

【公表番号】特表2010−510877(P2010−510877A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538676(P2009−538676)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062339
【国際公開番号】WO2008/064999
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】