説明

マイクロカプセルおよびその用途

内包した液状物質のカプセル殻体からのブリードアウトの防止やその調整、および、マイクロカプセルの機械的強度の向上やその調整を、効果的かつ容易に達成することのできるマイクロカプセル、および、これを用いたシートならびに電気泳動表示装置を提供することを課題とし、かかる課題を解決する手段として、本発明のマイクロカプセルは、殻体に液状物質を内包してなるマイクロカプセルであって、前記殻体が粒子径1μm以下の微粒子を含むことを特徴とし、本発明のシートは、本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含んでなるか、または、本発明にかかるマイクロカプセルと基材とからなり、本発明の電気泳動表示装置は、少なくとも一方が透明な対向電極フィルム間に、本発明のマイクロカプセルが配されてなる部分を構成部分として含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、隔壁層となる殻体に液状物質を内包してなるマイクロカプセルに関する。さらには、液状物質として、溶媒中に電気泳動性微粒子を分散させた分散体(分散液)をカプセル殻体に内包してなるマイクロカプセルに関する。また、上記マイクロカプセルを用いたシート、および、上記マイクロカプセルを用いた電気泳動表示装置に関する。
【背景技術】
従来より、隔壁層となる殻体(カプセル殻体)に、油性の液状物質(単なる溶液の他、微粒子分散体なども含む)を内包してなるマイクロカプセルはよく知られており、ノンカーボン紙および圧力測定フィルムなどの各種シートや、電気泳動表示装置や、医薬品や農薬などのコントロールリリース剤などの各種用途において、その有用性が認められている。
通常、マイクロカプセルの隔壁であるカプセル殻体は非常に薄いため、芯(核)物質でもあり内包物でもある液状物質(特に液体成分)が、カプセル殻体外にブリードアウトするという現象がある。この現象を積極的に利用しているのが、上記コントロールリリース剤などである。一方、例えば、電気泳動表示装置用のマイクロカプセルなどのように、内包した液状物質をしっかりと保持する必要のある用途においては、上述したブリードアウトは、周辺汚染、マイクロカプセルの粉体特性の低減、マイクロカプセル同士の凝集、および、その基材等への接着性や密着性の低下・不良などという不具合を生じる原因となっており、問題となっていた。また、上記コントロールリリース剤などの用途に用いるマイクロカプセルおいても、その使用時や使用後はともかく、その調製時、保存時および輸送時などの使用前においては、液状物質の内包状態を一定レベルで保持する必要がある。しかし、使用時を考慮した上で適度にブリードアウトの防止・抑制具合を調整することは容易なことではなかった。
そこで、これら問題を解決する手段として、界面重合法とIn−situ重合法を組み合わせることによりカプセル殻体を二重構造にしてブリードアウトを防止する技術(例えば、特開昭63−32560号公報参照。)や、芯物質とカプセル殻体との境界部分にPVA(ポリビニルアルコール)層を設けることでブリードアウトに対する耐久性を向上させる技術(例えば、特開昭59−48773号公報参照。)が既に開示されているが、近年の技術水準や製品品質等から求められるレベルから鑑みれば十分な解決策になっていると言えるものではないし、その操作手順も容易といえるものではないため経済性や生産性にも劣る。
また、マイクロカプセルにおいては、通常、各種用途および技術分野からの要請(柔軟性や密着性、さらにはカプセル内粒子への荷電のし易さ等の向上)もあり、上記同様、非常に薄いカプセル殻体とすることが求められているが、その代償として十分な機械的強度が得られないという問題があった。また、例えば、ノーカーボン紙や圧力測定フィルムなどの用途においては、最終的にカプセル殻体を破壊し内包物である液状物質を流出させることを目的とするものもあるが、これらにおいても、必要時以外に破壊してしまうという不具合を防ぐためには適度に機械的強度を持たせる必要があるがその調整は容易ではなかった。よって、非常に薄いカプセル殻体としながらも、その調製時や保存時等あるいは各種用途への使用時や使用後等において、攪拌や加圧などの外的負荷に対する機械的強度を容易に向上させ調整することは、従来から常に課題とされているうえ、近年の技術水準からみてもより優れたものが要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、内包した液状物質のカプセル殻体からのブリードアウトの防止やその調整、および、マイクロカプセルの機械的強度の向上やその調整を、効果的かつ容易に達成することのできるマイクロカプセルを提供することにある。また、このマイクロカプセルを用いたシートおよび電気泳動表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、従来どおりのカプセル殻体の薄さ及びそれに起因する柔軟性や密着性といった機能、作用効果を維持しながらも、前述のブリードアウトを効果的に防止したり調整したりすることができ、合わせて機械的強度の向上や調整をも容易になし得るためには、マイクロカプセルを構成しているカプセル殻体に微粒子を存在させればよいのではないかと考え、このような従来には見られなかった新規な技術によれば、上記課題を一挙に解決できることを確認して、本発明を完成した。
また、上述のようにカプセル殻体に微粒子を含めるという新規技術においては、微粒子として特定の機能や物性を有するものを用いることによってマイクロカプセル自体にも同様の機能や物性を付与することができる。例えば、粘着性、密着性、剥離性、光学特性などを発揮し得るようにすることができる。よって、用途分野および最終製品等を考慮した上で、微粒子の種類やその使用量を適宜選択、設定すれば、所望の特性を有するマイクロカプセルを容易に得ることができる。
さらに驚くべきことに、上述のようにカプセル殻体に微粒子を含有させたものは、マイクロカプセルの濾過性が格段に向上することが判った。具体的にいうと、マイクロカプセル調製後の液からマイクロカプセルのみを単離する(固液分離する)場合には、通常、吸引濾過や自然濾過が行われるが、この濾過を完了するまでの所要時間が格段に短くなるのである。これに伴ってマイクロカプセルの生産性を飛躍的に向上させることができる。
すなわち、本発明にかかるマイクロカプセルは、殻体に液状物質を内包してなるマイクロカプセルであって、前記殻体が粒子径1μm以下の微粒子を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかるマイクロカプセルは、上記において、
前記微粒子が有機質微粒子であるようにすることができ、
前記有機質微粒子が重合体微粒子であるようにすることができ、
前記液状物質が、溶媒中に電気泳動性微粒子を分散させてなる分散体であるようにすることができる。
本発明にかかるシートは、本発明にかかるマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含んでなるか、または、本発明にかかるマイクロカプセルと基材とからなる。
本発明にかかる電気泳動表示装置は、少なくとも一方が透明な対向電極フィルム間に、本発明にかかるマイクロカプセルが配されてなる部分を構成部分として含む。
【発明の効果】
本発明によれば、内包した液状物質のカプセル殻体からのブリードアウトの防止やその調整、および、マイクロカプセルの機械的強度の向上やその調整を、効果的かつ容易に達成することのできるマイクロカプセルを提供することができる。また、上記殻体に含まれる微粒子を有機質微粒子(好ましくは重合体微粒子)とした場合は、マイクロカプセルの基材への密着性を十分に確保する又はより一層向上させることができ、マイクロカプセルをバインダー樹脂と混合して基材へ密着させる場合はもちろん、バインダー樹脂を用いない場合であっても十分に基材に密着させることができる。
本発明によれば、上記マイクロカプセルを用いたシートおよび電気泳動表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明にかかるマイクロカプセルの一実施例を示す概略断面図である。
第2図は、本発明にかかるマイクロカプセルの一実施例を示す概略断面図である。。
第3図は、本発明にかかるマイクロカプセルの一実施例を示す概略断面図である。
符号の説明は、以下の通りである。
1 マイクロカプセル
2 殻体
3 微粒子
4 液状物質
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明にかかるマイクロカプセル、シートおよび電気泳動表示装置について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔マイクロカプセル〕
本発明にかかるマイクロカプセルは、前述したように、粒子径1μm以下の微粒子を含んでなる殻体(カプセル殻体)に、液状物質を内包してなるマイクロカプセルである。
本発明でいうカプセル殻体は微粒子を含むカプセル殻体であるが、この微粒子を除くカプセル殻体部分については、従来公知のマイクロカプセルにおけるカプセル殻体の原料と同様のものを用いて形成され得ることが好ましい。具体的に用いられるものとしては、例えば、コアセルベーション法を用いる場合では、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体、デンプンのフタル酸エステル、ポリアクリル酸等のアニオン性物質が好適である。In−situ重合法を用いる場合では、メラミン−ホルマリン樹脂(メラミン−ホルマリンプレポリマー)、ラジカル重合性モノマーなどが好適である。界面重合法を用いる場合では、ポリアミン、グリコール、多価フェノールなどの親水性モノマーと、多塩基酸ハライド、ビスハロホルメール、多価イソシアネートなどの疎水性モノマーとの組み合わせが好適であり、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ尿素などのカプセル殻体が形成される。
これらカプセル殻体の原料には、さらに多価アミン等を加えることもでき、耐熱保存性などに優れたカプセル殻体を有するマイクロカプセルを得ることができる。多価アミン等の使用量は、上記カプセル殻体の原料に起因する所望の殻体物性が極端に損なわれない程度であればよい。
上記多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミンや、ポリ(1〜5)アルキレン(C〜C)ポリアミン・アルキレン(C〜C18)オキシド付加物等の脂肪族多価アミンのエポキシ化合物付加物、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン、キシリレンジアミン等の芳香族多価アミン、ピペラジン等の脂環式多価アミン、3,9−ビス−アミノプロピル2,4、8,10−テトラオキサスピロ−〔5.5〕ウンデカン等の複素環式ジアミン等を好ましく挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明でいうカプセル殻体に含まれる微粒子としては、特に限定はされないが、例えば、有機質微粒子、無機質微粒子、有機質無機質複合体微粒子などの各種微粒子を用いることができる。なかでも、電極基板などの各種基板や基材への接着性(固定具合い)や密着性等をより向上させることができる点で、有機質微粒子や有機質無機質複合体微粒子を用いた場合がより好ましい。また、微粒子以外のカプセル殻体部分を形成する物質と、親和性あるいは化学結合できる官能基を有する微粒子が好ましい。
上記有機質微粒子としては、例えば、重合体微粒子、有機顔料微粒子、天然高分子微粒子などを好ましく挙げることができる。有機質微粒子は、基材や基板への密着性を確保する又は向上させる点で他の微粒子に比べて好ましく、なかでもより好ましくは重合体微粒子であり、マイクロカプセルをバインダー樹脂と混合して基材へ密着させる場合はもちろん、バインダー樹脂を用いない場合であっても十分に基材へ密着させることができる。
重合体微粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリP−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−P−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−ジブチルフマレート共重合体などのスチレン系多元共重合体;ポリメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、ポリビニルプチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等からなる微粒子を挙げることができる。
これら重合体微粒子を得る方法としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、乳化重合法、マイクロ懸濁重合法、あるいは、溶融樹脂を樹脂不溶性溶媒中で微粒子生成する方法などが有効である。また、これら重合体微粒子の樹脂特性は、特に限定はされないが、例えば、本発明のマイクロカプセルをバインダーに混合分散し塗料化して用いる場合は、そのバインダーと同物性の重合体微粒子を用いることで、塗布性および密着性が向上する効果が得られるため好ましい。
有機顔料微粒子としては、例えば、ファストイエロー、クロモフタルイエロー、ハンダイエロー、パーマネントレッド、パームレッド、クロモフタルスカーレット、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、アニリンブラック等からなる微粒子を挙げることができる。
上記無機質微粒子としては、例えば、無機顔料微粒子、コロイド状無機微粒子、磁性微粒子、金属微粒子などを好ましく挙げることができる。
無機顔料微粒子としては、例えば、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、クレー、シリカ、チタンイエロー、ベンガラ、セルリアンブルー、エメラルドグリーン等からなる微粒子を挙げることができる。
コロイド状無機微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダル酸化亜鉛、コロイダル酸化チタン等からなる微粒子を挙げることができる。
磁性微粒子としては、例えば、マグネタイト、Fe、等からなる微粒子を挙げることができる。
金属微粒子としては、例えば、金、銀、白金、銅、アルミニウム、タングステン、パラジウム等からなる微粒子を挙げることができる。
上記有機質無機質複合体微粒子としては、有機質由来の構造部分と無機質由来の構造部分とを有する複合粒子であればよく、特に限定はされない。
本発明でいうカプセル殻体に含む微粒子として上記列挙した各種微粒子は、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
また、カプセル殻体に含む微粒子としては、上記列挙した各種微粒子であり且つその表面をカップリング剤や官能基を有するポリマーで処理したものを用いることもできる。
カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が好ましい。
本発明でいうカプセル殻体に含む微粒子は、粒子径が1μm以下の微粒子であるが、好ましくは0.001〜0.8μm、より好ましくは0.01〜0.5μmである。上記粒子径が1μm以下であることにより、マイクロカプセルの強度を容易に効果的に向上させることができる。また、1μmを超える場合は、前述した本発明の効果を発揮させ得る量をマイクロカプセル殻体に含ませることができず、十分な効果が得られない、また、マイクロカプセルの強度が逆に低下するおそれがある。
本発明のマクロカプセルでいうカプセル殻体において、カプセル殻体全体中の微粒子の含有割合は、特に限定はされないが、0.1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜50重量%である。上記微粒子の含有割合が0.1重量%未満であると、前述した本発明の効果が十分に得られないおそれがあるほか、マイクロカプセルの表面(すなわちカプセル殻体の表面)に存在する微粒子量が少なくなり、特に該微粒子が有機質微粒子(好ましくは重合体微粒子)である場合は、前述した基材への優れた密着性が十分に発揮されないおそれがある。一方、50重量%を超える場合は、通常マイクロカプセルとして要求される物性を保持することができなくなるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルでいうカプセル殻体の厚み(微粒子を含む状態での厚み)は、特に限定はされないが、0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜4μm、さらに好ましくは0.1〜3μmである。上記厚みが0.1μm未満である場合は、カプセル殻体に微粒子を含有させてもそれによる前述した各種効果が十分に得られないおそれがあり、5μmを超える場合は、通常マイクロカプセルとして要求される物性を保持することができなくなる、または、微粒子を含有させたことによる効果が十分得られず経済性に劣ることとなるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルでいうカプセル殻体については、含有させている微粒子(の少なくとも一部)が、カプセル殻体表面上にその一部または全部を露出している状態(全部を露出している状態の場合、微粒子は殻体表面に密着していることが好ましく、本発明においてはこのような状態も殻体への含有形態として含む。)であってもよいし(第2図、第3図参照)、上記微粒子がすべてカプセル殻体内に包埋された状態となっていてもよく(第1図参照)、限定はされないが、特に該微粒子が有機質微粒子(好ましくは重合体微粒子)である場合は、前述した基材への優れた密着性が十分に発揮され得ることを考慮すると、前者の状態が好ましい。
本発明でいう液状物質は、微粒子を含むカプセル殻体に内包され本発明のマイクロカプセルの芯(核)物質となるものであり、全体として疎水性であることが好ましい。上記液状物質は、単に1種または2種以上の液体または混合液体であってもよいし、それら液体が固体物質を溶解させてなる溶液またはスラリー溶液であってもよく、特に限定はされない。また、それら液体や溶液に微粒子等(例えば電気泳動性微粒子など)の固体物質を分散させてなるもの(いわゆる分散体(分散液))であってもよいし、混合させてなるもの(いわゆる混合物)でもよい。上記分散体としての液状物質は、例えば、電気泳動表示装置用のマイクロカプセルを得る場合に用いられる。
上記液状物質の調製においては、用いる液体や固体物質の種類および数などは、得られるマイクロカプセルの用途分野や最終製品で要求される機能などを考慮して適宜選択すればよく、特に限定はされない。
液状物質は、全体として油性であり水系媒体中で油滴を形成して分散し得るものが好ましい。
以下、電気泳動表示装置用のマイクロカプセルを得る場合に用いる液状物質、すなわち、溶媒中に電気泳動性微粒子を分散させてなる分散体(分散液)について、具体的に例を挙げて説明する。
通常、電気泳動表示には、分散液中の溶媒の色と電気泳動性微粒子の色とのコントラストで表示する方法と、少なくとも2種の電気泳動性微粒子の色のコントラストで表示する方法がある。
上記分散液に用いる溶媒としては、通常一般的に電気泳動表示装置用分散液として用いられている溶媒であればよく、特に限定はされないが、高絶縁性の有機溶媒が好ましい。
高絶縁性の有機溶媒としては、例えば、o−、m−またはp−キシレン、トルエン、ベンゼン、ドデシルベンゼン、ヘキシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、ナフテン系炭化水素などの芳香族系炭化水素類;シクロヘキサン、n−ヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類などの単独またはそれらの混合物が好ましく挙げられ、なかでも、ドデシルベンゼンおよびヘキシルベンゼン等の長鎖アルキルベンゼンおよびフェニルキシリルエタン等が、沸点および引火点も高く、また毒性もほとんど無いことからより好ましい。これら溶媒は、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
溶媒を着色する場合は、電気泳動性微粒子の色(例えば、酸化チタン微粒子であれば白色)に対して十分なコントラストが得られる程度に着色することがより好ましい。
溶媒が着色されたものである場合、着色に用いられる染料としては、特に限定はされないが、油溶性染料が好ましく、特に使いやすさの点で、アゾ染料およびアントラキノン染料などがより好ましい。具体的には、黄色系染料としては、オイルイエロー3G(オリエント化学社製)等のアゾ化合物類が、橙色系染料としては、ファーストオレンジG(BASF社製)等のアゾ化合物類が、青色系染料としては、マクロレックスブルーRR(バイエル社製)等のアンスラキノン類が、緑色系染料としては、スミプラストグリーンG(住友化学社製)等のアンスラキノン類が、茶色系染料としては、オイルブラウンGR(オリエント化学社製)等のアゾ化合物類が、赤色系染料としては、オイルレッド5303(有本化学社製)およびオイルレッド5B(オリエント化学社製)等のアゾ化合物類が、紫色系染料としては、オイルバイオレット#730(オリエント化学社製)等のアンスラキノン類が、黒色系染料としては、スーダンブラックX60(BASF社製)等のアゾ化合物や、アンスラキノン系のマクロレックスブルーFR(バイエル社製)とアゾ系のオイルレッドXO(カントー化学社製)との混合物が、好ましく挙げられる。これら染料は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
上記分散液に用いる電気泳動性微粒子は、電気泳動性のある顔料粒子、つまり、分散液中で正または負の極性を示す着色粒子であればよい。その種類としては、特に限定されるわけではないが、具体的には、酸化チタン等の白色粒子や、カーボンブラックおよびチタンブラック等の黒色粒子などが好ましく用いられ、また後述するような他の粒子を用いてもよい。これらは1種のみ用いても2種以上併用してもよい。
酸化チタンの微粒子を用いる場合、酸化チタンの種類は、特に限定されず、一般に白色顔料として使用されるものであればよく、ルチル型でもアナターゼ型でもよいが、酸化チタンの光活性能による着色剤の退色等を考えた場合、光活性能の低いルチル型であることが好ましく、さらに光活性能を低減させるためのSi処理、Al処理、Si−Al処理あるいはZn−Al処理等を施された酸化チタンであればより好ましい。
電気泳動性微粒子としては、上記酸化チタン微粒子、カーボンブラックおよびチタンブラック以外の他の粒子を併用してもよく、また、該他の粒子を酸化チタン等の代わりに使用してもよい。他の粒子は、酸化チタン微粒子等と同様に顔料粒子であることが好ましい。また、他の粒子は、酸化チタン微粒子等と同様に電気泳動性を有する必要性は必ずしも無く、必要であれば、電気泳動性を従来公知の何らかの方法により付与すればよい。
上記他の粒子としては、特に限定されるわけではないが、具体的には、例えば、白色系のものでは、上記酸化チタン以外では、硫酸バリウム、酸化亜鉛、亜鉛華等の無機顔料;黄色系のものでは、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、クロムイエローおよび黄鉛等の無機顔料や、ファーストイエロー等の不溶性アゾ化合物類、クロモフタルイエロー等の縮合アゾ化合物類、ベンズイミダゾロンアゾイエロー等のアゾ錯塩類、フラバンスイエロー等の縮合多環類、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、ニトロ化合物およびピグメントイエロー等の有機顔料;橙色系のものでは、モリブデートオレンジ等の無機顔料や、ベンズイミダゾロンアゾオレンジ等のアゾ錯塩類およびベリノンオレンジン等の縮合多環類等の有機顔料;赤色系のものでは、ベンガラおよびカドミウムレッド等の無機顔料や、マダレーキ等の染色レーキ類、レーキレッド等の溶解性アゾ化合物類、ナフトールレッド等の不溶性アゾ化合物類、クロモフタルスカーレッド等の縮合アゾ化合物類、チオインジゴボルドー等の縮合多環類、シンカシヤレッドYおよびホスタパームレッド等のキナクリドン顔料、パーマネントレッドおよびファーストスローレッド等のアゾ系顔料等の有機顔料;紫色系のものでは、マンガンバイオレット等の無機顔料や、ローダミンレーキ等の染色レーキ類、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環類等の有機顔料;青色系のものでは、紺青、群青、コバルトブルーおよびセルリアンブルー等の無機顔料や、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン類、インダンスレンブルー等のインダンスレン類、アルカリブルー等の有機顔料;緑色系のものでは、エメラルドグリーン、クロームグリーン、酸化クロムおよびビリジアン等の無機顔料や、ニッケルアゾイエローなどのアゾ錯塩類、ピグメントグリーンおよびナフトールグリーン等のニトロソ化合物類、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン類等の有機顔料;黒色系のものでは、上記カーボンブラックやチタンブラック以外では、鉄黒などの無機顔料や、アニリンブラック等の有機顔料;などが好ましく挙げられる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
電気泳動性微粒子の粒子径は、特に限定されるわけではないが、体積平均粒子径が、0.1〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜3μmである。上記粒子径(体積平均粒子径)が、0.1μm未満の場合は、電気泳動表示装置の表示部分において十分な隠蔽性が得られず着色度が低下し、コントラスト性の高い電気泳動表示装置が得られないおそれがあり、5μmを超える場合は、粒子自体の着色度を必要以上に高くする(顔料濃度を高くする)必要性が生じる他、微粒子のスムースな電気泳動特性が低下するおそれもある。
上記分散液中には、上述した溶媒および電気泳動性微粒子以外にも必要に応じて何らかの他の成分を含むことができるが、その種類などは特に限定されるわけではない。上記他の成分としては、例えば、分散剤などが挙げられる。分散剤は、溶媒中に電気泳動性微粒子を分散させる前から含むようにしても、分散させた後に含むようにしてもよく、特に限定はされない。
分散剤としては、特に限定されないが、通常一般的に、溶媒中における粒子の分散を補助するために用いることのできる分散剤であればよく、具体的には、例えば、分散液に溶解可能な陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、ブロック型ポリマーおよびグラフト型ポリマーなどの分散剤や、各種カップリング剤などを好ましく挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。上記分散剤のなかでも、カップリング剤が電荷を印加した際の分散安定性も良好となるのでより好ましい。微粒子をカップリング剤で処理すれば、微粒子表面にカップリング剤の被覆層が形成される。
上記カップリング剤としては、その種類は特に限定されるわけではなく、例えば、▲1▼シランカップリング剤、▲2▼チタネート系カップリング剤、▲3▼アルミニウム系カップリング剤、▲4▼ビニル基を有するカップリング剤、▲5▼アミノ基、第四級アンモニウム塩、カルボキシル基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1つの基を有するカップリング剤、▲6▼末端にアミノ基またはグリシジル基を有するカップリング剤、▲7▼オルガノジシラザンなどを好ましく挙げることができ、より好ましくはチタネートカップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤であり、さらに好ましくは上記各種カップリング剤であって長鎖アルキル基をも有するカップリング剤であり、特に好ましくは長鎖アルキル基をも有するチタネートカップリング剤や長鎖アルキル基をも有するアルミニウム系カップリング剤である。上記カップリング剤は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
上述のように、長鎖アルキル基を有するカップリング剤が好ましい理由としては、安全性の高い溶剤である長鎖アルキルベンゼン等により親和性が高くなるために電気泳動性微粒子の分散安定性を高める効果が高い、ということ等を挙げることができる。
上記分散液を得る場合に、溶媒中に電気泳動性微粒子を分散させる方法としては、特に限定はされないが、通常、何らかの溶媒中に所望の粒子を分散させる際に用いられる方法であればよい。具体的には、例えば、超音波浴槽内に原料成分である電気泳動性微粒子、溶媒およびカップリング剤などを仕込み、攪拌しながら超音波分散する方法や、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドグラインドミルなどの分散機を用いて分散する方法、Vブレンダなどで溶媒および微粒子を強制攪拌しながらカップリング剤を乾燥空気や窒素ガスで噴霧させる乾式法、微粒子を溶媒に適当に分散させスラリー状となったところにカップリング剤を添加する湿式法、予め加温した溶媒および微粒子を激しく攪拌しながらカップリング剤をスプレーするスプレー法などを好ましく挙げることができる。
本発明のマイクロカプセルの形状は、特に限定はされないが、球状等の粒子状であることが好ましい。
本発明のマイクロカプセルの粒子径は、特に限定はされないが、具体的には、1〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは5〜800μm、さらに好ましくは10〜500μmである。マイクロカプセルの粒子径が1μm未満である場合は、マイクロカプセルに内包する量が少なくなりカプセル化する効果が少なくなるおそれがあり、1000μmを超える場合は、通常マイクロカプセルとして要求される物性を保持することができなくなる、または、マイクロカプセルの強度を制御することが困難になるおそれがある。
本発明のマイクロカプセルを製造するにあたっては、マイクロカプセル化工程を含む通常公知の製造方法、具体的には、例えば、コアセルベーション法(相分離法)、液中乾燥法、融解分解冷却法、スプレードライング法、パンコーティング法、気中懸濁被覆法および粉床法等のいわゆる界面沈積法や、界面重合法、In−situ重合法、液中硬化被膜(被覆)法(オリフィス法)および界面反応法(無機化学反応法)等のいわゆる界面反応法を好ましく用いることができる。なかでも、コアセルベーション法、In−situ重合法、界面重合法、融解分解冷却法がより好ましく、これらの製造方法によれば、一般には、マイクロカプセル化は水系媒体の存在下で行われ、マイクロカプセルと水系媒体とを含む調製液が得られる。さらに、カプセル殻体の厚さの制御がより容易である点や、必要に応じ複数層の殻体形成ができる点で、コアセルベーション法が特に好適である。
上記各種製造方法におけるマイクロカプセル化工程では、カプセル殻体に内包される芯物質として前述した液状物質を用い、通常公知のカプセル殻体原料に前述の微粒子を含有させたものを本発明でいうカプセル殻体の原料として用いるようにする。このような方法であれば本発明のマイクロカプセルを極めて容易に得ることができるため好ましい。
マイクロカプセル化工程において、通常公知のカプセル殻体原料に微粒子を含有させたものをカプセル殻体原料として用いる場合、その原料全体中の微粒子の含有割合は、得られたマイクロカプセルのカプセル殻体における微粒子の含有割合が前述の範囲となるように適宜設定すればよく、特に限定はされないが、例えば、0.01〜5重量%としておくことが好ましく、より好ましくは0.05〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。上記範囲外であると、得られたマイクロカプセルのカプセル殻体における微粒子含有割合が前述した範囲内とならないおそれがある。
マイクロカプセル化工程を行うにあたっては、本発明でいう液状物質を芯物質としての状態(例えば液滴状の形態)にする必要があるが、その方法としては、気相中で噴霧や滴下等を行ったりオリフィス等を用いたりして液滴状にしてもよいし、水系媒体または非水系媒体中で分散させることにより液滴状にしてもよく、特に限定はされない。前述したコアセルベーション法、In−situ重合法、界面重合法および融解分解冷却法を採用する場合は、液状物質を水系媒体中で分散させることにより液滴状にすることが好ましい。例えば、コアセルベーション法では、一般には、水系媒体中に前述した液状物質を分散させ、該水系媒体にカプセル殻体の原料を添加することにより、分散させた液状物質の表面に、前述の微粒子を含有する殻体を形成させるようにする。
液状物質を分散させる際に用いる水系媒体としては、特に限定はされないが、水や、水と親水性溶剤(アルコール、ケトン、エステル、グリコールなど)との混合液、水に水溶性高分子(PVA(ポリビニルアルコール)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ゼラチン、アラビアゴムなど)を溶解させた溶液、水に界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤など)を添加した溶液、または、これら水系媒体を複合した液などを好ましく用いることができる。また、液状物質を水系媒体に分散させる量は、特に限定はされないが、具体的には、水系媒体100重量部に対して、該液状物質を20〜200重量部用いることが好ましく、より好ましくは30〜150重量部である。20重量部未満であると、結果的に粒径分布の広いマイクロカプセルとなり、生産効率の低下を招くおそれがあり、200重量部を超える場合は、逆懸濁液となりマイクロカプセルが製造できなくなるおそれがある。
マイクロカプセル化工程において、微粒子を含むカプセル殻体原料の使用量は、特に限定はされないが、具体的には、芯物質として使用する液状物質1重量部に対して、1〜50重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜30重量部である。該使用量が上記範囲外であると、得られるマイクロカプセルにおけるカプセル殻体の厚みが前述した範囲内にならないおそれがある。
マイクロカプセル化工程を行う際には、微粒子を含むカプセル殻体原料、液状物質、および必要に応じて用いる水系媒体や非水系媒体の他にも、適宜他の成分を用いてもよい。
マイクロカプセル化工程によりマイクロカプセルを調製した後、必要に応じてマイクロカプセルを濾過等により単離する。例えば、液状物質を水系媒体などに分散させてマイクロカプセル化工程を行った場合は、マイクロカプセル調製後、吸引濾過や自然濾過にて該マイクロカプセルを水系媒体等から分離するが、本発明のマイクロカプセルを濾過する場合は、上記濾過の所要時間を格段に短縮することができ、ひいては経済性、生産性に大きなメリットとなる。
単離後は、通常公知の方法により、所望の粒径分布となるようにマイクロカプセルを分級することが好ましい。
また、不純物を除去し、製品品質を向上させるため、得られたマイクロカプセルを洗浄する操作を行うことも好ましい。
本発明のマイクロカプセルは、例えば、マイクロカプセル化液晶、カプセル型接着剤、カプセル型化粧品、マイクロカプセル型電気泳動表示装置、マイクロカプセル型液晶表示装置等の各種用途や製品に好ましく用いることができる。その他、従来公知の各種用途や製品にも好ましく用いることができる。
例えば、本発明のマイクロカプセルをカプセル型接着剤に用いる場合は、感圧カプセルシステム、感熱カプセルシステム、反応性カプセルシステムなどの接着剤に利用でき、非粘着性の乾燥面が得られ、フィルム化することができる。このようにカプセル型接着剤に本発明のマイクロカプセルを用いることによって、フィルム化する際の塗布(塗工)工程での割れやブリードアウト等の問題もなく、保存安定性などでも優れた効果を得ることができる。
〔シート〕
本発明にかかるシートは、前述したように、上記本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含んでなるシート(第1のシート)であるか、または、上記本発明のマイクロカプセルと基材とからなるシート(第2のシート)である。
第1のシートは、上記本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含んでなる層のみからなるシート(シートA)であってもよいし、この層を何らかのフィルム状やシート状の基材と一体化させてなるシート(シートB)であってもよく、特に限定はされないが、調製方法が容易であることやマイクロカプセルの特性を容易に保持したまま調製することができるなどの理由から後者の形態(シートB)が好ましい。
第1のシートの調製方法としては、例えば、上記本発明のマイクロカプセルとバインダー樹脂(樹脂溶液も含む)とを混合し、必要に応じ脱イオン水等をも混合することにより全体の固形分濃度を調整して、塗料化し、該塗料をフィルム状やシート状の基材の表面に塗布(塗工)して乾燥させて得る方法が挙げられる。上記乾燥後、塗布層のみを基材から剥がしとって分離すれば前記シートAを得ることができ、分離しなければ前記シートBを得ることができる。
上記塗料化した際の塗料中のマイクロカプセル濃度は、特に限定はされないが、30〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは30〜60重量%、さらに好ましくは30〜55重量%である。マイクロカプセル濃度が上記範囲内であることによって、例えば、本発明のシートを電気泳動表示装置に用いた場合に、電極フィルム上にマイクロカプセルを1層で緻密に配置されたものを得ることができ、優れた製品品質を達成できる。
上記塗料の粘度は、500〜5000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは800〜4000mPa・s、さらに好ましくは800〜300mPa・sである。塗料の粘度が上記範囲であることによって、基材にマイクロカプセルを一層に隙間なく配することができ、緻密な充填状態のマイクロカプセルの塗布膜(塗工膜)に仕上がる、といった効果が得られる。
第2のシートは、第1のシートのようにバインダー樹脂を含むものではなく、マイクロカプセルが直接基材と密着し、一体化してなるシートである。よって、このようなシートであれば、マイクロカプセルおよび基材以外に、他の成分を含んでいても構わない。
第2のシートの調製方法としては、例えば、上記本発明のマイクロカプセルに、脱イオン水等を混合することにより全体の固形分濃度を調整して、塗料化し、該塗料をフィルム状やシート状の基材の表面に塗布(塗工)して乾燥させて得る方法が挙げられる。なお、前述したように、第2のシートに用いるマイクロカプセルとしては、その殻体に含まれる微粒子が有機質微粒子であるものが、バインダー樹脂を用いなくても基材に十分に密着させることができる点で好適であり、重合体微粒子であるものがより好適である。
上記第1および第2のシートの調製方法においては、必要に応じ、分散剤、粘度調整剤、レベリング剤、防腐剤および消泡剤などを用いていてもよい。
上記塗料を基材に塗工する方法としては、特に限定はされないが、例えば、アプリケーター、ブレードコーター等を用いて基材1枚1枚に塗工する方法であってもよいし、マルチコーター等の連続塗工機を用いて基材に連続塗工する方法であってもよく、適宜必要に応じ選択すればよい。
従来からも、上で例示したような調製方法によりマイクロカプセルを用いたシートが得られ、種々の用途に用いられているが、従来においては、マイクロカプセルとバインダー樹脂と(必要に応じ用いる溶媒と)を混合したり、マイクロカプセルと溶媒とを混合したりして塗料化する際、または、塗料化したものを塗工する際に、塗料供給ポンプあるいはコーター等による撹拌衝撃や摩擦圧などの外的負荷により、マイクロカプセルの損傷や破壊が頻発していた。また内包した液状物質のブリードアウトが過剰に若しくは必要以上に生じてしまうこともあった。しかしながら、本発明のシートにおいては、それらの問題を解消し得る上記本発明のマイクロカプセルを用いているため、上述した外的負荷にも強く、マイクロカプセルの損傷や破壊が極めて少なく、塗工時のトラブル発生を飛躍的に低減できる。
本発明のシートは、ノンカーボン紙や圧力測定フィルムなどの、マイクロカプセルを用いた従来公知のシートと同様の用途に用いることができる。また、電気泳動表示装置を作製する場合にも好ましく用いることができる。
本発明のシートを電気泳動表示装置に用いる場合、前記シートAであれば、該シートを2枚の対向電極フィルムでラミネートして用いればよい。また、前記シートBや第2のシートであれば、これらの調製において基材として予め一方の電極フィルムを用いるようにした上で、これらシートの塗布層をもう一方の電極フィルムでラミネートして用いてもよいし、これらの調製において基材として電極フィルム以外のフィルムを用いるようにした上で、これらシートを2枚の対向電極フィルムでラミネートして用いてもよく、特に限定はされない。上記電極フィルムとしては、透明電極フィルム(例えばITO付きPETフィルム)を用いることが好ましい。
〔電気泳動表示装置〕
本発明にかかる電気泳動表示装置は、前述したように、少なくとも一方が透明な対向電極フィルム間に、前述した電気泳動表示装置用のマイクロカプセル(すなわち、上記本発明のマイクロカプセルであって、カプセル殻体に内包されている液状物質が「溶媒中に電気泳動性微粒子を分散させてなる分散液」であるマイクロカプセル)が、配されてなる構成部分を、必須の構成部分として含む装置である。なお、本発明の電気泳動表示装置における、その他の構成部分としては、限定はされず、例えば、電源回路や駆動回路などが挙げられるが、これらその他の構成部分は公知の電気泳動表示装置において構成部分として使用されているものと同様のものが採用できる。
本発明の電気泳動表示装置は、その対向電極間に、制御された電圧を印加することで、マイクロカプセル中の電気泳動性微粒子の配向位置を変え、光学的反射特性に変化を与えて、所要の表示動作を行わせることができる。
本発明の電気泳動表示装置を作製する場合は、前述した電気泳動表示装置用のマイクロカプセルをバインダー樹脂等と混合して塗料化した後、電極フィルムに塗工し、その後別の電極フィルムをもってマイクロカプセルを配した塗布面(塗工面)を、例えば加熱・加圧しながら、ラミネートするという方法が好ましく挙げられる。また、マイクロカプセルをバインダー樹脂等と混合してシート化したものや、該混合後に電極フィルム以外のフィルム状の基材に塗工して得られたシートを、対向する2枚の電極フィルムによってラミネートする方法も挙げられる。
さらには、上述のようにバインダー樹脂を用いなくても、電気泳動表示装置を作製することができ、例えば、前述した電気泳動表示装置用のマイクロカプセルを、脱イオン水等と混合することにより固形分調整して塗料化した後、電極フィルムに塗工し、その後別の電極フィルムをもってマイクロカプセルを配した塗布面を、例えば加熱・加圧しながら、ラミネートするという方法や、上記と同様に塗料化した後、電極フィルム以外のフィルム状の基材に塗工して得られたシートを、対向する2枚の電極フィルムによってラミネートする方法も挙げられる。なお、前述したように、バインダー樹脂を用いずに電気泳動表示装置を作製する場合に用いるマイクロカプセルとしては、その殻体に含まれる微粒子が有機質微粒子であるものが、バインダー樹脂を用いなくても基材に十分に密着させることができる点で好適であり、重合体微粒子であるものがより好適である。
上記いずれの作製方法においても、対向する電極フィルムは、その少なくとも一方が透明電極(例えばITO付きPETフィルム)であることが必要とされる。
通常、安定した優れた表示品質の電気泳動表示装置を得るためには、マイクロカプセルを電極フィルムに密着させる必要がある。電極との密着性が低いと、電気泳動性微粒子の応答性の低下や、コントラストの低下等が生じるからである。この密着性を高めるためには、通常、ラミネート時の温度や圧力を高くする必要があるが、従来はこのような高い温度や圧力によってマイクロカプセルが損傷したり破壊したりしていた。また、内包した液状物質が、過剰に若しくは必要以上にブリードアウトすることがあった。マイクロカプセルの損傷や破壊またはブリードアウトは、電気泳動表示装置の表示の欠落など、画質の著しい低下の原因となる。しかしながら、本発明の電気泳動表示装置においては、上記本発明の電気泳動表示装置用のマイクロカプセル、すなわち、カプセル殻体に特定粒子径の微粒子を含む電気泳動表示装置用マイクロカプセルを用いるものであるため、ラミネート時のマイクロカプセルの損傷や破壊またはブリードアウトを格段に低減することができる。さらに、上記微粒子としてその材質や物性を適宜必要に応じて選択することによって、電極フィルムとの密着性をより一層高めることができるので、その場合は、温度や圧力などの諸条件をより緩やかにした状態でも優れた密着性を有するようにラミネートすることができる。
さらに驚くべきことに、前述したバインダー樹脂を用いない方法により作製された電気泳動表示装置は、バインダー樹脂を用いて作製された同装置に比べて、より低い印苛電圧でも十分にマイクロカプセル内の電気泳動性微粒子を泳動させることができる。本発明のように、殻体に微粒子を含むマイクロカプセルを用いることのない場合においては、バインダー樹脂を必須として用い、該樹脂によって基材へのマイクロカプセルの十分な密着性を確保するようにし、併せて、装置中のマイクロカプセルのブリードアウトを防止したり、該マイクロカプセルが損傷を受けたり破壊したりしないようにその機械的強度の低さを補強するようにする、という技術が採用される(例えば、特表2002−526812号公報参照。)。しかしながら、このような技術を採用して作製された電気泳動表示装置は、マイクロカプセルと電極との間にバインダー樹脂が介在し、該樹脂が抵抗体となってしまうため、十分に電気泳動性微粒子の泳動性を確保するためには、高い印加電圧が必要となるのである。本発明のマイクロカプセルは、殻体に微粒子(好ましくは有機質微粒子、より好ましくは重合体微粒子)を含むものであるため、前述のように、ブリードアウトの防止や機械的強度の向上を図ることができるが、さらに加えて、該微粒子の存在により、バインダー樹脂を使用しなくても基材への十分な密着性を図ることができるため、経済性に優れるとともに、表示応答性やコントラスト等の各種表示品質にも優れた電気泳動表示装置を作製することができる。
本発明の電気泳動表示装置においては、用いるマイクロカプセルの粒子径は、特に限定はされないが、30〜200μmであることが好ましく、より好ましくは50〜150μmである。
本発明の電気泳動表示装置において、対向する電極フィルム間のクリアランスは、特に限定はされないが、30〜150μmであることが好ましく、より好ましくは30〜120μmである。
【実施例】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。また、「重量%」を単に「wt%」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。
〔実施例1−1〕
ハイゾールSAS296(日本石油化学社製)100gに、アントラキノン系の青色オイル染料6gを溶解させ、青色に着色された疎水性液(1)を得た。
予め、水60gにアラビアゴム3gおよびゼラチン6gを溶解させておき、43℃に保持された水溶液に、50℃にした疎水性液(1)106gをディスパー(特殊機化工業社製、製品名:ROBOMICS)攪拌下に添加し、攪拌速度を徐々に上げ、1050rpmで60分間攪拌し、懸濁液を得た。
この懸濁液に、43℃の温水300mL、および、カプセル殻体に含有させる重合体微粒子を含むポリマーエマルション(第一工業製薬(株)製、製品名:SuperFlex700(重合体微粒子の粒子径:90nm、固形分:35wt%))7.8gを添加しながら攪拌速度も徐々に下げ、500rpmとした。さらに10%NaCO0.75mLを添加した後、30分間保持した。
30分間保持後、11mLの10%酢酸溶液を25分間かけて定量添加した後、10℃以下に冷却した。
冷却状態で2時間保持した後、37%ホルマリン3mLを添加し、さらに10%NaCO22mLを25分間かけて定量添加した。
その後、攪拌をしながら常温に戻し、20時間放置して熟成を行い、マイクロカプセル(11)の分散体を得た。
このマイクロカプセル(11)の粒子径を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、製品名:LA−910)で測定した結果、体積平均粒子径が67μmであった。
〔実施例1−2〕
実施例1−1において、ハイゾールSAS296に代えてアルキルベンゼンを用いた以外は、実施例1−1と同様の操作により、青色に着色された疎水性液(2)を得た。
予め、水100gにアラビアゴム6gおよびゼラチン9gを溶解させておき、43℃に保持された水溶液に、50℃にした疎水性液(2)106gをホモミキサー(特殊機化工業社製、製品名:ROBOMICS)攪拌下に添加し、攪拌速度を徐々に上げ、3000rpmで30分間攪拌し、懸濁液を得た。
この懸濁液に、43℃の温水300mL、および、カプセル殻体に含有させる重合体微粒子を含むアクリル系ポリマーエマルション(重合体微粒子の粒子径:450nm、固形分:45wt%、)14gを添加しながら攪拌速度も徐々に下げ、1000rpmとした。攪拌をパドル攪拌に変え、全体が均一に十分攪拌されている状態で、さらに10%NaCO0.75mLを添加した後、30分間保持した。
30分間保持後、15mLの10%酢酸溶液を30分間かけて定量添加した後、10℃以下に冷却した。
冷却状態で2時間保持した後、37%ホルマリン5mLを添加し、さらに10%NaCO24mLを25分間かけて定量添加した。
その後、攪拌をしながら常温に戻し、20時間放置して熟成を行い、マイクロカプセル(12)の分散体を得た。
このマイクロカプセル(12)の粒子径を、実施例1−1と同様の方法で測定した結果、体積平均粒子径が23μmであった。
〔比較例1−1〕
実施例1−1において、アラビアゴムを3g用いるところを6g用いるようにし、ポリマーエマルション(第一工業製薬(株)製、製品名:SuperFlex700)を用いなかった以外は、実施例1−1と同様の操作により、マイクロカプセル(c11)の分散体を得た。
このマイクロカプセル(c11)の粒子径を、実施例1−1と同様の方法で測定した結果、体積平均粒子径が65μmであった。
〔比較例1−2〕
実施例1−2において、アラビアゴムを6g用いるところを9g用いるようにし、アクリル系ポリマーエマルション(重合体微粒子の粒子径:450nm、固形分:45wt%、)を用いなかった以外は、実施例1−2と同様の操作により、マイクロカプセル(c12)の分散体を得た。
このマイクロカプセル(c12)の粒子径を、実施例1−1と同様の方法で測定した結果、体積平均粒子径が21μmであった。
〔実施例1−3〕
500mLの4つ口フラスコに、酸化チタン(石原産業社製、製品名:タイペークCR−97)30g、アルキルベンゼン261gおよびチタネート系カップリング剤(味の素社製、製品名:プレンアクトTTS)2gを仕込み、撹拌混合した後、55℃の超音波浴槽(ヤマト社製、製品名:BRANSON5210)に入れ、撹拌しながら超音波分散を2時間行い、酸化チタン分散液を得た。
この酸化チタン分散液に、アントラキノン系の青色オイル染料6gを溶解させ、青色に着色された電気泳動性微粒子分散液(3)を得た。
予め、水60gにアラビアゴム5.5gおよびゼラチン5.5gを溶解させておき、43℃に保持された水溶液に、55℃にした電気泳動性微粒子分散液(3)105gをディスパー(特殊機化工業社製、製品名:ROBOMICS)攪拌下に添加し、攪拌速度を徐々に上げ、1300rpmで60分間攪拌し、懸濁液を得た。
この懸濁液に、43℃の温水300mL、および、カプセル殻体に含有させる重合体微粒子を含むポリマーエマルション(第一工業製薬(株)製、製品名:SuperFlex700(重合体微粒子の粒子径:90nm、固形分:35wt%、体積固有抵抗:2.5×1010Ω・cm))7.8gを添加しながら攪拌速度も徐々に下げ、500rpmとした。さらに10%NaCO0.75mLを添加した後、30分間保持した。
30分間保持後、11mLの10%酢酸溶液を25分間かけて定量添加した後、10℃以下に冷却した。
冷却状態で2時間保持した後、37%ホルマリン3mLを添加し、さらに10%NaCO22mLを25分間かけて定量添加した。
その後、攪拌をしながら常温に戻し、20時間放置して熟成を行い、電気泳動性微粒子分散液(3)を内包した電気泳動表示装置用マイクロカプセル(13)の分散体を得た。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセル(13)の粒子径を、実施例1−1と同様の方法で測定した結果、体積平均粒子径が68μmであった。
〔実施例1−4〕
実施例1−3において、アルキルベンゼンに代えてハイゾールSAS296を用いた以外は、実施例1−3と同様の操作により、青色に着色された電気泳動性微粒子分散液(4)を得た。
予め、水100gにアラビアゴム6gおよびゼラチン9gを溶解させておき、43℃に保持された水溶液に、50℃にした電気泳動性微粒子分散液(4)106gをディスパー(特殊機化工業社製、製品名:ROBOMICS)攪拌下に添加し、攪拌速度を徐々に上げ、1050rpmで30分間攪拌し、懸濁液を得た。
この懸濁液に、43℃の温水300mL、および、カプセル殻体に含有させる重合体微粒子を含むポリマーエマルション(第一工業製薬(株)製、製品名:SuperFlex300(重合体微粒子の粒子径:70nm、固形分:30wt%、体積固有抵抗:2.3×10Ω・cm))17gを添加しながら攪拌速度も徐々に下げ、1000rpmとした。攪拌をパドル攪拌に変え、全体が均一に十分攪拌されている状態で、さらに10%NaCO0.75mLを添加した後、30分間保持した。
30分間保持後、15mLの10%酢酸溶液を30分間かけて定量添加した後、10℃以下に冷却した。
冷却状態で2時間保持した後、37%ホルマリン5mLを添加し、さらに10%NaCO24mLを25分間かけて定量添加した。
その後、攪拌をしながら常温に戻し、20時間放置して熟成を行い、電気泳動性微粒子分散液(4)を内包した電気泳動表示装置用マイクロカプセル(14)の分散体を得た。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセル(14)の粒子径を、実施例1−1と同様の方法で測定した結果、体積平均粒子径が95μmであった。
〔比較例1−3〕
実施例1−3において、アラビアゴムを5.5g用いるところを6g用いるようにし、ポリマーエマルション(第一工業製薬(株)製、製品名:SuperFlex700)を用いなかった以外は、実施例1−3と同様の操作により、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c13)の分散体を得た。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c13)の粒子径を、実施例1−1と同様の方法で測定した結果、体積平均粒子径が66μmであった。
〔比較例1−4〕
実施例1−4において、アラビアゴムを6g用いるところを9g用いるようにし、ポリマーエマルション(第一工業製薬(株)製、製品名:SuperFlex300)を用いなかった以外は、実施例1−4と同様の操作により、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c14)の分散体を得た。
この電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c14)の粒子径を、実施例1−1と同様の方法で測定した結果、体積平均粒子径が87μmであった。
<マイクロカプセルの機械的強度>
得られたマイクロカプセル(11)〜(12)および(c11)〜(c12)と電気泳動表示装置用マイクロカプセル(13)〜(14)および(c13)〜(c14)の分散体それぞれについて吸引濾過を行い、固形分約40wt%の濾過ケーキを得た。
それぞれの濾過ケーキ50gに、固形分35wt%のバインダー(アクリル系エマルション、成膜温度5℃)6gおよび水17gを添加し、塗料化した後、厚さ250μmのPETフィルムにアプリケーターを用いて塗布し、30分間風乾後、100℃で10分間乾燥させることで、マイクロカプセルを塗布したMCフィルム(1A)〜(4A)および(c1A)〜(c4A)を得た。
次に、鉛筆硬度計(安田精機製作所(株)製)を用い、白色普通紙上にマイクロカプセルの塗布面を下にして上記MCフィルムを置いた。その後、PETフィルム側から、7Hの鉛筆を使用して荷重を50g、100g、200g、300gと架けた各場合の、白色普通紙の青く染まる色汚染度を観察することで、マイクロカプセル(11)〜(12)および(c11)〜(c12)と電気泳動表示装置用マイクロカプセル(13)〜(14)および(c13)〜(c14)のそれぞれの機械的強度を、以下の基準により評価した。その結果を表1に示す。
◎:染色無し
○:極わずかに染色有り
△:少し染色有り
×:大きく滲む状態の染色有り
【表1】

〔実施例2−1〕
実施例1−3で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(13)の分散体について、体積平均粒子径の約1.5倍の目開きのメッシュを通過させて粗大粒子を除いた後、吸引ろ過して、マイクロカプセル(13)を単離した。
単離したマイクロカプセル(13)100部に対し、バインダー用アクリルエマルション40部の比率で配合し、さらに固形分濃度が40wt%以下となるように脱イオン水を配合して混合し、塗布液を得た。この塗布液を、基材としてのITO(透明電極)付きPETフィルムの、ITO面にアプリケーターで塗布した後、90℃で10分間乾燥させ、マイクロカプセル(13)を用いたシート(21)を得た。
〔実施例2−2〕
実施例2−1において、マイクロカプセル(13)の分散体の代わりに、実施例1−4で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(14)の分散体を用いた以外は、実施例2−1と同様にして、マイクロカプセル(14)を用いたシート(22)を得た。
〔比較例2−1、2−2〕
実施例2−1において、マイクロカプセル(13)の分散体の代わりに、比較例1−3で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c13)の分散体および比較例1−4で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c14)の分散体をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様にして、マイクロカプセル(c13)を用いたシート(c21)と、マイクロカプセル(c14)を用いたシート(c22)を得た。
〔実施例2−3、2−4〕
実施例2−1および2−2それぞれにおいて、バインダー用アクリルエマルションの配合比率を40部から10部にした以外は、実施例2−1および2−2と同様にして、マイクロカプセル(13)を用いたシート(23)と、マイクロカプセル(14)を用いたシート(24)を得た。
〔比較例2−3、2−4〕
比較例2−1および2−2それぞれにおいて、バインダー用アクリルエマルションの配合比率を40部から10部にした以外は、比較例2−1および2−2と同様にして、マイクロカプセル(c13)を用いたシート(c23)と、マイクロカプセル(c14)を用いたシート(c24)を得た。
〔実施例2−5〕
実施例1−3で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(13)の分散体について、実施例2−1と同様にして、マイクロカプセル(13)を単離した。
単離したマイクロカプセル(13)100部に対し、固形分濃度が40重量%以下となるように脱イオン水を配合して混合し(バインダー用アクリルエマルション不使用)、塗布液を得た。この塗布液を、基材としてのITO付きPETフィルムの、ITO面にアプリケーターで塗布した後、90℃で10分間乾燥させ、マイクロカプセル(13)を用いたシート(25)を得た。
〔実施例2−6〕
実施例2−5において、マイクロカプセル(13)の分散体の代わりに、実施例1−4で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(14)の分散体を用いた以外は、実施例2−5と同様にして、マイクロカプセル(14)を用いたシート(26)を得た。
〔比較例2−5、2−6〕
実施例2−5において、マイクロカプセル(13)の分散体の代わりに、比較例1−3で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c13)の分散体および比較例1−4で得られた電気泳動表示装置用マイクロカプセル(c14)の分散体をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様にして、マイクロカプセル(c13)を用いたシート(c25)と、マイクロカプセル(c14)を用いたシート(c26)を得た。
<マイクロカプセルを用いたシートの密着性評価>
(基材との密着性)
シート(21)〜(26)および(c21)〜(c26)それぞれについて、乾燥後の塗布面に、粘着テープ(住友スリーエム社製、製品名:Scotch Band Tape)を張り、その後ゆっくり剥がしたときの状態を観察し、塗布層(マイクロカプセルおよびバインダーからなるか、または、マイクロカプセルのみからなる層)と、基材(ITO付きPETフィルム)との密着性について、以下の基準で評価した。その結果を表2に示す。
○:塗布層が基材から全く剥がされなかった。
△:塗布層が基材から一部剥がされた。
×:塗布層がほとんど全部基材から剥がされた。
(電極フィルムとの密着性)
シート(21)〜(26)および(c21)〜(c26)それぞれについて、乾燥後の塗布面に、さらに別途、電極フィルムとしてのITO付きPETフィルムを重ね合わせたものを、該重ね合わせたフィルムが上側になるようにして厚さ2mmのガラス板上に置き、そのまま下記の2本のロール間を通過させ、上記重ね合わせたフィルムを上記塗布面に熱圧着した。なお、上記2本のロールのうち、上側のロールは、ロール径3インチのシリコンゴムロールであり、熱媒体によりロール表面温度が120℃となるように加熱保持しておき、4kg/cmの空気圧で下側のロールに圧着させた状態(ロール間のクリアランス:0mm)で、0.6cm/分の送り速度で駆動回転させる。下側のロールは、加熱はせず、フリー回転させるようにし、その位置は固定しておく。
熱圧着後、上記重ね合わせたフィルムをゆっくり剥がしていったときの状態を観察し、塗布層と、上記重ね合わせたフィルムとの密着性について、以下の基準で評価した。その結果を表2に示す。
○:上記重ね合わせたフィルムが剥がれないか、または、強制的に剥がすと塗布層(特に塗布層中のマイクロカプセル)が破壊された。
△:上記重ね合わせたフィルムが剥がれる部分が一部あるが、全体的に塗布層とかなり強く密着している。
×:上記重ね合わせたフィルムが簡単に剥がれた。
【表2】

〔実施例3−1〕
実施例2−1で得られたシート(21)の塗布面に、別途ITO付きPETフィルムを、そのITO面が上記塗布面に接するようにして重ね、加温加圧してラミネートした。さらに、両PETフィルムのそれぞれの電極(ITO)に、導電性接着剤(藤倉化成(株)製、製品名:Electroconductives DOTITE)を使用してリード線を接合し、電源を設置して、対向電極を有する電気泳動表示装置(31)を作製した。
〔実施例3−2〜3−6〕
実施例3−1において、シート(21)の代わりに、実施例2−2〜2−6で得られたシート(22)〜(26)をそれぞれ用いた以外は、実施例3−1と同様にして、対向電極を有する電気泳動表示装置(32)〜(36)を作製した。
〔比較例3−1〜3−6〕
実施例3−1において、シート(21)の代わりに、比較例2−1〜2−6で得られたシート(c21)〜(c26)を用いた以外は、実施例3−1と同様にして、対向電極を有する電気泳動表示装置(c31)〜(c36)を作製した。なお、比較例3−5および3−6で作製した電気泳動表示装置(c35)および(c36)においては、ラミネートしても、マイクロカプセルがITO付きPETフィルムに密着していなかった。
<電気泳動表示装置の作製および画質評価>
電気泳動表示装置(31)〜(36)および(c31)〜(c36)それぞれについて、両電極間に30Vの直流電圧を1秒間印加した後のコントラストを測定した。コントラストは、マクベス分光光度濃度計SpectroEye(Gretag Macbeth社製)により、青表示および白表示の反射率をそれぞれ測定し、その反射率比で表した(コントラスト=白反射率/青反射率)。これらの結果を表3に示す。
【表3】

【産業上の利用可能性】
本発明のマイクロカプセルは、例えば、マイクロカプセル化液晶、カプセル型接着剤、カプセル型化粧品、マイクロカプセル型電気泳動表示装置、マイクロカプセル型液晶表示装置等の各種用途に好適であり、その他、ノンカーボン紙や圧力測定フィルム等の、従来公知の各種用途にも好適である。
本発明のシートは、例えば、ノンカーボン紙や圧力測定フィルム等の、マイクロカプセルを用いた従来公知のシートと同様の用途に好適であり、また、マイクロカプセル型電気泳動表示装置やマイクロカプセル型液晶表示装置等の構成部品としても好適である。
本発明の電気泳動表示装置は、高い表示品質を備えた電気泳動表示装置として好適である。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殻体に液状物質を内包してなるマイクロカプセルであって、前記殻体が粒子径1μm以下の微粒子を含むことを特徴とする、マイクロカプセル。
【請求項2】
前記微粒子が有機質微粒子である、第1項に記載のマイクロカプセル。
【請求項3】
前記有機質微粒子が重合体微粒子である、第2項に記載のマイクロカプセル。
【請求項4】
前記液状物質が、溶媒中に電気泳動性微粒子を分散させてなる分散体である、第1項から第3項までのいずれかに記載のマイクロカプセル。
【請求項5】
第1項から第4項までにいずれかに記載のマイクロカプセルとバインダー樹脂とを含んでなる、シート。
【請求項6】
第1項から第4項までにいずれかに記載のマイクロカプセルと基材とからなる、シート。
【請求項7】
少なくとも一方が透明な対向電極フィルム間に、第4項に記載のマイクロカプセルが配されてなる部分を構成部分として含む、電気泳動表示装置。

【国際公開番号】WO2004/079440
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503038(P2005−503038)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002551
【国際出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)