説明

マイクロカプセルを有するコーティングを有する包装材料

本発明は、少なくとも1つの紙塗工液層、場合により印刷層、場合により1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が上に塗布されており、その際に少なくとも塗布された層の1つの中にマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料が含まれており、かつマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料のカプセル壁が次のもの:
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜100質量%、
水に不溶又は難溶である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 0〜80質量%、及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%
その都度モノマーの全質量を基準とする、
から構成されており、紙又は厚紙からなる少なくとも1つの支持体を含む複合体の形の包装材料、それらの製造方法並びに食品を包装するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの紙塗工液層、場合により印刷層、場合により1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が上に塗布されており、紙又は厚紙からなる少なくとも1つの支持体を含む複合体の形での包装材料、それらの製造方法並びに食品を包装するためのそれらの使用に関する。さらに、本発明は、本発明により使用されうる紙塗工液、印刷インキ及び熱可塑性プラスチック層に関する。
【0002】
温度感受性製品の輸送のためには、通常、良断熱性包装材料、例えばStyropor(登録商標)(製造者BASF Aktiengesellschaft)、Neopor(登録商標)(製造者BASF Aktiengesellschaft)又は発泡ポリプロピレンが使用される。断熱は、これらの材料の劣悪な熱伝導に基づく。しかしながら、これらの断熱材料の大きな体積は不利である。包装工業においては、単位体積当たりできるだけ多く製品を輸送又は貯蔵し、かつかさばる包装のための輸送コスト又は貯蔵コストを発生させないことが、しばしば重要である。むしろ低価格の商品を有する食品分野においてはまさに、かさばる包装は不経済である。
【0003】
他方では、まさに食品は、それらのクールチェーン(Kuehlkette)の遮断に関してしばしば極めて感受性である。そのような温度ジャンプに補償的に影響を及ぼすために、過去において潜熱蓄熱材料を包装へ一体化することが試みられていた。潜熱蓄熱材の機能様式は、周囲とのエネルギー吸収又はエネルギー放出を意味する、固液相転移の際に発生する転移エンタルピーに基づく。それゆえ、これらの潜熱蓄熱材は、温度一定保持のために、規定された温度範囲において使用されることができる。
【0004】
この原理は、欧州特許出願公開(EP-A)第1 029 018号明細書に記載されているように、サーマルプリント法のための紙(坪量40g/m2)用のコーティング材料における、高度に架橋したメタクリル酸エステルポリマーからなるカプセル壁及び潜熱蓄熱材コアを有するマイクロカプセルの使用の際に利用された。
【0005】
さらに、特開(JP)2001-357250号公報には、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を有する厚紙がフローリング材料、壁材料及び天井材料として使用されることによる建築適用が記載されている。尿素−ホルムアルデヒド樹脂並びにメラミン−ホルムアルデヒド樹脂をベースとするマイクロカプセルは、紙料の厚紙製造の際に混合される。しかしながら、メラミン−ホルムアルデヒドベース又は尿素−ホルムアルデヒドベースのマイクロカプセルは、考えられるホルムアルデヒド放出に基づいて望ましくない。
【0006】
国際公開(WO-A)第0292911号パンプレットは、ウェットレイド短繊維並びにマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する紙組成物もしくは板紙組成物並びに靴底又は包装のための紙の使用を教示する。
【0007】
国際公開(WO-A)第03002424号パンフレットは紙ベースの包装材料を教示し、その紙料にマイクロカプセルが添加される。
【0008】
欧州特許(EP)第764 081号明細書は、間隔の空いた2つのベースの、その間に空間を有するサーモバリヤーを教示し、前記空間は、マイクロカプセル化されていてよい潜熱蓄熱材料で充填されている。
【0009】
特開(JP-A)2001-097459号公報は、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を有するポリエステル繊維不織布のコーティングを教示する。得られる不織布は、引き続いてエアクッション層と共に積層され、かつこれから医薬又は食品用のバッグが成形される。さらに、サイズ剤がマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する原紙が話題となっている。
【0010】
潜熱蓄熱材料を包装へ一体化する試みは、国際公開(WO-A)第97/23968号パンフレット及び英国特許(GB-A)第2336899号明細書に記載されている。国際公開(WO-A)第97/23968号パンフレットは、底部に潜熱蓄熱材料を有する容器が存在する保温容器を教示する。英国特許(GB-A)第2336899号明細書は、底部に潜熱蓄熱材料で充填されている空洞を有する保温装置、例えばプレートを教示する。
【0011】
しかしながら、そのようなさらに付加的な空洞もしくは蓄熱材は、装置の全体積を顕著に増大させる。さらにまた、その構成は極めて複雑であり、かつ単純な使い捨て商品のためには労力がかかり過ぎ、かつ高価過ぎる。
【0012】
最後に、特開(JP)2003-2237848号公報は、容器表面上に塗布される樹脂組成物を有する食品容器を教示する。この樹脂組成物は、アクリラートをベースとするカプセル壁を有するマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有するが、壁材料としての具体的なアクリラート組成物のことをより詳細に検討していない。
【0013】
本発明の課題は、紙ベースの包装材料、好ましくはホルムアルデヒド不含の包装材料を提供することであり、この包装材料から、従来の包装容器が成形されることができ、かつさらに付加的に周囲からの熱を蓄熱することができ、こうしてその中に貯蔵された商品が冷たく保持される。
【0014】
それに応じて、少なくとも1つの紙塗工液層、場合により印刷層、場合により1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が上に塗布されており、その際に塗布された層の少なくとも1つがマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有しており、紙又は厚紙からなる少なくとも1つの支持体を含む包装材料が見出された。
【0015】
特に、少なくとも1つの紙塗工液層、場合により印刷層、場合により1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が上に塗布されており、その際に少なくとも塗布された層の1つの中にマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料が含まれており、かつマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料のカプセル壁が次のもの:
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜100質量%、
水に不溶又は難溶である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 0〜80質量%、及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%
その都度モノマーの全質量を基準とする、
から構成されており、紙又は厚紙からなる少なくとも1つの支持体を含む複合体の形の包装材料が見出された。
【0016】
本発明により含まれているマイクロカプセルは、主に、95質量%超が、潜熱蓄熱材料からなるカプセルコア及びカプセル壁としてのポリマーを有する粒子である。カプセルコアは、その場合に温度に依存して固体又は液体である。カプセルの平均粒度(光散乱によるZ平均)は、0.5〜100μm、好ましくは1〜80μm、特に1〜50μmである。カプセルコア対カプセル壁の質量比は、一般的に50:50〜95:5である。70:30〜93:7のコア/壁比が好ましい。
【0017】
潜熱蓄熱材料は、定義によれば、熱伝達が行われるべきである温度範囲内で、相転移を有する物質である。好ましくは、潜熱蓄熱材料は、所望の用途に応じて、−30〜30℃、特に−30〜20℃及び極めて特に好ましくは−30〜10℃の温度範囲内の固/液相転移を有する。通例、潜熱蓄熱材料は、有機の、好ましくは親油性の物質である。
【0018】
適した物質として、次のものを例示的に挙げることができる:
・ 脂肪族炭化水素化合物、例えば、分枝鎖状又は好ましくは線状であり、飽和又は不飽和のC10〜C40−炭化水素、例えばn−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ヘンエイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−ヘキサコサン、n−ヘプタコサン、n−オクタコサン並びに環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン;
・ 芳香族炭化水素化合物、例えばベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、o−又はm−テルフェニル、C1〜C40−アルキル置換芳香族炭化水素、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、ヘキシルナフタレン又はデシルナフタレン;
・ 飽和又は不飽和のC6〜C30−脂肪酸、例えばラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸又はベヘン酸、好ましくはデカン酸と、例えばミリスチン酸、パルミチン酸又はラウリン酸とからなる共融混合物;
・ 脂肪アルコール、例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ココヤシ脂肪アルコールのような混合物並びにα−オレフィンのヒドロホルミル化及び別の反応により得られるいわゆるオキソアルコール;
・ C6〜C30−脂肪アミン、例えばデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン又はヘキサデシルアミン;
・ エステル、例えば脂肪酸のC1〜C10−アルキルエステル、例えばプロピルパルミタート、ステアリン酸メチル又はメチルパルミタート並びに好ましくはそれらの共融混合物又はメチルシンナマート;
・ 天然及び合成のろう、例えばモンタン酸ろう、モンタンエステルろう、カルナウバろう、ポリエチレンろう、酸化ろう、ポリビニルエーテルろう、エチレン酢酸ビニルろう又はフィッシャー−トロプシュ法によるハードワックス;
・ ハロゲン化炭化水素、例えばクロロパラフィン、ブロモオクタデカン、ブロモペンタデカン、ブロモノナデカン、ブロモエイコサン、ブロモドコサン。
【0019】
さらに、これらの物質の混合物は、所望の範囲外の融点低下とならないか、又は混合物の融解熱が目的をもった使用にとって低くなりすぎない限りは適している。
【0020】
例えば、純n−アルカン、80%よりも多い純度を有するn−アルカン又は、工業的な留出物として生じ、かつそれ自体市販されているようなアルカン混合物の使用が有利である。
【0021】
さらに、一部が無極性物質の場合に生じる凝固点降下を防止するために、カプセルコア形成物質にそれらの物質に可溶の化合物を添加することが有利でありうる。米国特許(US-A)第5 456 852号明細書に記載されているように、そのコア物質よりも20〜120Kだけ高い融点を有する化合物が有利には使用される。適した化合物は、親油性物質として前記で挙げられた脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド並びに脂肪族炭化水素化合物である。これらは、カプセルコアを基準として0.1〜10質量%の量で添加される。
【0022】
潜熱蓄熱材料は、蓄熱が望まれている温度範囲に応じて、選択される。例えば、冷凍品のためには、固液相転移が−30〜0℃の温度範囲内である潜熱蓄熱材料が使用される。生鮮品、例えば酪農製品の温度安定化のためには、好ましくは0〜15℃の温度範囲内の相転移を有する潜熱蓄熱材料が選択される。故に、−30〜30℃、好ましくは20℃まで、特に−20〜15℃の範囲内の転移温度を有する材料が好ましい。その場合に、転移温度の選択は、例えば、所望の周囲温度及びクールチェーンの遮断の種類に依存していてよい。例えば、小売業者の棚へ入れる際のようなクールチェーンの間に遮断が行われることが回避されるべきである場合には、所望の貯蔵温度近くの転移温度、冷凍品については−20〜0℃の範囲内で及び通常のチルド品については0〜15℃の範囲内で、選択することが有利である。他方では、チルド品もしくは生鮮品が、購入者の過熱された自動車中での短いドライブを切り抜けることが大変重要であるべき場合には、20℃までの転移温度で十分である。マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料は、さらにまた、異なる温度の潜熱蓄熱材料を有する異なるマイクロカプセルを混合し、こうしてさらにより特別な要求プロフィールに対応するという利点を提供する。
【0023】
好ましい潜熱蓄熱材料は、脂肪族炭化水素、特に好ましくは上記で例示的に列挙されたものである。特に、炭素原子10〜17個を有する脂肪族炭化水素並びにそれらの混合物が好ましい。
【0024】
カプセル壁用のポリマーとして、原則的に、複写紙用のマイクロカプセルのために知られた材料が使用されることができる。例えば、潜熱蓄熱材料を、英国特許(GB-A)第870476号明細書、米国特許(US)第2,800,457号明細書、米国特許(US)第3,041,289号明細書に記載された方法に従い、ゼラチン中にその他のポリマーと共にカプセル化することが可能である。
【0025】
極めて老化安定であるためには、好ましい壁材料は、熱硬化性ポリマーである。熱硬化性であるとは、その場合に、高い架橋度に基づいて軟化するのではなく、高温で分解する壁材料であると理解されるべきである。適した熱硬化性壁材料は、例えば、高度に架橋したホルムアルデヒド樹脂、高度に架橋したポリ尿素及び高度に架橋したポリウレタン並びに高度に架橋したメタクリル酸エステルポリマーである。
【0026】
ホルムアルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒドと、
・ トリアジン、例えばメラミン
・ カルバミド、例えば尿素
・ フェノール類、例えばフェノール、m−クレゾール及びレゾルシノール
・ アミノ化合物及びアミド化合物、例えばアニリン、p−トルエンスルホンアミド、エチレン尿素及びグアニジン、
又はそれらの混合物
との反応生成物であると理解される。
【0027】
カプセル壁材料として好ましいホルムアルデヒド樹脂は、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−メラミン−樹脂及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂である。これらのホルムアルデヒド樹脂のC1〜C4−アルキルエーテル、特にメチルエーテル並びにこれらのホルムアルデヒド樹脂との混合物が同じように好ましい。特に、メラミン−ホルムアルデヒド−樹脂及び/又はそれらのメチルエーテルが好ましい。
【0028】
複写紙から知られた方法において、樹脂はプレポリマーとして使用される。プレポリマーは依然として水相中に可溶であり、かつ重縮合の過程で界面上へ移動し、かつ油滴を包囲する。ホルムアルデヒド樹脂を用いてマイクロカプセル化する方法は、一般的に知られており、かつ例えば欧州特許出願公開(EP-A)第562 344号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第974 394号明細書に記載されている。
【0029】
ポリ尿素及びポリウレタンからなるカプセル壁は、同様に複写紙から知られている。カプセル壁は、NH基もしくはOH基を有している反応物とジイソシアナート及び/又はポリイソシアナートとの反応により生じる。適したイソシアナートは、例えばエチレンジイソシアナート、1,4−テトラメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート及び2,4−及び2,6−トルイレンジイソシアナートである。さらに、ポリイソシアナート、例えばビウレット構造を有する誘導体、ポリウレトンイミン及びイソシアヌレートを挙げることができる。反応物として次のものが考慮に値する:ヒドラジン、グアニジン及びその塩、ヒドロキシルアミン、ジアミン及びポリアミン及びアミノアルコール。そのような界面重付加法は、例えば、米国特許(US)第4,021,595号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第0 392 876号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第0 535 384号明細書から知られている。
【0030】
カプセル壁が高度に架橋したメタクリル酸エステルポリマーであるマイクロカプセルが好ましい。その場合に、架橋度は、全ポリマーを基準として≧10質量%の架橋剤含分で達成される。
【0031】
好ましいマイクロカプセル中で、壁形成ポリマーは、モノマーIとしてアクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル10〜100質量%、好ましくは30〜95質量%から構成されている。そのうえ、前記ポリマーは、水に不溶又は難溶であるモノマーIIとして二官能性又は多官能性のモノマー80質量%まで、好ましくは5〜60質量%、特に10〜50質量%を重合導入されて含有していてよい。それらに加えて、前記ポリマーは、その他のモノマーIIIを90質量%まで、好ましくは50質量%まで、特に30質量%まで重合導入されて含有していてよい。
【0032】
モノマーIとして、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステルが適している。特に好ましいモノマーIは、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−プロピルアクリラート及びn−ブチルアクリラート及び/又は相応するメタクリラートである。イソプロピルアクリラート、イソブチルアクリラート、s−ブチルアクリラート及びt−ブチルアクリラート及び相応するメタクリラートが好ましい。さらに、メタクリロニトリルを挙げることができる。一般的に、メタクリラートが好ましい。
【0033】
適したモノマーIIは、水に不溶又は難溶であるが、しかし親油性物質中への良好ないし限られた溶解度を有する二官能性又は多官能性のモノマーである。難溶解性は、20℃で60g/l未満の溶解度であると理解すべきである。二官能性又は多官能性のモノマーは、少なくとも2つの非共役エチレン系二重結合を有する化合物であると理解される。とりわけ、重合の間にカプセル壁の架橋を生じさせるジビニルモノマー及びポリビニルモノマーが考慮に値する。
【0034】
好ましい二官能性モノマーは、ジオールとアクリル酸又はメタクリル酸とのジエステル、さらにこれらのジオールのジアリルエーテル及びジビニルエーテルである。
【0035】
好ましいジビニルモノマーは、エタンジオールジアクリラート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、メタリルメタクリルアミド及びアリルメタクリラートである。プロパンジオールジアクリラート、ブタンジオールジアクリラート、ペンタンジオールジアクリラート及びヘキサンジオールジアクリラート又は相応するメタクリラートが特に好ましい。
【0036】
好ましいポリビニルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリラート及びトリメチロールプロパンメタクリラート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル及びペンタエリトリトールテトラアクリラートである。
【0037】
モノマーIIIとして、その他のモノマーが考慮に値し、モノマーIIIa、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びビニルピリジンが好ましい。
【0038】
水溶性モノマーIIIb、例えばアクリロニトリル、メタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリラート及び2−ヒドロキシエチルメタクリラート及びアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が特に好ましい。それらに加えて、特にN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリラート及びジエチルアミノエチルメタクリラートを挙げることができる。
【0039】
好ましい別の実施態様によれば、壁形成ポリマーは、メタクリル酸30〜90質量%、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、好ましくはメタクリル酸メチル、t−ブチルメタクリラート、フェニルメタクリラート及びシクロヘキシルメタクリラート10〜70質量%、及び別のエチレン系不飽和モノマー0〜40質量%から形成されている。これらの別のエチレン系不飽和モノマーは、この実施態様のためにこれまで挙げられていないモノマーI、II又はIIIであってよい。これは通例、この実施態様の形成されたマイクロカプセルに本質的な影響を及ぼさないので、この含分は好ましくは<20質量%、特に<10質量%である。そのようなマイクロカプセル並びにそれらの製造は、欧州特許出願公開(EP-A)第1 251 954号明細書に記載されており、これについては明らかに関連付けられている。
【0040】
本発明による使用に適したマイクロカプセルは、いわゆるインサイチュー重合により製造されうる。
【0041】
好ましいマイクロカプセル並びにそれらの製造は、欧州特許出願公開(EP-A)第457 154号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第10 139 171号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第102 30 581号明細書及び欧州特許出願公開(EP-A)第1 321 182号明細書から知られており、これらについては明らかに参照される。例えば、マイクロカプセルは、モノマー、ラジカル開始剤、保護コロイド及びカプセル封入すべき親油性物質から、安定な水中油型乳濁液が製造されるようにして製造され、前記乳濁液中でこれらが分散相として存在する。引き続いて、モノマーの重合は加温により開始され、かつこの重合はさらなる温度上昇により制御され、その際に、生じるポリマーが、親油性物質を含むカプセル壁を形成する。
【0042】
通例、重合は20〜100℃、好ましくは40〜80℃で実施される。もちろん、分散液温度及び重合温度は親油性物質の溶融温度を上回るべきである。
【0043】
最終温度に達した後に、重合は、残存モノマー含量を低下させるために、好都合にはさらに概ね2時間までの時間にわたり続ける。90〜99質量%の転化率での実際の重合反応に引き続いて、通例、水性マイクロカプセル分散液を、においキャリヤー、例えば残存モノマー及び他の有機揮発性成分を大幅に不含にすることは有利である。これはそれ自体として知られた方法で物理的に、蒸留による除去によるか(特に水蒸気蒸留を通じて)又は不活性ガスでのストリッピングにより達成されることができる。さらに、国際公開(WO)第9924525号パンフレットに記載されているように化学的に、独国特許出願公開(DE-A)第4 435 423号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第4419518号明細書及び独国特許出願公開(DE-A)第4435422号明細書に記載されているように、有利にはレドックスにより開始される重合により、行われることができる。
【0044】
このようにして、0.5〜100μmの範囲内の平均粒度を有するマイクロカプセルが製造されることができ、その場合に粒度は、それ自体として知られた方法でせん断力、撹拌速度、保護コロイド及びその濃度により調節されることができる。
【0045】
好ましい保護コロイドは水溶性ポリマーである、それというのも、これらのポリマーは水の表面張力を73mN/mから最大45〜70mN/mに低下させ、ひいては閉じたカプセル壁の形成を保証し、並びに1〜30μm、好ましくは3〜12μmの好ましい粒度を有するマイクロカプセルを形成するからである。
【0046】
通例、マイクロカプセルは、アニオン性並びに中性であってよい、少なくとも1つの有機保護コロイドの存在で製造される。アニオン性及び非イオン性の保護コロイドが一緒に使用されることもできる。好ましくは、無機の保護コロイドは、場合により有機の保護コロイド又は非イオン性の保護コロイドとの混合物で使用される。
【0047】
有機の中性の保護コロイドは、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンのコポリマー、ゼラチン、アラビアゴム、キサンタン、アルギン酸ナトリウム、カゼイン、ポリエチレングリコール、好ましくはポリビニルアルコール及び部分加水分解されたポリ酢酸ビニル並びにメチルヒドロキシプロピルセルロースである。
【0048】
アニオン性保護コロイドとして、ポリメタクリル酸、スルホエチルアクリラート及びスルホエチルメタクリラート、スルホプロピルアクリラート及びスルホプロピルメタクリラート、N−(スルホエチル)−マレインイミド、2−アクリルアミド−2−アルキルスルホン酸、スチレンスルホン酸並びにビニルスルホン酸のコポリマーが適している。
【0049】
好ましいアニオン性保護コロイドは、ナフタレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合物並びにとりわけポリアクリル酸及びフェノールスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合物である。
【0050】
アニオン性及び非イオン性の保護コロイドは、通例、乳濁液の水相を基準として、0.1〜10質量%の量で使用される。
【0051】
無機の保護コロイド、いわゆるPickering系が好ましく、これらの系は安定化を極めて微細な固体粒子により可能にし、かつ水に不溶であるが、しかし分散可能であるか、又は水に不溶でありかつ分散不可能であるが、しかし親油性物質により湿潤可能である。
【0052】
作用様式及びその使用は、欧州特許出願公開(EP-A)第1 029 018号明細書並びに欧州特許出願公開(EP-A)第1 321 182号明細書に記載されており、それらの内容については明らかに関連付けられている。
【0053】
Pickering系は、その場合に、固体粒子から単独で又はさらに付加的に、水中への粒子の分散性又は親油性相による粒子の湿潤性を改善する助剤からなっていてよい。
【0054】
無機の固体粒子は、金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素、バリウム及びマンガンの塩、酸化物及び水酸化物であってよい。水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び硫化亜鉛を挙げることができる。ケイ酸塩、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト及びハイドロタルサイトも同様に挙げることができる。高分散シリカ、ピロリン酸マグネシウム及びリン酸三カルシウムが特に好ましい。
【0055】
Pickering系は、まず最初に水相へ添加されることができ、並びに水中油型の撹拌された乳濁液に添加されることができる。かなりの微細な固体粒子は、欧州特許出願公開(EP-A)第1 029 018号明細書、並びに欧州特許出願公開(EP-A)第1 321 182号明細書に記載されているように、沈殿により製造される。
【0056】
高分散シリカは、微細な固体粒子として水中に分散されることができる。しかしまた、水中のシリカのいわゆるコロイダル分散液を使用することも可能である。コロイダル分散液は、シリカのアルカリ性の水性混合物である。アルカリpH範囲内で、粒子は膨潤されており、かつ水中で安定である。Pickering系としてのこれらの分散液の使用のためには、水中油型乳濁液のpH値が酸を用いてpH 2〜7に調節される場合が有利である。
【0057】
無機保護コロイドは、通例、水相を基準として、0.5〜15質量%の量で使用される。
【0058】
一般的に、有機の中性保護コロイドは、水相を基準として0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%の量で使用される。
【0059】
好ましくは、安定な水中油型乳濁液の製造のための分散条件は、それ自体として知られた方法で、油滴が所望のマイクロカプセルの大きさを有するように選択される。
【0060】
重合により得られるマイクロカプセル分散液は、噴霧乾燥の際に良好な易流動性カプセル粉末となる。マイクロカプセル分散液の噴霧乾燥は、常法で行われることができる。一般的に、熱気流の入口温度が100〜200℃、好ましくは120〜160℃の範囲内であり、かつ熱気流の出口温度は、30〜90℃、好ましくは60〜80℃の範囲内であるように行われる。熱気流中の水性ポリマー分散液の噴霧は、例えば一流体ノズル又は多流体ノズルを用いて又は回転円板を通じて行われることができる。ポリマー粉末の分離は通常、サイクロン又はフィルター分離器の使用下に行われる。噴霧される水性ポリマー分散液及び熱気流は、好ましくは並列に導かれる。
【0061】
場合により、噴霧乾燥を容易にするため、又は特定の粉末特性、例えば低ダスト、易流動性又は改善された再分散性に調節するために、噴霧乾燥に噴霧助剤が添加される。当業者には、多数の噴霧助剤がよく知られている。これらの例は、独国特許出願公開(DE-A)第19629525号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第19629526号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第2214410号明細書、独国特許出願公開(DE-A)第2445813号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第407889号明細書又は欧州特許出願公開(EP-A)第784449号明細書に見出される。有利な噴霧助剤は、例えば、ポリビニルアルコール又は部分加水分解されたポリ酢酸ビニル、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース及びメチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンのコポリマー、ゼラチン、好ましくはポリビニルアルコール及び部分加水分解されたポリ酢酸ビニル並びにメチルヒドロキシプロピルセルロースのタイプの水溶性ポリマーである。
【0062】
本発明による包装材料は、紙又は厚紙からなる支持体と、紙塗工液層とから構成されている。しかしながら、通例、この包装材料は支持体及び2、3又はそれ以上の層を含有する。
【0063】
本発明による包装材料は、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を全部で5〜300g/m2(乾燥質量としての塗布質量)、好ましくは15〜200g/m2及び特に好ましくは30〜150g/m2含有する。
【0064】
本発明による包装材料、特に食品用の包装材料は、0.01〜20mm、好ましくは0.1〜10mm、特に0.5〜2mmの厚さを有する。
【0065】
その場合に、食品用の包装材料の基本構成は、外側から内側へ、熱可塑性プラスチック層、好ましくは低圧ポリエチレン、印刷層、紙塗工液層、紙からなる支持体層及び熱可塑性プラスチック層から構成されていてよい。熱可塑性プラスチック層と紙支持体との間に、特別な性質を達成するために、場合によりさらに1つ又はそれ以上のさらに付加的な層、例えばガスバリヤーとして通例ポリアミド層又はアルミニウム層が、紙に面した別の熱可塑性プラスチック層と組み合わせて含まれている。例示的な層構成は次のものであってよい:
熱可塑性プラスチック/印刷層/紙塗工液層/紙支持体/熱可塑性プラスチック/ガスバリヤー(アルミニウム箔)/熱可塑性プラスチック/熱可塑性プラスチック、
熱可塑性プラスチック/印刷層/紙塗工液層/紙支持体/熱可塑性プラスチック/熱可塑性プラスチック、
印刷層/熱可塑性プラスチック/紙塗工液層/紙支持体/熱可塑性プラスチック/熱可塑性プラスチック又は
熱可塑性プラスチック/印刷層/紙塗工液層/紙支持体/熱可塑性プラスチック/アルミニウム箔/ポリエステル(PET)。
【0066】
そのような包装材料の製造は、当業者に一般的に知られており、かつ例えば欧州特許出願公開(EP-A)第1 232 856号明細書に記載されており、これについて明らかに関連付けられている。
【0067】
好ましくは、本発明による包装材料は、少なくとも1つの紙塗工液層及び印刷層、場合により1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が上に塗布されており、紙又は好ましくは厚紙からなる支持体を含む。同様に、支持体上に少なくとも1つの紙塗工液層及び1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層、場合により印刷層、及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が塗布されている包装材料が好ましい。支持体上に少なくとも1つの紙塗工液層及び印刷層、1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が塗布されている包装材料が特に好ましい。
【0068】
紙支持体は>40g/m2の坪量を有する。好ましくは、150〜600g/m2の坪量を有し、これはドイツ語の語法において厚紙(Karton)という概念に包括される。その場合に、接着された紙層からなる厚紙と、単層としてセルロース繊維から製造された厚紙、いわゆるセルロースカートンとでは相違する。150〜250g/m2の範囲内の坪量を有する紙支持体が特に好ましい。
【0069】
紙支持体は、未塗工の紙又は厚紙からなり、これは一般的に常用のように前処理され、本明細書の範囲内で原紙もしくは原厚紙とも呼ばれる。原紙もしくは原厚紙の製造は、一般的に知られており、かつ通常、好ましくはサイズ剤並びに別の助剤がセルロース繊維の水性スラリーに添加され、かつ紙料が網上でシート形成下に脱水されるプロセスにおいて行われる。製紙用の常用のプロセス化学薬品は、紙料サイズ剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤、例えばエピクロロヒドリンで架橋されたポリアミドアミン、中程度の分子量のポリビニルアミン又はデンプン、固定剤、殺生物剤及び染料である。
【0070】
紙又は厚紙、好ましくはサイズ紙又はサイズ厚紙の製造のためには、製紙工業において通常使用される全てのセルロース繊維、例えば機械パルプ及び全ての一年生植物からなる繊維が使用されることができる。機械パルプは、例えば砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、加圧式砕木パルプ、セミケミカルパルプ、高収率パルプ、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)及び古紙であると理解される。そのうえ、晒した形又は未晒しの形で使用されることができるパルプが適している。これらの例は、硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ及びソーダパルプである。好ましくは未晒しパルプが使用され、これらは未晒しクラフトパルプとも呼ばれる。繊維状物質は、単独で又は相互の混合物で使用されることができる。
【0071】
紙又は厚紙の紙料サイズの場合に、サイズは、これらの材料の製造プロセスの間に、紙料にいわゆる紙料サイズ剤を添加し、かつこの紙料を抄紙機の網上でシート形成下に脱水させることによって行われる。紙又は厚紙の紙料サイズのためには、乾燥した紙製品を基準として、ポリマーサイズ剤(すなわち100%ポリマー)が例えば0.1〜2.0、好ましくは0.2〜0.75質量%使用される。常用の紙料サイズ剤は、反応性サイズ剤、例えばアルキルケテン二量体、C−〜C22−アルキルコハク酸無水物及び/又はC−〜C22−アルケニルコハク酸無水物、クロロギ酸エステル及びC12−〜C36−アルキルイソシアナート、樹脂サイズ及びミョウバンからなる組合せ、樹脂サイズと無水カルボン酸との反応生成物及びミョウバンからなる組合せの水性分散液並びにサイズ効果のあるポリマー分散液である。ミョウバン又はまたミョウバンとの組合せの代わりに、アルミニウムを含有するその他の化合物、例えばポリアルミニウムクロリド又は欧州特許(EP-B)第1 091 043号明細書から知られたポリアルミニウム化合物が使用されることができる。ポリマーサイズ剤は、もちろん、例えばサイズプレスを用いて紙の表面上に塗布されるか又は紙の表面上に噴霧されることによって、表面サイズ剤としても使用されることができる。
【0072】
紙料の脱水は、歩留まり向上剤の存在で行われる。アニオン性歩留まり向上剤又は非イオン性歩留まり向上剤、例えばポリアクリルアミドに加えて、好ましくはカチオン性ポリマーが歩留まり向上剤及び脱水促進剤として使用される。カチオン性歩留まり向上剤として、このために商業的に入手可能な全ての製品が使用されることができる。
【0073】
厚紙の製造は、通常、セルロース繊維のスラリーの脱水により行われる。クラフトパルプの使用が好ましい。さらにTMP及びCTMPの使用が特に興味深い。本発明により使用すべき紙製品及び厚紙製品の製造の場合に、通常、考慮に値する他の助剤、例えば固定剤、染料、殺細菌剤及び乾燥紙力増強剤及び/又は湿潤紙力増強剤が併用されることができる。
【0074】
本発明により使用されるマイクロカプセルは、紙塗工液層、印刷層及び/又はポリエチレン層の中から選択される塗布される層の成分であってよいか、又は独立したマイクロカプセル層として塗布されることができる。好ましい一変法によれば、1つ又はそれ以上のこれらの層に加えて、紙又は厚紙からなる支持体も、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する。マイクロカプセルは、この場合にパルプに、すなわちヘッドボックス中の紙料懸濁液に混合されることができるか、又は表面サイズ剤もしくは紙料サイズ剤に添加されることができる。
【0075】
好ましい一実施態様によれば、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料は紙塗工液層中に含まれている。これらは、その都度マイクロカプセルを含有していてよい、1つ又はそれ以上の塗工層(例えばアンダーコート、ミドルコート及びトップコート、Topcoatとも呼ばれる)である。
【0076】
紙塗工液は一般的に知られている。これらは通例、次のものから構成されている
a) 顔料及び/又は充填剤
b) バインダー及び場合によりコバインダー、
c) 場合により増粘剤、
d) 場合により蛍光染料又はりん光染料、特に蛍光増白剤として、
e) 場合により1つ又はそれ以上のさらに付加的な添加剤、例えば硬化剤、消泡剤、シェーディング染料、湿潤剤、疎水化剤、流れ調整剤(Verlaufsmitteln)、カチオン性添加剤、OBA(蛍光増白剤)−キャリヤー(PVA及びデンプン誘導体)。
【0077】
そのような塗工液は、本発明による一変法に従い、充填剤又はポリマーバインダーの一部を、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料により置き換えるようにして変性されることができる。本発明による他の変法によれば、カプセルは常用の紙塗工液に添加されることができる。好ましい一組成は、a) 顔料及び/又は充填剤
b) バインダー及び場合によりコバインダー 1〜40質量部(固体として合わせて計算)
c) 増粘剤 0〜5質量部(固体として計算)
d) 蛍光染料又はりん光染料 0〜5質量部(固体として計算)、
e) さらに付加的な添加剤 0〜10質量部(固体として計算)
f) マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料 10〜500質量部
を、顔料及び充填剤(a)の全量100質量部を基準として、含有する。
【0078】
そのような紙塗工液は、同様に本発明の構成要素である。
【0079】
バインダー及びコバインダー(b)は、合成的に製造されるかもしくは天然から得られる物質である。
【0080】
合成のバインダー及びコバインダーは好ましくは、全部で好ましくは少なくとも30質量%、特に好ましくは少なくとも50質量%が以下に記載された主モノマーからなるラジカル重合されたポリマーである。
【0081】
適した主モノマーは、C1〜C16アルキル(メタ)アクリラート、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、炭素原子1〜20個を有するカルボン酸のビニルエステル、ハロゲン化ビニル、エチレン系不飽和ニトリル、1又は2個の共役二重結合を有する非芳香族炭化水素又はこれらのモノマーの混合物から選択されている。例えば、C1〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、n−ブチルアクリラート、アクリル酸エチル及び2−エチルヘキシルアクリラートを挙げることができる。
【0082】
特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も適している。
【0083】
炭素原子1〜20個を有するカルボン酸のビニルエステルとして、例えばビニルラウラート、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酢酸ビニルが考慮に値する。
【0084】
20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン及び好ましくはスチレンが考慮に値する。エチレン系不飽和ニトリルの例は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0085】
ハロゲン化ビニルは、塩素、フッ素又は臭素で置換されたエチレン系不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル及び塩化ビニリデンである。
【0086】
1又は2個の共役オレフィン系二重結合を有する非芳香族炭化水素として、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン並びにエチレンを挙げることができる。
【0087】
好ましくは、これらは一般的に、C1〜C16−アルキル(メタ)アクリラート又はそれらとビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物、又は選択的に、2個の共役二重結合を有する非芳香族炭化水素、特にブタジエン又はそれらとビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物である。
【0088】
主モノマーに加えて、バインダーは、さらに別のモノマー、例えばヒドロキシ基を有するモノマー、例えばヒドロキシアルキルアクリラート又はアルコキシ基を有するモノマー、これらは例えばヒドロキシ基を有するモノマーとアルコキシド、特にエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとのアルコキシル化により入手可能である、酸基又は無水物基を有するモノマー又はそれらの塩、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ビニルスルホン酸を含有していてよい。
【0089】
記載されたこれらのポリマーに加えて、異なる平均モル質量を有する部分的に又は完全に加水分解されたポリビニルアルコールも合成バインダーとして副次的な量で使用される。
【0090】
天然のバインダー及びコバインダーとして、デンプン(酸化された、もしくは酵素分解された、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン又は小麦デンプン)、カゼイン及びダイズタンパク質が考慮に値する。
【0091】
バインダーの製造は、乳化重合の一般的に知られた方法に相応して、通常、水溶性開始剤、保護コロイド及び乳化剤の存在で、好ましくは30〜140℃で行われることができる。
【0092】
適した開始剤は、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、水溶性アゾ化合物又はまたレドックス開始剤、例えばH/アスコルビン酸である。
【0093】
適した保護コロイド及び乳化剤は、例えばより長鎖の脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル化されたアリールスルホン酸塩、アルキル化されたビフェニルエーテルスルホン酸塩、より長鎖の脂肪アルコール並びに記載された硫酸塩、スルホン酸塩及びアルコールの相応するアルコキシル化生成物である。
【0094】
好ましくは、バインダーは少なくとも20質量%、特に好ましくは少なくとも35質量%及び極めて特に好ましくは少なくとも50質量%が主モノマーからなる。
【0095】
欧州特許(EP)第14904号明細書に記載されているように、異なる組成のバインダーを組み合わせること(バインダー及びコバインダー)が有利であることが判明している。
【0096】
増粘剤c)として、アクリルエステルベース及びウレタンベースの広範囲に及ぶ合成ポリマーに加えて、常用の有機及び無機の増粘剤、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、アルギナート及び層状ケイ酸塩、例えばベントナイトが考慮に値する。
【0097】
顔料又は充填剤(a)は、一般的に、合成又は天然の種類の鉱物質白色顔料、例えば天然の炭酸カルシウム(白亜、石灰石、大理石)、カオリン、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、サチン白、硫酸バリウム、合成の炭酸カルシウム(PCC)、ポリマー顔料、極めて微細に粉砕されたケイ酸塩である。
【0098】
本発明は、さらに、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含む紙料を塗布することによる、本発明による包装材料の製造方法に関する。
【0099】
紙塗工液は常法に従い、コーティングすべき紙上に塗布されることができる(Ullmann's Encyclopaedie der Technischen Chemie、第4版、第17巻、p.603以降参照)。紙支持体のコーティングは、前記の成分からなる配合物が、ナイフ、ローラー、ロッド又はブラシを用いて、支持体の表面上に均一に塗布されるようにして行われることができる。好ましいコーティング装置は、とりわけエアブラシ又はリバースグラビアローラーもしくはその他の市販のブレード塗布系又はローラー塗布系、同じようにサイズプレス又はカーテンコーターを有する。分散液の塗布に引き続いて、通常、例えば加熱されたトンネル中での、乾燥過程が続く。乾燥温度は、通例50℃を上回り、好ましくは100〜180℃である。
【0100】
一般的に常用の塗布法(例えばはけ塗、ナイフ塗布又は吹付け塗)に加えて、フォーム塗布も可能である。その場合に、紙塗工液は機械的に発泡され、基体上に塗布され、かつフォームは乾燥される。フォーム塗布により、塗布量は、層厚の相応する増大の場合に約200〜300g/m2に高められることができる。
【0101】
紙支持体は、包装材料の製造プロセスにおいて既に塗工紙として使用されることができる。これは、この場合に紙塗工液層が、より早い時点で既に塗布され、かつ包装材料の製造プロセスの範囲内ではじめて塗布されないことを意味する。
【0102】
好ましい別の実施態様によれば、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料は、マイクロカプセル分散液として塗布される。そのような分散液は、1つ又はそれ以上のバインダー、場合により増粘剤、場合により1つ又はそれ以上のさらに付加的な添加剤、例えば消泡剤、湿潤剤、疎水化剤、流れ調整剤、カチオン性添加剤、殺生物剤及び染料、場合によりブロッキング挙動を改善するための鉱物質充填剤、例えばCaCO3、カオリン、タルク、ジルコニウム塩、場合により(フォーム塗布の場合に)起泡剤及び泡安定剤を含む。
【0103】
バインダーとして、紙塗工液のもとに記載されたバインダーが適している。同じように、前記の増粘剤が好ましい。鉱物質充填剤が添加される場合には、その含分は全配合物を基準として<20質量%である。塗布は、紙塗工のために記載されたようにして、行われる。
【0104】
好ましい一組成は、次のものを含有する:
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料 20〜80質量部 好ましくは30〜70、特に好ましくは40〜60質量部
バインダー 20〜80質量部 好ましくは30〜70、特に好ましくは40〜60質量部
増粘剤 0〜5質量部 好ましくは0〜1質量部
さらに付加的な添加剤 0〜10質量部 好ましくは0〜2質量部及び
充填剤 0〜20質量部。
【0105】
好ましい別の実施態様によれば、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料は印刷層中に含まれている。本発明によるマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材を含有する印刷インキは、液状印刷インキ、例えばフレキソ印刷インキ、グラビア印刷インキ又はスクリーン印刷インキであってよいか、又は、例えばオフセット印刷又は凸版印刷用の、ペースト状印刷インキであってよい。マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料に加えて、印刷インキは着色剤、少なくとも1つの溶剤又は溶剤混合物、少なくとも1つのポリマーバインダー並びに場合により別の添加剤を含む。溶剤の吸収及び/又は蒸発により乾燥する印刷インキ、酸化的に乾燥するか又は別の機構に従い乾燥するインキ又はまたUV硬化可能なインキであってもよい。「ペースト状印刷インキ」及び「液状印刷インキ」という概念は当業者に知られている。液状印刷インキは、比較的低粘稠で低沸点の溶剤を含有するのに対し、ペースト状印刷インキは比較的高粘稠で高沸点の溶剤を含有する。印刷インキの分類のためのさらなる詳細は、例えばRoempps-Lexikon "Lacke und Druckfarben"、Thieme-Verlag、Stuttgart、1998、p.157以降に開示されている(特にp.159/160、第4及び5表並びにp.160の図)。
【0106】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する液状の印刷インキ/ワニスの場合に、マイクロカプセルの量は本発明によれば、印刷インキの全成分の総和に対して5〜80質量%である。好ましくは、20〜75質量%、特に好ましくは30〜75質量%及び例えば55〜70質量%が使用される。
【0107】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材を含有するペースト状の印刷インキもしくはワニスの場合に、マイクロカプセルの量は本発明によれば、印刷インキの全成分の総和に対して5〜60質量%である。好ましくは15〜50質量%、特に好ましくは20〜40質量%が使用される。
【0108】
着色剤として、印刷インキに常用の染料、特に常用の顔料が使用されることができる。例は、無機顔料、例えば二酸化チタン顔料又は酸化鉄顔料、干渉顔料、カーボンブラック、金属粉末、例えば特にアルミニウム、黄銅又は銅粉末、並びに有機顔料、例えばアゾ顔料、フタロシアニン顔料又はイソインドリン顔料である。もちろん、異なる染料又は着色剤の混合物も使用されることができる。可溶性の有機染料も使用されることができる。着色剤の量は、通常、印刷インキの全ての成分の総和に対して、5〜25質量%である。印刷ワニスは、通常、着色剤を含有しないか又は僅かにのみ含有するが、しかしインキ製造のベースとして使用されることができる。
【0109】
溶剤もしくは溶剤混合物はとりわけ、バインダーを溶解させるため、しかしまた印刷インキの重要な適用特性、例えば粘度又は乾燥速度を調節するために利用される。溶剤の種類は、印刷インキのそれぞれの使用目的に従い、かつ当業者により相応して選択される。
【0110】
ペースト状印刷インキ用の溶剤もしくは溶剤混合物の成分は、特に高沸点の鉱油又は植物油、例えば大豆油を含む。沸点は通例230℃以上であるが、しかし300℃超であってもよい。
【0111】
液状印刷インキ、例えばフレキソ印刷インキ及びグラビア印刷インキに使用される溶剤は、特に低沸点溶剤を含む。沸点は通例、140℃以下である。スクリーン印刷インキは、フレキソ印刷インキ又はグラビア印刷インキに類似して配合されており、これらは単に幾分より粘稠に調節されており、かつ通常、幾分より高い沸点を有する溶剤を含有する。液状印刷インキに適した溶剤の例は、エタノール、1−プロパノール又は2−プロパノール、置換アルコール、例えばエトキシプロパノール又はエステル、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル又は酢酸n−ブチルを含む。もちろん、異なる溶剤の混合物が使用されることもできる。例えば、エタノールと、酢酸エチル又は酢酸プロピルのようなエステルとからなる混合物であってよい。フレキソ印刷プレートを用いる印刷のためには、通例、全溶剤のエステル含分が約20〜25質量%を超えないことが推奨されている。液状印刷インキ用の溶剤として、好ましくは、水又は主に水性の溶剤混合物も使用可能である。
【0112】
印刷インキの種類に応じて、通常、全ての成分の総和に対して溶剤10〜55質量%が使用される。
【0113】
放射線硬化可能な印刷インキは一般的に、前記の溶剤ではなくて、反応性希釈剤を含有する。反応性希釈剤は典型的にはデュアル機能を満たす。一方では、これらは印刷インキの架橋もしくは硬化に利用され、他方では、しかしこれらはまた、常用の溶剤のように、粘度の調節にも利用される。例は、ブチルアクリラート、(2−エチルヘキシル)アクリラート、並びに特に多官能性アクリラート、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート又はトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートを含む。
【0114】
本発明によるマイクロカプセルを含有する印刷インキのバインダーとして、原則的に、液状印刷インキ及びペースト状印刷インキに常用のバインダーが使用されることができる。所望の使用目的及び所望の性質に応じて、当業者は適した選択をする。適したバインダーの例は、ポリエステル、ポリアミド、PVC−コポリマー、脂肪族及び芳香族のケトン樹脂、メラミン−尿素−樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド−樹脂、マレイナート、コロホニウム誘導体、カゼインもしくはカゼイン−誘導体、エチルセルロース、ニトロセルロース又は芳香族もしくは脂肪族のポリウレタンを含む。酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリラート、メタクリラート、ビニルピロリドン又はビニルアセタールのポリマー又はコポリマーも使用されることができる。特に有利には、国際公開(WO)第02/36695号パンフレット及び国際公開(WO)第02/36697号パンフレットにより開示されているように、官能基を有するハイパーブランチポリマー、例えばハイパーブランチのポリウレタン、ポリ尿素又はポリエステルアミドが使用されることができる。もちろん、異なるポリマーバインダーの混合物も使用されることができるが、ただし、選択されるバインダーが相互の組合せで望ましくない性質を有しないものとする。全てのバインダーの量は、通常、印刷インキの全ての成分の総和に対して5〜20質量%である。
【0115】
液状印刷インキに特に好ましいバインダーは、例えばニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース並びに脂肪族及び芳香族のポリウレタン及びポリ尿素、特にハイパーブランチのポリウレタン及びポリ尿素並びにそれらの混合物を含む。
【0116】
水で希釈可能なマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材を含有する印刷インキ用のバインダーとして、特に、スチレンとの(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルをベースとするコポリマーが考慮に値する。そのようなバインダーは、印刷インキにおける使用のための溶液又は分散液として、例えば名称Zinpol(登録商標)(Worlee社)のもとで商業的に入手可能である。さらなる例は、芳香族もしくは脂肪族の水性ポリウレタン、ポリエステル及び水性ポリアミドを含む。
【0117】
ペースト状印刷インキにとって好ましいバインダーは、例えばコロホニウム樹脂又は変性コロホニウム樹脂を含む。変性コロホニウム樹脂の例は、ポリオール、例えばグリセリン又はペンタエリトリトールで完全にか又は部分的にエステル化されたコロホニウム樹脂を含む。
【0118】
放射線硬化可能な印刷インキは、架橋可能な基、例えばオレフィン系基、ビニルエーテル基又はエポキシド基を含むバインダーを含む。
【0119】
本発明によるマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材を含有している印刷インキは、さらに1つ又はそれ以上の助剤もしくは添加剤を含んでいてよい。添加剤及び助剤の例は、充填剤、例えば炭酸カルシウム、酸化アルミニウム水和物又はケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムである。ろうは耐摩耗性を高め、かつ潤滑性の増大に役立つ。例は、特にポリエチレンろう、酸化ポリエチレンろう、石油ろう又はセレシンろうである。脂肪酸アミドは、表面の滑らかさを増大させるために使用されることができる。可塑剤は、乾燥した塗膜の弾性を増大させるのに役立つ。放射線硬化可能な印刷インキのためには、添加剤として、さらに少なくとも1つの光開始剤又は光開始剤系が使用される。マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材を含有し、さらさらした印刷インキ、例えばフレキソ印刷インキ、グラビア印刷インキ又はスクリーン印刷インキの配合のためには、沈降防止剤の添加がたいてい推奨されているが、とはいえ常にどうしても必要という訳ではない。全ての添加剤及び助剤の全量は、通常、印刷インキの全成分の総和に対して20質量%を超えるべきではなく、かつ好ましくは0.1〜10質量%である。
【0120】
本発明によるマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する印刷インキの製造は原則的に知られたやり方で、常用の装置、例えばディソルバー又は撹拌機中での成分の激しい混合もしくは分散により行われることができる。
【0121】
本発明は、さらに、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料、着色剤、溶剤又は溶剤混合物、少なくとも1つのポリマーバインダー、並びに場合により別の添加剤を含む印刷インキを有する印刷層を塗布することによる、本発明による包装材料の製造方法に関する。
【0122】
同様に好ましい一実施態様によれば、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材は熱可塑性プラスチック層中に含まれている。通例、フィルムとして使用される適した熱可塑性プラスチック材料は、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)及びPET(ポリエチレンテレフタラート)である。好ましくは、ポリエチレン、特にLDPEが使用される。適したLDPEは、欧州特許出願公開(EP-A)第1 232 856号明細書のp.7及び8に詳しく記載されており、これについて明らかに関連付けられている。
【0123】
包装材料の多様な熱可塑性プラスチック層の厚さは、本質的ではない。包装工業において常用の厚さが選択されることができる。
【0124】
さらに、本発明は、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含む熱可塑性プラスチック層に、並びにマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含む熱可塑性プラスチック層が塗布されることによる本発明による包装材料の製造方法に関する。当業者は、その場合に2つの異なる塗布法を区別する。押出しコーティングの際に、熱可塑性プラスチック層はそれぞれの層上に押し出され、その場合に熱可塑性プラスチックは、その溶融温度を上回る熱及び圧力を作用させることにより、支持体もしくは既にコーティングされた支持体と共に複合体へとプレスされる。それに反して2つの層が殆ど互いに"接着される"べきである場合には、ラミネーションと呼ばれる。この場合に、結合すべき双方の層の間に、付着層、同様に熱可塑性プラスチックが押し出される。
【0125】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料は、その場合に、熱可塑性プラスチック塗膜並びに熱可塑性プラスチックフィルムの成分であってよい。
【0126】
本発明による包装材料は、極めて良好な温度安定化特性を示す。クールチェーンの遮断は、材料により良好に吸収されるので、商品の取るに足らない温度変化となるに過ぎない。故に、前記材料は食品用の包装材料として卓越して適している。
【0127】
次の例は本発明をより詳細に説明するものである。
【0128】
実施例
他に記載されない限り、独国特許(DE)第101 63 162号明細書の例1及び引き続き噴霧乾燥により得られるような、マイクロカプセル粉末を使用した。マイクロカプセルは、7.8μmの平均直径を有していた。使用された潜熱蓄熱材料もしくはその融点は、各々の試験において別個に記載されている。
【0129】
例1
本発明によるマイクロカプセル−バインダー−分散液(パラフィン−ろう−コアの融点24〜26℃)での厚紙のコーティングによる包装材料の製造
コーティング材料を次の成分から製造した:
5〜20μmの粒度及びパラフィン−ろう−コア(融点24〜26℃)を有するマイクロカプセル粉末 60質量部
Epotal(登録商標) D 600、スチレン−ブタジエン−分散液(BASF Aktiengesellschaftの)、固体含量49〜51% 40質量部(固体として計算)
Sterocoll(登録商標)FD、アクリラートをベースとする増粘剤(BASF Aktiengesellschaftの) 約0.2質量部。
【0130】
Sterocoll FDを、アンモニアで約pH 9に調節し(Sterocoll FD液状100質量部、水150質量部、濃アンモニア10質量部)、マイクロカプセル及びEpotalからなる分散液に、目的粘度に達するまで一滴ずつ添加した。コーティング材料は、42質量%の固体含量及び4300mPasの粘度(Epprecht レオメータータイプSVT、スピンドル4)を有していた。
【0131】
コーティング材料を、スパイラルナイフを用いて162g/m2の坪量を有する市販の厚紙上に塗布し、125℃で2min乾燥させた。塗布質量は、乾燥質量として計算して、40〜45g/m2であった。
【0132】
例2
マイクロカプセル−バインダー−分散液(パラフィン−ろう−コアの融点28℃)での厚紙のコーティングによる包装材料の製造
コーティング材料を、次の成分から製造した:
5〜20μmの粒度及びパラフィン−ろう−コア(融点28℃)を有するマイクロカプセル粉末 60質量部
Epotal D 600、スチレン−ブタジエン−分散液、固体含量49〜51% 40質量部(固体として計算)
Sterocoll FD、アクリラートをベースとする増粘剤 0.2質量部。
【0133】
Sterocoll FDを、アンモニアで約9のpH値に調節し(Sterocoll FD液状100質量部、水150質量部、濃アンモニア10質量部)、マイクロカプセル及びEpotalからなる分散液に、目的粘度に達するまで一滴ずつ添加した。コーティング材料は、42質量%の固体含量及び3200mPasの粘度(Epprecht レオメータータイプSVT、スピンドル4)を有していた。
【0134】
コーティング材料を、スパイラルナイフを用いて162g/m2の坪量を有する市販の厚紙上に塗布し、125℃で2min乾燥させた。塗布質量は、乾燥質量として計算して、40〜45g/m2であった。
【0135】
例3
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する紙塗工液での厚紙のコーティング
紙塗工液を、次の成分から製造した:
6.5μmの平均粒度及び工業用n−テトラデカン、約94%、融点6℃、からなるコアを有するマイクロカプセル粉末 65質量部
顔料Hydrocarb(登録商標) 90 スラリー(固体として計算)、Omya GmbH社の微粒状白亜 30質量部
顔料Amazon Plus スラリー(固体として計算)、Kaolin International B.V.社の微粒状粘土 5質量部
Styronal(登録商標) PR 8780 X(固体として計算)、スチレン/ブタジエンベースのポリマー分散液(BASF Aktiengesellschaftの) 10質量部
Sterocoll FD、アクリラートをベースとする増粘剤 0.2質量部。
【0136】
紙塗工液は、54.8質量%の固体含量、8.8のpH値及びBrookfield DV-II+、スピンドル4による1374mPas(100rpm)、もしくはThermo-Haake社のRheostress 600による59.79mPas(40000 1/sで)及び85.59mPas(63000 1/sで)の粘度を有していた。
【0137】
基体として、186g/m2の坪量を有するクラフト紙、200g/m2の坪量を有する原厚紙並びにアルミニウム−コーティングされた厚紙を使用した。紙塗工液の塗布を、50g/m2で実験室用塗工機で片面に行った(塗布法:ロール;配量法:ブレード)。乾燥を、赤外線ヒータを用いて行った。
【0138】
原厚紙に類似して、コーティング用、光沢化、上質、白色、晒し、完全にサイズした、原質量70〜80g/m2の特殊紙をコーティングした。
【0139】
例4
紙塗工液を次の成分から製造した:
6.2μmの平均粒度及びコア n−ドデカン;融点−10℃を有するマイクロカプセル粉末 65質量部
Hydrocarb 90 スラリー 30質量部(固体として計算)
Amazon Plus スラリー 5質量部(固体として計算)
Styronal PR 8780 X 10質量部(固体として計算)
Sterocoll FD、アクリラートをベースとする増粘剤 0.2質量部。
【0140】
紙塗工液は、53.1質量%の固体含量、8.7のpH値及びBrookfield DV-II+、スピンドル4による1592mPas(100rpm)もしくはThermo-Haake社のRheostress 600による62.73mPas(40000 1/sで)及び43.90mPas(630001/sで)の粘度を有していた。
【0141】
基体として、186g/m2の坪量を有するクラフト紙、200g/m2の坪量を有する原厚紙並びにアルミニウムコーティングされた厚紙を使用した。紙塗工液の塗布を、50g/m2で実験室用塗工機で片面に行った(塗布法:ロール;配量法:ブレード)。乾燥を、赤外線ヒータを用いて行った。
【0142】
例5
フォームコーティング(マイクロカプセル−バインダー−分散液)
コーティング剤を、次の成分から製造した:
水性アクリラート分散液 固体含量50%(Acronal(登録商標) A 420 S; BASF Aktiengesellschaft) 100質量部
水 40質量部
アンモニア、25% 0.6質量部
Pigmentverteiler A(BASF Aktiengesellschaftのアンモニウムポリアクリラートベースの顔料用分散剤) 0.5質量部
Helizarin(登録商標) Blau BT 0.2質量部
マイクロカプセル粉末(融点24〜26℃) 75質量部
Emulphor(登録商標) FES 30(BASF Aktiengesellschaftの起泡剤) 1質量部
ステアリン酸アンモニウム、35%(泡安定剤) 7質量部
Latekoll(登録商標) D (BASF Aktiengesellschaftのポリアクリラートベースの増粘剤) 2質量部。
【0143】
コーティング剤の性質:
pH値 8.5〜9.5
粘度 23dPas(Haake VT02、スピンドル1)。
【0144】
コーティング剤を機械的に発泡させ(フォーム密度280g/l)、スリットナイフ(600μm)を用いて基体上に片面に塗布した。引き続いて、コーティングされた基体を90℃で1min及び120℃で1min乾燥させた。引き続いてフォーム層を、カレンダーを用いて室温で40kNのリニア圧で圧縮した。
【0145】
例6
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有するPUフォームを用いる厚紙のコーティング
コーティング剤を、次の成分から製造した:
Emuldur(登録商標) DS 2360(ポリウレタンをベースとするポリマー分散液、BASF Aktiengesellschaft) 100質量部
水 30質量部
マイクロカプセル粉末(融点24〜26℃) 60質量部
Siligen(登録商標) SIO (BASF Aktiengesellschaft) 10質量部
Saduren(登録商標) 163 (BASF Aktiengesellschaft) 2質量部
アンモニア水、25% 0.5質量部
タルクIT 20 Star 20質量部
C&S Stabsol 20質量部
Latekoll D 1質量部。
【0146】
コーティング剤の性質:
pH値 約9.7
粘度 約12dPas(Haake VT02、スピンドル1)
固体含量: 約55%。
【0147】
コーティング剤を機械的に発泡させ(フォーム密度250g/l)、かつ厚紙の2見本につき0.5及び1mmの湿式フォーム塗布でフォームコーティングした。引き続いて、90℃で1〜2min予備乾燥させ、160℃で1min架橋させた。固体塗布は50もしくは90g/m2である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの紙塗工液層、場合により印刷層、場合により1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が上に塗布されており、紙又は厚紙からなる少なくとも1つの支持体を含む複合体の形の包装材料であって、少なくとも塗布された層の1つの中にマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料が含まれており、かつマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料のカプセル壁が、その都度モノマーの全質量を基準として、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC1〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜100質量%、
水に不溶又は難溶である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 0〜80質量%、及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜90質量%
から構成されていることを特徴とする、包装材料。
【請求項2】
潜熱蓄熱材料が、−30〜+30℃の温度範囲内の固/液相転移を有する親油性の物質である、請求項1記載の包装材料。
【請求項3】
潜熱蓄熱材料が脂肪族炭化水素化合物である、請求項1又は2記載の包装材料。
【請求項4】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料のカプセル壁が、その都度モノマーの全質量を基準として、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 10〜95質量%、
水に不溶又は難溶である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 5〜60質量%、及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜50質量%
から構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項5】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料のカプセル壁が、その都度モノマーの全質量を基準として、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の1つ又はそれ以上のC〜C24−アルキルエステル(モノマーI) 30〜95質量%、
水に不溶又は難溶である二官能性又は多官能性のモノマー(モノマーII) 10〜50質量%及び
その他のモノマー(モノマーIII) 0〜30質量%
から構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項6】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料5〜300g/m2が塗布される、請求項1から5までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項7】
支持体上に少なくとも1つの紙塗工液層及び印刷層、場合により1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が塗布されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項8】
支持体上に少なくとも1つの紙塗工液層及び1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層、場合により印刷層、及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が塗布されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項9】
支持体上に少なくとも1つの紙塗工液層及び印刷層、1つ又はそれ以上の熱可塑性プラスチック層及び場合により1つ又はそれ以上の別の層が塗布されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項10】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料が、マイクロカプセルを含有する層に加えて、紙又は厚紙からなる支持体中にも含まれている、請求項1から9までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項11】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料が、紙塗工液層中に含まれている、請求項1から10までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項12】
紙塗工液が、顔料及び/又は充填剤(a)、
b) バインダー及び場合によりコバインダー 1〜40質量部(固体として合わせて計算)
c) 増粘剤 0〜5質量部(固体として計算)
d) 蛍光染料又はりん光染料 0〜5質量部(固体として計算)、
e) さらに付加的な添加剤 0〜10質量部(固体として計算)及び
f) マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料 10〜500質量部
を、顔料及び充填剤(a)の全量100質量部を基準として、含有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項13】
顔料及び/又は充填剤
b) バインダー及び場合によりコバインダー 1〜40質量部(固体として合わせて計算)
c) 増粘剤 0〜5質量部(固体として計算)
d) 蛍光染料又はりん光染料 0〜5質量部(固体として計算)、
e) さらに付加的な添加剤 0〜10質量部(固体として計算)
f) マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料 10〜500質量部
を、顔料及び充填剤(a)の全量100質量部を基準として、含有している紙塗工液。
【請求項14】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含む紙塗工液が塗布されることを特徴とする、請求項1記載の包装材料の製造方法。
【請求項15】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料が印刷層中に含まれている、請求項1から7まで、9又は10のいずれか1項記載の包装材料。
【請求項16】
印刷層が印刷インキの塗布により得られ、かつ印刷インキが着色剤、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料、溶剤又は溶剤混合物、少なくとも1つのポリマーバインダー、並びに場合により別の添加剤を含む、請求項15記載の包装材料。
【請求項17】
着色剤、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料、溶剤又は溶剤混合物、少なくとも1つのポリマーバインダー、並びに場合により別の添加剤を含む印刷インキ。
【請求項18】
印刷層を、着色剤、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料、溶剤又は溶剤混合物、少なくとも1つのポリマーバインダー、並びに場合により別の添加剤を含む印刷インキで塗布することを特徴とする、請求項1記載の包装材料の製造方法。
【請求項19】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料が熱可塑性プラスチック層中に含まれている、請求項1から6までのいずれか1項記載の包装材料。
【請求項20】
熱可塑性プラスチック及びマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含む、熱可塑性プラスチック層。
【請求項21】
マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含む熱可塑性プラスチック層を塗布することを特徴とする、請求項1記載の包装材料の製造方法。
【請求項22】
食品を包装するための、請求項1記載の包装材料の使用。

【公表番号】特表2008−520459(P2008−520459A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541771(P2007−541771)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012235
【国際公開番号】WO2006/053714
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】