説明

マイクロカプセルを用いたコンビナトリアルライブラリの合成および試験の方法

【課題】核酸をカプセル封入するための方法において、水性流体が微小流体チャンネルを流れる際に前記水性流体を分割することによりマイクロカプセルを形成するステップよりなる方法を提供する。
【解決手段】a)マイクロカプセル内に一次化合物のセット2つ以上をコンパートメント化するステップであって、マイクロカプセルのある割合が化合物2つ以上を含むようにするステップと;(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に二次化合物を形成するステップと;を含む化合物の合成方法を記載する。本発明は更に、生化学的系の標的成分に結合するか、標的の活性をモジュレートし、マイクロカプセル内に共コンパートメント化される化合物の識別を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学的系における標的成分に結合するか、標的の活性をモジュレートする
分子の合成および識別に使用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間に渡り、化合物ライブラリのハイスループットスクリーニング(HTS)
は医薬品研究の基礎となる技術となった。HTSの研究は盛んである。現在の推定では生
物学的スクリーニングおよび前臨床の薬理学的試験のみで医薬品産業の総研究開発(R&
D)経費の〜14%を計上する(Handen,Summer 2002)。運転コストを低減し、スクリーニ
ングできる化合物および標的の数を増大させる必要性からHTSは近年顕著な進歩を示し
ている。従来の96穴のプレートは現在では384ウェル、1536ウェル、さらには3
456ウェルのフォーマットに大部分が置き換えられている。これが市販のプレート操作
ロボット工学と組み合わせられて、一日当たり100,000試験以上のスクリーニングを可能
とし、試験の小型化により試験当たりのコストを大幅に削減している。
【0003】
HTSは他の数種の開発により補完されている。コンビナトリアル化学は、HTSのた
めの構造的に関連する多数の化合物を生成するための強力な技術である。現在、コンビナ
トリアル合成は大部分が空間的に分割されたパラレル合成を採用している。合成できる化
合物の数は数百または数千に限定されるが、化合物は数ミリグラムまたは数十ミリグラム
の規模で合成でき、完全な特性決定、さらには精製まで可能にする。より大型のライブラ
リは1ビーズ1化合物ライブラリを生成させるビーズ上のスプリット合成を用いて合成で
きる。この方法が採用されている範囲がはるかに狭小である理由は、一連の制約事項:例
えば固相合成の必要性;最終生成物の特性決定の困難(シェア数と小規模のため);1回
または2,3回の試験にしか十分でない程度の少量の、ビーズ上の化合物;ヒット化合物
の構造の同定の困難(タグ付けまたはコード方法に依存する場合が多く、合成および分析
の両方を複雑化させる)である。これにもかかわらず、スプリット合成およびシングルビ
ーズ分析はなお信頼できるものである。最近、ミニチュア化されたスクリーニングおよび
シングルビーズ分析における多大な開発が行われた。例えば、印刷技術によりタンパク質
結合試験が、各1nl容量の10,800化合物スポットを含むスライド上で実施できるように
なった(Hergenrother et al.,2000)。しかしながらコンビケムは限定された数量のリード
化合物しか与えていない。2000年4月の段階で、コンビナトリアル化学のヒストリを有す
る化合物僅か10種のみが臨床研究に付され、これらの3種を除き全てが(オリゴ)ヌク
レオチドまたはペプチドである(Adang and Hermkens,2001)。実際、過去10年間のHT
Sおよびコンビナトリアル化学における多大なる投資にもかかわらず、年間導入される新
規薬剤の数が一定以上となることはない。
【0004】
ダイナミックコンビナトリアル化学(DCC)もまた可逆的に相互交換可能な成分のセ
ットからダイナミックコンビナトリアルライブラリ(DCL)を生成するために使用でき
るが、今日まで生成されスクリーニングされたライブラリのサイズはなおかなり限定され
ている(≦40,000)(Ramstron and Lehn,2002)。
【0005】
試験のための候補分子のサブセットを識別するためにコンピューター試行を用いて多数
の化合物ベースを検索する仮想スクリーニング(VS)(Lyne,2002)もまたHTSと統合
されれば極めて有用である。しかしながら、VSおよびHTSの性能を直接比較した試験
は今日までほとんど無く、更なる検証が必要である。
【0006】
これら全ての開発にもかかわらず、現在のスクリーニングのスループットはなお十分と
は程遠いものである。ヒトゲノムの個体遺伝子の数(〜30,000)および既存の化学を用い
て理論的に得られる独特の化学構造の数の現在の推定値によれば、全ての考えられる治療
標的に対して構造−活性スペースを完全にマッピングするためには多大な数の試験が必要
となることが示唆され得る(Burbaum,1998)。
【0007】
従って、僅か数フェムトリットルの反応容量を用いながら、極めて低コストで多大な数
量(≧1010)の化合物を迅速に生成およびスクリーニングする能力を有する方法は、新
薬の手がかりを得る際に多大な有用性を有するはずである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第1の態様において、化合物のレパートリーを製造するための方法であって

(a)マイクロカプセル内に一次化合物のセット2つ以上をコンパートメント化するス
テップであって、マイクロカプセルのある割合が、該セットの各々の代表である化合物1
つ以上の複数のコピーを含むようにし、該化合物1つ以上が、一次化合物のセットのサブ
セットを形成するステップと;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
を含む方法を提供する。
【0009】
化合物は該セットのメンバーとなっているセットの「代表」であり;従って、好ましく
は、各マイクロカプセルが各セットに由来する化合物を含む。マイクロカプセルは各セッ
トに由来する1つより多い異なる化合物を含んでよいが、それは該セットの一部分のみ(
即ちサブセット)を含む。あるセットのサブセットは、好ましくはセットの数の10%以
下を示し、好ましくは、この数値は、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%
、1%以下である。
【0010】
最も好ましくはマイクロカプセルは一次化合物の各セットに由来する単一の化合物のみ
を含む。
【0011】
本発明の方法において使用する一次化合物のセットは、任意の数量の異なる化合物から
なることができる。少なくとも第1のセットは2つ以上の化合物を含むが、他のセットは
単一の化合物であってよい。好ましくは、第1のセットは単一の化合物であって、少なく
とも1つの別のセットは化合物のレパートリーを含む。このレパートリーが大きいほど、
生成される異なる二次化合物の数が大きくなる。
【0012】
好ましくは、化合物の少なくとも1セットは異なる化合物のレパートリーを含む。しか
しながら少なくとも1つのセットは単一の化合物からなるものであってよく、これにより
、二次化合物が全て1つのセットにおいて使用されるその単一の化合物に基づくかこれを
含むように構築される。セットの数が大きいほど、各セットの多様性が大きいほど、生成
される二次化合物の最終的な多様性が大きくなる。
【0013】
好ましくは、ステップ(a)におけるコンパートメント当たりの異なる化合物の数が、
ステップ(b)における二次化合物を形成する一次化合物の数と等しくなる。
【0014】
第2の態様において、本発明は、共に反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュ
レートすることができる二次化合物を形成する(複数の)一次化合物を識別するための方
法であって、
(a)マイクロカプセル内に一次化合物のセット2つ以上をコンパートメント化するス
テップであって、マイクロカプセルのある割合が、化合物2つ以上を含むようにするステ
ップと;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
(c)反応して標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成する
一次化合物のサブセットを識別するステップと;
を含む方法を提供する。
【0015】
第3の態様において、本発明は、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする能力
が増強されている化合物を合成するための方法であって、
(a)本発明の第2の態様のステップ(c)において識別された一次化合物のサブセッ
トをマイクロカプセル内にコンパートメント化し、任意選択的に一次化合物の別のセット
をコンパートメント化するステップと;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
(c)反応して標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成する
一次化合物のサブセットを識別するステップと;
を含む方法を提供する。
【0016】
好ましくは、ステップ(a)〜(c)は繰り返されるが、最初のサイクルの後に、ステ
ップ(a)は、ステップ(c)で識別された一次化合物のサブセットをマイクロカプセル
内にコンパートメント化し、任意選択的に、化合物の別のセットをコンパートメント化す
るステップを含む。
【0017】
第4の態様において、本発明は、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする個々
の化合物を識別するための方法であって、
(a)本発明の第2または第3の態様のステップ(c)において識別された一次化合物
および一次化合物の別のセットをマイクロカプセル内にコンパートメント化するステップ
と;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
(c)反応して標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成する
一次化合物のサブセットを識別するステップと;
を含む方法を提供する。
【0018】
二次化合物が2以上の一次化合物の間の化学反応により形成される場合、それは、ステ
ップ(a)〜(c)を反復的に繰り返すことにより識別できるが、最初のサイクルの後に
、ステップ(c)は、本発明の第2または第3の態様のステップ(c)で識別された一次
化合物;(本発明の第4の態様における)前のサイクルの各々のステップ(c)において
識別された一次化合物;および、一次分子の別のセットをコンパートメント化することを
含む。
【0019】
好ましくは、所望の活性は、結合活性および標的の活性のモジュレーションからなる群
から選択される。好ましくは、標的は化合物と共にマイクロカプセル内にコンパートメン
ト化される。
【0020】
化合物のセットはマイクロカプセル内への化合物2つ以上の複数のコピーのカプセル化
を達成するための種々の方法でコンパートメント化してよい。
【0021】
例えば各化合物の水溶液の少量区分を、機械的エネルギーを与えながら油相(好ましく
は界面活性剤および/または他の安定化分子を含有する)内に投入(deposit)することに
より、各化合物を複数の水性マイクロカプセル(各々が(大部分において)1種類の化合
物であるがその複数のコピーを含む)内に分散させることができる。好ましくは、化合物
はインクジェット印刷技術(Calvert,2001;de Gans et al.,2004)を用いながら、より好ま
しくは圧電気ドロップオンデマンド(DOD)インクジェット印刷技術により産生された
液滴の形態で油相内に投入できる。インクジェット印刷技術はエマルジョンの形成の直前
に、一次化合物および任意選択的に他の試薬(例えば標的活性を試験するための標的およ
び試薬)を混合するために使用できる。好ましくは、複数の化合物をコンビナトリアルな
様式において複数の標的と混合できる。
【0022】
即ち、上記ステップ(a)は、化合物2つ以上を含む個別のエマルジョンコンパートメ
ントを形成するステップと、エマルジョンコンパートメントを混合して乳化された化合物
のレパートリーを形成するステップであって、任意の1つのマイクロカプセルにおいて、
そのレパートリーのサブセットが複数のコピーで示されるようにする、ステップとを含む
ように改変することができ。
【0023】
更にまた化合物ライブラリは微小流体手法を用いて作成した高度に単分散のマイクロカ
プセル内にコンパートメント化することができる。例えば、各化合物の少量分を油の共流
動ストリーム内での液滴の破壊により生成された油中水エマルジョン中の水性マイクロカ
プセル1つ以上(多分散度3%未満)内にコンパートメント化できる(Umbanhowar et al.
,2000)。好ましくは、その後、水性マイクロカプセルを微小流体チャンネル内の油のスト
リーム内の層流により輸送する(Thorsen et al.,2001)。単一の化合物を含有するマイク
ロカプセルは、任意選択的に微小流体を用いてより小さいマイクロカプセル2つ以上に分
割することができる(Link et al.,2004;Song et al.,2003)。一次化合物を含有するマイ
クロカプセルを他のマイクロカプセルと融合(Song et al.,2003)することにより二次化合
物を形成できる。化合物を含有するマイクロカプセルはまた、任意選択的に、標的を含有
するマイクロカプセルと融合できる。標的を含有する単一のマイクロカプセルは、任意選
択的に、より小型のマイクロカプセル2つ以上に分割し、これをその後異なる化合物、ま
たは異なる濃度の化合物を含有するマイクロカプセルと融合することができる。好ましく
は、化合物および標的をマイクロカプセル融合により混合した後に、標的の活性を試験す
るために必要な試薬(例えば標的が酵素である場合は標的のための基質)を送達する第2
のマイクロカプセル融合を行う。これにより化合物が標的に結合する時間が与えられる。
マイクロカプセルは微小流体装置を用いて分析、および任意選択的に分類することができ
る(Fu et al.,2002)。
【0024】
別の態様において、本発明は、
(a)マイクロビーズに一次化合物のセット2つ以上を結合させるステップと;
(b)マイクロカプセルのある割合がマイクロビーズ2つ以上を含むようにマイクロカ
プセル内にマイクロビーズをコンパートメント化するステップと;
(c)マイクロビーズから一次化合物のセットの少なくとも1つを放出させるステップ
と;
(d)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル内に
二次化合物を形成するステップと;
を含む化合物のレパートリーの製造方法を提供する。
【0025】
好ましくは、化合物はビーズから切断可能とする。化合物2セットより多くを使用する
場合は、1つを除く全てのセットが切断可能であり;好ましくはそれらは全て切断可能で
ある。化合物は光化学的に切断できるリンカーによりマイクロビーズに結合してよい。
【0026】
更に別の態様において、本発明は、
(a)マイクロビーズに一次化合物のセット2つ以上を結合させるステップと;
(b)多くのコンパートメントがマイクロビーズ2つ以上を含むように標的と共にマイ
クロカプセル内にマイクロビーズをコンパートメント化するステップと;
(c)マイクロビーズから一次化合物を放出させるステップと;
(d)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル内に
二次化合物を形成するステップと;
(e)反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成す
る一次化合物のサブセットを識別するステップと、
を含む、共に反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュレートすることができる
二次化合物を形成する一次化合物を識別するための方法を提供する。
【0027】
好ましくは、ステップ(b)において、コンパートメント当たりのマイクロビーズの最
頻数がステップ(d)における二次化合物を形成する一次化合物の数と等しくなる。
【0028】
別の態様において、本発明は、
(a)本発明の第2の態様のステップ(e)において識別された一次化合物のサブセッ
トをマイクロビーズ上に結合させ、任意選択的に、一次化合物の別のセットを結合させる
ステップと;
(b)多くのコンパートメントがマイクロビーズ2つ以上を含むように標的と共にマイ
クロカプセル内にマイクロビーズをコンパートメント化するステップと;
(c)マイクロビーズから一次化合物を放出させるステップと;
(d)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル内に
二次化合物を形成するステップと;
(e)反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成す
る一次化合物のサブセットを識別するステップと、
を含む、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする能力が増強された化合物の合
成方法を提供する。
【0029】
好ましくは、ステップ(a)〜(e)は繰り返されるが、最初のサイクルの後に、ステ
ップ(a)は、ステップ(e)で識別された一次化合物のサブセットをマイクロビーズ上
に結合し、任意選択的に、化合物の別のセットを結合するステップを含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、
(a)本発明の第2または第3の態様のステップ(e)で識別された一次化合物および
一次化合物の別のセットをマイクロビーズ上に結合させるステップと;
(b)多くのコンパートメントがマイクロビーズ2つ以上を含むように標的と共にマイ
クロカプセル内にマイクロビーズをコンパートメント化するステップと;
(c)マイクロビーズから一次化合物を放出させるステップと;
(d)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル内に
二次化合物を形成するステップと;
(e)反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成す
る一次化合物のサブセットを識別するステップと、
を含む、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする個々の化合物を識別する方法
を提供する。
【0031】
二次化合物が2つより多くの一次化合物の間の化学反応により形成される場合は、それ
はステップ(a)〜(e)を反復的に繰り返すことにより識別できるが、最初のサイクル
の後に、ステップ(a)は、本発明の第2または第3の態様のステップ(e)で識別され
た一次化合物、(本発明の第4の態様の)前のサイクルの各々のステップ(e)で識別さ
れた一次化合物、および、一次分子の他のセットをマイクロビーズ上に結合するステップ
を含む。
【0032】
好ましくは、所望の活性は結合活性および標的の活性のモジュレートからなる群から選
択される。好ましくは、標的はマイクロビーズと共にマイクロカプセル内にコンパートメ
ント化される。
【0033】
本発明の好ましい実施に従えば、化合物は、全体としてマイクロカプセルを検出可能と
する化合物またはその誘導体の活性に従ってスクリーニングすることができる。従って、
本発明は、所望の活性を有する化合物が、化合物を含有するマイクロカプセルおよび任意
選択的にそれを担持しているマイクロビーズを識別可能とする、マイクロカプセルの変化
またはマイクロカプセル内の分子1つ以上の修飾を誘導する方法を提供する。従ってこの
実施形態において、マイクロカプセルは、(a)そこに含有される化合物の活性に従って
相互に物理的に分類され、分類されたマイクロカプセルの内容物を分析することによりそ
れが含有している化合物の内容(content)を決定するか;または、(b)分類することな
く直接分析することによりマイクロカプセルが含有している化合物の内容を決定するかの
いずれかである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物のスクリーニングは例えば下記の通り実施
することができる。
【0035】
(I)第1の実施形態において、マイクロカプセルは、全体としてマイクロカプセルを
検出可能とする化合物またはその誘導体の活性に従ってスクリーニングされる。従って、
本発明は所望の活性を有する化合物が、化合物を含有するマイクロカプセルおよびそれを
担持しているマイクロビーズを識別可能とする、マイクロカプセルの変化またはマイクロ
カプセル内の分子1つ以上の修飾をもたらす方法を提供する。従ってこの実施形態におい
て、マイクロカプセルは、(a)そこに含有される化合物の活性に従って相互に物理的に
分類され、分類されたマイクロカプセルの内容物は任意選択的に1つ以上の共通のコンパ
ートメント内にプールされ、マイクロカプセルの内容物を分析することにより化合物の内
容を決定するか;または(b)分類することなく直接分析することによりマイクロカプセ
ルが含有していた化合物の内容を決定するかのいずれかである。マイクロカプセルがマイ
クロビーズを含有する場合は、マイクロビーズを分析することによりそれらをコーティン
グしている化合物を決定できる。
【0036】
(II)第2の実施形態において、マイクロビーズはコンパートメント1つ以上内にマイ
クロカプセルをプールした後に分析する。この実施形態においては、所望の活性を有する
化合物はそれを担持している(そして同じマイクロカプセル内に存在している)マイクロ
ビーズを、後のステップにおいて識別可能とするような方法で修飾する。反応を停止し、
後にマイクロカプセルを破壊して個々のマイクロカプセルの内容物全てがプールされるよ
うにする。修飾されたマイクロカプセルは識別され、(a)マイクロビーズ上にコーティ
ングされた化合物の活性に従って相互に物理的に分類され、分類されたマイクロビーズを
分析することによりそれらをコーティングする/していた化合物の内容を決定するか;ま
たは(b)分類することなく直接分析することによりマイクロビーズをコーティングする
/していた化合物の内容を決定するかのいずれかである。当然ながら、マイクロビーズの
修飾は、それが化合物の直接の作用により誘発されるという点において直接のものである
か、または、所望の活性を有する化合物を1つ以上が使用している一連の反応によりマイ
クロビーズの修飾がもたらされる間接的なものであってよい。好ましくは、標的をマイク
ロビーズに結合されており、リガンドであり、マイクロカプセル内の化合物は該リガンド
に直接または間接的に結合することによりマイクロビーズの単離を可能とする。別の形態
においては、標的に対する基質はマイクロビーズに結合されており、マイクロカプセル内
の化合物の活性はマイクロビーズの部分として残存し、その単離を可能とする生成物への
該基質の変換を直接または間接的にもたらす。あるいは、化合物の活性は生成物への該基
質の変換を防止または抑制してよい。更にまた、マイクロカプセル内での化合物の活性の
生成物は、後にマイクロビーズと複合体化してその識別を可能とする生成物の生成を直接
または間接的にもたらす。
【0037】
(III)第3の実施形態においては、共通のコンパートメント1つ以上の中にマイクロカ
プセルをプールした後にマイクロビーズを分析する。本実施形態においては、所望の活性
を有する化合物は、化合物を含有するマイクロカプセルおよびそれを担持するマイクロビ
ーズの変化をもたらす。この変化は、検出されれば、コンパートメント内のマイクロビー
ズの修飾をトリガーする。反応を停止し、後にマイクロカプセルを破壊することにより個
々のマイクロカプセルの内容物を全てプールする。修飾されたマイクロビーズを識別し、
(a)マイクロビーズ上にコーティングされた化合物の活性に従って相互に物理的に分類
し、分類されたマイクロビーズを分析してそれらをコーティングする/していた化合物の
内容を決定するか;または(b)分類することなく直接分析することによりマイクロビー
ズをコーティングする/していた化合物の内容を決定するかのいずれかである。
【0038】
マイクロカプセルまたはマイクロビーズはその光学特性を変化させるように化合物の作
用により修飾してよい。例えば、マイクロビーズの修飾はこれを更にマイクロカプセル外
部で修飾可能とし、これによりその光学特性の変化を誘導できる。
【0039】
別の実施形態においては、マイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性の変化は
標的への特徴的な光学特性を有する化合物の結合によるものである。
【0040】
更に、マイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性の変化は化合物による特徴的
な光学特性を有する標的の結合によるものである。
【0041】
マイクロカプセルの光学特性の変化は化合物による標的の活性のモジュレートによるも
のであってよい。化合物は標的の活性を活性化または抑制してよい。例えば標的が酵素で
ある場合は、基質および標的により触媒される反応の生成物は異なる光学特性を有するこ
とができる。好ましくは、基質および生成物は異なる蛍光特性を有する。マイクロカプセ
ルがマイクロビーズを含む場合は、基質および生成物の両方が同様の光学特性を有するこ
とができるが、ただし反応生成物のみがマイクロビーズと結合または反応するが基質はそ
れをせず、これにより、マイクロビーズの光学特性が変化する。
【0042】
マイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性の変化はまた標的および選択すべき
反応の生成物の異なる光学特性によるものであることができる。標的および生成物の両方
が同様の光学特性を有する場合は、選択すべき反応の生成物のみがマイクロビーズと結合
または反応するが標的はそれをせず、これにより、マイクロカプセルまたはマイクロビー
ズの光学特性が変化する。
【0043】
別の態様においては、別の試薬が、マイクロカプセルまたはマイクロビーズに結合する
かこれに含まれている生成物(基質ではない)に特異的に結合するか、または特異的に反
応することにより、マイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性を改変する。
【0044】
好ましくは、マイクロカプセルまたはマイクロビーズは化合物の活性により直接または
間接的に修飾され、更にチラミドシグナル増幅(TSA(商標);NEN)により修飾さ
れ、その結果として直接または間接的に該マイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学
特性の変化がもたらされ、これによりその分離が可能となる。
【0045】
コンパートメント内で検出される変化は、化合物の直接の作用、または一連の反応(そ
の1つ以上が所望の活性を有する化合物を使用している)が、検出される変化をもたらす
間接的な作用により誘発してよい。
【0046】
化合物がビーズに結合する場合は、化合物がマイクロビーズ上にコーティングされる密
度がマイクロカプセルの大きさと組み合わせられてマイクロカプセル内の化合物の濃度を
決定する。高い化合物のコーティング密度および小型のマイクロカプセルは共に、より高
い化合物濃度をもたらし、これは標的に対する親和性が低い分子の選択に好ましいかもし
れない。逆に、低い化合物コーティング密度および大型のマイクロカプセルは共により低
い化合物濃度をもたらし、これは標的に対する親和性が高い分子の選択に好ましいかもし
れない。
【0047】
好ましくは、マイクロカプセル化はエマルジョンの形成により達成される。
【0048】
マイクロビーズは非磁性、磁性または常磁性であることができる。
【0049】
好ましくは、マイクロカプセルまたはマイクロビーズはその蛍光の変化の検出により分
析する。例えば、マイクロビーズはフローサイトメトリーで分析し、任意選択的に蛍光活
性化細胞ソーター(FACS)を用いて分類できる。標的および生成物の異なる蛍光特性
は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によるものであることができる。
【0050】
別の実施形態において、マイクロカプセルの内分環境は、エマルジョンの連続相に試薬
1つ以上を添加することにより修飾できる。これにより試薬は必要に応じて反応の最中に
マイクロカプセル内に拡散できる。
【0051】
本発明は更に、前記した態様にかかる方法であって、一次化合物の反応により生成した
二次化合物を単離するステップを更に含み、任意選択的に二次化合物1つ以上を製造する
ステップを更に含む方法に関する。
【0052】
本発明はまた本発明により識別される物を提供する。この点に関し、「物」とは本発明
により選択可能である任意の化合物を指す。
【0053】
本発明のその他の実施形態は以下の詳細な説明および添付する請求項に記載する通りで
ある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】PTP1B阻害剤の例。ビス−ジフルオロメチレンホスホネート部分を有する化合物(例えば2)は単一の部分を有するものよりも有意に大きい力価を有する。
【図2】IVCを用いたPTP1B阻害剤のスクリーニング。オレンジ色または赤色の蛍光色素で染色した表面カルボキシレート基を有するポリスチレンビーズ(Fulton et al.,1997)をホスホペプチドPTP1B基質および切断可能なリンカーを介して結合したPTP1B阻害剤または非阻害化合物のいずれかで誘導する(1)。ビーズを混合した後、シングルのビーズおよび標的酵素(PTP1B)を、油中水エマルジョンを形成することによりマイクロコンパートメント内に共局在化させる(2)。化合物を放出する(光化学的)(3)。阻害剤は生成物(脱ホスホリル化ペプチド)に変換される基質の量を低減する(4)。酵素反応を停止し、エマルジョンを破壊する(5)。緑色蛍光抗基質抗体で標識した後、ビーズを3色フローサイトメトリーで分析し、阻害の程度およびビーズ上の化合物を同時に測定する(6)。化合物ライブラリを光学的にタグ付けされたビーズ(後述)にカップリングし、フローサイトメトリーにより急速にデコードすることができる(100,000ビーズs-1以下)。ヒット化合物を再合成して、更に特性決定(7)するか合成進化の過程において産生して再スクリーニングする(8)。
【図3】エマルジョン中のPTP1B阻害剤の合成。2種のビーズを生成し、オレンジ色および赤色の蛍光色素で特徴的に標識し、2種の分子AまたはB(何れもジフルオロメチレンホスホネート部分を有さないか、一方のみ、または両方が有する)で誘導し、可逆連結部を介して結合させる(シッフ塩基)。ビーズを乳化してコンパートメント当たり平均2ビーズとする。分子AおよびBをコンパートメント内のビーズから放出させ、反応させて新しい分子A−Bを形成する(溶液中)。A−BがPTP1B阻害剤である場合は、やはりビーズ上にあるPTP1B基質は脱ホスホリル化されず、これらのビーズは図2に示すとおりフローサイトメトリーで識別される。
【図4】4成分反応を用いた小分子の進化。25ビーズ4セットを生成し、各々を分子A、B、CまたはDの25変異体の1つで誘導し、乳化して平均でコンパートメント当たり4ビーズとなるようにし、化合物を放出させて大型のコンビナトリアルレパートリー(4×105)をインサイチュで合成し、図2に示すようにスクリーニングする。低親和性の阻害剤は阻害剤中の識別される部分を担持するビーズの混合物を再スクリーニングすることにより「組み換え」られる。阻害剤中に存在する部分(例えばA10)を担持するビーズはまたB、CおよびDでコーティングされたビーズの完全なセットと混合してスクリーニングされることもできる。次に部分(例えばB8)を阻害剤の成分として識別されれば、A10およびB8でコーティングされたビーズをビーズCおよびDの完全なセットと混合することができ、ステップを反復する。「突然変異」のこの過程はまた逆重畳をもたらす。活性化合物内の4部分の3つを固定した後、逆重畳は上記した複数ビーズの分析を用いて完了することができる。変異体を有するビーズセットを用いて化合物を再度多様化または「突然変異」させ、分子の分解されたセットを元のライブラリで使用する。
【図5】フッ化炭素中水エマルジョン中の小分子のコンパートメント化。実施例6に記載するとおりホモゲナイズにより水相中にテキサスレッド(1mM)およびカルセイン(1mM)を含有するパーフルオロオクチルブロミド中水エマルジョンを作成した。2種のエマルジョンを回転混合し、24時間後にエピ蛍光顕微鏡により画像化した。微小液滴間のテキサスレッド(赤色蛍光)およびカルセイン(緑色蛍光)の交換は観察されなかった。
【図6】PTP1B阻害剤の合成のための一次化合物。ジフルオロメチレンホスホネート部分を有するアミン(A)およびアルデヒド(B)。アミンAを油中水エマルジョンの水性マイクロカプセル中アルデヒドBと反応させて強力なPTP1B阻害剤であるイミンCを生成させる。シアノボロハイドライドを用いてインサイチュでCを反応させて安定なアミンDを生成させる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
[定義]
「マイクロカプセル」という用語は本明細書においては、当分野で通常用いられており
、さらに後述する意味に従う。しかしながら本質的にはマイクロカプセルは、所望の活性
を有する分子の識別を可能にする本明細書に記載の分子機序における成分の交換をその輪
郭となる境界が制限している人工のコンパートメントである。輪郭となる境界は好ましく
はマイクロカプセルの内容物を完全に封入するものである。好ましくは、本発明の方法に
おいて使用するマイクロカプセルは極めて多数量で製造可能であり、これにより化合物の
ライブラリをコンパートメント化できる。任意選択的に、化合物をマイクロビーズに結合
できる。本明細書において使用されるマイクロカプセルはその内部において混合および分
類が可能であり、これにより本発明の方法の高スループット能を促進する。固体表面上の
液滴およびマルチウェルプレートのアレイは本明細書においてはマイクロカプセルとは定
義しない。
【0056】
マイクロカプセルのある「割合」(化合物2つ以上またはマイクロビーズ2つ以上を含
むものとして定義される)とは、該当するマイクロカプセルの任意の部分(該マイクロカ
プセルの全てを包含する)である。好ましくは、これはその少なくとも25%、好ましく
は50%、より好ましくは60%、70%、80%、90%または95%である。
【0057】
「マイクロビーズ」という用語は本明細書においては、当分野で通常用いられており、
さらに後述する意味に従う。マイクロビーズはまた、マイクロスフェア、ラテックス粒子
、ビーズまたはミニビーズとして当業者に知られているものであり、20nm〜1mmの
直径のものが入手可能であり、種々の材料、例えばシリカおよび種々の重合体、共重合体
および3元重合体から製造できる。高度に均一の誘導体化された(derivatized)および誘
導体化されていない非磁性および常磁性のマイクロビーズ(ビーズ)は多くの販売元より
入手できる(例えばSigma、Bangs Laboratories、LuminexおよびMolecular Probes)(Fornu
sek and Vetvicka,1986)。
【0058】
マイクロビーズは、マイクロカプセルへ分配することにより本発明に従って「コンパー
トメント化」できる。例えば、好ましい態様において、マイクロビーズを水/油混合物中
に入れ、乳化して、本発明のマイクロカプセルを含む油中水エマルジョンを形成できる。
マイクロビーズの濃度を調節して、各マイクロカプセル内に出現する平均のマイクロビー
ズ数を制御することができる。
【0059】
「化合物」という用語は本明細書においては当分野で通常用いられている意味に従う。
化合物という用語は、その最も広い意味において、即ち、所定の割合で元素2つ以上を含
む物質(分子および超分子複合体(supramolecular complex)を含む)として使用される。
この定義には医薬品の大部分を構成する小分子(典型的には<500ダルトン)も包含さ
れる。しかしながら、定義はまたより大型の分子、例えば重合体、例えばポリペプチド、
核酸および炭水化物およびその超分子複合体も包含する。
【0060】
「一次化合物(primary compound)」という用語は本明細書においてはマイクロカプセル
にコンパートメント化された化合物またはビーズにカップリングされた化合物を指す。
【0061】
「二次化合物(secondary compound)」という用語は本明細書においては、(任意選択的
にマイクロビーズからの、少なくとも1つの一次化合物の放出の後に)マイクロカプセル
内の一次化合物2つ以上の間の反応により形成された化合物を指す。好ましくは、全ての
一次分子がマイクロビーズから放出される。二次化合物は一次化合物間の共有結合または
非共有結合の結果として生じることができる。
【0062】
「スカフォールド」という用語は本明細書においては当分野で通常用いられている意味
に従う。即ちコンビナトリアルライブラリの全てのメンバーに共通の分子のコア部分であ
る(Maclean et al.,1999)。任意選択的に、二次化合物はスカフォールドを含んでよい。
【0063】
化合物の「レパートリー」とは多様な化合物の群であり、これはまた化合物のライブラ
リとも称することができる。化合物のレパートリーは当分野で知られた任意の手段、例え
ばコンビナトリアル化学、化合物進化により生成させるか、または、Sigma Aldrich,Disc
overy Partners International,MaybridgeおよびTriposのような市販元より購入してよい
。レパートリーは、好ましくは少なくとも102、103、104、105、106、107
108、109、1010、1011以上の異なる化合物を含み、これは構造または機能におい
て関係していても無関係でもよい。
【0064】
化合物の1つの「セット」とは、化合物のレパートリー、またはレパートリーの任意の
部分(例えば単一の化合物種)であってよい。本発明は、共に反応する化合物の2つ以上
のセットの使用を意図している。セットは単一のレパートリーまたは複数の異なるレパー
トリーに由来してよい。
【0065】
マイクロビーズへの化合物の結合を行うリンカーの切断により化合物をマイクロビーズ
から「放出」させることができる。マイクロビーズからの化合物の放出により化合物はよ
り自由にマイクロカプセルの他の内容物と相互作用ができるようになり、その内部の反応
に関与できるようになり、任意選択的に他の試薬と組み合わさって新しい化合物、複合体
、分子または超分子複合体を形成できるようになる。リンカーの切断は任意の手段により
実施でき、マイクロカプセルを用いることなく実施できる光化学的切断が好ましい。光化
学的に切断できるリンカーは当分野で知られており(例えばGordon and Balasubramanian,
1999参照)、さらに後述する通りである。
【0066】
本明細書においては、「標的(target)」とは任意の化合物、分子または超分子複合体で
ある。典型的な標的は医療上の意味を有する標的を包含し、例えば薬剤標的、例えば受容
体、例えばGタンパク質結合受容体およびホルモン受容体;シグナリング経路に関与する
転写因子、プロテインキナーゼおよびホスファターゼ;微生物に特異的な遺伝子産物、例
えば細胞壁成分、レプリカーゼおよび他の酵素;工業的に関連のある標的、例えば食品産
業において使用される酵素、研究または生産目的の試薬等を包含する。
【0067】
「活性」とは、本明細書においては、標的の活性のモジュレーションに関連して言及す
る場合は、標的の任意の活性、または、標的により影響される分子の活性であることがで
き、これは本明細書において試験する化合物により直接または間接的にモジュレートする
ことができる。標的の活性は、任意の測定可能な生物学的または化学的な活性、例えば結
合活性、酵素活性、第3の酵素または他の分子に対する活性化または抑制の活性、疾患を
誘発するか代謝または他の機能に影響する能力等であってよい。本明細書において言及す
る活性化および抑制とは、所望の活性を1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、1
00倍以上の増大または低減を指す。モジュレーションが不活性化である場合は、不活性
化は実質的に完全な不活性化である。更にまた所望の活性は純粋に結合活性であってよく
、これには結合する標的の活性のモジュレーションが関与してもしなくてもよい。
【0068】
本明細書において「低分子量」または「小分子」と定義される化合物は医薬品分野にお
いて「小分子」と一般的に称される分子である。このような化合物はポリペプチドおよび
他の大型分子複合体よりも小型であり、患者および他の対象に容易に投与でき、消化(ass
imilate)されるものである。小分子薬剤は経口投与または筋肉内注射用に好適に製剤でき
る。例えば小分子は2000ダルトン以下;好ましくは1000ダルトン以下;好ましく
は250〜750ダルトン;およびより好ましくは500ダルトン未満の分子量を有する
ことができる。
【0069】
「選択可能な変化(selectable change)」とは、測定可能であり、当該変化を引き起こ
す化合物を識別または単離するために利用可能である任意の変化である。選択は、(任意
選択的に他の試薬と複合体化された際に)、マイクロカプセル、マイクロビーズまたは化
合物自体のレベルで起こってよい。特に好ましい実施形態は光学的検出であり、その場合
、選択可能な変化は光学特性の変化であり、これは例えばFACS装置において検出およ
び利用でき、これにより所望の変化を表すマイクロカプセルまたはマイクロビーズを分離
できる。
【0070】
本明細書においては光学特性の変化は電磁放射の吸収または放射の任意の変化、例えば
吸光度、ルミネセンス、燐光または蛍光の変化を指す。このような特性の全てが「光学的
」という用語に包含される。マイクロカプセルまたはマイクロビーズは、例えばルミネセ
ンス、蛍光または燐光活性化分類により識別され、任意選択的に分類される。好ましい実
施形態においては、フローサイトメトリーを用いてマイクロカプセルまたはマイクロビー
ズを識別し、任意選択的に分類する。種々の光学特性を分析のためおよび分類をトリガー
するために使用でき、例えば光散乱(Kerker,1983)および蛍光分極(Rolland et al.,1985)
が挙げられる。高度に好ましい実施形態においては、マイクロカプセルまたはマイクロビ
ーズは、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)を用いて分析され、任意選択的に分類され
る(Norman,1980;Mackenzie and Pinder,1986)。
【0071】
マイクロカプセル中またはビーズ上の化合物は当業者がよく知る種々の手法、例えば質
量スペクトル分析、化学的タグ付けまたは光学的タグ付けにより識別できる。
【0072】
[一般的方法]
特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての技術的および専門的な用語は
本分野(例えば細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生
化学)の当業者が一般的に理解している意味と同様の意味を有する。分子、遺伝および生
化学的方法(一般的には、引用により本明細書に組み込まれるSambrook et al.,Molecula
r Cloning:A Laboratory Manual,2d ed(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Col
d Spring Harbor,N.Y.およびAusbel et al.,Short Protocols in Molecular Biology(199
9)4th Ed,John Wiley&Sons,Inc.参照)および化学的方法には、標準的な技術が使用され
る。更にまた、Harlow&Lane,A Laboratory Manual Cold Spring Harbor,N.Y.も標準的な
免疫学的技術について参照される。
【0073】
〔(A)一般的説明〕
本発明のマイクロカプセルは、本発明が機能するために適切な物理学的特性を必要とす
る。
【0074】
まず、複数のマイクロカプセル間で化合物および標的が拡散しないようにするためには
、各マイクロカプセルの内容物を周囲のマイクロカプセルの内容物から隔離することによ
り、実験期間中を通じてマイクロカプセル間での化合物および標的の交換を皆無または極
僅かとしなければならない。
【0075】
第2に本発明の方法では、マイクロカプセル当たり限られた数量のみビーズが存在しな
ければならない。これにより化合物および標的が他のビーズから隔離されることになる。
【0076】
第3にマイクロカプセルの形成および組成は標的の活性を低減させてはならない。
【0077】
結果として、使用する任意のマイクロカプセル化系はこれらの3つの条件を満足しなけ
ればならない。適切な系は当業者に明らかなとおり、本発明の各用途における条件の厳密
な性質により変動する。
【0078】
広範な種類のマイクロカプセル化の操作法(Benita,1996参照)が使用可能であり、本発
明に従って使用するマイクロカプセルを産生するために使用してよい。実際、200を超
えるマイクロカプセル化方法が文献に記載されている(Finch,1993)。
【0079】
これらには膜エンベロープ水性ベシクル、例えば脂質ベシクル(リポソーム)(New,199
0)および非イオン系界面活性剤ベシクル(van Hal et al.,1996)が包含される。これらは
非共有結合的に組み立てられた分子の単一または複数の二重層(bilayer)の閉じた膜カプ
セルであり、各二重層は水性のコンパートメントによりその近隣から分離されている。リ
ポソームの場合は、膜は脂質分子からなり;これらは通常はリン脂質であるが、コレステ
ロールのようなステロールも膜内に取り込んでよい(New,1990)。種々の酵素触媒性化学的
反応、例えばRNAおよびDNA重合をリポソーム内で実施できる(Chakrabarti et al.,
1994;Oberholzer et al.,1995a;Oberholzer et al.,1995b;Walde et al.,1994;Wick&Luis
i,1996)。
【0080】
膜エンベロープベシクル系の場合は、水相の大部分がベシクル外部にあり、従って非コ
ンパートメント化されている。反応がマイクロカプセル内に限定されるためには、この連
続の水相を除去するか、または、その内部の生物学的な系を抑制または破壊しなければな
らない(Luisi et al.,1987)。
【0081】
酵素触媒性化学反応はまた、種々の他の方法により産生されたマイクロカプセル内でも
実証されている。多くの酵素はAOT−イソオクタン−水系(Menger&Yamada,1979)のよう
に逆ミセル溶液中(Bru&Walde,1991;Bru&Walde,1993;Creagh et al.,1993;Haber et al.,1
993;Kumar et al.,1989;Luisi&B.,1987;Mao&Walde,1991;Mao et al.,1992;Perez et al.,
1992;Walde et al.,1994;Walde et al.,1993;Walde et al.,1998)で活性である。
【0082】
マイクロカプセルはまた界面重合および界面複合体形成により産生させることができる
(Whateley,1996)。この種のマイクロカプセルは剛性で非透過性の膜または半透過性の膜
を有することができる。硝酸セルロース膜、ポリアミド膜および脂質−ポリアミド膜を境
界とする半透過性のマイクロカプセルは全て、多酵素系を含む生化学的反応を支援できる
(Chang,1987;Chang,1992;Lim,1984)。極めて穏やかな条件下で形成できるアルギネート/
ポリリジンマイクロカプセル(Lim&Sum,1980)もまた極めて生体適合性が高いことがわかっ
ており、例えば生細胞および組織のカプセル化の有効な方法を与える(Chang,1992;Sun et
al.,1992)。
【0083】
エマルジョンのようなコロイド系における水性の環境の相分配に基づく非膜マイクロカ
プセル化系も使用してよい。
【0084】
好ましくは本発明のマイクロカプセルはエマルジョン、即ち、顕微鏡的またはコロイド
サイズの液滴として相の一方が他方の内部に分散している2つの不混和性の液相の不均質
な系から形成する(Becher,1957;Sherman,1968;Lissant,1974;Lissant,1984)。
【0085】
エマルジョンは、不混和性の液体の任意の適当な組み合わせから製造することができる
。好ましくは本発明のエマルジョンは微細分割液滴の形態で存在する相(分散した内部ま
たは不連続の相)としての水(生化学的成分を含有)およびこれらの液滴が懸濁している
マトリックス(非分散の連続または外部の相)としての疎水性の不混和性液体(油)を有
する。このようなエマルジョンを油中水(W/O)と称する。これは生化学的成分を含有
する全水相が個別の液滴(内層)内にコンパートメント化されているという利点を有する
。疎水性の油である外層は一般的には生化学的成分は含まず、従って不活性である。
【0086】
エマルジョンは界面活性剤1つ以上を添加することにより安定化する。これらの界面活
性剤は乳化剤と称され、水/油界面に作用して相の分離を防止(または少なくとも遅延)
する。多くの油状物および多くの乳化剤を油中水エマルジョンの産生のために使用でき、
最近の集計では16,000を超える界面活性剤が存在し、その多くは乳化剤として使用されて
いる(Ash and Ash,1993)。適当な油は軽質白色鉱物油およびデカンを包含する。適当な界
面活性剤は、非イオン系界面活性剤(Schick,1966)、例えばソルビタンモノオレエート(Sp
an(商標)80;ICI)、ソルビタンモノステアレート(Span(商標)60;ICI)、ポリオキシエチレ
ンソルビタンモノオレエート(Tween(商標)80;ICI)およびオクチルフェノキシエトキシエ
タノール(Triton X-100);イオン系界面活性剤、例えばコール酸ナトリウムおよびタウロ
コール酸ナトリウムおよびデオキシコール酸ナトリウム;化学的に負活性なシリコーン系
の界面活性剤、例えばポリシロキサン−ポリセチル−ポリエチレングリコール共重合体(
セチルジメチコンコポリオール)(例えばAbil(商標)EM90;Glodschmidt);およびコレステ
ロールを包含する。
【0087】
フッ化炭素(または過フッ化炭素)連続相を有するエマルジョン(Krafft et al.,2003;
Riess,2002)は特に好ましい。例えば、安定なパーフルオロオクチルブロミド中水および
パーフルオロオクチルエタン中水のエマルジョンは界面活性剤としてF−アルキルジモル
ホリノホスフェートを用いながら形成できる(Sadtler et al.,1996)。非フッ化化合物は
本質的にはフッ化炭素および過フッ化炭素中に不溶性であり(Curran,1998;Hildebrand an
d Cochran,1949;Hudlicky,1992;Scott,1948;Studer et al.,1997)、小型薬剤様分子(典
型的には<500DaおよびLogP<5)(Lipinski et al.,2001)はフッ化炭素中水お
よび過フッ化炭素中水のエマルジョンの水性マイクロカプセル中極めて効果的にコンパー
トメント化され、マイクロカプセル間の交換は殆どまたは全くない。
【0088】
好ましくは、化合物は非水性(有機性)溶媒を含むマイクロカプセル内にコンパートメ
ント化できる。非フッ化有機溶媒は本質的にはフッ化炭素および過フッ化炭素には不溶性
および不混和性であり(Curran,1998;Hildebrand and Cochran,1949;Hudlicky,1992;Scott
,1948;Studer et al.,1997)、フッ化炭素(または過フッ化炭素)の連続相およびジクロ
ロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテ
ルおよびエタノールのような非水性溶媒から形成される不連続の相の形成を可能にする。
非水性の溶媒を含むマイクロカプセル中に二次化合物を形成する能力は、実施できる化学
反応およびそれにおいて合成できる二次分子のレパートリーを大きく拡張する。合成有機
化学の大部分はジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、テトラヒドロフ
ラン、ジエチルエーテルおよびエタノールを含む有機溶媒中で行われる。有機分子は有機
溶媒中の溶解性がより高い。静電的相互作用は有機溶媒中で増強(低誘電率のため)され
るのに対し、それらは水性の溶媒中では溶媒和して反応性が低下する。例えば、現代の有
機化学の大部分がカルボニル化学に関する反応、例えば金属エノレートの使用を採用して
いる。同様に他の有機金属相互作用の数も増大している。これらの反応は無水溶媒中の不
活性雰囲気下で行われる場合が多い(そうしなければ水により試薬がクエンチングされる
)。Suzuki反応およびHeck反応を含む、パラジウム触媒を使用する多くの反応がある。
【0089】
エマルジョンの形成は一般的に相を強制的に共存させるための機械的エネルギーの適用
を必要とする。これを行うための種々の機械的装置、例えば攪拌器(磁気攪拌子、プロペ
ラおよびタービン攪拌器、パドル装置およびウイスク)、ホモゲナイザー(例えばロータ
ーステーターホモゲナイザー、高圧弁ホモゲナイザーおよびジェットホモゲナイザー)、
コロイドミル、超音波および「膜乳化」装置(Becher,1957;Dickinson,1994)を利用した種
々の方法がある。
【0090】
複雑な生化学的過程、特に遺伝子の転写および翻訳もまた油中水エマルジョン中に形成
される水性マイクロカプセル内で活性である。これにより、油中水エマルジョン内のコン
パートメント化が遺伝子の選択に使用可能となり、遺伝子はエマルジョンマイクロカプセ
ル内で転写および翻訳され、それらがコードするタンパク質の結合または触媒活性により
選択される(Doi and Yanagawa,1999;Griffiths and Tawfik,2003;Lee et al.,2002;Sepp
et al.,2002;Tawfik and Griffiths,1998)。これはエマルジョン内に形成された水性マイ
クロカプセルが一般的に安定であり、マイクロカプセル間での核酸、タンパク質または酵
素触媒反応の生成物の交換があったとしても極僅かであるために可能となった。
【0091】
数千リットルの工業的規模までの容量のエマルジョンを形成する技術も存在する(Beche
r,1957;Sherman,1968;Lissant,1974;Lissant,1984)。
【0092】
好ましいマイクロカプセルサイズは本発明に従って実施するべき任意の個々のスクリー
ニング方法の厳密な条件に応じて変動する。全ての場合において、化合物および標的の活
性の特性(identity)を測定するためには、化合物ライブラリと試験の感度との間には最適
なバランスが存在する。
【0093】
エマルジョンマイクロカプセルのサイズは、スクリーニング系の条件に応じてエマルジ
ョンを形成するために使用されるエマルジョン条件を単に調節することにより変化させて
よい。究極的な制約要因はマイクロカプセルのサイズ、即ち単位容量当たり可能なマイク
ロカプセル数であることから、マイクロカプセルサイズが大きくなるほど、所与の化合物
ライブラリをカプセル化するために必要となる容量は大きくなる。
【0094】
油中水エマルジョンは外部(連続)水相を有する水中油中水のダブルエマルジョンを形
成するために再乳化できる。これらのダブルエマルジョンを分析し、任意選択的にフロー
サイトメーターを用いて分類することができる(Bernath et al.,2004)。
【0095】
高度に単分散されたマイクロカプセルは微小流体技術を用いて製造できる。例えば、3
%未満の多分散性を有する油中水エマルジョンは油中の共流動ストリームの液滴破壊によ
り形成することができる(Umbanhowar et al.,2000)。微小流体システムはまた、微小流体
チャンネル内の油のストリーム中に分散した水性微小液滴の層流のために使用できる(Tho
rsen et al.,2001)。これによりフロー分析のための微小流体装置の構築、および、任意
選択的に微小液滴のフロー分類が可能となる(Fu et al.,2002)。
【0096】
マイクロカプセルは好ましくは融合するか分割(split)する。例えば微小流体システム
を用いて水性微小液滴を融合および分割させることができる(Link et al.,2004;Song et
al.,2003)。マイクロカプセルの融合により試薬の混合が可能となる。例えば標的を含有
するマイクロカプセルと化合物を含有するマイクロカプセルの融合は標的と化合物の反応
を開始させる。マイクロカプセルのスプリッティングにより、単一のマイクロカプセルを
より小さいマイクロカプセル2個以上に分割させる。例えば化合物を含有する単一のマイ
クロカプセルを複数のマイクロカプセルに分割し、これをその後異なる標的を含有する異
なるマイクロカプセルに各々融合させる。標的を含有する単一のマイクロカプセルはまた
複数のマイクロカプセルに分割し、これをその後異なる化合物または異なる濃度の化合物
を含有する異なるマイクロカプセルと各々融合させることができる。
【0097】
マイクロカプセルは例えば蛍光色素を取り込むことにより光学的にタグ付けできる。好
ましい形態においては、マイクロカプセルは量子ドットを取り込むことにより光学的にタ
グ付けされ、10濃度の6色の量子ドットは106マイクロカプセルのコード化を可能と
する(Han et al.,2001)。微小流体チャンネル内を秩序のある順序で流動するマイクロカ
プセルは、マイクロカプセルのストリームにおけるその順序によりコード化(完全または
部分的)できる(位置コード化)。
【0098】
マイクロスフェア、ラテックス粒子、ビーズまたはミニビーズとして当業者に知られて
いるマイクロビーズは20nm〜1mmの直径のものが入手可能であり、種々の材料、例
えばシリカおよび種々の重合体、共重合体および3元重合体、例えばポリスチレン(PS
)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルトルエン(PVT)、スチレン
/ブタジエン(S/B)共重合体およびスチレン/ビニルトルエン(S/VT)共重合体
から製造できる(www.bangslabs.com)。これらは広範な種類の機能表面基、即ちアルデヒ
ド、脂肪族アミン、アミド、芳香族アミン、カルボン酸、クロロメチル、エポキシ、ヒド
ラジド、ヒドロキシル、スルホネートおよびトシルにより付与される疎水性表面(例えば
プレーンポリスチレン)から極めて親水性の表面まで、種々の表面化学のものが入手可能
である。官能基はマイクロビーズ表面への化合物の安定または過逆的な結合のための広範
な共有結合反応を可能とする。
【0099】
マイクロビーズは例えば蛍光色素を取り込むことにより光学的にタグ付けできる。例え
ば、厳密な比率の赤色(>650nm)およびオレンジ色(585nm)の蛍光色素によ
る標識のため、各々が独特のスペクトルアドレスを有する100種の異なるビーズのセッ
トを形成し(Fulton et al.,1997)(www.luminex.com)、106ビーズ以下のセットを10強
度6色の量子ドットを取り込むことによりコード化できる(Han et al.,2001)。
【0100】
化合物を当業者のよく知る種々の手段により共有結合的または非共有結合的にマイクロ
ビーズに連結できる(例えばHarmanson,1996参照)。好ましくは、化合物は切断可能なリン
カーを介して結合する。このような種々のリンカーは当業者が知る通りであり(例えばGor
don and Balasubramanian,1999参照)、例えば光化学的に切断できるリンカーおよびpH
の変更により(例えばイミンおよびアシルヒドラゾン)、酸化還元特性を調節することに
より(例えばジスルフィド)または外部触媒を用いながら(例えば交差複分解(cross-met
hathesis)およびアミド転換)制御することができる可逆共有結合が挙げられる。
【0101】
本発明の方法は化合物のプール(ライブラリまたはレパートリー)中で標的の活性を所
望の方法でモジュレートする化合物の識別を可能とする。
【0102】
高度に好ましい用途においては、本発明の方法は化合物のライブラリのスクリーニング
のために有用である。従って本発明は化合物を化合物のライブラリから識別する本発明の
前記の態様に従った方法を提供する。
【0103】
本発明により識別される化合物は好ましくは薬理学的または産業上の利益を有し、例え
ば診断および治療用途のために適する細胞シグナル伝達機序のような生物学的系の活性化
剤または抑制剤を包含する。従って好ましい態様において本発明は臨床上または産業上有
用な物の発見を可能にする。本発明の別の態様において、本発明の方法により単離される
物が提供される。
【0104】
適当なカプセル化条件の選択が望ましい。スクリーニングすべき化合物ライブラリの複
雑度およびサイズに応じて、マイクロカプセル当たり1つまたは1つ未満の二次化合物が
形成されるようにカプセル化の操作法を設定することが有利である。これにより分割力が
最大となる。しかしながらライブラリがより大きいおよび/またはより複雑である場合は
、これは非現実的であり;数種の二次化合物を共に形成し、本発明の方法の反復適用に依
存して所望の化合物を識別することが好ましい。カプセル化の操作法の組み合わせを用い
て所望の化合物を識別してよい。
【0105】
理論的な研究によれば、化合物の数量が多いほど所望の特性を有する化合物が生成され
やすいことを示している(このことがどのように抗体のレパートリーに適用されるかの説
明(Perelson and Oster,1979)を参照)。また実際には、より大きいファージ−抗体レパ
ートリーは確実により小さいレパートリーよりも良好な結合親和性を有するより多くの抗
体をもたらすことが確認されている(Griffiths et al.,1994)。まれな変異体が形成され
識別を可能とするには、大型のライブラリのサイズが望ましい。即ち、至適に小型である
マイクロカプセルの使用が有利である。
【0106】
これまで、1nl容量のスポットの二次元のマイクロアレイを用いて単一の実験におい
てスクリーニングできる化合物の最大のレパートリーは〜103であった(Hergenrother e
t al.,2000)。本発明を用いれば、2.6mmのマイクロカプセル直径において(Tawfik a
nd Griffiths,1998)、3次元の分散体を形成することにより、少なくとも1011のレパー
トリーサイズを20mlエマルジョン中1ml水相を用いてスクリーニングできる。
【0107】
上記した化合物または化合物でコーティングされたマイクロビーズのほかに、本発明の
マイクロカプセルはスクリーニング過程を起こすために必要な別の成分を含む。それらは
標的および適当な緩衝液を含む。適当な緩衝液は生物学的系の所望の成分の全てが活性と
なるようなものであり、従って、各々の特定の反応系の条件により異なる。生物学的およ
び/または化学的反応に適する緩衝液は当分野で知られており、その処方はSambrook and
Russell,2001のような種々の実験テキストに記載されている。
【0108】
系の別の成分は標的の活性を試験するために必要なものを包含する。それらは例えば標
的により触媒される反応の基質およびコファクター、および、標的に結合するリガンドを
含む。それらはまた標的の活性の検出を可能にする標的の活性にカップリングされた反応
の他の触媒(酵素を含む)、基質およびコファクターを含む。
【0109】
〔(B)スクリーニング操作法〕
標的に結合するか標的の活性をモジュレートする化合物をスクリーニングするためには
、標的を化合物または化合物コーティングマイクロビーズ1つ以上と共にマイクロカプセ
ル内にコンパートメント化する。好ましくは、各マイクロカプセルは単一の種類のみの二
次化合物であるがそのコピーの多くを含有する。好ましくは、各マイクロビーズは単一の
種類のみの化合物であるがそのコピーの多くによりコーティングされる。好ましくは、化
合物は切断可能なリンカーを介してマイクロビーズに連結され、それらはコンパートメン
ト中のマイクロビーズから放出されるようになる。好ましくは、各マイクロカプセルまた
はマイクロビーズは光学的にタグ付けされることによりマイクロビーズに結合しているマ
イクロカプセル内に含有される化合物の識別を可能にする。
【0110】
((i)結合に関するスクリーニング)
化合物は標的への結合について直接スクリーニングできる。本実施形態においては、化
合物がマイクロビーズに結合し、標的への親和性を有する場合には、それは標的に結合す
る。反応の終了時に、全マイクロカプセルを合わせ、全てのマイクロビーズを1つの環境
内に共にプールする。標的に特異的に結合するか、または特異的に反応する分子を用いな
がらアフィニティー精製により所望の結合を示す化合物を担持するマイクロビーズを選択
できる。
【0111】
別の実施形態においては、標的を当業者の知る種々の手段によりマイクロビーズに結合
できる(例えばHermanson,1996参照)。スクリーニングすべき化合物は共通の特徴、即ちタ
グを含有する。化合物はマイクロビーズから放出され、化合物が標的に対する親和性を有
する場合にそれに結合する。反応終了時に、全マイクロカプセルを合わせ、全マイクロビ
ーズを1つの環境内に共にプールする。「タグ」に特異的に結合するか、または特異的に
反応する分子を用いながらアフィニティー精製により所望の結合を示す化合物を担持する
マイクロビーズを選択できる。
【0112】
別の実施形態においては、標的に結合する化合物が例えば別の結合相手からのリガンド
を単に隠すだけであることに基づき、マイクロビーズをスクリーニングしてよい。この偶
発性において、マイクロビーズはアフィニティー精製工程中に保持されるよりはむしろ選
択的に溶出される一方、他のマイクロビーズは結合される。
【0113】
親和性による分類は結合が起こる条件における結合対の2メンバーの存在に依存してい
る。この目的のために任意の結合対を使用してよい。本明細書において用いられるように
、結合対という用語は相互に結合することができる分子の任意の対を指す。本発明におい
て使用してよい結合対の例は抗原と抗原に結合できる抗体またはそのフラグメント、ビオ
チン−アビジン/ストレプトアビジン対(Savage et al.,1994)、カルシウム依存性結合ポ
リペプチドおよびそのリガンド(例えばカルモジュリンとカルモジュリン結合ペプチド(M
ontigiani et al.,1996;Stofko et al.,1992));組み立てられてロイシンジッパーを形
成するポリペプチドの対(Tripet et al.,1996)、ヒスチジン(典型的にはヘキサヒスチジ
ンペプチド)とキレート化Cu2+、Zn2+およびNi2+(例えばNi−NTA;(Hochuli
et al.,1987))、RNA結合とDNA結合タンパク質(Klug et al.,1995)、例えば亜鉛
フィンガーモチーフを含有するもの(Klug and Schwabe,1995)およびDNAメチルトラン
スフェラーゼ(Anderson,1993)とそれらの核酸結合部位を包含する。
【0114】
別の実施形態においては、化合物はマイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性
の変化を用いて標的への結合についてスクリーニングできる。
【0115】
標的への化合物の結合の後のマイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性の変化
は以下に記載するものを含む種々の方法で誘導することができる。
(1)化合物自体が特徴的な光学特性を有してもよい。例えばそれは蛍光である。
(2)化合物の光学特性が標的への結合により修飾されてもよい。例えば、化合物の蛍
光が結合によりクエンチングされるか増強される(Voss,1993;Masui and Kuramitsu,1998)

(3)標的の光学特性が化合物への結合により修飾されてもよい。例えば、標的の蛍光
が結合によりクエンチングされるか増強される(Guixe et al.,1998;Qi and Grabowski,19
98)。
(4)標的および化合物の両方の光学特性が結合により修飾されてもよい。例えば標的
から化合物(またはその逆)の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が生じ、「ドナー」
の吸収波長における励起があれば「アクセプター」発光波長における発光が生じる(Heim&
Tsein,1996;Mahajan et al.,1998;Miyawaki et al.,1997)。
【0116】
本発明によると、所望の活性を有する化合物がマイクロカプセルの光学特性の変化を誘
導し、これにより、当該化合物を含有するマイクロカプセルおよびそこに含有されるマイ
クロビーズの識別および任意選択的に分類が可能となる方法が提供される。
【0117】
別の実施形態においては、本発明によると、共通のコンパートメント1つ以上内にマイ
クロカプセルをプールした後にマイクロビーズを分析する方法が提供される。本実施形態
においては所望の活性を有する化合物はそれを担持する(そして同じマイクロカプセル内
に存在する)マイクロビーズの光学特性を修飾してその識別および任意選択的に分類を可
能にする。
【0118】
本実施形態においては、標的への化合物の結合は必ずしも光学特性の変化を直接誘導す
る必要は無い。
【0119】
本実施形態において、マイクロビーズに結合した化合物が標的に対する親和性を有する
場合は、それは標的に結合する。反応終了時、全マイクロカプセルを合わせ、全マイクロ
ビーズを1つの環境内に共にプールする。所望の結合を示す化合物を担持するマイクロビ
ーズは、標的と特異的に結合するか、または特異的に反応する試薬を添加し、これにより
、識別を可能にするマイクロビーズの光学特性の変化を誘導することにより識別できる。
例えば、蛍光標識抗標的抗体を用いるか、または、抗標的抗体、次いで第1のものに結合
する第2の蛍光標識抗体を使用できる。
【0120】
別の実施形態においては、標的を当業者の知る種々の手段によりマイクロビーズに結合
できる(例えばHermanson,1996参照)。スクリーニングすべき化合物は共通の特徴、即ちタ
グを含有する。化合物はマイクロビーズから放出され、化合物が標的に対する親和性を有
する場合にそれに結合する。反応終了時に全マイクロカプセルを合わせ、全マイクロビー
ズを1つの環境内に共にプールする。所望の結合を示す化合物を担持するマイクロビーズ
は、「タグ」と特異的に結合するか、または特異的に反応する試薬を添加し、これにより
、識別を可能にするマイクロビーズの光学特性の変化を誘導することにより識別できる。
例えば、蛍光標識抗「タグ」抗体を用いるか、または、抗「タグ」抗体、次いで第1のも
のに結合する第2の蛍光標識抗体を使用できる。
【0121】
別の実施形態においては、リガンドに結合する遺伝子産物が、例えばマイクロビーズの
光学特性を修飾する可能性がある別の結合相手からリガンドを単に隠すことに基づいて識
別してよい。この場合未修飾の光学特性を有するマイクロビーズが選択されるであろう。
【0122】
マイクロビーズを蛍光性とするために、蛍光をチラミドシグナル増幅(TSA(商標))
の増幅を用いて増強することができる(Sepp et al.,2002)。これは、マイクロビーズに結
合し、フルオレセイン−チラミンから遊離のラジカル形態(その後(局所的に)マイクロ
ビーズと反応する)への変換を触媒するパーオキシダーゼ(別の化合物に連結)を使用す
る。TSAを実施する方法は当分野で知られており、キットがNENより販売されている

【0123】
TSAは、マイクロビーズの蛍光の直接の増大をもたらすか、または、第2の蛍光分子
または(その1つ以上が蛍光性である)分子の配列が結合するマイクロビーズにリガンド
が結合するように設定される。
【0124】
((ii)結合の調節のためのスクリーニング)
別の実施形態においては、本発明は生化学的過程を調節する作用を有する化合物をスク
リーニングするために使用できる。化合物が標的の結合特性を活性化する場合、活性化さ
れる標的に対するリガンドを当業者の知る種々の手段によりマイクロビーズに結合できる
(例えばHermanson,1996参照)。反応終了時に全マイクロカプセルを合わせ、全マイクロビ
ーズを1つの環境内に共にプールする。所望の結合を示す化合物を担持するマイクロビー
ズは、標的と特異的に結合するか、または特異的に反応する分子を用いたアフィニティー
精製により選択できる。
【0125】
別の実施形態においては、化合物が標的の結合活性を抑制することに基づいてマイクロ
ビーズをスクリーニングしてよい。この偶発性において、マイクロビーズはアフィニティ
ー精製工程中に保持されるよりはむしろ選択的に溶出される一方、他のマイクロビーズは
結合される。
【0126】
別の実施形態において、化合物はマイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性の
変化を用いて標的の結合特性をモジュレートする能力についてスクリーニングできる。
【0127】
リガンドへの標的の結合の後のマイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性の変
化は以下に記載するものを含む種々の方法で誘導することができる。
(1)リガンド自体が特徴的な光学特性を有してもよい。例えばそれは蛍光である。
(2)リガンドの光学特性が標的への結合により修飾されてもよい。例えば、リガンド
の蛍光が結合によりクエンチングされるか増強される(Voss,1993;Masui and Kuramitsu,1
998)。
(3)標的の光学特性がリガンドへの結合により修飾されてもよい。例えば、標的の蛍
光が結合によりクエンチングされるか増強される(Guixe et al.,1998;Qi and Grabowski,
1998)。
(4)標的およびリガンドの両方の光学特性が結合により修飾されてもよい。例えば標
的からリガンド(またはその逆)の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)が生じ、「ドナ
ー」の吸収波長における励起があれば「アクセプター」発光波長における発光が生じる(H
eim&Tsein,1996;Mahajan et al.,1998;Miyawaki et al.,1997)。
【0128】
本発明によると、所望の活性を有する化合物がマイクロカプセルの光学特性の変化を誘
導し、これにより、化合物を含有するマイクロカプセルおよびそこに含有されるマイクロ
ビーズの識別および任意選択的に分類が可能となる方法が提供される。
【0129】
別の実施形態においては、本発明によると、共通のコンパートメント1つ以上内にマイ
クロカプセルをプールした後にマイクロビーズを分析する方法が提供される。本実施形態
においては所望の活性を有する化合物は、それを担持する(そして同じマイクロカプセル
内に存在する)マイクロビーズの光学特性を修飾してその識別および任意選択的に分類を
可能にする。
【0130】
本実施形態においては、リガンドへの標的の結合は必ずしも光学特性の変化を直接誘導
する必要は無い。
【0131】
本実施形態において、マイクロビーズに結合したリガンドが標的に対する親和性を有す
る場合は、それは標的に結合する。反応終了時、全マイクロカプセルを合わせ、全マイク
ロビーズを1つの環境内に共にプールする。結合活性をモジュレートする化合物を担持す
るマイクロビーズは、標的と特異的に結合するか、または特異的に反応する試薬を添加し
、これにより、識別を可能にするマイクロビーズの光学特性の変化を誘導することにより
識別できる。例えば、蛍光標識抗標的抗体を用いるか、または、抗標的抗体、次いで第1
のものに結合する第2の蛍光標識抗体を使用する。
【0132】
別の実施形態においては、標的を当業者の知る種々の手段によりマイクロビーズに結合
できる(例えばHermanson,1996参照)。スクリーニングすべきリガンドは共通の特徴、即ち
タグを含有する。反応終了時に全マイクロカプセルを合わせ、全マイクロビーズを1つの
環境内に共にプールする。結合をモジュレートする化合物を担持するマイクロビーズは、
「タグ」と特異的に結合するか、または特異的に反応する試薬を添加し、これにより、識
別を可能にするマイクロビーズの光学特性の変化を誘導することにより識別できる。例え
ば、蛍光標識抗「タグ」抗体を用いるか、または、抗「タグ」抗体、次いで第1のものに
結合する第2の蛍光標識抗体を使用する。
【0133】
上記した通り、蛍光はチラミドシグナル増幅(TSA(商標))の増幅を用いて増強され
ることによりマイクロビーズを蛍光性とする(Sepp et al.,2002)。
【0134】
((iii)触媒作用の調節のスクリーニング)
別の実施形態において、本発明によると、所望の活性を有する化合物がマイクロカプセ
ルの光学特性の変化を誘導し、これにより、化合物を含有するマイクロカプセルおよび任
意選択的にそこに含有されるマイクロビーズの識別および任意選択的に分類が可能となる
方法が提供される。マイクロカプセルの光学特性は、
(a)異なる光学特性を有する調節された反応の基質および生成物(多くの蛍光発生酵
素基質は例えばHaugland,1996およびwww.probes.comより入手可能である)、例えばグリ
コシダーゼ、ホスファターゼ、ペプチダーゼおよびプロテアーゼの基質、または
(b)マイクロカプセル内の調節された反応の生成物(または基質)と特異的に結合ま
たは反応し、これにより、その識別を可能とするように、マイクロカプセルの光学特性の
変化を誘導する試薬の存在、
の何れによっても修飾できる。
【0135】
標的の活性をモジュレートするものを得るために化合物のライブラリをスクリーニング
するための広範な試験法は、光学特性の変化を検出することに基づいており、本発明に従
って化合物をスクリーニングするために使用できる。このような試験は当業者に周知であ
る(例えばHaugland,1996およびwww.probes.com参照)。
【0136】
あるいは、選択は同じマイクロカプセル内で起こるその後の反応に第1の反応をカップ
リングすることにより間接的に実施してよい。これを行うには2通りの一般的な方法があ
る。第1に第1の反応の生成物を、第1の反応の基質とは反応しない分子と反応させるか
結合させる。第2に、カップリングされた反応は第1の反応の生成物の存在下にのみ進行
するようにする。その後、調節化合物は、第2の反応の生成物または基質の特性により識
別できる。
【0137】
あるいは、選択すべき反応の生成物は第2の酵素触媒反応の基質またはコファクターで
あってよい。第2の反応を触媒する酵素はマイクロカプセル化よりも前に反応混合物に取
り込ませることができる。第1の反応が進行する場合のみ、カップリングされた酵素は識
別可能な生成物を生成することになる。
【0138】
カップリングのこの概念は前の反応の生成物を基質として各々が使用する複数の酵素を
取り込むために調整することができる。これにより固定化された基質とは反応しない酵素
の調節物質の選択が可能になる。1つの反応の生成物が選択可能な生成物をもたらす第2
の反応または反応のシリーズのための触媒またはコファクターである場合、シグナル増幅
により増強された感度を得るように設計することもできる(例えばJohannsson,1991;Johan
nsson and Bates,1988参照)。更にまた、酵素カスケード系は酵素の活性化物質の生産ま
たは酵素阻害剤の破壊に基づくこともできる(Mize et al.,1989参照)。カップリングはま
た、同じ生成物を生成する酵素の全体の群に対して共通のスクリーニング系を使用でき、
複雑な多工程の化学的変換および経路の調節の選択を可能にするという利点も有する。
【0139】
別の実施形態においては、標的そのものが酵素である場合、または、標的が酵素的であ
る生化学的過程を調節する場合、各マイクロカプセルにあのマイクロビーズは酵素的反応
のための基質でコーティングしてよい。調節化合物は、基質が生成物に変換される程度を
決定する。反応終了時、触媒された反応の生成物にマイクロビーズを物理的に連結する。
マイクロカプセルを合わせて反応体をプールすると活性化化合物でコーティングされたマ
イクロビーズは生成物に特異的な任意の性質により識別できる。阻害剤が望まれる場合は
、調節された反応の基質に特異的な化学的特性があるものを選択できる。
【0140】
更にまた、基質はマイクロビーズに結合しないことが望ましい場合もある。この場合、
基質は光活性化のような自体の活性化のための別の工程を要する不活性の「タグ」を含有
するであろう(例えば「ケージ化」ビオチン類縁体(Pirrung and Huang,1996;Sundberg e
t al.,1995)。基質から生成物への変換の後、「タグ」は活性化され、「タグ付け」され
た基質および/または生成物はマイクロビーズに結合したタグ結合分子(例えばアビジン
またはストレプトアビジン)に結合する。従って、「タグ」を介して核酸に結合した生成
物に対する基質の比は溶液中の基質および生成物の比を反映するものとなる。ケージ化ビ
オチンでタグ付けされた基質はマイクロカプセル中のコンパートメント化に基づく操作法
を用いたホスホトリエステラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子の選択のために使
用されている(Griffiths and Tawfik,2003)。ホスホトリエステラーゼ基質は活性酵素分
子を含有するマイクロカプセル内の溶液中で加水分解され、反応が終了した後、ケージン
グ基を放射線照射により放出させ、酵素をコードする遺伝子が結合したマイクロビーズに
ビオチン部分を介して生成物が結合できるようにされている。
【0141】
マイクロビーズおよびマイクロカプセル内の内容物が混合された後、適宜生成物または
基質に対して特異的に結合する分子(例えば抗体)を用いたアフィニティー精製により調
節物質でコーティングされたマイクロビーズを選択できる。
【0142】
別の実施形態においては、本発明によると、共通のコンパートメント1つ以上内にマイ
クロカプセルをプールした後にマイクロビーズを分析する方法が提供される。調節化合物
でコーティングしたマイクロビーズはマイクロビーズの光学特性の変化を用いて識別でき
る。生成物(または基質)が結合したマイクロビーズの光学特性は、
(1)例えば下記の理由により、基質−マイクロビーズ複合体では検出されない特徴的な
光学特性を有する生成物−マイクロビーズ複合体;
(a)異なる光学特性を有する基質および生成物(多くの蛍光発生酵素基質は例えばHa
ugland,1996およびwww.probes.comより入手可能である)、例えばグリコシダーゼ、ホス
ファターゼ、ペプチダーゼおよびプロテアーゼの基質、または、
(b)同じ光学特性を有する基質および生成物、ただし、基質ではなく生成物のみがマ
イクロビーズと結合または反応するもの;
(2)生成物(または基質)と特異的に結合または反応し、これにより、その識別を可能
とするマイクロビーズの光学特性の変化を誘導する試薬の添加(これらの試薬はマイクロ
カプセルの破壊およびマイクロビーズのプールの前または後に添加できる)。その試薬は

(a)基質および生成物の両方がマイクロビーズに結合する場合は、基質ではなく生成
物のみ(またはその逆)に特異的に結合または特異的に反応するか、または、
(b)基質ではなく生成物のみがマイクロビーズに結合または反応する(またはその逆
)場合に、任意選択的に基質および生成物の両方に結合する;
の何れによっても修飾できる。
【0143】
このシナリオにおいて、基質(または基質の1つ)はマイクロビーズには連結されてい
ないが分子「タグ」(例えばビオチン、DIGまたはDNPまたは蛍光基)を有する各マ
イクロカプセル内に存在できる。調節された酵素が基質を生成物に変換する場合、生成物
は「タグ」を保有し、その後生成物特異的抗体によりマイクロカプセル内で捕獲される。
全ての反応が停止しマイクロカプセルが合わせられた時点で、これらのマイクロビーズは
「タグ付け」され、例えば「タグ」が蛍光基である場合は、変化した光学特性を既に有し
てもよい。あるいは、「タグ付け」されたマイクロビーズの光学特性の変化は「タグ」(
例えば蛍光標識アビジン/ストレプトアビジン、蛍光性の抗「タグ」抗体または第2の蛍
光標識抗体により検出できる非蛍光の抗「タグ」抗体)に結合する蛍光標識されたリガン
ドを添加することにより誘導できる。
【0144】
((iv)化合物の特異性/選択性のスクリーニング)
特定の標的に対する特異性または選択性を有するが他のものに対しては有さない化合物
は、1つの基質を用いた反応の調節に関する積極的スクリーンまたは別の基質との反応の
調節に関する消極的スクリーンを実施することにより特異的に識別できる。例えば、2種
の異なる標的酵素に特異的な2種の基質を各々異なる蛍光発生部分で標識する。各標的酵
素は異なる蛍光スペクトルを有する生成物の生成を触媒し、2種の標的に対する化合物の
特異性に応じてマイクロカプセルの異なる光学特性をもたらす。
【0145】
((v)細胞を使用するスクリーニング)
現在の薬剤発見の状況においては、有効化された組み換え標的がインビトロの高スルー
プットスクリーニング(HTS)試験の根拠を形成している。しかしながら単離されたタ
ンパク質は複雑な生物学的系の代表とはみなされず;従って、細胞に基づく系は、インタ
クトな生物学的系において化合物の活性のより高い信頼性をもたらす。薬剤に関する広範
な細胞系試験が当業者に知られている。細胞は、油中水エマルジョンの水性微小液滴のよ
うなマイクロカプセル内にコンパートメント化できる(Ghadessy,2000)。標的に対する化
合物の作用は、化合物と共にマイクロカプセル内に細胞をコンパートメント化すること、
および、適切な細胞系試験を用いて細胞に対して所望の作用を有する化合物を含有するコ
ンパートメントを識別することにより測定することができる。フッ化炭素中水のエマルジ
ョンの使用は特に好ましく、フッ化炭素の高い気体溶解能が呼吸ガスの交換を支援でき、
細胞培養系に有利であることが報告されている(Lowe,2002)。
【0146】
((vi)フローサイトメトリー)
本発明の好ましい実施形態においては、マイクロカプセルまたはマイクロビーズをフロ
ーサイトメトリーにより分析および任意選択的に分類する。マイクロカプセルの多くのフ
ォーマットをフローサイトメトリーを用いておよび任意選択的に直接分類できる。マイク
ロカプセルの一部のフォーマットは分析または分類の前にマイクロカプセルを別途処理す
ることを必要とする場合がある。例えば油中水エマルジョンはフローサイトメトリーによ
る分析を容易にするために水中油中水のダブルエマルジョンに変換できる(Bernath et al
.,2004)。多重エマルジョンは単純な一次油中水(または水中油)エマルジョンを再乳化
して水中油中水(または油中水中油)エマルジョンとすることにより製造される(Davis a
nd Walker,1987)。
【0147】
高度に単分散したマイクロカプセルは微小流体技術を用いて製造できる。例えば多分散
度3%未満の油中水エマルジョンは、油の共流動ストリーム内の液滴の破壊により産生で
きる(Umbanhowar,2000)。微小流体システムはまた微小流体チャンネル内の油のストリー
ム中に分散された水性の微小液滴の層流のためにも使用できる(Thorsen,2001)。これによ
り微小液滴の流動の分析および任意選択的に流動の分類のための微小流体装置の構築が可
能となる(Fu,2002)。
【0148】
種々の光学特性を分析のため、および、分類をトリガーするために使用でき、例えば光
散乱(Kerker,1983)および蛍光分極(Rolland et al.,1985)が挙げられる。高度に好ましい
実施形態においては、マイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学特性の差は蛍光の差
であり、必要に応じて、マイクロカプセルまたはマイクロビーズは蛍光活性化細胞ソータ
ー(Norman,1980;Mackenzie and Pinder,1986)または同様の装置を用いて分類する。フロ
ーサイトメトリーは下記の一連の利点を有する。
【0149】
(1)信頼できる製造元(例えばBecton-Dickinson,Coulter,Cytomation)の市販の蛍光
活性化細胞分類装置により100,000マイクロカプセルまたはマイクロビーズs-1までの分
析および分類が可能である。
【0150】
(2)各マイクロカプセルまたはマイクロビーズから生じる蛍光シグナルは存在する蛍
光分子の数に厳格に対応している。マイクロカプセルまたはマイクロビーズ当たり僅か数
百の蛍光分子でも定量的に検出できる。
【0151】
(3)蛍光検出器のダイナミックレンジが広い(典型的には4対数単位)ことにより、
分類の操作法の厳密性を容易に設定でき、これにより、原料プールから至適数量のマイク
ロカプセルまたはマイクロビーズを回収できる(ゲートは蛍光の僅かな差を有するマイク
ロカプセルまたはマイクロビーズを分離するか、蛍光の大きな差を有するマイクロカプセ
ルまたはマイクロビーズを分離するのみとするか、実施する選択に応じて設定できる)。
【0152】
(4)市販の蛍光活性化細胞分類装置は複数の波長において同時に励起および検出を実
施でき(Shapiro,1995)、これにより、2〜13(またはそれ以上)の蛍光マーカーによる
マイクロカプセルまたはマイクロビーズの標識をモニタリングすることにより積極的およ
び消極的な選択を同時に実施でき、例えば2種の交互の標的に対する基質を異なる蛍光タ
グで標識する場合、マイクロカプセルまたはマイクロビーズは調節される標的に応じて異
なる蛍光団で標識できる。
【0153】
マイクロカプセルまたはマイクロビーズを光学的にタグ付けする場合は、フローサイト
メトリーを用いてマイクロカプセル内に存在するまたはマイクロビーズ上にコーティング
された化合物を識別することもできる(後述を参照)。光学的タグ付けはマイクロカプセ
ル内の化合物の濃度(1段階より多い濃度を単一の実験で使用する場合)またはマイクロ
ビーズ上にコーティングされた化合物の分子の数(1段階より多いコーティング密度を単
一の実験で使用する場合)を識別するためにも使用できる。更にまた、光学的タグ付けは
、マイクロカプセル内の標的を識別するためにも使用できる(1種より多い標的を単一の
実験で使用する場合)。この分析はマイクロビーズを含有するマイクロカプセルの分類の
後、または、マイクロビーズの分類の後に、活性の測定と同時に実施できる。
【0154】
((vii)マイクロカプセルの識別および分類)
本発明は、使用する分類技術により可能となるインタクトのマイクロカプセルの識別お
よび任意選択的に分類を提供する。マイクロカプセルは、所望の化合物により誘導される
変化がマイクロカプセルの表面で発生または顕在化するか、または、マイクロカプセルの
外部から検出される場合に、そのまま識別され、任意選択的に分類することができる。変
化は、化合物の直接の作用によるか、または、うち1つ以上が所望の活性を有する化合物
を使用する一連の反応が変化をもたらすような間接的なものにより、誘導されてよい。例
えば、マイクロカプセルが膜マイクロカプセルである場合、標的を含む生化学的系の化合
物がその表面にディスプレイされ、これによりマイクロカプセル内のマイクロビーズ上の
化合物により調節される生化学的系の変化を検出できる試薬に接触可能となるようにマイ
クロカプセルを構成させてよい。
【0155】
しかしながら本発明の好ましい態様においては、マイクロカプセルの識別および任意選
択的に分類は、マイクロカプセルの光学特性、例えばその吸収または発光の特性の変化、
例えばマイクロカプセルに伴う吸光度、ルミネセンス、燐光または蛍光の変化をもたらす
反応から生じるマイクロカプセルの光学特性の改変に依存している。このような特性の全
ては「光学的」という用語に包含される。そのような場合、マイクロカプセルは識別され
、任意選択的にルミネセンス、蛍光または燐光により活性化された分類により分類できる
。高度に好ましい実施形態においては、フローサイトメトリーを用いることにより、マイ
クロカプセル内の蛍光分子の生成をもたらす所望の活性を有する化合物を含有するマイク
ロカプセルを分析および任意選択的に分類する。
【0156】
別の実施形態においては、マイクロカプセルの蛍光の変化は、それが識別されれば、コ
ンパートメント内のマイクロビーズの修飾をトリガーするのに用いられる。本発明の好ま
しい態様において、マイクロカプセルの識別はマイクロカプセル内部のルミネセンス、燐
光または蛍光をもたらす反応から生じるマイクロカプセルの光学特性の変化に依存してい
る。マイクロカプセル内のマイクロビーズの修飾は、ルミネセンス、燐光または蛍光の識
別によりトリガーされる。例えば、ルミネセンス、燐光または蛍光の識別はマイクロビー
ズまたはそれに結合している分子の修飾をもたらす光子(または他の粒子または波動)に
対するコンパートメントの衝突をトリガーすることができる。同様の操作法が細胞の急速
分類に関して以前に記載されている(Keij et al.,1994)。マイクロビーズの修飾は、例え
ばマイクロビーズへの光不安定性保護基でケージ化された分子「タグ」のカップリングか
ら生じるものであってよく、適切な波長の光子との衝突はケージの除去をもたらす。その
後、全てのマイクロカプセルを合わせ、マイクロビーズを1つの環境内に共にプールする
。所望の活性を示す化合物でコーティングされたマイクロビーズは「タグ」に特異的に結
合するか特異的に反応する分子を用いてアフィニティー精製により選択できる。
【0157】
〔(C)化合物ライブラリ〕
((i)一次化合物のライブラリ)
ライブラリは種々の市販の原料から得ることができる。ライブラリ内の化合物は当業者
の周知の種々の方法により製造できる。任意選択的に、化合物ライブラリは空間的に分割
されたパラレル合成を用いた、または、スプリット合成を用いたコンビナトリアル合成に
より製造でき、任意選択的に1ビーズ1化合物のライブラリを生成させる。任意選択的に
、化合物はビーズ上で合成できる。これらのビーズは直接マイクロカプセル内にコンパー
トメント化するかコンパートメント化の前に化合物を放出させることができる。
【0158】
好ましくは、化合物の僅か1種のみであるが、その複数のコピーを各マイクロカプセル
内に存在させる。
【0159】
任意選択的に、化合物は当業者の知る種々の手段により共有結合的に、または、非共有
結合的にマイクロビーズに連結できる(例えばHermanson,1996参照)。
【0160】
マイクロビーズは広範な種類の機能表面基、即ちアルデヒド、脂肪族アミン、アミド、
芳香族アミン、カルボン酸、クロロメチル、エポキシ、ヒドラジド、ヒドロキシル、スル
ホネートおよびトシルにより付与される疎水性表面(例えばプレーンポリスチレン)から
極めて親水性の表面まで、種々の表面化学のものが入手可能である。官能基はマイクロビ
ーズ表面への化合物の安定または過逆的な結合のための当業者の周知の広範な共有結合反
応を可能とする。
【0161】
好ましくは化合物は切断可能なリンカーを介してマイクロビーズに結合する。このよう
な種々のリンカーは当業者の知る通りであり(例えばGordon and Balasubramanian,1999参
照)、例えば光化学的に切断できるリンカー、および、pHの変更により(例えばイミン
およびアシルヒドラゾン)、酸化還元特性を調節することにより(例えばジスルフィド)
または外部触媒を用いながら(例えば交差複分解およびアミド転換)制御することができ
る可逆共有結合が挙げられる。
【0162】
好ましくは、化合物の僅か1種のみであるが、その複数のコピーを各ビーズ内に結合さ
せる。
【0163】
((ii)二次化合物ライブラリ)
二次化合物ライブラリはマイクロカプセル内の一次化合物間の反応により産生される。
二次化合物は当業者の周知の種々の2成分および多成分の反応により産生できる(Armstro
ng et al.,1996;Domling,2002;Domling and Ugi,2000;Ramstrom and Lehn,2002)。
【0164】
2成分反応により二次化合物ライブラリを形成するためには、多くのコンパートメント
が化合物2つ以上を含有するように、マイクロカプセル内に化合物2セットをコンパート
メント化する。好ましくは、マイクロカプセル当たりの化合物の最頻数は2である。好ま
しくは、マイクロカプセルは化合物の各セットに由来する化合物の少なくとも1種を含有
する。好ましくは、マイクロカプセルは化合物の各セットに由来する化合物1種を含有す
る。二次化合物は異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応により形成される。
二次化合物は一次化合物の間の共有結合または非共有結合反応の結果であってよい。
【0165】
当業者の知る種々の化学的方法が2成分反応における二次化合物の形成に適している。
例えばpHの変更により(例えばイミンおよびアシルヒドラゾン)、酸化還元特性を調節
することにより(例えばジスルフィド)または外部触媒を用いながら(例えば交差複分解
およびアミド転換)制御することができる可逆共有結合を用いることができる(Ramstrom
and Lehn,2002)。
【0166】
別の実施形態においては、方法は3成分、4成分およびより高次の多成分の反応を用い
て二次化合物ライブラリを生成できる。3、4またはそれ以上のセットの化合物(適宜)
をマイクロカプセル内にコンパートメント化する。化合物は多くのコンパートメント化が
複数の化合物を含有するようにマイクロカプセル内にコンパートメント化する。好ましく
は、マイクロカプセル当たりの化合物の最頻数は反応における成分の数と等しい。好まし
くは、マイクロカプセルは化合物の各セットに由来する化合物の少なくとも1種を含有す
る。好ましくは、マイクロカプセルは化合物の各セットに由来する化合物1種を含有する
。二次化合物は異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応により形成される。二
次化合物は一次化合物の間の共有結合または非共有結合反応の結果であってよい。
【0167】
適当な多成分反応の例はStrecker、Hantzsch、Biginelli、Mannich、Passerini、Buche
rer-BergsおよびPauson-Khandの3成分反応およびUgiの4成分反応である(Armstrong
et al.,1996;Domling,2002;Domling and Ugi,2000)。
【0168】
二次化合物ライブラリは全ての二次化合物に共通であるスカフォールド分子を用いて構
築してもよい(Ramstrom and Lehn,2002)。このスカフォールド分子は他の一次化合物と共
にマイクロカプセル内にコンパートメント化してよい。
【0169】
別の実施形態において、2成分反応により二次化合物ライブラリを形成するためには、
化合物2セットをマイクロビーズに結合することにより、好ましくは、マイクロビーズ当
たり僅か1種の分子のみを得る。多くのコンパートメントが2以上のマイクロビーズを含
有するようにマイクロカプセル内にマイクロビーズをコンパートメント化する。好ましく
は、、マイクロカプセル当たりのビーズの最頻数は2である。2セットの少なくとも1つ
を含む化合物をマイクロビーズから放出する。二次化合物は異なるセットの一次化合物間
の化学反応により形成される。二次化合物は一次化合物の間の共有結合または非共有結合
反応の結果であってよい。
【0170】
別の実施形態においては、方法は3成分、4成分およびより高次の多成分の反応を用い
て二次化合物ライブラリを産生できる。3、4またはそれ以上のセットの化合物(適宜)
をマイクロビーズに結合することにより、好ましくはマイクロビーズ当たり単一の種類の
分子のみを得る。マイクロビーズは多くのコンパートメント化が複数のマイクロビーズを
含有するようにマイクロカプセル内にコンパートメント化する。好ましくは、マイクロカ
プセル当たりのビーズの最頻数は反応における成分の数と等しい。セットの全てまたは1
つの何れかを含む化合物がマイクロビーズから放出される。二次化合物は異なるセットに
由来する一次化合物の間の化学反応により形成される。二次化合物は一次化合物の間の共
有結合または非共有結合反応の結果であってよい。
【0171】
好ましくは、二次化合物を形成するために用いられるものと同じ可逆的共有結合を用い
てマイクロビーズに一次化合物をカップリングできる。
【0172】
二次化合物ライブラリは、二次化合物の全てに共通のスカフォールド分子を用いて構築
される(Ramstrom and Lehn,2002)。このスカフォールド分子はマイクロビーズと共にマイ
クロカプセル内にコンパートメント化してよい。
【0173】
〔(D)化合物の識別〕
マイクロカプセル内またはマイクロビーズ上の化合物は種々の方法で識別できる。識別
されたマイクロカプセルを分類(例えば蛍光活性化細胞ソーター:FACSを使用)する
場合、化合物は例えば質量スペクトル分析による直接の分析により識別できる。選択(例
えばアフィニティー精製による)または分類(例えばFACSを使用)の結果として単離
されたビーズに結合したままで化合物が残存する場合、それらはまた例えば質量スペクト
ル分析による直接の分析により識別できる。マイクロカプセルまたはビーズは当業者の周
知の種々の手段によりタグ付けでき、そのタグを用いてビーズに結合した化合物を識別す
る(Czarnik,1997)。化合物をコード化する化学的、スペクトル分析的、電子的および物理
的な方法は全て使用してよい。好ましい実施形態においては、マイクロカプセルまたはビ
ーズは異なる光学特性を有し、これにより光学的にコード化される。好ましい実施形態に
おいては、コード化は異なる蛍光特性を有するマイクロカプセルまたはビーズに基づく。
高度に好ましい実施形態においては、マイクロカプセルまたはビーズはマイクロカプセル
またはビーズ内に異なる濃度で存在する蛍光量子ドットを用いてコード化される(Han,200
1)。微小流体チャンネル内を順序だった配列として流動しているマイクロカプセルはまた
マイクロカプセルのストリーム内のその配列によりコード化(全体的または部分的)でき
る(位置コード化)。
【0174】
好ましくは、各化合物は異なる濃度(典型的にはmM〜nMの範囲の濃度)で異なるマ
イクロカプセル内に存在することにより、用量応答曲線の作成を可能とする。これは、例
えば阻害化合物の阻害定数(Ki)の測定を可能にする。マイクロカプセル内の化合物の
濃度は例えば上記したマイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学的コード化または位
置コード化により測定できる。
【0175】
〔(E)標的の識別〕
好ましくは、各マイクロカプセルが同じ標的の複数のコピーを含有するように複数の異
なる標的をマイクロカプセル内にコンパートメント化できる。例えば複数のプロテインキ
ナーゼ、または単一の標的の複数の多形変異体をコンパートメント化することにより化合
物の特異性を測定可能にできる。マイクロカプセル内の標的の特性(identity)は、例えば
上記したマイクロカプセルまたはマイクロビーズの光学的コード化または位置コード化に
より測定できる。
【0176】
別の様式において表現すれば、
(a)多くのコンパートメント化が一次化合物2つ以上を含むように標的と共にマイク
ロカプセル内に一次化合物のセット2つ以上をコンパートメント化するステップ;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップ;および、
(c)反応して標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成する
一次化合物のサブセットを識別するステップ;
を含む、生化学的系の標的成分に結合するか、または標的の活性をモジュレートする化
合物の合成および識別のための方法が提供される。
【0177】
更にまた、
(1)マイクロビーズ上に一次化合物2セット以上を結合させるステップ;
(2)多くのコンパートメントがマイクロビーズ2つ以上を含有するように標的と共に
マイクロカプセル内にマイクロビーズをコンパートメント化するステップ;
(3)マイクロビーズから一次化合物を放出させるステップ;
(4)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップ;および、
(5)反応して標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成する
一次化合物のサブセットを識別するステップ;
を含む、生化学的系の標的成分に結合するか、または標的の活性をモジュレートする化
合物の合成および識別のための方法が提供される。
【0178】
一次化合物が同じコンパートメント内の他の一次化合物のみならずコンパートメント内
の他のマイクロビーズとも反応する場合、共に反応して二次化合物を形成する一次化合物
は選択または分類の結果として単離されたマイクロビーズ上に存在する化合物の直接の分
析により識別できる。例えば、コンパートメント内に放出される場合に一次化合物がジス
ルフィド結合を介してビーズに連結されている場合、一次化合物は二次化合物を形成する
ために相互に、そして、ビーズ上のスルフィドリル基と反応することになる。従って、ビ
ーズ2個を共コンパートメント化する場合、各ビーズは最終的には共に一次化合物を担持
することになる。これらのビーズを単離した後、反応して二次化合物を形成する一次化合
物の両者が識別できる。
【0179】
本発明の種々の態様および実施形態を以下の実施例において説明する。詳細の変更は本
発明の範囲を逸脱することなく行えるものとする。
【実施例】
【0180】
[実施例1:酵素タンパク質チロシンホスファターゼ1B(PTP1B)の阻害剤のスク
リーニング]
PTP1Bはインスリンおよびレプチンのシグナル伝達の負の調節物質である。インス
リンおよびレプチンに対する耐性はII型真性糖尿病および肥満の指標であり、従ってPT
P1Bは糖尿病および肥満の治療のための魅力的な薬剤標的である(Johnson et al.,2002
)。2種の油中水エマルジョンを以下の通り作成した。
【0181】
デカン中の1%(w/v)Span60および1%(w/v)コレステロールの溶液(
全てSigma Aldrichから)は、デカン7.84mlにSpan60を80mg、コレステロ
ールを80mg溶解することにより製造する。デカンを45℃に加熱し、界面活性剤およ
びコレステロールの完全な可溶化を可能とする。界面活性剤/デカンの溶液を200μl
のバッチに渡り分割し、37℃のブロックヒーター中に入れる。
【0182】
手操作押し出し装置(Mini extruder,Abanti Polar Lipids Inc,Alabaster,AL,USA)を製
造元の取扱説明書に従って組み立てる。押し出しのためには、平均孔径14μmのシング
ルの19mmのTrack-Etchポリカーボネートフィルター(Whatman Nucleopore,Whatman,Ma
idstone,UK)をミニ押出機の内部に装着する。2本の気密性1mlハミルトンシリンジ(Ga
stight#1001、Hamilton Co,Reno,Nevada,USA)を押し出しに使用する。デカン1mlをに
ハミルトンシリンジ1本にロードしてシリンジをミニ押出機の一端に置き押出機の他方上
の空のハミルトンシリンジ内にフィルターを経由してそれを押し出すことにより、デカン
3×1mlで押出機を前洗浄した。
【0183】
第1のエマルジョンは、PTP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES、p
H7.4、125mM NaCl、10%グリセロール、1mM EDTA)(Doman et
al.,2002)中のビス−ジフルオロメチレンホスホネートを有しており公知のPTP1B阻
害剤である100μM化合物2(図1)50μl(Johnson et al.,2002)、5mU/ml
の標的酵素(ヒト組み換えPTP1B、残基1〜322;Biomol Research Laboratories
,Inc.)、蛍光発生PTP1B基質6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルホ
スホネート(DiFMUP)(Molecular Probes)および100μMテキサスレッド(Sigm
a;励起/発光最大595/615nm;赤色蛍光)をハミルトンシリンジの1本に、予
備加熱したデカン/界面活性剤混合物を他のハミルトンシリンジにロードすることにより
作成する。シリンジを押出機のフィルターホルダーの両側の開口部内に装着する。化合物
混合物を強制的にフィルターホルダーを通してデカン/界面活性剤混合物の入った別のシ
リンジ内に入れ、直接強制的に元のシリンジに戻すことにより、押し出しの1往復を完了
する。合計で7.5往復の押し出しを完了する。充填されたシリンジを押出機から取り外
し、1.7ml Axygen試験管内にあける(#MCT-175-C、Axygen Scientific,Inc.,Union
City,CA,USA)。
【0184】
第2の油中水エマルジョンは化合物2の代わりにPTP1B阻害剤ではない化合物であ
る100μMヒドロケイヒ酸(Aldrich)を、テキサスレッドの代わりに100μMカルセ
イン(Sigma;励起/発光最大470/509nm;緑色蛍光)を含有する以外は上記エ
マルジョンと同一に作成する。
【0185】
1:1000〜1:1(化合物2エマルジョン:ヒドロケイヒ酸エマルジョン)の範囲
の比で2種のエマルジョンを振とうすることにより混合し、30分間37℃でインキュベ
ートする。阻害剤は脱ホスホリル化生成物(DiFMU;励起/発光最大358/452
nm;青色蛍光)に変換される非蛍光基質(DiFMUP)の量を低減する。
【0186】
次に油中水エマルジョンを以下の通り水中油中水ダブルエマルジョンに変換する。押出
機(上記参照)を分解し、石鹸および逆浸透水で十分洗浄し、再度組み立てる。平均孔径
8μmのシングルの19mmTrack-Etchポリカーボネートフィルターを装着する。押出機
をリン酸緩衝食塩水(PBS)3×1mlで予備洗浄する。0.5%(w/v)Twee
n80(Sigma Aldrich)を含有するPBS 750μlを1mlの気密性ハミルトンシリ
ンジにロードし、押出機に装着する。油中水エマルジョン250μlを別の1mlハミル
トンシリンジにロードし、押出機に装着する。エマルジョンを強制的にフィルターを通し
てPBS/0.5%Tween80の入った別のシリンジ内に入れ、即座に強制的に元の
シリンジに戻すことにより、押し出しの1サイクルを完了する。合計で4.5サイクルの
押し出しを完了する。充填されたシリンジを押出機から取り外し、1.7mlAxygen試験
管内にあける。形成された水中油中水のダブルエマルジョンを氷上に置く。
【0187】
次にダブルエマルジョンをMoFlo(Cytomation)フローサイトメトリーを用いた多色フロ
ーサイトメトリーにより分析する。主に、緑色蛍光を示す(ヒドロケイヒ酸を含有する)
マイクロカプセルがPTP1BによるDiFMUPの脱ホスホリル化により青色蛍光も示
す。主に、赤色蛍光を示す(化合物2を含有する)マイクロカプセルがPTP1Bの阻害
により青色蛍光は殆どまたは全く示さない。
【0188】
[実施例2]
2種の水性混合物を氷上(反応を防止するため)において作成する。第1の混合物はP
TP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES、pH7.4、125mM Na
Cl、10%グリセロール、1mM EDTA)(Doman et al.,2002)中のビス−ジフル
オロメチレンホスホネートを有しており知られたPTP1B阻害剤である100μM化合
物2(図1)(Johnson et al.,2002)、5mU/mlの標的酵素(ヒト組み換えPTP1
B、残基1〜322;Biomol Research Laboratories,Inc.)、蛍光発生PTP1B基質
6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルホスホネート(DiFMUP)(Molec
ular Probes)および100μMテキサスレッド(Sigma;励起/発光最大595/615
nm;赤色蛍光)を含有する。第2の混合物は化合物2の代わりにPTP1B阻害剤では
ない化合物である100μMヒドロケイヒ酸(Aldrich)を、テキサスレッドの代わりに1
00μMカルセイン(Sigma;励起/発光最大470/509nm;緑色蛍光)を含有す
る以外は上記と同一に作成する。
【0189】
化合物混合物の各々の50μlを順次、実施例1に記載したとおり作成し37℃に保持
したデカン中1%(w/v)Span60および1%(w/v)コレステロールの溶液に
添加し、その間5mmの分散ツールでUltra-TurraxT8ホモゲナイザー(IKA)を用いながら2
5,000r.p.mでホモゲナイズする。ホモゲナイズは第2の小分量を添加した後3分間継続す
る。次に生成した粗野なエマルジョンを実施例1の通り押し出し、微小な油中水エマルジ
ョンを作成し、30分間37℃でインキュベートする。阻害剤は脱ホスホリル化生成物(
DiFMU;励起/発光最大358/452nm;青色蛍光)に変換される非蛍光基質(
DiFMUP)の量を低減する。次に油中水エマルジョンを水中油中水ダブルエマルジョ
ンに変換し、実施例1に記載の通り多色フローサイトメトリーで分析する。主に、緑色蛍
光を示す(ヒドロケイヒ酸を含有する)マイクロカプセルがPTP1BによるDiFMU
Pの脱ホスホリル化により青色蛍光も示す。主に、赤色蛍光を示す(化合物2を含有する
)マイクロカプセルがPTP1Bの阻害により青色蛍光は殆どまたは全く示さない。
【0190】
[実施例3:化合物ライブラリからのPTP1B阻害剤のスクリーニング]
実施例1に記載の通り100種の油中水エマルジョンを氷上(反応を防止するため)に
おいて作成する。第1のエマルジョンは、ビス−ジフルオロメチレンホスホネートを有し
ており知られたPTP1B阻害剤である100μM化合物2(図1)(Johnson et al.,20
02)、5mU/mlの標的酵素(ヒト組み換えPTP1B、残基1〜322;Biomol Rese
arch Laboratories,Inc.)、蛍光発生PTP1B基質6,8−ジフルオロ−4−メチルウ
ンベリフェリルホスホネート(DiFMUP)(Molecular Probes)および発光最大585
nm、655nmおよび705nmを有する予備設定された比のQdot(商標)ストレ
プトアビジンコンジュゲート(Quantum Dot Corporation,Hayward CA)の混合物をPTP1
B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES、pH7.4、125mM NaCl、
10%グリセロール、1mM EDTA)(Doman et al.,2002)に分散することにより作
成する。99種の他の油中水エマルジョンは、化合物2の代わりにカルボン酸有機ビルデ
ィングブロックライブラリ(Aldrich)由来の99種のカルボン酸のうちの1つ、および、
発光最大585nm、655nmおよび705nmを有する異なる比のQdot(商標)
ストレプトアビジンコンジュゲートを各々が含有する以外は上記と同一である。全てのエ
マルジョンにおいて、705nmQdot(商標)ストレプトアビジンコンジュゲートの
濃度は100nMであり、585nmおよび655nmQdot(商標)ストレプトアビ
ジンコンジュゲートの濃度は0、11、22、33、44、55、66、77、88また
は100nMの何れかとする。従って、100(10×10)通りのQdot(商標)ス
トレプトアビジンコンジュゲートの濃度があることになり、これにより、705nm、5
85nmおよび655nmにおける蛍光の蛍光比を測定することにより読み取られる独特
の蛍光シグネチャーを各化合物を含有するマイクロカプセルが保有できるようになる。
【0191】
100種のエマルジョンを振とう攪拌により等しい比で混合し、温度を30分間25℃
まで上昇させる。阻害剤は脱ホスホリル化生成物(DiFMU;励起/発光最大358/45
2nm;青色蛍光)に変換される非蛍光基質(DiFMUP)の量を低減する。次に油中水エマル
ジョンを水中油中水ダブルエマルジョンに変換し、実施例1に記載の通り多色フローサイ
トメトリーで分析する。化合物2を含有するマイクロカプセルのQdot蛍光シグネチャ
ーのものを除き、主に、全てのマイクロカプセルはPTP1BによるDiFMUPの脱ホ
スホリル化により青色蛍光を示す。
【0192】
[実施例4:化合物ライブラリからのPTP1B阻害剤のスクリーニング]
100種の水性混合物を氷上(反応を防止するため)において作成する。第1の混合物
は、PTP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES、pH7.4、125mM
NaCl、10%グリセロール、1mM EDTA)(Doman et al.,2002)中のビス−
ジフルオロメチレンホスホネートを有しており知られたPTP1B阻害剤である100μ
M化合物2(図1)(Johnson et al.,2002)、5mU/mlの標的酵素(ヒト組み換えP
TP1B、残基1〜322;Biomol Research Laboratories,Inc.)、蛍光発生PTP1
B基質6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルホスホネート(DiFMUP)
(Molecular Probes)および発光最大585nm、655nmおよび705nmを有する予
備設定された比のQdot(商標)ストレプトアビジンコンジュゲート(Quantum Dot Cor
poration,Hayward CA)を含有する。99種の他の水性混合物は、化合物2の代わりにカル
ボン酸有機ビルディングブロックライブラリ(Aldrich)由来の99種のカルボン酸のうち
の1つ、および、発光最大585nm、655nmおよび705nmを有する異なる比の
Qdot(商標)ストレプトアビジンコンジュゲートを各々が含有する以外は上記と同一
である。全ての混合物において、705nmQdot(商標)ストレプトアビジンコンジ
ュゲートの濃度は100nMであり、585nmおよび655nmQdot(商標)スト
レプトアビジンコンジュゲートの濃度は0、11、22、33、44、55、66、77
、88または100nMの何れかとする。従って、100(10×10)通りのQdot
(商標)ストレプトアビジンコンジュゲートの濃度があることになり、これにより、70
5nm、585nmおよび655nmにおける蛍光の蛍光比を測定することにより読み取
られる独特の蛍光シグネチャーを各化合物を含有するマイクロカプセルが保有できるよう
になる。
【0193】
化合物混合物の各々0.5μlを順次、実施例1に記載したとおり作成し37℃に保持
したデカン中1%(w/v)Span60および1%(w/v)コレステロールの溶液に
添加し、その間5mmの分散ツールでUltra-TurraxT8ホモゲナイザー(IKA)を用いな
がら25,000r.p.mでホモゲナイズする。ホモゲナイズは第2の小分量を添加した後3分間
継続する。次に生成した粗野なエマルジョンを実施例1の通り押し出し、微小な油中水エ
マルジョンを作成し、30分間37℃でインキュベートする。阻害剤は脱ホスホリル化生
成物(DiFMU;励起/発光最大358/452nm;青色蛍光)に変換される非蛍光
基質(DiFMUP)の量を低減する。次に油中水エマルジョンを水中油中水ダブルエマ
ルジョンに変換し、実施例1に記載の通り多色フローサイトメトリーで分析する。化合物
2を含有するマイクロカプセルのQdot蛍光シグネチャーのものを除き、主に、全ての
マイクロカプセルはPTP1BによるDiFMUPの脱ホスホリル化により青色蛍光を示
す。
【0194】
[実施例5:微小流体システムにおけるマイクロカプセルを使用したPTP1B阻害剤の
スクリーニング]
微小チャンネルはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(McDonald and Whitesides
,2002)中の急速なフォトタイピングを用いて長方形の断面を有するように加工し、Song a
nd Ismagilov,2003に記載の通り疎水性を付与する。シリンジポンプを用いて流動を起こ
した(Harvard Apparatus PHD2000 Infusionポンプ)。水溶液については、取り外し可能
な27ゲージ針のついた50μlのハミルトンガスタイトシリンジ(1700シリーズ、
TLL)を30ゲージのテフロン(登録商標)チューブ(Weico Wire and Cable)と共に使
用した。キャリア流体に対しては、1mlハミルトンガスタイトシリンジ(1700シリ
ーズ、TLL)をハミルトンの1ハブを有する30ゲージのテフロン(登録商標)針と共
に使用した(Song and Ismagilov,2003)。キャリア流体はパーフルオロデカリン(PFD
)中9%(v/v)のC61124OHとする(Song et al.,2003)。全ての水溶性試薬
はPTP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES、pH7.4、125mM
NaCl、1mM EDTA)中に溶解した。
【0195】
50mU/mlの標的酵素(ヒト組み換えPTP1B、残基1〜322;Biomol Resea
rch Laboratories,Inc.)の溶液、および、a)ビス−ジフルオロメチレンホスホネート
を有しており知られたPTP1B阻害剤である100μM化合物2(図1)(Johnson et
al.,2002)またはb)PTP1B阻害剤ではない化合物である100μMヒドロケイヒ酸(
Aldrich)を不活性の中心ストリーム(25mM HEPES、pH7.4、125mM
NaCl、1mM EDTA)を有する2本の層流ストリームとしてのマイクロチャンネ
ル中を流動させることにより、これらを分離し、酵素と化合物が液滴マイクロカプセル形
成よりも前に接触することを防止する(Song et al.,2003)。これらの3ストリームを連続
的に水不混和性のフッ化炭素キャリア流体(PFD中9%(v/v)C61124OH
)中に注入する。水溶液用の導入チャンネルは50μm2の広さとし、PFD用チャンネ
ルは28μm幅とする。0.6:0.3、1.0:0.6、12.3:3.7、10:6
および20:6を含む種々のPFD/水の計量的流量(μ/分)を使用でき、得られる流
量はそれぞれ10、19、190、190および300mm/秒となる。チャンネルの全
幅を占有する水性マイクロカプセルはPFDストリーム中の液滴の破壊により形成する(S
ong et al.,2003)。化合物2またはヒドロケイヒ酸の何れかを含有するマイクロカプセル
は、化合物2およびヒドロケイヒ酸を含有するシリンジを用いた注入を切り替えながら行
うことにより形成できる。
【0196】
液滴形成地点のすぐ下流のチャンネルは1mmの距離に渡りピーク間の距離50μmで
旋廻している。これにより混乱移流によるマイクロカプセルの内容物の急速な混合が起こ
る(Song et al.,2003)。この地点の後、マイクロカプセルは長さ60cmのマイクロチャ
ンネルを経由して1分間まで流動する(これにより阻害剤の結合を可能とする)。次にこ
のマイクロチャンネルを上記した通り形成したPFD中9%(v/v)C61124
H中に水性マイクロカプセルを含有する60×50μm2マイクロチャンネルと合流させ
る。これらのより大きいマイクロカプセルは25mM HEPES、pH7.4、125
mM NaCl、1mM EDTA中の蛍光発生PTP1B基質6,8−ジフルオロ−4
−メチルウンベリフェリルホスホネート(DiFMUP)(Molecular Probes)を含有する
。マイクロチャンネルの間の注入の後、拡張した主チャンネルは100×50μm2であ
り、マイクロカプセルはチャンネルをブロックせず、大型のマイクロカプセル(DiFM
UPを含有)が小型のマイクロカプセル(PTP1Bおよび化合物を含有)と合体するま
で異なる速度で移動する(Song et al.,2003)。大型および小型のマイクロカプセルの生成
の頻度は、各大型マイクロカプセルが融合すべき小型マイクロカプセルを有するように、
等しくする。融合したマイクロカプセルは長さ60cmのマイクロチャンネルを経由して
2分間まで流動する。DiFMUP(励起/発光最大358/452nm;青色蛍光)の
生成によるマイクロカプセルの蛍光はエピ蛍光顕微鏡を用いて測定する。主に、青色蛍光
を示すマイクロカプセルがヒドロケイヒ酸を含有するものであり、化合物2を含有するマ
イクロカプセルはPTP1Bの阻害により低い蛍光を示す。
【0197】
[実施例6:マイクロビーズへの化合物ライブラリの結合]
表面上にカルボキシレート官能基を有する直径5.5μmのポリスチレンマイクロビー
ズはオレンジ色(585nm)および赤色(>650nm)の蛍光色素の厳密な比の取り
込みの結果として光学的にタグ付けされた形態で市販されている(www.luminexcorp.com)(
Fulton et al.,1997)。各々が独特の光学的シグネチャー(www.luminexcorp.com)を有する
このようなビーズ100個のセットを過剰なエチレンジアミンおよびEDC(塩酸1−エ
チル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(Pierce))でHermanson,1996
に記載の通り修飾し、表面に第1アミノ基を形成した。次に上記した通りEDCを用いて
アミド結合を形成することにより、光分解性のリンカー4−(4−ヒドロキシメチル−2
−メトキシ−5−ニトロフェノキシ)ブタン酸(NovaBiochem)(Holmes and Jones,1995)を
ビーズに結合させる。次に、リンカーアルコールと反応させることによりカルボン酸有機
ビルディングブロックライブラリ(Aldrich)由来の100種の異なるカルボン酸をビーズ
にカップリングさせてカルボキシレートエステルを形成し、100種の異なる光学的にタ
グ付けされたビーズの各々が異なるカルボン酸にカップリングし、そして各ビーズがカル
ボン酸〜106分子で誘導体化されるようにする。B100AP354nmUVランプ(
UVP)を用いて〜5cmの距離から氷上4分間照射することによりカルボン酸としてビ
ーズから化合物を放出させる。
【0198】
[実施例7:マイクロビーズに結合した化合物を用いた酵素タンパク質チロシンホスファ
ターゼ1B(PTP1B)の阻害剤のスクリーニング]
PTP1Bはインスリンおよびレプチンのシグナル伝達の負の調節物質である。インス
リンおよびレプチンに対する耐性はII型真性糖尿病および肥満の指標であり、従ってPT
P1Bは糖尿病および肥満の治療のための魅力的な薬剤標的である(Johnson et al.,2002
)。表面上にカルボキシレート官能基を有する直径5.5μmのポリスチレンマイクロビ
ーズはオレンジ色(585nm)および赤色(>650nm)の蛍光色素の厳密な比の取
り込みの結果として光学的にタグ付けされた形態で市販されている(www.luminexcorp.com
)(Fulton et al.,1997)。まず、マイクロビーズ上のカルボキシレート官能基を実施例6
の場合と同様にエチレンジアミンおよびEDCを用いて第1アミンに変換する。次にPT
P1Bのホスホペプチド基質であるウンデカペプチドEGFR988-998(DADEpYL
IPQQG)(Zhang et al.,1993)をEDCを用いて表面アミノ基を介してマイクロビー
ズの両方のセットにカップリングさせる。このペプチドはカルボキシレート−O−アリル
エステルを用いた側鎖カルボキシレート基上の直角保護を用いてSieber Amide樹脂(9−
Fmoc−アミノ−キサンテン−3−イルオキシ−Merrifield樹脂)(Novabiochem)上の
固相合成により作成する。テトラデカンジ酸からなるリンカーをN末端にカップリングし
、1%TFAを用いてビーズからペプチドを脱離させ、C末端アミドを有するペプチドを
得る。ペプチドをリンカーを介してビーズにカップリングさせ(EDC使用)、ビーズ当
たり〜105ペプチドを得る。次に実施例6に記載の通り光化学分解性リンカー4−(4
−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−5−ニトロフェノキシ)ブタン酸を結合することに
より残余の表面アミノ基を修飾する。次にペプチドの側鎖カルボキシレート上の保護基を
Pd(Ph34/CHCl3/HOAc/N−メチルモルホリンを用いて脱離させる。第
1のセットのマイクロビーズを知られたPTP1B阻害剤である化合物である3−(4−
ジフルオロホスホノメチルフェニル)プロパン酸(化合物1、図1)で誘導体化する(Joh
nson et al.,2002)。第1のセットのビーズとは別の光学的タグを有する第2のセットの
ビーズはPTP1B阻害剤ではない化合物であるヒドロケイヒ酸(Aldrich)で誘導体化す
る。各々の場合において、実施例6に記載の通り、化合物はリンカーアルコールと反応さ
せることによりカップリングしてカルボキシレートエステルを形成する。各マイクロビー
ズは〜106分子で誘導体化する(Fulton et al.,1997)。
【0199】
次にマイクロビーズを図2に示す方法を用いてスクリーンする。2セットのマイクロビ
ーズを1:100〜1:1(化合物1ビーズ:ヒドロケイヒ酸ビーズ)の範囲の比で混合
し、合計108マイクロビーズをPTP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPE
S、pH7.4、125mM NaCl、10%グリセロール、1mM EDTA)(Dom
an et al.,2002)中、氷上(反応を防止するため)で、10nMの濃度の標的酵素(ヒト
組み換えPTP1B、残基1〜322;Biomol Research Laboratories,Inc.)と混合す
る。次にシングルのビーズおよび標的酵素(PTP1B)を、油中水エマルジョンを形成
(やはり氷上)することによりマイクロカプセル内に共局在化させる。ビーズの濃度は大
部分のマイクロカプセルが1個または0個のビーズを含有するようにする。化合物を光化
学的(実施例6に記載)に放出させ、温度を25℃に上昇させる。阻害剤は生成物(脱ホ
スホリル化ペプチド)に変換される基質の量を低減する。エマルジョンを4℃に冷却し、
Griffiths and Tawfik,2003に記載の通り破壊して100μMバナジン酸塩中にいれ、反
応を停止させる(Harder et al.,1994)。製造元の取扱説明書に従って緑色(530nm)
蛍光色素フルオレセインイソチオシアネートで標識した抗基質(抗ホスホチロシン)抗体
(マウスモノクローナルIgG2bPY20,(Santa Cruz))で標識した後、FACScan(Bect
on-Dickinson)、FACScalibur(Becton-Dickinson)またはMoFlo(Cytomation)フローサイト
メトリーを用いて3色フローサイトメトリーによりビーズを分析し、阻害の程度およびビ
ーズ上の化合物を同時に測定する。主に、PTP1B阻害剤でコーティングされたマイク
ロビーズ上のみペプチドの脱ホスホリル化が観察され、他のマイクロビーズでは観察され
なかった。
【0200】
[実施例8:マイクロビーズに結合した化合物ライブラリからのPTP1B阻害剤のスク
リーニング]
表面上にカルボキシレート官能基を有し、各々がオレンジ色(585nm)および赤色
(>650nm)の蛍光色素の厳密な比の取り込み(Fulton et al.,1997)の結果として独
特の光学的シグネチャーを有する(www.luminexcorp.com)直径5.5μmのポリスチレン
マイクロビーズ100個のセットをPTP1Bのホスホペプチド基質であるウンデカペプ
チドEGFR988-998(DADEpYLIPQQG)(Zhang et al.,1993)および光化学的
に切断できるリンカーを介して各々結合した100種の異なるカルボン酸を用いて、実施
例7に記載の通り誘導体化する。これらのカルボン酸の1つは知られたPTP1B阻害剤
である化合物である3−(4−ジフルオロホスホノメチルフェニル)プロパン酸(化合物
1、図1)である(Johnson et al.,2002)。他の99種のカルボン酸は実施例6と同様に
カルボン酸有機ビルディングブロックライブラリ(Aldrich)由来である。次に100ビー
ズセットの各々の等しい数量を混合し、実施例7に記載の通りスクリーニングする。主に
、PTP1B阻害剤の3−(4−ジフルオロホスホノメチルフェニル)プロパン酸(化合
物1、図1)でコーティングされたマイクロビーズ上のみペプチドの脱ホスホリル化が観
察され、他の化合物でコーティングされたマイクロビーズでは観察されなかった。
【0201】
[実施例9:エマルジョンマイクロカプセル中の二次化合物の合成および微小流体システ
ム中のPTP1Bの阻害剤に関するスクリーニング]
微小チャンネルはポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(McDonald and Whitesides
,2002)中の急速なフォトタイピングを用いて長方形の断面を有するように加工し、Song a
nd Ismagilov,2003に記載の通り疎水性を付与する。シリンジポンプを用いて流動を起こ
した(Harvard Apparatus PHD 2000 Infusionポンプ)。水溶液については、取り外し可
能な27ゲージ針のついた50μlのハミルトンガスタイトシリンジ(1700シリーズ
、TLL)を30ゲージのテフロン(登録商標)チューブ(Weico Wire and Cable)と共に
使用した。キャリア流体に対しては、1mlハミルトンガスタイトシリンジ(1700シ
リーズ、TLL)をハミルトンの1ハブを有する30ゲージのテフロン(登録商標)針と
共に使用した(Song and Ismagilov,2003)。キャリア流体はパーフルオロデカリン(PF
D)中9%(v/v)のC61124OHとする(Song et al.,2003)。全ての水溶性試
薬はPTP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES、pH7.4、125mM
NaCl、1mM EDTA)中に溶解した。
【0202】
50mU/mlの標的酵素(ヒト組み換えPTP1B、残基1〜322;Biomol Resea
rch Laboratories,Inc.)の溶液、第1アミンである化合物の溶液およびアルデヒドであ
る化合物の溶液を2つの不活性の分離ストリーム(25mM HEPES、pH7.4、
125mM NaCl、1mM EDTA)を有する3本の層流ストリームとしてのマイ
クロチャンネル中を流動させることにより、酵素と化合物が液滴マイクロカプセル形成よ
りも前に接触することを防止する(Song et al.,2003)。これらの5ストリームを連続的に
水不混和性のフッ化炭素キャリア流体(PFD中9%(v/v)C61124OH)中
の流れに注入する。アミンおよびアルデヒドはa)ジフルオロメチレンホスホネート部分
(図6、化合物AおよびB)を含有するか、または、b)ジフルオロメチレンホスホネー
ト部分を含有しないのいずれかであり得る。
【0203】
水溶液用の導入チャンネルは50μm2の広さとし、PFD用チャンネルは28μm幅
とする。0.6:0.3、1.0:0.6、12.3:3.7、10:6および20:6
を含む種々のPFD/水の計量的流量(μ/分)を使用でき、得られる流量はそれぞれ1
0、19、190、190および300mm/秒となる。チャンネルの全幅を占有する水
性マイクロカプセルはPFDストリーム中の液滴の破壊により形成する(Song et al.,200
3)。ジフルオロメチレンホスホネート部分を有するまたは有さない化合物を含有するマイ
クロカプセルは、ジフルオロメチレンホスホネート部分を有するまたは有さないアミンま
たはアルデヒドを含有するシリンジを用いた注入を切り替えながら行うことにより形成で
きる。
【0204】
液滴形成地点のすぐ下流のチャンネルは1mmの距離に渡りピーク間の距離50μmで
旋廻している。これにより混乱移流によるマイクロカプセルの内容物の急速な混合が起こ
る(Song et al.,2003)。この地点の後、マイクロカプセルは長さ60cmのマイクロチャ
ンネルを経由して1分間まで流動する。これによりアミンとアルデヒドは、シッフ塩基の
形成により共に反応し、二次化合物を生成し、阻害剤がPTP1Bに結合できるようにす
る。次にこのマイクロチャンネルを上記した通り形成したPFD中9%(v/v)C61
124OH中に水性マイクロカプセルを含有する60×50μm2マイクロチャンネルと
合流させる。これらのより大きいマイクロカプセルは25mM HEPES、pH7.4
、125mM NaCl、1mM EDTA中の蛍光発生PTP1B基質6,8−ジフル
オロ−4−メチルウンベリフェリルホスホネート(DiFMUP)(Molecular Probes)を
含有する。マイクロチャンネルの間の注入の後、拡張した主チャンネルは100×50μ
2であり、マイクロカプセルはチャンネルをブロックせず、大型のマイクロカプセル(
DiFMUPを含有)が小型のマイクロカプセル(PTP1Bおよび化合物を含有)と合
体するまで異なる速度で移動できる(Song et al.,2003)。大型および小型のマイクロカプ
セルの生成の頻度は、各大型マイクロカプセルが融合すべき小型マイクロカプセルを有す
るように、等しくする。融合したマイクロカプセルは長さ60cmのマイクロチャンネル
を経由して2分間まで流動する。DiFMU(励起/発光最大358/452nm;青色
蛍光)の生成によるマイクロカプセルの蛍光はエピ蛍光顕微鏡を用いて測定する。
【0205】
主に、アミンおよびアルデヒドの濃度が低い(<100μM)場合は、PTP1B活性
の阻害はジフルオロメチレンホスホネート部分を有するアミン(化合物A、図6)および
ジフルオロメチレンホスホネート部分を有するアルデヒド(化合物B、図6)の両方を含
有するマイクロカプセルにおいて観察されるのみである。これはこれらのマイクロカプセ
ル内に形成されたシッフ塩基(化合物C、図6)がビス−ジフルオロメチレンホスホネー
トを含有しており、単一のジフルオロメチレンホスホネート部分を有する分子よりもはる
かに強力なPTP1B阻害剤であるためである(図1参照)。
【0206】
主に、アミンおよびアルデヒドの濃度が高い(>100μM)場合は、PTP1B活性
の阻害はジフルオロメチレンホスホネート部分を有するアミン(化合物A、図6)または
ジフルオロメチレンホスホネート部分を有するアルデヒド(化合物B、図6)の何れか、
または両方を含有するマイクロカプセルにおいて観察されるが、他のマイクロカプセルで
は観察されない。これは、単一のジフルオロメチレンホスホネート部分またはビス−ジフ
ルオロメチレンホスホネート(化合物C、図6)の何れかを有するより高濃度の分子がP
TP1Bを阻害できるためである(図1参照)。
【0207】
[実施例10:エマルジョンマイクロカプセル中の二次化合物の合成およびマイクロビー
ズに結合した化合物を用いたPTP1Bの阻害剤に関するスクリーニング]
表面上にカルボキシレート官能基を有する直径5.5μmのポリスチレンマイクロビー
ズはオレンジ色(585nm)および赤色(>650nm)の蛍光色素の厳密な比の取り
込みの結果として光学的にタグ付けされた形態で市販されている(www.luminexcorp.com)(
Fulton et al.,1997)。まず、マイクロビーズ上のカルボキシレート官能基を実施例6の
場合と同様にエチレンジアミンおよびEDCを用いて第1アミンに変換する。次にPTP
1Bのホスホペプチド基質であるウンデカペプチドEGFR988-998(DADEpYLI
PQQG)(Zhang et al.,1993)をEDCを用いて表面アミノ基を介してマイクロビーズ
の両方のセットにカップリングさせ、ペプチドの側鎖カルボキシレート上の保護基を実施
例7に記載するとおり除去する。第1のセットのマイクロビーズ(セット1)をスクシン
イミジルp−ホルミルベンゾエートと反応させることにより表面アミノ基をアルデヒドに
変換する。第1のセットのマイクロビーズとは別の光学的タグを有する第2のセットのマ
イクロビーズ(セット2)は未反応のままとする(即ち表面上第1アミンを有する)。
【0208】
次に第1のセットのマイクロビーズ(セット1)を表面アルデヒド基との反応を介して
ジフルオロメチレンホスホネート部分をおよび第1アミンを含有する化合物(化合物A、
図6)と反応させ、シッフ塩基を形成する。第1のセットのビーズとは別の光学的タグを
有する第2のセットのマイクロビーズ(セット2)は表面アミン基とのアルデヒドの反応
を介してジフルオロメチレンホスホネート部分およびアルデヒドを含有する化合物(化合
物B、図6)と反応させ、シッフ塩基を形成する。シッフ塩基の形成はアルカリpH(即
ちpH9〜10)における反応により増強される。種々の密度で化合物をコーティングし
たマイクロビーズを生成する。
【0209】
2セットのマイクロビーズをPTP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES
、pH7.4、125mM NaCl、10%グリセロール、1mM EDTA)(Doman
et al.,2002)中、氷上(反応を防止するため)で10nMの濃度の標的酵素(ヒト組み
換えPTP1B、残基1〜322;Biomol Research Laboratories,Inc.)と混合する。
ビーズおよび標的酵素(PTP1B)は油中水エマルジョン(やはり氷上)を形成するこ
とによりマイクロカプセル内に即座にコンパートメント化される。
【0210】
マイクロビーズの数は一端において大部分のマイクロカプセルが1個または0個のビー
ズを含み、もう一端においてはマイクロカプセルの大部分がマイクロビーズ2個以上を含
むように変動させる。温度を25℃に上昇させる。シッフ塩基は比較的不安定な可逆性の
相互作用であり、中性pHにおいて容易に加水分解され、ビーズから化合物を放出させる
。セット1およびセット2の両方に由来するマイクロビーズを含有するマイクロカプセル
においては、マイクロビーズから放出された化合物は相互に反応することができ、シッフ
塩基を形成し、溶液中に新しい分子を生成する。この新しい分子(図6、化合物C)はビ
ス−ジフルオロメチレンホスホネート部分を含有し、単一のジフルオロメチレンホスホネ
ート部分を有する化合物よりもPTP1B阻害剤として有意に高い力価を有する(図1参
照)。阻害剤は生成物(脱ホスホリル化ペプチド)に変換される基質の量を低減する。エ
マルジョンを4℃に冷却し、Griffiths and Tawfik,2003に記載の通り破壊して100μ
Mバナジン酸塩中にいれ、反応を停止させる(Harder et al.,1994)。製造元の取扱説明書
に従って緑色(530nm)蛍光色素フルオレセインイソチオシアネートで標識した抗基
質(抗ホスホチロシン)抗体(マウスモノクローナルIgG2bPY20,(Santa Cruz))
で標識した後、FACScan(Becton-Dickinson)、FACScalibur(Becton-Dickinson)またはMoFl
o(Cytomation)フローサイトメトリーを用いて3色フローサイトメトリーによりビーズを
分析し、阻害の程度およびビーズ上の化合物を同時に測定する。少ないマイクロビーズ数
では、大部分のマイクロカプセルは僅か単一のマイクロビーズを含むか全く含まず、各マ
イクロカプセル中の溶液内に放出された阻害剤の濃度が有効な阻害のために十分高値であ
る場合に、PTP1B阻害は高密度の阻害剤でコーティングされたビーズ上でのみ検出さ
れる。これとは対照的に、ビーズ数がより多ければ、マイクロビーズが低い密度で阻害剤
によりコーティングされている場合であっても、僅かな基質が生成物に変換されていれば
、多くのマイクロビーズが検出される。これは、セット1およびセット2の各々に由来す
るマイクロビーズを含有するマイクロカプセル内にビス−ジフルオロメチレンホスホネー
ト部分を含む高力価のPTP1B阻害剤(図6、化合物C)が形成されるためである。
【0211】
[実施例11:エマルジョンマイクロカプセル内のライブラリ2500二次化合物の合成
およびマイクロビーズに結合した化合物を用いたPTP1B阻害のスクリーニング]
表面上にカルボキシレート官能基を有し、各々がオレンジ色(585nm)および赤色
(>650nm)の蛍光色素の厳密な比の取り込み(Fulton et al.,1997)の結果として独
特の光学的シグネチャーを有する(www.luminexcorp.com)直径5.5μmのポリスチレン
マイクロビーズ100個のセットを実施例6に記載の通り修飾してカルボキシレート官能
基を第1アミンに変換し、次に、PTP1Bのホスホペプチド基質であるウンデカペプチ
ドEGFR988-998(DADEpYLIPQQG)(Zhang et al.,1993)で実施例10に記
載の通り誘導体化する。最初の50セットのマイクロビーズを実施例10に記載の通り反
応させて表面カルボキシル基のある割合をアルデヒドに変換する。第2の50セットのマ
イクロビーズは未反応のままとする(即ち表面上第1アミンを有する)。
【0212】
最初の50セットのマイクロビーズを各々、表面アルデヒド基との反応を介して第1ア
ミンを含有する独特の化合物と反応させることによりビーズに化合物を連結させるシッフ
塩基を形成する。これらの化合物の1つ(化合物A、図6)はジフルオロメチレンホスホ
ネート部分を含む。第2のセットのマイクロビーズは各々表面アミン基との反応を介して
アルデヒドを含有する独特の化合物と反応させることによりビーズに化合物を連結するシ
ッフ塩基を形成する。これらの化合物の1つ(化合物B、図6)はジフルオロメチレンホ
スホネート部分を含む。シッフ塩基の形成はアルカリpH(即ちpH9〜10)における
反応により増強される。
【0213】
2セットのマイクロビーズをPTP1B活性に適合した緩衝液(25mM HEPES
、pH7.4、125mM NaCl、10%グリセロール、1mM EDTA)(Doman
et al.,2002)中、氷上(反応を防止するため)で10nMの濃度の標的酵素(ヒト組み
換えPTP1B、残基1〜322;Biomol Research Laboratories,Inc.)と混合する。
ビーズおよび標的酵素(PTP1B)は油中水エマルジョン(やはり氷上)を形成するこ
とによりマイクロカプセル内に即座にコンパートメント化される。
【0214】
マイクロビーズの数はマイクロカプセル当たりのマイクロカプセルの最頻数が2となる
ようにする。温度を25℃に上昇させる。シッフ塩基は比較的不安定な可逆性の相互作用
であり、中性pHにおいて容易に加水分解され、ビーズから化合物を放出させる。第1の
50セットの1つに由来するマイクロビーズおよび第2の50セットの1つに由来するマ
イクロビーズを含有するマイクロカプセルにおいては、マイクロビーズから放出された化
合物は相互に反応することができ、シッフ塩基を形成し、溶液中に新しい分子を生成する
。阻害剤は生成物(脱ホスホリル化ペプチド)に変換される基質の量を低減する。エマル
ジョンを4℃に冷却し、Griffiths and Tawfik,2003に記載の通り破壊して100μMバ
ナジン酸塩中にいれ、反応を停止させる(Harder et al.,1994)。製造元の取扱説明書に従
って緑色(530nm)蛍光色素フルオレセインイソチオシアネートで標識した抗基質(
抗ホスホチロシン)抗体(マウスモノクローナルIgG2bPY20,(Santa Cruz))で標
識した後、FACScan(Becton-Dickinson)、FACScalibur(Becton-Dickinson)またはMoFlo(Cy
tomation)フローサイトメトリーを用いて3色フローサイトメトリーによりビーズを分析
し、阻害の程度およびビーズ上の化合物を同時に測定する。それ自体PTP1B阻害剤で
あるか、または別の共コンパートメント化されたビーズから放出された別の一次化合物と
反応して第2の阻害剤を形成する一次化合物でコーティングされたビーズは僅かな基質が
生成物に変換されているため、識別される。僅かな基質が生成物に変換されている識別さ
れたビーズは、ジフルオロメチレンホスホネート部分を含む化合物を担持するものを包含
する。マイクロビーズが低い密度で化合物にコーティングされる場合、マイクロカプセル
内にジフルオロメチレンホスホネート部分を含有する放出された化合物の濃度はPTP1
Bを効率的に阻害するには不十分である(実施例7参照)。しかしながら、1つが第1の
セットの50ビーズに由来し、もう1つが第2のセットの50ビーズに由来する2つのマ
イクロビーズを含み、各マイクロビーズがジフルオロメチレンホスホネート部分を有する
部分を担持しているマイクロカプセルにおいては、放出された分子は生成物へのPTP1
B基質の変換を阻害するマイクロカプセル内のビス−ジフルオロメチレンホスホネート部
分を含む高力価のPTP1B阻害剤(化合物C、図6)を形成できる。
【0215】
[実施例12:フッ化炭素中水エマルジョンにおける小型分子のコンパートメント化]
95%(v/v)パーフルオロオクチルブロミド、溶液中目的の分子を含有する5%(
v/v)リン酸塩緩衝食塩水、および、界面活性剤としての2%(w/v)C81711
22OP(O)[N(CH2CH22O]2(F8H11DMP)を含有するフッ化炭素中
水エマルジョンを14μフィルター(Osmonics)を通過させる押し出し(15回)によるか
、または、5mmの分散ツールでUltra-TurraxT8ホモゲナイザー(IKA)を用いながら
25,000r.p.mで5分間ホモゲナイズすることにより、本質的にSadtler et al.,1996に記載
の通り形成した。100μm〜2mMの濃度で水相中に溶解した一連の小型蛍光分子を含
有するエマルジョンを作成した。カルセイン、テキサスレッド、フルオレセイン、クマリ
ン102、7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸および7−ジエチルアミノ−4−メ
チルクマリン(クマリン1)を含むこれらの分子は、分子量203〜625DaおよびS
RCのLogKow/KowWinプログラム(Meylan and Howard,1995)を用いて計算した場合に0.
49〜4.09の範囲のLogP値を有していた。異なる色の蛍光色素を含むエマルジョ
ンを振とう攪拌により混合した。混合されたエマルジョンのエピ蛍光顕微鏡観察によれば
コンパートメント化が観察された。混合後24時間にはコンパートメント間の交換は観察
されなかった(図5参照)。
【0216】
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【0217】
上記した本明細書において言及した全ての出版物および該出版物中に引用されている参
考文献は参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載した方法および系の種々の変
更および変形は本発明の範囲および精神を逸脱することなく当業者には明らかとなる。本
発明は特定の好ましい実施形態との関連において説明してきたが、請求項に記載した本発
明はそのような特定の実施形態に限定されない。実際、分子生物学または関連の分野の当
業者には自明である本発明の実施のための記載した様式の種々の変更は添付する請求項の
範囲内であることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物のレパートリーを製造するための方法であって、
(a)マイクロカプセル内に一次化合物のセット2つ以上をコンパートメント化するス
テップであって、マイクロカプセルのある割合が、前記セットの各々の代表である化合物
1つ以上の複数のコピーを含むようにし、前記化合物1つ以上が、一次化合物のセットの
サブセットを形成する、ステップと;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
を含む、方法。
【請求項2】
一次化合物のサブセットが、一次化合物のセットの10%以下を構成する、請求項1に
記載の方法。
【請求項3】
一次化合物のサブセットが、一次化合物のセットの1%以下を構成する、請求項2に記
載の方法。
【請求項4】
一次化合物のサブセットが、単一の化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)におけるコンパートメント当たりの異なる一次化合物の最頻数が、ステ
ップ(b)において二次化合物を形成する一次化合物の数と等しくなる、請求項1〜4の
いずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、一次化合物を含む個別のエマルジョンコンパートメントを形成する
ステップと、エマルジョンコンパートメントを混合して、一次化合物のエマルジョン化さ
れたセットを形成するステップであって、任意の1つのマイクロカプセルにおいて、一次
化合物のセットのサブセットが複数のコピーで示される、ステップとを含む、請求項1〜
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、
(a)任意の1つのマイクロビーズ上において、一次化合物のセットのサブセット1つ
のみが示されるように、マイクロビーズに一次化合物のセットを結合させるステップと、
(b)任意の1つのマイクロカプセルにおいて、一次化合物のセットのサブセットが複
数のコピーで示されるように、マイクロカプセル内にマイクロビーズをコンパートメント
化するステップと;
を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
一次化合物の少なくとも1つのセットが、異なる化合物のレパートリーを含む、請求項
1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
一次化合物のセットの1つが、単一の化合物からなる、請求項1〜8のいずれかに記載
の方法。
【請求項10】
化合物が、非共有結合的にビーズに結合している、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
化合物が、共有結合的にビーズに結合している、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
化合物が、可逆的な物理的または化学的な機序によりマイクロビーズに結合している、
請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
化合物が、光化学的に切断され得るリンカーによりマイクロビーズに結合している、請
求項11に記載の方法。
【請求項14】
共に反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュレートすることができる二次化合
物を形成する一次化合物を識別するための方法であって、
(a)マイクロカプセル内に一次化合物のセット2つ以上をコンパートメント化するス
テップであって、マイクロカプセルのある割合が、化合物2つ以上を含むようにする、ス
テップと;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
(c)反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成す
る一次化合物のサブセットを識別するステップと;
を含む、方法。
【請求項15】
標的に結合するか標的の活性をモジュレートする能力が増強されている化合物を合成す
るための方法であって、
(a)本発明の第2の態様のステップ(c)において識別された一次化合物のサブセッ
トをマイクロカプセル内にコンパートメント化するステップであって、任意選択的に一次
化合物の別のセットをコンパートメント化するステップと;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
(c)反応して、標的に結合するか標的その活性をモジュレートする二次化合物を形成
する一次化合物のサブセットを識別するステップと;
を含む、方法。
【請求項16】
最初のサイクルの後に、ステップ(a)が、ステップ(c)で識別された一次化合物の
サブセットをマイクロカプセル内にコンパートメント化するステップ、および、任意選択
的に、化合物の別のセットをコンパートメント化するステップを含むように、ステップ(
a)〜(c)が反復的に繰り返される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
標的に結合するか標的の活性をモジュレートする個々の化合物を識別するための方法で
あって、
(a)本発明の第2または第3の態様のステップ(c)において識別された一次化合物
および一次化合物の別のセットをマイクロカプセル内にコンパートメント化するステップ
と;
(b)異なるセットに由来する一次化合物の間の化学反応によりマイクロカプセル中に
二次化合物を形成するステップと;
(c)反応して、標的に結合するか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成す
る一次化合物のサブセットを識別するステップと;
を含む、方法。
【請求項18】
標的の活性が結合活性である、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
標的の活性が触媒活性である、請求項14〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
二次化合物が標的と反応して反応産物を生成する、請求項14〜19のいずれかに記載
の方法。
【請求項21】
標的が化合物と共にマイクロカプセル内にコンパートメント化される、請求項14〜2
0のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
スカフォールド分子が化合物と共にマイクロカプセルにコンパートメント化される、請
求項14〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
化合物がビーズに結合されており、ステップ(c)において、反応して、標的に結合す
るか標的の活性をモジュレートする二次化合物を形成する一次化合物の識別が容易となる
ように、ステップ(a)において一次分子がビーズから放出され、コンパートメント内の
他のビーズと反応する、請求項14または22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
所望の活性を有する化合物が、マイクロカプセルまたはマイクロビーズの識別、分類ま
たは選択を可能にする、マイクロカプセルまたはマイクロビーズの変化をもたらす、請求
項14〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
マイクロカプセルまたはマイクロビーズの単離が可能となるように、マイクロカプセル
内の化合物の活性が、直接または間接的にマイクロカプセルまたはマイクロビーズの修飾
をもたらす、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
一次化合物および標的がマイクロビーズに結合しており、標的がリガンドであり、マイ
クロビーズの単離が可能となるように、マイクロカプセル内の二次化合物が、直接または
間接的に前記リガンドに結合する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
マイクロビーズがアフィニティー精製により単離される、請求項25または26に記載
の方法。
【請求項28】
基質がマイクロカプセル内に存在し、マイクロカプセル内の化合物の所望の活性が、直
接または間接的に生成物への前記基質の変換の調節をもたらす、請求項14〜28のいず
れかに記載の方法。
【請求項29】
基質が、標的の触媒活性により生成物に変換される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
基質および生成物が、異なる光学特性を有する、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
基質および生成物が、異なる蛍光特性を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
一次化合物および基質がマイクロビーズに結合しており、マイクロカプセル内の二次化
合物の所望の活性が、直接または間接的にマイクロビーズの部分として残存する生成物へ
の前記基質の変換の調節をもたらし、その識別および任意選択的に単離を可能にする、請
求項28〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
生成物および任意選択的に未反応の基質が、その後マイクロカプセル内のマイクロビー
ズと複合体化する、請求項28〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
所望の活性が、生成物への基質の変換を増強する、請求項28〜33のいずれかに記載
の方法。
【請求項35】
所望の活性が、生成物への基質の変換を抑制する、請求項28〜34のいずれかに記載
の方法。
【請求項36】
所望の活性を有する化合物が、マイクロカプセルの識別、分類または選択を可能にする
マイクロカプセルの変化をもたらす、請求項1〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
マイクロカプセル内の標的の修飾が、マイクロカプセルの光学特性の変化を誘導する、
請求項1〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
マイクロビーズの修飾が、その光学特性の変化を誘導するように、マイクロカプセルの
外部においてそれを更に修飾可能とする、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
マイクロビーズの光学特性の変化が、マイクロビーズへの特徴的な光学特性を有する化
合物の結合によるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
マイクロビーズの光学特性の変化が、化合物への特徴的な光学特性を有する標的の結合
によるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
マイクロビーズの光学特性の変化が、標的に結合した際の化合物の光学特性の変化によ
るものである、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
マイクロビーズの光学特性の変化が、化合物に結合した際の標的の光学特性の変化によ
るものである、請求項24に記載の方法。
【請求項43】
マイクロビーズの光学特性の変化が、結合している標的および化合物の両方の光学特性
の変化によるものである、請求項24に記載の方法。
【請求項44】
化合物が標的の変化をもたらすように作用し、マイクロビーズの光学特性の変化が、標
的および化合物の標的への作用の生成物の異なる光学特性によるものである、請求項24
に記載の方法。
【請求項45】
化合物は、光学特性を改変することなく標的の変化をもたらすよう作用するが、標的で
はなく作用の生成物のみがマイクロビーズと結合または反応し、これによりマイクロビー
ズの光学特性を変化させる、請求項24に記載の方法。
【請求項46】
別の試薬が、マイクロビーズに結合した調節された反応の(基質ではなく)生成物に特
異的に結合または特異的に反応し、これにより、マイクロビーズの光学特性を改変する、
請求項24に記載の方法。
【請求項47】
別の試薬が、マイクロビーズに結合した調節された反応の(生成物ではなく)基質に特
異的に結合または特異的に反応し、これにより、マイクロビーズの光学特性を改変する、
請求項24に記載の方法。
【請求項48】
マイクロカプセル内の化合物が、マイクロカプセルの光学特性の差により識別される、
請求項24に記載の方法。
【請求項49】
マイクロカプセルの光学特性の差が、蛍光の差である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
マイクロカプセルの蛍光の差が、量子ドットの存在によるものである、請求項49に記
載の方法。
【請求項51】
化合物が、異なる濃度で異なるマイクロカプセル内に存在する、請求項1〜50のいず
れかに記載の方法。
【請求項52】
マイクロカプセル内の化合物の濃度が、マイクロカプセルの光学特性の差により識別さ
れる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
マイクロカプセルの光学特性の差が、蛍光の差である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
マイクロカプセルの蛍光の差が、量子ドットの存在によるものである、請求項53に記
載の方法。
【請求項55】
マイクロビーズ上の化合物が、マイクロビーズの光学特性の差により識別される、請求
項24に記載の方法。
【請求項56】
マイクロビーズの光学特性の差が、蛍光の差である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
マイクロビーズの蛍光の差が、量子ドットの存在によるものである、請求項56に記載
の方法。
【請求項58】
化合物の第2の活性が、第1の活性から生じるものとは異なるマイクロビーズまたはマ
イクロカプセルの変化をもたらす、請求項1〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
第2の活性から生じる変化を用いて、マイクロビーズまたはマイクロカプセルを積極的
に選択する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
第2の活性から生じる変化を用いて、マイクロビーズまたはマイクロカプセルを消極的
に選択する、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
反応の特異性を向上させるために、消極的な選択を積極的な選択と組み合わせる、請求
項60に記載の方法。
【請求項62】
向上した反応特異性が、結合特異性の向上である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
向上した反応特異性が、標的に対する位置選択性および/または立体選択性の向上であ
る、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
化合物の活性により直接または間接的に修飾されたマイクロビーズが、更にチラミドシ
グナル増幅(TSA(商標);NEN)により修飾され、その結果として直接または間接
的に前記マイクロビーズの光学特性の変化がもたらされ、これによりその識別および任意
選択的に単離が可能となる、請求項24に記載の方法。
【請求項65】
化合物が低分子量化合物である、請求項1〜64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
各マイクロビーズが、それに結合した単一化合物の複数の分子を有する、請求項1〜6
5のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
マイクロカプセル化が、油中水エマルジョンを形成することにより達成される、請求項
1〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
油中水エマルジョンが、微小流体システムを用いて作成される、請求項67に記載の方
法。
【請求項69】
エマルジョンが、不混和性液体の共流動ストリーム内の水性液滴の破壊により形成され
る、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
微小流体チャンネル内の油のストリーム内に分散した水性微小液滴の層流により、マイ
クロカプセルが分析のために輸送される、請求項68または69に記載の方法。
【請求項71】
マイクロカプセルが、微小流体チャンネル内の油のストリーム内に分散した水性微小液
滴のものである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
マイクロカプセル内の化合物が、微小流体チャンネル内の他の微小液滴に対するマイク
ロカプセルの相対的位置により識別される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
マイクロカプセル内の化合物の濃度が、微小流体チャンネル内の他の微小液滴に対する
マイクロカプセルの相対的位置により識別される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
マイクロカプセル内の標的が、微小流体チャンネル内の他の微小液滴に対するマイクロ
カプセルの相対的位置により識別される、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
識別されたマイクロカプセルが、微小流体装置を用いて分類される、請求項1〜74の
いずれかに記載の方法。
【請求項76】
マイクロカプセル化が、フッ化炭素または過フッ化炭素の連続相とのエマルジョンを形
成することにより達成される、請求項67に記載の方法。
【請求項77】
マイクロカプセル化が、フッ化炭素または過フッ化炭素の連続相および非水性の非連続
相とのエマルジョンを形成することにより達成される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
マイクロカプセル化が、フッ化炭素または過フッ化炭素の連続相および水性の非連続相
とのエマルジョンを形成することにより達成される、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
フッ化炭素が、パーフルオロオクチルブロミドまたはパーフルオロオクチルエタンであ
る、請求項76〜78のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
エマルジョンが、F−アルキルジモルホリノホスフェートを用いて形成される、請求項
78に記載の方法。
【請求項81】
F−アルキルジモルホリノホスフェートが、一般式Cn2n+1m2mOP(O)[N(
CH2CH22O]2を有する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
F−アルキルジモルホリノホスフェートが、C8171122OP(O)[N(CH2
22O]2である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
マイクロカプセルが、その蛍光の変化の検出により識別および任意選択的に分類される
、請求項24に記載の方法。
【請求項84】
蛍光の変化が、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によるものである、請求項83に
記載の方法。
【請求項85】
マイクロカプセルの識別が、フローサイトメトリーにより行われる、求項83に記載の
方法。
【請求項86】
マイクロカプセルの分類が、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)を用いて実施される
、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
マイクロカプセルが、油中水エマルジョンの水中油中水エマルジョンへの変換の後に、
蛍光活性化細胞ソーター(FACS)を用いて分類される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
マイクロビーズが、非磁性、磁性または常磁性である、請求項7に記載の方法。
【請求項89】
マイクロビーズが、その蛍光の変化の検出により識別および任意選択的に分類される、
請求項24に記載の方法。
【請求項90】
マイクロビーズの識別が、フローサイトメトリーにより行われる、請求項89に記載の
方法。
【請求項91】
マイクロビーズの分類が、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)を用いて実施される、
請求項90に記載の方法。
【請求項92】
蛍光の変化が、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)によるものである、請求項89に
記載の方法。
【請求項93】
マイクロカプセルの内部環境が、油相に試薬1つ以上を添加することにより修飾される
、請求項1〜92のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
一次化合物が異なる光学特性を有するビーズにカップリングされている、請求項7に記
載の方法。
【請求項95】
ビーズが異なる蛍光特性を有する、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
ビーズの異なる光学特性が、蛍光色素2つ以上の異なる水準でのビーズへの取り込みに
よるものである、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
ビーズの異なる光学特性が、異なる発光スペクトルを有する量子ドットの異なる数量で
の取り込みによるものである、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
ビーズに結合している化合物が、ビーズの異なる光学特性を用いて識別される、請求項
94に記載の方法。
【請求項99】
単離されたビーズ上の化合物が、ビーズから化合物を放出させ、直接分析することによ
り識別される、請求項7に記載の方法。
【請求項100】
単離されたビーズ上の化合物が、質量スペクトル分析により識別される、請求項99記
載の方法。
【請求項101】
請求項1〜100のいずれかに記載の方法により単離された物。
【請求項102】
一次化合物の反応により生成した二次化合物を単離するステップを更に含む、請求項1
〜100のいずれかに記載の方法。
【請求項103】
二次化合物1つ以上を製造するステップを更に含む、請求項1〜100および102の
いずれかに記載の方法。
【請求項104】
化合物および標的が、後に融合される異なるマイクロカプセル内に当初存在する、請求
項13〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
化合物の異なるサブセットを含有するマイクロカプセルが融合される、請求項1〜10
0および102〜104のいずれかに記載の方法。
【請求項106】
化合物を含有するマイクロカプセルを分割させて、マイクロカプセル2つ以上を生成さ
せる、請求項1〜100および102〜105のいずれかに記載の方法。
【請求項107】
標的を含有するマイクロカプセルを分割させて、マイクロカプセル2つ以上を生成させ
る、請求項1〜100および102〜106のいずれかに記載の方法。
【請求項108】
細胞がマイクロカプセル内に存在する、請求項1〜100および102〜107のいず
れかに記載の方法。
【請求項109】
化合物が、細胞内で標的の活性をモジュレートする、請求項1〜100および102〜
108のいずれかに記載の方法。
【請求項110】
化合物が、細胞の活性をモジュレートする、請求項1〜100および102〜109の
いずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−70750(P2012−70750A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−256129(P2011−256129)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2006−506045(P2006−506045)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】