説明

マイクロカプセル化した精油の応用

マイクロカプセル化した精油の新規の調製法を開示する。精油を含有するマイクロカプセルまたはそれを含有する製剤は種々の非農業用途に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業以外の用途に好適なマイクロカプセル化した精油製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、微生物および種々の害虫の生物学的防除に精油を使用する可能性についていくつかの研究がおこなわれている。精油は環境中で合成化合物よりも速く分解され、あるものは益虫に有利に増大した特異性を有する。貯蔵食品の害虫に対するそれらの作用が広く研究されてきた。ほとんどの有望な特性にもかかわらず、精油の揮発性、水溶性の低さ、および酸化されやすさに関する問題のために、精油製剤を防除システムとして使用することは困難であり、およびその結果として標的の環境に施用することが困難であるという現実的な問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
今回、驚くべきことに、マイクロカプセル化した精油を1種でまたは複数種を組み合わせて含有する特定の製剤を、種々の非農業目的のために、特に標的の特定の病気または損傷の治療もしくは予防のために使用することができることが見出された。
【0004】
当業者は、所望の効果を達成することができる製剤を得るためには多くの実験が必要であることを理解するであろう。ある種のマイクロカプセル化法はある用途に有益なマイクロカプセル製剤を提供し得るが、それにもかかわらず、それは別の用途には無効であり得る。同様に、ある精油はある活性、例えば抗微生物活性を有することが知られているが、それがすべての抗微生物用途に有効であるとは断言できない。当業者が理解する通り、これらの差異は、マイクロカプセルからの放出速度、透過率の程度、濃度、遅い放出および少量における効率、標的上でのマイクロカプセルの分布、マイクロカプセルシェルの不活性化作用、マイクロカプセルまたはそれを含有する担体中の他の添加剤または補助剤の存在、精油製剤の施用の前または後の標的の状態、貯蔵期間、種々の添加物の存在等などの種々のファクターにより生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、下記の通りの精油のマイクロカプセル化の多くの態様を開示する。
【0006】
製剤
この本発明の第一の態様において、それぞれが少なくとも1種の精油を含むマイクロカプセルの懸濁液の調製方法であって、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に、少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合することにより、前記少なくとも1種の精油を含むマイクロカプセルの懸濁液を得るステップ
を含む方法(本明細書において「本発明の方法」と呼ぶ)を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
一つの実施形態において、ステップ(a)は溶媒を必要とせずに実施される。
【0008】
別の実施形態において、まず少なくとも1種のアルカン酸を、好ましくは水非混和性の液体である溶媒に溶解または懸濁する。
【0009】
一つの実施形態において、前記水非混和性の液体は精油である。
【0010】
別の実施形態において、それは精油でない。水非混和性の液体が精油でない場合、それは本方法に使用する条件下で反応性でない水不溶性有機溶媒より選択される。前記水非混和性の液体の非限定的な例は、アルカン(例えば、ヘキサンおよび石油エーテル)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、ブチルエチルエーテル)、アルコール、およびケトンである。
【0011】
別の実施形態において、固体のアルカン酸を融解した後に精油または水非混和性担体に加える。
【0012】
ステップ(b)において使用する塩基性水溶液は、NaOHなどの単一の1価の塩基または2種以上の前記塩基の混合物、例えば、NaOHおよびKOH、またはNaOHおよびNa2CO3の溶液であってよい。一つの実施形態において、塩基は無機塩基である。別の実施形態において、塩基は有機塩基である。
【0013】
好ましい実施形態において、1価の塩基はナトリウムまたはカリウムの塩基である。
【0014】
別の実施形態において、ステップ(b)において得られる懸濁液はミセルの分散物である。別の実施形態において、ステップ(b)において得られる懸濁液は透明な懸濁液である。
【0015】
本発明の方法のステップ(c)において加える多価カチオンの塩溶液は、+1よりも大きい電荷を有するカチオンを含有する無機金属塩の溶液である。一つの実施形態において、無機金属カチオンは周期表の第II族のものである。前記カチオンの非限定的な例は、Ca、Mg、Fe、およびAlの多価カチオンである。好ましくは、多価カチオンはCaである。
【0016】
ある原子が異なる電荷の複数のカチオンを有する場合には、そのすべてのカチオンが本発明の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0017】
一つの実施形態において、多価カチオンはCaとは異なる。
【0018】
別の実施形態において、多価カチオンはMgとは異なる。
【0019】
別の実施形態において、多価カチオンはFeとは異なる。
【0020】
別の実施形態において、多価カチオンはAlとは異なる。
【0021】
別の実施形態において、多価カチオンはCa、Mg、Fe、またはAlとのいずれか一つとは異なる。
【0022】
別の実施形態において、ステップ(c)の塩水溶液は、2種以上の多価塩の混合物を含む。前記混合物は、異なるカチオンを有する塩、例えば、CaCl2およびMgCl2、異なる対アニオンを有する塩の混合物、例えば、CaCl2およびCa(OH)2、または異なる電荷のカチオンを有する塩の混合物、例えばCaCl2およびFeCl3であってよい。
【0023】
あるいは、多価カチオンの塩溶液は、上に開示されるように、+1よりも大きい正の電荷を有する有機分子イオンのものであってもよい。多価有機カチオンの非限定的な例は、ジまたはトリまたはテトラアミンのアンモニウム塩、第四級ポリアミン等である。無機金属塩溶液と同様に、有機塩溶液は2種以上の異なる有機塩を含んでもよい。
【0024】
多価塩は、そのままで、または水溶液として、例えば、Ca(OH)2、CaCl2、MgCl2またはFeSO4などの金属塩の水溶液として、反応混合物に加えることができる。
【0025】
少なくとも1種の「アルカン酸」は、一般式R-COOH [式中、Rは飽和および/または不飽和のいずれかであってよい脂肪族炭素鎖であり、-COOHは有機化学において公知のカルボン酸基である]の有機カルボン酸である。本発明の範囲において、アルカン酸および脂肪酸という用語は同じ意味で使用される。
【0026】
一つの実施形態において、アルカン酸は水非混和性の化合物である。典型的には、R基は10〜45炭素原子の骨格を有する脂肪族鎖である。骨格は置換されていても無置換であってもよい。好ましい実施形態において、前記場合による置換は炭素鎖の疎水性に影響を与えない。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、前記アルカン酸は、25℃よりも高い融点温度を有するアルカン酸より選択される。
【0028】
本発明の方法によりカプセル化することができる飽和アルカン酸の非限定的な例は、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、およびテトラコサン酸である。
【0029】
不飽和アルカン酸の非限定的な例は、11-オクタデセン酸、5,8,11,14-エイコサテトラエン酸、オメガ-3脂肪酸等である。
【0030】
オメガ-3脂肪酸の非限定的な例には、α-リノレン酸(18:3-オメガ-3)、オクタデカテトラエン酸(18:4-オメガ-3)、エイコサペンタエン酸(20:5-オメガ-3)(EPA)、ドコサヘキサエン酸(22:6-オメガ-3)(DHA)、ドコサペンタエン酸(22:5-オメガ-3)(DPA)、エイコサテトラエン酸(20:4-オメガ-3)、ウンコサペンタエン酸(21:5-オメガ-3)、ドコサペンタエン酸(22:5-オメガ-3)、ならびにそれらの誘導体が含まれる。
【0031】
一つの実施形態において、オメガ-3脂肪酸は2種以上の前記脂肪酸の混合物である。
【0032】
オメガ-3脂肪酸の可能な誘導体には、エステル誘導体、分枝鎖もしくは非分枝鎖C1〜C30アルキルエステル、分枝鎖もしくは非分枝鎖C2〜C30アルケニルエステル、または植物ステロールエステルなどの分枝鎖もしくは非分枝鎖C3〜C30シクロアルキルエステルが含まれる。
【0033】
一つの実施形態において、前記脂肪酸は、カタクチイワシ、カラフトシシャモ、大西洋タラ、大西洋ニシン、大西洋サバ、大西洋メンハーデン、サケ科の魚、イワシ、サメ、およびマグロなどの水生生物;アマおよび野菜などの植物;ならびに菌類および藻類などの微生物を含むがそれに限定されない天然の原料からの抽出により得られる。
【0034】
「精油」という用語は、本発明の範囲において、植物の油および脂質をも含む。
【0035】
精油の非限定的な例は、ゴマ油、ピレトラム、グリセロール由来脂質またはグリセロール脂肪酸誘導体、ケイヒ油、セダー油、チョウジ油、ゼラニウム油、レモングラス油、アンジェリカ油、ハッカ油、ウコン油、ウインターグリーン油、ローズマリー油、アニス油、カルダモン油、キャラウェー油、カモミール油、コリアンダー油、グアヤクウッド油、クミン油、ディル油、ハッカ油、パセリ油、バジル油、ショウノウ油、カナンガ油、シトロネラ油、ユーカリ油、ウイキョウ油、ジンジャー油、コパイババルサム油、ペリラ油、セダーウッド油、ジャスミン油、パルマローザ油、セイヨウハッカ油、スターアニス油、チュベローズ油、ネロリ油、トルーバルサム油、パチョリ油、パルマローザ油、ヒノキ油、ヒバ油、ビャクダン油、プチグレン油、ベイ油、ベチバー油、ベルガモット油、ペルーバルサム油、ボワデローズ油、グレープフルーツ油、レモン油、マンダリン油、オレンジ油、オレガノ油、ラベンダー油、クロモジ油、松葉油、コショウ油、ローズ油、アイリス油、橙皮油、タンジェリン油、ティーツリー油、茶油、タイム油、チモール油、ニンニク油、ペパーミント油、オニオン油、リナロエ油、和種ハッカ油、スペアミント油および本明細書全体を通して開示される他のものである。
【0036】
一つの実施形態において、精油は揮発性油である。
【0037】
別の実施形態において、精油はスパイス植物の精油である。
【0038】
別の実施形態において、精油はシトロネラ油、ゼラニウム油、ティーツリー油、ラベンダー油、チョウジパイン油(clove pine oil)、ユーカリ油、タイム油、およびオレガノ油より選択される。
【0039】
当業者が理解するように、特定の精油または精油の組合せを特定の用途に基づいて選択する。
【0040】
一つの実施形態において、本発明の方法により得られるマイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルはロウ状または固体の粒子である。
【0041】
別の実施形態において、マイクロカプセルを媒体から分離せず、製剤をそのままで使用する。
【0042】
さらに別の実施形態において、上記の方法はさらに、マイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルを濾過および収集するステップを含む。固体のマイクロカプセルを水性媒体から分離する場合、少量の精油がカプセル化されずに残っている可能性がある。油で濡れていないマイクロカプセルを得るために、典型的には少量の、過剰な油を吸収することができる吸収剤を加える。吸収剤は、例えば、セルロース、デンプン粉末、またはDegussaから市販されているアエロジル(Aerosil)TM 200もしくは300などのアエロジルTMシリカより選択される。ある用途においては、アエロジルTMが好ましい吸収剤である。
【0043】
別の実施形態において、本発明の方法はさらに少なくとも1種の界面活性剤を加えるステップを含む。界面活性剤はイオン性または非イオン性であってよく、マイクロカプセルの製造中に促進のためまたはマイクロカプセルのサイズを制御するために、またはマイクロカプセルが形成された後にマイクロカプセル化の結果としてできたゲルを崩壊させて流動性を有する製剤を得るために、溶液または懸濁液にそのままでまたは溶液、例えば水溶液として加えることができる。一つの特に好ましい界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。好ましくは、界面活性剤は、製剤の総重量の0.1〜10%の濃度で、最も好ましくは0.5%〜5%の濃度で加える。
【0044】
別の実施形態において、本発明の方法はさらに少なくとも1種の添加物を、好ましくはステップ(c)の前に加えることを含む。前記少なくとも1種の添加物は、固体、液体、溶液、懸濁液、または2種以上の前記添加物の混合物であってよい。
【0045】
使用することができる添加物のクラスの非限定的な例は、活性な薬物、天然もしくは合成抗酸化剤、栄養補助剤、ビタミン、着色剤、着臭剤、油、脂肪、着香剤、非揮発性天然精油または他の分散剤もしくは乳化剤である。
【0046】
使用することができる特定の添加物の非限定的な例は、γ-リノレン酸、オレンジ油などの柑橘油、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、およびビタミンDなどの栄養補助剤、トコフェロール、トコトリエノール、植物ステロール、ビタミンK、ベータカロテン、魚油、オメガ-3脂肪酸、CoQ10、アスコルビル脂肪酸エステルなどの極性抗酸化剤の脂溶性誘導体、ローズマリー、セージおよびオレガノ油などの植物抽出物、藻類抽出物、およびBHT、TBHQ、エトキシキン、没食子酸アルキルおよびヒドロキノンなどの合成抗酸化剤または天然抗酸化剤である。
【0047】
界面活性剤以外の好ましい添加物の他の非限定的な例は、粒子の分離の維持を助ける立体障害ポリマーである。これらの立体障害ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリ(エトキシ)ノニルフェノールより選択されるが、それに限定されない。例えばマイクロカプセル懸濁液を他の殺虫剤と組み合わせる場合のように、最終的なマイクロカプセル製剤のpHを調節する必要がある場合には、酸性またはアルカリ性を調節するための通常の試薬を使用することができる。前記試薬には、例えば、塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムが含まれる。
【0048】
調製した後、液体または固体の製剤を使用するまで保存する。カプセル化した精油を含有する懸濁液をビンまたは缶に入れるのが最も便利であるが、その場合には懸濁液の安定性および施用の容易さを改善するために貯蔵の前に製剤補助剤を加えることが望ましい。これらの補助剤は、密度調整剤、界面活性剤、増粘剤、殺生物剤、分散剤、凍結防止剤、塩等より選択される。典型的には、補助剤は約0.01重量%〜約30重量%の濃度で加える。
【0049】
また、本発明は、それぞれが少なくとも1種の精油を含有する複数のマイクロカプセルを含むマイクロカプセル化した精油製剤であって、前記製剤またはマイクロカプセル化した精油が本発明の方法により調製されたものを提供する。
【0050】
本発明の範囲において、「製剤」という用語は、本発明の方法によりまたは本発明の方法を応用して調製されたマイクロカプセルと、マイクロカプセルを加える媒体であってもよい他の物質との組合せを指す。本発明の製剤は、開示される通りの添加物を含んでもよい。前記用語は、媒体(例えば、固体または液体)中のマイクロカプセルの懸濁液または分散物をも指す。
【0051】
一般的に、本発明の製剤は当業者に公知の方法により製造する。「薬剤学および薬局実務」(Pharmaceutics and Pharmacy Practice), J.B. Lippincott Co., Philadelphia, Pa., BankerおよびChalmers編、238〜250ページ(1982)、および「注射用薬剤のASHPハンドブック」(ASHP Handbook on Injectable Drugs), Toissel, 第4版、622〜630ページ(1986)を参照されたい。
【0052】
一般的に述べると、製剤を医薬製剤として使用する場合には、ビヒクル、補助剤、賦形剤、または希釈剤などの製薬上許容される担体が必要である。前記製薬上許容される担体は当業者に公知であり、一般に容易に入手可能である。製薬上許容される担体は、精油またはマイクロカプセルの中もしくは表面に含まれる他の化合物に対して化学的に不活性なものであることが好ましい。製薬上許容される担体の選択は、一つには特定の精油により決定され、また、製剤を被験体(動物またはヒト)に投与するために使用する特定の方法により決定される。
【0053】
ヒトまたは動物への使用、例えば忌避剤、抗微生物薬、食品添加物に適した本発明の製剤は、好ましくは経口投与または被験体の皮膚上への局所投与に適したものである。したがって、前記製剤は、(a) 水、生理食塩水、またはオレンジジュースなどの担体に懸濁した有効量の精油マイクロカプセルなどの液体懸濁液;(b) それぞれ予め決められた量の活性成分を固体または顆粒として含有するカプセル、サシェ、錠剤、ロゼンジ、およびトローチ;(c) 粉末;および(d) 好適な乳液からなる。
【0054】
液体製剤は、水およびアルコール、例えばエタノール、ベンジルアルコール、およびポリエチレンアルコールなどの希釈剤を含み、そこに製薬上許容される界面活性剤、懸濁剤、または乳化剤を加えても加えなくてもよい。
【0055】
カプセル剤は、例えば界面活性剤、滑沢剤、ならびにラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、およびコーンスターチなどの不活性充填剤を含有する通常の硬または軟ゼラチン型のものであってよい。
【0056】
錠剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、コロイド二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、着香剤、および製薬上許容される担体の1種以上を含んでもよい。
【0057】
本発明の別の態様において、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合するステップ;
(d) 水性媒体からマイクロカプセルを収集することにより、少なくとも1種のマイクロカプセル化した精油の複数のマイクロカプセルを得るステップ
を含む方法により調製されたマイクロカプセルを提供する。
【0058】
一つの実施形態において、調製されたマイクロカプセルは、少なくとも1種の精油を含有するコアを実質的に取り囲む両親媒性シェルを有する。
【0059】
別の実施形態において、両親媒性シェルは、少なくとも1種のアルカン酸および多価カチオンに由来する多価アルカン酸塩である。
【0060】
当業者に公知である通り、両親媒性物質は疎水性および親水性基の両方を有する分子である。本発明の方法に使用するアルカン酸は両親媒性物質である。上で定義した通りの一般式RCOOHのアルカン酸において、Rは疎水性の性質を有する脂肪族鎖であり、-COOH基またはその塩型は親水性の性質を有する。理論に拘束されることを望まないが、両親媒性シェルは、精油のコアに埋め込まれた疎水性基、およびそこから外に存在し、マイクロカプセルの表面上で外側を向く親水性基により構成される。
【0061】
さらに、少なくとも1種の精油を含むコアを取り囲む両親媒性シェルを有するマイクロカプセルであって、前記両親媒性シェルが少なくとも1種のアルカン酸の多価塩の形であるものが提供される。
【0062】
開示されたマイクロカプセルおよび/またはそれらを含有する製剤は非常にさまざまな用途に使用することができる。
【0063】
一つの実施形態において、製剤はヒト被験体ならびにヒト以外の被験体が使用するための医薬製剤である。医薬製剤は、例えば抗微生物製剤として使用される。
【0064】
別の実施形態において、製剤は医薬以外の抗微生物製剤である。
【0065】
さらに別の実施形態において、製剤は防腐製剤である。
【0066】
さらに別の実施形態において、製剤は、例えば家庭または環境中の昆虫の忌避または駆除に使用するための忌避剤または殺虫剤である。
【0067】
別の実施形態において、製剤は、ヒトおよび/または動物が摂取する食品および飲料への食品添加物の送達に使用される。
【0068】
本発明はまた、本発明の製剤を含むキットまたは販売用パッケージを提供する。キットは一部品キット、または揮発性精油をカプセル化した少なくとも1種のマイクロカプセルの懸濁液が中に入った第1の容器、および非揮発性ビヒクルの入った第2の容器を含む二部品キットであってよい。場合により、本発明のキットは、所望の効果を達成するために標的の環境に二つの成分を施用する方法を記載した説明書を含んでもよい。
【0069】
前記キット製剤または一成分製剤は、固体または液体の形で、および濃縮したまたは希釈した状態で提供され、例えば手、予め製剤を吸収させたスポンジもしくは布により、または手持ちのスプレーにより標的に施用することができる。
【0070】
下に開示する各用途は、同一のまたは異なるマイクロカプセル製剤を利用する。製剤の選択は、精油または精油の組合せの物理的、化学的、および/または生物学的特性;施用の方式;および製剤を施用する標的の特性などのいくつかのファクターにより決定される。
【0071】
一般的に、本発明において使用する製剤は少なくとも1種のカプセル化した精油を含む。製剤は、上で開示された新規の製剤、または下に詳細を記載する界面重合により調製したマイクロカプセル製剤であってよい。本明細書において使用する分類により限定されないが、本発明のそれぞれの用途において使用する製剤は、下記のように分類することができる。
【0072】
1. 均一な製剤- 同じ精油または同じ精油の混合物を含有する同じマイクロカプセルの製剤である。
【0073】
2. 不均一な製剤- 少なくとも2種の異なるタイプのマイクロカプセルを含み、それぞれのタイプは異なる精油または異なる精油の混合物を含有する。異なる精油またはその混合物の数は用途に応じて変化する。
【0074】
一つの実施形態において、不均一な製剤は2つのタイプのマイクロカプセルを含み、第1のタイプは第1の精油または第1の精油の混合物を含有し、第2のタイプは第2の精油または第2の精油の混合物を含有し、ここで、前記第1の精油または第1の精油の混合物はそれぞれ前記第2の精油または第2の精油の混合物とは異なる。2つのタイプのマイクロカプセルの比、すなわち第1と第2の精油または第1と第2の精油の混合物の間の比は多様であり、例えば、それぞれ1:1、1:2、1:5、1:10、1:100、2:1、5:1、10:1、100:1等であり得る。
【0075】
第1の不均一な製剤は、ユーカリ油のみを含有するマイクロカプセルならびにオレガノ油のみを含有するマイクロカプセルを1:1の比で含み得る。第2の製剤はティーツリー油を含有するマイクロカプセルならびにオレガノ油およびユーカリ油の混合物を含有するマイクロカプセルを含み、そこにおいて、ティーツリー油を含有するマイクロカプセルと混合物を含有するマイクロカプセルの比は1:2であり、前記混合物中のオレガノ油とユーカリ油の比は1:1であり得る。
【0076】
さらに、不均一な製剤は、例えば、精油を含有するマイクロカプセルおよび精油以外の物質を含有するマイクロカプセルを含み得る。
【0077】
別の実施形態において、前記不均一な製剤は、少なくとも2つのタイプのマイクロカプセルを含み、一方は精油を含有し、他方は本明細書に定義した通りの添加物を含有する。
【0078】
別の実施形態において、製剤は2種の異なるマイクロカプセルを含み、第一のマイクロカプセルは精油を含有し、第2のマイクロカプセルは精油と添加物の混合物を含有する。
【0079】
さらに別の実施形態において、製剤は少なくとも2つのタイプのマイクロカプセルを含み、それぞれのタイプは異なる方法により、例えば、一方は界面重合により、他方は本発明の方法により調製される。
【0080】
さらに別の実施形態において、製剤は、それぞれが異なるポリマー鎖を用いる界面重合により調製された2つのタイプのマイクロカプセルを含む。例えば、一方のタイプのマイクロカプセルのシェルはポリウレタンシェルであり、他方のタイプはポリウレアシェルを有する。
【0081】
3. バリア形成製剤- 標的に施用して乾燥した後に物理的バリアを形成することができ、同時に所望の効果、例えば忌避作用、殺虫、除草、殺菌(殺真菌、殺細菌)作用等を及ぼすことができる製剤を指す。
【0082】
バリア形成製剤は、その目的とする用途に基づいて、種々の厚さ、透過性、多孔性、水溶性、熱安定性、およびそこからの精油の放出速度を決定し得る他の物理パラメーターを有するバリアまたはフィルムを形成するように調節される。
【0083】
ある実施形態において、形成された物理的バリアまたはフィルムは、マイクロカプセルからの、またはマイクロカプセルとポリマーフィルムを組み合わせたコーティングからの精油の放出速度に、精油がマイクロカプセルから放出された後にその蒸発速度がさらにポリマーコーティングにより減少するような効果を有する。
【0084】
別の実施形態において、形成された物理的バリアは放出速度に影響を与えず、種々の微生物および/または汚染の通過に対する単なる障壁として使用される(物理的、生物学的または化学的)。前記実施形態において、精油の活性とコーティングポリマーのバリア特性の組合せは、得られる結果に相加的または相乗的効果を有する。
【0085】
いくつかの別の実施形態において、マイクロカプセルは、揮発性精油、および典型的には室温で液体または固体である種々の揮発性の低いまたは揮発性のない精油より選択されるビヒクルを含む。
【0086】
別の実施形態において、ビヒクルは精油ではない。
【0087】
理論に拘束されることを望まないが、カプセル化した精油の製剤を標的上に施用した時に、それは乾燥して、接触することでその効果を及ぼし始める。初期効果は、場合により沸点が高いという性質を有するにも関わらず、初期効果に関与する、ビヒクル(担体)により及ぼされる。精油がマイクロカプセルから放出され始めると、カプセル化したおよびカプセル化されていない精油(または精油以外のビヒクル)の両方の相加的または相乗的効果が観察される。
【0088】
均一な製剤と不均一な製剤の間の区別をビヒクルではなくマイクロカプセルの内容物を基準にしておこなったが、フィルム形成製剤はある程度ビヒクルの性質に依存する。先に述べたように、フィルム形成製剤により、物理的バリアまたは処理される物体を包み込むフィルムを形成することができ、それにより種々の微生物および病原体の透過または標的からの水および他の化学物質の放出(例えば、本明細書において下に開示するような収穫後の果物および野菜の場合)を防止する、または減少させる。バリアの形成は、液体媒体(例えば、マイクロカプセルを調製した水、ビヒクルではない)が蒸発した時に、固体の物質の層が好ましくは濃縮されたフィルムの形で得られるような濃度で、標的の上に製剤を施用、例えば噴霧することによりおこなわれる。フィルムの厚さは製剤の濃度、マイクロカプセルの大きさ、ビヒクル(固体か液体か)、同じ部位または物体に対する施用の回数、施用の方法および乾燥の程度に依存する。
【0089】
また、フィルムは、カプセル化した精油およびビヒクルに加えて、その後に施用される物質と接触することにより錯化および/または重合することが可能な物質をも含む本発明の製剤を最初に施用することにより形成することもできる。例えば、本発明の製剤は、標的の表面に施用する前に、ラウリン酸などの脂肪酸を含有するか、または前記脂肪酸により処理される。製剤の施用の後、塩化カルシウムなどの錯化剤の水溶液を最初の施用の部位に施用し、それによりマイクロカプセルが埋め込まれたフィルムの形成を可能にする。
【0090】
本明細書において使用される「カプセル化した精油」、「カプセル化」という表現またはその派生形は、その中に1種以上の精油を保持することが可能ないずれかの形および大きさの顆粒を指す。
【0091】
前記カプセル化の一つの例はマイクロカプセル化である。好ましいマイクロカプセルは、その重量の10〜98%、より好ましくは60〜95%の精油を有し、一つの好ましい実施形態において、本発明の方法により調製されたものである。
【0092】
別の実施形態において、本発明のマイクロカプセルと共に、またはその代わりに使用されるマイクロカプセルは、イソシアネートの界面重合により得られるマイクロカプセルである。前記重合は、例えばWO 04/098767に開示されるように、ポリウレタン、ポリウレアまたはそれらの組合せからなるマイクロカプセル化シェルを与える。前記マイクロカプセルは典型的には0.1〜100ミクロンの平均サイズを有する。他の好適なマイクロカプセルは、例えば、WO 94/13139、EP0252897、US5576009およびUS5925464に開示される方法により調製することができる。
【0093】
カプセル化した精油製剤は、それらの内容物に関してのみでなく、それらの調製法に関しても種々のマイクロカプセルを含む。そのため、製剤は種々の大きさ、形、化学および物理パラメーターのマイクロカプセルを含む。
【0094】
本明細書において使用される「非揮発性ビヒクル」という用語は、一般的に、施用後に処理された物体上にマイクロカプセルと共に残り、好ましくは相加的または相乗的効果を及ぼす有機物質を指す。前記ビヒクルは高い沸点または融点を有する液体または固体(純粋な物質または混合物)であって、その施用後の標的からの蒸発速度は、カプセル化した精油と比較して小さい。前記ビヒクルまたは担体は、例えば非揮発性精油、非揮発性植物油、非揮発性または固体のテルペン、および脂質であってよい。
【0095】
一般的に、ビヒクルは決して水単独ではない。しかしながら、種々の実施形態において、水を製剤の主要な成分として使用する必要があり得る。そのような典型的な例において、マイクロカプセルを水溶液中に製造する場合、またはより高い流動性および噴霧可能性を得るために水を加えた場合、または製剤を水中に包装または貯蔵する場合に、媒体として作用し、製剤の忌避、殺虫(insecticidal, pesticidal)、殺幼虫、または殺卵特性などに有益な効果を持たない非揮発性ビヒクルを水溶液に加えてもよい。
【0096】
好ましくは、液体の精油および脂質ビヒクルは、250℃よりも高い、好ましくは300℃よりも高い沸点を有するものである。このような高い沸点の精油は、例えば、ピレトリンである。脂質の例はゴマ油または綿実油である。
【0097】
「固体ビヒクル」という用語は、純粋な形または混合物の固体であり、その中にマイクロカプセルが混合され、標的への施用の前に液体の媒体、例えば水に均一に溶解、懸濁または分散し得る固体の物質を指す。固体の担体は、例えば粉末の形である。
【0098】
「液体ビヒクル」という用語は、純粋な液体、均一な液体である物質の混合物(それぞれの物質は混合の前に固体、液体、または気体であってよい)、または前記物質の不均一な混合物、例えば懸濁液であって、その中に前記カプセル化した精油、例えばマイクロカプセルが懸濁され得るものを指す。液体ビヒクルまたは溶液(例えば固体ビヒクルを例えば水のような適切な媒体に溶解または分散することにより調製されたもの)中のマイクロカプセルの懸濁液は、マイクロカプセル内部の揮発性精油の粘稠度、分布、物理的状態、または濃度に影響を与えてはならない。さらに前記ビヒクルは、その中で前記マイクロカプセルが溶解、劣化、分解、浸出、または他の物理的もしくは化学的変化をおこなうことがないものである。
【0099】
「懸濁した」という用語またはその派生語は、ビヒクル中にマイクロカプセルが分散した状態を指す。非限定的な例を挙げると、分散物は水中の綿実油およびマイクロカプセルである。あるいは、前記用語は、マイクロカプセルの大きさに依存して、コロイドの状態を指す。
【0100】
そのほとんどの一般的な形においで、本発明は、特定の用途に基づく種々の活性を有する1種の精油または精油の混合物のカプセル化を開示する。
【0101】
非揮発性ビヒクルは少なくとも1種の非揮発性精油、少なくとも1種の非揮発性植物油またはそれらの組合せであってよく、そこにおいて、精油の少なくとも1種は所望の効果を及ぼすのに必要な所望の活性を有する。例えば、昆虫の忌避剤として使用する製剤の場合、そこに含まれる精油のうちの1種が忌避能力を有する。
【0102】
例えば、組合せは、(a) 2種以上の異なる非揮発性精油の組合せ;(b) 2種以上の異なる非揮発性精油と少なくとも1種の植物油の組合せ;(c) 1種の非揮発性精油と1種の非揮発性植物油の組合せ;(d) 2種の異なる非揮発性植物油の組合せ等であるが、それに限定されない。同様の変化形を、いずれか特定のサブグループ、例えば異なるトリグリセリドのような脂質とその一つの特定の例に関しても作ることができる。
【0103】
「揮発性」「中程度に揮発性」および「非揮発性」という用語は、室温および常圧における化合物の蒸発能力の程度を指す。当業者に公知である通り、ある化合物の沸点が低い程、その化合物は揮発性が高い。精油に関しては、揮発性の、沸点の低い油は、約250℃よりも低い沸点を有するものであると定義される。中程度に揮発性の油は、250〜300℃の間の沸点を有するものであると定義される。非揮発性または揮発性の低い油は300℃よりも高い沸点を有するものであると定義される。
【0104】
「植物油」とは、植物により作られた天然の油の複雑な混合物である。「精油」は、一般的に植物にその特徴的な匂い、香り、または他の同様の特性を与えるものである。植物油は植物の種々の部分(種、花、樹皮、または葉)に見出され、また、ある特定の細胞または細胞群(腺)に濃縮される。一般的に、それらは複雑な混合物で、それらが見出される植物の部分の性質に応じた種々の方法により植物から得ることができる。前記方法は、例えば、圧縮、蒸気による蒸留、油を溶解して取り出す(抽出)またはそれらを吸収すること、ならびに圧力および浸漬である。また、前記用語は天然の植物油を、モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、セスキテルペン、および他のポリテルペンならびに有機アルコール、アルデヒド、ケトン、酸およびエステルなどの1種以上の特定の成分により強化することにより調製した油混合物をも指す。
【0105】
「精油」および「植物油」という用語は異なる文献において同じ意味で使用されるが、本発明の範囲において後者は脂質をも含むより広い化合物群を指す。
【0106】
本明細書において使用する「脂質」には、脂肪酸、グリセロール由来脂質(脂肪および油ならびにリン脂質を含む)、スフィンゴシン由来脂質(セラミド、セレブロシド、ガングリオシド、およびスフィンゴミエリンを含む)、ステロイドおよびその誘導体、テルペンおよびその誘導体、ある種の芳香族化合物、および長鎖アルコールおよびロウが含まれる。また、前記用語は、リポタンパク質(タンパク質または炭水化物と複合した脂質)、リポ多糖および脂溶性ビタミンなどのビタミンをも指す。
【0107】
好ましい実施形態において、油は、ゴマ油、ピレトラム、グリセロール由来脂質またはグリセロール脂肪酸誘導体より選択され、前記少なくとも1種のカプセル化した精油は、ケイヒ油、セダー油、チョウジ油、ゼラニウム油、レモングラス油、ハッカ油、ゴマ油、タイム油、ウコン油、ウインターグリーン油、ローズマリー油、アニス油、カルダモン油、カモミール油、コリアンダー油、クミン油、ディル油、ハッカ油、パセリ油、バジル油、ショウノウ油、シトロネラ油、ユーカリ油、ウイキョウ油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、レモン油、マンダリン油、オレンジ油、松葉油、コショウ油、ローズ油、橙皮油、タンジェリン油、ティーツリー油、茶油、ラベンダー油、キャラウェイ油、ニンニク油、ペパーミント油、オニオン油およびスペアミント油より選択される。
【0108】
一つの実施形態において、精油は揮発性油である。別の実施形態において、精油はシトロネラ油、ゼラニウム油、ティーツリー油、ラベンダー油、チョウジパイン油(clove pine oil)、ユーカリ油、タイム油、オレガノ油、および他のスパイス植物の精油より選択される。
【0109】
別の実施形態において、製剤は、ビヒクルの一部として、またはマイクロカプセル内に、補助剤、粘着剤、抗酸化剤、耐水化剤、界面活性剤、マイクロカプセルの凝集を防ぐ立体障害ポリマーおよびゲル分解剤などの添加物を含んでもよい。
【0110】
補助剤は、例えば、保存期間、噴霧可能性、および基材への吸着を改善するために使用する。前記補助剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、エチレンまたはマレイン酸無水物コポリマー、メチルビニルエーテル-マレイン酸無水物コポリマー、水溶性セルロース、水溶性ポリアミドまたはポリエステル、アクリル酸のコポリマーまたはホモポリマー、水溶性デンプンおよび加工デンプン、アルギン酸塩などの天然ゴム、デキストリンならびにゼラチンおよびカゼインなどのタンパク質などの天然および合成ポリマーの両方から選択することができる。
【0111】
製剤の物理的状態、すなわち、固体であるか液体であるかは、非揮発性ビヒクルが液体であるか固体であるか、または非揮発性ビヒクルおよびマイクロカプセルが水などの非混和性媒体中に懸濁もしくは分散されているかに依存する。その物理的状態に関わらず、製剤をさらに、乳化性濃縮物、湿潤性粉末、顆粒湿潤性粉末、流動性製剤、懸濁液、顆粒、ダスト、燻蒸剤等などの所望の剤形を形成するために使用することができる。剤形の性質は、標的の環境、施用の方法、施用を実施する条件、非揮発性ビヒクル中のマイクロカプセルの相対濃度等などのパラメータに基づいて決定される。
【0112】
非揮発性ビヒクル中のマイクロカプセルの濃度を制御することができるが、カプセル化した精油の濃度は、貯蔵、気候条件、剤形、施用の方法、施用の場所、防除の対照となる昆虫等に応じて変化する。製剤内の揮発性精油の濃度は、0.01〜90%、または好ましくは0.1〜25%の範囲で変化する。しかしながら、施用後に効果を達成するために必要な精油の濃度はずっと小さい。この濃度は揮発性精油の重量で0.1%および好ましくは0.25%の範囲から適切に選択される。
【0113】
製剤は、二つのマイクロカプセル放出のプロファイル、すなわち、(1)即効性プロファイル;および(2)持続性または遅延放出プロファイル;ならびに(4)いわゆる「即効性」に続いて持続放出プロファイルがおこなわれる残留プロファイルに適合するように調製することができる。
【0114】
上で述べた通り、使用する製剤は本明細書に開示されるまたは特許請求の範囲に記載される方法のいずれかにより調製されたマイクロカプセルを使用する。マイクロカプセルを反応混合物から回収し、例えば、不均一な製剤を製造する目的で非揮発性ビヒクルまたはそれを含有する溶液に再懸濁してもよい。あるいは、マイクロカプセルを含む水性またはそれ以外のいずれかの媒体を、マイクロカプセルを分離することなく、少なくとも1種の非揮発性ビヒクルにより処理してもよい。
【0115】
最初の媒体からマイクロカプセルを分離することが好ましい場合、回収は、マイクロカプセルの大きさに応じて、遠心分離または濾過によりおこなう。単離されたマイクロカプセルを適切な溶媒、例えば蒸留水により数回洗浄し、表面から遊離の反応物を除去する。必要に応じて、マイクロカプセルを減圧下加熱して、マイクロカプセル内から残った反応物をさらに除去する。好ましくは、この方法は、マイクロカプセルのシェルを形成するポリマーの平均ガラス転移温度よりも高い温度でマイクロカプセルを加熱することにより実施する。次にこれらのマイクロカプセルを前記非揮発性の液体または固体ビヒクルに分散または懸濁する。
【0116】
前記不均一な製剤は、まず2種以上の異なるマイクロカプセルを、上に開示した通りに、例えばそれぞれが異なる精油または混合物を含有するように調製し;マイクロカプセルをその元の媒体から分離し;それらを所望の比および媒体で混合し、それにより不均一な製剤を得ることにより調製される。
【0117】
ある場合には、前記非揮発性ビヒクルは粒状の固体、例えば粉末であって、それにより、分散は好ましくは有効量の乾燥したマイクロカプセルを混合することによりおこなわれる。ある場合には、前記非揮発性ビヒクルは液体であって、懸濁液は、好ましくは有効量のマイクロカプセルを前記ビヒクル中で機械的に撹拌することにより調製される。本明細書において使用される「有効量」という用語は、本明細書において下に記載する通りの所望の効果を及ぼすような、実験的に決定された量を指す。
【0118】
「カプセル化された揮発性精油の水性調製物」は、当業者に公知の方法により製造された調製物である。好ましくは、前記のカプセル化した揮発性精油の水性調製物は、本発明の方法、またはWO04/98767に開示および特許請求された通りの方法に従って製造された調製物である。
【0119】
WO04/98767の方法は、一般的に、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートを精油に溶解し、得られた混合物をジアミンまたはポリアミンおよび/またはジヒドロキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物を含有する水溶液に乳化し、界面重合により前記精油のカプセル化をおこなって、精油の液滴の周りを囲むポリウレアおよび/またはポリウレタンフィルムを形成することを含む。前記フィルムは基質に施用された時に前記精油の安定性を増大し、その蒸発速度を減少させ、かつその放出速度を制御する。
【0120】
マイクロカプセルからの精油の放出の方式および処理された標的において得られる効果は、マイクロカプセルの物理的性質に依存する。一般的に、活性な揮発性精油は、マイクロカプセルシェルによりカプセル化された液体の貯蔵物であって、非揮発性ビヒクルの中に支持されてその効果を増強される(相加的または相乗的に)。製剤を標的に送達すると、マイクロカプセルの内側および外側の揮発性精油の濃度勾配によりマイクロカプセルの内容物の放出が開始されると考えられる。この放出過程およびその速度論は、(a)マイクロカプセルの乾燥;(b)カプセル化するシェルの透過性を変化させ、および/またはシェルのゆっくりした分解を引き起こす可能性のある水性媒体、例えば水または雨、下で論じるような貯水設備との接触;(c)温度の変化、特に高温;および(d)直射日光により影響を受ける可能性がある。しかしながら、マイクロカプセル内容物の放出が自発的で独立しているために、これらの条件のいずれも必要ない、または効果を有しない場合がある。
【0121】
抗微生物製剤
背景
大きな乳牛群の効果的な管理および維持ならびに乳製品の製造を達成することは大変なことであった。重大な経済的問題を引き起こす一つの健康上の問題は乳房炎に関係する。乳房炎は、哺乳類(ヒトを含む)の乳房の中への細菌の侵入および増殖により引き起こされる乳管系または乳腺組織の炎症である。哺乳類が乳房炎にかかると、炎症により乳を合成する能力が損なわれる。すなわち、哺乳類は異常な乳を分泌し始め、乳中の体細胞、例えば白血球の数が増加する。また、乳腺細胞が損傷を受け、それらは結合組織の増加と共に萎縮し、乳汁分泌の減少を招く。
【0122】
乳房炎は、全世界の乳畜の約15%〜20%がかかる病気である。アメリカ合衆国において、50%のウシが1つ以上の感染した分房を有すると考えられている。ヨーロッパでは、獣医の診療の原因の30%〜40%が乳房炎である。乳房炎はヒトの女性においても広くみられる。
【0123】
細菌感染、特にウシ乳房炎は、酪農に携わる人が典型的に対処することになる最も費用がかかり、困難な問題である。酪農家は、伝染性および環境性の2つの異なるタイプの乳房炎感染に直面する。伝染性乳房炎は、搾乳過程の間に、乳房炎の病原体の源を運ぶ可能性がある酪農設備と動物との間の接触を通して広がる。環境性乳房炎は、動物がその環境の中を動いた時に、納屋周辺の環境、農場、納屋の内部等からの物質による動物の皮膚の汚染により引き起こされる。
【0124】
伝染性乳房炎は、搾乳後乳頭浸漬殺菌組成物を使用することにより最も容易に制御することができる。前記殺菌浸漬は搾乳機から動物の表面に導入された細菌を殺す。環境性乳房炎には感受性の組織を汚染から保護するバリアフィルムにより処理するのが最も良い。
【0125】
乳房炎は、観察される症状が存在しないものから乳頭の炎症、高熱、弱って元気のない動物、および食欲減退までの種々のレベルの程度で存在し得る。上記のような場合には実際に乳の収量が大幅に低下する。
【0126】
微生物が感染の原因であるが、それらが乳腺に入って感染を起こす地点に定着するためには、複数のファクターが関与する。同時に作用する多くの前記ファクター(例えば、衛生状態、畜舎、気候、搾乳機、飼料、遺伝)が存在する。
【0127】
ウシの乳房の上および中には非常に多くの微生物が存在する、事実、ウシの乳腺に関連し得る微生物の種および亜種は137種も確認されている。そのうちのいくつかは正常な細菌叢の一部であり、わずかの例外を除いて、乳房炎の原因とはならない。反対に、それらは、病原性細菌により引き起こされる感染から乳房を保護し得る。
【0128】
しかしながら、いくつかの他の微生物は乳腺に感染を引き起こす。最も一般的には、約90%の乳腺炎感染を引き起こすものは、無乳性連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、減乳性連鎖球菌(Streptococcus dysgalactiae)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、大腸菌(Escherischia coli)、およびコリネバクテリウム・ピオゲネス(Corynebacterium pyogenes)である。
【0129】
伝染性微生物および環境性微生物が存在する。感染したウシが伝染性微生物の主な供給源であり、それが皮膚上および乳頭の傷上で生存および増殖する。それらは無乳性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌および減乳性連鎖球菌からなる。
【0130】
環境性微生物(大腸菌(Escherischia coli)および他の大腸菌、ストレプトコッカス・ウベリス)は乳頭に残存しない。むしろ、それらの存在は、特に肥料により引き起こされる土壌、牛床、および水の高度の汚染を示す。
【0131】
ヒト被験体およびヒト以外の被験体の両方において病気を回避するために種々の予防法が使用されてきた。それらには、高い衛生状態、初乳を捨てること(乳頭の開口部に存在する可能性があり、初乳により洗い出される可能性のある細菌および他の微生物の収集を制限する)等が含まれる。
【0132】
乳房炎の治療および予防に使用される組成物の1つのクラスは、水性コーティングシステムから形成される、これらのコーティングは、活性殺生物剤の存在により動物の感染の発生率を減少させる。しかしながら、これらの乳頭浸漬は簡単に剥がれてしまう。例えば、ポリビニルアルコールをベースとする乳頭浸漬は適切な耐水性を提供しない。すなわち、水に曝されるために、これらのフィルムは約3〜4時間で剥がれ落ちる。適切なバリアフィルムがないと、乳畜は家畜群に乳房炎を起こす環境性の病原体の攻撃を受けやすい。
【0133】
別のクラスのコーティング材料は、攻撃を受けやすい組織と環境の間の接触を防止するために皮膚の表面にフィルムバリアを形成することを特徴とする。多くの抗微生物物質は、これらの種々のフィルム形成またはポリマー材料に混合不可能である。例えば、抗微生物薬は、抗微生物薬が最終的にラテックスから析出するために、ラテックスと共に有効に使用することができない。さらに、ラテックスは哺乳類の皮膚に持続性の被覆を提供しない。最近の製品の開発により、フィルムバリアを形成し、かつ抗微生物薬を含有する乳頭の皮膚用のコーティングが提供されている。前記コーティングには、可溶化された液体、ポリビニルピロリドンおよび他のビニルポリマー、タンパク質加水分解物(hydrozylate)、天然および合成ゴム、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、可溶性ポリマー、不飽和脂肪油、セルロース誘導体、アクリルポリマー格子等が含まれる。
【0134】
乳房炎に対する治療法として粘土湿布、ホメオパシー、薬用植物および酸素療法を使用してもよい。抗生物質の使用が提案されており、病気の動物の治療に使用されている。しかしながら、それは理想的な解決にはほど遠い。抗生物質が乳に起こす問題(抗生物質残留物による汚染、ヨーグルトおよびチーズの加工に関する問題等)の他に、可能な解決法として抗生物質を導入して以来、乳房炎の発生率は減少していない。耐性またはさらに無効であることに関する問題は大腸菌および黄色ブドウ球菌により引き起こされる乳房炎の場合には非常に現実的である。
【0135】
米国特許第6,106,838号において、Nitsasは、その主成分としてチモールおよびカルバクロールを含有するグリークオレガノ(Origanum vulgare ssp. hirtum)から得られた精油を活性成分として含む抗微生物薬を開示している。この組成物は、慢性乳房炎またはブドウ球菌または連鎖球菌により引き起こされる乳房炎を含む、病原性微生物により引き起こされる種々の病気の治療に使用される。
【0136】
米国特許第6,649,660号において、Ninkovは、シソ科の植物から得た油抽出物を含む微生物感染の治療のための医薬組成物を開示している。米国特許第6,921,539号においても、Ninkovは、治療用抗微生物薬組成物および乳房炎などの病気の治療におけるその使用を開示している。
【0137】
上記の文献は、予防および治療特性の両方を示すカプセル化した精油製剤の使用について開示していない。
【0138】
概要
当業界において、乳房炎の予防のための高い効果を有する皮膚浄化剤であり、同時に頻度が低い場合も高い場合も搾乳のために良い状態で乳房および乳頭の皮膚から除去される搾乳前および後の消毒用製剤が必要とされている。それに加えて、前記組成物は乳房炎を起こす微生物を素早く殺さなくてはならず、また、水溶性、無毒および非感作性でなければならない。前記組成物は、低い頻度で搾乳する酪農場において有益であり、高い頻度で搾乳する酪農場のそれ以上の実際的な発展に対する主要な障害の一つを取り除く。
【0139】
今回、本発明の方法または界面重合により調製されたカプセル化した精油を含む製剤は、乳房炎などの微生物感染と戦うために使用することができ、それにより微生物に関連する病気または障害の予防、防除および治療に有用であることが決定された。
【0140】
そこで、本発明の新規の方法または上に開示された界面重合により調製された、少なくとも1種のカプセル化した精油のマイクロカプセルを含む抗微生物製剤が提供され、前記製剤は少なくとも1種の微生物病原体に関連する病気または障害を治療または予防するのに有効である。
【0141】
本明細書において使用する「治療」という用語は、病気もしくは障害に関連する望まれない症状を緩和すること、前記症状が生じる前にその徴候を予防すること、病気もしくは障害の進行を遅くすること、病気もしくは障害に関連する症状の悪化を遅くすること、病原体により引き起こされる不可逆的な損傷を遅くすること、病気もしくは障害の重篤度を減少させることもしくはそれらを治癒すること、より迅速に回復すること、または病気が発生することを予防すること、または上記の2つ以上の組合せに有効な本発明の揮発性精油を含有する製剤をある量で施用することを指す。
【0142】
一つの実施形態において、微生物病原体は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、マイクロコッカスCNS (Micrococcus CNS)、減乳性連鎖球菌、アレアノバクテリウム・ピロゲネス(Areanobacterium Pyrogenes)、および緑膿菌(Pseudomonas Aeruginos)より選択される。
【0143】
別の実施形態において、前記抗微生物製剤は、乳畜およびヒトにおける乳房炎を治療または予防するためのものである。
【0144】
別の実施形態において、前記抗微生物製剤は殺菌製剤である。
【0145】
また、乳畜の乳頭に抗微生物精油製剤を施用することを含み、前記製剤が場合によりバリア層を形成することが可能であり、それにより実質的に微生物の乳房への侵入を防ぐ、乳畜における乳房炎を調節する方法を提供する。
【0146】
本明細書において使用する「調節」(modulating)という用語は、乳房炎に関連する望まれない症状を緩和すること、前記症状が生じる前にその徴候を予防すること、乳房炎の進行を遅くすること、乳房炎に関連する症状の悪化を遅くすること、病原体により引き起こされる不可逆的な損傷を遅くすること、乳房炎の重篤度を減少させることもしくはそれらを治癒すること、搾乳を改善することもしくはより迅速に回復させること、または病気が発生することを予防すること、または上記の2つ以上の組合せに有効な本発明の揮発性精油を含有する製剤をある量で施用することを指す。
【0147】
また、表面または物体上に、場合により抗微生物バリア層を形成することができる抗微生物精油製剤を施用することを含む、表面または物体上の微生物の個体数を減少させる方法を提供する。
【0148】
一つの実施形態において、前記表面または物体は乳畜の乳頭である。
【0149】
「乳畜」という用語は、酪農用の動物であると見なされる動物を指す。前記動物は、ウシ、ヤギ、ラクダ、アルパカ等であり得る。しかしながら、前記製剤はその乳が典型的にはヒトの食料とならない乳畜の乳房炎の治療にも有効である。前記用語はヒトをも指す。
【0150】
使用する製剤は不均一または均一である。さらに、マイクロカプセル化した精油は、本発明の発明者らが米国特許出願第11/040,102号において開示した通りの高沸点の(活性または不活性)ビヒクルと共に標的に提供してもよい。前記特許出願を全体として本明細書に組み入れる。
【0151】
別の実施形態において、前記製剤は、少なくとも1種のカプセル化した抗微生物精油および担体として作用する少なくとも1種のカプセル化されていない精油を含む。好ましくは、前記抗微生物精油はオレガノ油、バジル油、ローズマリン(rosemarin)油、ユーカリ油、ティーツリー油、またはタイム油の1種以上である。
【0152】
カプセル化することができる他の精油は、シソ科(Lamiaceae, Labiatae)またはクマツヅラ科(Verbenaceae)植物から得られるものである。
【0153】
バリア層を形成することができる製剤は、さらに、動物の皮膚に施用すると乾燥して前記バリアを形成するポリマーを含んでもよい。あるいは、製剤は、乾燥により、または開始剤の存在により重合してポリマーバリアを形成する少なくとも1種のモノマーを含んでもよい。
【0154】
一つの実施形態において、本発明の製剤を施用した後に形成される抗微生物バリアは、精油製剤の中に含まれるポリマーまたはモノマーをベースとする。別の実施形態において、ポリマーまたはモノマーは製剤の中には含まれず、精油製剤の施用後に、施用前に、または施用の直前に調製された混合物として、皮膚に施用される。
【0155】
乳房炎などの微生物が関連する病気の調節のため、または微生物の個体数を減少させるために使用する精油製剤は、さらに、病気、例えば乳房炎を防除または治療するために通常使用する他の殺菌剤を含んでもよい。このような組合せは、持続性効果またはより多くの微生物に対する広範囲の効果を示す、より有効な抗微生物活性をもたらし得る。さらに、前記組合せは前記抗菌製剤の有効濃度を顕著に減少させる可能性がある。したがって、前記製剤を伝染性および環境性の両方の型の乳房炎を調節するために使用することができる。
【0156】
それに限定されるものではないが、追加の抗微生物薬は、二酸化塩素などの安定化された塩素、クロルヘキシジン塩、次亜塩素酸アルカリなどの塩素放出化合物、過酸化水素および過酸などの酸化化合物;ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸などのプロトン化カルボン酸(すなわち、脂肪酸);アルキルアリールスルホン酸などの酸アニオン;第四級アンモニウム塩、およびヨウ素より選択される。
【0157】
この態様の製剤は、乳頭への噴霧、ブラッシング、綿球消毒または発泡などのいかなる公知の方法により、また搾乳時間の間のどの時点で、乳畜の乳頭に施用してもよい。前記製剤は、本発明の製剤が入ったタンクまたは容器に乳頭を浸漬することにより(いわゆる乳頭浸漬施用)施用してもよい。
【0158】
施用の後、製剤により覆われた乳頭を乾燥させ、その時点で抗微生物バリアおよび予防シールドが形成される。
【0159】
一つの実施形態において、製剤を、搾乳の直後、乳頭が最も感染を受けやすい時に動物の乳房に噴霧し、次の搾乳の前に動物の乳房から除去する。このような搾乳後施用は、乳頭括約筋(乳頭の先端を閉じる働きをする)が搾乳の後およそ30分間開いたままであるので、搾乳の直後に病原体が乳頭に入るのを防止する。
【0160】
別の実施形態において、抗乳房炎製剤を、搾乳をおこなわない乾乳期の開始時および間に施用する。それは乳房炎を予防および防除するために乾乳期を通して定期的に乳房に施用することができる。乳頭炎の防除プログラムの不可欠な部分は乾乳期治療である。乾乳期治療は、仔ウシを出産する直前のおよそ4〜10週間の期間のウシの治療である。この期間は泌乳のない期間としても知られている。哺乳類は、この期間中には搾乳機からの汚染の可能性に曝されないが、乳頭感染の40〜50%はこの期間に起こる。この高い感染率は乾乳期の間に哺乳類の免疫反応が減退するために起こる。さらに、乳頭は乾乳期の間に膨張して、微生物が乳腺の中に侵入するのがより容易になり、乳が流れないために、感染の可能性が増大する。そのため、乳畜をその乾乳期の間に治療することにより感染の発生率が最小限になるであろう。
【0161】
実施例1
250 gの精油(表1)に混合した35 gのトリレンジイソシアネート(TDI)の溶液を、高剪断ミキサーを用いて5 gのポリビニルアルコール(PVA)を含有する500 gの水に加えた。これに、55.6 gのポリエチレングリコール(PEG)4000を含有する120 mlの水を加えた。室温で2時間撹拌を続けた。得られたエマルションを12 gのグアーガムおよび4 gのネホシド(Nefocide)により処理した。エマルションのヒドロゲルの粘稠性を崩壊させるために、10 gの1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を加えた。
【0162】
次に、製剤を、特に乳房炎の治療におけるその抗微生物効果を評価するために、種々の微生物について試験した。
【0163】
一般的に、製剤は、試験したすべての病原体に対して効果を有する有効な抗微生物製剤であることが見出された。
【0164】
実施例2
12 gのステアリン酸を溶解した100 gの精油を、迅速に撹拌しながら(高速剪断攪拌機)、2.5 gのポリビニルアルコール(PVA)の250 ml H2O中の溶液に加えた。これに、22.8 gのCaCl2六水和物の20 ml H2O中の溶液を加えて2時間攪拌した。次に、1.5 gのメチルパラベン、8 mlのLatron B 1956および3 gのグアーガムを加えて、さらに2時間攪拌を続けた。
【0165】
他の精油を含有するマイクロカプセルを同様に調製した:
1. CaCl2によりラウリン酸中にカプセル化したティーツリー油;
2. CaCl2によりステアリン酸中にカプセル化したタイム油;
3. CaCl2によりステアリン酸中にカプセル化したユーカリ油および遊離のピレトラムおよびゴマ油;
4. CaCl2によりデカン酸中にカプセル化したオレガノ油および遊離のピレトラムおよびゴマ油;
5. FeCl2によりデカン酸中にカプセル化したティーツリー油;
6. MgCl2によりラウリン酸中にカプセル化したシトロネラ油および遊離のピレトラムおよびゴマ油;
7. MgCl2によりデカン酸中にカプセル化したティーツリー油。
【0166】
in vitro試験
イスラエル酪農庁(Israeli Dairy Board)(製造および販売)より入手した次の病原性細菌のサンプルを上記の製剤の有効性を試験するために使用した:
a) 大腸菌(Escherichia coli)、
b) 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)、
c) マイクロコッカスCNS(Micrococcus CNS)、
d) 減乳性連鎖球菌(Streptococcus Dysgalactiae)、
e) アレアノバクテリウム・ピロゲネス(Areanobacterium Pyrogenes)、および
g) 緑膿菌(Pseudomonas Aeruginos)。
【0167】
それぞれの異なる細菌をTSBAおよびヒツジ血液プレート上、37℃で18時間増殖させた。アルカノバクテリウム・ピロゲネス(Arcanobacterium Pyrogenes)を30℃で42時間増殖させた。次に、0.9 N無菌生理食塩水により細菌をプレートから洗い流し、無菌生理食塩水に懸濁した。細菌懸濁液の濃度をおよそ5×108 CFU/mlに調節した。
【0168】
懸濁液に、オレガノ油、ティーツリー油、またはタイム油を含有する精油製剤を施用した。0.01%〜1%の範囲のさまざまな濃度の精油製剤を使用した。油製剤を加えた接種細菌の体積はすべて5 mlであった。
【0169】
接種材料および精油製剤の混合物を10分間ボルテックスミキサーにより撹拌した後、混合物を無菌のガラスマイクロフィルター(Whatman filter company製のGF/C 1.2ミクロン)により、真空ポンプを用いて濾過した。
【0170】
濾液を希釈し、TSBAおよびヒツジ血液プレートに移した。プレートを最適な温度で18〜42時間インキュベートした後、それぞれのプレート上の細菌のコロニーを計数した。
【0171】
結果を下の表1および2に記載する。
【表1】

【表2】

【0172】
実施例3
ティーツリー油、ユーカリ油、オレガノ油、タイムから得られた精油、ハナハッカ(origanum)属の植物から得られた精油、およびシソ科(Lamiaceae, Labiatae)およびクマツヅラ(verbenaceae)科の植物種の他の精油などの精油も実施例2の方法によりカプセル化した。
【0173】
これらの精油を実施例1に開示した通りの界面重合によってもカプセル化した。それぞれが異なる放出プロファイルを有して、製剤に対して広い範囲の放出プロファイルを与えるポリウレタンマイクロカプセルおよびポリウレアマイクロカプセルを含有するマイクロカプセルの混合物も調製した。
【0174】
昆虫の忌避および駆除
背景
昆虫が標的に止まり、その後に刺されて即時のまたは遅発性の影響を与える可能性を与えられた後にのみその効果を発揮する殺虫剤と異なり、防虫剤は有害な昆虫が飛んで入ってくることまたは接触すること、およびそれらを引きつける表面、例えば動物またはヒトの皮膚を刺して吸うことを防止する。多くの地域において、刺し、血を吸う、および他の厄介な昆虫を駆遂することは、それらの一部が病気を感染させるために、緊急に必要である。したがって、前記昆虫を駆遂するための活性物質は、満たすべき重要な衛生(sanitary, hygienic)上の、および化粧品としての機能を有する。
【0175】
防虫剤は米国および世界中で広く使用されている。ある領域において、防虫剤の使用は昆虫により運ばれる病気の発生を回避または減少させるのに決定的な役割を果たす。例えば、疫病対策センター(Centers for Disease Control) (CDC)は、毎年、101,000通近くののライム病(シカダニにより伝染する)についての報告、1,000通の脳炎(蚊により伝染する)についての報告を受け取っている。
【0176】
多くの有効な忌避剤が当業者に公知である。そのうちの一つ、N,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)は、蚊の忌避剤として非常に有効であることが示され、最近では最も一般的に使用されているものの一つと見なされる。DEETは被験体の皮膚に施用可能に設計されており、昆虫を殺すのではなく忌避する。この物質を含む多くの組成物が、例えばクリームまたはエアロゾル組成物の形で、ヒトおよび動物の使用のために市販されている。
【0177】
近年、DEETおよび他の利用可能な防虫剤を小児に長期間使用することによる毒性の可能性に関して懸念が生じて来た。現時点で、7歳未満の小児へのDEETの使用は禁止されている。最近、米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency) (EPA)は、もはやDEETを含有する製品のラベル上に小児の安全を主張することを許可しないことを決定した。それに加えて、DEETは忌避剤として有効であるが、比較的高濃度で使用しなければならない点、およびさらに重要なことは約6時間以上に渡って連続的に害虫に対する保護を提供する効果がない点の二つの欠点が存在する。
【0178】
多くの時間制御放出剤中にカプセル化した防虫剤が報告されている。このような防虫剤システムの例は、Munteanuらによる米国特許第4,548,764号およびRutherfordによる米国特許第5,060,231号に開示されている。前記防虫剤カプセル化システムは時間の延長に関して非常に限られた効果しかなく、典型的には1週間未満の有効性を有する。使用可能な組成物中にはエステル、エーテル、およびアルデヒドなどの揮発性の高い物質が広く見られ、それらがこれらの組成物を本質的に不安定にして、そのため化学的安定化剤の存在が必要になる。
【0179】
皮膚、毛髪、または哺乳類の毛皮から血を吸う害虫を忌避するための別の利用可能な忌避剤は、シアノ(3-フェノキシフェニル)メチル-4-クロロ-α-(1-メチルエチル)-ベンゼンアセテートである。この活性化合物は、皮膚、毛髪、または哺乳類の毛皮への局所適用に適合した組成物中に便利に組み込まれる(例えば、米国特許第4,547,360号を参照されたい)。
【0180】
精油も昆虫を忌避するために使用されてきた。例えば、ラベンダー油は小児をアタマジラミの寄生から保護するために使用された。最近、ピペロナール(1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボキシアルデヒド)が忌避剤として市場に導入された。昆虫を忌避するために使用されるシトロネラキャンドルも製造されているが、シトロネラ油はろうそくから空気中に放出された場合でさえあまり防虫効果を示さないことが示されている。シトロネラ油を含有する市販の局所用組成物でさえ、おそらくそれらが非常に短時間、すなわち被験体が発汗した場合には10〜20分以下しか作用しないという事実のために、また完全な忌避効果を求める場合には体中に塗る必要があるために、あまり効果的ではない。
【0181】
農業における精油をベースとする製剤の使用も報告されている。本発明の発明者らによるPCT公開番号WO 04/098767は、他の施用法と共に、殺虫剤、防虫剤、および抗ウイルス剤または抗菌剤として使用することができる精油のマイクロカプセルを開示している。マイクロカプセルをある基質に施用すると、そこに含まれる精油が長時間にわたって一定速度で放出される。前記マイクロカプセルの有効性はカプセル化した物質の効力およびマイクロカプセル自体に関するパラメーター、すなわち大きさ、カプセル化する膜の厚さ、そこに含まれる精油を持続放出する能力等に依存し、それらを標的の環境に運び、その後すぐに乾く水性媒体には依存しない。
【0182】
本発明の発明者らによる米国特許出願第11/040,102号は、少なくとも1種のカプセル化した揮発性精油およびその中に前記少なくとも1種の揮発性精油を有する非揮発性ビヒクルを含むカプセル化した精油製剤を開示している。前記製剤は農業環境における害虫の集団に対処するために使用される。
【0183】
概要
今回、米国特許出願第11/040,102号の方法または本発明の方法により製造されたものなどの精油製剤を、動物もしくはヒトの皮膚から、または昆虫が止まる可能性もしくはそれらが引きつけられる可能性がある表面および物体から昆虫を忌避または駆除するために使用することができることが見出された。前記昆虫は動物またはヒトに不快または傷害を引き起こし得るものであって、例えば、蚊、ダニ、ハエ、アリおよびゴキブリである。さらに、前記製剤を前記動物またはヒトの皮膚に、または動物もしくはヒトが接触もしくは接近する可能性がある屋内もしくは屋外の表面に、直接施用することができることが発見された。
【0184】
例えば、カプセル化した揮発性精油(例えばシトロネラ)およびビヒクルとしての非揮発性精油(例えばピレトラム)を含み、さらに昆虫成長調節物質、ノバルロン(Novaluron)などの活性物質を含んでもよい(カプセル化した精油と共に、ビヒクル内に、またはその両方に含む)米国特許出願第11/040,102号の製剤が、魚用の水槽、湖、水族館、飲料水の貯水槽、および他の養殖用施設などの自然または人工の貯水設備などの濡れたまたは湿った環境から昆虫を忌避または駆除するのに有効であることが証明された。
【0185】
また、前記忌避/駆除製剤は、同様の目的に利用可能な既存の防虫剤と比べて下記の利点の一つ以上を達成するために使用することができることが見出された:
1. それらはヒトの皮膚への適用において市販されているものよりも有効性が高い;
2. それらは処理された領域内の昆虫の個体数を顕著に減少させるので、皮膚に接触する製剤の使用が不要になる、または大きく減少する;
3. それらは蚊および他の昆虫による病気または不快の拡散をより効果的に減少させる;
4. それらは大量の蚊または昆虫の侵襲において皮膚製剤と併用して相乗効果を得ることができる;
5. それらは、個々の動物に施用することなしに、犬小屋、納屋およびサーカスなどの動物を飼育する領域における害虫の個体数を減少させるために使用することができる;
6. それらは子供の周辺に施用することができるので、直接接触する使用を避け、子供の場合大人よりも起こりやすい副作用を避けることができる。
【0186】
そこで、本発明の別の態様において、処理された非農業環境において昆虫の個体数を減少させるための忌避または殺虫製剤であって、少なくとも1種のカプセル化した揮発性精油およびその中に前記少なくとも1種の揮発性精油を支持する非揮発性のビヒクルを含む前記製剤を提供する。非揮発性ビヒクルは固体または液体のビヒクルであってよい。
【0187】
一つの実施形態において、カプセル化した精油の製剤は、本発明の方法により調製される。別の実施形態において、カプセル化した精油の製剤は界面重合により調製される。
【0188】
別の実施形態において、前記昆虫は動物またはヒトに不快または傷害を引き起こし得る。前記昆虫は、蚊、ダニ、ハエ、アリおよびゴキブリより選択されるが、それらに限定されない。
【0189】
別の実施形態において、前記非揮発性ビヒクルは、非揮発性精油、非揮発性植物油またはそれらの組合せより選択される。
【0190】
動物またはヒトの皮膚に直接施用するのに適した製剤を製造する場合に、それはさらに皮膚に適用した時に別の利益を提供し得る少なくとも1種の医薬品または化粧品を含んでもよい(例えば、メントール、バニリン)。
【0191】
ヒトまたは動物への使用のために、精油は、ペパーミント油、チョウジ油、ユーカリ油およびラベンダー油;アニス油、アンジェリカ油、アイリス油、ウイキョウ油、オレンジ油、カナンガ油、キャラウェー油、カルダモン油、グアヤクウッド油、クミン油、クロモジ油、ケイヒ油、ゼラニウム油、コパイババルサム油、コリアンダー油、ペリラ油、シダーウッド油、シトロネラ油、ジャスミン油、パルマローザ油、セダー油、スペアミント油、セイヨウハッカ油、スターアニス油、チュベローズ油、チョウジ油、ネロリ油、ウインターグリーン油、トルーバルサム油、パチョリ油、ローズ油、パルマローザ油、ヒノキ油、ヒバ油、ビャクダン油、プチグレン油、ベイ油、ベチバー油、ベルガモット油、ペルーバルサム油、ボワデローズ油、ショウノウ油、マンダリン油、ユーカリ油、ライム油、ラベンダー油、リナロエ油、レモングラス油、レモン油、ローズマリー油、および和種ハッカ油より選択することができる。
【0192】
ヒトまたは動物の皮膚から昆虫を忌避することを目的とする製剤においてカプセル化することができる精油は、苦扁桃油、アニス油、バジル油、ベイ油、キャラウェー油、カルダモン油、セダー油、セロリ油、カモマイル油、ケイヒ油、シトロネラ油、チョウジ油、コリアンダー油、クミン油、ディル油、ユーカリ油、ウイキョウ油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、ハッカ油、パセリ油、ペパーミント油、コショウ油、ローズ油、スペアミント油(メントール)、橙皮油、タイム油、ウコン油、およびウインターグリーンの油より選択される。
【0193】
精油における活性成分の例は、シトロネラール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸プロピル、シトロネロール、サフロール、およびリモネン、オルガノ(Organo)、シトロネラおよびラベンダー、ゼラニウム油、ローズマリー油およびペパーミント油、スペアミント油、松葉油およびユーカリ油である。好適さは少ないが、それでも有効なものは、レモン油、グレープフルーツ油、ラバンジン油、ケイヒ油、チョウジ油、タイム油、ウインターグリーン油、セダー油、レモングラス油、マンダリン油、タンジェリン油、オレンジ油、シトラス油、ライム油、コリアンダー油、ザクロ油、クルミ油、ピーナッツ油、コーン油、キャノーラ油、ヒマワリ油、ゴマ油、亜麻仁油、サフラワー油およびオリーブ油である。
【0194】
幼虫駆除剤および殺虫剤として使用するための製剤に使用することができ、ヒトおよび動物への使用に適した精油は、マツ、ピレトラム、ティーツリー、タイム、およびα-テルピネオール、アミルケイヒアルデヒド、サリチル酸アミル、アニスアルデヒド、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、ケイヒアルデヒド、ケイヒアルコール、カルバクロール、カルベオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、サリチル酸ジメチル、ユーカリプトール(シネオール)、オイゲノール、イソオイゲノール、ガラクソリド、ゲラニオール、グアイアコール、イオノン、d-リモネン、メントール、アントラニル酸メチル、メチルイオノン、サリチル酸メチル、α-フェランドレン、ペニーロイヤル油、ペリルアルデヒド、1-または2-フェニルエチルアルコール、1-または2-フェニルエチルプロピオネート、ピペロナール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、D-プレゴン、テルピネン-4-オール、酢酸テルピニル、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、タイム油(白および赤)、チモール、trans-アネトール、バニリン、エチルバニリン等より選択される。
【0195】
また、タイム油、オイゲノールおよび2-フェネチルプロピオネート、カルバクロールおよびアスナロ(Thujopsis dolabrata var hondai sawdust)に由来するβ-ツヤプリシンなどの植物精油と共に使用することができるローズマリー油および/またはウインターグリーン油も有用である。
【0196】
付加的な薬剤は、補助剤、抗酸化剤、UV吸収剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、および水不溶性ポリマー、溶媒(例えばアルコール)等より選択される。
【0197】
ある製剤の忌避剤または殺虫剤としての施用可能性は、使用する精油または精油の組合せに依存する。ある精油の組合せは昆虫を忌避するためのみに有用である一方で、別の組合せは昆虫の駆除に有効である。使用する精油製剤の濃度も、製剤の忌避または駆除の能力に影響を与え得る。
【0198】
「忌避」という用語またはその派生語は、昆虫を殺さずに、昆虫を遠ざける作用を意味する。「駆除」という用語またはその派生語は、昆虫の集団全体またはその一部を殺す作用を意味する。「昆虫」という用語は、動物またはヒトに不快または傷害を引き起こす蚊、ダニ、ハエ、アリおよびゴキブリならびに他の昆虫、線虫を指す。
【0199】
本明細書において使用する「蚊」という用語はすべてのタイプの蚊、例えば、ハマダラカ(Anopheles)、ネッタイシマカ(Aedes)、およびイエカ(Culex)を意味する。これらには、タイガー・モスキート、アエデス・アボリギニス(Aedes aborigines)、ネッタイシマカ(Aedes Aegypti)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、アエデス・カンタトル(Aedes cantator)、アエデス・シエレンシス(Aedes sierrensis)、アエデス・ソリシタンス(Aedes sollicitans)、アエデス・スクァミガー(Aedes squamiger)、カラフトヤブカ(Aedes sticticus)、キンイロヤブカ(Aedes vexans)、アノフェレス・クァドリマクラタス(Anopheles quadrimaculatus)、クレックス・ピピエンス(Culex pipiens)、およびクレックス・キンケファクシアタス(Culex quinquefaxciatus)が含まれるが、それに限定されない。
【0200】
本明細書において使用する「ダニ」という用語は、シカダニ、アメリカイヌカクダニ(Dermacentor variabilis)、オルニソドロス・パルケリ(Ornithodoros parkeri)、O.モウバタ(O. moubata)、およびデルマセントル・アンデルソニ(Dermacentor andersoni)を含むがそれに限定されないすべてのタイプのダニを指す。本明細書において使用する「ゴキブリ」という用語は、 ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)、ウッド・コックローチ(Parcoblatta pennsylvanica)、チャオビゴキブリ(Supella longipalpa)、およびクロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)を含むがそれに限定されないすべてのタイプのゴキブリを指す。
【0201】
標的の環境に損傷を与えることができる昆虫の集団を忌避または駆除することにより、製剤は、昆虫ベクターによるウイルスの伝染を制限することでウイルスにより引き起こされる損傷を減少させることに役立つ。
【0202】
製剤は、施用法、処理される環境、施用される製剤の濃度、および被覆の程度(例えば、皮膚全体または特定の器官を覆う皮膚への施用)に応じた種々の形に調製される。前記剤形は、乳液濃縮物、湿潤性粉末、顆粒湿潤性粉末、流動性製剤、懸濁液、顆粒、ダスト、燻蒸剤、溶液、噴霧製剤および水溶液より選択されるが、それらに限定されない。
【0203】
本発明はさらに動物およびヒトに不快または傷害を引き起こし得る昆虫の集団を忌避または駆除する方法であって、非農業環境または前記環境における昆虫の集団に、少なくとも1種のカプセル化した揮発性精油およびその中に前記少なくとも1種の揮発性精油を支持する非揮発性ビヒクルを含む製剤を施用することを含む前記方法を提供する。
【0204】
一つの実施形態において、前記方法は動物またはヒトの皮膚に前記製剤を直接施用することを含む。
【0205】
別の実施形態において、前記方法は、床、壁、天井、家具、網、仕切り、芝、衣類、車のシート、畜産における表面、および養殖設備などの表面に前記製剤を施用することを含む。
【0206】
本発明に至る研究の過程で、非揮発性ビヒクルが揮発性精油が及ぼす忌避効果を増強すること、および非揮発性ビヒクルが及ぼす効果を揮発性精油が増強することも見出された。そこで、本発明はさらに、それぞれ有効量の本発明の製剤を含む忌避製剤を提供する。
【0207】
別の実施形態において、製剤は精油忌避剤に加えて、昆虫成長調節剤(IGR)、殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、殺線虫剤、および/または殺外部寄生虫剤より選択される少なくとも1種の添加剤を、マイクロカプセル内に、またはビヒクルの一部として含んでもよい。
【0208】
好ましくは、前記製剤は、前記少なくとも1種のカプセル化した精油または非揮発性ビヒクルのいずれかに可溶性の少なくとも1種の殺虫剤を含有する。前記殺虫剤は、例えばカルバメート、尿素、トリアジン、トリアゾール、ウラシル、有機リン酸、モルホリン、ジニトロアニリン、アシルアラニン、ピレトロイド、および有機塩素であり得る。特定の例は、カルボフラン(carbofuran)、アジンホスメチル(azinphos-methyl)、スルフェントラゾン(sulfentrazone)、カルフェントラゾンエチル(carfentrazone-ethyl)、シペルメトリン(cypermethrin)、シロマジン(cyromazine)、ベータシフルトリン(beta-cyfluthrin)、エンドスルファン(endosulfan)、ホスメット(phosmet)、クロロブロムロン(chlorobromuron)、クロロクスロン(chloroxuron)、クロロトルロン(chlorotoluron)、フルメツロン(fluometuron)、メトブロムロン(metobromuron)、チアザフルロン(thiazafluron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ルフェヌロン(lufenuron)、クロルフルアズロン (chlorfluazuron)、ノバルロン(novaluron)、ジメタクロル(dimethachlor)、メトラクロル(metolachlor)、プレチラクロル(pretilachlor)、2-クロロ-n-(1-メチル-2-メトキシエチル)-アセト-2,6-キシリジド、アラクロル(alachlor)、ブタクロル(butachlor)、プロパクロル(propachlor)、ジメテナミド(dimethenamid)、ビフェノックス(bifenox)、4-(4-フェンチン-1-イルオキシ)ジフェニルエーテル、アシフルオルフェン(acifluorfen)、オキシフルオルフェン(oxyfluorfen)、フルオログリコフェンエチル(fluoroglycofen-ethyl)、ホメサフェン(fomesafen)、cis,trans-(+)-2-エチル-5-(4-フェノキシフェノキシメチル)-1,3-ジオキソラン、フルアジホップブチル(fluazifop-butyl)、ハロキシホップメチル(haloxyfop-methyl)、ハロキシホップ-(2-エトキシエチル)、フルオロトピック(fluorotopic)、フェノキサプロペチル(fenoxapropethyl)、キザロホップエチル(quizalofop-ethyl)、プロパキザホップ(propaquizafop)、ジクロホップメチル(diclofop-methyl)、ブトラリン(butralin)、エタルフルラリン(ethalfluralin)、フルクロラリン(fluchloralin)、イソプロパリン(isopropalin)、ペンジメタリン(pendimethalin)、プロフルラリン(profluralin)、トリフルラリン(trifluralin)、アクララニン(aclalanines)、フララキシル(furalaxyl)、メタラキシル(metalaxyl)、ベンゾイルプロップエチル(benzoylprop-ethyl)、フラムプロップメチル(flamprop-methyl)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、エタコナゾール(etaconazol)、プロピコナゾール(propiconazole)、1,2-(2,4-ジクロロフェニル)-ペント-1-イル-1h-1,2,4-トリアゾール、トリアジメホン(triadimefon)、ジオキサカルブ(dioxacarb)、フラチオカルブ(furathiocarb)、アルジカルブ(aldicarb)、ベノミル(benomyl)、2-sec-ブチルフェニルメチルカルバメート、エチオフェンカルブ(etiofencarb)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、イソプロカルブ(isoprocarb)、プロポキスル(propoxur)、カルベタミド(carbetamide)、ブチレート(butylate)、ジアレート(di-allat)、eptc、モリネート(molinate)、チオベンカルブ(thiobencarb)、トリアレート(tri-allate)、ベモレート(vemolate)、ピペロホス(piperophos)、アニロホス(anilofos)、ブタミホス(butamifos)、アザメチホス(azamethiphos)、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、ジクロルボス(dichlorvos)、ジアジノン(diazinon)、メチダチオン(methidathion)、アジンホスエチル(azinphos-ethyl)、アジンホスメチル、クロルピリホス(chlorpyrifos)、クロルチオホス(chlorthiofos)、クロトキシホス(crotoxyphos)、シアノホス(cyanophos)、デメトン(demeton)、ジアリホス(dialifos)、ジメトエート(dimethoate)、ジスルホトン(disulfoton)、エトリムホス(etrimfos)、ファムフル(famphur)、フルスルホチオン(flusulfothion)、フルチオン(fluthion)、ホノホス(fonofos)、ホルモチオン(formothion)、ヘプテノホス(heptenophos)、イソフェンホス(isofenphos)、イソキサチオン(isoxathion)、マラチオン(malathion)、メホスホラン(mephospholan)、メビンホス(mevinphos)、ナレド(naled)、オキシデメトンメチル(oxydemeton-methyl)、オキシデプロホス(oxydeprofos)、パラチオン(parathion)、ホキシム(phoxim)、ピリミホスメチル(pirimiphos-methyl)、プロフェノホス(profenofos)、プロパホス(propaphos)、プロペタンホス(propetamphos)、プロチオホス(prothiophos)、キナルホス(quinalphos)、スルプロホス(sulprophos)、フェメホス(phemephos)、テルブホス(terbufos)、トリアゾホス(triazophos)、トリクロロネート(trichloronate)、フェナミポス(fenamipos)、イサゾホス(isazophos)、s-ベンジル-o,o-ジイソプロピルホスホロチオエート、エジンホス(edinphos)、およびピラゾホス(pyrazophos)であり得る。
【0209】
別の実施形態において、本発明の製剤は感染のウイルスベクターとして作用することができるウイルス媒介昆虫に対して使用される。「ウイルスベクター」という用語は、植物ウイルス病原生物体を運搬し媒介する能力がある、本明細書において定義し、例示した通りの昆虫を指す。
【0210】
本発明の別の態様において、標的の環境または昆虫の集団もしくはその場所に、本明細書に開示した通りのマイクロカプセル化した精油製剤を施用することを含む、昆虫の集団に対処する方法を提供する。
【0211】
本明細書において使用する「非農業標的環境」とは、一般的に農業または園芸環境とは異なる環境を指す。この用語は、昆虫の忌避または駆除が望まれる屋内または屋外の環境を指す。それらは、家庭の室内、職場、建物の室内、庭、学校、保育園、公衆娯楽施設、スポーツ競技場、地下鉄の駅などの交通施設、空港のターミナル、船、ヨット、車、バス、列車等であり得る。噴霧することができる表面は、床、壁、天井、家具、網、仕切り、芝等である。
【0212】
動物またはヒトに不快または傷害を引き起こし得る昆虫のほとんどが、池などの湿った環境またはその近くに生息するので、そのような湿った環境、すなわち養殖設備から存在する昆虫の集団を駆除または忌避する必要が存在する。
【0213】
実際に、本発明の製剤は種々の貯水設備に施用することにより、標的の貯水設備からの、存在する前記昆虫の集団の駆除、または日和見的に存在する昆虫の忌避を達成することができることが見出された。これにより、環境ならびに前記貯水装置をレクリエーションでまたは日常的に使用するヒトおよび動物の両方に環境的危険を作り出す可能性がある、毒性があり、長期間残存する化学物質を使用する必要がなくなる。
【0214】
「貯水設備」または「湿った環境」という用語は、本明細書において、給水システム、冷却システム、水泳用プール、自然および人工の貯水池、漁業設備、水のタンク、水族館、灌漑システムおよび他の大量の水を指すが、それに限定されない。
【0215】
一つの実施形態において、製剤は乾燥した形で、昆虫の集団に対処するのに十分な量で貯水設備に加える。別の実施形態において、乾燥した組成物を適切なビヒクルに溶解した後に貯水設備に加える。
【0216】
貯水設備から害虫を根絶するために使用する製剤は、微生物の防除、および水源、特に灌漑用の管への根の侵入の防止にも有用である。
【0217】
地下灌漑または低体積灌漑と呼ばれる技術による表面上および下からのドリップ灌漑は、植物の根の領域に直接水および栄養を送達する方法である。前記水送達は正確な灌漑の制御および限られた水資源の効率的な利用を提供する。前記灌漑システムの設置の容易さおよび比較的低い設置コストのために、地下灌漑は、個人および地方自治体の両方の消費者により庭および公園の水やりのために選択されてきた。
【0218】
植物への水やりに再利用された水を使用する場合、適切に設計され、管理された地下ドリップ灌漑システムは、従来の水やり法と比べて多くの利点を提供する。例えば、地下灌漑は、水を地下に散布することにより、再利用された水に曝されることによる健康へのリスクを最小化する。
【0219】
長期の用途に地下ドリップ灌漑を利用する上での第1の課題は、灌漑システムの内部の閉塞およびドリップ管への外部からの根の侵入の可能性であった。多くの解決法が提案された。例えば、あるものは排出管への根の侵入を防止するためにトリフルラリンを使用し、他のものは配管材料自体に直接根の侵入の障壁を組み入れる。
【0220】
ドリップ管への根の侵入ならびに堆積物、懸濁する固体、藻および細菌粘液の蓄積による内部の目詰まりは、より良い前処理、濾過消毒、および新しい配管および排出の設計により大きく減少したが、依然として、日和見的な根の侵入ならびに真菌および細菌の増殖による堆積物の蓄積の両方を防止する一体化した方法が必要である。
【0221】
養殖の製造および管理における最大の問題の一つは、迅速に繁殖して数時間または数日以内に魚およびエビを殺す水中の細菌および真菌である。前記養殖に本明細書に開示された製剤を施用すると、前記真菌および細菌の防除に役立ち、養殖物の生命および健康の維持の助けとなる。
【0222】
細菌および真菌の侵入は、上で論じた通りに防除することができる。線虫もまた、線虫およびその卵を防除する天然の精油を含む本発明の精油製剤を土壌に施用することにより防除することができる。
【0223】
今回、カプセル化した精油を含む製剤を地下灌漑システムの水流に混入させることにより、微生物の長期の防除が可能になり、配管の中への根の侵入を防止することが発見された。
【0224】
そこで、本発明は、微生物の防除および灌漑用配管への根の侵入の防止に使用するための、本明細書に開示された通りの抗微生物および/または抗菌特性を有するものより選択される少なくとも1種の精油を含む製剤を提供する。前記精油の例は、ティーツリー油、タイム油、チョウジ油、ユーカリ油、オレガノ油、シトロネラ油、バジル油、ウイキョウの油およびアニスの油である。
【0225】
一つの実施形態において、根の防除のためにこれらの精油を合成除草剤の混合物と共に使用する。別の実施形態において、除草特性を有する精油を使用する。除草特性を有するこれらの精油または合成除草剤は、一緒に、または異なるマイクロカプセルにカプセル化することができる。
【0226】
除草特性を有する精油は、単環の炭素6員環構造を含み、少なくとも1個の酸化されたかまたはヒドロキシル官能基により置換されているものである。この定義に包含される植物性精油の例には、アルデヒドC16(純粋)、アミルケイヒアルデヒド、サリチル酸アミル、アニスアルデヒド、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、ケイヒアルデヒド、ケイヒアルコール、α-テルピネオール、カルバクロール、カルベオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、p-シメン、フタル酸ジエチル、サリチル酸ジメチル、ジプロピレングリコール、ユーカリプトール(シネオール)、オイゲノール、イソオイゲノール、ガラクソリド、ゲラニオール、グアイアコール、イオノン、d-リモネン、メントール、アントラニル酸メチル、メチルイオノン、サリチル酸メチル、α-フェランドレン、ペニーロイヤル油、ペリルアルデヒド、1-または2-フェニルエチルアルコール、1-または2-フェニルエチルプロピオネート、ピペロナール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、D-プレゴン、テルピネン-4-オール、酢酸テルピニル、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、タイム油、チモール、trans-アネトールの代謝物、バニリン、エチルバニリン等からなる群より選択されるものが含まれるが、それに限定されない。
【0227】
これらの精油は、抗微生物および殺菌活性を有するカプセル化した精油の担体として使用してもよい。
【0228】
抗微生物または/および殺菌および/または除草のいずれかのための精油は同じマイクロカプセルに一緒にカプセル化してもよく、または別々のマイクロカプセル中に製造した後に混合してもよい。
【0229】
本発明の製剤は、カプセル化した揮発性精油が非揮発性ビヒクルと予め混合された単一の製剤として、または第1の成分としてカプセル化した揮発性精油を、第2の成分として非揮発性ビヒクルを、例えば別々の容器に含み、もしくは別々に施用する二成分製剤として、提供、保存、包装または施用することができる。
【0230】
そこで、以下のステップ:
- 標的に少なくとも1種の揮発性精油を含むマイクロカプセル製剤を施用するステップ、
- 標的の環境に非揮発性物質を含む第2の製剤を施用するステップ
を含む、昆虫の集団に対処する方法が提供される。
【0231】
第2の製剤の施用は、第1の製剤の施用の直後におこなってもよく、またはその後のいずれの時点でおこなってもよい。当業者は、特定の事例に、本明細書に開示した昆虫の集団に対処するための2つの方法のいずれがより適切であるかを決定することができるであろう。
【0232】
本明細書に開示される製剤は、当業者に公知のいずれの方法により標的に送達してもよい。前記方法には、例えば、(a)ある表面への製剤の手作業または機械による施用、例えば水により希釈した、または希釈していない液体調製物の前記表面への施用;(b)ダストまたは湿潤性粉末などの顆粒剤の前記表面への施用;(c)近隣内の多くの庭への、または特定の選択された領域への液体製剤の地面または空中散布;(d)庭の表土への製剤の埋設等が含まれる。
【0233】
A) 蚊を忌避するために使用する製剤
下記の製剤を種々の表面および室内および屋外の場所から蚊を忌避するために使用した:
製剤1: シトロネラ油、ラベンダー油、ゼラニウム油を、1:1:1の比でアーモンド油中に溶解して形成した油の24%溶液(Di-TushTMの商品名でTamar Ltd., イスラエルより購入した)を、下記の実施例1に記載する方法によりポリウレタンエンベロープの中にマイクロカプセル化した。
製剤2:カプセル化したシトロネラ油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤3: ノバルロンと共にカプセル化したシトロネラ油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤4: ノバルロンと共にカプセル化したシトロネラ油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油および20 mg ノバルロン。
製剤5: ノバルロンと共にカプセル化したシトロネラ油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油および10 mg ノバルロン。
製剤6: ノバルロンと共にカプセル化したシトロネラ油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油およびノバルロン。
製剤7: カプセル化したティーツリー油。
製剤8: カプセル化したティーツリー油およびノバルロン、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤9: CaCl2によりラウリン酸中にカプセル化したピレトラム、シトロネラ油、ゴマ油。
【0234】
製剤10: カプセル化したティーツリー油およびノバルロン、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油およびノバルロン。
製剤11: CaCl2によりラウリン酸中にカプセル化したティーツリー油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤12: CaCl2によりラウリン酸中にカプセル化したティーツリー油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤13: CaCl2によりステアリン酸中にカプセル化したシトロネラ油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤14: CaCl2によりステアリン酸中にカプセル化したティーツリー油、ならびに遊離のピレトラムおよびゴマ油。
製剤15: CaCl2によりデカン酸中にカプセル化したシトロネラ油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤16: CaCl2によりデカン酸中にカプセル化したティーツリー油、ならびにカプセル化していないピレトラムおよびゴマ油。
製剤17: MgCl2によりデカン酸中にカプセル化したシトロネラ油、ならびに遊離のピレトラムおよびゴマ油。
製剤18: MgCl2によりデカン酸中にカプセル化したティーツリー油、ならびに遊離のピレトラムおよびゴマ油。
製剤19: また、上記のそれぞれの製剤を、Ca(OH)2またはMg(OH)2などの2価のCaまたはMg塩により、または種々の対イオンを有する他の種々の2価または3価のイオンにより脂肪酸を用いてカプセル化した。
【0235】
B) 忌避試験
実施例1
シトロネラ、ラベンダーおよびゼラニウムなどの活性成分の3種の精油を1:1:1の比でアーモンド油中に溶解して24%の活性成分の溶液を形成した混合物を、研究室において調製するか、Di-TushTM (Tamar LTD, イスラエル)の商品名の溶液として購入する。
【0236】
この実施例において、24%の活性精油濃度を有する153 gのDi-TushTMを19.8 gのTDIと混合し、270 gの水および2.7 gのPVAからなる水溶液に分散した。マイクロカプセルが形成された約5分後に、75 gの水に溶解した32.3 gのPEG 4000を加えて撹拌を続けた。調製の最後に、2.4 gのネホシド (Nefocide)、0.7gのロドポール(Rodopol)およびpHを約6にするのに十分な量の重リン酸ナトリウムを加えた。
【0237】
また、48%の活性成分濃度を有する製剤1をも同じ方式により調製した。両方の製剤が、床および壁に噴霧した場合に優れた蚊忌避特性を示した。両方の製剤はカプセル化していない製剤よりも長時間の活性を示した。
【0238】
実施例2
6%の活性成分を有する250 gの製剤1に混合した35 gのTDIの溶液を、高剪断ミキサーを用いて5 gのPVAを含有する500 gの水に加えた。これに、55.6 gのPEG 4000を含む120 mlの水を加えた。室温で2時間撹拌を続けた。この分散物に12 gのグアーガムおよび4gの殺菌剤(ネホシド)を加えた。ヒドロゲルを崩壊させるために、10 gのSDS (1%)を加えた。
【0239】
住居の近隣において、半エーカーの領域に、1エーカーの土地あたり0.05〜1%または0.1%〜0.5%で50ml〜1,000 mlの濃度で噴霧した場合に、近接する領域には大量に蚊が存在したのに対して、噴霧した領域には2週間に渡って蚊が存在しない状態が維持された。この製剤は同じ精油のカプセル化されていない製剤または市販のカプセル化されていない精油と比べてより長時間の活性を示した。
【0240】
実施例3
100 gのシトロネラ油およびその中に溶解した12 gのデカン酸を、迅速に撹拌した(高速剪断攪拌機)2.5 gのPVAの250 mlのH2O中の溶液に加えた。これに、22.8 gのMgCl2六水和物の20 mlのH2O中の溶液を加えて、2時間攪拌した。次に、20 gのピレトラム、2 gのゴマ油、1.5 gのメチルパラベン、8 mlのLatron B 1956および3 gのグアーガムを加えてさらに2時間攪拌を続けた。
【0241】
実施例4
実施例3をピレトラムを用いずに繰り返した。製剤3および4の両方が、家庭およびオフィスの壁、床、天井、家具、網、仕切り、芝、衣類、車のシート、動物用設備の表面、および水栽培設備などの表面に噴霧した場合に優れた蚊の忌避特性を示した。
【0242】
実施例5
製剤5を、Di-Tush製品の代わりに93 gのシトロネラ油、10 gのピレトラムおよび1 gのゴマ油を用いて、製剤1と同様に調製した。
【0243】
実施例6
製剤6を、カプセル化した揮発性精油としてDi-Tush製品の代わりにゼラニウム油を用いて、製剤1と同様に調製した。
【0244】
実施例7
製剤7を、カプセル化した揮発性精油としてDi-Tush製品の代わりにティーツリー油を用いて、製剤1と同様に調製した。
【0245】
実施例8
製剤8を、カプセル化した揮発性精油としてDi-Tush製品の代わりにラベンダー油またはチョウジ油を用いて、製剤1と同様に調製した。
【0246】
実施例9
製剤9を次の成分および量を用いて、製剤1と基本的に同一の方法により調製した。Di-Tush製品の代わりに、次の成分:2.1 gのPVA、88 gのジンジャー油、22 gの綿実油、15.3 gのTDI、24.4 gのPEG 4000、1.8 gのネホシドおよび0.5 gのロドポールを用いた。
【0247】
実施例10
製剤をイエバエ(Musca domestica)に対する忌避剤として調製した。
【0248】
96%の活性精油濃度を有する250 gのDi-Tushを35 gのTDIと混合して、500 mlの水中に5.0 gのPVAを含む水溶液に分散した。マイクロカプセルが形成された約5分後に、120 mlの水に溶解した55.6 gのPEG 4000を加えて、均一な溶液が形成されるまで分散を続けた(約30分〜2時間)。調製の最後に、4.0 gのネホシドおよび10 gのSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を加えた。撹拌を続けながら、12 gのグアーガムを加えてさらに撹拌し、均一な溶液を形成した。
【0249】
この製剤の忌避性を決定するために、約400匹の実験室で育てたハエの成虫を各試験に使用した。ハエを閉じた環境に入れ、調製した製剤を噴霧したおよび噴霧していない紙の上に止まったハエの数を数えた。
【0250】
下記の表3に示すように、すべての試験において噴霧した紙の上に止まったハエの数は対照に比べてはるかに少なかった。さらに、試験1において、48時間後に約35%の死亡率が観察された。試験2においては、1時間後に約65%の死亡率が観察され、5時間後に約91%の死亡率が観察された。24時間後に集団全体の死亡が観察された。
【表3】

【0251】

【0252】
実施例11
アリ(Tapinoma simrothi)およびゴキブリ(Germanica Blatella)に対する殺虫製剤を調製した。製剤は下記の通りに調製した製剤AおよびBの組合せである:
製剤A: 112.5 gのティーツリー油および18.3 gのピリネックス (pyrinex)を18.7 gのTDIと混合した。この溶液を、250 mlの水に2.5 gの溶解したPVA(ポリビニルアルコール)を含有する水溶液に分散した。これに、4.2 gのエチレンジアミンおよび3.7 gのジエチレントリアミンを含む65 mlの水を加えて、分散を続けた。さらに撹拌を続けた後、均一な分散物が得られ、これに1.7 gのネホシドおよび6.0 gのグアーガムを加えて撹拌を続けた。次に、溶液をクエン酸などの酸によりpH 7に中和した。次に、5.15 gのゴマ油および51.5 gピレトラムを加えて、再び均一な混合物が得られるまで撹拌を続けた。
製剤B: 112.5 gのティーツリー油および18.3 gのピリネックス (pyrinex)を17.5 gのTDIと混合し、これを、250 mlの水に2.5gの溶解したPVA(ポリビニルアルコール)を含む水溶液に分散した。これに、23.3 gのPEG 3350を含む70 mlの水を加えて、分散物の混合を続けた。さらに撹拌した後、均一な分散物が形成された。次に、2.0 gのネホシド、5.0 gのSDSおよび6.0 gのグアーガムを加えて撹拌を続けた。最後に、5.15 gのゴマ油および51.5 gのピレトラムを加えて、均一な混合物が得られるまで撹拌を続けた。
【0253】
次に、製剤AおよびBを40 gのAおよび20 gのBの比で混合した。この製剤の有効性を試験するために、アリまたはゴキブリを入れた閉鎖された空間に前記混合物を噴霧して、死亡率を決定した。結果を下記の表4に示す。
【表4】

【0254】

【0255】
実施例12
ドリップ灌漑システムに使用する精油マイクロカプセルの製剤を、界面重合および本発明の方法の両方により達成した。
【0256】
17.5 gのTDIを125 gのチョウジ油に混合した後、2.5 gのPVAを含有する250 gの水に高剪断ミキサーを用いて加えた。これに、27.8 gのPEG 4000を含む70 mlの水を加えた。室温で2時間混合を続けて分散物を得た。この分散物に0.4 gのキサンタンガム(ロドポール)および2 gの殺菌剤(ネホシド)を加えた。このエマルションのヒドロゲルの性質を崩壊させるために、5 gのSDS(ドデシル硫酸ナトリウム、1%)を加えた。
【0257】
この製剤を地下ドリップ灌漑システムまたは地上ドリップ灌漑システムのいずれかの水流入口に入れると、システムの配管および開口部における細菌および真菌の両方の増殖を効果的に防除することが見出された。
【0258】
実施例13
実施例1のカプセル化した精油を、2,6-ジクロロベンゾニトリル(ジクロベニル(Dichlobenil))およびメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(メタム(Metam))、ジコート(diquat)およびパラコート(Paraquat)より選択される除草剤と共に製剤した場合、水開口部への根の成長も細菌および真菌の増殖と同様に有効に防除された。
【0259】
実施例14
チョウジ油の代わりに125 gのタイム油を用いて実施例12を繰り返して、同様に灌漑システムの配管および開口部における細菌および真菌の両方の増殖を効果的に防除する優れた結果を得た。
【0260】
実施例15
パイン油、ティーツリー油またはユーカリ油などの抗微生物活性および除草活性の両方を有する精油を用いて実施例12を繰り返した。これらの精油のそれぞれ一つまたは組合せを含む製剤は、灌漑システムの配管および開口部における細菌および真菌の両方の増殖を効果的に防除する優れた結果を示した。
【0261】
本発明の別の態様において、製剤は、種々の材料の品物、果実もしくは野菜、または前記昆虫により攻撃される可能性がある他の物体を入れたり支持したりするために使用されるものなどの包装または収容材料に組み込むことができる。包装または収容材料は、貯蔵または出荷の間に、包装紙または容器からその中に収容される品物に精油がゆっくりとまたは制御されて放出されるように設計される。包装または収容材料は、例えば、小袋、プラスチックまたは紙袋、ナイロンシート、ポリエステルシート、包装紙、プラスチックまたは他の密閉容器、果実または野菜を手または機械により包装するための紙またはプラスチックの材料等であり得る。
【0262】
果実および野菜は水の含有量が多いことが特徴である。使用可能な製品であるためには最小限の水の含有が必要である。果実および野菜の乾燥は二つの結果を有する。すなわち、(1)製品の重さが減少し、そのために価値が減少する、および(2)果実または野菜の栄養素の化学的濃度が変化して、その損傷を増大し、少なくともその味を損なう結果となることである。すべての場合に、これは販売者または消費者のいずれかにとって大きな経済的損失である。そこで、果実または野菜の周りにコーティングを形成することにより、水の蒸発および栄養の損失を減少させる製剤の必要性が生じる。前記製剤の使用は、果実または野菜の保存期間および販売期間を維持する上で大きな効果を有する可能性がある。
【0263】
さらに、収穫後の果実および野菜は種々の理由でその皮に侵入する微生物および昆虫の攻撃に対して不安定であることが知られている。本発明のこの態様において使用する製剤は、果実および野菜の上に微生物および昆虫を忌避することができるバリアを形成することにより前記攻撃から収穫後の果実および野菜を保護するのに有用であることが見出された。
【0264】
そこで、収穫後の果実および野菜の上にコーティングを形成することができるフィルム形成製剤を提供する。施用により形成されるフィルムおよびマイクロカプセルの中に含まれる精油の両方、またはそれらのそれぞれは独立して、第1に物理的遮蔽を提供し、第2に長期の殺虫または抗微生物保護を提供することにより、微生物および昆虫による攻撃を予防および防除する。
【0265】
施用の後、製剤により覆われた果実および野菜を乾燥することにより、物理的遮蔽および予防的遮蔽を形成する。
【0266】
この施用法により使用される製剤は、懸濁液を安定化するためにその中に存在するポリマーおよび界面活性剤などの他の物質により水性媒体中に保持されるカプセル化した精油を含む。
【0267】
一つの好ましい実施形態において、製剤はさらに、懸濁液を安定化するポリマーと同一であってもなくてもよく、噴霧された基質、すなわち果実または野菜上に保護されたコーティングを形成し得るコーティング剤を含む。
【0268】
実施例16
35 gのTDIを250gのティーツリー油中に混合した溶液を、高剪断ミキサーを用いて、5 gのPVAを含有する500 gの水中に加えた。これに、55.6 gのPEG 4000を含む120 mlの水を加えた。室温で2時間混合を続けた。この分散液に、12 gのグアーガムおよび4 gの殺菌剤(ネホシド)を加えた。このエマルションのヒドロゲルの性質を崩壊させるために、10 gのSDS(ドデシル硫酸ナトリウム、1%)を加えた。
【0269】
本明細書において、この製剤をN262と名付け、タマネギ、ニンジンおよびジャガイモを用いて、二つのパラメータ:重さの減少および腐敗について、対照(未処理)およびHPP、Oxyfor、およびShemerの名称の他の市販の製剤と比較して試験した。詳細を下記の表5および6に示す。
【表5】

【表6】

【0270】
貯蔵したニンジンの劣化に対する製剤N262の効果を決定するために別の実験をおこなった。実験はKibbutz Alumimにおいて栽培したニンジンを用いて実施した。ニンジンを異なる溶液に30秒間浸し、0〜1℃の温度の貯蔵室に1ヵ月貯蔵し、さらに25℃で6日間保存した。
【0271】
ニンジンの処理は次の方法により行った:
いくつかのニンジンの群を使用した:
1. 対照群- 未処理のニンジン(Cのラベル);
2. 処理群- 病原体:スクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)、アルテルナリア・アルテルネート(Alternaria alternate)、A.ラディシナ(A.radicina)の懸濁液に浸したニンジン(Tのラベル);
3. 市販品洗浄群- 150 ppm塩素 + 0.2%イプロジオンの溶液中に浸したニンジン(Comのラベル);
4. 処理群II- 群2と同様に処理した後、群3と同様に市販品により洗浄したニンジン(Com+Tのラベル);
5. N262群- N262の2%溶液に浸したニンジン(EO1のラベル);
6. 処理群III-群2と同様に処理した後、N262の2%溶液に浸したニンジン(EO1+Tのラベル);
7. N262群II- N262の4%溶液に浸したニンジン(EO2のラベル);
8. 処理群IV-群2と同様に処理した後、N262の4%溶液に浸したニンジン(EO2+Tのラベル);
9. N262群III- N262の6.6%溶液に浸したニンジン(E03のラベル);および
10. 処理群V-群2と同様に処理した後、N262の6.6%溶液に浸したニンジン(E03+Tのラベル)。
【0272】
結果を下記の表7に示す。2%の濃度の製剤N262は他の処理よりもニンジンの接種を減少させ、市販の洗浄剤の代替物として使用することができることが結論づけられた(目標が化学物質を優しい材料に置き換えることであるならば)。
【表7】

【0273】
貯蔵したサツマイモのレソポウス(Resopous)および他の腐敗による劣化に対する製剤N262の効果を決定するために別の実験をおこなった。実験はAgronomia Agriculture Companyにより栽培されたサツマイモを用いて実施した。サツマイモを異なる溶液に数秒間浸し、0〜4℃の温度の貯蔵室に1ヵ月貯蔵した。
【0274】
サツマイモの処理は次の方法によりおこなった。いくつかのサツマイモの群を使用した:
1. 対照群- 未処理のサツマイモ(Cのラベル);
2. 処理群- 水に浸したサツマイモ(Wのラベル);
3. 処理群I- 0.5%のB262と呼ばれるBotanoCap製剤により群2と同様に処理したサツマイモ(B1のラベル);および
4. 処理群II- 3.0%のB262と呼ばれるBotanoCap製剤により群2と同様に処理したサツマイモ(B2のラベル);およびその後にMagnetという名称の市販の製剤(イマザリル)により群3および4と同様に処理したサツマイモ(Mのラベル)。
【0275】
結果を下記の表8に示す。0.5%および3%の濃度の製剤B262が他の処理よりもサツマイモの接種を減少させ、特に目標が化学物質を優しい材料に置き換えることである場合に、市販の洗浄剤の代替物としてレソポウスに対して使用することができることが結論づけられた。
【表8】

【0276】
ヒトおよび動物が消費するための食品添加物
背景
食品工業は、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、および類人猿、チンパンジー、オランウータンを含む霊長類、魚、貝類、甲殻類、鳥(例えば、ニワトリ等)、ヒトまたは家畜(例えば、イヌおよびネコ)などの動物が消費するのに適した種々の製品に不飽和脂肪酸を使用する。前記脂肪酸は、例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、ならびに共役リノール酸およびリノレン酸(CLA)である。これらの不飽和脂肪酸はそれらの加工、製造、貯蔵、匂い、相溶性および酸化に影響を与える性質を示す。
【0277】
これらの脂肪酸のカプセル化は、これらの問題のいくつかを解決し、それらを直接消費するまたは食品に組み入れるのに適したものにする。例えば、ベータカロテン、ルテイン、ゼアキサンチン(zeazanthin)、鉄塩、銅塩、セレン塩、フラボノイド、コエンザイムQ10、ハーブ、香辛料、香料および抽出物(アリシンまたはニンニク抽出物などの)を含む、ビタミン、栄養補助食品、ミネラル、ハーブ製品、食品添加物、アミノ酸等などの他の食品成分もまたカプセル化の候補である。
【0278】
概要
使用するカプセル化した精油製剤は、GRASSおよび/またはFDAが認可したカプセル化用の膜および精油をベースとする。事実、マイクロカプセルに含有されるすべての物質またはそれらを含む製剤は、ヒトおよび動物の両方に対して無毒である。前記製剤は上で開示した通りに脂肪酸またはアルカン酸を用いて調製されたものである。簡単に述べると、酸を精油に溶解した後、水溶液中に乳化する。次に酸を水溶液に溶解したCaまたはMgまたはFeなどの多価カチオンまたは他の多価カチオンにより架橋する。
【0279】
より具体的には、この方法は、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合することにより、マイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルの水性懸濁液を得るステップ
を含む。
【0280】
一つの実施形態において、前記方法はさらにロウまたは固体の粒子を濾過して収集するステップを含む。
【0281】
別の実施形態において、粒子を液体の担体から分離せず、製剤をそのまま使用する。
【0282】
固体のマイクロカプセルを水性媒体から分離する場合、少量の精油がカプセル化されずに残っている可能性がある。油で濡れていないマイクロカプセルを得るために、典型的には少量の、過剰な油を吸収することができる吸収剤を加える。吸収剤は、例えば、セルロース、デンプン粉末、またはDegussaから市販されているアエロジルTM 200または300などのアエロジルTMシリカより選択される。ある用途においては、アエロジルTMが好ましい吸収剤である。
【0283】
本発明はさらに、それぞれ少なくとも1種の精油を含有するコアおよび前記コアを取り囲む外側シェルを有する複数の食用マイクロカプセルを含有するマイクロカプセル製剤を調製する方法であって、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合することにより、マイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルの水性懸濁液を得るステップ
を含む前記方法を提供する。
【0284】
一つの実施形態において、少なくとも1種の精油を含有するコアはさらに少なくとも1種の添加物を含み、前記添加物は好ましくは食品を増強する添加物である。
【0285】
本発明の別の実施形態において、添加物をステップ(c)の前に製剤に加える。添加物は固体もしくは液体の形、または2種以上の前記物質の懸濁液であってもよい。前記添加物は、活性薬物、天然または合成の抗酸化剤、栄養補助剤、ビタミン、着色剤、着臭剤、油、脂肪、着香剤、非揮発性天然精油、または他の分散剤もしくは乳化剤より選択される。ある特定の実施形態において、添加物はγ-リノレン酸、オレンジ油などの柑橘油、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンCおよびビタミンDなどの栄養補助剤、トコフェロール、トコトリエノール、植物ステロール、ビタミンK、β-カロテン、魚油、およびオメガ-3脂肪酸、CoQ10、極性の高い抗酸化剤の脂溶性誘導体、例えばアスコビル脂肪酸エステル、植物抽出物(例えば、ローズマリー、セージおよびオレガノ油)、藻類抽出物、および合成抗酸化剤(例えば、BHT、TBHQ、エトキシキン、没食子酸アルキル、ヒドロキノン、トコトリエノール)より選択される。
【0286】
加えることができる油の具体的な例には、動物油(例えば、魚油、海洋哺乳類油等)、植物油(例えば、カノーラまたはナタネ)、鉱油、それらの誘導体またはそれらの混合物が含まれるが、それに限定されない。
【0287】
添加物は、脂肪酸、トリグリセリドまたはそのエステル、またはそれらの混合物などの、精製したまたは部分的に精製した油性物質であってよい。
【0288】
別の実施形態において、添加物は少なくとも1種のカロテノイド(例えば、リコペン)、満腹剤、香味化合物、薬物(例えば、水不溶性薬物)、微粒子、農薬(例えば、除草剤、殺虫剤、肥料)、または養殖用成分(例えば、餌、顔料)である。
【0289】
好適な魚油の具体的な例には、大西洋魚油、太平洋魚油、地中海魚油、軽く圧縮した魚油、アルカリ処理魚油、熱処理魚油、軽いおよび重い褐色の魚油(light and heavy brown fish oil)、マグロ油、シーバス油、ハリバ油、フウライカジキ油、バラクーダ油、タラ油、ニシン油、イワシ油、カタクチイワシ油、シシャモ油、大西洋タラ油、大西洋ニシン油、大西洋サバ油、大西洋メンハーデン油、サケ科の魚の油、サメ油等が含まれるが、それに限定されない。
【0290】
油または水非混和性の液体を固体またはロウ型の粒子に変換した後、それを濾過して懸濁液中の固体を回収してもよく、または懸濁液をそのまま使用してもよい。
【0291】
使用の前にカプセル化した油を保存する必要がある場合には、製剤に製剤補助剤を加えてもよい。これらは懸濁液の安定性および施用の容易さを改善する。前記製剤補助剤は、密度調整剤、界面活性剤、増粘剤、殺生物剤、分散剤、凍結防止剤、塩およびそれらの組合せから選択することができるが、それに限定されない。製剤補助剤は、カプセル化した油製品の重さの約0.01%〜約3%の濃度でカプセル化した油に加える。
【0292】
本発明の方法は、液体を流動性粉末または圧縮された固体に変換するために使用することができ、それらは最終産物を製造するための構成要素として、物質を貯蔵するために、反応性の物質を分離するために、物質の毒性を減少させるために、物質を酸化から保護するために、物質を特定の環境に送達するために、および/または物質の放出速度を制御するために使用することができる。
【0293】
本発明の別の好ましい実施形態において、カプセル化した固体の粒子は、本明細書に記載されたカプセル中の物質を、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、および類人猿、チンパンジー、オランウータンを含む霊長類、魚、貝類、甲殻類、鳥(例えば、ニワトリ等)、ヒトまたはペット(例えばイヌおよびネコ)などの哺乳類を含み得る被験体に送達するために使用することができる。
【0294】
上に開示された通り、本発明の方法に使用するアルカン酸は、好ましくは25℃よりも高い融点を有するものより選択される。さらに、アルカン酸は好ましくは10〜45炭素の長さを有する。
【0295】
この用途に好適な前記酸の例は、11-オクタデセン酸または5,8,11,14-エイコサテトラエン酸、およびオメガ-3脂肪酸より選択されるがそれに限定されない不飽和酸である。オメガ-3脂肪酸の例には、α-リノレン酸(18:3-オメガ-3)、オクタデカテトラエン酸(18:4-オメガ-3)、エイコサペンタエン酸(20:5-オメガ-3)(EPA)、ドコサヘキサエン酸(22:6-オメガ-3)(DHA)、ドコサペンタエン酸(22:5-オメガ-3)(DPA)、エイコサテトラエン酸(20:4-オメガ-3)、ウンコサペンタエン酸(21:5-オメガ-3)、ドコサペンタエン酸(22:5-オメガ-3)、ならびにそれらの誘導体およびそれらの組合せが含まれるが、それに限定されない。
【0296】
オメガ-3脂肪酸の考えられる誘導体には、エステル誘導体、分枝鎖もしくは非分枝鎖C1〜C30アルキルエステル、分枝鎖もしくは非分枝鎖C2〜C30アルケニルエステル、または植物ステロールエステルなどの分枝鎖もしくは非分枝鎖C3〜C30シクロアルキルエステルおよびC1〜C6アルキルエステルが含まれる。
【0297】
前記脂肪酸は、水生生物(例えば、カタクチイワシ、カラフトシシャモ、大西洋タラ、大西洋ニシン、大西洋サバ、大西洋メンハーデン、サケ科の魚、イワシ、サメ、マグロ等)および植物(例えば、アマ、野菜等)および微生物(例えば、菌類および藻類)を含むがそれに限定されない天然の原料から抽出することができる。
【0298】
製剤の中の油の濃度は、0.01〜90%の間で変化し、油を固体に変換するのに必要な用途には好ましくは60%以上、またはカプセル化したピレトラムなどの水性製剤にはおよそ25%である。
【0299】
本発明の好ましい実施形態において、得られたカプセル化した材料で動物が消費するのに好適なものは、乾いた、流動性の粉末の形である。これらの材料は、一貫して高い活性物質濃度および/または優れた酸化抵抗性を達成および維持するという利点を有する。本発明のカプセル化剤により調製したカプセル化した材料は、一貫して活性物質の比較的高い濃度を達成および維持する。活性物質は、カプセル化した材料に基づいて約5〜90% (wt/wt)の量で存在する。別の実施形態において、活性物質は約15〜60% (w/w)の範囲の量で存在する。高い濃度の活性物質は、カプセル化した物質がしばしば高価なので、最終製品の製造コストを低くするために望ましい。さらに、いくつかのカプセル化した物質は最終的な系に有害なまたは望ましくない特性を与える可能性があり、そのため、使用するカプセル化した物質の量を減らすことが望ましい。
【0300】
また、ある物質をそのカプセル化された形で導入することは、前記の物質の媒体への不溶性または難溶性に伴う問題を克服する手段を与える。食品添加物、例えば、ビタミンのカプセル化により、均一で測定可能な濃度で食品に溶解または分散した形の添加物が得られる。
【0301】
高濃度の活性物質を達成するのみでなく、それを維持してより長い保存期間を可能にすることも重要である。酸化抵抗性をさらに増大するために、抗酸化剤および/または還元剤を油に加えてもよい。カプセル化した物質は粉末として貯蔵された時には安定であり、湿気に曝されると活性物質を放出する。得られたカプセル化した材料は、所望のいかなる濃度で使用してもよく、その量は組み入れられた活性物質の量およびそれが使用される製品に依存する。
【0302】
カプセル化した材料を食品に使用する一つの実施形態において、カプセル化した材料は、食品の約0.01〜約10重量%の量で使用され、別の実施形態において、約5% (w/w)以下の量で使用される。
【0303】
本発明の固体のカプセル化した粒子は食品に使用することができる。本明細書において使用する「食品」という用語は、被験体であるヒト、動物または魚が消費する(例えば、食べる、飲む、または摂取する)ことができるすべての物品を指す。
【0304】
一つの実施形態において、本発明の固体のカプセル化した粒子は、食品に栄養補助剤として使用する。本発明の別の実施形態において、食品は、焼いた食品、パスタ、肉製品、凍った酪農製品、乳製品、チーズ製品、卵製品、調味料、スープ混合物、スナック食品、木の実製品、植物タンパク質製品、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、鳥肉製品、加工フルーツジュース、グラニュー糖(例えば、白砂糖およびブラウンシュガー)、ソース、グレービー、シロップ、栄養バー、飲料、乾燥飲料粉末、ジャムまたはゼリー、魚製品、またはペット飼料であり得る。別の態様において、食品はパン、トルティーヤ、シリアル、ソーセージ、鶏肉、アイスクリーム、ヨーグルト、乳、サラダドレッシング、米ぬか、フルーツジュース、乾燥飲料粉末、ロール、クッキー、クラッカー、フルーツパイ、またはケーキである。
【0305】
別の実施形態において、本発明の固体のカプセル化した粒子は医薬製剤に使用してもよい。医薬製剤は別の担体、ならびに増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、表面活性剤、および他の成分を含んでもよい。また、医薬製剤は、それ自体が抗微生物薬、抗炎症薬、麻酔薬等などの活性な医薬品であってもなくてもよい1種以上の別の活性成分を含んでもよい。
【0306】
本発明の別の実施形態において、本明細書に開示されるいずれかの方法により調製した固体のカプセル化した粒子は、制汗剤、消臭剤、石鹸、芳香剤、および化粧品を含むパーソナルケア製品;ヘアスプレー、ムース、シャンプー、クリームリンス、およびジェルなどのヘアケア製品;おむつ、衛生ナプキン、ペーパータオル、ティッシュ、トイレットペーパーなどの紙製品;猫用トイレなどの動物ケア製品;およびカーペットクリーナー、および空気清浄剤などの家庭用製品に使用してもよい。
【0307】
油に加える脂肪酸(例えば、デカン酸、またはステアリン酸もしくはパルミチン酸)は水性媒体中で油の分散物を形成するための界面活性剤として作用し得る。しかしながら、イオン性および非イオン性界面活性剤が必要な場合がある。前記界面活性剤は、マイクロカプセルの大きさを促進および制御するためにマイクロカプセルの製造中に加えてもよく、および/またはマイクロカプセル化により生成したゲルを崩壊させて流動性の非ゲル製剤を得るためにマイクロカプセルを製造した後に加えてもよい。一つの好ましい界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。これを好ましくは0.1〜10%の濃度、および最も好ましくは0.5〜5%の濃度で加える。
【0308】
界面活性剤に加えて好ましい添加剤の他の非限定的な例は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリ(エトキシ)ノニルフェノールなどの粒子の分離の維持に役立つ立体障壁ポリマーである。ある場合には、例えば、完成したマイクロカプセルの溶液を他の殺虫剤と組み合わせる場合に、完成したマイクロカプセル製剤のpHを調節することが望ましい。例えば、塩酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムを含む酸性またはアルカリ性を調節するための通常の試薬を使用することができる。加えることができる別の安定化剤は、アルギン酸塩、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ナトリウム塩、キサンタンガム、カラヤガムおよびローカストビーンガム等である。
【0309】
PVPは、約20,000〜約90,000の範囲の種々の分子量で入手でき、これらはすべて使用することができるが、約40,000 MWのPVPが好ましい。ポリ(エトキシ)ノニルフェノールは、Igepalの商標で、エトキシ鎖の長さに応じて種々の分子量で入手することができる。ポリ(エトキシ)ノニルフェノールを使用できるが、約630の分子量を示すIgepal 630が好ましいポリ(エトキシ)ノニルフェノールである。界面活性剤の他の例には、PluronicおよびTetronicなどのポリエーテルブロックコポリマー、Brij界面活性剤などの脂肪アルコールのポリオキシエチレン付加物、およびステアリン酸、オレイン酸等などの脂肪酸のエステルが含まれる。前記脂肪酸の例には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート等が含まれる。脂肪エステルのアルコール部分の例には、グリセロール、グルコシル等が含まれる。脂肪エステルはArlacel C.R界面活性剤として市販されている。界面活性剤の界面活性特性はさまざまであり、界面活性特性は形成されるマイクロカプセルの大きさに影響を与える。他の条件を同じにして、40,000 MWのPVPを使用すると、Igepal 630よりも大きいマイクロカプセルが得られる。使用する界面活性剤、ならびに撹拌の程度および範囲は得られるマイクロカプセルの大きさに影響を与える。一般的に、それらは使用される条件に応じて、約1〜約100ミクロンの大きさである。リグニンスルホン酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムまたはアンモニウム塩などの、分散物を形成するための他の界面活性剤および乳化剤を使用してもよい。
【0310】
上で述べた通り、カプセル化した固体の粒子を反応混合物から回収しても、前記非揮発性ビヒクルもしくはそれを含む溶液に再懸濁してもよい。あるいは、マイクロカプセルを含む水性または他の媒体を、それらを製造した媒体(水)から最初に分離することなく、少なくとも1種の非揮発性ビヒクルにより処理してもよい。ほとんどの場合、前記媒体は水である。分離が好ましい場合には、マイクロカプセルの収集は、それらの大きさに応じて、遠心分離または濾過によりおこなうことができ、適切な溶媒、例えば蒸留水により数回洗浄して表面から遊離の反応物を除去する。
【0311】
さらに、これらの粒子を前記の非揮発性液体または固体ビヒクルに分散または懸濁することができる。ある場合には、前記非揮発性ビヒクルは粒子状の固体、例えば粉末であり、分散は好ましくは有効量の乾燥したマイクロカプセルを前記ビヒクルと混合することによりおこなう。ある場合には、前記非揮発性ビヒクルは液体であり、懸濁液は好ましくは有効量のマイクロカプセルを前記ビヒクル中で機械的に撹拌することにより調製される。
【0312】
また、食用のマイクロカプセルを調製する方法であって、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合するステップ;
(d) 水性媒体からマイクロカプセルを収集することにより、少なくとも1種のマイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルを得るステップ
を含む前記方法が提供される。
【0313】
これらのマイクロカプセルは、微生物により引き起こされる腐敗または変色を防止または遅らせるために食品(例えば、ソーセージ、サラミおよび加工肉一般、すべてのタイプのチーズ等)に加えることができる。カプセル化した精油製剤は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、およびプロピオン酸カルシウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベンを含むがそれに限定されない食品保存剤を含んでもよい。
【0314】
保存剤または食品添加物マイクロカプセルは、0.01〜5%、または好ましくは0.1%〜1%の間の精油および0.1%の安息香酸またはパラベンを含む。成分は必要に応じて別々にまたは一緒に食品に加える。カプセル化した精油は味および匂いに影響がない濃度で加え、または精油の匂いまたは味が望まれる場合にはより高い濃度で加えてもよい。ある場合にはカプセル化した精油添加物または保存剤は、油、誘導体またはその活性成分の濃度が0.01%〜1%の間であり、安息香酸またはパラベンの濃度が0.01%〜1%であるように使用する。
【0315】
本発明の一つの実施形態において、製剤はウイキョウの油およびメチルパラベンを含み、そこにおいてウイキョウの油を0.2%の濃度で使用し、メチルパラベンを0.1%の濃度で使用する。
【0316】
食品保存剤として使用する精油製剤は、それに限定されないが、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ・エンテリディティス(Salmonella enteriditis)、黄色ブドウ球菌およびバンコマイシン耐性腸球菌(Enterococcus)などの多くの微生物の阻害に有効である。
【0317】
精油は、上で他の施用法に関して開示した通りの抗微生物および/または殺菌特性を有するものより選択し得る。使用することができる前記油の例は、ティーツリー油、タイム油、チョウジ油、ユーカリ油およびオレガノ油、シトロネラ油、バジル油、ウイキョウの油およびアニスの油である。
【0318】
実施例1
デカン酸(12 g)をティーツリー油(100 g)に溶解した。得られた溶液を迅速に撹拌した(高速剪断攪拌機)PVA (2.5 g)のH2O (250 ml)溶液に加えた。これに、H2O (20 ml)に溶解したMgCl2六水和物(22.8 g)を加えて、溶液を2時間攪拌した後、グアーガム(3 g)を加えてさらに2時間攪拌を続けた。
【0319】
この製剤をソーセージに加えると、細菌および真菌の増殖を防止した。
【0320】
実施例2
ティーツリー油を125 gのチョウジ油に置き換えて、実施例1を繰り返した。得られた溶液を白色チーズおよび黄色チーズの両方にその製造中に加えると、細菌および真菌の両方の増殖を効果的に防除した。
【0321】
実施例3
タラ肝油の粉末のカプセル化を下記の通りに実施した:
溶液Aは、70〜80℃で25 gのステアリン酸を75 gのタラ肝油に溶解することにより調製した。
溶液Bは、3.5 gのNaOHの30 mlの水中の溶液を、10分間撹拌しながら溶液Aに加えることにより調製した。
溶液Cは、7 gのCaCl2・2H2Oの70 mlの水中の溶液を、10分間撹拌しながら溶液A+Bの混合物に加えることにより調製した。
【0322】
反応混合物をブフナーロートにより濾過して空気乾燥した。次に、10 gの乾燥した生成物を2.5 gのアエロジル200または300と混合して、残ったカプセル化されていない油を吸収させた。最終生成物は活性成分として60%のタラ肝油を含有していた。
【0323】
カプセル化した生成物は魚臭を有した。溶解およびカプセル化のプロセス全体を窒素雰囲気下でおこなうと、生成物に魚臭はなかった。
【0324】
実施例4
動物飼料の製造に使用する油のカプセル化を、下記の通りにおこなった:
溶液Aは、60℃で25 gのステアリン酸を75 gの植物油に溶解することにより調製した。
溶液Bは、3.5 gのNaOHの30 mlの水中の溶液を、60℃で撹拌しながら溶液Aに加えることにより調製した。
溶液Cは、7 gのCaCl2・2H2Oの70 mlの水中の溶液を、60℃で10分間撹拌しながら溶液A+Bの混合物に加えることにより調製した。
【0325】
反応混合物をブフナーロートにより濾過して室温で空気乾燥した。10 gの乾燥した物質を2.5 gのアエロジル200または300と混合した。最終生成物は活性成分として60%の植物油を含有していた。
【0326】
実施例5
ピレトラムのステアリン酸/Ca塩中へのカプセル化を下記のようにしておこなった:
溶液Aは、60℃で15 gのステアリン酸を50 gのピレトラムに溶解することにより調製した。
溶液Bは、2.1 gのNaOHの20 mlの水中の溶液を、10分間撹拌しながら溶液Aに加えることにより調製した。
溶液Cは、4.2 gのCaCl2・2H2Oの40 mlの水中の溶液を、10分間撹拌しながら溶液AおよびBの混合物に加えることにより調製した。
溶液Dは、溶液A、BおよびCの混合物を、10 gのSDS、0.4 gのIrganox 1076、0.4 gのTinuvin 770および850 mlの水からなる溶液と混合することにより調製した。反応混合物を高剪断ミキサーにより30分間撹拌した。クエン酸を用いてpHを7に調節した。反応混合物をさらに30分間撹拌し、その時点で3.5 gのRodopol 24を加えて30分間撹拌した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも1種の精油を含むマイクロカプセルの懸濁液の製造方法であって、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に、少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合することにより、前記少なくとも1種の精油を含むマイクロカプセルの懸濁液を得るステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種のアルカン酸を最初に水非混和性の液体に加える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水非混和性の液体が精油である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水非混和性の液体担体が、アルカン、アルコール、エーテルおよびケトンより選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記多価カチオンが無機金属カチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記無機金属カチオンが第II属金属カチオンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記無機金属カチオンが、Ca、Mg、Fe、およびAlより選択される原子のカチオンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記原子がCaである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記多価カチオンが有機カチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の少なくとも1種の多価カチオンの溶液が、少なくとも2種の異なる多価カチオンの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記塩基性水溶液が、ナトリウムまたはカリウムのうち少なくとも1種の水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記のナトリウムまたはカリウムのうち少なくとも1種の水溶液が、NaOHおよび/またはKOHである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカン酸が、25℃よりも高い融点温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカン酸が、10〜45炭素原子の炭素鎖を有する脂肪族酸より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカン酸が、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、11-オクタデセン酸、5,8,11,14-エイコサテトラエン酸、およびオメガ-3脂肪酸より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記オメガ-3脂肪酸が、α-リノレン酸(18:3-オメガ-3)、オクタデカテトラエン酸(18:4-オメガ-3)、エイコサペンタエン酸(20:5-オメガ-3)、ドコサヘキサエン酸(22:6-オメガ-3)、ドコサペンタエン酸(22:5-オメガ-3)、エイコサテトラエン酸(20:4-オメガ-3)、ウンコサペンタエン酸(21:5-オメガ-3)、ドコサペンタエン酸(22:5-オメガ-3)、およびそれらの誘導体より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オメガ-3脂肪酸が2種以上のオメガ-3脂肪酸の混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記精油が、ペパーミント油、チョウジ油、ユーカリ油、ラベンダー油、アニス精油、アンジェリカ精油、アイリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、キャラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、クロモジ精油、ケイヒ精油、ゼラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンダー精油、ペリラ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、パルマローザ精油、セダー精油、スペアミント精油、セイヨウハッカ精油、スターアニス精油、チュベローズ精油、チョウジ精油、ネロリ精油、ウインターグリーン精油、トルーバルサム精油、パチョリ精油、ローズ精油、パルマローザ精油、ヒノキ精油、ヒバ精油、ビャクダン精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバー精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボワデローズ精油、芳樟(ho camphor)精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、および和種ハッカ精油より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記精油がスパイス植物の精油である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記精油がシトロネラ油、ゼラニウム油、ティーツリー油、ラベンダー油、チョウジパイン油(clove pine oil)、ユーカリ油、タイム油、およびオレガノ油より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1種の吸収剤を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種の吸収剤がセルロース、デンプン粉末、およびアエロジル(Aerosil)シリカより選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種のイオン性または非イオン性界面活性剤を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
活性な薬物、天然または合成抗酸化剤、栄養補助剤、ビタミン、着色剤、着臭剤、油、脂肪、着香剤、非揮発性天然精油、分散剤および乳化剤より選択される少なくとも1種の添加剤を加えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記添加剤が、γ-リノレン酸、柑橘油、栄養補給剤、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンD、トコフェロール、トコトリエノール、植物ステロール、ビタミンK、ベータカロテン、魚油、オメガ-3脂肪酸、CoQ10、極性抗酸化剤の脂溶性誘導体、植物抽出物、藻類抽出物、製剤補助剤および合成または天然抗酸化剤より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤補助剤が、密度調整剤、界面活性剤、増粘剤、殺生物剤、分散剤、凍結防止剤、および塩より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法により調製された、マイクロカプセル化した精油製剤。
【請求項28】
少なくとも1種の精油を含むコアを取り囲む両親媒性シェルを有するマイクロカプセルであって、前記両親媒性シェルが少なくとも1種のアルカン酸の多価塩の形である、上記マイクロカプセル。
【請求項29】
少なくとも1種の精油を含むコアを有するマイクロカプセルであって、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合するステップ;
(d) 水性媒体からマイクロカプセルを収集することにより、少なくとも1種のマイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルを得るステップ
を含む方法により調製される、上記マイクロカプセル。
【請求項30】
請求項29に記載の複数のマイクロカプセルを含むマイクロカプセル化した精油製剤であって、前記コアが両親媒性シェルのシェルにより実質的に取り囲まれている、上記製剤。
【請求項31】
前記両親媒性シェルが少なくとも1種の両親媒性物質により構築され、前記両親媒性物質がアルカン酸である、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
ビヒクルをさらに含む、請求項30に記載の製剤。
【請求項33】
前記ビヒクルが液体または固体である、請求項32に記載の製剤。
【請求項34】
前記液体または固体ビヒクルが非揮発性である、請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
バリア形成剤をさらに含む、請求項30に記載の製剤。
【請求項36】
医薬製剤である、請求項27または30〜35のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項37】
抗微生物製剤である、請求項27または30〜35のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項38】
前記医薬製剤が抗微生物製剤である、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
防腐製剤である、請求項27または30〜35のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項40】
忌避または殺虫製剤である、請求項27または30〜35のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項41】
ヒトおよび/または動物が使用するための食品添加物製剤である、請求項27または30〜35のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項42】
マイクロカプセル化した精油を含有する抗微生物製剤であって、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合することにより、マイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルの懸濁液を得るステップ
を含む方法により調製される、上記製剤。
【請求項43】
前記精油が、ペパーミント油、チョウジ油、ユーカリ油およびラベンダー油;アニス精油、アンジェリカ精油、アイリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、キャラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、クロモジ精油、ケイヒ精油、ゼラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンダー精油、ペリラ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、パルマローザ精油、セダー精油、スペアミント精油、セイヨウハッカ精油、スターアニス精油、チュベローズ精油、チョウジ精油、ネロリ精油、ウインターグリーン精油、トルーバルサム精油、パチョリ精油、ローズ精油、パルマローザ精油、ヒノキ精油、ヒバ精油、ビャクダン精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバー精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボワデローズ精油、芳樟(ho camphor)精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、および和種ハッカ精油より選択される、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
前記精油が、ティーツリー油、オレガノ油、バジル油、ローズマリン(rosemarin)油、ユーカリ油、およびタイム油より選択される、請求項43に記載の製剤。
【請求項45】
大腸菌(Escherischia coli) 、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)、マイクロコッカスCNS (Micrococcus CNS)、減乳性連鎖球菌(Streptococcus Dysgalactiae)、アレアノバクテリウム・ピロゲネス(Areanobacterium Pyrogenes)、および緑膿菌(Pseudomonas Aeruginos)より選択される少なくとも1種の病原体に対する治療、予防または防除に有用である、請求項42に記載の製剤。
【請求項46】
乳房炎の治療または予防のための請求項42に記載の製剤。
【請求項47】
乳畜およびヒトにおける乳房炎の治療または予防のための請求項46に記載の製剤。
【請求項48】
乳畜における乳房炎を調節するための方法であって、前記動物の乳頭に抗微生物精油製剤を施用することを含み、ここで、前記製剤がバリア層を形成することが可能であってもよく、それにより微生物の乳房への侵入を実質的に防止する、上記方法。
【請求項49】
乳畜の乳頭上の微生物の個体数を減少させる方法であって、前記動物の乳頭に抗微生物精油製剤を施用することを含み、ここで、前記製剤が抗微生物バリア層を形成することが可能であってもよい、上記方法。
【請求項50】
前記抗微生物精油製剤が、界面重合により調製された複数のマイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルを含む、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記抗微生物精油製剤が、請求項1に記載の方法により調製された複数のマイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルを含む、請求項48または49に記載の方法。
【請求項52】
前記乳畜がウシ、ヤギ、ラクダ、アルパカ、およびヒトより選択される、請求項48〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記抗微生物精油製剤がカプセル化されていないバリア形成剤をさらに含む、請求項48〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記バリア形成剤が高沸点の担体である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記高沸点の担体が精油である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記担体が精油でない、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記抗微生物精油製剤が、乾燥により、または開始剤の存在により重合してバリアを形成する少なくとも1種のモノマーをさらに含む、請求項48〜56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記抗微生物精油製剤が少なくとも1種の乳房炎治療薬をさらに含む、請求項48〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記乳房炎治療薬が、安定化された塩素、塩素放出化合物、酸化剤、プロトン化されたカルボン酸、酸アニオン、第四級アンモニウム塩、およびヨウ素より選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
噴霧、ブラッシング、綿球消毒または発泡により動物の乳頭に施用するのに適している、請求項47に記載の製剤。
【請求項61】
搾乳中に施用するための、請求項60に記載の製剤。
【請求項62】
処理された非農業環境における昆虫の個体数を減少させるための、請求項40に記載の製剤。
【請求項63】
前記昆虫が、動物またはヒトに不快または傷害を引き起こし得る昆虫より選択される、請求項62に記載の製剤。
【請求項64】
前記昆虫が、蚊、ダニ、ハエ、アリおよびゴキブリより選択される、請求項63に記載の製剤。
【請求項65】
前記非農業環境が、畜産、苗床、物置小屋、漁業、養殖、家庭および他のヒトの住居、職場、建物の室内、庭、学校、保育園、公共娯楽施設、スポーツ競技場、交通施設、地下鉄の駅、空港のターミナル、船、ヨット、車、バス、および列車より選択される、請求項62に記載の製剤。
【請求項66】
動物またはヒトの皮膚に直接施用するのに適している、請求項40に記載の製剤。
【請求項67】
動物またはヒトに不快または傷害を引き起こし得る昆虫の集団を忌避または駆除するための方法であって、非農業環境または前記環境における昆虫の集団に、少なくとも1種のカプセル化した揮発性精油および前記少なくとも1種の揮発性精油をその中に担持する非揮発性ビヒクルを含む製剤を施用することを含む、上記方法。
【請求項68】
前記少なくとも1種のカプセル化した揮発性精油を含む製剤が、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法により調製される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記カプセル化した揮発性精油が界面重合により調製される、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記非揮発性ビヒクルが、非揮発性精油、非揮発性植物油またはそれらの組合せからなる群より選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記精油が、ペパーミント油、チョウジ油、ユーカリ油およびラベンダー油;アニス精油、アンジェリカ精油、アイリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、キャラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、クロモジ精油、ケイヒ精油、ゼラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンダー精油、ペリラ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、パルマローザ精油、セダー精油、スペアミント精油、セイヨウハッカ精油、スターアニス精油、チュベローズ精油、チョウジ精油、ネロリ精油、ウインターグリーン精油、トルーバルサム精油、パチョリ精油、ローズ精油、パルマローザ精油、ヒノキ精油、ヒバ精油、ビャクダン精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバー精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボワデローズ精油、芳樟(ho camphor)精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、および和種ハッカ精油より選択される、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
標的の環境または昆虫の集団もしくはその場所にマイクロカプセル化した精油製剤を施用することを含む、昆虫の集団に対処する方法。
【請求項73】
前記マイクロカプセル化した精油製剤が、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法により調製された複数のマイクロカプセルを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記マイクロカプセル化した精油製剤が、界面重合により調製された複数のマイクロカプセルを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記環境が、家庭の部屋、職場、建物の室内、庭、学校、保育園、公衆娯楽施設、スポーツ競技場、地下鉄の駅などの交通施設、空港のターミナル、船、ヨット、車、バス、列車、床、壁、天井、家具、網、仕切り、芝、および貯水設備の中から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記貯水設備が、水システム、冷却システム、水泳用プール、天然および人工の貯水池、漁場、水タンク、および水族館より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
以下のステップ:
- 標的に少なくとも1種の揮発性精油を含むマイクロカプセル製剤を施用するステップ、
- 標的の環境に非揮発性物質を含む第2の製剤を施用するステップ
を含む、昆虫の集団に対処する方法。
【請求項78】
前記製剤が請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法により調製される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記製剤が界面重合により調製される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
動物油、植物油、鉱油、それらの誘導体またはそれらの混合物より選択される少なくとも1種の油をさらに含む、請求項41に記載の製剤。
【請求項81】
前記動物油が魚油または海洋哺乳動物油である、請求項80に記載の製剤。
【請求項82】
前記魚油が、大西洋魚油、太平洋魚油、地中海魚油、軽く圧縮した魚油、アルカリ処理魚油、熱処理魚油、軽いおよび重い褐色の魚油(light and heavy brown fish oil)、マグロ油、シーバス油、ハリバ油、フウライカジキ油、バラクーダ油、タラ油、ニシン油、イワシ油、カタクチイワシ油、カラフトシシャモ油、大西洋タラ油、大西洋ニシン油、大西洋サバ油、大西洋メンハーデン油、サケ科の魚の油、およびサメ油より選択される、請求項81に記載の製剤。
【請求項83】
カロテノイド、満腹剤、香味化合物、および薬物より選択される少なくとも1種の物質をさらに含む、請求項80に記載の製剤。
【請求項84】
前記動物が、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、類人猿、チンパンジー、オランウータン、魚、貝類、甲殻類、鳥、ニワトリ、オンドリ、イヌおよびネコの中から選択される、請求項41に記載の製剤。
【請求項85】
食品中に使用するための、請求項41に記載の製剤。
【請求項86】
前記食品が、焼いた食品、パスタ、肉製品、凍った酪農製品、乳製品、チーズ製品、卵製品、調味料、スープ混合物、スナック食品、木の実製品、植物タンパク質製品、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、鳥肉製品、加工フルーツジュース、グラニュー糖、ソース、グレービー、シロップ、栄養バー、飲料、乾燥飲料粉末、ジャムまたはゼリー、魚製品、およびペット飼料より選択される、請求項85に記載の製剤。
【請求項87】
前記食品が、パン、トルティーヤ、シリアル、ソーセージ、アイスクリーム、ヨーグルト、ミルク、サラダドレッシング、米ぬか、フルーツジュース、乾燥飲料粉末、ロール(roll)、クッキー、クラッカー、フルーツパイ、またはケーキより選択される、請求項86に記載の製剤。
【請求項88】
微生物により引き起こされる食品の腐敗または変色を防止するまたは遅くする方法であって、食品に請求項41に記載の製剤を加えることを含む、上記方法。
【請求項89】
微生物により引き起こされる食品の腐敗または変色を防止するまたは遅くする方法であって、複数のマイクロカプセル化した精油を含む製剤を食品に加えることを含み、前記製剤が界面重合により調製される、上記方法。
【請求項90】
前記腐敗または変色が、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ・エンテリディティス(Salmonella enteriditis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびバンコマイシン耐性腸球菌(Enterococcus)より選択される1種以上の微生物と関連する、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合するステップ;
(d) 水性媒体からマイクロカプセルを収集することにより、少なくとも1種のマイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルを得るステップ
を含む、食用マイクロカプセルを調製する方法。
【請求項92】
以下のステップ:
(a) 複数のマイクロカプセルを得るステップ;
(b) 前記マイクロカプセルを所望の液体または固体の媒体中に加えることにより、複数のマイクロカプセルを含む製剤を得るステップ
を含む、請求項91に記載の方法により調製された複数のマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル製剤を調製する方法。
【請求項93】
少なくとも1種の添加剤を加えるステップをさらに含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
それぞれが少なくとも1種の精油を含有するコアおよび前記コアを取り囲む外側シェルを有する複数のマイクロカプセルを含有するマイクロカプセル製剤を調製する方法であって、以下のステップ:
(a) 少なくとも1種のアルカン酸を少なくとも1種の精油と混合するステップ;
(b) ステップ(a)の混合物を塩基性水溶液と混合して懸濁液を得るステップ;
(c) ステップ(b)の懸濁液に少なくとも1種の多価カチオンを含む塩水溶液を混合することにより、マイクロカプセル化した精油のマイクロカプセルの水性懸濁液を得るステップ
を含む、上記方法。

【公表番号】特表2009−526644(P2009−526644A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554907(P2008−554907)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000213
【国際公開番号】WO2007/094000
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508245242)ボタノキャップ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】