説明

マイクロカプセル化を伴う電磁放射検出器およびそのような検出器を使用して電磁放射を検出する装置

本発明は、各基本検出微小部位が、関心対象の放射を感知する隔膜(2)を備えた微小検出器を含み、各基本検出微小部位が、基板(1)と、該放射を透過させる窓として使用される上部壁(5)と、側壁(4)とによって形成されるマイクロキャビティまたはマイクロカプセル内に設けられる複数の基本検出微小部位からなる電磁放射検出器であって、隔膜(2)が、導電層(17)を含む少なくとも2つの支持アーム(6)によって基板(1)の上方に懸垂され、アーム(6)の端部が、側壁(4)内に固定される電磁放射検出器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射の検出、より厳密には撮像および高温測定の分野に関する。より詳細には、本発明は、基本熱検出器のアレイを備えた、赤外線放射を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線撮像またはサーモグラフィ(高温測定)に使用される検出器の分野では、アレイの形に構成され、周囲温度で動作することができ、材料または複数の適切な材料のアセンブリの物理単位を、約300Kで、すなわち冷却を伴わずに温度の関数として使用する装置を使用することが公知である。最も広く使用されているボロメータ検出器の特定の例では、この物理単位は電気抵抗率である。誘電定数、分極などの他の電気単位、および熱膨張差、屈折率などの非電気単位でさえ使用することができる。これらの検出器は、極めて低い温度でのみ適切に動作する(光導電性または光起電性)量子検出器に対して、総称して熱検出器と呼ばれる。
【0003】
このような非冷却検出器は、動作準備完了状態において、通常以下の要素を組み立てることによって得られる。
−高感度素子(基本ボロメータ)をマトリックスアドレス指定し、各素子に基づいて電気信号を形成する手段を有する基板。この基板は一般に、読み出し集積回路(ROIC)と呼ばれる。基板の表面は、各々が基本的に、極めて細く幅の狭いアームによって懸垂された膜によって形成された高感度構造のマトリックスアセンブリを保持する。
−検出すべき放射を透過させる窓を含む被照射面と、装置の外部ピン用に構成された電気接続部とを有する通常高真空状態の密封されたエンクロージャ(またはパッケージ)。「真空」は、基板と高感度素子との高度の熱分離を確実に生じさせることを意図されている。この熱抵抗は、検出器の感度を極めて高くするという点で必須であり、懸垂アームの形状と懸垂アームの構成材料とによって定められる。
【0004】
基板は、高感度素子を備え、ボンディングまたはろう付けによって、該窓に面するパッケージの内側のキャビティに取り付けられ、基板の電気接続部は、ワイヤボンディングによってパッケージの内部入出力上に別個に取り付けられる。このパッケージは以下の構成要素も含む。
−構成要素が真空にされかつ密封された後構成要素の耐用年数にわたって構成要素の内側に適切な部分真空を維持するように構成された電気的または熱的に作動されるゲッター素子。
−基板の温度を調節することができ、パッケージのケースと基板との間にボンディングまたはろう付けによって挿入される熱電気冷却器(TEC)。このモジュールを使用するのは、検出器の使用時に焦点面に対する温度変化の影響を無くすことである。現在、このようなモジュールを備えているのは最上位機種の構成要素だけである。
【0005】
この検出器を使用してシーンを得るために、シーンが適切な光学機器を通して基本検出器のアレイ上に投影され、クロック信号による電気刺激が、読み出し回路を介して各基本検出器またはこのような複数の検出器の各列に印加され、各検出器が到達する温度を表し、かつたとえば観測されるシーンの熱画像を形成するように構成されたアナログおよび/またはデジタルビデオ型電気信号が得られる。
【0006】
上記の説明と比べて比較的単純な構成要素は現在、通常ウェハレベルパッケージング(WLP)技術を使用して、2枚の異なる基板によって形成された2つの部品を組み立てることによって製造されている。特許文献1には、この種の対象および製造方法が記載されている。したがって、最初、薄膜ゲッターを含む減圧されたエンクロージャが得られ、このエンクロージャは、2つの基板構成要素および周辺密封ビードによって区画される。一方の基板は、読み出し回路および高感度素子を備え、他方の基板は窓を形成する。
【0007】
この種の技術の主要な利点は、比較的限られた数の部品および工程を使用することによって密封された多数の構成要素を同時に得ることができ、したがって、コストが節約されることである。2枚の基板を機械的に切断することによる単一化後の、各構成要素の外部環境との結合は、原則的に、第2段階において、たとえばプリント基板(PCB)技術を使用し、標準金属トラックを有し、電子プロキシミティ回路を備えることもできるベース上に単一のアセンブリを一体化することによって実現される。
【0008】
それにもかかわらず、エンクロージャの外側の、読み出し回路の基板上に形成される電気入出力接続部を露出させる必要があるため両方の基板上で同時に実施することのできない最終的な切断を含む、減圧されたエンクロージャを製造するプロセスは、全体としてかなり複雑である。2枚の異なる基板を使用すると、各基板に固有の複数の技術を使用して基板の動作に必要な様々な特性を得ることも必要になる。窓を形成する基板の場合、たとえば、各高感度アレイに面する平面度の高いキャビティを形成する必要があり、局所的な反射防止層をキャビティ内に堆積させる必要がある。また、どちらの基板も基板同士をろう付けするために設けられる多層金属化層を有さなければならない。すべてのこれらの技術を習得しなければならないが、これらの技術には多数の高価な機器が必要である。また、面積の大きい基板をろう付けし、それによってすべての最終的な構成要素を集合的に密封する際に使用される技術を習得しなければならず、この場合、接合すべき2つの表面の平坦度および形状品質の点で特定の制約が課される。最後に、これらの工程は、極めて脆弱な高感度素子を読み出し回路基板の表面上に露出させるときに実施され、このため、工程は、構造の完全性および粒子汚染の危険性に関して特に厄介である。
【0009】
これらの技術は、間違いなく工業生産の点で進歩しているが、それにもかかわらずかなり複雑でコストがかかる。
【0010】
これらの制限を部分的に解消する1つの方法が特許文献2に記載されている。この文献は、集合的なマイクロ電子技術を使用し、したがって、製造プロセスを機能的減圧を実現するように適用可能にすることによって各検出部位に面するように形成されたマイクロキャビティを備える対象について説明している。この文献に開示された情報によれば、第2の基板はもはや必要とされず、このため、WLP技術の固有の難点が解消され、工程の数が限定され、様々な技術を使用する必要がなくなる。さらに、構造の脆弱性および製造時の粒子汚染の危険性、すなわち、関連する収量の低下または収量の低下を防止するために必要な防止策をほぼ零とみなすことができる。
【0011】
しかし、マイクロカプセルまたはマイクロキャビティの製造では、各基本検出器のフットプリント全体にわたって空間が失われ、このことは、表面積p(Pは、熱探知カメラの単一素子(画素)のアレイの反復ピッチを示す)と比べて(簡単に言えば)高感度膜の表面積に関するフィルファクタが低下するために構成要素の最終感度に影響を与える。また、各膜の支持アームを固定する構造を、各マイクロカプセルをそれに隣接するマイクロカプセルから分離する側壁によって区画される内部表面積の、厳密に内側に形成しなければならない。この結果、アームの実施可能な長さに対する制限に関連する感度の損失が生じる。この長さは膜と基板との間の熱抵抗を定める。しかし、熱抵抗は、熱検出器の感度を決定する重大な因子である。
【0012】
これらの欠点は、アレイのピッチが比較的広く、通常、最小で35μm〜30μmまたは場合によっては25μmである場合、特に悪影響は及ぼさない。しかし、現在、最小で20μmまたは場合によっては15μmのピッチを有し、それによって、基本ボロメータの感度の損失を許容する必要がほとんどない、極めて高い空間解像度を有する撮像アレイの需要が増大している。したがって、このような結果を実現することができ、一方、従来の技術の製造上の利点を保持する構造を設計する必要がある。
【0013】
特許文献2で開示された情報の基本原則について図1Aおよび1Bに関して説明する。
【0014】
図1Aは、微小部位の真空化および密封を可能にするために設けられた特別のフィーチャを無視して、検出器のアレイの部分平面図を概略的に示している。
【0015】
この対象は、以下の構成要素を有する。
・各構造が集合的に形成される最初の基板1;この基板の表面は、装置が動作するのに必要なすべての電子素子を備え、本明細書ではこの点について詳述する必要はない。
・反復ピッチpでアレイ状に配置され、かつ支持アーム6によって懸垂された高感度膜2。
・アーム6の各端部が位置する固定構造3。
・検出微小部位を分離するマイクロカプセルの壁または周囲壁4。
・ほぼ透明であり、かつ壁4の上端上に位置することによってマイクロカプセルを閉鎖するトップカバーまたは窓5。
【0016】
図1Bは、説明を補足する図であり、図1Aの点線に沿った断面図を示している。本明細書ではこれらの要素の構成および形状について詳しく説明する必要はないが、アセンブリの概略的なサイズおよび形状を明示するのが適切である。
【0017】
基板と膜との間の空間は、公知のように基板の表面上に反射器(不図示)を形成するのであれば、通常の赤外線帯域における8μm〜14μmの波長間の感度を最適化するために通常約2μmになっている。膜2と窓5との間の空間も、キャビティが真空にされた後各要素が互いに近くなり過ぎるのを防止するために通常約2μmになっている。このような構造のピッチpは通常、25μmより大きい。
【0018】
固定構造3(4つの固定構造3が図1Aに示されており、この数は、膜の機械的安定性に対して許容される場合には2つに減らしてもよい)のフットプリントは、各膜2が表面積p上で受け取られる総エネルギーの一部として効率的に収集することのできる放射エネルギーをかなり制限する。
【0019】
また、壁4のフットプリントと、壁4と膜2との間のマイクロカプセルの内側の隣接する周囲空間も、膜によって収集することのできる放射エネルギーを部分的に制限する。
【0020】
言い換えれば、これらの形状要件は、特にピッチがより狭い場合、フィルファクタをかなり制限する。
【0021】
マイクロカプセルを有さず、2つの(または場合によっては4つの)隣接する膜に共通する固定点を有する構造とは異なり、壁の内側に形成された固定構造を使用して実現することができる支持アーム6の長さに関して他の制限がある。2つの(または4つの)高感度部位間の対称軸に沿って固定点を形成することによって得られるこの有利な配置は、この分野では、マイクロカプセルを含まない従来技術を使用する際に通常使用される配置であり、実際には、公知の技術の性能レベルを定める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開95/17014号
【特許文献2】仏国特許発明第2822541号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2864340号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第2752299号明細書(米国特許第5912464号明細書)
【特許文献5】仏国特許発明第2796148号明細書(米国特許第6426539号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の目的は、このような構造およびその製造方法を提案して、性能が向上することによる利益を得る検出器を最終的に形成し、しかも真空気密微小部位技術によってもたらされる利点を享受することである。
【0024】
本発明の他の目的は、有利なことに本発明の範囲内で得られる電気光学特性を有する以下の特定の装置、すなわち、
・いくつかのスペクトル帯のそれぞれで感度が高い微小部位を有する検出器、
・赤外線放射を感知しない局所に位置する基準微小部位を有する検出器、
・ある偏光方向または放射の入射方向のみを検出する能力を有するかあるいはいくつかの遮断波長を含む一様または分散画素ハイパスフィルタを有する検出器、
・強い放射に対する保護機構を組み込んだ検出器と、その製造方法を提案することである。
【0025】
本発明について主として、最も一般的な例について適切な本発明の構造上の詳細と、特に重要な構造上の詳細、すなわち8μm〜14μmの赤外線大気透過窓に相当する遠赤外(LWIR)領域における検出に基づいて、この説明の残りの部分で詳述する。それにもかかわらず、本発明の構造上の詳細を、場合によってはいわゆる「テラヘルツ」ドメインの赤外領域を超えた他の赤外帯域で本発明を利用するように適合させることが可能である。このため、本明細書では、語「電磁放射」がより限定的な語「赤外線」に優先して使用されることがある。
【0026】
また、この説明の残りの部分では、語「関心対象の放射」、またはより厳密に、以下で限界がλminおよびλmaxで示される「関心対象のスペクトル帯」は、検出器が感知するように構成(設計)される波長の範囲と解釈すべきである。マイクロボロメータの場合、通常、膜自体が非常に広範囲の放射周波数を感知し(言い換えれば特に波長は感知しない)、その結果、「関心対象のスペクトル帯」は実際には、窓(この場合には窓カバー)がほぼ透過させるスペクトルによって定義される。
【0027】
語「好ましいスペクトル感度」または「好ましいスペクトル」も、関心対象のスペクトル帯内の特定の波長λpの近傍で最大感度を示す窓カバーのスペクトル透過マスクによって特定の波長λpを中心とする検出器の最大感度(または光応答)を得ることと解釈すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
このために、本発明の対象は、密封されたマイクロカプセルの壁と、従来技術に関連する制限をほぼ解消する基本検出器を構成する膜の支持アームの固定点との特定の配置である。
【0029】
したがって、本発明は、λminとλmaxとの間に定められる関心対象のスペクトル帯内に含まれる好ましい波長λpを中心として動作するように構成され、複数の基本検出微小部位からなる電磁放射検出器であって、各基本検出微小部位が、少なくとも関心対象のスペクトル帯における放射を感知する膜を備えた微小検出器を含み、各基本検出微小部位が、基板と、複数の微小部位の少なくともいくつかについて関心対象のスペクトル帯における放射を透過させる窓として使用される上部壁と、側壁とによって形成されるマイクロキャビティまたはマイクロカプセル内に設けられ、該膜が、導電層を含む少なくとも2つの支持アームによって基板の上方に懸垂され、通常、各マイクロキャビティまたはマイクロカプセルの内側に真空または低圧が存在する検出器に関する。
【0030】
以下の本文では、語「密封された」が、「真空(気密)」または任意の特定の圧力などの語を使用する概念に優先して使用される。これは、マイクロカプセルの基本的な特徴が、完成品の耐用年数(数年)にわたって、かつキャビティに連通するゲッター素子が存在することが好ましいことを考慮して、マイクロカプセルが、キャビティに収容される高感度素子の動作に干渉しないほど十分に安定した内圧を維持できることであるからである。一般に、通常「真空」とみなされる5.10−3mbarよりも低い圧力を実現することが試みられているが、これよりもずっと高い内圧の低熱伝導率気体(Ar、Xe、Kr)が、この耐用年数要件を満たすことができ、かつ上述の意味で気密性を実現する。
【0031】
本発明によれば、支持アームの端部は側壁に固定される。
【0032】
本発明の一実施形態では、マイクロキャビティまたはマイクロカプセルを形成する側壁は、密に接合された2つの部品、すなわち、
−基板に密着する第1の下部であって、各検出微小部位の所に周囲壁の半分離ベースを形成し、支持アームの導電層との導通を確保する導電垂直接続部を局所に備える第1の下部と、
−ベースが、各マイクロカプセルの周囲で該第1の部分の頂部に重ね合わせられかつ物理的に取り付けられるとともに、基板にほぼ平行な上部壁または窓を支持する第2の部分とからなる。
【0033】
本発明の一態様によれば、各膜を支持するアームの端部の固定点および電気接続部は、この2つの部品間の界面の所に形成される。このため、アームの長さおよび固定点のフットプリントに課される制限による従来技術の検出器に固有の感度損失がほぼなくなる。
【0034】
本発明の有利な一態様によれば、側壁のフットプリントによる未解決のフィルファクタ低下の大部分を補償するように、側壁の近傍の、上部壁または窓のレベルに周囲ファセットが設けられる。より厳密には、基板の方へ傾斜するかあるいは丸いプロファイルを有するこれらの周囲ファセットは、画像を形成するのに利用できる信号に関する中間損失をほとんど生じさせずに、2つの微小部位間の境界の近傍における入射電磁放射の大部分を互いに隣接する微小部位の一方または他方の方へ偏光させることができる。
【0035】
有利なことに、基板は、入射放射を高感度膜の方へ反射する層で覆われ、この反射器は、全体的または部分的に、マイクロカプセルに閉じ込められた残留気体分子を収集することのできる材料、またはたとえばチタンからなるゲッターからなる。
【0036】
有利なことに、導電層を備えた少なくとも2つの支持アームと基板との導通は、側壁の2つの部分間の結合線のレベルでアームの軸に対して横方向に、基板と導通する垂直接続要素(16)まで延びる伝導によって実現される。
【0037】
有利なことに、本発明による検出器は、マイクロカプセルまたはマイクロキャビティを形成する側壁を除いて、高感度膜の支持アームを固定する構造を含まない。
【0038】
有利なことに、マイクロキャビティの密封は、上部壁または窓に密着するかあるいは上部壁または窓と一体であるとともに、局所的に窓の下方に配置されかつ横方向に側壁の上部に固定された要素上にしっかりと配置された材料を使用して実現される。
【0039】
マイクロカプセルまたはマイクロキャビティの内側に一時的に閉じ込められる犠牲材料を除去できるようにする技術およびマイクロカプセルを密閉する技術は、たとえば特許文献2に記載され、より実用的には特許文献3に記載されている。この文脈で特に適切であるため有利な配置について、本発明の詳細な説明で述べる。
【0040】
本発明の特定の用途では、微小検出器は、マイクロボロメータからなり、マイクロカプセルの上部壁または窓は、シリコン、シリコンとゲルマニウムおよび硫化亜鉛との合金を含む群から選択された材料で単一の層または多層として作られる。
【0041】
本発明の特定の一実施態様では、微小部位の第1の部分は、微小部位の第1の部分と第2の部分の一方の窓内または窓上に、他方の部分とは異なる少なくとも1つの層が形成されるため、微小部位の第2の部分の好ましいスペクトルとはかなり異なる好ましいスペクトルを有する。
【0042】
他の特定の実施態様では、微小部位の第1の部分は、関心対象の放射を感知し、一方、微小部位の第2の部分は、第2の部分の窓内または窓上に堆積された不透明な金属層のために光をほとんど透過させない。
【0043】
特定の一実施形態では、少なくともいくつかの微小部位は、該部分の窓内または窓上に配置された格子状の複数の導体のために入射放射の偏光または入射角度を感知する。
【0044】
他の特定の実施態様では、微小部位の第1の部分は密封されたマイクロキャビティを備え、一方、微小部位の第2の部分の内部キャビティは、マイクロカプセルの外側の大気と連通している。
【0045】
他の特定の実施形態では、微小部位の第1の部分は密封されたマイクロキャビティを備え、一方、微小部位の第2の部分の内部容積には完全に材料が充填される。
【0046】
特定の一実施態様では、検出器は、窓内に少なくとも1つの特別の層を形成することによってハイパスフィルタを備える。
【0047】
特定の一実施態様では、微小部位の第1の部分は、第1のハイパスフィルタを備え、第2の部分は第2のハイパスフィルタを備える。言い換えれば、微小部位の第1の部分は、第1の遮断波長を有するハイパスフィルタを備え、微小部位の少なくとも第2の部分は、少なくとも第2の遮断波長を有するハイパスフィルタを備える。
【0048】
他の最後の実施態様では、少なくともいくつかの微小部位は、入射電磁束に応じて検出器の感度を変動させる、窓内または窓上に形成される少なくとも1つの層を備える。
【0049】
本発明は、このような検出器を使用する電磁放射を検出する装置にも関する。
【0050】
本発明は、以下の説明によってより容易に理解できるようになり、詳細な説明は、単に一例として添付の図面に関して施される。各図面において、同一の参照符号は同一の構成要素に関する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】従来技術によるマイクロカプセルのアレイの全体的な部分概略平面図である。
【図1B】図1Aの対象の基本要素のみを示すように簡略化された垂直断面図である。
【図2A】説明を明確にするように簡略化して配置された本発明によるマイクロカプセルのアレイの部分概略平面図である。
【図2B】破線に沿った図2Aの構造の基本要素のみを示すように簡略化された断面図である。
【図3A】2つの異なる製造段階において壁を形成する第1の方法を使用した本発明によるマイクロカプセルのアレイの部分平面図である。
【図3B】図3Aに関する構造の断面図である。
【図3C】2つの異なる製造段階において壁を形成する第1の方法を使用した本発明によるマイクロカプセルのアレイの部分平面図である。
【図3D】図3Cに関する構造の断面図である。
【図3E】電気接続部を形成する他の方法についての同じ断面図である。
【図4A】壁を形成する第2の方法を使用した、検出器を構成する膜が形成されたステップの後の、本発明によるマイクロカプセルのアレイの部分平面図である。
【図4B】図4Aの構造の断面図である。
【図4C】電気的な目的のために支持アームを挿入する特定の方法を使用した、検出器を構成する膜が形成されたステップの後の、本発明によるマイクロカプセルのアレイの部分平面図である。
【図5A】壁の上部およびマイクロカプセルのカバーを形成する好ましい方法を使用した、様々な製造段階における、本発明によるマイクロカプセルのアレイの部分平面図である。
【図5B】上記の構造を形成する2つの異なる段階のうちの1つの段階における、破線に沿った図5Aの構造の断面図である。
【図5C】上記の構造を形成する2つの異なる段階のうちの他の段階における、破線に沿った図5Aの構造の断面図である。
【図6A】壁の上部およびマイクロカプセルのカバーを形成する他の有利な方法を使用した、様々な製造段階における、本発明によるマイクロカプセルのアレイの部分平面図である。
【図6B】上記の構造を形成する3つの異なる段階のうちの1つの段階における、図6Aの構造の断面図である。
【図6C】上記の構造を形成する3つの異なる段階のうちの他の段階における、図6Aの構造の断面図である。
【図6D】上記の構造を形成する3つの異なる段階のうちの他の段階における、図6Aの構造の断面図である。
【図7】2つの好ましい波長を有する本発明による検出器の二重感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
各図面を平面図においてより明確にするために、関連する本文を十分な理解するのに必要な積層の境界のみが例示のために示されている。断面図についても、必要に応じてのみ、やはり純粋に例示的な目的で詳述される通りであり、様々な材料が、本発明の範囲を逸脱することなく、示唆される形態とは異なる形態をとるかあるいは示唆される詳細とは異なる詳細を有することができることが理解されよう。
【0053】
語「1つの層」が、上述の原則を実質的に修正することも拡張することもなく、当該技術において設計詳細レベルで必要になるかどうかに応じて「1つまたは複数の層」と解釈できることにも留意されたい。このことは、様々な特定の実施形態を解明するために述べられる手順にも当てはまる。
【0054】
図2Aは、微小部位を電気的に配線し、真空にし、かつ密封するのに使用される基本要素のない形態の本発明による構成を概略的に示している。これらの要素は以下の通りである。
・すべての構造が集合的に形成される最初の基板1。
・反復ピッチpを有するアレイ状の複数の検出器の高感度膜2であって、高感度膜2の支持アーム6が挿入される周囲壁4まで延びる支持アーム6によって支持される高感度膜2。
・重ね合わせられた部分4Aおよび4Bによって形成される壁または側壁4。
・上部カバーまたは窓5。
【0055】
図2Bは、膜2の支持アーム6の挿入に関する説明を補足する図である。図1Aおよび1Bに概略的に示されている従来の形態の固定構造はここではなくなっており、アーム6が、公知の最高性能技術の場合に通例行われるように高感度部位間の対称軸上に形成された固定構造として働く壁4の2つの部分4Aおよび4B間の継手まで延びている。これによって、熱抵抗がかなり高くなり、したがって、特許文献2に記載された技術と比べて検出器の感度が向上する。同様に、図1Aに示されている固定構造3および関連する分離空間を無くすことによって、フィルファクタがかなり大きくなる。この配置は、マイクロカプセルを有さない従来の装置と(壁のフットプリントを除いて)ほぼ同等であるが、有利なことに、各々が、当業者に容易に理解される方法で2つまたは場合によっては4つの検出部位間で共用される接続部および固定点を備えている。
【0056】
本発明による検出器の構造の1つの明確な結果は、公知の技術を使用して作製されるがマイクロカプセルを有さない構造、すなわち、序文に記載されたようにすべての固有の制限、特にコスト上の制限を有する従来の技術を使用して集積する必要がある構造と比べて無視できる感度の損失を犠牲にして、約25μm、場合によっては約15μmの遠赤外(LWIR)放射の有効物理限界までのアレイピッチを有する熱検出器を構築するのが可能になることである。さらに、以下に説明するように、壁のフットプリントに関連する未解決の損失をほぼ解消することができる。
【0057】
壁を形成する第1の好ましい非制限的方法を使用したこの検出器の一実施形態について、以下に図2Aおよび3Bを参照して説明する。
【0058】
このプロセスは、反射金属層11、たとえばチタンおよび/またはアルミニウムを含む層を基板1の表面上に堆積させ、エッチングによって形成することによって開始する。公知のように、基板は、この分野で一般的に使用されるいくつかの誘電層7によって不動態化される。この不動態化では、高感度膜2と導通するように構成された金属バンプ接点10に向かう開口部が局所的に形成されている。反射層11は、この分野で従来使用されている4分の1波長板の下部を形成するように構成されている。有利なことに、すでに提案されているように、この層11は、全体的または部分的に、カプセルが最終的に形成された後カプセルの内側に低圧を維持する必要があるときに一般に有用であるゲッター素子からなっている。
【0059】
このプロセスでは、引き続き、高感度素子の中央部のレベルで約2μmの最終厚さを有する、平坦化層12、通常ポリイミドなどの有機層が塗布される。
【0060】
次に、通常厚さが0.1μm未満であり、たとえば酸化シリコンや窒化シリコンで作られた誘電材料の第1の層13を堆積し、次いで、厚さが概ね0.1μm〜0.2μmであるアルミニウムまたはアモルファスシリコンの層14を堆積し、幅が約0.5μmの、格子状の複数の溝8をエッチングによって形成する。このエッチングは、パターン10および基板の不動態化された表面を露出させる層12の異方性エッチングによって継続する。この実施形態では、溝の幅は、たとえばパターン10の近傍で0.5μm広くなっている。次に、この産業界で公知の技術を使用して、厚さが概ね0.5μm〜1μmである誘電層または柔軟なアモルファスシリコン層15をこれらの溝内および層14の表面上に堆積する。層15の厚さは、溝の狭い部分が完全に充填され、溝のより広い部分が、0.5μm〜1μmの遮るもののない開口部を残すような厚さである。
【0061】
この説明の残りの部分は図3Cおよび3Dに基づく説明である。
【0062】
次に、層14と接点10上に開放する溝のより幅の広い部分の底部とを露出させるように層15に異方性エッチングを施す。溝の狭い部分はずっと充填されたままであり、より広い部分の垂直プロファイルは層15に整列したままである。マイクロ工学で公知であり、かつ通常タングステンまたはケイ化タングステンを化学蒸着(CVD)またはたとえば銅を使用する電気化学プロセスとともに使用して、溝のより広い部分によって形成されたキャビティを金属化する。この金属化層16は、残留した垂直キャビティを充填し、層14を覆う。次に、マスクなしで金属化層16をエッチングすることによって層14を露出させる。図3Dで明らかなように、この層16の垂直要素のみが残る。次に、マスクなしでエッチングすることによって層14も全体的に除去し、層13を選択的に露出させる。
【0063】
層14は、溝をエッチングするハードマスクとしての付随的な役割を果たし、エッチストップ層としても働き、層13を損傷することなく金属化層16を除去するのを容易にする。しかし、極めて選択的なプロセスを使用する場合、この層14を使用しないことも可能である。当業者なら、示唆されているように層14がアルミニウムで作られているかそれともシリコンで作られているかに応じて、層14をエッチングするための適切なプロセスが認識されよう。
【0064】
この段階で、壁4の下部4Aと、膜の活性構造との電気的な接続を可能にする要素とを形成する。
【0065】
この方法では引き続き、膜2に固有の構造を形成し、これによって、図4Aおよび4Bに簡略的に示されている対象が得られる。
【0066】
図4Bでは、図3Dに関して説明した組み立てによる前述のステップの間に層16および14が完全に平滑化されているものと仮定している。この場合、この段階では、たとえば、層13上に金属層17を堆積し、次に層13とほぼ同一の第2の誘電層18を堆積して、支持アーム6用の材料を公知の構造に形成するのが適切である。たとえば窒化チタンで作られ、膜当たり少なくとも2本のアームの導通を確保するように構成された層17を、図3Cの平面図に示されているように、上述の垂直金属化層16と連続するように形成する。
【0067】
アームと接点10との導通は、図3E(図を簡単にするために層17を示していない)で提案された変形実施形態に従って実現することができる。この特定の実施形態では、層13と層14との間に層17を順次挿入すると有用である。層16および14をエッチングし層17を露出させる上述の工程中に、垂直要素16のすぐ近くにフランジ19を残す。この変形実施形態を使用すると、従来の方法で導通が実現される。
【0068】
本明細書では、膜2をどのように形成するかについて詳細に説明する必要はなく、また、特に、層17と導通する1つまたは複数の温度感知層の堆積および形成について説明する必要もない。というのも、これらの代表的な実施形態は特許文献4または特許文献5に記載されているからである。当業者には、膜を形成するのに使用される材料の性質に応じて、周囲構造4Aの頂部上に材料を残すかそれとも材料を除去するかを容易に決定することができることに留意されたい。各平面図および断面図に膜の細部を明示する必要はない。以下の各図は、図を簡略化するために平面図には膜の外形を示しておらず、外形は、内部構造に関しては詳しく描かれていない太線によって断面図に示されている。
【0069】
図2Aによって示唆されているように、キャビティの内側の空間を無駄にせずに、導通を生じさせるように構成されていない支持アームを形成すること、すなわち、厳密に機械的な目的を有する支持アームがもしあればそれを形成することは容易である。これは、アームを構成する層が、アームの構成に応じて形成された壁4Aに接触するかあるいは壁4Aの上方に配置されるのに十分な距離だけ延びているからである。必要に応じて、層13(またはより一般的には、エッチングによってアームの挿入点を構成するように残される溝をエッチングする前に堆積された層)の縁部を壁4Aに確実に挿入するには、層15を堆積する前に、たとえば短時間の酸素プラズマ処理を実施して犠牲層12にわずかに等方性エッチングを施し、無機物表面層の縁部の下方の溝をわずかに広げると有用である。その後に堆積された充填層15は、層13の周囲の下面に密着する。
【0070】
導体16の形成後に層17が堆積される、上記で図3Dを参照して説明した変形実施形態では、少なくとも垂直接続要素16が1つであれば、層17が壁4Aの頂部に連続的に残される限り、壁4A上の任意の点での導通を確保するように構成されたアームの支点を形成することも可能である。
【0071】
図4Cは、この可能性を使用する特定の配置の例を示しており、要素16は、導通アームの軸に対して互い違いになるように格子状の複数の壁4A内に形成されている。実際には、図4Aで提案されたように垂直接続部16と向かい合うように電気支持アームを固定するのは、従来技術による従来の構成に基づく配置の一例に過ぎない。この場合、電気アームが挿入される点で溝が広げられないため、電気アームが延びる距離はさらに長くなる。したがって、図4Cでは、層17については、アームのレベルでの細部および膜内の細部を表す必要がなく、層17は垂直接続部16と電気アームが固定される点との間に残され、基板のレベルにおける接点10から膜2までの導通が確保される。
【0072】
言い換えれば、アーム6と基板1との導通は、側壁の部分4Aと部分4Bとの間の結合線のレベルでアームの軸に対して横方向に、基板と導通する垂直接続要素16まで延びる伝導によって実現される。
【0073】
上述の原則に従って、金属化領域16から導通を可能にするアームが固定される点まで、上記ですでに説明したフランジ延長部19だけでなく壁4Aの頂部までの局所延長部も形成するように層16を残すように配慮することによって、壁4Aの頂部まで延びるオフセットコネクタ技術のこの特定の形態を、図3Eに関して説明した変形実施形態によって実施することもできる。
【0074】
当業者は、有利なことに、様々な層の連続性を維持または中断して膜の必要な接続部同士の間の適切な接続性または分離を確保することによって、上述の明確な特徴を使用することができる。
【0075】
引き続き組み立てについて説明する前に、第2の好ましい非制限的実施形態によって下部壁4Aの要素をどのように製造するかに関して、すでに検討した図4Aおよび4Bに関して説明する。
【0076】
前述のように、このプロセスは、接点10と連続する基板の表面上に反射器11を堆積し形成することによって開始する。反射パターン11の切断の詳細は図3B、3D、および3Eに対して修正されるが、これは、提案されたプロセスによって作製される最終トポグラフィを表すのをより容易にするための、この例の他の例示的な形態に過ぎない。次に、この分野の従来の材料、すなわちシリカまたは酸化ケイ素または中間材で作られた厚さが概ね2μmの誘電層20を、この分野の従来の手段を使用して堆積する。
【0077】
有利なことに、この層20を化学機械研磨(CMP)によって平坦化し、次に層20の、垂直電気接続部が設けられる位置に異方性エッチングを施すことによって、垂直開口部を形成する。特に、公知の専用技術、通常CVDおよび/または電気化学蒸着を使用してこれらの開口部を充填するように、金属化層16を全体的に堆積する。
【0078】
最後に、通常、この分野で一般的な技術であるCMPを使用して、層16を層20の表面まで平滑化する。
【0079】
次に、図5Aに例示されているパターンに従って層20に異方性エッチングを施すことによって、エッチストップ層として使用される反射器11の表面まで部分4Aを形成する。図4Bに示されているように、パターン11同士の間の空間はこの工程の後わずかにへこんでいるように見える。このようにへこんでいないと所望の結果に対して悪影響が生じる。
【0080】
次に、通常ポリイミド層である平坦化層12を塗布して表面テクスチャ全体を充填して概ね平滑化し、次にエッチングまたは好ましくはCMPによって平坦化して構造4Aの頂部の表面を露出させる。このステップでは、層20にキャビティを形成するステップの前に水平面上の所定の位置に1つまたは複数の層16を残す場合、構造を平坦化するのにCMPを使用できるのは1回だけであることに留意されたい。
【0081】
このプロセスでは、引き続き、金属化層16の近傍でエッチングすることによって非常に局所的に開口部が設けられた誘電層13を堆積する。次に、構造上に層17を、要素16の頂部と導通するように堆積する。機能的要件に従ってこの層17のアームおよび膜を形成した後、好ましくは層13と同様の第2の誘電層18を堆積してエッチングによって形成し、このプロセスは、実際の支持アームおよび膜2が完成するまで継続する。この点でこれらのステップを詳述する必要はない。
【0082】
これによって、有利なことに、複雑さ(ステップの数)および壁4Aの頂部がほぼ零トポグラフィである点で、本発明と同じ、多用途の結合フィーチャと周囲の壁によって支持される形成済みの任意の機械的構造とを有する、本発明による構造が作製される。
【0083】
次に、壁およびカバー(または窓)5の上部4Bの好ましい一実施形態について、以下に図5A、5B、および5Cに関して説明する。
【0084】
図5Aは、基本要素のみを示す平面図内の矢印の方向におけるいくつかの異なるステップで組み立てがどのように進行するかについて説明する4つの均等な部分に分割されている。
【0085】
このプロセスは、層12とほとんど同じ種類であり、厚さがたとえば2μmである平坦化層30を堆積することによって開始する。次に、厚さが0.1μm〜0.2μmでありかつシリコンまたは窒化ケイ素またはアモルファスシリコンで作られた無機物層31を、表面上に堆積し、壁4Aの延長部を局所的に中断する微小部位当たり少なくとも1つの小形パターンをエッチングすることによって形成する。図5A(左上)に示されているように、4つの微小部位に共通する多角形を形成するように4つの微小部位に共通する隅部にパターン31を配置することは、結果として作製される構造が完成品の品質をできるだけ損なわない構造である限り有利である。しかし、他の配置も実施可能であることも明らかである。
【0086】
層30および12とほとんど同じ種類であり、厚さが通常約0.1μm〜0.2μmである新しい平坦化層32を堆積し、次に、構造4Aの頂部に達するまで層32、31、30にリソグラフィおよびエッチングを施す(図5Aの左下)ことによって、溝4Bの十字形パターンを形成する。溝の幅およびパターンは、パターン4Aの形状にほぼ重ね合わせることができる。
【0087】
マイクロカプセルの側壁4の上部4Bを形成する溝4Bの充填物を形成するように、検出すべき放射をほぼ透過させる無機物層33をアセンブリ上に堆積する。材料33は、溝4Bを充填するのに適した厚さ、すなわち通常0.5μm〜1μmの、アモルファスシリコンまたはアモルファスシリコンとゲルマニウムの合金からなることが好ましい。溝4Bのエッチングは、比較的薄い中間層、たとえば厚さが0.1μm〜0.3μmの層を使用して、層33と同じ種類であるが、この分野で通例行われるように溝4Bにリソグラフィが施される前に堆積されるハードマスクを形成することによってより容易に実施することができる。
【0088】
次に、残りのパターン31内に設けられる穿孔34を、図5Aの右下に従って層33をエッチングすることによって形成する。
【0089】
この点で、たとえば酸素プラズマを使用することによって、マイクロカプセル12、30、および32の内側のすべての犠牲有機層を除去すると有用である。開口部34は、オキシダント種用の貫通ベントとして動作するとともに、公知の技術に従ってエッチング副産物を除去するように動作する。これらの材料が、微小部位の中央からも完全に除去された後、アセンブリを任意に、真空中で、十分な時間、たとえば1時間から数時間の間、自然な状態の材料に適合する温度、通常約200℃〜400℃で事前気体抜きし、検出すべき放射を透過させ、かつ通常、物理手段、好ましくは熱スパッタリングによって得られる1つまたは複数の層35を堆積することによってマイクロカプセルを密封する。この技術は当業者に公知である。使用される材料は、熱検出の場合、シリコンや、シリコンとゲルマニウム、硫化亜鉛との合金のように8μm〜14μmの波長を有することが好ましい。これらの材料は、有利なことに窓カバー33、35の透過性を最適化するのに適した多層構造に配置することができる。本明細書では、開口部34を密封し、それによって通常の場合、内圧を最低にする必要があるマイクロカプセルを真空密封するのに優に十分な数マイクロメートルの総厚さを通常有する、関心対象の積層について詳述することは重要ではない。
【0090】
マイクロカプセルの密封は、公知のように、1つまたは複数の層35を堆積する前に透明な窓5の非構成層を堆積することによって実現することもできる。この密封層は、不透明であってよく、好ましくはスパッタリングによって得られる、たとえばアルミニウムなどの金属で作ることができる。この場合、次に、通常、マスクおよび追加的なエッチング工程を使用することによって要素31と同一のパターンを使用して、アセンブリ35を堆積する前にこの密封層を光学ゾーンから除去しておかなければならない。この層は、窓5および要素31に気密に取り付けられている。
【0091】
公知の技術によれば、マイクロカプセル内に閉じ込められた気体の残留分子、たとえばチタンの分子を収集することができ、たとえば反射器11を製造する材料またはそのような複数の材料の1つであってよい、少なくとも1つの材料をマイクロカプセルの内側に形成することも有利である。この場合、この材料はゲッターとして働く。この密封ステップの間、本来公知のように、アルゴン、クリプトン、キセノンのような低熱伝導率気体を低圧で供給することも可能である。これらの気体は、マイクロキャビティ内にできるだけ低いレベルで維持しなければならない大気気体(酸素、窒素)、揮発性有機残渣、および水素に対する役割を引き続き果たすゲッター材料に干渉しない。
【0092】
このように形成され完成した構造は、微小部位の内側に固定構造3を形成することによってもはや支持膜2が制限されない点と、完成した構造には固定構造がないため、高感度膜によって残される利用可能な空間のフィルファクタがかなり向上する点で、従来技術による構造とは異なる。このため、同時に、透明な窓を有するパッケージに熱探知カメラを気密に組み込む以後のプロセスが不要になるという利点を有する、極めて小さいピッチを有するように構成された熱探知カメラの場合でも、感度が、マイクロカプセルを有さない従来の構造によって実現される感度と同等になる。
【0093】
次に、図6A〜6Dに関して追加的な有利な構成について説明する。
【0094】
層31を堆積するステップの後、このプロセスでは引き続き、すでに説明した同じパターンを有する層31に続いてエッチングされる0.1μm〜0.2μmの厚いアルミニウム(または以下の手順を可能にする技術的特性を有する任意の他の材料)の層36を堆積する。このステップは、図6Aの左上部に相当する。
【0095】
次に、厚さが約1μm〜2μmの犠牲層32を堆積する。次に、図6Aに示されるように、一方ではパターン31の近傍でエッチングし、他方ではパターン4Aの近傍でエッチングすることによって、この層32を局所的に除去する。層32の縁部を、ベースの方へ約30度〜45度傾斜するように形成する。これは、エッチング層32の前にリソグラフィマスクによるレジストリフロープロセスのような公知の技術を使用することによって実現される。
【0096】
図6Bでは、規則的なプロファイルを仮定しているが、多少丸いプロファイルもまったく問題ない。層32のエッチングは、第1に層36の表面の所で停止し、第2に層30および32の厚さだけエッチングした後停止するが、このことは特に重大ではない。このステップは、図6Aの左下に概略的に示されている。
【0097】
このプロセスでは引き続き、溝4Bを形成する。このために、溝の底部で壁4Aが露出されるまで、層32および30をまずエッチングし、次に層30(層30の厚さを部分的に残す場合)、さらに層36をエッチングする。次に、層33を堆積することによって4Bの構造および窓カバーのベースを得る。
【0098】
上記に指摘したように、層36によって形成されたパターン内に設けられる開口部34を層33にエッチングし、エッチングは層36で停止する。この点は図6Aに表されている(右下)。次に、層36を横方向においてエッチングするか、あるいは場合によっては、通常ウェットエッチングによって完全に等方的に除去して、層32に到達できるようにする。
【0099】
図6Cは、ベント34および層36によって残された自由空間を通じてすべての犠牲層12、30、32を除去する次の工程の前の状態を示している。物理的真空蒸着を使用する最終密封ステップは、図6A(右上)および6Dに概略的に示されている。
【0100】
このプロセスの最初の結果は、積層および厚さに関して光学特性をそれほど変化させずに、基板の方へ傾斜するかあるいは支持面4Aの方へへこむ丸い形状を有するファセットを周囲に有する透明な窓カバーが形成され、各微小部位の所にまず、マイクロレンズ、すなわち、微小部位同士の間の境界の近傍で入射光線を、入射光線が最終的に高感度膜によって吸収されるいずれかの隣接するキャビティの方へ偏向させる機能を有するレンズと同等の光学構造が作製されることである。この構成がないと、これらの光線は壁4上で吸収または拡散され、すなわち画像の形成に関して失われる。この効果は、図6Dに点線矢印で概略的に表されている。このため、個々の検出部位の感度がさらに高くなる。
【0101】
プロセスに関する他の有利な結果は、エッチングプロセスが容易になり、したがって、溝4Bの充填も容易になることである。これは、構造4Aが露出されるまでエッチングすべき層30の残留厚さが、この効果によってかなり薄くなるためである。すなわち、すべてのプロセスおよび結果として得られる最終形状を最適化するように、傾斜するかあるいは丸い所望の縁部(ファセット)の深さに対して層30および32の厚さを一緒に調整することが可能である。層4Bの深さは、たとえば任意に薄い層30を使用することによって容易に、0.5μmにするか、あるいは場合によってはそれより薄くすることができる。
【0102】
また、層33の厚さは有利なことに、溝4Bを完全に充填するように適合され、すなわち、層33の厚さは溝の幅の2分の1より大きく、したがって、層35(より一般的にはすべての層)上に形成される回折パターンの側面同士が隣接し(ほぼ垂直である部分を有さない)、入射光線を中間損失なしに隣接する2つの微小部位間で分離する。この結果は、層35を形成する際にCVDによって得られる少なくとも1つの層を使用し、たとえば、CVDを使用して得られるシリコン、ゲルマニウム、または中間合金を使用することによって実現することができる。この構成は、開口部34が閉鎖された後でマイクロキャビティの密封をより確実にするのを可能にする。
【0103】
本発明によって形成された個々の窓カバーの性質および/または構成を少なくとも局所的に修正することによっていくつかまたはすべての微小部位に様々な電気光学特性を与えることを目的とする一連の特定の実施形態について以下に説明する。
【0104】
特定の一実施形態では、いくつかの微小部位の窓カバー5を構成する一連の層は、赤外線スペクトル全体にわたって不透明であり、微小部位のほぼ全表面積にわたって延び、ほぼ連続しており、かつ金属で作られた層を構成する。このような層は、たとえば、上述のように、すでにマイクロカプセル密封工程中に使用されている。この場合、この層を「光を遮る」ようにするかあるいは少なくともシーンからの放射をほとんど感知しないようにする必要があるかあるいはそうすると有利である微小検出器を含む部位の所にこの層を残せば十分である。この場合、この追加的な層は、関心対象の微小部位の上方の「窓」の部分であり、したがって、実際には光学的シールドとして働くためこの部分を語「カバー」で表した方がよい。この金属層は、密封時に必要とされない場合、層35を形成する前またはその後に、容易に追加的に堆積し、次いで光学的な感度が高い部位の所でエッチングすることができる。
【0105】
得られる有利な結果は通常、複雑さが極めてわずかに増すことを犠牲にして、シーンからの放射を感知せず、基準または補償ボロメータと呼ばれ、かつこの分野で公知のように同相雑音の影響を受けないクリーンな信号を形成するのに通常必要とされる特別なボロメータ構造を形成できることである。これらの構造は通常、高感度アレイ表面の縁部または周囲に配置され、通常、本発明の範囲外では(マイクロカプセルがない場合)製造が非常に複雑である。
【0106】
本発明の他の特定の実施形態では、少なくともいくつかの微小部位は、微小部位の窓5内または窓5上に形成され、微小部位のほぼ全表面積にわたって延び、かつ検出すべき波長よりも小さい反復ピッチを有する互いに平行な格子状の導電ストリップを備える。語「より小さい」は、約λmin/3程度を意味するものとみなされる。
【0107】
このようにして実現される入射放射の偏光フィルタリングは、この放射の、導体格子に直交する成分を、導体格子に平行であり、窓5によってほぼ透過される成分によってかなり減衰させる効果を有する。当業者は、このように放射を偏光させるためにこのような窓の後ろに配置される高感度膜の光吸収を最適化するにはどうすればよいか、または逆に、関心対象に応じて、ほとんど偏光を感知しない膜を形成するにはどうすればよいかのついての知見を有している。たとえば特許文献4に記載された内容はこの点と関連がある。
【0108】
このような検出器はたとえば、金属格子の向きに概ね平行な平面上で反射した後(たとえば地面上での高温の対象の反射)焦点面に入射するシーン要素からの放射を増幅するかあるいは逆に減衰させるのに使用することができる。
【0109】
この方法を使用して、単一アレイにおいて、一方では一偏光方向に優先的に高感度を有する微小部位を構築し、他方では直交方向に優先的に高感度を有する微小部位を構築すると、シーンからの放射の「水平」および「垂直」成分の通常同時の2つの副画像、たとえばインタレースされた画像を生成する検出器が作製される。これによって、観測されるシーンに関するより豊かな情報が得られる。
【0110】
本発明の他の特定の実施形態では、少なくともいくつかの微小部位は、窓5内または窓5上に形成され、微小部位のほぼ全表面積にわたって延び、検出すべき好ましい波長λpと同じ程度の反復ピッチを有する格子状の複数の導電ストリップを備える。語「程度」は約λp〜λp/2を意味するものとみなされる。言い換えれば、反復ピッチはλp〜λp/2である。
【0111】
語「基本パターン」は、焦点面に平行な平面内の2つの方向(必ずしも直交する必要はない)に規則的に複写されることによって完全な回折格子を作製する最小パターンを意味する。この基本回折パターンは、直線状、環状、十字形、または円板状の要素であってよく、これらの例は、一例として与えられているに過ぎず、制限的なものではない。
【0112】
このように、検出器の感度は、格子パターンの回折による放射の入射角度に応じて修正される。この効果を使用して、たとえば、検出器が設置されるシステムの光軸に対してシーンの要素が現れる角度に応じて、検出器の感度を高くするかあるいは逆に低くすることができる。
【0113】
これらの偏光または回折フィルタは、適切に構成されたマスクを使用して金属層を形成すると仮定すると、不透明なシールドを形成するために開発された上記と同じ技術を使用して窓5の構造内に形成される。導電ストリップの幅としては、反復ピッチよりもかなり小さい幅が選択されることが好ましい。同様に、基本パターンの不透明表面積としては、このような格子を備えた窓に面する微小検出器の感度を低くしないように基本パターンが複製される両方向における反復ピッチの積よりも著しく小さい表面積が選択される。
【0114】
本発明の他の特定の実施形態では、微小部位の一部の窓5の一連の層は、関心対象のスペクトル帯において透過的であり、かつ微小部位のそれぞれの部分に異なる優先スペクトル感度を与えるように、厚さおよび/または種類の点で、微小部位の他の部分の窓5の一連の層と異なる、少なくとも1つの層を備える。
【0115】
言い換えれば、この特定の実施形態では、それぞれ、2つの好ましい波長λp1およびλp2を中心とする関心対象の共通スペクトル帯の(少なくとも)2つの部分に対する感度がより高く、同じ電子網膜上に配置された、(少なくとも)2つの範疇の微小部位を設ける。これは、各微小検出器に面するように形成される窓5は、それぞれ異なる透過スペクトルを有するためである。2つの透過スペクトルが不連続である必要はなく、窓5を構成する層が少ないためこれを使用して不連続なスペクトルを実現することはできない。この形態は、たとえば、少なくとも2つの互いに近い微小部位から与えられる信号によって、観測されるシーンにおける特定の対象の放射温度を区別できるようにするための基準とする情報を得ることが可能である。
【0116】
多層システムの光透過スペクトルは各層の厚さおよびそれぞれの指標にかなり依存するため、この実施形態について詳しく説明することはできない。しかしながら、当業者は、有利なことにこの形態を利用し、かつ1つまたは2つの異なる層を使用してそれぞれ、各範疇の高感度部位を作製するのに十分な知識および専門技術を有する。上述のように、各微小部位からの必要なスペクトル応答に応じて、1つまたは複数の適切なマスクおよび関連する公知の実施技術を使用することによって1つまたは複数の異なる層を局所的に残すかあるいは除去しなければならないことは自明である。
【0117】
たとえば、微小部位のある部分について8μmから10μmの間では応答が強く、10μmを超えると応答が弱くなり、微小部位の他の部分についてはこの逆になる。窓が、焦点面から遠くに配置されるためアレイのすべての高感度画素に共通する窓に限られる従来技術を使用してパッケージに組み込まれる検出器に課される、窓の「広帯域」透過性に関する制約を課さずに、中赤外線波長(3μm〜5μm)および長赤外線波長(8μm〜14μm)用のいわゆるバイスペクトル網膜を形成することも可能である。
【0118】
この実施形態は、高感度網膜の様々なゾーン(部分)間の様々な層をどのように残すかあるいは除去するかを決定し、かつ製造プロセスの終了時に適用される1つまたは複数のマスクの設計によってのみ空間感度分布(たとえばチェッカー盤状のラインまたはインタレースされたライン)が定められるバイスペクトル撮像装置または場合によってはマルチスペクトル撮像装置を比較的簡単に形成できることを理解されたい。
【0119】
2つの好ましい波長それぞれλp1およびλp2を中心とする感度差を有するこのような検出器を図7に関して例示する。後述の例では、この場合はλminを超える、以下に論じるハイパス機能が、すべての微小部位に共通に備えられる。
【0120】
本発明の特定の一実施形態では、微小部位の第1の部分は密封されたマイクロキャビティを備え、一方、微小部位の第2の部分は、外部雰囲気と連通するマイクロキャビティを備える。この形態は、たとえば、微小部位の第2の部分堆積された層35にマスクを施すか、あるいは微小部位の開口部34と向かい合う層31を設けないことによって実現される。
【0121】
これによって、微小部位の第1の部分について放射を感知するいくつかの微小検出器と、微小部位の第2の部分について放射を感知しないいくつかの微小検出器とが作製される。後者の検出器は通常、補償後に同相雑音のない信号を形成するために基準検出器として使用するか、あるいはより一般的に、装置の外側の圧力を感知する検出器として使用することができる。
【0122】
本発明の特定の一実施形態では、微小部位の第1の部分は密封されたマイクロキャビティを備え、一方、微小部位の第2の部分は、ほぼ同一のプロセスを使用して同時に形成されるが、完全に材料が充填された「マイクロカプセル」を備える。このため、固体材料によって区画される空間からなるがそれ自体は固体材料を含まない「マイクロキャビティ」ではなく語「マイクロカプセル」を使用することが好ましい。この形態は、第2の微小部位のフットプリントに開口部34を設けないことによってただちに実現される。このように、犠牲材料の層12、30、32は、内部微小検出器と基板との間に熱的短絡を生じさせること以外に機能的結果を有さないこれらの犠牲層を除去する工程中、所定の位置に残る。
【0123】
このように、追加的な不透明層を形成する必要なしに、第1に、微小部位の第1の部分について放射を感知する微小検出器を得ることができ、第2に、微小部位の第2の部分について放射を感知せず、かつ連続的に基板(ヒートシンク)の温度に維持される微小検出器を得ることができる。
【0124】
第2の微小部位は通常、補償後に同相雑音を含まない信号を形成するために基準検出器として使用するか、あるいはより一般的に、基板の温度のみを感知し、たとえば温度センサとして使用することのできる検出器として使用することができる。
【0125】
次に、検出器またはこの検出器によって形成される装置(本明細書では、この語はより集積度の高いアセンブリを示す)のスペクトル応答のハイパスフィルタリングに関して本発明を実施する様々な方法について以下に説明する。
【0126】
特に8μm〜14μmの大気透過帯域で動作する検出器の場合、「ハイパス」フィルタと呼ばれる光学素子を焦点面の上流側に挿入することがごく一般的に行われている。このフィルタの主要な機能は、関心対象のスペクトル帯が8μm〜14μmの遠赤外線である場合、通常約7.5μm〜7.7μmに設定されるしきい値より小さい波長を有する放射を遮断することである。
【0127】
このハイパスフィルタは通常、一方の面上に多数の層を堆積することによって得られるか、あるいはゲルマニウムまたはシリコンの厚いシートの両面上に全体的に分散されたコーティングによって形成される。このシートの両面には通常、典型的には最大で12.5μm〜16μmを透過させるように反射防止処理が施され、これも多数の層を堆積することによって実現される。この窓シートは(または通常の意味での窓)は、従来技術による検出器のエンクロージャまたは従来のパッケージの光学的に活性の面に気密に取り付けられ、かつこの面と一体化される。実際には、ボロメータ検出器の場合、この窓の透過マスク全体が、検出器またはこの検出器を含む装置の「関心対象のスペクトル帯」または「関心対象の放射」を定める。
【0128】
これらの好ましいハイパスフィルタリング条件の下で本発明による検出器を実施する第1の方法では、上述のような従来の窓を備えたパッケージに検出器を組み込む。このようなアセンブリの利点は、第1に、透過マスク(関心対象のスペクトル帯)がパッケージの窓によって形成されることである。このように、完全に習得された公知の製造方法に従って非常に多くの層を使用することによって、厄介な制約を課す透過マスクが利用可能になる。また、このパッケージを密封することが不要になるかあるいは少なくともこの要件が著しく緩和され、これによって、資源面でかなり節約され、完成品のパッケージのレベルでの製造収量が得られる。
【0129】
これらの集積条件の下では、パッケージの内側に中圧雰囲気を生成し、たとえば10mbar〜2barの圧力でAr、Kr、Xeなどの低拡散率気体を供給し、パッケージ内に取り付けられる本発明による検出器の耐用年数を最適化することも有利である。これによって、主として長期的な透過の影響、または場合によってはマイクロカプセルの密封を損なう恐れがある窓5の微小亀裂の影響が補正される。しかし、複雑な窓を備えたこのようなパッケージを使用することによるコストがかなり高く、言うまでもなく、関心対象のスペクトル帯における追加的な窓の部分透過性に関連して性能がわずかに低下することは自明である。
【0130】
本発明を実施し、短波長を遮断する第2の方法では、スペクトル透過に関する「ハイパス」フィルタ機能を窓5に直接付与する少なくとも1つの層を、少なくともいくつかの微小部位の窓5内または窓5上に形成する。
【0131】
この特別の層は、有利なことに、このときまでに検出器製造プロセスが終了しているため、有効であるが、限定された温度、たとえば150℃を超える温度にも耐えることのできない材料を使用できるようにプロセスの終了時に窓の表面上に堆積することができる。
【0132】
有利なことに、この層は、検出器の設計の対象となる放射の範囲に適切な光学バンドギャップを有する半導体材料によって形成される。この光学バンドギャップを超えるエネルギーに相当する波長は、材料の直接的な光電子的遷移の効果によって非常に効果的に遮断される。たとえば、「III−V」二元化合物InSbは約7.3μmの遮断波長を生成し、「III−V」二元化合物InAsは約4μmの遮断波長を生成する。In(1−x)AlSbやIn(1−x)AlAs(0≦x≦1)などの「III−V」三元合金は、xの選択された組成に応じて、中赤外線と遠赤外線との間で遮断波長調整を行う。同様に、「II−VI」三元Hg(1−y)CdTe(0.2≦y≦0.6)などの材料の組成xを選択することによって、透過率しきい値を可視帯域から通常8μmまで調整することが可能になり、窓5は、このしきい値より小さい場合にはほぼ不透明になる。xとして約0.4を選択すると、3μmに近い遮断波長が生成され、xとして約0.2を選択すると、調整可能な遮断波長しきい値は、遠赤外波長での本発明による検出に適した約7μm〜8μmになる。約3μmの遮断波長を生成する硫化鉛PbSにも触れておくべきである。これらの例は、情報のためのみに与えられており、制限的なものではない。
【0133】
所望の効果を得るには、高度の純度または結晶度を実現する必要がある。これらの材料、たとえば0.5μm〜2μmの厚さを得るのに使用される材料の薄膜を堆積する従来の方法は、所望の目的に適切であり、それらの方法について本明細書で説明する必要はない。
【0134】
赤外線検出システムまたは撮像システムが通常、長い波長を透過させないゲルマニウム光学機器を有するため、1.8μmより小さい波長では、放射スペクトルをフィルタリングする必要はない。したがって、入射放射スペクトルのハイパス(波長)フィルタリングは、システムの光路上の検出器の上流側に追加的な窓を挿入する必要なしに直接実現される。
【0135】
本発明は、微小部位の第1の部分に関する第1の透過しきい値を有する第1のハイパスフィルタと、微小部位の第2の部分(または第3の部分以降)に関する第2の透過しきい値を有する第2のハイパスフィルタ(または第3のハイパスフィルタ以降)とを形成することも提案する。この結果は、各微小部位で使用される「ハイパス」層を作る材料を選択し、たとえば上述の複数の材料から異なる材料を選択するか、あるいは微小部位のある部分に第1のハイパス材料の層を重ね合わせ、微小部位の他の部分にそれぞれの異なるハイパス材料からなる2つの層を重ね合わせることによって実現される。これにより、入射放射遮断フィルタリングを(波長λp1およびλp2を中心とする優先感度を定めるための)上述の分散反射防止コーティングと組み合わせるか、あるいは分散反射防止コーティングを形成することの代わりに入射放射遮断フィルタリングを行うことによって、関心対象の微小部位に応じて、微小検出器のスペクトル感度が分散される。
【0136】
言い換えれば、この特定の実施形態では、検出器の関心対象のスペクトル帯は、短波長側では最低遮断周波数によって定められ、スペクトルの、2つの遮断周波数間の部分を感知できるのはいくつかの微小部位だけである。
【0137】
他の実施形態では、少なくともいくつかの微小部位は、少なくとも1つの層が入射電磁束に応じた可変透過率を有する窓5を備える。より厳密には、材料に特有の放射強度しきい値を超えると透過率が急速に低下する特定の層を使用する。
【0138】
このような層は、たとえば、InSb、In(1−x)AlSb、In(1−x)AlAs(0≦x≦1)、Hg(1−y)CdTe(0.2≦y≦0.6)、酸化バナジウム(通常、この分野で一般化学式VOxで指定される)のような、業界用語で「非線形」と呼ばれ、標準的な産業技術に従って0.5μm〜2μmの厚さを有する薄膜の形で使用される材料を使用して得ることができる。
【0139】
これによって、(たとえば偶然に太陽を観測することによって)通常、極めて高い温度を有するシーンの光源からの強烈な放射束が、検出器の焦点面上に投影される場合、マイクロカプセルの内側に配置された高感度ボロメータ素子が少なくとも部分的ではあるが、非常に有利なことに個別に(画素ごとに)保護される。このような光源は実際、関心対象の微小検出器の特性を長期的にあるいは場合によっては永久的に損なう可能性が高い。
【0140】
この特別の「保護」層は実際上、焦点面上に配置されるため、入射エネルギーもほぼ、実際の検出器のレベルにのみ集中し、これにより、検出器によって受け取られる放射束に対する効率が最大になる。ユーザが画像を連続的に利用できるようにする装置の機能が、強烈な照射の期間中でも維持されることを理解されたい。この分野で使用される従来の技術では、ユーザに影響を与える1つの顕著な障害、すなわち、露出過度の画素から得られた信号が飽和することによる局所的な画像損失、またはシステムが自動的にシャッタを閉じる機能を備えている場合に、放射強度が過度に高いとみなされるシーンが検出された後でシャッタが自動的に閉じられることによる完全な画像損失が生じる。
【符号の説明】
【0141】
1 基板
2 高感度膜
3 固定構造
4 壁
4A 下部
4B 上部
5 窓
6 支持アーム
10 バンプ接点
11 反射金属層
12 平坦化層
13 誘電材料層
14 アルミニウム層
15 誘電層
16 金属化層
17 金属層
18 第2の誘電層
19 フランジ
20 誘電層
30 平坦化層
31 無機物層
32 平坦化層
33 無機物層
34 開口部
35 窓カバー
36 アルミニウム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
λminとλmaxとの間に定められる関心対象のスペクトル帯内に含まれる好ましい波長λpを中心として動作するように構成され、複数の基本検出微小部位を備える電磁放射検出器であって、各基本検出微小部位が、少なくとも関心対象のスペクトル帯における放射を感知する膜(2)を備えた微小検出器を含み、各基本検出微小部位が、基板(1)と、前記複数の微小部位の少なくともいくつかについて前記関心対象のスペクトル帯における前記放射を透過させる窓として使用される上部壁(5)と、側壁(4)とによって形成されるマイクロキャビティまたはマイクロカプセル内に設けられ、前記膜(2)が、導電層(17)を含む少なくとも2つの支持アーム(6)によって基板(1)の上方に懸垂される電磁放射検出器において、前記アーム(6)の端部は、側壁(4)内に固定されることを特徴とする電磁放射検出器。
【請求項2】
少なくともいくつかの前記マイクロキャビティは密封されることを特徴とする、請求項1に記載の電磁放射検出器。
【請求項3】
前記密封されたマイクロキャビティは、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの低熱伝導率気体を含むことを特徴とする、請求項2に記載の電磁放射検出器。
【請求項4】
前記マイクロキャビティまたはマイクロカプセルを形成する側壁(4)は、密に接合された2つの部品、すなわち、
基板(1)に密着する第1の下部(4A)であって、各検出微小部位の所に周囲壁の半分離ベースを形成し、支持アーム(6)の導電層(17)との導通を確保する導電垂直接続部を局所に備える第1の下部(4A)と、
ベースが、各マイクロカプセルの周囲で前記第1の部分(4A)の頂部に重ね合わせられかつ物理的に取り付けられるとともに、前記基板にほぼ平行な上部壁または窓(5)を支持する第2の部分(4A)とからなることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項5】
高感度膜(2)の導電層(17)を備える前記少なくとも2つの支持アーム(6)の端部の前記固定点および電気接続部は、側壁(4)を構成する前記2つの部品(4A)および(4B)間の界面の所に形成されることを特徴とする、請求項4に記載の電磁放射検出器。
【請求項6】
前記少なくとも2つのアーム(6)と基板(1)との導通は、前記側壁の部分(4A)および(4B)間の結合面のレベルで前記アームの軸に対して横方向に、前記基板と導通する垂直接続要素(16)まで延びる伝導によって実現されることを特徴とする、請求項4または5に記載の電磁放射検出器。
【請求項7】
前記マイクロカプセルを形成する側壁を除いて、高感度膜の支持アーム(6)を固定するいかなる構造も含まないことを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項8】
上部壁または窓(5)は、基板(1)の方へ傾斜するかあるいは丸いプロファイルを有し、2つの微小部位間の境界の近傍における入射放射を互いに隣接する微小部位のいずれかの方へ偏光させることができる周囲ファセットを、側壁(4)の近傍に有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項9】
基板(1)は、入射放射を高感度膜(2)の方へ反射する反射器として働く層(11)で覆われることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項10】
反射器(11)は、全体的または部分的に、前記マイクロキャビティに閉じ込められた残留気体分子を収集することのできる材料、または有利なことにチタンからなるゲッターからなることを特徴とする、請求項9に記載の電磁放射検出器。
【請求項11】
前記マイクロキャビティの前記密封は、前記上部壁または窓(5)に密着するかあるいは前記上部壁または窓(5)と一体であるとともに、局所的に窓(5)の下方に配置されかつ横方向に側壁(4)の上部(4B)に固定された要素(31)上にしっかりと配置された材料によって形成されることを特徴とする、請求項4から10のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項12】
前記微小検出器は、マイクロボロメータからなり、上部壁または窓(5)は、シリコン、シリコンとゲルマニウムまたは硫化亜鉛との合金を含む群から選択された材料で少なくとも部分的に、単一の層または多層として作られることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項13】
前記微小部位の第1の部分の窓(5)は、前記微小部位の少なくとも第2の部分の前記窓とは異なる関心対象のスペクトル帯をほぼ透過させ、したがって、前記第1の部分の前記微小検出器の好ましい波長λp1は、前記少なくとも第2の部分の好ましい波長λp2とかなり異なることを特徴とする、請求項12に記載の電磁放射検出器。
【請求項14】
いくつかの前記微小部位の窓(5)は、ほぼ連続しており、前記微小部位のほぼ全表面積にわたって延び、前記赤外線スペクトルにおけるすべての放射を透過させない層を備えることを特徴とする、請求項12または13に記載の電磁放射検出器。
【請求項15】
少なくともいくつかの前記微小部位の窓(5)は、前記微小部位のほぼ全表面積を覆う格子状の複数の導電パターンを備えることを特徴とする、請求項12から14のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項16】
前記格子は、λmin/3よりも小さい反復ピッチで配置された互いに平行なストリップまたはラインによって形成されることを特徴とする、請求項15に記載の電磁放射検出器。
【請求項17】
前記微小部位の第1の部分の窓(5)は、第1の方向に形成された格子を備え、前記微小部位の第2の部分の窓(5)は、前記第1の格子の前記方向に直交する方向に形成された格子を備えることを特徴とする、請求項16に記載の電磁放射検出器。
【請求項18】
前記格子は、前記焦点面に平行な平面内の2つの方向に、λp〜λp/2の反復ピッチで、前記反復ピッチ以下の寸法を有する基本パターンを反復することによって形成されることを特徴とする、請求項15に記載の電磁放射検出器。
【請求項19】
前記不透明層、前記互いに平行なストリップまたは導電基本パターンは、金属で作られることを特徴とする、請求項14から18のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項20】
いくつかの前記微小部位の前記マイクロカプセルには固体材料が充填されることを特徴とする、請求項1から19のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項21】
少なくともいくつかの前記微小部位は、少なくとも1つの層が、ハイパス型透過スペクトルを有する材料からなる窓(5)を備えることを特徴とする、請求項12から20のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項22】
前記材料は半導体であることを特徴とする、請求項21に記載の電磁放射検出器。
【請求項23】
前記半導体は、In(1−x)AlAs、In(1−x)AlSb(0≦x≦1);Hg(1−y)CdTe(0.2≦y≦0.6);およびPbSを含む群から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の電磁放射検出器。
【請求項24】
前記微小部位の第1の部分は、第1の遮断波長を有するハイパスフィルタを備え、前記微小部位の少なくとも第2の部分は、少なくとも第2の遮断波長を有するハイパスフィルタを備えることを特徴とする、請求項21に記載の電磁放射検出器。
【請求項25】
少なくともいくつかの前記微小部位は、少なくとも1つの層が、前記入射電磁束の関数として可変透過率を有する材料からなる窓(5)を備えることを特徴とする、請求項12から20のいずれかに記載の電磁放射検出器。
【請求項26】
前記材料は、In(1−x)AlSb、In(1−x)AlAs (0≦x≦1);Hg(1−y)CdTe(0.2≦y≦0.6);および一般化学式VOxを有する酸化バナジウムを含む群から選択されることを特徴とする、請求項25に記載の電磁放射検出器。
【請求項27】
λminとλmaxとの間に定められる関心対象のスペクトル帯内に含まれる好ましい波長λpを中心として動作するように構成された、電磁放射を検出する装置であって、
前記関心対象のスペクトル帯をほぼ透過させ、遮断波長未満の波長をほとんど透過させない窓を一方の面上に備える密封されたパッケージと、
前記窓に面するパッケージの内側に配置された電磁放射検出器とを備える装置において、
前記検出器は請求項12から20のいずれかに記載の検出器であり、前記パッケージ内の雰囲気は低拡散率気体または複数の低拡散率気体の混合物からなることを特徴とする装置。
【請求項28】
前記気体は、アルゴン、クリプトン、およびキセノンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項27に記載の、電磁放射を検出する装置。
【請求項29】
前記パッケージの内側の圧力は10mbar〜2barであることを特徴とする、請求項27または28に記載の、電磁放射を検出する装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−505373(P2012−505373A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529610(P2011−529610)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051901
【国際公開番号】WO2010/040945
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(505296968)
【Fターム(参考)】