説明

マイクロカプセル化顔料分散液の製造方法、及びインクジェット用インクの製造方法

【課題】吐出性に優れ、且つ、耐擦過性に優れたマイクロカプセル化顔料分散液を簡便に作製できる製造方法の提供。
【解決手段】顔料、第一の界面活性剤及び水を含む顔料分散液と、第一のモノマー、第二の界面活性剤及び水を含むモノマーエマルションとを混合した後に分散させて分散液を得る分散工程と、前記分散液に含まれる前記第一のモノマーを重合して中間原料を得る第一の重合工程と、前記中間原料に第二のモノマーを加えた後、前記第二のモノマーを重合して、マイクロカプセル化顔料を含有するマイクロカプセル化顔料分散液を得る第二の重合工程と、を有することを特徴とするマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセル化顔料分散液の製造方法、及びインクジェット用インクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット用インクに対しては、フェイス信頼性、分散安定性、吐出性、及びブリードの抑制等の様々な特性を有することが要求されている。また、インクジェット用インクにより形成された画像に対しては、耐擦過性等の様々な特性を有することが要求されている。そして、これらの要求を満足すべく、様々なインクジェット用インクが提案されている。近年では顔料を樹脂で内包したマイクロカプセル化顔料を含有する分散液(以下、「マイクロカプセル化顔料分散液」ともいう)の開発が積極的に進められている。
特許文献1には、一部の酸性基が中和された樹脂が溶解した有機溶媒と、顔料分散液とを混合し、転相乳化することで顔料分散液を得る顔料分散液の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−183920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術について本発明者らが検討したところ、顔料分散液中で、一部の樹脂は顔料に結着してはいたものの、残りの樹脂は、顔料に結着せずに樹脂エマルションとして分散液中に存在していることが判明した。そして、この顔料分散液を用いたインクジェット用インクでは、十分な吐出性が得られなかった。また、このインクジェット用インクを用いて形成された画像は、耐擦過性が不十分であった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。そして、本発明の課題は、吐出性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を形成することができるインクジェット用インクを調製可能なマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、吐出性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を形成することができるインクジェット用インクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の発明によって達成される。即ち、本発明は、顔料、第一の界面活性剤及び水を含む顔料分散液と、第一のモノマー、第二の界面活性剤及び水を含むモノマーエマルションとを混合した後に分散させて分散液を得る分散工程と、前記分散液に含まれる前記第一のモノマーを重合して中間原料を得る第一の重合工程と、前記中間原料に第二のモノマーを加えた後、前記第二のモノマーを重合して、マイクロカプセル化顔料を含有するマイクロカプセル化顔料分散液を得る第二の重合工程と、を有することを特徴とするマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を形成することができるインクジェット用インクを調製可能なマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、吐出性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を形成することができるインクジェット用インクの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0009】
[顔料分散液]
顔料分散液は、顔料、第一の界面活性剤及び水を含む。
顔料分散液は、後述するモノマーエマルションと混合する前に分散処理を施すことが好ましい。分散処理としては、公知の撹拌機、超音波照射機、ボールミル、ビーズミル及びペイントシェーカー等を用いて分散する方法が挙げられる。
【0010】
<顔料>
顔料としては、無機顔料、及び有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ等が挙げられる。その他、公知の無機顔料を使用することもできる。
【0011】
また、有機顔料としては、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリン系、イソインドリノン系等の各種顔料が挙げられる。その他、公知の有機顔料を使用することもできる。顔料の形状は、通常は粒子状である。顔料の平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。顔料の平均粒子径は、ナノトラックUPA(日機装社製)等の動的光散乱法による公知の粒径測定装置によって求められる。
顔料の濃度は、顔料分散液全質量を基準として、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0012】
<第一の界面活性剤>
第一の界面活性剤としては、親水性基のユニットと疎水性基のユニットとを有する化合物であればいずれも好適に用いることができる。また、後述する第一のモノマーと化学的に結合するものであっても、しないものであってもよい。
【0013】
第一の界面活性剤としては、具体的には、アニオン性の高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸の塩(Na、K、Li、Ca等)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0014】
また、例えば、ノニオン性のフッ素系、シリコン系、アクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪族エステル、ポリエチレンオキサイド縮合型ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミンアルキルアミンオキサイド等を用いることもできる。その他、公知の界面活性剤も使用することができる。
【0015】
以上の具体例の中でも特に、炭素数6以上のアルキル基、芳香族環及び脂肪族環からなる群より選ばれる少なくとも一つの疎水性基と、繰り返し数が30以上のエチレンオキサイドからなる親水性基と、を有する化合物が好適に用いられる。このような構造の化合物を第一の界面活性剤として用いることで、より安定な吐出が実現される。顔料分散液中の第一の界面活性剤の量は、顔料分散液全質量を基準として0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。また、顔料分散液中の第一の界面活性剤の量は、顔料に対して質量比で0.1倍以上10倍以下であることが好ましい。
【0016】
[モノマーエマルション]
モノマーエマルションは、第一のモノマー、第二の界面活性剤及び水を含む。モノマーエマルションは、上記した顔料分散液と混合する前に分散処理を施すことが好ましい。分散処理としては、超音波照射機、高圧ホモジナイザー、高せん断力がかけられる乳化機等を用いて分散する方法が挙げられる。上記した分散処理を施すことで、モノマーエマルション中の第一のモノマーの平均粒子径を適宜調製することができる。第一のモノマーの平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがさらに好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。
【0017】
<第一のモノマー>
好適に用いることのできる第一のモノマーとしては、例えば、疎水性のアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸ベンジル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等のイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等のフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;酢酸ビニルが挙げられる。第一のモノマーの量は、モノマーエマルション全質量に対して、0.1質量%以上80質量%であることが好ましい。
【0018】
第一のモノマーとして上記のような疎水性モノマーを用いた場合、第一のモノマー以外のモノマー(その他のモノマー)をモノマーエマルションに加えても良い。その他のモノマーとしては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマール酸等のカルボキシル基を有するモノマー及びこれらの塩;スチレンスルホン酸、スルホン酸−2−プロピルアクリルアミド、アクリル酸−2−スルホン酸エチル、メタクリル酸−2−スルホン酸エチル、ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーとこれらの塩;メタクリル酸−2−ホスホン酸エチル、アクリル酸−2−ホスホン酸エチル等のホスホン酸基を有するモノマー;アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル等の第1級アミノ基を有するモノマー;アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル等の第2級アミノ基を有するモノマー;アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸ジエチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノプロピル等の第3級アミノ基を有するモノマー;アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩等の第4級アンモニウム基を有するモノマー;各種ビニルイミダゾール類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピルが挙げられる。その他のモノマーをモノマーエマルションに加える場合、その量は、第一のモノマー(疎水性モノマー)全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0019】
<第二の界面活性剤>
第二の界面活性剤の種類は、特に限定されない。具体的には、第一の界面活性剤として用いることのできるものであればいずれも好適に用いることができる。なお、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤とは同一であっても異なっていてもよい。第二の界面活性剤の含有量は、第一のモノマーの全質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0020】
[分散工程]
分散工程は、上述した顔料分散液と上述したモノマーエマルションとを混合し、分散することで分散液を得る工程である。顔料分散液とモノマーエマルションとを混合、分散する際には、公知の撹拌機や、超音波照射機が好適に用いられる。
【0021】
[第一の重合工程]
第一の重合工程は、上記した分散工程によって得られた分散液中の第一のモノマーを重合して中間原料を得る工程である。本発明においては、重合を行う際に、重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、製造のどの操作中でも加えることができるが、好ましくは、モノマーエマルションを製造する際に加えられる。また、安定的に重合を行うために、ハイドロホーブを加えても良い。ハイドロホーブは、製造のどの操作中でも加えることができるが、好ましくは、モノマーエマルションを製造する際に加えられる。
【0022】
<重合開始剤>
本発明において、有効に用いることのできる重合開始剤には、ラジカル付加重合を起こすことができる全てのものが含まれる。例えば、2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等の疎水性アゾ開始剤;ペルオキソカルボン酸及びこれらのエステル、ペルオクタネート類、ペルベンゾエート類、過酸化ジベンゾイルなどのジアシルペルオキシド類が挙げられる。また、例えば、水溶性のペルオキソ二硫酸塩のアンモニウム塩及びアルカリ金属塩;過酸化水素;tert−ブチルヒドロペルオキシド等の低分子量ヒドロペルオキシド類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロハライド等の塩状アゾ化合物が挙げられる。その他、公知の重合開始剤を使用することもできる。
【0023】
重合開始剤の量は、第一のモノマー全質量を基準として、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0024】
<ハイドロホーブ>
有効に用いることのできるハイドロホーブとしては、ヘキサデカン、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、クロロベンゼン、ドデシルメルカプタン、オリーブ油、青色染料(Blue70)、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸が挙げられる。その他、公知のハイドロホーブを使用することができる。
ハイドロホーブの量は、第一のモノマー全質量を基準として、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0025】
[第二の重合工程]
第二の重合工程は、第一の工程によって得られた中間原料に、第二のモノマーを加えて重合することにより、マイクロカプセル化顔料分散液を得る工程である。第二のモノマーを加える方法としては、中間原料に第二のモノマーを滴下混合する方法が好適に用いられる。具体的には、中間原料を撹拌しながら昇温して、この中に、第二のモノマーを、例えば重合開始剤と共に滴下することが好ましい。
【0026】
<第二のモノマー>
有効に用いることのできる第二のモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸ベンジル等の疎水性のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等の疎水性のメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等のイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等のフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられる。
【0027】
さらに、第二のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマール酸等のカルボキシル基を有する親水性のモノマー及びこれらの塩;スチレンスルホン酸、スルホン酸−2−プロピルアクリルアミド、アクリル酸−2−スルホン酸エチル、メタクリル酸−2−スルホン酸エチル、ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマー及びこれらの塩;メタクリル酸−2−ホスホン酸エチル、アクリル酸−2−ホスホン酸エチル等のホスホン酸基を有するモノマー;アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル等の第1級アミノ基を有するモノマー;アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル等の第2級アミノ基を有するモノマー;アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸ジエチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノプロピル等の第3級アミノ基を有するモノマー;アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩等の第4級アンモニウム基を有するモノマー;各種ビニルイミダゾール類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピルが挙げられる。
【0028】
更に、架橋性のジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸アリル、メチレンビスアクリルアミドを第二のモノマーとして用いても良い。その他、公知のモノマーを使用することもできる。
第二のモノマーの量は、第一の重合工程後に得られる中間原料の全質量を基準として、10質量%以上200質量%以下であることが好ましい。また、重合開始剤の量は、第二のモノマー全質量を基準として、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0029】
<インクジェット用インクの製造方法>
本発明のインクジェット用インクの製造方法は、前述のマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法により得られたマイクロカプセル化顔料分散液を用いてインクジェット用インクを得る工程を有することを特徴とする。本発明のインクジェット用インクの製造方法においては、前述の製造方法により得られたマイクロカプセル化顔料分散液を用いること以外は、従来公知の手法を採用すればよい。特定の方法によって製造されたマイクロカプセル化顔料分散液を用いることで、吐出性に優れているとともに、耐擦過性に優れた画像を形成することが可能なインクジェット用インクを製造することができる。
【実施例】
【0030】
次に実施例、及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0031】
(1)マイクロカプセル化顔料分散液及びインクジェット用インクの製造
【0032】
(実施例1)
[顔料分散液の調製]
ペイントシェーカー用サンプル瓶に、水104g、及びNIKKOL−BC30(日光ケミカルズ社製)6gを入れて混合した。ピグメントブルー15:3(商品名「Toner Cyan BG」、クラリアント ジャパン社製)10g、及び直径0.1mmのジルコニアビーズ240gをさらに入れ、ペイントシェーカーを使用して5時間分散させた。次いで、ペイントシェーカー用サンプル瓶から取り出した液を、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターで加圧濾過して顔料分散液(1)を得た。
【0033】
[モノマーエマルションの調製]
ビーカーに、スチレン9g、オクタデシルメタクリレート1g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5g、界面活性剤(商品名「NIKKOL−BC30」、日光ケミカルズ社製)0.6g、及び水70gを入れた。氷冷下、600rpmで10分間混合した後、超音波照射機(商品名「Branson Sonifier W450」、Branson社製)を使用し、氷冷下で1時間乳化させてモノマーエマルション(1)を得た。なお、超音波照射機の振幅は10%とした。
【0034】
[中間原料の調製]
ビーカーに、顔料分散液(1)85g、及びモノマーエマルション(1)15gを入れ、氷冷下、800rpmで20分間混合した。次いで、超音波照射機を使用し、氷冷下で2分間乳化させた。なお、超音波照射機の振幅は50%とした。ナスフラスコに内容物を移し、モーターで撹拌しながら、窒素雰囲気下、70℃で8時間加熱して中間原料(1)を得た。
【0035】
[マイクロカプセル化顔料分散液の製造]
ナスフラスコに中間原料(1)95gを入れ、窒素雰囲気下、モーターで撹拌しながら70℃に加熱した。次いで、ナスフラスコに、スチレン4.7g、アクリル酸0.3g、過硫酸カリウム0.05g、水酸化カリウム0.07g、及び水20gの混合液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下後、5時間加熱してマイクロカプセル化顔料分散液(1)を得た。
【0036】
[インクジェット用インクの製造]
得られたマイクロカプセル化顔料分散液(1)と、下記の成分組成(合計100部)とを、マイクロカプセル化顔料分散液(1)の濃度が2%となるように混合して混合液を得た。得られた混合液を、ポアサイズ2.5μmのメンブレンフィルターで加圧濾過してインクジェット用インク1を得た。
・グリセリン 5部
・アセチレノールEH(商品名:川研ファインケミカル社製) 0.1部
・イオン交換水 残部
【0037】
(実施例2)
顔料分散液(1)95g、及びモノマーエマルション(1)5gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(2)及びインクジェット用インク2を得た。
【0038】
(実施例3)
顔料分散液(1)73g、及びモノマーエマルション(1)27gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(3)及びインクジェット用インク3を得た。
【0039】
(実施例4)
顔料分散液(1)55g、及びモノマーエマルション(1)45gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(4)及びインクジェット用インク4を得た。
【0040】
(実施例5)
顔料分散液(1)40g、及びモノマーエマルション(1)60gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(5)及びインクジェット用インク5を得た。
【0041】
(実施例6)
ナスフラスコに中間原料(1)88gを入れ、窒素雰囲気下、モーターで撹拌しながら70℃に加熱した。次いで、ナスフラスコに、スチレン11g、アクリル酸1g、過硫酸カリウム0.12g、水酸化カリウム0.17g、及び水48gの混合液を2時間かけて徐々に滴下した。滴下後、4時間加熱してマイクロカプセル化顔料分散液(6)を得た。そして、得られたマイクロカプセル化顔料分散液(6)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてインクジェット用インク6を得た。
【0042】
(実施例7)
ナスフラスコに中間原料(1)95gを入れ、窒素雰囲気下、スチレン4.7g、アクリル酸0.3g、過硫酸カリウム0.05g、水酸化カリウム0.07g、及び水20gの混合液を加えた。モーターで1時間撹拌した後、70℃で5時間加熱してマイクロカプセル化顔料分散液(7)を得た。そして、得られたマイクロカプセル化顔料分散液(7)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてインクジェット用インク7を得た。
【0043】
(実施例8)
ナスフラスコに中間原料(1)95gを入れ、窒素雰囲気下、モーターで撹拌しながら70℃に加熱した。次いで、ナスフラスコに、スチレン1.5g、アクリル酸3.5g、過硫酸カリウム0.05g、水酸化カリウム0.07g、及び水20gの混合液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下後、5時間加熱してマイクロカプセル化顔料分散液(8)を得た。そして、得られたマイクロカプセル化顔料分散液(8)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてインクジェット用インク8を得た。
【0044】
(実施例9)
ナスフラスコに中間原料(1)95gを入れ、窒素雰囲気下、モーターで撹拌しながら、70℃に加熱した。次いで、ナスフラスコに、アクリル酸5.0g、過硫酸カリウム0.05g、水酸化カリウム0.07g、及び水20gの混合液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下後、5時間加熱してマイクロカプセル化顔料分散液(9)を得た。そして、得られたマイクロカプセル化顔料分散液(9)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてインクジェット用インク9を得た。
【0045】
(実施例10)
ビーカーに、ブチルメタクリレート9g、オクタデシルメタクリレート1g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5g、界面活性剤(商品名「NIKKOL−BC30」、日光ケミカルズ社製)0.6g、及び水70gを入れた。氷冷下、600rpmで10分間混合した後、超音波照射機を使用し、氷冷下で1時間乳化させてモノマーエマルションを得た。なお、超音波照射機の振幅は10%とした。そして、得られたモノマーエマルションを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(10)及びインクジェット用インク10を得た。
【0046】
(実施例11)
ビーカーに、ブチルメタクリレート8g、アクリル酸1g、オクタデシルメタクリレート1g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5g、界面活性剤(商品名「NIKKOL−BC30」、日光ケミカルズ社製)0.6g、及び水70gを入れた。氷冷下、600rpmで10分間混合した後、超音波照射機を使用し、氷冷下で1時間乳化させてモノマーエマルションを得た。なお、超音波照射機の振幅は10%とした。そして、得られたモノマーエマルションを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(11)及びインクジェット用インク11を得た。
【0047】
(実施例12)
NIKKOL−BC30(日光ケミカルズ社製)に代えて、ドデシル硫酸ナトリウム6gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして顔料分散液を得た。一方、ビーカーに、ブチルメタクリレート9g、ヘキサデカン1g、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5g、ドデシル硫酸ナトリウム0.6g、及び水70gを入れた。氷冷下、600rpmで10分間混合した後、超音波照射機を使用し、氷冷下で1時間乳化させてモノマーエマルションを得た。なお、超音波照射機の振幅は10%とした。
【0048】
得られた顔料分散液及びモノマーエマルションを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして中間原料を得た。ナスフラスコに得られた中間原料95gを入れ、窒素雰囲気下、モーターで撹拌しながら70℃に加熱した。次いで、ナスフラスコに、ブチルメタクリレート4.7g、アクリル酸0.3g、過硫酸カリウム0.05g、水酸化カリウム0.07g、及び水20gの混合液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下後、5時間加熱してマイクロカプセル化顔料分散液(12)を得た。さらに、得られたマイクロカプセル化顔料分散液(12)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてインクジェット用インク12を得た。
【0049】
(実施例13)
ビーカーに、水104g、及び界面活性剤(商品名「NIKKOL−BC30」、日光ケミカルズ社製)6gを入れて混合した。顔料カーボンブラック(商品名「FW18」、エボニック デグサ ジャパン社製)10gをさらに入れ、超音波照射機を使用して5時間分散させた。なお、超音波照射機の振幅は30%とした。次いで、ビーカーから取り出した液を、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターで加圧濾過して顔料分散液を得た。そして、得られた顔料分散液を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(13)及びインクジェット用インク13を得た。
【0050】
(実施例14)
ピグメントブルー15:3に代えて、ピグメントレッド122(商品名「Inkjet Magenta E02」、クラリアント ジャパン社製)10gを用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして顔料分散液を得た。そして、得られた顔料分散液を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(14)及びインクジェット用インク14を得た。
【0051】
(比較例1)
マイクロカプセル化顔料分散液(1)に代えて、実施例4で調製した中間原料を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてインクジェット用インク15を得た。
【0052】
(比較例2)
マイクロカプセル化顔料分散液(1)に代えて、中間原料(1)を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にしてインクジェット用インク16を得た。
【0053】
(比較例3)
中間原料(1)に代えて、顔料分散液(1)95gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、マイクロカプセル化顔料分散液(15)及びインクジェット用インク17を得た。
【0054】
実施例及び比較例で用いた各種原料の詳細を表1−1及び1−2に示す。
【0055】


【0056】

【0057】
(2)マイクロカプセル化顔料分散液の評価
【0058】
<樹脂質量/顔料質量(B/P)>
B/Pの値は、示差熱重量測定法によって求めた。実施例及び比較例で得られたマイクロカプセル化顔料分散液(又は中間原料)を乾燥させたものを試料とし、熱重量測定装置(商品名「TGA/SDTA851」、メトラー・トレド社製)を使用してB/Pの値を測定及び算出した。結果を表2に示す。
【0059】
<樹脂エマルションの存在>
5%から40%の濃度勾配を有するスクロース水溶液を遠心チューブに入れ、0.1gのマイクロカプセル化顔料分散液又は中間原料を加え、41,000rpmで3時間、4℃で遠心分離した。樹脂エマルションが存在した場合、チューブのスクロース水溶液の中間に、白い帯状の層ができる。層の有無で樹脂エマルションの存在を確認した。結果を表2に示す。
【0060】
(3)インクジェット用インクの評価
インクジェット記録装置として、商品名「PIXUS Pro 9500」(キヤノン社製)を使用し、実施例及び比較例で製造したインクジェット用インクを用いて画像を形成した。インクジェット用インクの吐出性、及び形成された画像の耐擦過性の評価方法を以下に示す。また、評価結果を表2に示す。
【0061】
<吐出性>
1ドットの縦線を記録用紙(商品名「プロフェッショナルフォトペーパー PR−101」、キヤノン社製)に印字した。その後、インクカートリッジ中のインクジェット用インクをノズルから吐出することでインクジェット用インクを消費し、インクジェット用インクがなくなる直前に、再び1ドットの縦線を印字した。その後、初めに縦線を印字した記録用紙と、インクを使い終わる直前に縦線を印字した記録用紙とを並べ、25cm離れた距離から目視にて観察した。そして、以下に示す基準に従ってインクジェット用インクの吐出性を評価した。なお、評価が「A」又は「B」であれば、十分な吐出性を有すると判断した。
A:両者にほとんど差異がない。
B:使い終わり直前のカートリッジで印字した縦線の一部にドット着弾ずれが認められるものの、直線として認識できる。
C:使い終わり直前のカートリッジで印字した縦線にドット着弾ずれがはっきりと認められ、また縦線がずれて認識できる。
【0062】
<耐擦過性>
記録用紙(商品名「プロフェッショナルフォトペーパー PR−101」、キヤノン社製)の縁から20mmを除いた領域にベタ画像を形成した。印字1時間後、得られたベタ画像の上に、シルボン紙、及び一辺が5cm、重さ1kgの錘を順に載せた後、シルボン紙を引っ張った。シルボン紙を引っ張ったときに、記録用紙の縁(白地部)及びシルボン紙に汚れが生じるか否かを目視にて観察した。そして、以下に示す基準に従って画像の耐擦過性を評価した。なお、評価が「A」であれば十分な耐擦過性を有すると判断した。
A:白地部及びシルボン紙に汚れが認められなかった。
B:シルボン紙のみに汚れが認められた。
C:白地部及びシルボン紙の双方に汚れが認められた。
【0063】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、第一の界面活性剤及び水を含む顔料分散液と、第一のモノマー、第二の界面活性剤及び水を含むモノマーエマルションとを混合した後に分散させて分散液を得る分散工程と、
前記分散液に含まれる前記第一のモノマーを重合して中間原料を得る第一の重合工程と、
前記中間原料に第二のモノマーを加えた後、前記第二のモノマーを重合して、マイクロカプセル化顔料を含有するマイクロカプセル化顔料分散液を得る第二の重合工程と、を有することを特徴とするマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法。
【請求項2】
前記第一のモノマーが、疎水性モノマーである請求項1に記載のマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法。
【請求項3】
前記第一のモノマーと前記第二のモノマーが同一である請求項1又は2に記載のマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法。
【請求項4】
前記第一の界面活性剤及び前記第二の界面活性剤が、炭素数6以上のアルキル基、芳香族環及び脂肪族環からなる群より選ばれる少なくとも一つの疎水性基と、繰り返し数が30以上のエチレンオキサイドからなる親水性基と、を有する化合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマイクロカプセル化顔料分散液の製造方法により得られたマイクロカプセル化顔料分散液を用いてインクジェット用インクを得る工程を有することを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。

【公開番号】特開2013−23529(P2013−23529A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157979(P2011−157979)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】